お気に入り

最近のトラックバック

2022年1月 1日 (土)

夢のシネマパラダイス613番シアター:スターウォーズ・アンソロジー

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー

168782_03出演:フェリシティ・ジョーンズ、ディエゴ・ルナ、ベン・メンデルソーン、ドニー・イェン、マッツ・ミケルセン、フォレスト・ウィテカー

監督:ギャレス・エドワーズ

(2016年・アメリカ・134分)フォーラム盛岡

内容:窃盗暴行ひとりで生き抜くためには何でもしてきたアウトローの女性ジン・アーソ。ある日、反乱軍が彼女に接触してくる。それは、ダース・ベイダー擁する帝国軍が開発中の究極兵器デススターの設計に、かつて帝国軍に拉致された彼女の父親ゲイレンが関わっているということだった。しかも、ゲイレンはデススターにとある致命的欠陥を仕込んだのだという。しかし、その工作を実らせデススターを破壊するには設計図を奪取する必要があった。そこでジンは、ならず者ばかりで構成された極秘チーム“ローグ・ワン”の一員となり決死のミッションに挑む・・・。

評価★★★★/80点

マーティン・スコセッシの「沈黙ーサイレンスー」のレビューで、英雄を描いた大河ドラマもいいけど歴史から抹殺された弱者たちを描いた歴史ドラマをこそ見たいと書いた。

まさかスターウォーズサーガでそれを目の当たりにすることになるとは思いもよらなかった。

しかも、「七人の侍」でも「プライベート・ライアン」でも生き証人くらいは残したのに、それすらしない容赦ない展開、そしてその絶望が希望に昇華する結末に激しく心揺さぶられた。

こんな“ハッピーエンド”映画は今まで見たことがない。

しかし、それもこれもエピソード4(1977)でのルークによるデススター破壊作戦の成功あってのこそで、それがなければこんなのテストクリーニングでボツになっててもおかしくないくらいのただの悲劇映画だw

やはりこれはスターウォーズ40年の歴史がなせる業なのだろう。

あと、今回の映画で最も印象に残ったのが、惑星破壊兵器デススターの圧倒的存在感。

エピソード4でデススターが惑星オルデランを破壊した場面は、まるで風船が割れるように一瞬でこっぱみじんになるだけだった。

しかし、今回ジェダの聖都を消滅させるシーンは、爆発の衝撃波が惑星全体に広がっていく上空俯瞰図や巨大な火炎が宇宙空間にまで噴き上がる様子など、リアリティあふれるスケール感で描かれているし、何よりゾッとしたのが大団円で惑星スカリフの水平線の彼方にうっすらと浮かぶ真昼の月のようなデススターが、ゆっくりとこちらに照準を向ける風景の絶望感w

子供時分にはあまり感じることができなかったデススターの恐ろしさをまざまざと実感できただけでもこの映画を見る価値はあった。

でも本当の恐怖は、その後のダース・ベイダー降臨というのが心憎い。

難点を挙げれば、ジンの育ての親ソウ・ゲレラの心の繋がりがいまいちよく分からず消化不良だったことだけど、1作で終わらせるにはもったいないほど“名もなき戦士”の物語をまだまだ見たいと思わせられた。

そうだ!エピソード4見よう!

 -------------------------

ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー

171407_03出演:オールデン・エアレンライク、ウディ・ハレルソン、エミリア・クラーク、ドナルド・グローヴァー、タンディ・ニュートン、ポール・ベタニー

監督:ロン・ハワード

(2018年・アメリカ・135分)WOWOW

内容:銀河帝国支配の時代。辺境の惑星でストリートチルドレンとして路上生活を送ってきた青年ハンは、幼馴染キーラと故郷からの脱出を図るが、彼女だけが置き去りになってしまう。パイロットになってキーラを救い出すため帝国軍に入隊するも、歩兵として泥沼の戦場に駆り出される日々。そんな中、上官のベケットが実は兵士ではなく盗賊であることに気づき、その一団に加わることになるが・・・。

評価★★★/60点

ハン・ソロの名前の由来、チューバッカとの出会い、ミレニアムファルコン号を手に入れた経緯など最低限の押さえどころはしっかり描きながらも、基本自由気ままにSF西部劇として仕立てあげられたかんじ。

ただ、ローグ・ワンがスターウォーズサーガとかなりリンクしていたことを踏まえれば、今回の脱線ぶりは個人的にはややマイナス。

レイアのレの字でも出てくればグワッと前のめりになって見れたものを(笑)。ダースモールじゃなぁ・・。

あるいは腹にイチモツあるようなキャラクターの裏切り裏切られという展開にマカロニウエスタンの傑作「続夕陽のガンマン」を思い浮かべたんだけど、ハン・ソロがイーストウッドでベケットがリー・ヴァン・クリーフとすると、品がないけど憎めない愛すべき悪役イーライ・ウォラックが不在なんだよね。ランド・カルリジアンはそういうタマじゃないし。

そう考えると、ハン・ソロと行動を共にする強烈なキャラをもう1人出してもよかった気が。。で最後は三つ巴の決闘とwそこまで徹底的にやってくれればプラスに転じたかも。

まぁ、とはいえキーラの謎もあるし続編見たいかと言われれば~、、見るしかないっしょww

2021年1月 4日 (月)

夢のシネマパラダイス557番シアター:嫌われ松子の一生

リップヴァンウィンクルの花嫁

20160407075011出演:黒木華、Cocco、地曳豪、和田聡宏、原日出子、毬谷友子、金田明夫、りりぃ、綾野剛

監督・脚本:岩井俊二

(2016年・東映・180分)盛岡フォーラム

内容:内気な性格の派遣教師・皆川七海は、ネットで出会った鶴岡鉄也とトントン拍子で結婚することになった。さらに、親族友人が少ないので、結婚式の出席者をこれまたネットで見つけた便利屋の安室に依頼して済ませる。ところが、新婚早々に旦那の浮気が発覚。義母ともめた末に七海の方が家を追い出されてしまう。途方に暮れた彼女は、安室に頼って住み込みのバイトを斡旋してもらうのだが・・・。

評価★★★★/80点

黒木華はまことに稀有な女優さんだ。

21世紀の世にあって誰もが持ちえない昭和の銀幕女優のような古風でおっとりしたオーラをまとっているからだ。

昭和の銀幕女優というのは、切符の買い方さえ知らないような浮世離れした部分があるんだけど、黒木華は池脇千鶴や蒼井優、満島ひかりのような現実社会に真正面からぶつかり合っていく本格派女優の系譜に連なりながら、と同時に世渡りしていくには純粋に過ぎるのではないかというような破格の品の良さも持ち合わせている。

地に足が着いていなさそうに見えて実は肝の据わった芯の強さを持っている、その真逆のベクトルが相殺し合うことなく同居しているところが唯一無二の女優たる所以なのだといえる。それゆえ彼女のキャラクターが映画の格を一段上げているというか、この人が出ていれば大丈夫という安心感を与えてくれる。

その点で今回の映画は主演ということもあって、黒木華の女優としての両面が余すところなく映し出されている。

特段主体性もなくなんとなく生きてきた岩手出身の主人公(自分も岩手出身なので通じるところがあるw)が人生のレールから脱線し、流されるように転落していくんだけど、そこに悲壮感が感じられないのが黒木華らしくて面白いんだよね。

そしてこの黒木華にこれまた特異体質のCoccoを組み合わせたのが白眉で、後半は現実感のない完全なおとぎ話に昇華されている。

スマホでしか繋がれない希薄な現代の虚構世界をたゆたうお嬢さんのメルヘンチックな冒険譚は、まるでスーパーマリオで上に乗った途端に下へ落ちていくブロックをふわりふわりと飛び跳ねていくピーチ姫を想起させる。

しかし、Coccoは何なんだあれは(笑)。素なのか演技なのか、もう完全に何かが憑依しているかんじで、非日常にグイッと持っていかれて少し怖くなっちゃうくらいだった。

P.S.結婚するアテなんて当にあきらめているけど、万に一つ結婚式なんてのがあったら、自分も呼ぶ知り合いがいないことに気づいた・・w

 -----------------------

嫌われ松子の一生

144702_01

出演:中谷美紀、瑛太、伊勢谷友介、香川照之、市川実日子、柄本明、木村カエラ、宮藤官九郎、柴咲コウ、片平なぎさ、ゴリ、谷原章介、劇団ひとり、BONNIE PINK、土屋アンナ

監督・脚本:中島哲也

(2006年・東宝・130分)仙台フォーラム

評価★★★★/80点

内容:昭和22年、福岡県に生まれた川尻松子。お姫様のような人生を夢見る明るい少女だった松子だったが、愛情の唯一の対象だった父親は、病弱の妹ばかりを可愛がっていた。やがて20代になって中学校の教師になった松子だったが、万引きをした教え子の罪をかぶりクビに。その後、愛を求めて男性遍歴を重ねるたびにますます不幸になっていくのだった。そしていつしかソープ嬢に身を落とし、果ては同棲中のヒモを殺害するまでに至ってしまう・・・。

“いとしいシト、、そしていとしいエイガ”

川尻松子、享年53歳。

家族からは絶縁をつきつけられ、中学教師をクビになるわ、ソープ嬢になるわ、ヒモを殺害して刑務所に入っちゃうわ、挙句のはてに中学生にバットでボコられて野っ原でおっ死んじゃうわと、傍から見れば悲惨な人生を送った女。

そして彼女の人生についてまわる最悪の男運。

病弱な妹にばかり向けられる父親の愛を大人になってからも追い求め続けた松子の周りに引き寄せられてくる男どもは、暴力男やヤクザ男ばかり。しかし、殴られ蹴飛ばされ裏切られ捨てられても、一人ぼっちになるよりはマシだからと男を追っかけ続ける悲しい性を背負った女。

そして片平なぎさが出てくる火スペの断崖絶壁をエイヤーッと一気に飛び降りるかのごとき後先考えない類まれな決断力(!?)がことごとく裏目に出てしまう哀しい運命を背負った女。

そう、彼女は人生の岐路でことごとく昇りのエスカレーターに乗ることができない、そういうタチらしいのだ。

ある意味確信犯的にいつも下りのエスカレーターに飛び乗ってしまう運命の松子は、しかし下りのエスカレーターに抗うように懸命に駆け上がろうと上を向いてひたすら走りつづける。下を向いて後ろを振り返ったら流されるまま絶望という名のドン底に転落していくだけという中で、松子はスクワットを欠かさない見上げたド根性と決して後ろを振り返らないひたむきさと一途さで突き進む。

しかし、その甲斐もむなしくズッコケてしまう松子は失意のドン底にうつぶせのままズルズルと落ちていき、「これで人生が終わったと思いました。」とあきらめかけ最悪自殺まで考えたりもするのだが、しかし次なる夢を見つけると、スックと立ち上がり、また下りのエスカレーターを必死こいて駆け上がろうとするのだ。

その懸命な姿にはある種のもの悲しさと哀愁だけではない滑稽さと可笑しみが漂っている。

それが人間的な魅力に包まれた松子として見る者を魅了し、挙句のはてには感動すら覚えさせてしまったりするのだ・・・。

しかし、そんな必死こいて走りつづけてきた松子もついに走ることをハタと止め後ろを振り向き、下りのエスカレーターに下を向きながら従順に流されていく時を迎える。

中学校のときの元教え子と同棲していた松子が、4年間服役した彼の出所の日に堀の外に迎えに行くと、なななんとブン殴られてKOを喫し、逃げられてしまった、その時だ。文字通りドン底に落ちた松子は駆け上がることをやめ、ゴミ溜めのようなボロ部屋で食いものをむさぼり食い、酒をあおり、寝て起きるだけのなすがままの生活を始める。

そして、十数年にわたる引きこもりは松子を野ブタのような姿形に変えてしまう。。

ここで唐突に出てくる光ゲンジの内海くんとやらの追っかけにはつい爆笑してしまうが、それはさておき七転び八起きの松子は長い雌伏のときを経てもう一度美容師になる夢を見つけ、さあ、また下りのエスカレーターを駆け上がるゾーーッ(あのブヨブヨの体で・・)と決意を新たにし、2階のアパートの部屋を出て階段を降り公園に捨ててしまった名刺を拾いに行く、、そして前のめりにブッ倒れてそのまま起き上がることはなかった松子・・・。

いつもならそこでスックと立ち上がって夢に向かって走り出す松子は、夢の切符をしっかり握りしめたまま長い眠りにつくのだった。

はたから見れば、悲惨な転落人生には違いない。

しかし、そこには愛の血潮に染まって幸せをつかむために駆け上がっていこうとする人間臭さにまみれた女の、懸命に必死こいて生きる剥き出しの姿があった。

だが、なんといってもこの物語をミュージカル調で描いてしまおうという中島哲也監督のイマジネーションにも度肝を抜かれてしまう。おそらく松子と同じくエイヤーーッと一気に飛び降りるかのごとき後先考えない類まれな決断力と見上げたド根性を持っているんだろうね。

正直自分の頭の引き出しの中にはミュージカルという道具立ては全くなかったからなぁ・・。

普通この手の人間ドラマを描くなら、例えば荒戸源次郎の「赤目四十八瀧心中未遂」(2003)のような幻想とエロの世界に彼岸(あの世)の入口がポッカリと穴を開けている異界ワールド(そこに堕ちていく男女)だとか、例えミュージカル調でいくにしても、この悲惨さと暗さはラース・フォン・トリアーの「ダンサー・イン・ザ・ダーク」(2000)だろう。

しかし、この中島哲也という男は「アメリ」(2001)のファンタジー調で描いちゃうんだよなぁ。。

はっきりいって好きです(笑)。こういう人間を肯定的に見ることができる人って好き。ラース・フォン・トリアーとは真逆なんだねたぶん。

そしてミュージカルも、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」におけるミュージカルが主人公セルマの現実逃避の道具にしかすぎなかったのに対し、本作では映画のテンポとリズムを高める変速ギアのような役割も果たしていて良かったし、何より松子がコミカルに歌い踊る姿は最高に楽しかった。BONNIE PINKの“LOVE IS BUBBLE”とかAIの“What Is A Life”も最高だったし。

下りのエスカレーターを必死こいて駆け上がる姿の滑稽さと可笑しみを音楽と歌で花いっぱい幸せいっぱいに歌い踊って表現する。

なんて愛おしいんだ。

川尻松子は自分にとっての“いとしいシト”(byゴラム)になっちゃったかも・・・。そしてこの映画が自分にとって愛しいエイガになっちゃったかもしれないぞ。

さてさて、最後はこの言葉で締めくくろう。

1986年アパルトヘイト吹き荒れる南アフリカの黒人居住区で起こった学生運動を女子高生の視点で描いたミュージカル映画「サラフィナ」(1992)のマイレビューから。

人は泣き、笑い、叫び、そして歌うんだ!!ジャーーン♪

 -----------------------

鬼龍院花子の生涯(1982年・東映・146分)CS

 監督:五社英雄

 出演:仲代達矢、夏目雅子、高杉かほり、岩下志麻、夏木マリ、仙道敦子、山本圭、丹波哲郎、夏八木勲

 内容:土佐の侠客・鬼政こと鬼龍院政五郎の奔放な半生を、養女・松恵の目を通して描いた任侠ロマン。闘犬場でのいざこざから宿敵・末長の娘つるを強奪した鬼政は、彼女が産んだ花子を溺愛するようになる。一方、養女・松恵は女学校を出て小学校教師となり、労働争議を支援する高校教師・田辺と結婚、高知を出て大阪で暮らし始めるが・・・。

評価★★★/60点

“なめられたいぜよっ!”

いろんな意味でww

しかし、花子のブスっぷりは度を越しすぎ!あれはヒドイだろ(笑)。

仙道敦子-夏目雅子の松恵役は良かったし、ふくよかなオッパイには目を奪われっぱなしだったし(まさか湯婆婆のを見せられるとは・・)、それらを全て呑みこむほどの圧巻の演技を見せた仲代達矢もスゴかったけど、花子の捨て駒っぷりだけはいかんともしがたかったな。

まぁ、哀れさを出すには格好のキャスティングだったのかもしれないけど・・。

まぁでも、五社映画って濃ゆすぎてあまり好きじゃないんだけど、薄幸の夏目雅子のおかげもあってこれは最後まで見れますた。。

2021年1月 3日 (日)

夢のシネマパラダイス383番シアター:ザッツ超能力!

LOGAN/ローガン

Jp20cs_logan_poster_0da31b6c出演:ヒュー・ジャックマン、パトリック・スチュワート、ボイド・ハルブルック、スティーブン・マーチャント

監督:ジェームズ・マンゴールド

(2017年・アメリカ・138分)WOWOW

内容:ミュータントの能力を奪う遺伝子組み換え作物によりミュータントが絶滅の淵に追いやられている2029年。ローガンも例外ではなく、年老いたプロフェッサーXの面倒を見ながらリムジンの運転手としてメキシコ国境近くでひっそりと暮らしていた。そんなある日、ガブリエラという女性が現われ、謎の少女ローラをノースダコタまで送り届けてほしいと頼まれるのだが・・・。

評価★★★★/75点

漫画ゴールデンカムイで兵士がヒグマの一撃によって顔をベロンと剝がされるシーンを見て、バイオレンスの残忍さにおいてベアクロ―に勝るものは無いなと、子供時分ウォーズマンにトラウマを抱えた自分は戦慄を覚えたものだが、その点で今回の映画は、レーティング規制が入るのもお構いなくズタズタに切り裂くシーンを手加減なしに描くわ、少女に殺戮をやらせるわ、スカッとを通り越してグロさが際立つカギ爪の狂暴性にタジタジ・・。

しかし、痛覚を刺激しまくる野性アクションが、それを行使する側の心にも傷を負わせていく、その痛みが伝わってくる作りになっていて、結果非常に見応えのある作品になっていたと思う。

善悪関係なく人を殺める者は同じ穴のムジナという基本思想およびキャラクター設定と内面描写がしっかりしていたゆえんであろう。

その中でまるで死に場所を求めて彷徨うかのようなローガンの疲弊していく姿は見ていて切なくなったが、これは「シェーン」というよりは老イーストウッドが最後の西部劇と銘打って暴力のあり方を描いた「許されざる者」の方に近いだろう。

しかし、ヒーローの誕生を描いた映画は数あれど、ヒーローの最期を描いた作品は稀有で、それもそのはず文字通りの終焉なわけだからよほどの覚悟がなければダメなはず。

今回その重みがしっかり感じ取れたという点で心に残る印象深い作品になっていたのではないだろうか。

 ----------------------

X-MEN:アポカリプス

O0314046813888471784出演:ジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー、ジェニファー・ローレンス、オスカー・アイザック、ニコラス・ホルト、ローズ・バーン、ヒュー・ジャックマン

監督:ブライアン・シンガー

(2016年・アメリカ・144分)WOWOW

内容:紀元前3600年、エジプト。最古のミュータントである“アポカリプス”は、4人の騎士を従え神として世界に君臨していた。しかし、新しい肉体へ魂を移す儀式の最中に反乱が起こり、崩壊したピラミッドとともに地中深くに封印された。そして1983年。プロフェッサーX・チャールズは若きミュータントの教育に努め、人間との共存を図っていた。一方、マグニートー・エリックは身を隠して妻子とともにひっそりと暮らしていた。そんな中、アポカリプスが長き眠りから復活する・・・。

評価★★★/65点

自分の1番好きな漫画はワンピースなのだけど、周りでは連載20年の間に卒業していった人もいる。

その理由で多いのが、キャラクターが多すぎてわけが分からなくなったというのがあって、一度離れてたけどまた読もうかなという人でも途中下車しちゃうとやっぱもう無理ってなるんだよね。

で、そういう奴にかぎってストーリーもグダグダしてきてツマンナイよねとか平気で言う。なので、こっちとしては一生懸命キャラの相関関係とか説明してワンピースの面白さを力説するんだけど、その努力が実ったことは一度もない。そのたびに、グダグダどころか20年経っても面白さが上げ潮状態の漫画なんて他にはないですからー!と自分に言い聞かせるのだった。。

がしかし、同じく約20年に渡って続くX-MENシリーズにおいて、自分は彼らと全く同じことをやってしまっていることに気づいた(笑)。キャラクター多すぎてわけ分かんねーよ!って。

ていうかこのシリーズに関しては毎回同じ感想しか抱いていないw

特に今回はプロフェッサーXが半分くらい拘束状態、マグニートーも棒立ち状態で、その他大勢の方が前面に出てくるので、それぞれのキャラクターが過去作にどう繋がっていくのか、また前作で歴史改変されたことでキャラクターにどのような変化があったのかが、正直言ってコアなファンじゃないと分からないのはツライところ。。

漫画でいえば2~3年周期で連載再開ってことと同じだから、ハンター×ハンターみたいなもんでしょ。だとすると、やっぱ記憶の糸をたどるのが難しい、って言い訳してみる。。

いやでも今回はホント、ストーリーをただ追いするだけで、何の旨味もなく終わっちゃったかんじ。真剣に1作目から見直してみるか、ってこれも毎回言ってるなww

 -----------------------

X-MEN:フューチャー&パスト

20140602214353出演:ヒュー・ジャックマン、ジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー、ジェニファー・ローレンス、ハル・ベリー、ニコラス・ホルト、エレン・ペイジ、イアン・マッケラン、パトリック・スチュワート

監督:ブライアン・シンガー

(2014年・アメリカ・132分)WOWOW

内容:2023年、対ミュータント兵器“センチネル”の暴走によってミュータントばかりか人類も滅亡の危機に瀕していた。そこでプロフェッサーXは宿敵マグニートーと手を組み、兵器が開発された50年前の1973年にウルヴァリンの意識を送り込むことにするが・・・。

評価★★★★/80点

2000年公開の1作目から足掛け15年、ウルヴァリンを主役としたスピンオフを含めて7作目となった今作だけど、いまだに全てのキャラクターをつかみきれていない自分にとっては、このシリーズを見るのはどうしても腰が重くなってしまって・・

しかし今回は、人間とミュータントは共存できるとするプロフェッサーXと、ミュータントは人間を支配するべきだとするマグニートー、またミュータント全滅の危機の発端となったトラスク博士暗殺犯ミスティーク、そしてその暗殺を阻止するため過去に送り込まれるウルヴァリンさえ押さえておけば大丈夫なので、頭の中が整理できて見られて、今までの作品の中では1番面白かった。レベル低っww

でも要はなんでこのシリーズが食わず嫌いかというと、様々なミュータントが敵味方入り乱れてワチャワチャなってキャラクターがつかみづらいからで

その点、今回は先の4人にスポットが絞られているので分かりやすくなっているし、あとはやはりタイムトラベルものの醍醐味であるスリルとサスペンスが上手くブレンドされていて自分好みの作りになっていたのが大きいかな。

巷ではプロフェッサーXがなんで生きているのかとか矛盾点がいくつか挙げられてたみたいだけど、前作で死んだんだっけ!?ということすら記憶に乏しい自分にとってはそんなの関係なく、ほぼ単発ものとして楽しめてしまったかんじだしw

正直、これだけ楽しめちゃうと、1作目からもう1回見てみようかなという気にもさせられたけど、、それでも腰は重いままなのだった(爆)。。

 ----------------------

ウルヴァリン:SAMURAI(2013年・アメリカ・125分)WOWOW

 監督:ジェームズ・マンゴールド

 出演:ヒュー・ジャックマン、真田広之、TAO、福島リラ、ハル・ヤマノウチ、ウィル・ユン・リー、ファムケ・ヤンセン

 内容:第二次大戦中の長崎で日本軍の捕虜となっていたローガンは、原爆に遭うが日本兵のヤシダに救われる。それから数十年後、カナダのロッキー山脈で暮らしていたローガンのもとにヤシダの使者が現われる。余命わずかのヤシダがローガンに一目会いたいというのだ。そして日本を訪れたローガンだったが・・・。

評価★★☆/50点

原作コミックにこのエピソードがあるのかは知らないけど、前作ウルヴァリン・ゼロからのつながりはなく、完全なスピンオフというかんじ。最後とってつけたようにマグニートーと死んだはずのプロフェッサーXが出てきて次作へつながりをもたせたけどw

しかし、単発でこういうの持ってくるんだったらもうちょっとマシなの見せてほしいよ(笑)。これじゃただのヘンテコなニッポン映画じゃん。

B-29が飛来してきただけで切腹する日本兵から始まり、真田広之の初登場シーンのアクロバティックな剣道の稽古や、芝の増上寺の正門に立つマシンガン持った警備とか、もうツッコミどころ満載。。

あと、長崎の原爆を生き残った元日本兵があんなクソジジイになるかっつーの。日本人なめんときやーww

しかし、ニンジャやサムライを出してくるなら、いっそのこと戦国時代を舞台にした方がよっぽど面白かったと思うんだけどな。

でも、あのラブホだけは興味津々

 ----------------------

X-MEN:ファースト・ジェネレーション

Bdql9rgtze_movieposter出演:ジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー、ケヴィン・ベーコン、ローズ・バーン、ジャニュアリー・ジョーンズ、ジェニファー・ローレンス

監督:マシュー・ヴォーン

(2011年・アメリカ・131分)WOWOW

内容:1962年、アメリカ。プロフェッサーXとして後にX-MENを設立することになる遺伝子学の若き専門家チャールズ・エグゼビアは、CIAから捜査協力を依頼される。それは核戦争寸前まで突き進んでいた米ソ冷戦の中、超能力を駆使して暗躍するミュータント集団“ヘルファイヤークラブ”を調査するというものだった。そしてチャールズは、第二次大戦中にナチスの科学者ショウに母親を殺されたエリック・レーンシャーと出会うのだが・・・。

評価★★★★/75点

映画を見終わったあとの1作目のX-MENを見直したいと思った時点で今回の映画は上出来だったというべきだろう。

チャールズ(ジェームズ・マカヴォイ)とエリック(マイケル・ファスベンダー)の決別が最初から分かっている中で、そこに着地させるまでの構成力はこのジャンルの中でもズバ抜けているといっていいと思う。

理想論の前者と現実論の後者のバックボーンや、そのどちらに共感してついて行くかという各キャラクターの内面描写をしっかり描き、さらに荒唐無稽が前提のSF設定にホロコーストや米ソ冷戦という史実を絡ませることでフィクションに重みと説得力をもたせるシナリオの巧さが、この作品をより生き生きとしたものにしていたと思う。

今をときめくジェニファー・ローレンスの艶めかしいボディラインを拝めるのもイイし、それまでの3作に大した思い入れもなかったので(笑)、思わぬ拾い物だった。

 ----------------------

ウルヴァリン:X-MEN ZERO(2009年・アメリカ・108分)WOWOW

 監督:ギャヴィン・フッド

 出演:ヒュー・ジャックマン、リーヴ・シュレイバー、リン・コリンズ、ダニー・ヒューストン、テイラー・キッチュ、ライアン・レイノルズ

 内容:19世紀半ば。ミュータント能力を持つ少年ローガンは、ある悲劇から能力を覚醒させ、同じく能力を持った兄ビクターと2人で生きていくことに。以来、不死身の再生能力と戦闘能力を持つ2人は、俗世から距離を置き、150年以上に渡り幾多の戦場に身を投じてきた。しかし、そんな暮らしに嫌気が差したローガンは、軍を抜けてカナダの山奥で恋人と静かに暮らすことを選ぶ。一方、ビクターは戦争がもたらす狂気に魅せられ殺人鬼と化してしまい、その矛先はローガンにも向けられるのだった・・・。

評価★★★/65点

X-MENシリーズにそれほど傾倒しているわけではない者からすると、その中のいちキャラクターのみに焦点をしぼったスピンオフにはなかなか興味を抱けるものではない

また、ウルヴァリンの隠された謎が解き明かされるといっても、その謎が何だったのかさえ思い出せない者からすると、、ってそれは自分が悪いんだけどw、まぁしかし、アクション部分は見応えがあるし、歌わなくても存在感を知らしめるには十分の熱演を見せるヒュー・ジャックマンの魅力もあってSFアクションとしてフツーに楽しめるのはたしか。

しかし、勉強不足な自分が失礼を承知で言わさせてもらえば、もうちょっとシンプルなストーリー展開でもよかったんじゃないかな。ぶっちゃけ兄ビクターとの確執一点張りの方が逆にローガンにより感情移入できた気がする。

つまりビクター=セイバートゥースをもっとしっかり描くべきだったのではないかということに尽きるけど。だって、このセイバートゥースって1作目X-MENでマグニートー側についてた奴でしょ。この後どうつながっていくんだろっていう・・。

ま、、別にいっか(笑)。。

 ----------------------

X-MEN:ファイナル・ディシジョン

20070422_281624 出演:ヒュー・ジャックマン、ハル・ベリー、パトリック・スチュワート、ファムケ・ヤンセン、アンナ・パキン、イアン・マッケラン

監督:ブレット・ラトナー

(2006年・アメリカ・105分)WOWOW

評価★★★/65点

 

内容:プロフェッサーXの右腕だったジーン・グレイの死により、いまだその動揺から立ち直れずにいるX-MEN。そんな中、ミュータントの能力を治療して消去し普通の人間に戻すことのできる新薬“キュア”が天才科学者によって開発される。ミュータントのまま生きるか、それとも人間になるかという究極の選択に大きく揺れるミュータント社会。マグニートー率いる強硬派ブラザーフッドは、キュアの根絶を狙い、キュア開発のカギを握る少年の強奪に動き出す。一方、放浪中のサイクロプスはジーンが生きていることを知り、感動の再会を果たすのだが・・・。

“X-MENオールスター感謝祭蔵出し祭り!?”

ミュータントを人間に変える新薬「キュア」を人間側が開発し、もしかしてそれがミュータントを絶滅に追い込むかもしれないというのに、当のミュータント同士が殺り合うというのはどうしても腑に落ちないものがある。

ミュータントは病気であるという人間の主張のもとで薬は作られたわけだから、病ではなく個性・アイデンティティであるとするミュータント側からすればそう簡単に受け入れられるものとは思えず、両者の間にある狭間の中で苦悩し葛藤する視点をもっと突っ込んで取り入れるべきではなかったか。

そういう点でいえば、ウルヴァリンと二重人格の最恐女ファムケ・ヤンセンのラブロマンス(?)を軸に据えたのは完全なミステークであり、視点がズレてしまっている。

本来ならローグ(アンナ・パキン)をこそ前面に押し出さなければならないはずなのに。。

とはいえ、登場キャラの多さに名前と顔が一致しなかった1作目から6年経ってしっかりした予備知識もついてきたせいか、なんだかんだいって3作品の中では1番面白かったかも。

 ----------------------

X-MEN2(2003年・アメリカ・134分)DVD

 監督:ブライアン・シンガー

 出演:ヒュー・ジャックマン、ハル・ベリー、パトリック・スチュワート、イアン・マッケラン、ファムケ・ヤンセン

 内容:政府高官のストライカーがミュータント狩りを開始し、プロフェッサーXを捕らえてしまう。X-MENのメンバーは、宿敵マグニートーと手を組み、プロフェッサーXを救出すべくストライカーに立ち向かう。

評価★★★/60点

“早押し並べ替えクイズ!!同一人物に並べ替えよ。”

Aグループ

 エグゼビア、ファムケ・ヤンセン、マリー、カート・ワグナー

 ボビー・ドレイク、ローガン、エリック・レーンシャー

 スコット、ハル・ベリー、レイベン、キティ・プライド

 タイラー・メイン

Bグループ

 サイクロプス、ストーム、デスストライク、シャドウキャット

 ミスティーク、ジーン・グレイ、プロフェッサーX

 セイバートゥース、ウルヴァリン、ローグ

 ナイトクロウラー、アイスマン、マグニートー

問題出した当の本人が1番分かってねぇっ・・。しかもBグループ1人多いっ!

なんでっ?

 ----------------------

X-MEN(2000年・アメリカ・105分)WOWOW

 監督:ブライアン・シンガー

 出演:ヒュー・ジャックマン、パトリック・スチュワート、イアン・マッケラン、ファムケ・ヤンセン、ハル・ベリー

 内容:DNAの突然変異によって特殊能力を生まれ持った超人類“ミュータント”。人類を抹殺しようとするマグニートーに、人類とミュータントとの共存を目指すプロフェッサーXとX-MENが立ち向かう!

評価★★★/60点

なんか久しぶりにジョジョの奇妙な冒険に出てくるスタンド能力を思い出した。

 ----------------------

ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち

E3839fe382b9e3839ae383ace382b0e383aae383出演:エヴァ・グリーン、エイサ・バターフィールド、クリス・オダウド、ルパート・エヴェレット、テレンス・スタンプ、ジュディ・デンチ、サミュエル・L・ジャクソン

監督:ティム・バートン

(2016年・アメリカ・127分)WOWOW

内容:フロリダに暮らす孤独な高校生ジェイク。祖父エイブだけが唯一の理解者で、祖父の語る冒険譚を聞くのが大好きだったのだが、ある日、祖父が謎の死を遂げてしまう。そしてジェイクは祖父の最期のメッセージに導かれ、ウェールズの小さな孤島へ向かい、古めかしい屋敷にたどり着く。そこでは女主人ミス・ペレグリンと、奇妙な能力を持った子供たちがひっそりと暮らしていたのだが・・・。 

評価★★★☆/70点

一言でいえばティム・バートン版X-MEN。

しかし、マッチョイムズを信奉するアメコミに対し、ティム・バートンの視点はあくまでダークファンタジー。

幼気な少年少女たちの内なる異形性の持つグロテスクさやフリークス感が際立っていて、一見してティム・バートン印になっているのはやはり流石。

特に“奇妙なこどもたち”の奇妙さはX-MENとは比べ物にならないくらい図抜けて魅力的だったと思う。

その反面、同じ1日をずっと繰り返すタイムループという不条理ナンセンスな設定がいまいち機能しているとはいえず(だってループの外の本当の現実世界での暮らしに憧れる悪役サミュエル・L・ジャクソンの方がある意味健全ではないかともいえるわけで)、ティム・バートン印のもう一本の柱である切なさや哀しさといったネガティブでシニカルな情緒面が相殺されているのは惜しい気も。。

まぁ、全体的な世界観とモンスターも含めたキャラクター造型が自分好みだったので映画としては及第点。

 ----------------------

ファンタスティック・フォー〔超能力ユニット〕

200fullfantasticfour 出演:ヨアン・グリフィス、ジェシカ・アルバ、クリス・エヴァンス、マイケル・チクリス

監督:ティム・ストーリー

(2005年・アメリカ・106分)MOVIX仙台

内容:人類の進化と宇宙嵐の関係を研究している若き天才科学者リード。彼はある日、その謎を解明するため、親友のベン、元恋人で女性科学者のスー、彼女の弟ジョニーとともに、実業家でスーの今の恋人でもあるビクターの援助を受けて宇宙実験を実施することに。だがその最中、5人は予想外に早くやって来た宇宙嵐の放射線を浴びてしまった。それは彼らのDNAに変化をもたらし、皆それぞれに違った力が表れていく・・・。

評価★★★/60点

レイザーラモンHGが宣伝隊長になっただけのことはあるいい加減なお話。。

いや、だって超能力を手に入れたのに、みんながみんなあっちこっちの方向を向いていて全然まとまりがないんだもん。話に求心力が・・・。

悪役も悪役っぽくなかったし、いまいち燃えなかったな。

それとも素人が超能力を手に入れたらこんなんなっちゃうのよ、てなことなのか。

見所はジェシカ・アルバの胸元のみ、、ま、いっか(笑)。

 ----------------------

ファンタスティック・フォー:銀河の危機(2007年・アメリカ・92分)WOWOW

 監督:ティム・ストーリー

 出演:ヨアン・グリフィス、ジェシカ・アルバ、クリス・エヴァンス、マイケル・チクリス、ダグ・ジョーンズ

 内容:巷では国民的ヒーローとなったファンタスティック・フォーのリードとスーが結婚するという話題で持ちきり。が、世界各地では謎の閃光の飛来により異常現象が発生していた。そして、2人の結婚式当日、閃光がニューヨークにも出現する。その正体は、銀色のボードを駆る生命体“シルバーサーファー”。さらに、このシルバーサーファーが現れた星は、8日以内に滅びていることが判明し・・・。

評価★★★/60点

ゴムゴム人間ルフィが大活躍する「ワンピース」の実写化は十分できる!ということだけは、リードの伸縮自在アクションを見てよぉく分かった(笑)。

「Mr.インクレディブル」から「ファンタスティック・フォー」ときて、ついに満を持してワンピース!、、ってそれくらいしか見所がないんだよねこれ。。

この軽さと中身の無さには脱帽するしかない。

銀河の危機というより、ハリウッドの危機だろ

2020年12月29日 (火)

夢のシネマパラダイス608番シアター:レヴェナント 蘇えりし者

レヴェナント:蘇えりし者

Sp_mailvisual出演:レオナルド・ディカプリオ、トム・ハーディ、ドーナル・グリーソン、ウィル・ポールター、フォレスト・グッドラック

監督:アレハンドロ・G・イニャリトゥ

(2015年・アメリカ・156分)盛岡フォーラム

評価★★★★/80点

内容:1823年アメリカ北西部。毛皮採集のためにミズーリ川沿いを進む一団。ガイド役を務めるベテランハンターのグラス(レオナルド・ディカプリオ)は、息子のホークとともにその一行に加わっていた。しかしある時、先住民の襲撃を受けて多数の犠牲者を出す事態に。さらに、逃走中グラスは熊に襲われ、瀕死の重傷を負ってしまう。もはや息も絶え絶えの中、最期を看取るために残った仲間のフィッツジェラルド(トム・ハーディ)が裏切り、ホークを殺されたうえにグラスは生き埋めにされてしまうのだが・・・。

“復讐するは神にあり”

今までいろいろな映画を見るたびに散々言ってきたことだけど、どんなに醜態をさらけ出そうが石にかじりついてでも生への執着にしがみつく人間を描いた映画が最も好きだ。

それに照らせば今作はまさにドンピシャ!

クマに襲われ瀕死の重傷を負おうが、仲間に生き埋めにされ酷寒の地に置き去りにされようが崖から転落しようが川の濁流に流されようが、傷口に火薬を塗り込み火を当てて焼き固め、生魚や生肉を食らい、かっさばいた馬の腹の中に潜り込んで布団代わりにしてまで生き抜こうとするグラスの執念と怨念にただただ釘付け。

また、グラスのサバイバルの原動力となる復讐相手のフィッツジェラルドも他人を蹴落としてまで金を手に入れ生き抜こうとする点で自分の尺度でみれば非常に魅力的で、トム・ハーディあってのディカプリオだったのだということは指摘しておきたい。

あとは何と言っても映像美。

監督は誰かときかれたら迷わずにテレンス・マリックと答えてしまいそうなほど大自然の荘厳な映像叙事詩として仕上がっていて、五感をフルに動員して見せられる2時間40分は湿り気のないカラリとした西部劇のくくりを軽々と飛び越えてしまっている。

しっとりと浸みてきて尚且つ重厚さに圧倒される絵の前ではごくごくシンプルなストーリーでも十二分だ。

さらに、例えば至近距離から撃たれた馬が卒倒し即死するシーンをはじめ、問答無用で訪れる無秩序な死の描写は普通の映画と比べてもショッキングで、形容としてこの言葉が合っているかどうか分からないけど、まるでホロコーストの映画を見ている時と同じようなおぞましい緊迫感にあふれている。

そしてラストの肉を切らせて骨を断つグラスとフィッツジェラルドの肉弾戦がこれまた目を覆いたくなるほどの死闘で、映画を見終わったあとはドッと疲れと無常感が押し寄せてきた・・・。

とはいえ、この余韻は数日引きずりそうだけどね。。

P.S.クマに襲われた時の対処教材としても絶対見ておくべき映画だと思うw

2019年9月 1日 (日)

夢のシネマパラダイス164番シアター:パニック・ルーム

ルーム

O0480091513629160745 出演:ブリー・ラーソン、ジェイコブ・トレンブレイ、ジョーン・アレン、ショーン・ブリジャース、ウィリアム・H・メイシー

監督・レニー・アブラハムソン

(2015年・アイルランド/カナダ・118分)WOWOW

内容:5歳の誕生日を迎えたジャックは、天窓から空しか見えない狭い部屋に母親ジョイと2人で暮らしていた。外には何もないと教えられ、部屋の中が世界の全てだと信じていたジャック。しかしその日、ジョイから自分たちはある男に拉致監禁された身であることを告げられる。そして脱出するために、ジョイは綿密な計画を立てて行動を開始するのだが・・・。

 

評価★★★★/80点

アカデミー主演女優賞目当てで見たけど、本当の見所は子役にあった!というオチ。

高校生の時に拉致監禁レイプされ、犯人との間に子供までもうけてしまい、7年経過したというあまりにも衝撃的な題材ながら、生まれた時からルームの中の世界しか知らない子供の無垢な空想視点を主軸に据えたことでルーム脱出前の嫌悪感すれすれのシリアスな要素を中和しているのがこの映画のキモ。

さらに、映画のメインとなるルームからの解放後も、好奇の目から気を病んでいく母親に対し、あっという間に新たな環境に適応していく子供のまっさらな感性が優しく包み込み母親をつなぎ止める。

子供の力がこの映画の何よりの生命線だったのだとすれば、子役の演技は文句なしの120点満点!

どのようにこんな難しい役柄を子供ながらに咀嚼して演技に持ち込んだのか考えただけで凄いなぁと感心しちゃうけど、お願いだからマコーレー・カルキンとかブラッド・レンフロのような悲劇的な道は歩まないでねw

 ---------------------------

パニック・ルーム

138612_01

出演:ジョディ・フォスター、フォレスト・ウィテカー、ドワイト・ヨーカム、ジャレッド・レト

監督:デビッド・フィンチャー

(2002年・アメリカ・112分)MOVIX仙台

評価★★★/65点

 

内容:マンハッタンの高級住宅地。離婚したメグは11歳の娘サラを連れて、4階建てのエレベーター付き、かつ頑丈な“パニック・ルーム”付きの一軒家に引っ越した。しかし、その夜、何者かが家に侵入し・・・。

“自分だったら失禁しちゃうけどね・・・”

母娘たった2人で4階建てに住んじゃう神経も一般庶民の自分にとっては尋常ではないけど、それはともかくとしてあのメンツが実際ウチに入り込んできたら失禁しちゃうと思うマジでww冗談じゃなく、ウン。。

なのに、なにを呑気にトイレでオシッコしてるんだよジョディおばさんったら。眠いのは分かるし、水洗の音が犯人たちをビクリとさせたのも分かるけどさ。

なんだかユルいんだよね全体的に。

感覚的なものもあるけど、具体的にはパニック・ルームに備え付けられているモニターがご親切にもやけに多いことと、鍵穴まで通り抜けてしまうまるでネズミのようにチョロチョロと動き回るように見せかけて実は計算されつくした精密機械じかけのカメラワークが悪い意味で一役買っちゃってるかなと。

サスペンス・スリラーなはずなのに、安心・安全・安定の3大保険に加入しちゃってるんだよね・・。

一生懸命外で大雨降らせて不安感煽っても、この3大保険の効力の前にはなすすべなく、緊迫緊張などどこ吹く風。

緊張感がないから、パニック・ルームの鉄扉に手をはさんじゃうんだよ覆面レスラー、、ちゃう覆面ドロボーさんよ(笑)。

フォレスト・ウィテカー演じる犯人が、オレがこの頑丈な部屋を造ったんだと何度も豪語してらしたが、オレがこの一見何の穴もない流麗かつ完璧な映画を作ったんだと雄弁に語るデビッド・フィンチャーの神の手が垣間見えて余計に“つくりもの”世界という感が否めなくて、母娘の命をかけた攻防戦にイチイチ入り込むことができず、フツーにボーッと見てしまった。TV向きだねこれは。。

2019年4月16日 (火)

夢のシネマパラダイス540番シアター:異世界へ迷い込んでみたい!?

リメンバー・ミー

527声の出演:石橋陽彩、藤木直人、橋本さとし、松雪泰子、磯辺万沙子、横山だいすけ、多田野曜平、渡辺直美

監督:リー・アンクリッチ

(2017年・アメリカ・105分)WOWOW

内容:ミュージシャンを夢見るギターの天才少年ミゲル。しかし昔起きた悲しい出来事により彼の家族にはギターを弾くどころか音楽を聴くことさえ許されない厳しい掟があった。そして人々が先祖の魂を迎える“死者の日”。憧れのミュージシャンであるデラクルスのお墓を訪れたミゲルは、そこに飾られていたギターを手に取り奏でてみると、いつの間にか先祖たちが暮らす死者の国に迷い込んでしまい・・・。

評価★★★★/80点 

この映画を見て秋川雅史の“千の風になって♪”を思い出した。

私のお墓の前で泣かないで下さい、そこに私はいません、眠ってなんかいませんというあの歌だ。

冷たい土中ではなく大空を自由に飛び回っていつもそばにいて見守っているので、ご先祖さまと故人を感じて想ってほしいというテーマと今作が重なって見えたのだ。

その点で、死者は生者によって遺影を飾られないとやがて忘却の彼方へ消え去ってしまい二度目の死を迎えるという設定と、パラレルワールドのような死者の国のファンタジックな世界観は白眉。

特に後者に関しては、大好きな画家・池田学の細密画を想起させるほど色彩鮮やかで魅力的で、陽気さと合わせて日本人にはなかなか出てこない発想だなぁと思った。

あとは、日本映画の2歩も3歩も先を行くCGアニメの大胆さと繊細さの絶妙なバランスを保った表現力にも魅了されっぱなし✨

ひいおばあちゃんママココのしわしわ顔とか、ギターをつま弾くシーンとか上手いなぁと感心しきりだった。

ピクサーにしては珍しく勧善懲悪に寄った予定調和なストーリーテリングがやや軽いかんじがしたけど、お盆にちゃんとお墓参り行こうと思わせてくれたのでそれも良し。

家族の絆を再確認させるファミリーヒストリー映画として最良の出来といっていいだろう。

 -----------------------

バケモノの子

Bakemono1_large声の出演:役所広司、宮崎あおい、染谷将太、広瀬すず、長塚圭史、麻生久美子、黒木華、津川雅彦、リリー・フランキー、大泉洋

監督・脚本:細田守

(2015年・東宝・118分)DVD

内容:この世界には人間界とは交わることのないもうひとつの世界、バケモノ界がある。ところがある日、渋谷に独りでいた少年がバケモノ界“渋天街”の住人である熊徹と出会う。そして少年は強くなるため渋天街で熊徹の弟子になることを決意し、熊徹から九太という名前をもらい、修行に励む日々を送る。やがて成長して渋谷へ戻った九太は、女子高生の楓と出会う・・・。

評価★★★/60点

渋谷センター街と異界=渋天街がつながっているというのは、キングスクロス駅のプラットフォームから魔法学校へ行けるハリポタと同じく現実感があって面白い。

その点では千と千尋のトンネルと同じ発想なのだけど、これが簡単に行き来できてしまうとなると途端に白けてしまう・・・。

しかし、一般に普通のファンタジーは少年少女が異世界で成長して現実世界に戻ってくるという“行きて帰りし物語”が定石だけど、今回は異世界に行って8年経ってすでに成長してしまった後が物語のメインになっているので、異世界における成長譚を描いても意味がないんだよね。それゆえ異世界と現実世界の境界が曖昧模糊になるのも当然なことではある。

じゃあ、そこで何を描くか。

となると、今度は多感な少年時代を8年も離れていた現実世界でのアイデンティティの確立、いわば“バケモノの子”と“ヒトの子”との葛藤に主軸が置かれてしかるべきだろう。

ところが九太は現実世界に戻るやそんな悩みなど微塵もみせず図書館で本を読む始末。こりゃダメだw

その点、先のテーマは一郎彦にこそ当てはまるわけで、普通なら一郎彦が主人公でもいいくらいなんだよね。

そこらへんのズレがやはり見ている間ずっとモヤモヤとしていて、自分の中で合理的に納得して飲み込めなかったかんじ。。

期待値が高かったぶん中途半端な中身にやや評価は低め

 ----------------------

ブレイブ・ストーリー

E38396e383ace382a4e38396e382b9e3838 声の出演:松たか子、大泉洋、常盤貴子、ウエンツ瑛士、今井美樹

監督:千明孝一

(2006年・日本・111分)盛岡フォーラム

評価★★/40点

 

内容:ある日、小学5年生のワタルが学校から帰ってくると、父親が家を出て行ってしまい、さらに母親は倒れて入院してしまう。突然家族がバラバラになってしまった現実を受け入れられないワタルは、転校生ミツルの言葉を思い出した。それは、「幽霊ビルの屋上から天に伸びる階段の先の扉の向こうへ行けば、運命を変えられる」というもの。ワタルは家族を取り戻したい一心でその扉の中に飛び込んでいく・・・。直木賞作家・宮部みゆきの冒険ファンタジー小説のアニメ映画化。

“このRPGゲームが中古で売られていたとしても、、、100%買わない。。”

それくらいツマラなかったです、この映画・・・。

ま、宮部みゆき原作小説の映画化作品って、「理由」以外見るに堪えないのばかりだけど。1番好きな作家だけに困っちゃうんだよなぁ(笑)。

なんで映画になるとツマラナイのか。。

それは、宮部みゆきの小説がなぜ面白いのかと言い換えることができると思うんだけど、独特かつ唯一無二の洗練され研ぎ澄まされた確かな日常感覚と、事件や犯罪から超常現象に至るまで異常なまでに豊かな非日常性が、見事な完全調和をみせているところにあると思う。

しかし、これが映画になると、日常感覚にほとんど光が当たらないという体たらくになってしまうのだ。

非日常的エピソードの積み重ねを追うというのは映画生来のサガではあるのだが、こと宮部みゆき原作に関しては確かな日常感覚に光が当たらないというのはもはや致命的である。

そう考えると、今回の「ブレイブ・ストーリー」は、宮崎駿の「千と千尋の神隠し」と比べてもよく分かるが、異世界(幻界)へ行く前の主人公ワタルの日常的エピソードがじっくりと描かれていて、しかも家族という日常が崩壊しつつある危うさにワタルが直面していく過程がややクドイくらいに描かれているのが大きな特徴といえる。

ここまではまだいい。

しかしだ、、、肝心の非日常世界へ行ってからの薄っぺらさと安っぽさと怠けっぷりはナンダ!?一体何なのだ!?なぜなんだ(笑)?こいつらにヴィジョンはあるのか!?

こっちが良ければ、今度はあっちがダメかぁ、、、って、おいおい頼むよ~。

成長過程が全然ないというか、Aqua Timezの歌の力で見習い勇者のレベルがブッ飛んじゃった、、みたいな。。なんじゃそりゃ。

また、幻界という異世界の描写も日常感覚(リアリティ)と非日常性(ファンタジー)のバランスが全く取れていない。

やっぱこういうの見ると、ジブリアニメの凄さってのが如実に実感できるなぁ。トホホ。

「千と千尋」でいえば、冒頭から何の説明もなしに千尋は異世界へ迷いこんでしまうわけだけど、宮崎駿はその異世界をおもいっきり非日常的な世界でありながら、なおかつおもいっきり日常的に現実世界と表裏一体で渾然一体に描いてしまうという離れ技をやってのけた。

それは、一貫性のないストーリーを無理やり引っ張ってしまうという力技にもなったのだが、終始一貫して主人公千尋に視線を寄り添わせて描くことで、少女が生きる力を取り戻す物語世界としてしっかりと成立させてしまった。

こりゃもうかなわんわな・・・。

本作にそこまでを求めるのは酷といえども、ひとつの物語世界としてもう少ししっかりしたものを提示してもらいたかった。映像としての世界だけで見せようとするのは駄作への近道以外の何ものでもないし、そういう安易な手法に埋没するのは避けてもらいたい。切に願います。。

 ----------------------

DESTINY 鎌倉ものがたり

2017_12_destinykamakuramonogatari021062x出演:堺雅人、高畑充希、堤真一、安藤サクラ、田中泯、中村玉緒、市川実日子、ムロツヨシ、古田新太、鶴田真由、薬師丸ひろ子、吉行和子、橋爪功、三浦友和

監督・脚本:山崎貴

(2017年・東宝・129分)WOWOW

内容:幽霊や妖怪、様々な神様に至るまでフツーに街を行き交う古都鎌倉に暮らすミステリー作家の一色正和は、執筆のかたわら、魔物がらみの怪事件を捜査する探偵としても活躍していた。そんな彼のもとに年の離れた亜紀子が嫁いでくるが、新婚旅行を終えて間もないある日、彼女が不慮の事故に遭ってしまう。霊体となってしまった彼女の魂は死神によって黄泉の国に連れて行かれるが、正和は亜紀子を取り戻すべく江ノ電に乗って黄泉の国に向かうのだが・・・。 

評価★★☆/55点

座敷童、河童、オシラサマ、、岩手出身の自分にとって民話の里・遠野というのは360度山々に囲まれていることもあってか、今訪れても世間の時間とは隔絶された異世界に迷い込んだような不思議な感覚にとらわれる。

はたして今回の映画は何千年も妖気が溜まっているという古都鎌倉がレトロチックなファンタジー世界そのものの舞台になっていて、さらにそこからコテコテのCGワンダーランドへと江ノ電でつながっている設定。

なのだけど、当然後者の方がメインになるのかと思いきや、まさかの前者押しで1時間40分も尺を使うとは・・w

しかも、鎌倉の街をお化けや神様が跋扈する前半もとい大半のファンタジー描写がユルくて、ほっこりといえば聞こえはいいけど、嘘くささを吹き飛ばすほどのクオリティには程遠く期待ハズレ。遠野ほどじゃないなっていう(笑)。。

けなげな新妻の高畑充希、死神安藤サクラ、貧乏神の田中泯などキャストはいずれも良かっただけに、惜しい。。

 ----------------------

friends もののけ島のナキ(2011年・東宝・87分)WOWOW

 監督・脚本:山崎貴

 声の出演:香取慎吾、山寺宏一、阿部サダヲ、YOU、加藤清史郎

 内容:もののけが住むと恐れられ、近づくことさえ禁じられた不気味な島にある日、人間の赤ん坊・コタケが迷い込んでしまう。ところが、コタケを目にしてもののけたちの方が大パニックに。そこで、赤鬼ナキと青鬼グンジョーがコタケの面倒を見ることになるが・・・。

評価★★★/65点

余韻や感慨などどこ吹く風のアッサリ食感があまりにももったいないくらいの琴線に触れるイイ話なので、あと15分くらい延長してエピソードをもう少し入れた方がよかったような・・。まぁ、キッズ向けだと90分がベストなのかもしれないけど。

でも、CGアニメ技術はピクサーにも劣らないところまで来ているのはこれ見るとたしかなのだから、あとはキャラクターしかりシナリオしかり笑いと感動は細部に宿るってことをもう少しよく考えて創作をしてもらいたいものだ。

それはつまるところ映画好きが楽しい映画を作るというごく単純なことなのだけど、そこの部分はピクサーにはまだまだ敵わないってかんじかなぁ~。。

 ----------------------

ホッタラケの島 遥と魔法の鏡(2009年・東宝・98分)WOWOW

 監督:佐藤信介

 声の出演:綾瀬はるか、沢城みゆき、戸田菜穂、大森南朋、谷村美月

 内容:幼い頃に母親を亡くし、父と2人暮らしの女子高生・遥。ある日、母親の形見である手鏡をなくしたことに気付き、稲荷神社にお参りに行った彼女は、奇妙なキツネを見つける。そして後を追った先にあった泉から異世界へと迷い込んでしまう。そこは、人間がほったらかしにした物=ホッタラケで出来た島だった・・・。

評価★★★/65点

人間がほったらかしにしたもので出来上がったというパラレルワールド的世界観を有するファンタジー世界のアイデアの着想、民話的なヴィジュアルイメージ、主人公・遥のキャラ設定、ツボを外さないシナリオなど意外に及第点あげてもいいくらいの出来で、ファンタジー好きの自分は割りと楽しめてしまった。

が、ゆえにフルCGの稚拙さと違和感がより気になってしまったのもたしかで、普通に二次元アニメでいいじゃんと思ってしまう・・。

まぁ、ピクサーのレベルの高さがこういうの見ると如実に分かるよねっていう。。

 ----------------------

カクレンボ(2005年・日本・24分)NHK-BS

 監督:森田修平

 声の出演:竹内順子、植木誠、鈴木真仁、内藤玲

 内容:夜、カクレンボをすると鬼に連れて行かれる・・・。行方不明になった妹を探す少年ヒコラたちと、鬼の正体を暴こうとするノシガたち、そして謎の少女もまじえた7人の子供たちが摩天楼の最下部の薄暗く入り組んだ街中へと足を踏み入れ、おトコヨさまのお遊戯カクレンボを始める・・・。

評価★★/40点

題名をローマ字表記で出してくる時点でこりゃちょっと違うなと感じたけど、まさにその通りの出来だった・・・。

とにかく才能をひけらかすように絵で語ろうとするのはやめれ!そんな離れ技できるのは宮崎駿くらいなもんなんだから。

ストーリーがとにかく薄すぎて話にならないよこれじゃ。。

2018年7月 6日 (金)

夢のシネマパラダイス48番シアター:スラムドッグ$ミリオネア

スラムドッグ$ミリオネア

20090419093644出演:デヴ・パテル、マドゥル・ミッタル、フリーダ・ピント、アニル・カブール

監督:ダニー・ボイル

(2008年・英/米・120分)WOWOW

評価★★★★☆/85点

内容:インドのムンバイ出身の青年ジャマールは、人気TV番組「クイズ・ミリオネア」に出演、次々に難問をクリアし1千万ルピーを獲得!ところが、最終問題を残した1日目の収録後、ジャマールはイカサマを疑われ警察に逮捕されてしまう。スラム育ちでまともに教育を受けたことがないジャマールがクイズを勝ち抜けられるわけがないとする警察に対し、彼はその過酷な過去を語り始める・・・。

“この映画を見てヨカッタ!ファイナル・アンサー!”

「クイズ・ミリオネア」で次々に問題を正答させていくジャマール、インチキだと疑われ警察に尋問されるジャマール、過酷な少年時代を生き抜いてきたジャマールの生い立ち。

この3つの視点をモンタージュやフラッシュバックを巧みに用いながら交差させていく今回の映画、そのリズム感と疾走感たるや特筆すべきものがあるのだけど、なにより過酷な中にも横溢する生命力と希望の光に満ちているのがイイ。

例えば、ジャマールがスターのサイン欲しさに肥溜めに飛び込むシーンがあったけど、ダニー・ボイルの名を一躍高めた「トレインスポッティング」(1996)で便器の中に落ちた座薬を取ろうと頭から飛び込むヤク中の主人公の倦怠感と閉塞感とは好対照をなしている。

そして、そのあふれんばかりのバイタリティが現代インドを象徴するエネルギーと結びつき、ジャマールのラティカへの一途な想いに集約されていくプロットは、魅力的なサウンドスケープの増幅効果もあいまって見る者の目をとらえて離さない。

ラティカが好みだったのもプラスに働いたしww

混沌と興奮のるつぼの日常のすぐそばにある貧困と闇、その負のベクトルをひっくり返さんばかりの躍動感と高揚感にあふれたこの映画は、今のインドでなければ作りようがないものなのかもしれない。

D:幸せな映画だった!

ファイナルアンサー!!

 -----------------------

LION/ライオン~25年目のただいま~

Lionderlangewegnachhause出演:デヴ・パテル、サニー・パワール、ルーニー・マーラ、デヴィッド・ウェナム、ニコール・キッドマン

監督:ガース・デイヴィス

(2016年・オーストラリア・119分)WOWOW

内容:優しい養父母のもと、オーストラリアで幸せに暮らす青年サルーには悲しい過去があった。インドの田舎町に生まれた彼は、5歳の時に迷子になったことから家族と生き別れ、現在の養父母に引き取られていた。そして、成人したサルーはインドの本当の家族への想いを募らせるようになり、わずかな記憶を頼りにグーグルアースで故郷の家を探し出すことにする・・・。

評価★★★/65点

運命のいたずらで迷子になり、あげくの果てにストリートチルドレンとして孤児院に送られてしまう5歳の少年サルーのアンビリバボーな境遇を描く前半と、オーストラリア人夫婦の養子となり何不自由ない暮らしを送る大学生サルーの自分探しの旅に至るまでの複雑な心の内を描く後半に分かれる本作。

実話ベースの映画化ゆえの難しさか、母を訪ねて三千里みたいな自分の足と労力でっていう部分が後半パタリとなくなって、映画的かつ抒情的だった前半と比べると後半は置きに行った感が強くてダレた点がいまいち。

まぁ、エンドクレジットで本人映像を流されるとグゥの音も出なくなってしまったし、さらなる事実に呆然としてしまったけど・・😢

あとは、やっぱり前半の子役が印象的で白眉。青年になったサルーを演じたデヴ・パテルも考えてみれば「スラムドッグミリオネア」から随分とたくましく成長しちゃったなぁw

 -----------------------

クイズ・ショウ(1994年・アメリカ・132分)NHK-BS

 監督:ロバート・レッドフォード

 出演:ジョン・タトゥーロ、ロブ・モロー、レイフ・ファインズ、ポール・スコフィールド、ハンク・アザリア

 内容:1956年にスタートしたクイズ番組「21」は、無敵を誇るチャンピオンのハービーが連勝を続けながら、社会現象になるほどの人気を得ていた。しかし、次第に視聴率が伸び悩み始め、スポンサーはもっと見栄えのするチャンピオンに変更しろと要求する。プロデューサーのダンは、オーディションを受けに来たイケメンのチャーリーに白羽の矢を立て、八百長を仕組むのだが・・・。

評価★★★/60点

実話としての実直さがそのままレッドフォードの監督としての資質ともろにかぶっていて、遊び心のないえらくクソ真面目な映画になっちゃったかんじ。

ジョン・タトゥーロをはじめキャスティングは絶妙だっただけに、もうちょっとシニカルさやブラックな毒気をまぶしてもよかった気がするんだけど。。

まぁ、今の感覚でいうとたかがクイズ番組でここまでなる!?ていうかんじだけどね

でも、当時のテレビ番組は生放送が主体だったんだろうし、その中で一躍スターの座に上りつめるというのは文字通りアメリカンドリームだったのだろうから、それがヤラセで作られた虚像だったということになれば一大スキャンダルになるのは当然のことだったのかもね。

その上でこの映画が興味深かったのは、事のてん末においてテレビ局やスポンサーは全くの無傷で、スターに祭り上げられた出演者個人だけが矢面に立たされ粛清されたことだ。

それは取りも直さず視聴者こそがスターを求め、またスターを引きずり下ろすことを欲し、それに加担したわけで、メディアに流されやすい大衆心理の残酷さを物語っていたと思う。

そういう意味では今も昔もテレビってのは本質的に何ら進化していないんだねぇ・・w

2018年6月18日 (月)

夢のシネマパラダイス127番シアター:自分の子供たちを戦争に行かせたくありません。

硫黄島からの手紙

324563view001出演:渡辺謙、二宮和也、伊原剛志、加瀬亮、中村獅童、裕木奈江

監督:クリント・イーストウッド

(2006年・アメリカ・141分)2006/12/25・盛岡フォーラム

評価★★★★★/95点

内容:戦況が悪化の一途をたどる1944年6月。アメリカ留学の経験をもち、米軍との戦いの厳しさを誰よりも覚悟していた陸軍中将栗林が硫黄島に降り立った。着任早々、栗林は本土防衛の最期の砦である硫黄島を死守すべく、島中にトンネルを張り巡らせ、地下要塞を築き上げる。そんな栗林の登場に硫黄島での日々に絶望していた西郷ら兵士たちは希望を見出す。しかし、古参の将校たちの間では反発が高まり、、、。米軍は当初圧倒的な戦力の違いから5日で陥落できると踏んでいたが、予想以上の日本軍の抵抗により36日間に及んだ激戦となった硫黄島の戦いをイーストウッド監督、スピルバーグ製作により日米双方の視点から見つめた硫黄島2部作の第2作目。

“2006年から61年前の硫黄島にタイムスリップした現代人・二宮和也が間近で体験した硫黄島の激戦!世界ウルルン滞在記。”

といっても過言ではないつくりにはなっていると思う。

だって、あの言葉遣いは実際どうなの

なんかふと2005年の年末にテレ朝でやった山田太一ドラマスペシャル「終りに見た街」を思い出してしまった。

システムエンジニアをしている中井貴一扮する主人公とその家族が、朝家でフツーに起きたら昭和19年の東京になっちゃってたというとんでもない話。

主人公の友人(柳沢慎吾)も息子とともに昭和19年の東京にタイムスリップしてしまうのだけど、その息子(窪塚俊介)がなんか今回の映画の西郷(二宮和也)と似てたような気がしたもんで。。

冷めた視線とかやる気のない感じとか。だってあんなヤル気のない「天皇陛下万歳!」を映画で見たのは初めて(笑)。

それはともかくあのTVドラマはあの時代にタイムスリップしたことによるジェネレーションギャップをことさら強調して描くことで戦争の恐ろしさを過去の絵空事としてではなく、より現実感をもって伝えられていたように思うが、一方今回の「硫黄島からの手紙」は内地・東京のお話ではない。最前線の戦場に置かれた兵士たちの話なのだ。

ここにあのTVドラマとの大きな違いが生じる。

そう、、少なくとも自分は最前線の戦場に置かれた兵士たちどころか、あの戦争でお国のために戦ったいわゆる旧帝国軍人の話や体験談などことごとく聞いたことがないのである。

たぶん自分みたいに戦後何十年も経って生まれてきた人たちはみんなそうだと思う。

空襲や原爆、特攻、沖縄のひめゆり部隊などは耳にタコができるくらい聞かされてきたし、脳裏に焼きつくくらい映像で見せられてきたが、なぜか外地で戦っていた兵隊さんたちの話は、まるでタブーであるかのごとくほとんど聞かされたことがないし、そういう映画すらほとんど見たことがない。

なのに判で押したようなステレオタイプとして旧帝国軍人は人道にもとる極悪非道な絶対悪として言われ、教えられ、描かれてきた感は拭えない。

個人的には、人殺しを生業とする軍隊に良い軍隊などあるわけがないと思っているので、それが善か悪かと問われれば問答無用で悪と答えるだろう。

しかし、その悪の中に自ら進んで飛び込んでいった者であれ、強制的に放り込まれた者であれ、彼ら軍人一人一人を単純にいっしょくたに悪一色で片付けてしまう思考の処理の仕方は絶対におかしいと思うのだ。それは日本軍であれ米軍であれ。

問題は、善良な人間がその悪の中に入っていかざるをえなかった時に、その人間が内に持っていた理想や信じていた大義が、戦争の圧倒的に無慈悲な現実の前で打ちのめされ殺がれていく中で、次第に彼の中にある善なるもの悪なるもののせめぎ合いさえもなくなっていく、すなわち人間性が消失していくという愚かで醜くて空しい狂気の過程こそが重要であって、誰が善で誰が悪か、どっちが善でどっちが悪かという結果ありきの線引きは意味を成さないと思うのだ。

もちろんそのせめぎ合いの中で人間性を完全に消失してしまい、狂気の戦闘マシーンへとなりはてる者もいれば、かろうじて人間性を失わない者もいるだろう。

そしてその悲劇の過程を通した上で戦争という悪、軍隊という悪、死ぬことを強要する狂気という絶対悪へと駆り出していった国家の罪というものをあぶり出していくというのが至極まっとうな戦争映画だと自分は思う。

例えば今回の映画の製作にも名を連ねるスピルバーグが監督した「プライベート・ライアン」では、トム・ハンクス演じたミラー大尉がアメリカ本国にいた時に何の職業に就いていたかを部下たちが予想して賭けをするというシークエンスがあったが、国語の教師をしていたことが明らかになることで、生きることを子供たちに教えるはずの教師が暴力と殺戮の世界である戦争に駆り出されるという異常性と悲劇を如実に暴き出していたと思う。

しかし、今までの日本映画なりTVドラマなりで描かれてきた軍人像というのはそういう過程を骨抜きにして、最初っからこの人は善良で正直者で可哀想な人ですよ、こっちの人は悪の塊で善良な人や敵国の一般住民をとにかく虐げ、殺しまくる人間性の欠片もない人ですよというふうに完全に色分けして描かれてきた面が相当あると思う。

前々から戦場を描いた日本の戦争映画って、なんで狂気を描けなくてこんなうわべだけの薄っぺらい“青春映画”(戦争映画ではなく)になっちゃうんだろう、と思うことがしばしばだったのだけど、そういう思考回路で作っちゃうからそうなっちゃうわけで、この思考がいかに幼稚で薄っぺらなものかということは今回の映画を見るまでもなく分かろうものだ。

、、がしかし、ここが1番大きな問題だと思うのだが、今まで日本人はそれを建て前上良しとしてきた面があった(と自分は感じる)のではないだろうか。

心のどこかであの戦争の被害者を演じることで、加害者としての側面や戦争の闇、狂気の部分というものから逃避し思考をストップさせてしまうある種の逃避装置として働いてきたのではないだろうか、ステレオタイプな描き分けというあまりにも単純で通り一辺倒の手法を通してあの戦争の総括から逃げ続けてきたのではないだろうか、、そして日本の戦争映画というのはいつしか被害や加害、善か悪かを超えた理不尽な悲劇としてではなく、あくまで被害者として狂気ではなくいかに可哀想に描くか、ということになっていき、戦場を描いた映画というのが数えるほどもないという体たらくに陥ってしまったし、日本人もそれを良しとした・・・。

そういうことが今回のクリント・イーストウッド監督作のアメリカ映画を通して一気に骨抜きにされた気がしてならない。

日本人の多くが教えられてきたであろうあの戦争は間違った悪い侵略戦争だったという認識を暗黙の了解のもと旧日本軍=旧帝国軍人がやったことは全て悪という図式(逃避装置)でいっしょくたにして極力触れないようにしてきた一方、それじゃああの戦争を外地でお国のために懸命に戦った500万人(うち200万人余が戦死)もの日本人を断罪できるのか、といったらほとんどの日本人は断罪ではなく、哀悼の方を選ぶだろう(当たり前だ)。

しかも、うち300万人余は外地から無事復員してきて、生きて無事に帰ってこれて本当に良かったねぇと家族に迎えられ(かくいう自分の祖父もノモンハン事件からシベリア抑留などの死線を経て無事生きて帰ってきた)、その後良い父親なり良い息子、そして普通の良き日本人として戦後日本社会の礎として懸命に生きてきたはずなのだ。

そういう建て前と本音のひずみの中に埋没することを避け、上っ面の中を浮遊してきた日本人、、“天皇”や“靖国”の問題、突きつめていけば国家の戦争責任としての罪の問題にケリをつけられない、あるいはケリをつけようとしないできた日本人には「硫黄島からの手紙」のような映画は作れないし作りようがないのかもしれない。これから先も・・・。

そういうことを考えても、60年前にアメリカに戦争で負け、60年後映画でもアメリカに負けた、と言わざるをえないほどの衝撃を少なくとも自分は受けた。

日本人の自分でさえ、玉砕や潔い自決が美徳とされたあの時代の兵隊さんたちの内面を知ることや理解することが到底難しい中で、冷めた視線をもち、絶対に生きて帰るんだという意志をもつ現代っ子的なキャラである西郷(二宮和也)を中間点に置いて第三者的立場で語らせたのは上手いし、各々の人物の深みのある人間像の描き方には唸るしかない。

誇りある帝国軍人としての教育と鬼畜米英の精神的な貧弱さを徹底的に叩き込まれてきたであろうエリート憲兵隊員清水(加瀬亮)が現実と真実を目前で見せられることによって、理想と信念が揺らいでいき生への執着を見せ始める様、そして極めつけは今まで典型的ステレオタイプの憎まれ役で描かれてきたであろう厳格な帝国軍人伊藤中尉(中村獅童)のあまりにも皮肉の効いた顛末など、どれをとっても本当に考えさせられてしまう描写の連続だったと思う。

「天皇陛下万歳!」と叫ぶ姿、泣き叫びながら手榴弾を腹に抱いて自決する酷い姿、ものすごい砲弾の雨あられの中で排泄物の入ったバケツを四苦八苦しながら拾い上げる姿、、本音と建て前のひずみの中に埋没していき、もがき苦しむ日本兵の姿に、人間の、そして日本人の深い所をえぐられたような、そんな重い衝撃を受けた。

先日開業したばかりの最新設備が調っているシネコンで見たのだが、閉所恐怖症の自分は地下洞窟の中に響き渡る砲弾の轟音を聞いて足がガクガク震えそうになったくらいだ・・・。

そして、序盤で米軍が硫黄島を爆撃してくるシーンで空から爆弾がズドーンという腹に響くもの凄い爆音とともに砂塵を巻き上げて降り注いでくるところなんかは、ああ、これが爆弾が空から落ちてくるってことなんだ、と生まれて初めて実感したというか体感した気がする。

もちろん、この映画が硫黄島の戦いの悲劇を全て描き出していたとは思わない。

8月にNHKスペシャルで「硫黄島玉砕戦/生還者61年目の証言」を見たが、それによると米軍が硫黄島を制圧した後も何千という日本兵が地下にこもっていたそうだ。

そして“生きて虜囚の辱めを受けず”と徹底的に教育され投降が許されなかった彼らを新たに襲ったのが飢餓だったというのも悲しい・・・。

炭を食べたとか、遺族の方には決して話せないような仲間内での陰惨な悲劇など、それを証言者の一人は「畜生の世界」と言っていたのがあまりにも印象的だった。

いまだ1万数千もの日本兵の遺骨が未収集のまま眠っている硫黄島。

それを知っている日本人ははたしてどのくらいいるのだろうか。

自分も初めて知ったくちなのだが、渡辺謙がインタビューで言っていたように日本人は過去の戦争についてあまりにも知らなさすぎる。

それを戦後60年経った今考えさせてくれた今回の映画には感謝してもしきれないくらいだ。

中国映画の「鬼が来た!」(ちなみに本国中国では上映禁止処分)、そして今回のアメリカ映画「硫黄島からの手紙」で中国人、アメリカ人が提示した一言では括りきれない日本人像に自分は衝撃を受けた。

日本人自身の手で撮った真の戦争映画が世に出る日がいつかやって来るのだろうか・・・。

Posted at 2006/12/29

 -----------------------

野火

689ecc7e483d1c57f823484a793b2c00出演:塚本晋也、森優作、神高貴宏、入江庸仁、山本浩司、中村優子、中村達也、リリー・フランキー

監督・脚本:塚本晋也

(2014年・日本・87分)盛岡フォーラム

内容:日本軍の敗北が濃厚となった太平洋戦争末期のフィリピン・レイテ島。結核を患った田村一等兵は野戦病院行きを命じられ、部隊から追い出される。しかし野戦病院でも食糧不足を理由に追い返され、行き場を失った彼は、酷暑のジャングルを彷徨いつづける・・・。

評価★★★★/80点

今までの戦争映画は、反戦悲劇のイデオロギーを基調としながらも、いわゆる英雄譚めいたミッションもの(作戦遂行もの)のフォーマットをとって、そこにキャラクターやストーリーをかぶせてくることが多かったと思う。

しかし、指揮系統が失われ、飢えて痩せこけた兵士達の撤退作戦と呼べるものですらないジャングルの彷徨にはイデオロギーなど存在するわけもなく、ただただ餓鬼・畜生と化した人間の姿だけが浮き彫りになる。

戦争には物語などない。ある意味それが戦争の真実なのだろう。

また、そのリアリズムを強化するのが目を覆いたくなるほどの人体破壊描写なんだけど、肉体が金属化していく男の不条理をグロテスクに紡いだ「鉄男」から一貫して肉体の内部・深部にフォーカスを絞ってきた監督だけに、今回の映画は監督ならではの破壊衝動と肉体論を結実させたというなるべくしてなった流れだったのだと思う。

でも、人間の身体がいともたやすくグチャグチャになり、そこにウジ虫が湧くような光景こそが戦争の真実なのだろう。

さらにその中で世界から色が消えていくのが戦争だと思うけど、吸い込まれそうな空の青、生命力あふれる密林の緑、そして誘惑してくるような花の妖しげな赤と、大自然のどぎついまでの美しさが際立つ色もまた印象的だった。

しかし、自分は子供の頃、「はだしのゲン」や「黒い雨」「ビルマの竪琴」などを親に見せられて戦争に対するトラウマを植え付けられたくちなんだけどw、この映画はそのレベルを超えていて子供に見せるのは躊躇しちゃいそう

 -----------------------

野火(1959年・大映・105分)NHK-BS

 監督:市川崑

 出演:船越英二、ミッキー・カーティス、滝沢修、浜口喜博、石黒達也、稲葉義男

 内容:太平洋戦争末期、フィリピン戦線レイテ島で日本軍は山中に追い込まれ飢餓状況にあった。病気で原隊を追い出され、野戦病院にも入れてもらえない田村一等兵は、敗走する戦友2人と合流するが、飢餓に苦しむ彼らは“猿”と称して兵士の死肉を食べていた。田村は彼らと決別し、さらなる彷徨を続けるが・・・。

評価★★★/65点

2015年の塚本晋也監督版を先に見てからの鑑賞。大岡昇平の原作を読んだことがないので分からないけど、塚本版がかなり忠実にこの市川版を踏襲していることが分かってちょっと驚いた。

ただ、市川版の方がモノローグやセリフで状況を論理的に説明していて分かりやすいんだけど、視線を一向に合わせない上官など物語性を排除し、人間が人間でなくなる非論理の世界をまるで白昼夢のように肌感覚に迫るまで描き切った塚本版の方が上か。

あとはやっぱり市川版のモノクロに対し、塚本版のカラーが活写するどぎつい天然色の威力は凄まじく、映画の世界観をより増幅させていたと思う。

と、なぜか塚本版にばかり目がいってしまったけど、感傷に訴えてくる市川版の手法も決して悪くはない。

今度は原作の方をしっかり読んでみたいと思う。

 ------------------------

ハクソー・リッジ

171672_02出演:アンドリュー・ガーフィールド、サム・ワーシントン、ルーク・ブレイシー、ヒューゴ・ウィーヴィング、ヴィンス・ヴォーン

監督:メル・ギブソン

(2016年・豪/米・139分)WOWOW

内容:アメリカの田舎町で育ったデズモンド・ドスは、「汝、殺すことなかれ」の教えを胸に刻んで育ってきたが、第二次世界大戦が激化する中、衛生兵であれば自分も国に尽くせると陸軍に志願する。しかし訓練で武器に触れることを拒否。上官や他の兵士たちから嫌がらせを受け、ついには命令拒否で軍法会議にかけられるも自分の主張を貫き通し、晴れて衛生兵として従軍を認められる。そして1945年5月、デズモンドは沖縄の激戦地で150mの断崖がそびえ立つハクソー・リッジ(前田高地)に到着するが・・・。

評価★★★☆/70点 

実話というのは恐れ入った。

のどかで平和な平時に一般人がライフルを所持していたら逮捕され裁判にかけられるけど(当のアメリカは別としてもw)、戦時に一般人が兵士と名を変えた時に所持を拒否すると裁判にかけられるという、戦争の持つ矛盾。志願兵でありながら武器を持たないで戦争に向かう主人公のバックグラウンド。そして彼の宗教に裏打ちされた倫理観、正義感が軍隊においてはいかにおかしなことなのか。

これらを理解させるのに1時間もの長尺を使って描いたのは、メル・ギブソンの覚悟を感じさせて良い。

そして、それでもっての後半、肉片飛び散る沖縄の戦場の地獄絵図😵

四の五の言わせぬあまりの凄惨さは、前半の理屈などひねりつぶしてしまうほど強烈だけど、そこで信念を貫き通す主人公の神ってる姿にただただ圧倒されてしまった。

日本軍については、バンザイ突撃なども描かれていて特に違和感はなかったけど、沖縄戦の特徴である軍民混在の実像には程遠いように感じた。

ハクソーリッジのあった浦添では住民の2人に1人が亡くなり、4軒に1軒が一家全滅という悲劇を被ったという。

戦争はダメだねホントに。

日本映画でちゃんとした沖縄戦を描いた映画作ってくれないかなぁ。。

P.S.日本は赤紙1枚で戦争へというイメージが強いせいか嫌々行きました感がつきまとう。しかしアメリカは第二次世界大戦の映画を見ると先を争って志願したというイメージがあって、今作なんて入隊テストに落ちて地元の知り合いが2人自殺したなんて話まで出てきてビックリ。

そんな中、武器は絶対持ちたくないし、人を殺したくないけどお国のために戦争に行きたいって、お上の立場からしたら確かにめんどくさいのかもw

 ------------------------

太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-

Img_0出演:竹野内豊、ショーン・マッゴーワン、井上真央、山田孝之、中嶋朋子、岡田義徳、トリート・ウィリアムズ、ダニエル・ボールドウィン、阿部サダヲ、唐沢寿明

監督:平山秀幸

(2011年・東宝・128分)WOWOW

 

内容:1944年、日本軍の重要拠点であるサイパン島。劣勢に立たされていた守備隊は、圧倒的な兵力差を誇るアメリカ軍に上陸を許し、陥落寸前まで追い込まれていた。そしてついに軍幹部は玉砕命令を発令。そんな中、陸軍歩兵第18連隊の大場栄大尉は生きることに執着し、無駄死にすることなくアメリカ軍への抵抗を続けることを決意する。そんな彼の人望を慕って、上官を失った兵士や民間人たちが集まってきて、やがて彼らはサイパン島の最高峰タッポーチョ山に潜み、ゲリラ戦を展開していく・・・。

評価★★★/60点

サイパン島の激戦終結後も多数の民間人と共にジャングルにこもり1年半もの間アメリカ軍に抵抗しつづけた大場大尉の実話を日本軍、アメリカ軍双方に加えて民間人も含めた視点から描いた丁寧な筆致は好感が持てるのだけど、作品としてはあまりパッとしない印象。

要は、アメリカ軍視点はいらなかったと思う。

この映画の軸となるべきは、一人でも多くの敵を殺し、生きて虜囚の辱めを受けず徹底抗戦すべし!という、軍人勅諭や戦陣訓によって叩き込まれた軍人としての使命感と、一人でも多くの日本人を生かし日本の地を踏ませたいという人としての思いの狭間の葛藤を縦軸に、軍人と民間人がジャングル奥地で共生するという異常な状況下での苛酷さを横軸にして描かれるべきものだからだ。

しかし、それが米軍視点の勝手な賛美が介入してくることにより、何かうわべだけの美化描写になってしまった感が否めない。

例えば横軸として挙げた軍民一体化は、沖縄戦最大の悲劇といってもよく、その先駆として行われたサイパン戦でも追いつめられた民間人はバンザイクリフから次々に飛び降りていったわけで、“奇跡”などという綺麗事では片づけられないそういう戦争のおぞましさや悲惨さを描かなければサイパン戦を題材にした意味がなかろう。そこがこの映画は甘いし浅いと思う。

せっかくの井上真央や中嶋朋子の良い演技があるのに、その存在価値が軽くなっちゃってて、なんかもったいなぁと。

まぁ、唐沢寿明演じる堀内一等兵の人物造形なんかは完全に浮いてたけど、岡本喜八の独立愚連隊に出てきそうなキャラで個人的には好きだったw

って本当にいたんだ!こんな入れ墨兵士

 -----------------------

聯合艦隊司令長官山本五十六-太平洋戦争70年目の真実-(2011年・東映・141分)WOWOW

 監督:成島出

 出演:役所広司、玉木宏、柄本明、柳葉敏郎、阿部寛、吉田栄作、椎名桔平、坂東三津五郎、原田美枝子、田中麗奈、伊武雅刀、宮本信子、香川照之

 内容:日本が恐慌にあえいでいた1939年。国内では好戦ムードが盛り上がり、陸軍が日独伊三国同盟の締結を強硬に主張していた。しかし、海軍次官の山本五十六は慎重論を唱える。ドイツと結べばアメリカとの戦争は必然であり、両国の国力の差を見知っていた山本にとっては絶対に避けなければならない戦いだった。そんな中、山本は聯合艦隊司令長官に就任するが、その翌年に三国同盟が締結され、対米戦が日に日に現実味を帯びてくる・・・。

評価★★★/65点

太平洋戦争を題材にしたこのての映画を見ると、国力が日本の10倍のアメリカに勝てないことは明白でありながら、あの悲惨な戦争をおっ始めた挙句、日本を焼け野原にするまで延々と長引かせた責任者は誰なのかという視点を拭い去れないのだけど、この映画を見るかぎりその責任は内地で談合を繰り返す軍人官僚や日独伊三国軍事同盟を強行した陸軍上層部にあったということらしい。

また、真珠湾攻撃やミッドウェー海戦での不手際も南雲中将など取り巻きにその責任はあり、山本五十六はつとめて冷静かつ良心的な名将として描かれている。

要は、彼の言うとおりにしていればあんな事にはならなかったのに、という描き方だ。

そこに若干の違和感を感じずにはいられないのだけど、役所広司の堂々とした存在感と物腰柔らかな包容力にほだされて、結局受け入れてしまう(笑)。

いや、それじゃダメなんだけど、こういうエリート軍人を伝記ものに括るような映画はどうしても美化のフィルターがかかってしまうのだということを承知して見ないとダメなんだろうね。

ただこの映画、評価できるところも少なからずある。

それは戦争を遂行したのは軍部であることは明白なのだけど、軍部だけが突出して暴走していたのではなく、マスコミ・メディアが戦争をあおり、国民自身が好戦的ムードに包まれそれを後押ししていたという点を描いたところだ。

もちろんその背景には不景気や政治不信といった社会の閉塞感、また軍国教育や大本営発表といった情報操作があったのだろうけど、その図式はなにも当時にかぎったことではなく今の世の中にも通じるものだろう。

だからこそ「自分の目と耳と心を開いて広く世界を見なさい」という山本五十六の言葉をしっかり噛みしめなければならないのだと思う。あの戦争を絶対繰り返さないためにも・・・。

 -----------------------

陸軍(1944年・松竹・87分)WOWOW

 監督:木下恵介

 出演:田中絹代、笠智衆、上原謙、東野英治郎、杉村春子

 内容:九州小倉で質屋を営む高木家は、奇兵隊の山県有朋の知己を得たことをきっかけに、お国への滅私奉公を家訓としてきた。明治37年、智彦は使用人のわかと結婚。やがて日露戦争が勃発するが、智彦は病弱のため前線で働けず、銃後でしか国に尽くせなかった。それから時を経た昭和。智彦は果たせなかった思いを太平洋戦争に出征する息子に託す。妻のわかも天子様のために役立てるのだと安堵する中、出征の朝を迎えるが・・・。

評価★★★★/75点

原恵一監督の「はじまりのみち」において丸ごと引用した「陸軍」のラストシーンに痛く心を打たれ、見たいと思っていたらTV放送していたので鑑賞することに。

まず、冒頭の松竹のロゴの登場シーンからえらく古い映画だなと思ってたら昭和19年だって

しかし、軍が主導した戦意高揚映画が「陸軍」の他にも何本も作られていたなんて、不幸で悲しい時代だったんだなと改めて思う。

肝心の映画の方は国策映画とはいえ、当時の風俗や時代の風潮が色濃く感じられて有意義だったし、母親が戦地に向かっていく息子を見送るラスト10分はやはり感動的で胸に迫ってくるものがあった。

それまでは「天子様からの預かりもの」である息子が立派な兵隊になれるように小さい頃から厳しく叱咤しながら育ててきた軍国の母のお手本のような姿が印象的だったけど、いざ息子を送り出す段になると、気丈な建前から一転哀しみの本音が顔を出してくるのは母親として自然なことだろうし、当然なことを当然なこととして描いた勇気に拍手したい。

他にも子供が橋から川に飛び込む度胸試しみたいなところを通りかかった母親が、男なんだから潔く飛び込め!と背中を押したり、今の時代では考えられないシーンもあったりして面白かった。

あと、印象的だったのが水戸光圀編纂の大日本史が一家の家宝として象徴的に映し出されていたことだ。

これは光圀が創始した水戸学というものが、絶対の忠誠の対象は将軍や殿様などではなく天皇なのだとした朱子学的思想の一環として編まれたものであるため、天子様=天皇を尊ぶ教典として重宝されたことがうかがえるものなのだろうと思われる。

いずれにしてもこの映画は時代を越えて残されるべき作品だし、今だからこそ見なければならない映画だと思う。

2018年5月 2日 (水)

夢のシネマパラダイス211番シアター:マトリックスより面白いかも!?なSF映画特集

レディ・プレイヤー1

91olssy1sl_ac_uf10001000_ql80_出演:タイ・シェリダン、オリヴィア・クック、ベン・メンデルソーン、サイモン・ペッグ、森崎ウィン、マーク・ライランス

監督:スティーヴン・スピルバーグ

(2018年・アメリカ・140分)東宝シネマズ日本橋

内容:西暦2045年。超格差社会で夢も希望もない荒廃した世界の中で、若者たちは好きなアバターになって睡眠と食事以外何でも出来る理想郷のようなVR仮想世界「オアシス」に夢中になっていた。そんなある日、オアシスの創設者が亡くなり、彼の遺言が発表される。それは、オアシスに隠された3つの謎を解き明かした者に莫大な遺産とオアシスの全権を譲り渡すというものだった。世界中のプレイヤーたちが騒然とする中、オアシスにしか自分の居場所を見出せない17歳の少年ウェイドもその争奪戦に挑んでいくが・・・。

評価★★★☆/70点

もはやゲーム世界よりリアルワールドをサバイブする方がデンジャラスでアドベンチャーな自分にとって(笑)、さすがに「オアシス」のようなVR世界だったら没入できちゃうだろうなぁ。

そういうワクワク感はたしかにある映画だったと思う。

ただ、にしては映画への没入感がそこまで高くなかったのがある意味不思議で、おもちゃ箱をひっくり返したように80年代ポップカルチャーの懐古主義に彩られた様々なキャラクターがわんさか出てきても、結局それは魂のない空の器でしかないというか、なんかウォーリーを探せ!みたいな楽しさしかなかったというのが正直なところ。

そういう意味では、楽天的な80年代の勧善懲悪ものな物語のフレームワークと最先端テクノロジーの映像世界とのかみ合わせもたいして響いてこず・・。

まぁ、この映画に「マトリックス」や「アバター」のような奇をてらった斬新さを期待していたわけではないにせよ、まるで20年前に公開されていたとしても何の驚きもない古臭さは悪い意味で感じちゃったかな。。

けど一方では、巨匠という肩書きを下ろして羽根を伸ばしたスピルバーグらしさを久々に見られた嬉しさというのもあって、結果レディプレイヤー2があったら見ちゃうだろうなw

P.S. リアルな人物キャラとヴァーチャルのアバターキャラのギャップを意識したあるあるキャスティングは良かったけど、主人公はもっと根暗ないじめられっ子のオタクに振れてた方がよかったと思う。

 -----------------------

13F

13f_sml 出演:クレイグ・ビアーコ、グレッチェン・モル、ヴィンセント・ドノフリオ、アーミン・ミューラー=スタール

監督・脚本:ジョセフ・ラスナック

(1999年・アメリカ・100分)DVD

内容:コンピュータ・ソフトの開発者ホールは、ヴァーチャル・リアリティの技術を使ってコンピュータ内に1937年のロサンゼルスを再現しようとしていた。ところが上司が殺害される事件が起こり、ホールが容疑者となってしまった。しかも彼にはアリバイがないどころか、犯行時間の記憶さえ失っていた。やがて彼は、殺害された上司が研究の過程で、1937年の仮想世界と現実世界を行き来していたことを知る・・・。

評価★★★☆/70点

こういう隠れたB級SFを見つけるとすごく嬉しくなっちゃうけど、まさか仮想と仮想の二段オチで来るとは想定外で、うまくダマされてしまいますた・・・。

なんか、「マトリックス」よりは、鈴木光司の小説「ループ」(リング・らせんの続編)の方を思い浮かべたんだけど。

あと、地味ぃ~な映画にあって存在感を出してた女優さんも色気があってグー!

ただ、“地の果て”をバカ分かりやすく描いちゃうところなど、稚拙なところも見受けられるのが難点で、まぁB級と思って見ればフツーに楽しめる作品だからいいんだけど。。

すでに人の一生は天によって決められている運命、実は高次の存在(=神)に操られているちっぽけな存在の現実世界。こういう妄想!?の映画化って実は大好き(笑)。

昔はよくそんなこと妄想してたけど、、今は現実を生き抜くので一杯いっぱい・・。

でも、こういうヴァーチャル・アトラクションがあったら面白いだろうなぁ、って考えてみれば面白い映画を見て、その世界の中に浸るってのもいっぱしのヴァーチャル・アトラクションなんだよね。

よし!これからもめくるめく映画体験を楽しむどー!

 -----------------------

ダーク・シティ(1998年・アメリカ・100分)WOWOW

 監督・脚本:アレックス・プロヤス

 出演:ルーファス・シーウェル、キーファー・サザーランド、ジェニファー・コネリー、ウィリアム・ハート

 内容:ホテルの一室で目覚めた一人の男。傍らには見知らぬ女の死体があるが記憶が全くない。暗闇の街を彷徨う彼だったが、次々と出会う人物は謎めき、妻と名乗る女性の記憶すらない。そんな深夜12時。あらゆる時計が停止し、彼以外の人々は突然昏睡状態に陥ってしまった・・・。

評価★★★☆/70点

まるでゴキブリのごとく夜中にコソコソ出てきて人の心を喰う異星人、、ってあれだけ強力な超能力を使えるんだったらとっとと侵略しちゃえばいいのにという設定や、「マトリックス」の1年前の作品とは思えないハリボテ感覚もご愛嬌、SFものとしては意外に楽しめてしまう一品になっている。

SF畑の旗手になっていきそうな雰囲気のあったアレックス・プロヤスの原点を知る上でも見て損はないだろう。

しかしこれ、押井守の「うる星やつら2」からかなりインスピレーションを得てると思うんだけどww

 -----------------------

ニルヴァーナ(1996年・フランス・113分)NHK-BS

 監督:ガブリエル・サルヴァトレス

 出演:クリストファー・ランバート、ディエゴ・アバタントゥオーノ

 内容:2050年のクリスマス。ジミーは多国籍企業オコサマ・スター社のゲームクリエイター。彼が作り出したゲーム「ニルヴァーナ」は発売を3日後に控えていた。しかし、突然、ゲームのキャラクターであるソロがコンピューターウイルスに侵され、独自の感情“自我”を持ち始める。ソロは、何度も繰り返し殺される人生を送るのはイヤだと、自分自身のデータを消去し仮想世界から自分を自由にしてほしいと訴える・・・。

評価★★/40点

ジミーさん、そんなに頑張らなくたって大丈夫だって。あんなゲーム誰も買わないから(笑)。。

 -----------------------

アヴァロン(2000年・日本・106分)CS

 監督:押井守

 出演:マウゴジャータ・フォレムニャック、バディスワフ・コヴァルスキ、イエジ・グデイコ

 内容:失われた近未来。現実世界で生きる希望を失った若者たちは仮想戦闘ゲーム“アヴァロン”に熱中していた。それは時に脳を破壊し、現実に戻れない未帰還者をも生み出す危険な非合法ゲーム。そんなアヴァロンで注目を集める孤高の女戦士アッシュ。日増しにレベルを上げていくアッシュの前にある日、彼女のプレイを模倣し彼女を挑発する謎の戦士が現れる。アッシュはこの男の正体を探り始めるが・・・。押井守が実写とアニメをデジタル化しコンピュータで再現した革新的SFアクション。全編ポーランドロケを敢行し、戦争シーンではポーランド軍の全面協力を仰いでいる。

評価★★★/60点

エセ実写というフィールドに転職していくにはまだ経験値が低いし、ゴールドもまだまだ足りないんじゃないスかとしか言いようがない出来・・。

旧態依然としたものへの反逆なのか、新しもの好きの実験なのかどうかは知らんが、そういうこと以前に映画の文法が旧石器時代的な拙さに覆われているのだから呆れ返って言葉も出ない。

それでも異国の不可思議なオーラ漂う映像と印象的なスコアによって最後まで見れる風にはなっているんだけど、後には何も残らないという・・。

押井さん、自分のフィールドにお戻りなさい。あーた下手すると未帰還者になっちゃいますよ。ご忠告。。

 -----------------------

リターナー(2002年・東宝・118分)DVD

 監督:山崎貴

 出演:金城武、鈴木杏、樹木希林、岸谷五朗

 内容:依頼者からの情報をもとに闇の取引現場に潜入し、ブラックマネーを奪還、寸分無く依頼者にその金を送り戻す“リターナー”ミヤモトは、少年時代に親友を殺した男・溝口を見つけ出したものの、激しい銃撃戦の末に取り逃がしてしまう。だが、その現場に居合わせ、自分は82年後の未来から時空を超えてやって来たという謎の少女ミリから、地球存亡に関わる重大なモノの奪還を依頼される・・・。

評価★/25点

アメリカで公開すればパロディ映画間違いなし。

香港で公開すればなにかの海賊版間違いなし。

韓国で公開すれば日本映画ショボっと思われること間違いなし。

万国共通の理解、、奥行き狭まっ。。

 -----------------------

サウンド・オブ・サンダー(2004年・アメリカ・102分)WOWOW

 監督:ピーター・ハイアムズ

 出演:エドワード・バーンズ、キャサリン・マコーマック、ベン・キングスレー

 内容:西暦2055年、人類はタイムトラベルを実現していた。そしてシカゴの旅行代理店は、6500万年前の白亜紀にタイムトラベルして恐竜狩りを楽しむというツアーを主催していた。が、ある時、ツアー客の一人が気付かぬうちにごく小さな何かを過去から持ち帰ってしまったため、タイムトラベルの三原則<変えない・残さない・持ち込まない>が破られ、地球上の進化が大きく狂ってしまう。そして6500万年分の進化の波が地球に押し寄せてくるのだった・・・。

評価★★/40点

せめて「ジュマンジ」(1995)並みのCG技術は使ってほしかったな(笑)。まっさか中学校の文化祭レベルでやって来ようとは思いもよらなかった・・・。

進化の波が次々に襲ってくるプロットを扱っていながら映画技術は退化かよっ。。

絶対にビッグ・バジェットを狙えるネタなのに、おもいっきりB級だし、そもそも恐竜狩りツアーって・・・。なんかよく分からんわ、この製作陣の頭中。。

 -----------------------

JM(1995年・アメリカ・105分)CS

 監督:ロバート・ロンゴ

 出演:キアヌ・リーブス、北野武、ディナ・メイヤー、ドルフ・ラングレン

 内容:電子化が極限まで進んだ西暦2021年、人類は電子機器から発せられる電磁波により“NAS”という奇病に苛まれていた。特定の情報を脳に埋め込まれたチップに記憶させる情報の運び屋ジョニーは、北京である情報を記憶するが、それは全人類の命運を賭けるものだった・・・。

評価★★★/55点

半径200mの世界で何やらちょこまかやってるってかんじ。。

 -----------------------

うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー(1984年・東宝・98分)ANIMAX

 監督・脚本:押井守

 声の出演:平野文、古川登志夫、藤岡琢也、神谷明、千葉繁

 内容:友引高校の学園祭を明日に控え、あたる達は泊り込みで準備に大忙しだった。ラムも飛び入りしてのドタバタ騒ぎが続く中、なぜかあたる達は翌日も学園祭の準備を繰り返している。同じ毎日が延々と続いているらしいと気付いた教師のサクラは、生徒たちを校内から追い出して謎の解明に乗り出した・・・。高橋留美子の原作漫画のキャラクターを借りながら、大胆なオリジナル・ストーリーを展開した押井守の作家性が高く評価された劇場版第2作。

評価★★★/65点

生まれて初めてうる星やつらを見た自分が、この映画についてとやかく言うのはやめといた方がよさそう・・。そもそもこのTVアニメって、いつやってたんだろ、、全く見た覚えがないんだけど。。

小・中学でドラゴンボールを見て育ったまさにドラゴンボール黄金世代の自分には、うる星やつらのうの字も出てこないわけで・・。

原作も読んだことないし、TVアニメも見たことないわけだから映画と比較するべくもないんだけど、ただ押井ワールドの原点を垣間見れたという点においてのみ有意義な時間を過ごせたかな、と。。

2018年4月 2日 (月)

夢のシネマパラダイス385番シアター:6歳のボクが、大人になるまで。

ムーンライト

266664

出演:トレヴァンテ・ローズ、アンドレ・ホランド、ジャネール・モネイ、アシュトン・サンダーズ、ジャレル・ジェローム、ナオミ・ハリス、マハーシャラ・アリ

監督・脚本:バリー・ジェンキンズ

(2016年・アメリカ・111分)WOWOW

内容:マイアミの貧困地域。小学校でチビ呼ばわりされ毎日いじめられている内気な少年シャロン。麻薬中毒の母親ポーラから育児放棄にも遭っている彼にとって心を許せるのは、ひょんなことから助けられ何かと面倒を見てくれる麻薬の売人フアンとその恋人テレサ、そして同級生のケビンだけだった。やがて高校生になったシャロンは、ケビンに友だち以上の感情を抱き始め・・。

評価★★★☆/70点

人種差別、LGBT、貧困、イジメ、虐待、ドラッグと、主人公を取り巻くありとあらゆるマイノリティの苦難。

あまりにもヘヴィーでキレイごとではない内容ながら、見終わってみるとキレイな映画だったなぁという意外な印象。

それはおそらくリトル、シャロン、ブラックの3話構成に起承転結でいうところの承しかないという大胆な省略術によるところが大きいのだと思う。

特にシャロン→ブラックへのまるで別人な変貌は完全に転なのだけど、その間の過程および因果関係が全く描かれていないため、自壊寸前のダークな暴力性よりも感傷に流されるピュアな叙情性の方がより強調されたということだろう。

この映画はそこをどう捉えるかがキモだと思うけど、個人的には映画としてのパンチ力に若干欠けるかなという印象。。

ただ、役者がすこぶる良いので、描かれなかった余白にこちら側がくみ取れるだけの具体的な心情を乗せることができているのは、さすがアカデミー受賞作だけのことはあるなとは思った。

しかし、フアンをあっさり退場させるなんて10人脚本家がいたら1人くらいしか思いつかない芸当だろうなw

 ------------------------

6歳のボクが、大人になるまで。

20150410230940出演:パトリシア・アークエット、エラー・コルトレーン、ローレライ・リンクレーター、イーサン・ホーク

監督・脚本:リチャード・リンクレーター

(2014年・アメリカ・165分)盛岡フォーラム

内容:テキサスの小さな田舎町に住む6歳の少年メイソンは、シングルマザーのオリヴィアと姉サマンサとの3人暮らしで、父親は離婚してアラスカへ旅立ったまま。そんな中、母親が博士号を取るためにヒューストンへ引っ越すことに。そこで少年時代を送っていくメイソンは、母の再婚や父との再会、そして初恋と様々な経験を重ねていく・・・。オーディションで選ばれた6歳の少年エラー・コルトレーンを主演に据え、主人公の6歳から18歳までの12年間の成長と家族の物語を、実際に12年間かけて撮影するという斬新な手法で描き出したヒューマンドラマ。

評価★★★☆/70点

数あるメディアの中で映画に最も魅かれるのはなぜなのか。

それは言いかえれば、映画の映画たるゆえんは何なのかということでもある。

映画は視覚芸術だという一言で片付けることもできるけど、おおむね2時間前後しかない強い拘束力を受けている中で、時間軸の省略や要約などスクリーン上で時間を変化させ再創造する、その映画固有の時間表現ーカットとモンタージュの組み合わせーに夢のような能力を感じ取っているからなのかもしれない。

それは飛躍、短縮、シンクロなど時として目も覚めるような形で時間の流れの異様さをあらわにする。

そういう点では今回の映画は、同じキャストで足かけ12年に渡る撮影を経て家族の軌跡を3時間に収めるという今までにない手法で作られているのだけど、12年という淡々とした時間の流れ=人生がすでに立派なドラマになっているのだということを如実に感じられる作品だったと思う。

映画のひとコマひとコマ1ショット1ショットが一瞬間を表し、これらの固定した各コマの映像の一連続から映画全体が成り立っていることを思えば、「時間は途切れない。一瞬というのは常に今ある時間のことだ」というラストのセリフはこの映画の構造を象徴していて印象深い。

瞬間瞬間の積み重ねが人生を形づくっていく、まさに“今を生きる”ことの愛おしさ、尊さが染み渡ってきた。映画を流れるこういう時の流れも悪くはない。

あと、興味深かったのが家庭環境あるいは食卓風景の中にまで大統領選などの政治やイラク戦争、マリファナ、銃などが当たり前のように浸透していることで、アメリカの社会背景が垣間見れて面白かった。

 ---------------------

マイライフ・アズ・ア・ドッグ

084 出演:アントン・グランセリウス、マンフレッド・セルネル、メリンダ・キンナマン

監督:ラッセ・ハルストレム

(1985年・スウェーデン・102分)NHK-BS

評価★★★★/75点

 

内容:1950年代末のスウェーデン、海辺の町に住む少年イングマルは、たとえつらいことがあっても、ソ連の人工衛星スプートニクに乗せられて死んでしまったライカ犬よりは自分の方がまだマシだといつも思っていた。母親の病気がひどくなって、叔父の家に引き取られることになったイングマルは、ある日、サッカーの練習に行って鮮やかにゴールを決めるガキ大将サガに出会う・・・。人生に目覚め、少しずつ大人になっていくナイーブな少年の成長物語。

“見たいものと見たくないもの”

少年イングマルはベリットの裸は見たかった。しかし母親の怒り叫ぶ姿と怒鳴り声には耳をふさぎ自分のワーワー声でかき消して目をそむけていた。

星空の向こうにある母親との楽しい思い出は見たかったが、病床で母親が苦しむ姿からは目をそむけて見たくなかった。

ライカ犬が自分より不幸だったであろう姿は必死に頭をめぐらせて見たかったが、自分が抱えている悩みや苦しみからは他の不幸に代用することによって目をそむけていた。

しかし、叔父の家で成長した今のイングマルなら、それら見たくないものからも目をそむけることはないだろう。

そいえば、個人的なことになるけど、自分が小1の時に劇場で親に見せられたアニメ映画「はだしのゲン」は自分の想像力を破壊してしまうほどの残酷さにもう見れなくて見れなくて耐え切れなくて、ずっと後ろを振り返って映写機から出てくる透明で青白い光の粒子のカーテンをじっと見つめていたことが今でも思い出される。でもそれから数年後に見た「火垂るの墓」はちゃんと見れたっけ。

ちなみに小1の時に、「はだしのゲン」は見たくなかったけど、テレビで夕方5時からやってたテレビドラマで毎回出てくる大原麗子の入浴シーンは見たかった(笑)。5時までに遊びを切り上げてまで見てたからなぁ・・

20年経った今でも記憶に残ってるくらいなのだから大原麗子にメロメロだったんだろうなオレ。。イングマルがベリットに夢中だったように。

それにしてもベリットの像は何処へ・・・。

今自分が見たいのはあの像だな。見たくないのはもちろん我が愛しのレアル・マドリーの敗れた姿です。

2025年3月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
無料ブログはココログ