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2022年1月 9日 (日)

夢のシネマパラダイス614番シアター:犯人は何処にー罪の声の真実ー

罪の声

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出演:小栗旬、星野源、松重豊、古舘寛治、市川実日子、火野正平、宇崎竜童、梶芽衣子、宇野祥平、篠原ゆき子

監督:土井裕泰

(2020年・東宝・142分)WOWOW

内容:1984年(昭和59年)に起きた食品会社を標的とした脅迫事件は、日本中を恐怖に陥れた劇場型犯罪として昭和最大の未解決事件となった。あれから35年後、新聞記者の阿久津はすでに時効となっている事件の真相を追う企画班に入れられ取材を始める。一方、京都でテーラーを営む曽根は、父親の遺品の中から見つけた古いカセットテープに小さい頃の自分の声が録音されていることに気づく。しかし、その声はあの事件で使われた脅迫テープと同じものだった・・・。

評価★★★★/80点

グリコ森永事件は自分が6歳の時だったのでほとんど記憶になく、2011年に放送された「NHKスペシャル未解決事件」でその詳細を初めて知った程度だった。

その点で当時5歳だった主人公・曽根俊也(星野源)の記憶をたどる旅は、どこか自分自身とも重ね合わせることができて感情移入しやすくて見入ってしまった。

また、プロットの構成も証言者のもとを訪ねてひたすら聞き込みを繰り返していくオーソドックスなものなんだけど、曽根と阿久津(小栗旬)2つのアプローチが交錯し真相に繋がっていくのは面白かったし、その真相が犯人捜しだけではなく、事件を通して十字架を背負わされた当事者たちの埋もれた人生にフォーカスしていくのも見ごたえがあった。

「目の前の不幸から目をそらさずに素数になるまで割り切って割り切って真実を明らかにする」というセリフが印象的だったけど、まさにその言葉通り丁寧に描写が積み重ねられていて、決して想像力に物を言わせたような突飛な小手先に陥らない説得力があったように思う。

考えてみれば先述したNHKスペシャルもドラマ仕立てで、めちゃくちゃ面白かったんだ。ノンフィクションドラマであれだけ面白いんだから、そりゃフィクションまぶしたら面白くならないはずがないよねw

ただ、あまりドバッと大量だと途端につまらなくなるし、その点この映画でのふりかける量は絶妙なんだよね。あくまで堅実に。良作。

P.S.

全共闘に対するどこか突き放したような冷めた視点とか分かるわーwと思ってたら、後日、原作者が自分と同学年であることを知って、この作品が自分にハマッた理由が腑に落ちた気がした。

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検察側の罪人

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出演:木村拓哉、二宮和也、吉高由里子、平岳大、大倉孝二、八嶋智人、酒向芳、キムラ緑子、松重豊、山崎努

監督・脚本:原田眞人

(2018年・東宝・123分)WOWOW

内容:若手検事の沖野は、心酔するエリート検事最上がいる東京地検刑事部に配属となり、さっそく老夫婦強盗殺人事件を担当することになる。が、事件の重要参考人の中にかつて時効になった女子高生殺害事件の重要参考人・松倉の名前を見つけた最上は、目の色を変えて松倉を追及していく。そのやり方に沖野は次第に疑問を抱き始めるが・・・。

評価★★★☆/70点

行動派で正義感の強い型破りな検事役で大ヒットを飛ばしたテレビドラマHEROとは真逆の絵に描いたようなエリート検事・最上を演じたキムタクの汚れ役は新鮮だったし、新米検事の二宮や異様な存在感を発する犯人役など役者陣は軒並み見応えがある。

が、いかんせんシナリオ演出ともに不親切で共感の足がかりを得られないのがイマイチ。

特に最上の親友で国会議員・丹野の収賄スキャンダルやインパール作戦との絡みが雑でうまく伝わってこない。

インパールについては、丹野が反旗を翻す戦前回帰思想の先につながるものの象徴として描かれている面があり、最上もついぞ自らの手で裁くことなく今に至る過去の愚行から生還した祖父を持つ。

そんな中で最上は法で裁くことができない悪に鉄槌を下すため一線を越えるわけだけど、法より自分の正義を優先した行為を正当化するために丹野の遺志(歴史修正主義の断罪)をまるで免罪符であるかのように持ち出してくる。

けれども、所詮100パー私怨による復讐にすぎない最上のやってることは、結局インパールを指揮した大本営のなりふり構わない暴走と何ら変わらないわけで。

しかし、映画はそこの矛盾点を半ば意図的に放っぽり出してるのでタチが悪いんだよねw

また演出においても、築地本願寺での葬儀シーンや、二宮と吉高がベッドインした後の上下逆さまで寝るシンメトリーなど妙に異様さが際立っている。

ようするに漫才コンビ千鳥のフレーズを借りていえば、原田眞人のクセがすごいんじゃ~(笑)!

とは言いつつ、観客置いてけぼり感も含めて見た後の疲労度は高いけど、こういう生半可にはいかない映画も時には良い。ってことにしておくw

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三度目の殺人

172308_02出演:福山雅治、役所広司、広瀬すず、満島真之介、市川実日子、橋爪功、斉藤由貴、吉田鋼太郎

監督・脚本:是枝裕和

(2017年・東宝・125分)WOWOW

内容:何よりも裁判の勝ちを優先するエリート弁護士の重盛は、供述が二転三転して手に負えないと同僚がサジを投げた殺人事件の弁護を引き受けることに。被告人の三隅は、解雇された工場の社長を殺害したかどで逮捕され、30年前にも殺人で服役しているうえ、今回も強盗殺人を認めており死刑は確実とみられていた。重盛は無期懲役に持ち込もうと戦略を立てるが、肝心の三隅は証言をコロコロ変え、重盛にも本心を見せないのだった・・・。

評価★★★☆/70点

いわゆる法廷サスペンスものの最終的なベクトルがたったひとつの真実の追求にあるとするならば、今回の映画はその定石をスルーしているので見る側としては戸惑ってしまうというのが正直なところ。

それどころか真実は十人十色であり、水面下の談合忖度調整により不条理や不都合=本当のことを取っ払ったストンと胸に落ちるそれらしいストーリーが形作られる。そして公の法廷の場にこれが真実ですよと差し出され、下される判決・・。

そんな人が人を裁く司法のあり方とそのシステムの内幕を描いているんだなと2回見てようやく気付いたけど、結局こちら側にはストンと胸に落ちてこないっていうオチ(笑)。

まぁ、原作によらないオリジナル映画だからこその強度が十二分にあるのは確かだし、いろいろ考えさせられるので見応えはあったけども。。

でもって頭の回転が鈍い自分の胸に1番響いたのは、万引きしないと父親に会えない娘の哀しさだった。でもこれも良い風にとった自分の信じたい解釈のひとつでしかないのかも・・w

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22年目の告白ー私が殺人犯ですー

Bc4c04a9出演:藤原竜也、伊藤英明、夏帆、野村周平、石橋杏奈、竜星涼、早乙女太一、平田満、岩松了、岩城滉一、仲村トオル

監督:入江悠

(2017年・日本・117分)WOWOW

内容:1995年、東京で連続殺人事件が発生。牧村刑事らの必死の捜査にもかかわらず2010年に時効を迎えてしまう。しかし、それから7年後。曽根崎という男が自ら犯人だと名乗り出て、告白本の出版会見を大々的に行う。マスコミ報道は過熱しネットも熱狂、本はベストセラーとなり、賛否渦巻く中で一躍時の人となっていくが・・・。 

評価★★★/65点

22年前って曾根崎(藤原竜也)はどう見ても未成年だったのでは?という違和感は最初からあったけど、あそこまでの展開は予想がつかず、サスペンスでこういうジェットコースタームービーは珍しいので楽しめたのはたしか。

とはいえ、どんでん返しの連チャンはその場しのぎの面白さで、強引なご都合主義を飲み込むほどの描写力には乏しかったかなと。

ようするに琴線にあまり響いてこないんだよね。

被害者遺族含めて登場人物の横のつながりが薄かったのが世界観の狭さにつながっていて、ヘヴィーな内容のわりにあくまでこれは画面の中で起きている出来事というライト感覚になっちゃってるのかなぁと。まぁ、破綻はせずによくまとめてるとは思うけどね。

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愚行録

E6849ae8a18ce98cb2e38386e382a3e382b6e383出演:妻夫木聡、満島ひかり、小出恵介、臼田あさ美、市川由衣、松本若菜、中村倫也、眞島秀和、濱田マリ、平田満

監督:石川慶

(2016年・日本・120分)WOWOW

内容:エリートサラリーマンの夫と美人で有名な妻、その一人娘の田向一家が殺害される事件が起きて1年。未解決の中、週刊誌記者の田中武志は、一家の関係者の取材を始める。そして被害者夫の会社の同僚や、妻の大学時代の友人らの証言から一家の意外な素顔が明らかになっていく。そんな中、田中も妹の光子が育児放棄の疑いで逮捕されるという問題を抱えていた・・・。

評価★★★/65点

地方私大出の自分からすると、有名ブランド私大の中の学内ヒエラルキーは全くもって別世界で、「あの世界を知らない人にどう言っても伝わらない」というセリフはまさに的確。

まぁそこが映画を見る上での足かせになっているわけではなかったけど、独特な距離感はあったかも。

ただ、題名通りなそれぞれの愚行っぷりがレベルは違えどどこか他人事ではない人間の姿をさらけ出していて気持ち悪かったし、犯人の犯行動機が単なる復讐ではないところが、もの凄く現代的な薄気味悪さがあって怖かった。

なんだけど、1番の凶行者が狂言回しのカイザー・ソゼだったことに気付かされてさらなるブルーの底に。。重すぎるよ・・。

役者陣は軒並み好演。特に実は素演技だった!?小出恵介ww

2021年12月25日 (土)

夢のシネマパラダイス356番シアター:神様、神様は本当にいるんですか?

沈黙ーサイレンスー

Blog_import_5c819b874025a出演:アンドリュー・ガーフィールド、アダム・ドライヴァー、浅野忠信、窪塚洋介、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、リーアム・ニーソン

監督・脚本:マーティン・スコセッシ

(2016年・アメリカ・162分)T・ジョイPRINCE品川

内容:17世紀、江戸時代。日本で布教活動していたイエズス会宣教師フェレイラが、幕府のキリシタン弾圧によって棄教し消息を絶ったとの知らせがローマに届いた。弟子のロドリゴとガルペはそれを信じられず日本へ向かい、マカオで出会った日本人キチジローの手引きで長崎の隠れキリシタンの村に潜入する。そして村人たちの手厚い歓迎を受けて信仰心を通わせていくが、キチジローの裏切りでロドリゴが捕縛されてしまう。長崎奉行・井上筑後守は布教の無意味さを説き、「転び」=棄教を迫るのだった・・。

評価★★★★☆/85点 

信仰心は薄いけど、歴史好きな自分にとって宗教について確信をもって言えることがある。

それは洋の東西を問わず歴史を動かしてきた最大の原動力は宗教だということだ。

「今までの歴史の中で記録されている残酷な罪の数々は全て宗教という名の下に行われている」というガンジーの言葉や、イギリスの歴史家ギボンの「宗教のことを一般人は真実のみなす一方、支配者は便利とみなしている」という言葉の通り、宗教は権力者が国をまとめるための道具に使われてきた。

特に他の神々を認めない一神教が牙をむいた時の禍々しさは、これだけ文明の進んだ今でも変わらない。

人間が生み出した最も純粋偉大な思想が邪悪野蛮な行動を生み出してしまうという点で人間の写し鏡でもある宗教。

だからこそ宗教について知ることは、人を知ること歴史を知ることに繋がっていって面白いのだと思うし、例えばキリスト教とイスラム教はもともとはユダヤ教から派生した姉妹宗教であるとか、インドで生まれた仏教がシルクロードを通って中国、朝鮮半島を経て日本へ渡ってくる間にその土地の風土気候文化や土着の宗教と結びついて変容していくプロセスを知るのも面白かったりする。

その中で、針供養からシロアリ供養あるいはトイレの神様に至るまで自然万物すべてに八百万の神が宿る日本人の宗教観は、世界的にはかなり特殊な部類に入ると思うけど、だからこそ逆に面白いし、日本人として誇りに持ちたいところ。

と、前置きが長くなってしまったけど、肝心の映画について。

信仰心は薄いけど歴史好きな自分としては、250年に渡って数万人が殉死したという教科書でしか見たことがなかった踏み絵などのキリシタン弾圧の実相を映像として見られるというスタンスでしか臨めなかったのが正直なところで・・。

だって、キチジローより早く踏み絵を踏んじゃう自信あるし(笑)、やっぱりそういう一神教信者の内面というのはなかなか分からないところがあって。。映画自体もそこは踏み込んで描いていない面もあったけど、純粋な信仰心を疑ってやまないモキチ(塚本晋也)の顔を見せられるとグウの音も出なくなっちゃうていうのは映画として上手いんだか何なんだかw

でも、スコセッシが足かけ28年かけてようやく作り上げただけあって、ハリウッド映画にありがちなココがヘンだよニッポン描写みたいな違和感はなく。全編台湾ロケだったようだけど、江戸初期長崎の風景もちゃんとしていたし、日本キャスト陣の頑張りもあって160分の長尺を感じさせない作品になっていたと思う。

切っても切り離せない“宗教と暴力”。そしてスコセッシが一貫して描き続けてきた“信仰と暴力”というテーマ。それを音楽のない映像の力だけで結びつけたのはやはりさすがだったし、これからはNHKの大河ドラマもいいけど歴史から抹殺された弱者たちを描いた歴史ドラマをこそ見たいなと思った。

P.S.後日、1971年公開の篠田正浩監督版を鑑賞。

井上筑後守が元キリシタンだったことにビックリw

またエンディングの収め方も、スコセッシ版ではロドリゴが棄教して妻帯するも最後まで禁欲的印象を受けるのに対し、篠田版では妻として差し出された元キリシタンの女の身体を本能のおもむくままに貪るロドリゴを赤裸々に映し出すカットで終わる。

篠田版の方が分かりやすく核心を突いているような気はしたけど、個人的には丁寧でありながらこちらの想像力・読解力の入り込む余白を残しているスコセッシ版の方が好み。

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エクソダス:神と王

Poster2_2出演:クリスチャン・ベイル、ジョエル・エドガートン、ジョン・タトゥーロ、アーロン・ポール、シガニー・ウィーバー、ベン・キングズレー

監督:リドリー・スコット

(2014年・アメリカ・150分)盛岡フォーラム

 

内容:古代エジプト王国。国王セティのもとで息子のラムセスと兄弟同然に育てられたモーゼ。成長した彼は、父王の信頼も厚く、国民からも慕われていた。ところがセティの死後に即位したラムセスは、モーゼが実は奴隷階級のヘブライ人であると知るや、モーゼを国外追放する。なんとか生き延びたモーゼは、過酷な放浪の末に一人の女性と巡り会い結婚し平穏な暮らしを得る。しかし9年後、そんな彼の前に少年の姿をした神の使いが現れる・・・。

評価★★★★/80点

普段、映画の感想を書く時に、やれ人間ドラマが薄っぺらいだとかキャラクターに深みがないだとかエピソードが単調だとかツッコミを入れてしまうのだけど、しかしそうはいっても1番スクリーンで見たいのは何かといえば、やはり映画でしか味わえないスケール感を体感したいというのが先にくる自分がいたりしてw

そして、文字通りそれがいの一番にくるのがリドリー・スコットであり、たいして面白くもない話を壮大な大作に仕上げてしまう、つまり40点のお話を70点以上に底上げしてしまう力技は決して期待を外さず、SFものや歴史ものとリドリー・スコットが組み合わさるとワクワク感が止まらなくなってしまう(笑)。

で、今回の作品はまさに40点を80点にグレードアップしたようなリドリー・スコット十八番の映画だったように思う。

地平線を否応なく意識させるワイドスクリーンに映し出される映像は「アラビアのロレンス」を想起させるほどスペクタクルな情感にあふれていて、作り話のようなウソっぽさを払拭させてしまうリアリティとともに映画的なカタルシスをも両立させてしまう魅力があったし、これぞ映画であると肯定させてしまう力技は今回も健在だった。

ただまぁ神仏習合の日本人には理解しがたい部分というか、白黒はっきりさせる一神教の容赦のないエグさだとか、モーゼとオサマ・ビン・ラディンは何が違うのかと一瞬思ってしまう違和感だとか、60年前の「十戒」では描けなかった今だからこその視点で切り取る方法論があってもよかったような気もする。

復讐の化身にしか見えない神、信じる者しか救わない宗教、狂信者と紙一重の人間、、う~ん、、ロクなことがないよね

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ノア 約束の舟

A1d764a44fc39a29575296986686ff7e出演:ラッセル・クロウ、ジェニファー・コネリー、レイ・ウィンストン、エマ・ワトソン、アンソニー・ホプキンス、ローガン・ラーマン

監督・脚本:ダーレン・アロノフスキー

(2014年・アメリカ・138分)WOWOW

内容:旧約聖書の時代。アダムとイブにはカイン、アベル、セトという3人の息子がいた。が、カインはアベルを殺し、やがてその子孫はこの世に善と悪を広めた。一方、セトの末裔ノアはある日、恐ろしい夢を見た。それは、堕落した人間たちを一掃するため、地上を大洪水が飲み込むというものだった。これを神のお告げと確信したノアは、妻と3人の息子と養女のイラと方舟を作り始め、この世の生き物たちも乗せられるように洪水から逃れる準備をする。しかしそんな中、カインの子孫たちが舟を奪うべく現われるが・・・。

評価★★/40点

宗教映画もここまでこじれるとどうにもならなくなっちゃうな(笑)。

旧約聖書にあるノアの箱舟がもともとどんな話なのかよくは知らないけど、これだけ見ると、マインドコントロールされた親父が自分の家族以外の人間を勝手に悪とみなして見殺しにし、さらに生まれてきてはダメなのだと初孫にまで手をかけようとするも、家族の懸命な説得で我に帰るっていうどーしょーもない話なわけでしょ・・。

まぁ、こういう一神教に特有の信じる者は信じない者を駆逐してかまわないという選民思想は日本人には理解しがたいものがあるので、ちょっとテーマ的にもなじめなかったなぁと。。

唯一、ハリー・ポッター組の中でエマ・ワトソンだけが順調に女優としてキャリアを積んでいってるなと確認できたことだけが救いだった。。

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パッション

Dvd出演:ジム・カヴィーゼル、マヤ・モルゲンステルン、モニカ・ベルッチ、ロザリンダ・チェレンターノ

監督・脚本:メル・ギブソン

(2004年・アメリカ・127分)盛岡フォーラム

内容:ローマ兵の虐待を受けながらゴルゴダの丘へ連行され、人々のために祈りつつ処刑されたイエス・キリストの最期を、見る者に嫌悪感を抱かせるほどの暴力描写と当時と同じアラム語とラテン語のセリフなど徹底したリアリズムで描いた問題作。

評価★★/45点

“自分の中にあるパッションは一度も高ぶることなく灯火さえともることがなかった。胸を張ってカミングアウトしよう。この映画に不感症だと。”

あなたはどんな映画が好きかと訊かれたら自分は間違いなくこう答えるだろう。

ぶっちゃけ人殺しをしようが何をしようがとにかく生への執着、生きることへの必死さ、そういう思いが伝わってくる映画を見るのが最も好きだと。

そんな映画が好きな自分にとって、生への執着を超越し、生きることへのひたむきさなどどこ吹く風のまったく対極にあるこの映画を見ることが自分の中にどのような反応をもたらすのか(正確には無反応)ある程度は予想がついてはいた。

しかしその予想を超越したレベルで自分はこの映画に無関心無感動無感覚だった。

殴る蹴る、さらされた血みどろの身体、飛び散る血しぶき、そんな目を覆うような映像の連続を目の当たりにしても自分の感情は喜怒哀楽どちらにも一向に傾くことはなかった。どこまでも平然かつ冷静沈着な自分がいた。エグイ描写でこんなに冷めてていいのだろうかと思ったくらい・・・。

前に座ってたカップルなんて、先に男の方が途中で席を立って、3,40分戻ってこないことに業を煮やした彼女がしぶしぶ席を立っていったり、かと思えば別な一角からはすすり泣く声が聞こえてきたり、、ふ~ん、やっぱ今の時代、男の方がヤワなんだなとかあそこで泣いてるのはクリスチャンなのかねぇとか劇場の反応の方まで冷ややかに見ている自分がいたりして

まずもって、この映画における徹底したリアリティの追及は、自分にとって何ら評価ポイントにはならなかったということだけは確かなようだ。

この映画のチラシには、「いかにもウソっぽい歴史大作」ではなく徹底したリアリティを追求するために世界最高のスタッフが集結した、というふれこみがあった。しかしこの徹底したリアリティの追求というのは一見映画に限りない実感と重みをもたらすと思われるが、それはまた諸刃の剣であるということも忘れてはならない。リアリティを追求しすぎることが今度はかえって映画のもつエンターテイメント性と観客のもつイマジネーションを削いでいってしまうという弱点をも内包しているといえるからだ。

そのことをふまえた上でいうと、人それぞれ好き嫌いはあると思うが、個人的に優れた歴史映画というのは、リアリティの追及と同時に、いかにうまくウソをつくかというその2点におけるバランスがうまくとれているもの。そういう映画が優れた歴史映画だと思う。

その点についてこの映画を評価するならば、優れた歴史映画という括りには全く入れることはできず、完全な宗教映画になってしまっているといえる。キリスト教信者以外何ら見るべき価値はない映画だと断言しちゃってもいいのではないかなと。

クリスチャンでも何でもない自分にとってはホント聖書を読んだときの堅っ苦しさと形式ばった窮屈さと全く同様のものを感じ取ってしまったわけで。

別に聖書を否定したいわけでは決してなくて、史劇とか人間劇といったエンターテイメントやスペクタクルにどううまく聖書を織り込んでいくか、その使い方とバランスが重要だってこと。

その好例としては例えば「ベン・ハー」が挙げられるかな。

とにかくあれだね、小学生の頃よく学校の帰り道でキリストの受難や天国とか地獄についての紙芝居をやってるのに出くわして見たことがあったんだけど、そのときに得たインパクトとパッションの方がメル・ギブソンの映画を見たときより何倍何十倍も大きかったことだけはここに記しておこう。

追記1.あ、そういえば思い返してみると幼稚園と大学がカトリック系のところだったんだっけ・・

2.自分が考える優れた歴史映画とは具体的には「ベン・ハー」や「グラディエーター」といった類の映画です。

3.ああいう虐待シーンを見せられるにつけ、イラク戦争におけるアメリカ軍の虐待など、人間って2000年経っても何にも変わってないんだなぁと悲しくなってしまった。

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ミッション(1986年・イギリス・126分)WOWOW

 監督:ローランド・ジョフィ

 出演:ロバート・デ・二―ロ、ジェレミー・アイアンズ、レイ・マカナリー、エイダン・クイン、リーアム・ニーソン

 内容:1750年、南米奥地イグアスの滝。イエズス会の神父ガブリエルは、布教活動のために滝の上流に住むインディオの村を訪れ、彼らの信頼を得ていく。一方、奴隷商人のメンドーサは、三角関係のもつれから弟を殺してしまう。罪の意識に苛まれる中で神父に帰依し、ガブリエルと共に伝道の道に入るのだが・・・。

評価★★★☆/70点

中南米のサッカー選手はピッチを出入りする時に十字を切って神のご加護を祈り、試合後のインタビューでは神への感謝の言葉を惜しげもなく口にし信仰心をあらわにする。サッカー好きの自分は以前から世界で最も敬虔なクリスチャンは中南米の人ではないかと思っていた。

しかし、なぜ中南米のほとんどの国がスペイン語を話し、カトリック教国なのか、、その裏にある痛ましい歴史を垣間見るとなんとも複雑な気持ちになってしまう。

世界は全てカトリック国になるべきだという強烈な使命感を持っていたスペインとポルトガルの庇護のもとキリスト教布教を目的に設立されたイエズス会。しかし、そんな崇高な理念とは裏腹に、この時代のカトリック宣教師が“侵略の尖兵”の役割を果たしてきたことは事実であり、平和目的のように聞こえる布教という言葉の裏で実際行われていたことは軍事的征服つまり侵略だった。

国を滅ぼして宗教と言語を押し付けるのが1番手っ取り早い“布教”だからだ。

しかもここが一神教のタチの悪いところだけど、彼らには侵略や虐殺をも神から与えられた使命と思い込んでいた。人間も含めたこの世界は唯一絶対の神が創造したもの、つまりもともと神の所有物なのに、その神の存在すら知らないあるいはニセモノの神を信じる無知な恩知らずがいて、そういう連中にキリスト教を教え広めるためなら何をしても構わない=正義の行いをしているという論理だ。

映画の中で枢機卿が「医者が命を救うために手術するように、この土地にも思いきった荒療治が必要なのだ」と豪語するのだが、勝手に手術される方はたまったものではない。

しかも、手術が成功し、理想郷ともいえるコミュニティが作り上げられたと思いきや、今度はスペインとポルトガルの領土の取り分争いから立ち退きを強要され結果虐殺されてしまう・・。

欺まんに欺まんを重ねた宗教の名を借りた侵略について深く考えさせられたけど、が、しかし中南米が完全にキリスト教文化圏となっている現代において、彼らの“正義”が勝ったのもゆるがない事実。

多神教的なメンタリティの方に共感を覚える自分にとっては、切っても切り離せない歴史と宗教の関係の中で宗教によって救われた人の方がもちろん多いだろうけど、宗教によって滅ぼされた人も数多いるのだということを忘れてはならないと思う。

P.S.とはいえ国境を越えて命の危険をかえりみず未知の世界各地に散らばっていった宣教師のフロンティアスピリットと使命感はスゴイの一言で、日本に来た宣教師も不安でいっぱいだったんだろうなと今回の映画を見て思った。。

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十戒(1956年・アメリカ・220分)NHK-BS

 監督:セシル・B・デミル

 出演:チャールトン・へストン、アン・バクスター、ユル・ブリンナー

 内容:1923年にセシル・B・デミルが監督した「十誡」を、デミル自らが再映画化したスペクタクル史劇。エジプト王ラムセス1世は、新しく生まれるヘブライの男子をすべて殺すという命を発した。母親の手によってナイル川に流されたモーゼという名の赤ん坊は、好運にも王女のもとへ流れ着く。成長したモーゼがエジプト王子として勢力を得てきた頃、宮廷では実の王子ラムセスが権力を振るっており、2人は王位と王女ネフレテリの争奪を始める。。

評価★★★/60点

どう見たってちゃちい紅海真っ二つシーン。

しかしなんだかんだ言ってモーゼといえばこの映画の映像しか頭に浮かばないというのはある意味スゴイ。

2020年12月30日 (水)

夢のシネマパラダイス609番シアター:アベンジャーズ選抜トライアル

ドクター・ストレンジ

6ccbf0387d0ae9d9a8523c9c9b0c2281出演:ベネディクト・カンバーバッチ、キウェテル・イジョフォー、レイチェル・マクアダムス、ベネディクト・ウォン、ティルダ・スウィントン

監督・脚本:スコット・デリクソン

(2016年・アメリカ・115分)WOWOW

内容:ニューヨークの天才外科医スティーヴン・ストレンジ。ある日交通事故に遭い、両手にマヒが残る重傷を負ってしまう。医者としてのキャリアを失い途方に暮れた彼は、下半身不随から復活した男がいるという噂を頼りにネパールに渡る。そしてエンシェント・ワンという女魔術師と出会い、彼女に弟子入りするのだが・・・。

評価★★★☆/70点

主人公のキャラ設定はアイアンマン、映像面はインセプションやマトリックスetc..どこかで見たような既視感ありありで、ティルダ・スウィントンなんてバットマンビギンズの渡辺謙そのまんまなんだけど、前記作品群はどれも面白かったせいかそんなに悪い感触はないっていう(笑)。

例えば、マッチョマンなアベンジャーズに比べると今回は魔術主体なので、それこそ自分の大好きな鋼の錬金術師にも似た腕力に頼らない面白さがあったし、時計の針が逆回転していく中でのバトルもジョジョの奇妙な冒険のスタンド、ザ・ワールドのさらに先をいく今までありそうで無かった新機軸で見応えがあった。特段ケチをつける所はなかったかなと。

しいて言えば、横文字用語が多すぎてついて行きづらいのと、ラスボスがストレンジの最強根比べにいい加減飽きて退散するオチにはちょっと腰砕けになっちゃったけどw

まぁ、映画館で見てなんぼの作品なのはたしか。

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デッドプール

O0297042013780560343出演:ライアン・レイノルズ、モリーナ・バッカリン、エド・スクライン、T・J・ミラー、ジーラ・カラーノ

監督:ティム・ミラー

(2016年・アメリカ・108分)WOWOW

内容:今から2年前、特殊部隊を退役したウェイドは娼婦のヴァネッサと出会い、あまりにも相性が良いものだから本気で結婚を考え始めたのだが、その矢先に末期ガンと診断されてしまう。やがて彼は酒場で出会った男に一縷の望みを託し、治療と引き換えに極秘の人体実験を受けることを承諾した。その結果、不死身の肉体を手に入れたものの、その代償として全身が焼けただれたような醜い姿になってしまう。そして現在。ヴァネッサの前から姿を消した彼は、赤いコスチュームに身を包んだ男“デッドプール”として、人体実験を行った組織を追っていた・・・。

評価★★★/65点 

まるでタランティーノ映画から闖入してきたような品性2:お下劣8キャラが、ヒーロー映画の常道を茶化しながら好き放題ヤリまくる悪ふざけはたしかに新鮮。

が、言ってしまえば見所はそこだけしかないわけで、マーベルヒーローものという括りを取り外せば、ただのパロディ映画。

にもかかわらず、そこに徹することなく途中でまともな方向に舵を切り失速感ありありになったのはちょっと中途半端だったかな。

ま、唯一無二の愛さえあれば何だって許されるってのは一本スジは通ってるけどねw

でも、正直ピンで見るよりはX-MENの中で見たいかなぁ。って、えっ!ウルヴァリンの敵役で出てたって!?これからどう繋がっていくんだ・・?

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アントマン

1_large出演:ポール・ラッド、マイケル・ダグラス、エヴァンジェリン・リリー、コリー・ストール、アンソニー・マッキー

監督:ペイトン・リード

(2015年・アメリカ・117分)WOWOW

内容:バツイチ無職のスコット・ラングは、最愛の娘の養育費も払えず、まさに人生の崖っぷちに。そんな中、彼のもとに天才科学者ハンク・ピム博士からある仕事が舞い込んでくる。博士が開発した特殊なスーツを着て、身長1.5㎝のアントマンになるというものだった・・・。

評価★★★/65点

子供時分「ミクロキッズ」(1989)を見た時に小さくなった悪ガキの大冒険にワクワクドキドキしたものだけど、と同時にその冒険の範囲が家の庭という狭さに物足りなさを覚えたのも確かだった。

しかし、その物足りなさを満たしてくれたのがアニメ映画のトイストーリーとジブリ映画のアリエッティだったわけで、今回初めて実写映画で蟻サイズの人間があらゆる場所を縦横無尽に駆け回るミクロ世界をスケール感たっぷりに見せてくれて、映像面では文句の付けようがない出来。

正直ストーリー面は二の次なあっさり感は否めず、見どころは映像しかないかんじだったけど、シリーズ化のイントロダクションとしては十分及第点をあげられる作品だったと思う。

個人的にはもっとコミカルでも良かったかなと感じたけど、アベンジャーズに組み込まれることを考えるとあんまり毛色に違いを出しすぎるのもあれだったのかな。

アベンジャーズを意識せずに作られた単発での次回作を期待したいけど、エンドロール後のエピローグからするとどうやら夢物語みたい・・。

2019年10月10日 (木)

夢のシネマパラダイス6番シアター:青春ガチンコグラフィティ

ちはやふる-上の句-/-下の句-

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出演:広瀬すず、野村周平、新田真剣佑、上白石萌音、矢本悠馬、森永悠希、清水尋也、松岡茉優、松田美由紀、國村隼

監督・脚本:小泉徳宏

(2016年・東宝・上111分/下102分)WOWOW

内容:小学生の時に転校生の新&幼なじみの太一と競技かるたにのめり込んだ千早。卒業とともに3人はバラバラになったものの、かるたを続けていれば再会できると信じる千早は、高校でかるた部の創設に乗り出す。そこで同じ高校に進学していた太一と再会し、2人で部員集めに奔走。やがて古典オタクの女子・かなちゃん、小学生かるた全国準優勝の肉まんくん、秀才の机くんの勧誘に成功し、晴れてかるた部が誕生する。そして千早は全国大会優勝という新たな決意に燃えるのだった。

評価★★★☆/70点

上の句★4つ、下の句★3つ。

花びらがひらひらと舞い散る桜並木から始まる映画に悪い映画なんてあるわけがない(笑)。

今作も爽やかな青春映画として魅力ある作品になっていて、運動部のようなむさ苦しさのない和物の文化部を舞台にしながら、ベタなスポ根要素の熱さも加味したバランスの良さはかなり新鮮。

さらに、主人公が競技かるたの試合後に白目をむいて爆睡するというようなチープな漫画的要素も、登場人物の巧みなキャラクター造形とそれを演じる若手俳優陣の魅力も相まって上手く処理されているのも良い。

特に広瀬すずの素晴らしさは今更ながらに実感したかんじ。中でも対戦中の眼光の鋭さは印象的で、それがあっての白目落ちがちゃんとボケとして成立しているので面白く見られるんだよね。

けれど、上の句は団体戦、下の句は個人戦と色分けされてはいるものの、どう考えても1作にまとめられただろうとは思った(笑)。

特に上の句のラストで、かるたはもうやらない!と宣言した新が下の句のメインになるのかと思いきや、あくまでも勝負の土俵に上がろうとしない新がやっとで重い腰を上げるのがエンドロールって、、正直ガックリ。。孤高のクイーンしのぶ(松岡茉優)のキャラが良かっただけにちょっと消化不良・・。まぁ、上の句で描くことはやりきった感がやっぱりあるんだよね。。

でも、かるた部5人のキャラはこの映画最大の“ラッキーボーイ”机くんをはじめ各々個性が立ってて面白かったので、年を経ての続編はあっていいかも。

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おっぱいバレー

Main_large 出演:綾瀬はるか、青木崇高、仲村トオル、石田卓也、大後寿々花、福士誠治、光石研、市毛良枝

監督:羽住英一郎

(2008年・日本・102分)WOWOW

内容:1979年の北九州。中学校の新任国語教師・美香子は、男子バレー部の顧問を任される。が、キモ部と評される通り、部員たちはバレーボールすらまともに触ったことがなく、エッチなことしか興味がない脳タリンばかり。そんな彼らのやる気を出そうとした美香子だったが、ひょんなことから「試合に勝ったら、おっぱいを見せる」というとんでもない約束をするハメになってしまう。そしたっけ単純バカ部員たちは別人のようにやる気を見せ始め・・・。

評価★★★★/80点

実に清々しい作品だ。

おっぱいを連呼連発しておきながら実に爽やか。しかも「ウォーターボーイズ」や「スウィングガールズ」をも凌ぐレベルで。。

それはつまるところ第三者(物語の登場人物しかり監督をはじめとする作り手しかり)の悪意がこの映画にはないことに尽きると思うのだけど、とにかくおっぱいを見たいという動機付けオンリーで映画を引っ張っていくバカさ加減は逆にあっぱれ。キモ部とバカにされる落ちこぼれ童貞男子の脳内レベルから逸脱することがない愛すべきおバカ映画である。

しかし、童貞くんでもインターネットでポチッとクリックすればおっぱいを見られる今の世の中ではおっぱいは希望のかたまりにはなりえない。。

その点で橋の下に落ちているしなびたエロ本と11PMしかなかった昭和54年を舞台設定にしたのは大正解!昭和53年生まれの自分は珠玉の名曲をバックグラウンドに懐かしい香りに包まれながら見ることができて幸せですた。

ちなみに自分のノスタルジー心を最も刺激したのは、雨が降ったせいで女子の体操着が濡れてブラがスケスケになっている場面だったことを記しておこう・・。

オトコって単純。ハイ、そうですww

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ガチ☆ボーイ

Img080306 出演:佐藤隆太、サエコ、向井理、仲里依紗、宮川大輔、泉谷しげる

監督:小泉徳宏

(2007年・東宝・120分)CS

内容:とある大学。安全第一を是とするプロレス研究会に五十嵐良一という学内屈指の優等生が入門してきた。せわしなくメモを取りながら練習に励む五十嵐だったが、肝心の段取りがまるで覚えられない。そんな中、商店街でのデビュー戦で案の定段取りを忘れた五十嵐は掟破りのガチンコファイトをしてしまい、一躍人気レスラーに。しかし、そんな五十嵐には深刻な秘密があった・・・。

評価★★★★/80点

K-1やボクシングは好きで見るけど、出来合いのストーリー性の中で繰り広げられる筋肉ムキムキのエンタメお遊戯ショーにしか見えないプロレスは面白くなくて燃えないから見ない。

そんな自分が初めてプロレスの試合に燃えた。熱く燃えまくった

司法試験に受かったくせにプロレスの段取りは覚えられなくてカンニングしてしまうというガリガリの五十嵐(佐藤隆太)のキャラがそれ自体コメディとして面白かっただけに、まさかその裏に、眠るとその日のことを全て忘れてしまう高次脳機能障害というシリアスな記憶障害ネタが隠れていたとは思いもよらず・・・。

プロレスのみならず朝起きてからの一分一秒を否が応にもガチンコ勝負せざるを得ない五十嵐の奮闘に、日々のんべんたらりんと生きてる自分が喝を入れられたような、そんな感動を味わうことができた作品だった。

また、記憶障害を単なるあざといダシネタに終わらせずに、真摯かつ妥協なく描いているという点でも、「タイヨウのうた」(2006)で難病ネタを扱いながら丁寧な筆致が印象的だった小泉徳宏監督の演出は今回も健在で好印象。

あとは、やっぱなんといっても佐藤隆太だな。深刻な秘密を覆い隠さんばかりの満面の笑顔は見ていてツラクなってくるほどだったけど、佐藤隆太の長所がうまくハマッたかんじで、ガチの熱演を見せてくれていたと思う。

頭ではなく、身体で覚えた記憶で生きる実感を取り戻そうとする五十嵐のガチンコの生きざま。

はたして自分は生きる実感をしっかり持っているのだろうか。それすらビミョーだ・・

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ウォーターボーイズ

Image01 出演:妻夫木聡、玉木宏、平山綾、眞鍋かをり、竹中直人、杉本哲太、谷啓、柄本明

監督:矢口史靖

(2001・東宝・91分)仙台第一東宝

内容:部員が男ひとりという唯野高校水泳部に突如やって来た美人女性教師佐久間先生。すると彼女目当てに男どもがこぞって入部してくるが、佐久間先生は満面の笑みで「シンクロやって文化祭で発表しまーす!」と言い出してしまう。結局それを聞いた男どもはこぞって退部していく。残ったのはたったの5人、、、はてさて。。

評価★★★☆/70点

理屈抜きで面白いです。てか理屈で見たらダメなんですね。

眞鍋かをり先生が「有象無象が寄り集まってるだけじゃない」とおっしゃってたように、こういうのは頭ん中カラッポにして見ないと。どっかのお笑い番組でも見てるかんじで見るのが正解。

要は映画じゃない。記号でしょこれって。さらに言えば、マンガでしょ。この映画でリアリティといったら柄本明くらいなもんだし(笑)。だって竹中直人が出てるっつうだけで予想はつくw

ただ、唯一許せないのは、妻夫木が最後躊躇すること。

お笑い番組で芸人さんが躊躇することなんて普通ないだろー。なのに何で恥ずかしがるんだよ。その後のシンクロ演技で綾ちゃんに堂々と迫ってるくせに。あそこでフツーの心理描写を持ってくるなっつーの。

けどなんだかんだ言ってこういう映画もたまにはイイよね。

2018年10月22日 (月)

夢のシネマパラダイス312番シアター:血ィ吸うたろか~・・

東京喰種 トーキョーグール

170691_04出演:窪田正孝、清水富美加、鈴木伸之、桜田ひより、佐々木希、村井国夫、蒼井優、大泉洋

監督:萩原健太郎

(2017年・松竹・119分)WOWOW

内容:人の姿をしながらも人肉を喰らう怪人・喰種(グール)が密かに人間社会の中で暮らしている東京。ある日、内気な大学生カネキは、喰種のリゼに襲われ重傷を負うも、直後に命を落としたリゼの臓器を移植されたことで半喰種になってしまう。人肉以外受け付けなくなり苦悩する彼は、やがて喰種が集まる喫茶店あんていくで働き始める。喰種である店長の芳村やアルバイトの女子高生トーカと交流を深めていく中、喰種の駆逐を目指す人間側の組織CCGの捜査官・亜門と真戸が現われ、戦いが激化していく・・・。

評価★★★/65点

原作マンガ推しのファンとしてはキャスト、映像ともに文句なしのクオリティで最低限のラインは難なくクリア。

しかし、大団円でバトルを繰り広げるカネキ(窪田正孝)と亜門(鈴木伸之)がそれぞれの立場で叫ぶ「この世界は間違っている!」というセリフがいまいちピンと響いてこないことに集約されるように、原作にほぼ忠実なアウトラインを敷きながら、なんでこんなに薄っぺらいんだろうw

と考えると、人間を捕食するグールに立ち向かう人間側ではなく、主人公がグール側に立つ視点で描くという、例えば「プレデター」でプレデター側から描くような異色作だけに、それを実写化するにはただでさえ説得力をもたせるのにハードルが上がっているはず。にもかかわらず、漫画をただなぞっただけの掘り下げのない描写力で、説明不足感は否めず・・。一見さんは赫子とクインケの違いなんて分かったんだろうかw

また、人間側がカネキの親友ヒデを除けばCCG捜査官の真戸(大泉洋)と亜門くらいしかいないのも問題。

特に前面に出る真戸が嗜虐性のある冷酷無比なキャラクターのため、人間側=悪の構図に誘導する演出がちょっと安易だったかなと。

その点でいえば、まともな捜査官の篠原や黒磐、またニシキがグールであることを知りながら付き合っている恋人の西野貴未あたりを出してもよかった気がする。

まぁ、ヴァンパイア映画「トワイライト」に出てくるベジタリアンな吸血鬼みたいな優しい設定がない分、感情移入させるのは難しかったとは思うけど、いやホント役者陣の頑張りにめちゃくちゃ救われた映画だったと思う。

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リンカーン/秘密の書

Poster出演:ベンジャミン・ウォーカー、ドミニク・クーパー、アンソニー・マッキー、メアリー・エリザベス・ウィンステッド、ルーファス・シーウェル

監督:ティムール・ベクマンベトフ

(2012年・アメリカ・105分)WOWOW

内容:第16代大統領エイブラハム・リンカーン。彼には知られざるもう一つ別の顔があった・・・。子供の頃に最愛の母をヴァンパイアに殺され、復讐を胸に誓っていたリンカーン。その後、青年となった彼はヴァンパイア・ハンターとしての修行を重ねていく。そしてヴァンパイアが奴隷制度を食糧供給源にしていることを知った彼は、政治家として奴隷解放を訴える一方、夜になると斧を手にしてヴァンパイアたちと戦うのだった・・・。

評価★★☆/50点

かの国はよほどヴァンパイアがお好きなのか、映画からTVドラマまで雨後のタケノコ状態だけど、ついに歴史上の偉人にまで手を伸ばしてしまった。しかもビミョーにつまらない

“剣はペンより強し”な国アメリカを揶揄したい気にもさせる展開だったけど、あんまりそういうことも意味がないレベルの映画だったなw

まぁ、リンカーンがヴァンパイアハンターというそもそもの設定からして興味を引かれないんだけどね・・・。

例えば、伊藤博文が怨霊退治するという映画が作られたら平将門とか菅原道真、崇徳上皇といった歴史上の大魔縁を登場させることもできるけど、リンカーンなんてアメリカ建国してから100年も経ってないうちに出てきたヒヨッコなわけで、アメリカの歴史の浅さがまんま映画の浅さに繋がっているかんじがした。

また、昼は高潔な大統領、夜は斧を振りかざすハンターというギャップも物語の肝になっておらず、ただ単にCG満載のB級アクションを撮りたいがための映画としかいいようがない。

まぁ、この監督のセンスはアクションにしか見出せないから仕方ないけど、はっきりいってリンカーンでやる必要性はなかったなww

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ブレイド

Blade01 出演:ウェズリー・スナイプス、スティーブン・ドーフ、クリス・クリストファーソン

監督:スティーブン・ノリントン

(1998年・アメリカ・120分)仙台フォーラム

内容:ヴァンパイアと人間との間に生まれたハーフのブレイドは、人間を脅かすヴァンパイアを抹殺するために闘うヴァンパイアハンターだった。彼は、母親を死に追いやった宿敵のヴァンパイア、フロストの世界征服を阻止するために立ち上がり、フロストのアジトである暗黒院に潜入する。

評価★★★/65点

情け容赦のない映像テクとすとんとツボにはまるギャグには、こ奴なかなかのセンスだなとホレボレしてしまうが、情け容赦のないプロットの丸投げを見せつけられるにつけ、こ奴は単なるおバカさんだなとちょっと残念に思ってしまうのだった。

まぁ、愛すべきおバカさんには違いないんだけどね。

このままおバカ街道を一路邁進していくのか、それとも・・・。

このての監督は一皮むけると大化けする可能性を秘めてるからね。その点では楽しみな監督なのだけど、でもやっぱ限りなくおバカ街道一直線タイプなんだろうなぁ。。

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ブレイド2(2002年・アメリカ・117分)MOVIX仙台

 監督:ギレルモ・デル・トロ

 出演:ウェズリー・スナイプス、クリス・クリストファーソン、レオノア・ヴァレラ、ロン・パールマン、ノーマン・リーダス

 内容:ブレイドは、父親代わりのウィスラーを救出し、吸血鬼達を追い詰める。そんなブレイドのもとにヴァンパイア族がやって来て、凶悪な吸血鬼リーパーズを倒すことを持ちかけてくるが・・・。

評価★★★★/75点

“孤高も度を超すと異様に映る。。”

仲間、友情、絆、信頼といった横のつながりなんかクソ喰らえだとばかりに、バッサバッサと斬り捨てていくという文字通りブレイドの孤高さがクローズアップされていく展開は、まぁ見ていて飽きはしない。

しかし見終わった後、まるでヴァンパイアが一瞬で塵になって消滅するかのごとくフツーに何も残らないのはある意味スゴイ。。

人間を餌食にする当のヴァンパイアが餌食にされてしまうという今回の設定は面白かったけど、ていうか相棒のスカッドの裏切りって必要だったかぁ?

あと、ブラッド・パック軍団のニッサ以外の誰かと親交を深めるくらいした方が味わいが出て良かったんじゃないかいブレイドさん・・。

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ブレイド3(2004年・アメリカ・114分)WOWOW

 監督:デビッド・S・ゴイヤー

 出演:ウェズリー・スナイプス、クリス・クリストファーソン、ドミニク・パーセル、ジェシカ・ビール

 内容:ブレイドは、人間のヴァンパイアハンター集団“ナイトウォーカー”から、ヴァンパイアの始祖ドレイク(=ドラキュラ)が4千年の眠りから目覚めたという衝撃の事実を聞かされる。ブレイドは最強の敵ドラキュラとの戦いに挑むが・・・。

評価★★★/60点

“ブレイドの角刈りよりも何よりもハンニバル・キングの不死身ぶりの方に度肝を抜かれる”

どうやっても死なないよねあの男(笑)。

しかし、この映画がイマイチなのは、やはり吸血鬼の始祖ドラキュラ・ドレイクの容姿にあることは否めず、、4000年の眠りから目を覚ました一族の始祖とは到底見えない。

しかも発見されたのがイラクだろ?イラクで何であんなゴツイ野郎が眠ってんだよ(笑)。

4000年未来からやって来たというなら分からんでもないが。。

まぁ紅一点ジェシカ・ビールのLOTRのレゴラスばりの弓使いに救われたかんじかな。

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アンダーワールド(2003年・アメリカ・121分)DVD

 監督:レン・ワイズマン

 出演:ケイト・ベッキンセール、スコット・スピードマン、シェーン・ブローリー、マイケル・シーン

 内容:ヴァンパイア族と狼男族(ライカン)の戦いが続く世界。ライカンがある目的のために人間の医師マイケルを執拗に追っていることを知ったヴァンパイア族の女戦士セリーンは、調査を開始するがなぜかヴァンパイア族の頭首クレイヴンに妨害される。しかしこのことが両種族を壮絶な決戦へと突入させていく・・・。

評価★★★/60点

吸血鬼と狼男の何十世紀にもわたる歴史的背景を盛り込み、壮大な世界観をなんとか醸し出そうとはしているが、やってることはただのヤクザの抗争・・。

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ツインズ・エフェクト(2003年・香港・107分)WOWOW

 監督:ダンテ・ラム

 出演:ジリアン・チョン、シャーリーン・チョイ、イーキン・チェン、カレン・モク、ジャッキー・チェン

 内容:香港の人気アイドルユニット“Twins”をフィーチャーしたアクション映画。バンパイアハンターのリーヴは、最大の敵デコテス公爵との対決で恋人でもあったパートナーを殺されてしまう。世界征服をもくろむデコテスがバンパイア界の聖典を我が物にしようと暗躍する中、リーヴは見習いハンターのジプシーを新パートナーに迎える。一方リーヴの妹ヘレンは兄の宿敵であるバンパイアの王子と恋に落ちてしまい・・・。

評価★★★☆/70点

“ジャッキーのNGシーンで締めるような映画だったかというと大いに疑問だが、楽しく見れればそれで良し。”

ヘレンはフジテレビのアヤパンに似てると思った。

と、それにしても映画序盤に出てくるヘレンとジプシーのクマのぬいぐるみ大争奪戦につづく物干し竿バトルは、アイドルユニットであるツインズを前面に出した名シーンだったと思う。

なんといっても彼女たちの本気モードアクションと彼女たちの可愛さとのアンバランスが非常にイイし、爽快感もぐんとアップ。

だてにドニー・イェンをアクション監督に据えてるわけじゃないんだぜというかんじ。

香港映画特有の甘さはあるものの、総じて楽しく見られる一品でありました。おセンチな吸血鬼てのも面白いね。

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ヴァン・ヘルシング(2004年・アメリカ・132分)MOVIX仙台

 監督・脚本:スティーブン・ソマーズ

 出演:ヒュー・ジャックマン、ケイト・ベッキンセール、リチャード・ロクスバーグ

 内容:19世紀ヨーロッパ。伝説のモンスターハンター、ヴァン・ヘルシングはバチカンの密命を受け、修道僧カールとともにトランシルバニアへ向かう。目的は、邪悪なパワーで世界征服を企むドラキュラ伯爵を抹殺すること。やがて彼らは、代々ドラキュラと闘いつづけてきたヴァレリアス一族の末裔、アナ王女と出会うが・・・。

評価★★★/60点

マンネリ街道 みんなで歩けば 恐くないってか。しかも歩いてるのはモンスター軍団。。

まぁ、オールスター感謝祭を見てとにかく楽しむしかないっていうかんじかな・・。

2017年10月17日 (火)

夢のシネマパラダイス528番シアター:ダンケルク~戦争がもたらす運命~

ダンケルク

Dunkirk_visual出演:フィオン・ホワイトヘッド、トム・グリーン=カーニー、ハリー・スタイルズ、ケネス・ブラナー、キリアン・マーフィ、マーク・ライランス、トム・ハーディ

監督・脚本:クリストファー・ノーラン

(2017年・英/米/仏・106分)東宝シネマズ日本橋

内容:第二次世界大戦が激化する1940年、フランス北端の港町ダンケルク。ドイツ軍に圧倒された英仏連合軍40万の兵士たちは、ドーバー海峡を望むこの地に追い詰められた。逃げ場のない状況下、対岸のイギリスでは軍艦だけでなく民間船まで動員する救出作戦を決行する・・・。

評価★★★☆/70点 

つくづくこの人は一筋縄ではいかない監督さんなんだなぁと痛感。。

そのフィルモグラフィーにおいて、時間軸の解体と再構成を生業とし、「インセプション」や「インターステラー」に至っては空間軸をも自由自在に操ることで時空超越映画を極めたといっても過言ではないクリストファー・ノーラン。

その中で、次なるステージに選んだのが古典的な戦争映画というのは意外だったけど、まさかここでも飽きもせずに時制トリックを使ってくるとは予想外だった。

しかして、物語性を徹底的に排除し匿名性を強調することで、あるのは生か死かという究極の運命しかない戦争の過酷さを捉えることには成功しているものの、今までの作品のような時制の交錯が生み出すカタルシスがほとんどないという点で今回の話法は正直イマイチだったかな・・。

まぁ、CGデジタル全力拒否の本物にこだわった映像力と相殺してこの点数なので、見応えは十二分にあったことは確かだけど。

ただ、これも「プライベート・ライアン」冒頭20分の衝撃を超えるには及ばず・・。

究極の映像体験という宣伝文句ほどの新味は感じられなかったし、それ以前に40万もの兵士を助けるのに救出に向かう船がチラホラとしか見えなかったり、海岸線に埋めつくされてる兵士たちが次のシーンではチラホラとしか見えなかったり、まるでフィラデルフィアエクスペリメントな神隠し状態に少し冷めちゃったところもw

ただ、どんな形であれ生を肯定するラストは良かった。

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男たちの大和 YAMATO(2005年・東映・145分)2005/12/29・MOVIX仙台

 監督:佐藤純彌

 出演:反町隆史、中村獅童、鈴木京香、松山ケンイチ、仲代達矢

 内容:昭和20年4月、乗組員3千余名を乗せた世界最大級を誇る戦艦大和は沖縄へと向かう途中、米軍による集中爆撃により東シナ海の深海へと沈んでいった・・・。2005年4月、鹿児島県枕崎の漁港。老漁師の神尾のもとを内田真貴子と名乗る女性が訪ね、60年前に沈んだ戦艦大和が眠る場所まで船を出してほしいと懇願する。彼女が大和の乗組員・内田二兵曹の娘と知った神尾は、漁船を目的の場所へと走らせるのだった。。

評価★★/40点

“良くも悪くも角川映画の悪癖から抜け出せず・・・。”

唯一、戦艦大和を派手にブッ壊したいという意気込みだけは伝わってきたが、大雑把にすぎるツギハギな物語を安っぽい人情でなんとかくっつけるさまは、もはや過去の遺物としかみれない。

戦争でもまるで意味のない特攻のごとく捨てられ、映画でも捨て駒のように捨てられ、、二重の意味で大和が捨てられてしまった気がしてあまり良い気分になれない。

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戦場のメリークリスマス

075202 出演:デイヴィッド・ボウイ、坂本龍一、トム・コンティ、ビートたけし、ジョニー大倉

監督・脚本:大島渚

(1983年・日/英・123分)NHK-BS

評価★★/45点

 

内容:1942年、ジャワ島の日本軍捕虜収容所の所長ヨノイ大尉は、バタビアの軍法会議にかけられていた英国陸軍少佐セリアズになぜか心惹かれるものを感じ、自分の収容所へ連れてくる。セリアズを特別扱いするヨノイのことを、軍曹のハラはいぶかしがるが、そういうハラも日本語を流暢に操る英軍中佐ローレンスと親しくしていた。しかし、セリアズは捕虜たちの待遇改善を訴えて、ヨノイに反抗を始める。。

“黒澤明が言うところの、映画が映画でしか表現できない一瞬を獲得したときに「映画になる」という言い方がその通りであるならば、この作品はれっきとした「映画」だろう。だが、しかし・・・”

だが、しかし、、その一瞬一瞬が、狂気や殺気や色気がとめどなく錯綜する物語の中で、また日本人の西欧に対する倒錯した感情がえぐり出されるこの作品の大きな流れの中で見る者にしっかりと語りかけてこなければ何も意味がないと思う。

この作品は、この点において絶対的に弱い。はっきりいって映画としてのレベルは相当に低いと言わざるをえないと思う。

「映画になった」瞬間は数多くあれど、それらはまるでまばらに明滅する蛍の光のようにはかなく消え入ってしまう。

たしかにそれはそれで美しいのだが、しかし後に残るのは不毛な青白き闇の空虚と坂本龍一の音楽のみ。

はたしてその空虚は、日本人と西欧との間に横たわる観念や思想の違いからくる決定的なディスコミュニケーションの空虚なのか、それともこの作品の力量不足なのか・・・。

いずれにしろ、自分はその空虚に耐え切ることができるだけの魅力をとうとうこの映画から感じ取ることができなかったようだ。

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フルメタル・ジャケット

Fullmetaljacket 出演:マシュー・モディン、アダム・ボールドウィン、ヴィンセント・ドノフリオ

監督:スタンリー・キューブリック

(1987年・アメリカ・116分)NHK-BS

評価★★★★/80点

 

内容:サウスカロライナの海兵隊新兵訓練基地では、ベトナムの前線に向けて、8週間に及ぶ地獄の特訓が始まっていた。鬼教官ハートマンのしごきにより、精神に異常を来たしたパイルは、ハートマンを射殺して自殺する。1968年、報道隊員となったジョーカーは、ベトナム最前線のフエ市で訓練仲間と再会し、百戦錬磨の兵士たちと銃火の真っ只中で行動を共にするが・・・。

“悲しみが皆無な戦争映画というのは後にも先にもおそらくこれ1本きりだろう。見ている最中ノドがカラカラになってくる・・・。”

今までこの手の戦争映画には、小さじ1杯ほどでも道徳や正義や倫理が少なからず織り込まれていたし、それらが麻痺し喪失していくのは戦争の狂気がそうさせるのだという言説が常に描かれてきた。

そしてそこに通底するものは、悲劇であり悲しみであった。

しかし、キューブリックによる本作は、それらの要素や言説をことごとく徹底的に排除し、戦争の狂気を作り出す張本人は人間なのだというごくごく当たり前のことを胸くそが悪くなるくらいまで徹底的にえぐり出していく。

特に若者たちを虫ケラのごとき殺人兵器に変えていく新兵訓練基地での非情な地獄の日々を描いた前半部分は強烈だ。

発狂して自殺する新兵パイル(ヴィンセント・ドノフリオ)の狂った目が脳裏に焼きついて離れない・・。

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グローリー(1989年・アメリカ・122分)WOWOW

 監督:エドワード・ズウィック

 出演:マシュー・ブロデリック、デンゼル・ワシントン、モーガン・フリーマン

 内容:南北戦争期、アメリカ史上初めて組織された北軍黒人部隊。彼らは南部からの脱走奴隷だったが、指揮官に着任した若き白人大佐ショーは彼らの誇りと熱気を感じる。そして、雌雄を決するフォートワグナーの戦いに臨むのだった・・・。

評価★★★/65点

D・ワシントン&モーガン・フリーマンの魂を震わす熱演がなかったら、若きマシューが人間を撃ち殺したくてウズウズしまくっている若い衆をなんとかなだめすかすただのナヨナヨ優男にしか見えないところだった。

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ジョニーは戦場へ行った(1971年・アメリカ・112分)NHK-BS

 監督・脚本:ダルトン・トランボ

 出演:ティモシー・ボトムズ、キャシー・フィールズ、ドナルド・サザーランド

 内容:青年兵士のジョーは、耳も目もあごも失い、手足ももがれて野戦病院のベッドに横たわっていた。すでに彼の肉体はただの物体の塊と化していたが、ジョーの意識は少しずつ自分の今の有り様を知覚していく。やがてモールス信号を思い出したジョーは、首を振ることで軍医や看護婦たちに死なせてくれと訴えるのだった・・・。第一次世界大戦を題材にした反戦的な内容で、1938年の発表当時、発禁処分となったダルトン・トランボの小説を、赤狩りによるハリウッド追放を乗り越えて自らが監督した反戦映画。

評価★★★☆/70点

“戦慄のホラー無間地獄体験”

自ら祖国のために勇んで戦争へ志願していった代償。

顔中が吹き飛ばされ、耳も聞こえず口もきけず目も見えず、両手両足、視覚・触覚すべての感覚を失ってしまった、胸と下腹部と陥没した頭だけの生ける肉の塊。

江戸川乱歩の「芋虫」と似たようなかんじなのだが、おどろおどろしさに包まれた怪奇に満ちたホラーに、まるで悪夢の中で彷徨うような得体の知れない胸クソ悪さに支配されてしまう。

反戦とか戦争批判うんぬんというよりも、はっきりいってホラーとしか見れないよねこれは。。

戦争による祖国のための名誉で甘美な死なんてものはないんだ、そんなのはまやかしなんだ!ということは十二分に伝わってくることは確かだけど、それ以上に生々しさとかおどろおどろしさ、まがまがしさの方が先に立って読後感は非常に悪いし、なんか吐きそう・・・

ホント、S...O...S...Help..me..

地獄です、これが本当の・・。

戦争やってイイことなんてひとっつもないんだ。得するのはお偉方だけなのさ。

そういえば、9.11テロを題材に11人の監督がそれぞれの視点で撮ったオムニバス映画「セプテンバー11」で今村昌平は、人間であることをやめて“ヘビ”になってしまった復員兵の姿を映し出したのが思い出される。

戦争の後遺症は人間を人間たらしめる要素さえ殺してしまう、、なんと恐ろしいことなのだろうか。

ジョニーは想像力まで封印されてしまった、その無間地獄に背筋が思わず震えてしまう・・。

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