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2019年9月22日 (日)

夢のシネマパラダイス596番シアター:あなたは昨日食べた夕食を思い出せますか?

秘密 THE TOP SECRET

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出演:生田斗真、岡田将生、吉川晃司、松坂桃李、栗山千明、リリー・フランキー、椎名桔平、大森南朋

監督:大友啓史

(2016年・松竹・149分)WOWOW

内容:死者の脳にアクセスし、その人物が見た映像を再生するMRIという捜査手法で事件解決を目指す特別捜査機関“第九”。ある時、一家惨殺事件を起こし死刑が執行された露口(椎名桔平)のMRI捜査が行われることに。それは今も行方不明となっている一家の長女・絹子の手がかりを探るためだった。第九の室長・薪(生田斗真)にスカウトされた新人捜査官・青木(岡田将生)は露口の脳内に潜入。が、そこに映っていたのは思わぬものだった・・・。

評価★★☆/50点

死者の脳内に残った視覚情報を映像化し、それをもとに犯罪捜査を行うというアイデアは、死者の脳に眠る記憶にダイブし秘密を探るプロットが出てくる海外ドラマ「フリンジ」を想起させ、いまいち消化不良だった同監督作「プラチナデータ」を超えるような本格SFサスペンスを基調とするのかと期待したのだが・・。

フタを開けてみたら「ハンニバル」以来の脳みそ観賞付き&近親相姦まであるグログロな猟奇殺人もののサイコホラーで気分が萎えた。

また、例えば28人殺しの凶悪犯・貝沼(吉川晃司)の脳内映像を見て、多くの捜査官があっちの世界に引きずり込まれておかしくなったとは具体的にどういうことなの?とか、絹子と貝沼、薪と貝沼、薪と鈴木(松坂桃李)の関係性など全ての要素が説明不足でストンと腑に落ちてこない。

要はあれやこれやと詰め込みすぎなのかもね。

そういう点では、少女でありながら稀代のサイコパスという露口絹子のキャラ設定が今まで誰も手を出そうとしてこなかったタブーな領域ゆえに、映画として絹子の一点突破で突き進んだ方がまだマシだったのではないかと思ってしまう。まぁ、だからといってそれを見たいかといわれたら勘弁して下さいってなるけども(笑)。。

映像は毎度のことながらエッジが効いているだけに、脚本頑張れとしか言いようがないね・・。

P.S.「客観的に見ないとダメだ。主観的に見てしまうとあちら側に持っていかれるぞ!」ってセリフがあったけど、映画がそうなっちゃってどうするww

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ゲノムハザード ある天才科学者の5日間

Poster2出演:西島秀俊、キム・ヒョジン、真木よう子、浜田学、中村ゆり、伊武雅刀

監督・脚本:キム・ソンス

(2013年・日/韓・120分)WOWOW

内容:ある日、仕事から帰宅した石神武人は妻の死体を発見する。間髪入れずに電話が鳴り出てみると、目の前で死んでいるはずの妻の声で、実家に行くので帰れないという。混乱する中、石神は警察を名乗る2人組に拉致されかけるが間一髪で逃走し、通りかかった韓国人女性記者のカン・ジウォンに助けられるが・・・。

評価★★☆/50点

失われたアイデンティティを奪還するための謎解きサスペンスとアクション満載の決死の逃走劇という点ではボーン・アイデンティティ、またDNAがミステリーの重要なファクターになっているという点ではプラチナデータを想起してしまうけど、そのどちらにも遠く及ばなかったかんじ・・・。

自分の中に別人の記憶が上書きされて頭の中はその人になってしまったものの、現実ではそれぞれに妻がいて2人分の人生が混在してしまうので記憶喪失よりもややこしくてタチが悪いw

しかも見てるこっちが全く先が読めないのはまだしも、主人公までずっと右往左往状態なので、なんか途中からついて行くのがイヤになってくる(笑)。予定調和が全くないのも問題なんだなと。かといって、真実が明らかになっていく後半もでっかく膨らませた風船が一気にしぼんでしまうような失速感に満ちていてイマイチだったし。。

あとアクションに関しても、ジェイソン・ボーンを引き合いに出してしまった時点で分が悪い面があるとはいえ、例えば主人公が追っ手から逃げる時に片側3車線の道路を車にひかれそうになりながら横断するシーンがあるけど、見てて全然ヒヤヒヤしないのw

全体的にチープで子供だましな撮り方で、体張ってますという触れ込みと実際どう撮ってどのように見せるかという違いを分かっていない。

原作の方が何十倍も面白いんだろうなぁってのがありありと伝わってくるような映画だった(笑)ってそれじゃダメじゃん!

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プラチナデータ

O0800113512401227792出演:二宮和也、豊川悦司、鈴木保奈美、生瀬勝久、杏、水原希子、遠藤要、和田聰宏、中村育ニ、萩原聖人

監督:大友啓史

(2012年・東宝・134分)WOWOW

内容:近未来の日本。警視庁の科学捜査機関である特殊解析研究所は全国民のDNAデータを収集登録する“プラチナデータ”を実現。それを活用した捜査システムを使えば一挙に犯罪撲滅を図れる期待がもてるため、政府もDNA法案成立を急いでいた。しかしそんな中、法案反対者やシステム開発の関係者が立て続けに殺害される事件が起きる。そして、犯人の残したDNAから捜査システムが導き出した犯人はシステム開発の責任者である天才科学者・神楽龍平だった。まさかの事態に逃亡を余儀なくされた神楽を、叩き上げの浅間刑事が追い詰めていくが・・・。

評価★★★/65点

原作既読。

全能の捜査システムを操る側にいた人間が一転して犯人として追われる立場になってしまう「マイノリティ・リポート」。

逃亡しながら真犯人を探し出し自らの容疑を晴らそうとする「逃亡者」。

国家によるハイテク監視システムの脅威を描く「エネミー・オブ・アメリカ」。

と、SF・サスペンス・ミステリーの3大要素を日本を舞台にしていながら程よく詰め込んでいる面白さと、近い将来ありえるかもしれないアナザーワールドとしてみれる面白さがあり、映像化には向いてるなと思いながら読破したのだけれど、映画化するにあたって主人公が二重人格という反則スレスレの荒技をうまく落とし込めるのかという不安は少なからずあった。

つまり、事件の時は別人格で、犯人はもしかして自分なのか?というサスペンスと、プラチナデータとは何なのかというミステリーを両立させることができるのかという不安だが、やはり予想通りこの設定が足を引っ張ってしまった感は否めず。

映像面に関しては小説を読んでこちらが思い浮かべていた脳内映像をはるかに凌ぐレベルで上々だったのだけど、話がやっぱ大味になっちゃったよねぇっていう・・・。

神楽はシロであるということに映画自体がはなっから確信をもって描いているし、肝心かなめのスズランが出てこないため二重人格設定が宝の持ち腐れになっていると思うし、そのネタバレに時間を割かなければならないため逆に犯人の動機の描き方やサスペンス要素が未消化になってしまったかんじがする。

まぁ、原作ものの映画化はえてして難しいものだけど、今回は特に難しいものだったように思う。

そういう意味では2時間スイスイと見れるエンタメとして手堅く作られているだけでも良しとしなければならないのかも。。

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ペイチェック 消された記憶(2003年・アメリカ・118分)MOVIX仙台

 監督:ジョン・ウー

 出演:ベン・アフレック、アーロン・エッカート、ユマ・サーマン、コルム・フィオール

 内容:仕事を終えると機密漏えいを防ぐために記憶を消されるという契約で、オールコム社の新システムの極秘開発を行っているSEのジェニングス。大仕事を終えた彼は、記憶消去後に報酬ではなく19個のガラクタを渡され、しかも謎の組織とFBIに追われるハメに。自分はなぜ追われているのか、その謎解きを始めるのだが・・・。

評価★★★★/75点

この頃のベン・アフレックは「パールハーバー」「デアデビル」「ジーリ」など駄作街道驀進中だったので、今作も右から左へ受け流すかのごとく記憶の断片にも残らない作品になっているのかなと勝手に思い込んでいた。

が、ふたを開けてみたら、あらビックリ。ベン・アフレック臭が消えているだけでなく、ヒッチコックを5倍くらい消臭剤で薄めて現代版にアレンジしたかんじで、ホントだったらそんなの評価低くするんだけど、もともと低かった期待値を大きく上回る出来だったということでww

ただ終盤も終盤になって白いハトが出てきてやっとで、あ、監督ジョン・ウーだったんだっけと思い出したくらいジョン・ウー節というか匂いが消されててこれまたビックリ。なにせジョン・ウー必須アイテムの銃が脇に追いやられてしまってるのだから無理もないか。

本当に開発されてたのは、超強力消臭剤だったのか!?

マジメなところジョン・ウー映画の辞書に“逃げる”という言葉が今までなかったように思われるのだけど、今回はそれを上手く採用したことがイイ方向に出たのでは。独特の匂いがしないという副作用もあったけどね。

2019年8月 4日 (日)

夢のシネマパラダイス607番シアター:この世界の片隅に

この世界の片隅に

Img_991d00ed70bbc9cd909072e6988d1c152217声の出演:のん、細谷佳正、稲葉菜月、尾身美詞、小野大輔、潘めぐみ、岩井七世

監督・脚本:片渕須直

(2016年・日本・129分)

内容:昭和19年。絵を描くことが好きな18歳のすずは、幼い頃に見初められたという北條周作との縁談話が持ち上がり、生まれ育った広島から海軍の街・呉に嫁に行くことに。優しい義父母、何かと手厳しい義姉・径子とその娘の晴美ちゃんが暮らす北條家に迎えられたすずは、戦況悪化とともに物資も減っていく中、見知らぬ土地での慣れない嫁仕事に戸惑いつつも日々を過ごしていく・・・。

評価★★★★★/100点

原作マンガは全3巻にも関わらず読み進めるのになかなか時間がかかった。それは欄外の注釈など含めてページごとの情報量が多い上に、さりげないセリフの裏にある感情や意味合いを読者のリテラシーにゆだねる余白と多面性をも有しており、理解咀嚼するのに途中でつっかえて読み返すことしきりだったこと。さらに、井上ひさしの「父と暮せば」で、“あん時の広島では死ぬのが自然で生き残るのが不自然なことだった”と語られるような虚無に覆われる8月6日をなるだけ迎えたくなくて、ページをめくる手をあえてスローにしていたからだ。

しかし、映画はそうはいかない。マンガのように自分の裁量で時間を行き来できるのとは違い、現在進行形の一方通行で否が応でも8月6日はやってくるのだ。

つまりマンガは言ってみればこちらの想像力が試される=すずの記憶をたどるツールだといえる一方、映画はすずの現実を五感で追体験するという違いがあり、なおかつたった2時間に凝縮されているため、平和を享受するこちら側の現実でもって中和する余地がない。

そのためマンガで涙することはなかったけど、映画では目からどんどん塩分を奪われていく結果になってしまった💧

しかし、ここまで銃後の暮らしの日常風景を市井の女性視点で描いた作品はなかったのではないか。

「この国の空」(2015)で若い男は戦場に駆り出され子供は田舎へ疎開し街には女性と老人しかいないという考えてみれば当たり前のことにハッと気付かされたように、銃後の暮らしは女性の暮しなのだ。なのに女性の暮らしを描いた作品、もっといえば何のバイアスもかかっていないごくごく普通の一般大衆家庭の女性の暮らしを描いた作品はほぼほぼ皆無だろう。

そのバイアスとは、一言でいえば作り手側の反戦思想だけど、例えば山田洋次の「母べえ」(2007)の家庭は吉永小百合の旦那がインテリ文学者で治安維持法でしょっぴかれて獄中死してしまうし、「少年H」や「はだしのゲン」(両作とも子供視点だが)に至っては主人公の周りだけが反戦を錦の御旗とするような聖域に守られている。

もちろんそういう誰の目にも明らかな反戦ものはこれからも作り続けなければならないだろうし、モダンな金持ち良家を舞台とする山田洋次の「小さいおうち」(2014)のような一風変わった面白い視点もあるにはある。

しかして、今回の作品が白眉なのは、あからさまな反戦エピソードとは無縁の普通の一家の普通の女性の戦時中の暮らしを普通に描いていることにある。旦那が外地に兵隊に取られずにいるという稀少点はあるにせよ、すずにとっては嫁ぎ先で住む所も名字も変わって慣れ親しんだ実家暮らしから生活が一変してしまったこと、義姉の小言、そしてギクシャクした夫婦関係が10円ハゲができるくらい切実な問題なのだという視点である。

その点で遊郭のリンさんとの重要なエピソードがごっそり抜け落ちているのは消化不良ではあるのだけど、すずの暮らしぶりを切り取っていく「たまげるくらいフツーじゃの~!」な視点は、戦争に対する想像力に乏しい現代人の普通の感覚と70年前の普通の感覚との距離感を確実に縮めている。それにより今のこの世界と地続きな等身大の物語として捉えることができる。

それがこの作品を稀有なものにしている所以なのだけど、それはまだ一面でしかない。最も重要なポイントは、それをもってしても両者の間にある埋められない距離感をさりげなく描いていくことで戦争の不条理をあらわにしていくことにある。

その距離感とは一言でいえば、戦時下にあるにも関わらず普通でいられることに対する違和感だ。

例えばすずの義母が「みんなが笑って暮らせればいいのにねえ」とつぶやくのも、従来だったら戦争の悲惨さを嘆く言葉なはずなのに、ここでは離縁して出戻ってきた自分の娘の境遇を嘆く言葉にしかなっていない。また、「港に爆弾が落ちて来なくなったから魚が獲れなくなっちゃったねえ」という感覚。空襲警報が鳴っても「どうせ来ないやろ、、あらま、今日はホンマに来やさった」(子供時分に三陸沿岸部に住んでいた自分は思わず津波警報と重なってしまった)という感覚。連日の空襲後に洗濯物がススで黒くなってしまうことの方にドン引きしてしまう感覚。そして、公民館の入口脇の軒下に服もベロベロな兵隊が行き倒れているのを誰も気にとめないどころか横目で見ているはずの母親が息子だと気付かない感覚。

これら70年前の普通の感覚は、一見するとまるで戦争が他人事のような感覚にとらわれてしまう。

しかしこれは戦争という非日常が日常と同化してしまっている=左手で描いたような歪んだ世界なのだということにハッと気付かされることになる。

特に衝撃的なのが不発弾の爆発で晴美ちゃんが亡くなってしまったことに対して径子が呪詛の対象を戦争そのものではなく、付き添っていたすずに対して「人殺し!」と罵倒するシーンと、呉の家に焼夷弾が落ちてきた時にすずが消火を躊躇するシーンだ。径子の怒りのやり場のなさ、そして家が焼ければこの町からこの家から堂々と出て行って広島に帰れると思ってしまうすずの心象を描いてしまう。

この「歪んどる自分!」とすずが吐露する点こそ今までの映画で描かれることのなかったところなのだと思う。

玉音放送を聴き終わって「あー終わった終わった」と手際よくラジオを片付けてそそくさと外に出て行った径子が軒裏で娘の名前を連呼しながら泣き崩れているシーンは、歪んだ世界が正常な世界に戻った象徴的なシーンだったように思う。

しかし、考えてみれば昭和6年満州事変、昭和7年五・一五事件、昭和8年国際連盟脱退、昭和11年二・二六事件、昭和12年~日中戦争、昭和13年国家総動員法、昭和14年~第二次世界大戦、昭和16年~太平洋戦争と昭和のはじめから終戦までずっと戦時体制にあったわけで。

戦争の影が何年もかけてジワジワと普通の暮らしを侵食していき、“ぜいたくは敵だ!”“欲しがりません勝つまでは”“遂げよ聖戦”“石油の一滴、血の一滴”と叫ばれ耐乏生活を強いられる中で、戦争の大ごとさに薄々気付きどこかおかしいと思いながらもそれが日常になっていき、空襲も当たり前になれば日常になっていき、あげくの果てに人の死さえ日常になっても順応していくに至るには十分すぎる時間の流れだったのかもしれない。

また一方では、昭和19年8月にすずが「2か月前の空襲警報騒ぎですぐ目の前にやって来るかと思っていた戦争だけど、今はどこでどうしてるんだろう」とボヤくシーンがある。昭和19年8月といったら南方戦線は玉砕に次ぐ玉砕でグアム・サイパンまで米軍に進撃されていたわけで、そういう戦局は本土には知らされていなかったことが分かるけど、終戦1年前いわゆる15年戦争の14年目に至っても一般庶民にとって戦争とはその程度の感覚でしかなかったというのもまた目から鱗の真実だったのだろう。

一度始まったら誰にも止められない戦争、焼け野原になったあとに戦争はひどいものだと言っても遅い。そうならないためにこの映画と「火垂るの墓」は後世に伝えていかなければならない、そんな価値ある作品だったと思う。

2018年5月 2日 (水)

夢のシネマパラダイス562番シアター:家族はつらいよ

家族はつらいよ

E27d8733出演:橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優、小林稔侍、風吹ジュン

監督・脚本:山田洋次

(2016年・松竹・108分)WOWOW

内容:東京郊外に暮らす平田一家。ゴルフと酒をこよなく愛する家主の周造は、定年後の隠居生活を謳歌する日々。そんなある夜、妻・富子の誕生日に気付いて、何でもプレゼントするぞーと言って妻が出してきたのはなんと離婚届!サインとハンコが欲しいのだという。思いもよらぬ事態に同居する長男夫婦と近所に暮らす長女夫婦も集まって家族会議が開かれるが・・・。

評価★★★★/80点

現代版東京物語を松竹伝統の人情ものとしてトレースした「東京家族」にえらく心を打たれた自分。まさかその4年後に全く同じキャストでこれまた松竹伝統のホームコメディに仕上げてくるとは思いもよらなかった。

しかし、「男はつらいよ」「釣りバカ日誌」で培われた昭和印の喜劇調を久々に味わえたのはどこか温かい懐かしさに包まれたし、家族みんなで家の居間で見たんだけど、楽しい時間を共有できてよかった。

さすが安定の山田節といったところだけど、実際は細部まで緻密に作り込まれた隙のない職人芸ということができ、それを全く感じさせないありふれた日常風景として見せるところが山田洋次のなせる技なんだろうね。

また、それをしっかり咀嚼する役者陣も完璧そのもの。

性格を含め「東京家族」と瓜二つのキャラクター設定というのも、混同する違和感よりも既知の安心感の方が勝って映画の世界にすんなり入っていくことができたし。

特に、「東京家族」では大都会東京で行き所のない寄る辺なさに無愛想一辺倒の縮こまった型にはめられていた父親役の橋爪功が、今回は水を得た魚のようにやりたい放題で最高に面白かったし、あとはやはり何と言っても蒼井優♪

毎回言ってるかもしれないけど、理想の結婚相手は蒼井優ちゃんです

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歩いても歩いても

N_609bcdr2214rpl 出演:阿部寛、夏川結衣、YOU、高橋和也、田中祥平、樹木希林、原田芳雄

監督・脚本:是枝裕和

(2007年・日本・114分)CS

内容:夏のある日。子連れのゆかり(夏川結衣)と再婚した良多(阿部寛)は、15年前に亡くなった兄の命日に合わせて東京近郊の実家を訪れる。が、開業医を引退した父(原田芳雄)とはもともと反りが合わなかった上、失業中の身の上でもあり気が重い帰郷だった。ひと足先に、姉(YOU)一家も到着していて、久しぶりに家族全員が集まった。。

評価★★★★/80点

「男はつらいよ寅次郎相合い傘」(1975)にこんなシーンがある。

めちゃ美味メロンを人数分に切って食べようとしたら、ちょうどそこに寅さんが商売から帰ってくるんだけど、妹のさくらがうっかり寅さんの分を勘定に入れ忘れてしまい、いじけた寅さんがとらやの面々と大ゲンカになるという爆笑シーンだ。

たかが一片のメロンごときでしつこすぎるくらいムキになる寅さんの度量の小ささが笑いを生み出すわけだけど、今回の映画も男連中の他人から見れば笑ってしまうような「小っちぇ~」ことにこだわる様がリアルに描かれていてまことに面白い。

しかし、この面白さの裏には思わず背筋がゾクゾクしてしまうような怨念と、思わず卒倒してしまいそうな毒があるのがミソ。

和気あいあいとした空間に漂う様々な恨みつらみや口に出せない秘密、その中で料理を手順を踏んで作るように消化していく夏の一日、そんなお盆に3世代が集まる家族の風景、そしてそこに刻まれる何十年にも渡る家族の歴史劇が、建前9:最強本音爆弾1のセリフ劇で見事にあぶり出されていく今回の映画。

夫と妻、父と息子、母と娘、嫁と姑、祖父と孫、従兄弟、、、ズケズケと何でも言い合える関係もあれば、遠慮から奥歯に物がはさまったような言い方しかできないぎこちない関係もある・・・。その中でこの映画はそれぞれの関係性における微妙な間や会話の妙が絶妙で恐ろしいくらいにリアルなのだ。

まるで録音した自分の声を聴いた時のような居心地の悪さ、と同時に懐かしい思い出を思い起こさせる居心地の良さをも喚起させてくれる世界がそこには広がっている。

なんとも不思議な感覚を味わわせてくれる映画だ。

例えば自分なんかは、ゆかり(夏川結衣)の連れ子であるあつし(田中祥平)に妙にシンクロしてしまって(笑)。。

それはおそらく小学校時代に転校が多かったこととかも関係してると思うんだけど、彼が初めて敷居をまたいだ家で感じる居心地の悪さと緊張感が痛いくらいに伝わってきて見てて可哀想になってくる一方、彼がしたたかに立ち回る様もリアルに実感できて、コイツ大人やなぁと感心してしまった。

普段はあまりにもありきたりすぎて立ち止まって考えることがない家族の風景。温かくて痛くて優しくて哀しくてウザッたくて、それでも無性に帰りたくなって、、、そんな家族の愛おしい情景。

一年に一日、この映画を日本人全員が見る日ってのを作ってもいいんじゃなかろうか(笑)。

それにしても樹木希林、上手すぎ。そしてYOU、そのまんまww。原田芳雄は鈴木清順と見間違えちゃったけど・・。

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メゾン・ド・ヒミコ

Himiko 出演:オダギリジョー、柴咲コウ、田中泯、西島秀俊、歌澤寅右衛門

監督:犬童一心

(2005年・日本・131分)WOWOW

評価★★☆/50点

内容:ある日、24歳の沙織(柴咲コウ)のもとを岸本(オダジョー)という男性が訪ねてくる。彼は、沙織と母親を捨ててゲイ・卑弥呼として生きていく道を選んだ父親(田中泯)の恋人だった。岸本は、ゲイのための老人ホーム“メゾン・ド・ヒミコ”を建てて運営していた彼がガンになり余命いくばくもないことを沙織に伝え、ホームを手伝わないかと誘うのだが・・・。

“「たそがれ清兵衛」の田中泯の変身っぷりには脱帽・・・。”

「ハッシュ!」(2001)のときもそうだったけど、このての性的マイノリティを扱った映画には深入りするのを避けちゃう傾向があって、今回もやっぱダメだった・・・。

ゲイ老人たちのファッションにもドン引きだったし、ダンスホールでのハイテンションぶりもムリ

「ブスの処女と、性病持ちのオカマどっちがいい?ギャハハハ」、、、グーでぶん殴りたくなったんですけど、あのジジイ(笑)。

というかんじで、立ち入ることができない異界ワールドだったのだけど、ただ1つ思ったのは、このての人々ほど愛するということへの純粋さを持ち合わせている人種はいないだろうなということ。そこの点はちょっと羨ましさを抱いてしまったかも。

他人はおろか社会からも拒絶されてしまうという絶対的な孤独を身をもって知っているからこそ生み出される想いなんだろうね。そしてそこを突き抜けちゃうと、ああいう開放的な世界の住人になることができる、のかなw

その中で、彼らが作った小さな共同体にまぎれ込んでくるノンケの沙織の孤独と憂鬱の方が際立って見えてくるのはうまいつくりになっているなとは思う。

そういう点では、この映画は沙織の傷ついた人生の再生物語という側面の方が強いわけで、ゲイ映画ではないんだよね。彼らの人物像の内面に映画自体が深入りしてないし。ま、それでも生理的にちょっとダメだったけど・・・。

あとはまぁ、なんといっても柴咲コウの化粧っ気のない地味ぃ~なコンビニ店員姿だな。ちょっと引いたわ(笑)。。

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酒井家のしあわせ(2006年・日本・102分)NHK-BS

 監督・脚本:呉美保

 出演:森田直幸、ユースケ・サンタマリア、友近、鍋本凪々美、谷村美月、笑福亭仁鶴

 内容:三重県のとある田舎町。一見ごく普通の家族にみえる酒井家だったが、14歳の長男・次雄(森田直幸)は最近家庭にうんざりしていた。母・照美(友近)は再婚、次雄は事故死した前夫の連れ子、下の娘・光(鍋本凪々美)は母と義父・正和(ユースケ)との間にできた父親違いの妹という複雑な家庭環境にあったからだ。そんなある日、照美とケンカした正和が突然、好きな男ができたとカミングアウトして家を出て行ってしまう・・・。

評価★★★★/75点

“だ、ダマされた・・・。”

家族の何気ない日常を切り取っていく視点が独特の間の中でユーモアたっぷりに描かれていて、終始楽しく見ることができた。

例えば、家族で外出する時に、オカンが早くしなさいと急かしているくせに、当の本人が1番遅く家を出てくるシーンも、車の中でジィーッと待っている夫と子供たちの姿がたまらなくおかしかったり。どこの家のオカンも同じなんだな(笑)。

しかしこの監督、コミカルな間を作って、「あ、それってあるある」というエピソードをテンポよく見せていく演出の手腕はかなりこなれているなという印象。と思ったら新人さんなのね、この監督。。

あとこの映画で外せないのが、配役の妙。

日テレ「エンタの神様」のひとりコントにそのまんま出てきてもおかしくないような格好の友近が、決して類型的ではない妙にリアルなオカン像を演じていて新鮮だったし、関西弁をしゃべれないユースケ・サンタマリアの不器用なオトン役がものすごくしっくりきていた。

そして極めつけが仁鶴wwユースケが笑い転げちゃうのも無理ないわ。

とにかくほんわか温かいぬくもりが残るかなりしあわせな映画だったと思う。これからが楽しみな若手監督さんだね。

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アルゼンチンババア

Big 出演:役所広司、堀北真希、鈴木京香、森下愛子、手塚理美、岸辺一徳

監督:長尾直樹

(2007年・日本・112分)盛岡フォーラム

評価★★★/60点

内容:高校生のみつこは、両親との3人暮らしだったが、誰よりも活気のあった母親が病気で亡くなってしまう。そしてその直後、墓石彫り職人の父親が行方をくらましてしまうのだった。それから半年後、父親はどうやら町外れの草原に建つ古ぼけた洋館にいるらしいことが判明する。しかし、その屋敷にはアルゼンチンババアと呼ばれている謎の女が住んでいるらしい。みつこは勇気を出して訪ねてみるが・・・。

“あのハチミツ、、二缶ほど譲ってくれませんか(笑)”

アルゼンチンババア特製の媚薬ハチミツが欲しいってことと、堀北真希のムチウチ症姿が見れたってことくらいしか得るものがなかったな(笑)。

でも、フツー原作ものの映画って、映画が面白くなくても原作は読んでみたいなという場合が多いのだけど、今回は正直全く読みたいと思わなかったんだよね。そういう意味では逆に不思議な映画だったともいえるけど・・・。

登場人物の行動や会話がことごとく意味不明で伝わってこなくて、一人蚊帳の外で見続けなければならない、なんとも題名に相応しいわけの分かんない遠い世界の映画だったけど、その中で孤軍奮闘した堀北真希ちゃんを見るぶんには十二分に元が取れるのもまたたしかで。。やっぱ不思議な映画。

でも、、ババアに鈴木京香をあてるってどうなんだろという根本的なところも気になる。室井滋とか夏木マリはたまたYOU、久本雅美あたりだろフツー。あるいは大竹しのぶ、浅野温子あたり?

ちょっと鈴木京香は役違いのような気が。まぁ、「ゼブラーマン」でコスプレ好きになって一皮剥けた女優さんだからババアもやってみたかったのかな

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リトル・ミス・サンシャイン

Lms 出演:グレッグ・キニア、トニ・コレット、スティーヴ・カレル、アラン・アーキン、ポール・ダノ、アビゲイル・ブレスリン

監督:ジョナサン・デイトン/ヴァレリー・ファリス

(2006年・アメリカ・100分)仙台フォーラム

評価★★★★★/95点

内容:アリゾナ州ニューメキシコに住むフーヴァー家は、家族それぞれに問題を抱え崩壊寸前。父は独自の成功論をまとめた自著の売り込みに必死、長男は一言も発さず、祖父はヤク中、伯父はゲイの恋人にフラれて自殺未遂と、まとめ役の母は一苦労。そんなある日、7歳の娘オリーヴがカリフォルニアで開かれる美少女コンテストの本選に進むことになる。そこで一家は、オンボロのミニバスに家族全員で乗り込み、カリフォルニア目指して出発するのだが・・・。

“オリーヴ(アビゲイル・ブレスリン)って誰かに似てるよねぇ・・・”

ってあれよあれ、フィギュアスケートの安藤美姫だよ。あの出っ腹はさておき、精神年齢もほぼ変わらんだろうし・・(笑)。

というのはさておき、この映画、オイラ的2007ベストムービーにまず間違いなく選ばれるであろう愛すべき一品になってしまいました。

とにもかくにも笑いと涙が同時に押し寄せてくる映画体験というのはそうざらにあることではないので、そういう意味でも心に残る一本となりますた。

しっかし、途中から笑いのドツボにハマッちゃって笑って泣いてんだか感動して泣いてんだか最後は分からなくなっちゃったな・・・。

色覚異常で空を飛べないと分かり、野っ原で完全ふてくされ状態になった15歳の兄ドウェーンを無言で肩に寄り添いながら慰める大人な7歳オリーヴ。

笑いの導火線に火が付いたのはこの次のシーン。ドウェーンが「分かった。」と気を取り直して車に戻るときに土手を登るわけだけど、オリーヴちゃんあの体型もあって登れないんだ(笑)。そこをドウェーンが抱っこして持ち上げて登る何気ないシーンがなんとも可笑しみのあるオチで、シリアスな感傷モードに入る一歩手前で何気なく笑いに転回させる絶妙さに完全に引き込まれてしまった。

クラクションが鳴り止まなくなったミニバスを警官に停車させられ、トランクに積んであるシーツにくるまれたジイちゃんの遺体が見つかってしまうのかという絶体絶命の状況で、エロ本がドサッと落ちてきて、それを見つけた警官がニヤリとするオチも最高で、何も知らない妻シェリル(トニ・コレット)の不安そうな表情とエロ本を3冊(うち1冊はゲイもの)も買い込んでいたフランク(スティーヴ・カレル)へのお前はなんて奴だ!というリチャード(グレッグ・キニア)の視線とフランクのえっ何?オレ何かした?という表情がこれまた何気なく描かれていて、逃げ場のないバスのミニ空間の中に凝縮される人間模様が面白おかしく自然に描かれてるんだよね。

この自然なオーソドックスすぎる演出も良くて、例えばギアのブッ壊れたミニバスを家族みんなで押して発進させて飛び乗るこの映画を象徴するシーンや、ラストの珍妙なダンスを家族みんなで踊るシーンだとか、とにかく映画的な動きというのが終始物語をしっかりと牽引していく。

しっかり映画しちゃってるんだよねこれ。こういう映画見ると嬉しくなっちゃう。

才能が少々欠けようが負け組と揶揄されようが前に進むしかないんだというメッセージも心にしみわたりました。

イイ映画です。

ちなみにオリーヴのタヌキ腹は、詰め物を入れてるのだそうで、実際のアビゲイルちゃんはフツーの体型らしいですw

2017年12月31日 (日)

夢のシネマパラダイス268番シアター:ノンストップ・クライムムービー

グラスホッパー

O0618096013503087649出演:生田斗真、浅野忠信、山田涼介、麻生久美子、波瑠、菜々緒、村上淳、宇崎竜童、吉岡秀隆、石橋蓮司

監督:瀧本智行

(2015年・松竹・119分)WOWOW

内容:ハロウィンの夜。渋谷のスクランブル交差点に暴走車が突っ込み、中学教師・鈴木の婚約者も犠牲になる。が、“本当の犯人は別にいる”という謎のメモを受け取ったことから鈴木は復讐を決意。メモに導かれ裏社会の黒幕・寺原親子の経営する会社に入社するが、そこには様々な殺し屋たちが跋扈する一線を超えた世界が待っていた・・・。

評価★★★/60点

伊坂幸太郎原作ってことだけを前情報にして見たんだけど、伊坂原作の映画で初めてハズレかも・・・。

ヤク中の暴走車に婚約者をひき殺された虫も殺せないようなしがない中学教師鈴木のもとに「真犯人は別にいる」という手紙が舞い落ちてくるところから始まる今作。

なので主人公が犯人探しに奔走していくのかと思いきや、犯人の親子はすでに分かっていて、その懐に潜り込んでいる状態。じゃあ、復讐をしかけていくのかと思いきや、殺し屋の手にかかりジュニアがあっさり退場。じゃあ、残る真の黒幕親父の方はと思いきや、ジュニア殺しを依頼したのは鈴木という密告から鈴木の方が終われるハメに。じゃあ、そこから決死の逃走劇が幕を開けるのかと思いきや、ナイフ使いの殺し屋・蝉vsターゲットを自殺に追い込む殺し屋・鯨の対決に転回していく。そして気付いたら鈴木の他に誰もいなくなっていた、、

と、次はこうなるだろうなという自分の中にある定型フォーマットをことごとく外していく作劇は先が読めない魅力はあったものの、じゃあそれって面白かったかと聞かれると、つかみどころのない雑さばかりが気になってはっきり言ってツマラなかった(笑)。ていうか、見終わって結局これってどういう映画だったんだ!?と思わせた時点でアウトだよね。。

伊坂原作の十八番ともいえる伏線回収や、なるほどと唸らされるトリッキーな話のオチの付け方も今回は単なる辻褄合わせにしか感じられなかったし、ちょっと説明的すぎてイマイチだった。

典型的巻き込まれサスペンスと見せかけて当の巻き込まれた本人は蚊帳の外という変則パターンに結局ついて行けなかったと・・。

やっぱ伊坂原作は中村義洋&濱田岳コンビに尽きるなww

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ナッチ

B00024z5mw_09_lzzzzzzz 出演:ブラッド・ピット、ウィリアム・べック、アンディ・べックウィズ、オーエン・ブレムナー

監督・脚本:ガイ・リッチー

(2000年・アメリカ・103分)スカラ座

評価★★★★/75点

内容:ロンドンの裏社会で非合法ボクシングのプロモーターとして生きてきたターキッシュとトミー。84カラットのダイヤの紛失事件をきっかけに、彼らは悪夢の1週間を体験することになる・・・。暗黒街の住人どもと1匹の犬が繰り広げるノンストップ・クライム・ムービー。

“イギリスの堤幸彦と呼んでもよろしいでしょうか、ガイ様”

「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」(長っげぇよ!)である程度の免疫ができていたので、難なくこの映画の世界に入っていくことはできた。

ていうかロック、ストック&△×□~♪○とほとんど同じ構成だし。登場人物の多さまで・・・。少なくとも13人の人物と犬1匹が入り乱れ飛ぶんだからなぁ。。でもロック、ストッキングトッタノバレタよりはそれぞれのキャラがしっかり立っててつかみやすかったと思う。

そういう意味ではやっぱこの監督スゴイと思う。100分ちょいでこれだけの登場人物をそつなく動かしてテンポよくストーリーを収めてしまうのだから。

でも、ちょっと立ち止まって考える。

もしかしてこの監督、キャラが10人以上いないとダメなんじゃなかろうか・・・。常に3,4人画面に写って埋めてないと落ち着かないんじゃないか!?ピンで撮るのが不安で不安で仕方ないんじゃないか!?もしかして画をもたせるのに自信がない!?だからパッパッと流しちゃうのかい?

今のところはスタイリッシュな映像感覚ともてはやされてるけど。

ま、化けの皮がはがれないように祈りながら注目していきたいと思います。

Posted at 2001/03/21

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ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ(1998年・イギリス・108分)DVD

 監督・脚本:ガイ・リッチー

 出演:ジェイソン・フレミング、デクスター・フレッチャー、ニック・モーラン

 内容:ロンドンの下町。いかさまポーカーでギャングにカモられた不良少年たちが思いついた犯罪計画。そこに麻薬密売組織、強盗団、コソ泥、取立て屋、故買商、マリファナ栽培業者などが入り乱れて事態は思わぬ方向へ・・・。ガイ・リッチー監督デビュー作。

評価★★★/65点

“見事に顔と名前が一致しねえ!!”

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ラッキーナンバー7

Seven 出演:ジョシュ・ハートネット、ブルース・ウィリス、ルーシー・リュー、モーガン・フリーマン、ベン・キングスレー、スタンリー・トゥッチ

監督:ポール・マクギガン

(2006年・アメリカ・111分)WOWOW

内容:仕事をクビになり、恋人を寝取られ、家も失った不運続きの青年スレヴンは、友人ニックを頼ってNYにやって来たが、ニックは不在。しかし、ひょんなことから隣人の女性リンジーと出会い、意気投合した2人はニックの行方を捜し始める。が、そんな矢先スレヴンは、彼をニックと思い込んだマフィアの手先によって拉致され、ボスの前に引き出されてしまう・・・。

評価★★★/65点

原題のラッキーナンバー“スレヴン”を“7”に変えた邦題の付け方はシャレててよろしいと思うんだけど、それにしたって途中から先がミエミエで読めちゃうのは、このテの映画ではどうなんだろう。いまいちノレなかったな・・・。

まず、グッドキャスト(B・ウィリス)が語る20年前の話で、八百長競馬の賭けに負けた男の一家が惨殺されるシーン。

そこで、子供の頭に銃が向けられて、ドカンと母親が銃殺されるシーンに切り換わって暗に子供も撃たれて死んだふうにとれるようになってるけど、ハリウッド映画で子供が殺されるというのはかなりタブーな領域なので、この時点で子供は生きとるなとは薄々分かるねんか。

んで、20年後、ジョシュ・ハートネット登場!子役と似てるんだわ、これがまた(笑)。

この時点でパンチ力半減、あとはどうパズルをうまくハメ込んでいくのか、どううまくチェックメイトをかけていくのかというところが見所だったんだけど、、、上手い、実に上手いの。しかし、その上手さというのは、単なる後付けのうまさであって、ひねりの利いたギミックの上手さではないんだよなぁ。

だから、どうしても一本調子な感が否めず、やられたっ!という快感につながってこないんだわ・・。

差し手が弱くて単調、この映画はその一言に尽きる。

怪しい長髪のブルース・ウィリスの役柄も「隣のヒットマン」などで見飽きたし・・。

ただ、その中でジョシュ・ハートネットは映画をひとりで引っ張っていけるだけのなかなかの存在感が出てきたなぁとは感じられたし、なによりルーシー・リューがこれだけキレイに撮れてるのはめっけもん。

ていうか、今回のジョシュ・ハートネット、ブラピに似てない(笑)?

しかしまぁ、これだけの豪華俳優陣を揃えておきながら、なんかもったいないなぁというかんじだね。

2017年1月 3日 (火)

夢のシネマパラダイス604番シアター:女性という世界で1番ミステリアスな生き物について

この国の空

Poster2出演:二階堂ふみ、長谷川博己、工藤夕貴、富田靖子、石橋蓮司、奥田瑛二

監督・脚本:荒井晴彦

(2015年・日本・130分)WOWOW

内容:昭和20年の東京・杉並。戦争末期で若者は戦場へ送られ、子供は地方へ疎開し、女と老人しかいない街で母と2人暮らしの19歳里子。空襲で焼け出された伯母が転がり込んできて生活がますます苦しくなる中、妻子を疎開させ隣家で一人住まいをしている38歳の市毛は何かと頼りになる存在だった。しかし、いつしか里子は市毛を異性の男として意識するようになっていき・・・。

評価★★★☆/70点

昭和20年の平均寿命は男性24歳、女性38歳と聞いて愕然としたことがあるけど、そっか、銃後の街とは戦場に駆り出されていく男たちと集団疎開で田舎へ移っていく子供たちが不在の老人と女性しかいない街なんだ・・・。

考えてみれば当たり前の戦争が市井にもたらす常識に今回初めてハッと気付かされた。

また、国同士が殺し合いをし、いつ焼夷弾に焼き殺されるかもしれず、いつ敵方が上陸してきて蹂躙してくるかも分からないまさにこの世の終わりを目前とする中でも、このまま男の愛を知らないまま死ぬのは嫌だと悶々とする年頃の娘の心情もかなり新鮮に感じられた。

そしてラストの「これから私の戦争が始まる」という衝撃の一言には、女の怖さと生命力の強さに圧倒されてしまった

いつの世も恋は人を狂わせるのだねぇ

でも1番衝撃的だったのは、不倫相手の男の寝床の生々しさだったかもw

しかし、主人公の母親と伯母を工藤夕貴と富田靖子が演っていたことに最後まで気付かなかった自分って・・

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イニエーション・ラブ

Poster3出演:松田翔太、前田敦子、木村文乃、森田甘路、三浦貴大、前野朋哉、木梨憲武、手塚理美、片岡鶴太郎

監督:堤幸彦

(2015年・東宝・110分)WOWOW

内容:バブル真っ只中の1980年代後半、静岡。就活中の大学生・鈴木は、気乗りしないまま参加した合コンで、歯科助手のマユに一目ぼれ!少しでも彼女に釣り合う男になりたいと身なり格好に気を使い、次第に距離を縮めていく。やがて就職した鈴木は東京へ転勤となり、マユとは遠距離恋愛になってしまうが・・・。

評価★★★/65点

サイドAとサイドBでこれ見よがしに日付がいちいち出てくることからサイドAとサイドBって同時進行の話!?と途中で気付いちゃって、となると必然的にたっくんは2人いるというオチはなんとなく読めたんだけど、マユちゃんの二股事実があらためて示されると見てる方はやっぱりショックが大きくて・・・

なんか明石家さんまが好きそうな典型的小悪魔キャラのマユちゃんに前田敦子がドハマりで、女って怖ぇーという戦慄が倍加して襲ってきたかんじ

でも、これ冒頭でこの映画にはある秘密がありますってテロップが出なければたぶん最後まで気付かなかったと思うんだよね(笑)。普通にラストに秘密をばらさないで下さいってすればよかったのに、と思ったのは自分だけ?

まぁ、それもあって「あなたは必ず2回見る」というキャッチコピーは自分には通用しなかったけど、心身ともに1番大きな傷を負ってるのはマユちゃんでもあるわけで、そう考えるとマユちゃん視点のサイドCを見たかった気も。。

P.S. ラブホの前で躊躇しているたっくんに向かって「女に恥かかせないでよ。行くよ!」と引っ張っていく美弥子(木村文乃)のような女性と出会いたいですww

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私の男

Watasi出演:浅野忠信、二階堂ふみ、モロ師岡、河井青葉、三浦貴大、安藤玉恵、竹原ピストル、高良健吾、藤竜也

監督:熊切和嘉

(2013年・日活・129分)WOWOW

内容:北海道奥尻島を襲った津波で孤児となった10歳の少女・花。そんな彼女を遠縁だという男・淳悟が引き取り、二人は雪と流氷に閉ざされた紋別の田舎町で寄り添うように暮らしていた。しかし6年後、地元の名士の大塩は二人のゆがんだ関係に気付き、淳悟から離れるよう花を説得する。ところがその後、厳寒の海で大塩の遺体が発見される・・・。

評価★★★/60点

毎年、京都の清水寺で発表される「今年の漢字」。

東日本大震災に見舞われた2011年は“絆”だった。震災により人と人、家族の絆がクローズアップされ、復興支援においても震災で受けた傷を絆で癒やそうなんていうスローガンも掲げられたりした。

しかし、ここに福島の原発事故が絡んでくると“絆”はどこへやら。

震災のがれき処理を受け入れようとする他県の自治体は市民の袋叩きにあい、原発避難者はいじめや差別にあう・・・。

結局、絆絆と呪文のように唱えているのはマスコミと被災地に住んでいない人々の自己満足にすぎないのではないか、という違和感を岩手県民のひとりとして少なからず感じていたのだけど、“絆”とはそんな安っぽい偽善めいた言葉ではないのだという今回の映画のドロドロとした“血の絆”はかなり衝撃的。

ほぼほぼ悪意しかないインモラルな近親相姦ものなので共感度はゼロだったけど、二人の心象風景を写し取ったかのような北海道の鈍色の景色と淫靡なカメラアングル、そして浅野忠信&二階堂ふみの怪演に最後まで見入ってしまった。

ただ、家族を津波で一瞬にして失った少女がそのショックから背徳のモンスターに変貌を遂げていく(母親の遺体を蹴り上げるシーンがあることからもともと親に対する憎悪があった?)のは百歩譲って分かるとしても、家族が欲しいと少女を引き取った遠縁の男(実は父親)の内面心理がどうにも理解できず、やはり決定的に相容れない映画だったなと。。

まぁ、時々こういう映画もあっていいけどね(笑)。

しかし、シチューをぶっかけて刺殺するシーンが今になっても頭から離れないんですけど

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白河夜船(2015年・日本・91分)WOWOW

 監督・脚本:若木信吾

 出演:安藤サクラ、谷村美月、井浦新、高橋義明、伊沢磨紀、竹厚綾

 内容:仕事もせず部屋で惰眠をむさぼり、恋人の岩永からの電話を待つだけの日々を送る寺子。岩永には妻がいるが、交通事故に遭って以来ずっと眠り続けていた。そんなある日、お客の隣でただ添い寝をする仕事をしていた親友のしおりが自殺してしまう・・・。

評価★★★/60点

人は人生の3分の1を睡眠にあてているのと同様、映画の3分の1が睡眠シーンみたいなかんじ。

ただ、主人公の寺子(安藤サクラ)のは睡眠というより惰眠であり、現実逃避のために眠る行為があるのが、常に睡眠不足の自分には決定的に理解不能(笑)。。

安藤サクラの脱ぎっぷりは評価に値するけど、ある意味その女優魂だけでもっているような映画だった。

もっと夢と現実の境目があいまいになるような奇っ怪な夢うつつの世界の危うい恐怖感=死のメタファーみたいなものが前面に出てきてもよかったかなぁと思ったけど、安藤サクラの生命力と存在感が強すぎてそれも難しいんだよね。

そういう意味では企画倒れだと思うけど、パンツが食い込んでいる安藤サクラのどーでもいい日常風景だけで元が取れるってのもスゴイと思うw

要するに、安藤サクラはスゴイ女優さんだ!ってことでした。

夢のシネマパラダイス283番シアター:カリフォルニア・ダウン

カリフォルニア・ダウン

Poster2出演:ドウェイン・ジョンソン、カーラ・グギーノ、アレクサンドラ・ダダリオ、ヨアン・グリフィズ、ポール・ジアマッティ

監督:ブラッド・ペイトン

(2015年・アメリカ・114分)WOWOW

内容:ある日、ネバダ州で大地震が発生するが、それは前触れに過ぎなかった。今度はカリフォルニア州を縦断する巨大断層を震源とする本震が発生、高層ビル群やゴールデンゲートブリッジが次々と倒壊し、ロサンゼルなどの大都市は壊滅してしまう。そんな中、救難活動に奔走するレスキュー隊パイロットのレイは、ビルに取り残された妻エマを間一髪で助け出す。そして最愛の娘が残されたサンフランシスコへ向かうが…。

評価★★★☆/70点

いわゆるディザスタームービーは天災、災害のスペクタクル映像に驚愕し、阿鼻叫喚の地獄絵図と化す人々のパニック映像に戦慄しハラハラドキドキする、つまり神視点から人の不幸を見て楽しむ一面が少なからずあると思う。

しかし、東日本大震災を経験した者にとって、地震と津波を扱った映画はもはや他人事では見ていられないというか、必要以上に感傷的になってしまう部分があって、エンタメとして純粋に楽しめなくなっちゃってるんだよね

でもその点でいえば、今回の映画はレスキュー隊員を主人公にしているわりに話が主人公のドウェイン・ジョンソンとその家族のミニマムな視点にのみ絞られていて、普通なら物足りなさを感じてしまうのだけど、家族の絆を前面に打ち出されると逆に見やすくて個人的には良かったかなと。

あとは何といっても映像の凄さだろう。

東日本大震災ほど災害映像がYouTubeなどを通して残されたことはないと思うけど、世のクリエイターに与えた影響力はやはり大きいんだなと映画を見て実感した。

津波で完全に浸水したがれきの街中をパワーボートで走るシーンの汚泥で黒々とした水の汚さとか細かいディテールまでリアリティがあって印象的だった。

これからのディザスタームービーは東日本大震災というフィルターをどうしても避けられないと思うけど、日常の理屈ではどうすることもできない現実に打ち負かされたとしても、そこを突き抜けた向こう側で魂を揺さぶることのできる豊かな想像力を存分に発揮した作品を作っていってほしいものだ。

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デイライト(1996年・アメリカ・114分)NHK-BS

 監督:ロブ・コーエン

 出演:シルベスター・スタローン、エイミー・ブレネマン、スタン・ショー

 内容:マンハッタンとニュージャージー州を結ぶ海底トンネルで爆発事故が発生。トンネルの出口はふさがれ、帰宅途中の人々が閉じ込められてしまう。元緊急医療隊員のチーフだったキットが救出に向かうが・・・。

評価★★★☆/70点

“ヒロインが言い放った極めつけの一言!!”

Don’t leave meーーー!!置いてかないでーー!!

犬を助けようとしたキットが下に落ちてしまい、そのキットを助けようとしたマデリーンも下に落ちてしまう場面。

キットは、いいから早く逃げろ!と他のみんなを先に進ませようとするが、マデリーンはすっかり青ざめた表情で、待ってーー、さっき助けてあげたじゃないのよ!置いてかないでーー!と泣き叫ぶ。

従来通りの映画だったら、いいから先に行ってて、と言うはずのシーン。

このシーンの大いに取り乱すマデリーンには正直驚いたが、一方では、そうだよな人間だもん意地でも生きたいよ、一応ヒロインであっても体裁なんて気にしてられないよなと妙に感心してしまった。

そうなのだ。Don’t leave me!という一言に集約されるように、この映画には無敵のヒーローもいなければ健気なヒロインもいないというか意図的に描いていない。キットがジョージを見捨てて行くシーンはその典型だろう。

しかし、もともと考えてみるとこの映画、トンネル落盤というパニックものとしては地味ぃ~な題材を扱っている。そして中身も実に地味なのだ。

1番の見せ場はキットが通気口からトンネルの中に入っていく序盤のシーンなのではと思ってしまうくらい地味な映画だ。

そしておそらく映画の作り手もそのことは百も承知しているのだと思う。

それゆえ大仰なヒーローぶった描き方は最初から切り捨て、地に足をつけた1人の人間としてよりリアルに描いていく道を選んだということなのだろう。

そして主人公を取り巻く者たちもまたとにかく意地でもトンネルから抜け出して生きたい、その必死さのみに焦点を絞って描いている。囚人というキャラをこの中に入れたのは1つのポイントだろう。

とにかく目立とう目立とうという気負いばかりが先行してしまう昨今のパニックものの映画としては珍しく堅実な描き方に終始していて好感がもてたし、題材の地味さからいっても身の丈に合った描き方、リアルな描き方をしてくれたと思う。

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ボルケーノ(1997年・アメリカ・104分)NHK-BS

 監督:ミック・ジャクソン

 出演:トミー・リー・ジョーンズ、アン・ヘッシュ、ギャビー・ホフマン、ドン・チードル

 内容:大地震の発生したロスで突如、火山が噴火。地上のすべてを飲み込むマグマ・溶岩流の猛威に人間が立ち向かう。パニックに陥った住民を救うため、ロス危機管理局長のマイクに率いられた消防隊とレスキュー隊が己の死をも顧みず救助に当たる。果たして彼らはロサンゼルスを火の海から守れるのか!?

評価★★★★/80点

“なぜ世界第2位の火山大国日本がこのネタを思いつかないんだ・・・。”

大都市のド真ん中を溶岩流が流れる。

日本人が見ると、なにげに荒唐無稽に見えないところがちょっと怖いのだけど、それがかえってリアリティを出していて見応え抜群。

ただ実際のところ、東日本大震災を見ても分かるとおり、自然の猛威に人間は勝てるわけがないんだよなぁ・・・。ビルを倒すとこなんかは9.11テロを思い出しちゃったりして。。

しかしだ!人間はなんだかんだいっても焼け野原から必ず立ち上がる!一応スゴイ生き物なんでっスてことを映画を見て実感。

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ダンテズ・ピーク(1997年・アメリカ・108分)仙台第1東宝

 監督:ロジャー・ドナルドソン

 出演:ピアース・ブロスナン、リンダ・ハミルトン、ジェイミー・レネー・スミス

 内容:火山地質学者ハリーは、地震の調査のため休火山“ダンテズ・ピーク”のふもとの町を訪れていた。噴火の兆候を察知した彼は、人々に警告するが、、、ドッカーーン!!!降り注ぐ火山灰、流れ出す溶岩など、自然の猛威が次々と町に襲い掛かる。

評価★★★/65点

“リンダ・ハミルトンにとっちゃ噴火なんて屁みたいなもんだろ、、という自分のイメージの方がはるかに怖い・・・。

2016年10月30日 (日)

夢のシネマパラダイス493番シアター:アフリカの今

キャプテン・フィリップス

Poster2出演:トム・ハンクス、バーカッド・アブディ、バーカッド・アブディラマン、ファイサル・アメッド、キャサリン・キーナー

監督:ポール・グリーングラス

(2013年・アメリカ・134分)WOWOW

内容:2009年。ケニアへの援助物資を運んでいたアメリカ国籍のコンテナ船マースク・アラバマ号が、ソマリア沖で武装したソマリア人海賊に襲撃される。あっという間に船が占拠されてしまう中、船長のリチャード・フィリップスは、重大な決断を迫られていくが・・・。

評価★★★★/75点

さすがボーンシリーズでアクションエンタメのハードルを一段上げただけのことはあるポール・グリーングラスの真骨頂がここでも存分に発揮されている。

その真骨頂とは、疑似ドキュメンタリーをアプローチとしてエンターテイメントを創造することにある。

具体的には手持ちカメラの絶妙な距離感が生み出す緊迫感と臨場感がフィクションであることを軽々と超越してしまう、その高度なテクニックが半端ないことにつきる。そしてそれが監督が常にモチーフとして描く生死の境という極限のシチュエーションに絶大なリアリティをもたらしているわけだ。

映画を見る上で、一寸間違えば死という究極の非日常に飲み込まれてしまうかもしれない恐ろしさを体感できるというのはそうそうあるものではないけど、この監督の映画の面白さはそこにこそある。

その中で今回はソマリア海賊による船のシージャック事件の実話をもとにしていて、何の比較対象もない大海原の上ということでスピード感とか緊張感が鈍重になりはしないかと一抹の不安感があったのだけど、それはほどなくして杞憂に終わった。

ヤン・デ・ボンの「スピード2」とは大違いだった(笑)。

特に小さな海賊船が大きなコンテナ船をあれよあれよという間に乗っ取るまでの一連のシークエンスは息つく暇もなく見応え十分。

双眼鏡でのぞいた時に小粒のような不審船が猛然とこちらに向かってくるのを見つけた時や、不意にマシンガンを撃ち込まれた時の恐怖感はヒリヒリと伝わってきて、まさに疑似体験を味わわされた

搾取する側とされる側、先進国と途上国という政治的な問題を匂わせはするけど、結局武器を持つ者と持たざる者、最新鋭の武器とボロボロの武器という即物的な力の大小に落ち着くあたりは、よりエンタメ方向にベクトルが向いているので、だとしたらソマリア海賊側の視点を入れるのは、言い知れぬ恐怖が減退してしまうし、しかも申し訳程度に入れるのならいらない方が良かったとも思ったんだけど。。でもまぁ、ここまでハイテンポに畳みかけられるとそれも気にならなかった。

やはりこの監督スゴイわ。

でも、海賊を生業にしなければ生きていけないソマリア人の悲劇っていうのもあるんだよね。進んでも地獄、戻っても地獄ていう・・・。

そこらへんの掘り下げに関してはまた別な作品で見て勉強しないとダメだな。

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風に立つライオン

Poster2出演:大沢たかお、石原さとみ、真木よう子、萩原聖人、鈴木亮平、藤谷文子、石橋蓮司

監督:三池崇史

(2015年・東宝・139分)WOWOW

内容:1987年、ケニアにある長崎大学の研究施設に派遣された島田航一郎。現地で研究の他に一般診療も行い充実した日々を送るが、ある時、赤十字病院から1か月の派遣要請を受ける。そこで彼は内戦で負傷した人々が次々に運び込まれてくる想像を絶する過酷な状況を目の当たりにする。そして自分の無力さを思い知らされた彼は、そのまま赤十字病院への勤務を志願するのだった・・・。

評価★★★/65点

ケニアロケを敢行しただけあってアフリカの雄大な大地の画力と奥行きは白眉で、登場人物の信条や境遇が純化されていくに足る色彩を帯びていたように思う。

その中でアフリカの医療に身を捧げる島田航一郎(大沢たかお)は、幕末にタイムスリップした現代の医師が近代医療に身を投じるJIN-仁-を想起させて見応えがあった。

しかし、せっかくの濃密な題材も扱いが散漫な印象が拭えず…。

それは多分にアフリカパートと長崎パートのコントラストにムラがありテンポの悪さが目についたことが大きいと感じたのだけど、はたして長崎パートは必要だったのだろうかとそもそも論のところで思ってしまった。

そこに時間をかけるよりもケニアで赤十字の戦傷病院で働く看護師の草野和歌子(石原さとみ)の経歴をこそもっと丹念に描いてほしかった気も。。

もっと骨太な作品にできたはずという点ではもったいない感の方が勝ったかなぁ・・。

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ザ・インタープリター

Imge8d3b19307vfv3 出演:二コール・キッドマン、ショーン・ペン、キャサリン・キーナー

監督:シドニー・ポラック

(2005年・アメリカ・129分)2005/06/01・MOVIX仙台

評価★★★/60点

内容:アフリカ南部のマトボ共和国で大量虐殺が行われていると、国際社会はズワーニ大統領を厳しく批判していた。そんな中、国連総会でズワーニ大統領が演説することが決まる。マトボの言語であるクー語を翻訳できる国連職員のシルヴィアは、ズワーニの暗殺計画を知ったため通報するのだが、シークレットサービスから派遣された捜査官のケラーは、彼女自身が暗殺に関与していると疑う・・・。史上初めて行われた国連本部内でのロケも話題に。

“国連というどでかいリアルを持ち込んだわりに、よくあるフィクションの1つにしかなっていないのは消化不良。”

クー語と聞いて「不思議惑星キン・ザ・ザ」を思い浮かべてしまうのは自分だけかww?

というのはともかくこの映画、、惜しい。サスペンスとしてもドラマとしても、、惜しいのだ。逆に言えば物足りなさが目立つともいえるわけで。

国連というリアルな箱庭をせっかく用意したのに、まるで上空からその箱庭をただ俯瞰しただけのような中身の無さ。

あるいは、マトボ及びクー語という用意周到な虚構の中で、小さなリアルを積み重ねることによってアフリカの紛争、アフリカの“今”を切り取るのかと思いきや、現実離れしたキッドマンの人物設定といういわば絵空事だけで押し通しあぶり出していこうとする無茶苦茶さ。

また、ケラー(S・ペン)の私生活における悲しみが、接点の見えないまるで意味のない無駄な描写に見えてしまうほど物語と絡んでこないもどかしさ。

これらが総じてこの映画を物足りないものにしていると思ってしまった。

結局、大統領暗殺計画という大きなサスペンスドラマの落ち着いた先は、シルヴィアとケラーが抱えた個人と家族の問題だったわけで、なるほど道理で先に記したケラーの悲しみを延ばし延ばしで引っ張ったわけだと合点がいくのだが、この映画の落とし方にはまるで合点がいかない。。

ズルイというか逃げだろこれは。。

本当にリアルだったのはオープニングの銃を構えた少年とS・ペンの見事な表情だけだった・・・。

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ホテル・ルワンダ

Hotel 出演:ドン・チードル、ソフィー・オコネドー、ホアキン・フェニックス、ニック・ノルティ

監督:テリー・ジョージ

(2004年・英/伊/南ア・122分)2006/04/15・盛岡フォーラム

評価★★★★/75点

内容:1994年、ルワンダ。多数派のフツ族と少数派のツチ族の内戦は和平交渉がまとまるかに見えたが、フツ族の大統領が暗殺されたことによって事態は急変。フツ族の人々がツチ族の市民を襲撃し始めた。ベルギー系の高級ホテルで働く支配人ポールはフツ族だったが、妻がツチ族だったことから親類身内をホテルに匿うのだが・・・。1200人もの人々をホテルにかくまい、持ち前の機転と交渉力でその命を守り抜いた一人のホテルマンの奇跡の逸話。

“あまりにも不条理な世界の現実、そこに置き去りにされた人々がいるという事実、家族を死に物狂いで守り抜くという男の決意。気だるい(しかもどこかキナ臭さが漂う)平和を謳歌する日本人にとってはすべてが想像を絶する理解不能ワールド・・・。しかし、とにかく映画を観ることによって「知る」ことから始めるしかない。無知から恐怖は生まれ、その恐怖が狂気へと深化していく1番恐ろしいものなのだから。”

過去数百年にわたって欧州列強に侵略されてきたアフリカの近現代史(それ以前の歴史は侵略の過程で忘却の彼方へ押しやられ抹消されていったといってよい)は、白人たち侵略者との戦いであったわけだが、その戦いを克服した後に出てきたのが現在もアフリカ各地で続く内戦だ。

それは、世界地図でアフリカを見ると、判で押したように定規で線を引いたような整然とした国境線であることが分かるが、これは文字通り欧州列強が地図上で勝手に定規で引いて決めたわけで、そこにはアフリカの人々はおろか民族や部族や宗教、文化の違いといったものは何ら考慮されることはなかった。そこにあるのは欧州列強の縄張り争いと、その中での妥協の産物だけだったのだ。

それゆえ、同じ民族が国境線という名の下に分断されたり、あるいは異なる民族同士が同じ国に属するということが至る所で生じていたわけで。

現在続発するアフリカでの内戦や民族間の争いの大元はそこにあると思う。

今回の作品「ホテル・ルワンダ」の舞台であるルワンダの場合は、ルワンダ国民の85%を占めるフツ族と残りのツチ族の間の部族間争いである。

しかしこれだって大元をたどれば、第一次大戦の戦利品としてルワンダを召し上げたベルギーのルワンダ統治に行き着くだろう。

要は、統治しやすいようにルワンダ国家を弱体化させるために用いた方法として、ヨーロッパ人の容姿により近いという理由でツチ族を優遇することでフツ族とツチ族の間における人種差別を故意に増長させるというやり方だ。

後にベルギーはフツ族に乗り換えたりもして、ベルギーが1960年代に去った後に残されたのはフツ族支配者の一党独裁だったわけだが、結局これがツチ族100万人大虐殺という最悪の事態へ結びついてしまったわけで、その間、欧州はまるで過去の事実と所業を忘れてしまったかのように「第3世界」という括りでアフリカをそっくりそのまま置き去りにして捨て去ってきたのだ。

今回の映画はそういう背景や俯瞰的視点が決定的に足りないことは否めないと思う。

あくまでもポールの実体験による個人的な視点、すなわち家族を救うために口八丁手八丁で東奔西走しながら必死の形相で駆けずり回った男の視点と、結果として1200人もの尊い命を救ったという事実を描いたのみといっていいと思う。

もちろんその描かれていることだけでも非常に重く衝撃的で、日本から見ればはるかに遠い地ルワンダで起きたことをこの作品を観て知るということは非常に貴重なことだとは思う。

しかし、一方では、一抹の物足りなさが残ったのも確かなのだ。それは先ほども述べた通り、政治、民族、戦争、世界といったマクロな視点がほとんどないことに行き着いてしまう。

一応ないこともないのだが、それはツチ族の妻をもつフツ族のポールの家族の形として、また映画の舞台となる高級ホテルに断片的に凝縮されている形にすぎない。

マクロな視点とミクロな視点を交差させることで、なぜこういうことになってしまったのか、何が普通の人々を虐殺という酷い行為に走らせたのかといったところまで掘り下げていってもらいたかった気もする。

なぜなら、日本人として、人間として、何の関係もない話だとは決して言えないのだから・・・。

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ブラッド・ダイヤモンド

20070407024917 出演:レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・コネリー、ジャイモン・フンスー、マイケル・シーン

監督:エドワード・ズウィック

(2006年・アメリカ・143分)2007/04/16・盛岡フォーラム

評価★★★★/75点

内容:激しい内戦が続くアフリカ・シエラレオネ。漁師のソロモン(J・フンスー)は、反政府軍RUFの襲撃に遭い、ダイヤモンド採掘場で強制労働を強いられる。そこで巨大なピンクダイヤを発見したソロモンは、政府軍の来襲の混乱にまぎれてそのダイヤを秘密の場所に隠すが、その後刑務所に投獄されてしまう。一方、同じ刑務所に収監されていたダイヤの密売人ダニー(ディカプリオ)は、ソロモンがピンクダイヤを隠していることを知り、釈放後アメリカ人女性ジャーナリストのマディー(J・コネリー)の協力を得てソロモンの家族捜しに協力することを条件に、ダイヤの隠し場所を聞き出そうとするのだが・・・。

“先進国のダイヤを欲しがる一人の消費者が買った指輪のせいで、シエラレオネでは女性一人の手足が切り落とされているかもしれない・・・。”

国際人権保護団体アムネスティのサリル・トリパシ氏の言葉だが、幸せの象徴であるダイヤのリングが、ダイヤとは全く無縁の産出地の人々にとっては地獄のような不幸の象徴なのだという事実にただただ衝撃を受けるばかりだった。

一時は、このような紛争ダイヤモンドが世界市場の10%以上を占めていたというのだから驚くほかないが、消費大国である日本に暮らす我々日本人の手に渡っていたとしても何ら不思議ではないのかもしれない。

資源のほとんどを輸入に頼る日本、自分が普段何気なく買っているものの背景にはこういう話が五万とあるのかもしれない・・・。

ところでビックリしたのだけど、日本の平均寿命が80歳超えて世界一ならば、それとは正反対の平均寿命34歳で世界最短の国がこの映画の舞台であるシエラレオネなのだそうだ。

激化した内戦で幼児の4人に1人は5歳まで生きられず、または兵員補充のために殺戮の現場に少年兵として駆り出されていく現実。

子供が笑いながら銃を乱射し無造作に人間を撃ち殺す衝撃的なシーンは、映画としては最も忌避されるべきものだと思うけど、「シティ・オブ・ゴッド」と同様にこういう嘘のようなホントの現実が実際にあるのだということを伝えるためには必要な描かれなければならないことなのだろう。

その点でいえば、この映画は銃撃アクションとダイヤを巡るアドベンチャーを前面に出した娯楽商業映画という面も持ち合わせていて、舵取りを少しでも誤るとチンケなトンでも映画になってしまう可能性もあったのだが、社会派としてのメッセージをしっかりとなおかつ取っ付きやすい形で織り込んでいて、ハリウッド映画にしてはバランスがとれていて評価できる。そういう意味でも非常に見応えのある作品といえるだろう。

そしてなんといってもレオナルド・ディカプリオの一筋縄ではいかないヒール役の渾身の熱演も見逃せない。「ディパーテッド」よりも断然良い。

アフリカで生まれ育った元傭兵で血塗られたダイヤから利益を得ている密売人だが、その内には哀しいトラウマを抱える複雑なキャラクターをアカデミー賞ノミネートも納得のたしかな実力で演じ切っている。

この作品で童顔スターからついに脱皮したというのもあながち間違いではないと思う。往年の大スター、ハンフリー・ボガートと肩を並べたというのはさすがに言いすぎか、、な(笑)。

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ダーウィンの悪夢

Dar 監督・脚本:フーベルト・ザウパー

(2004年・オーストリア/ベルギー/仏・112分)WOWOW

評価★★★★/80点

内容:アフリカ中央部に位置するビクトリア湖は多様な生物が生息していたことから、かつて“ダーウィンの箱庭”と呼ばれていた。そんな湖に半世紀前、外来種の巨大魚ナイルパーチが放たれた。その白身は食用としてヨーロッパや日本で好まれたため、湖畔の町の地域経済は発展を遂げた。しかし、一方では、肉食巨大魚の大増殖で湖の生態系は激変、さらに貧富の差の拡大、エイズやドラッグの蔓延など新たな問題が町の人々に襲いかかる・・・。グローバル経済に取り込まれたアフリカで引き起こされた悪夢のような現実を描き出すドキュメンタリー。

“必死で食べ物にかじりつく少年と、マックのフィオレフィッシュにかぶりつく自分・・・。”

普段何気なく食べている白身魚フライがアフリカの飢餓の原因になっていたなんて・・・。

日本には数千トン輸入されているというナイルパーチはスズキの代用品として普通に切身で売られているほか、冷凍食品の白身魚フライとして学校給食やファミレスでよく使われているのだという。

最大で体長が2mにもなる大魚の白身をヨーロッパ人や日本人が根こそぎ持っていき、頭と皮だけになった残骸を食すしかない現地の人々。

ウジ虫の湧いた累々たる残骸と、片目を失った女性、そしてわずかばかりの食べ物を必死で取り合う子供たち。そしてナイルパーチの切身を満載して飛び立っていく飛行機が、代わりに満載して運んでくるものは、、、武器。

ショックだった。何にも知らない自分・・・。

グローバリズムという名の弱肉強食の世界で我々先進国の人間はナイルパーチそのものなのかもしれない。

生態系を破壊するナイルパーチのごとく我々がしていることは虐殺と呼ぶにふさわしいことなのかもしれない。

そんなこと露も知らず、マクドナルドのフィレオフィッシュにかぶりつく自分・・・。

                 ・

                 ・

しかし、ふと考えてみると、ディカプリオが主演し、同じくアフリカの問題を扱った「ブラッド・ダイヤモンド」では、紛争ダイヤを買う我々消費者にも多大な責任が委ねられていることを示していて、それはストンと胸に落ちたのだが、はたしてこの「ダーウィンの悪夢」で描かれた由々しき問題にも我々消費者に責任はあるのだろうかと考えると、なんかちょっと的外れな気もしたりして。。

もちろん加担していることはたしかなのだけど、なにかうまく言葉が見つからないけど、グローバルな資本主義システムの中に我々消費者も含めて組み込まれてしまっていることにこそ問題があるのではないかなぁ、と思ったり。

その中に当事者の顔が何千、何万と組み込まれ張り巡らされているわけで、いったい誰が悪いのか何が悪いのか、このシステム自体を変えるのにもいったいどこから手をつければいいのか分からないような世の中になってしまっている。

最終的に口の中に入れる我々消費者ができることが、例えばナイルパーチの白身フライを買わないとか食べないとかマックに行かないといったことで、この問題を解決できるのかといえば、かえってビクトリア湖の地元の産業体系を壊してしまい、ますます貧困が広がってしまうのかもしれないし。

この広大なグローバリズムの国際社会の中で、個々人が日常生活の中でできることは悲しいことに非常に限られている。

でも、自分は知ってしまった。この映画を観て。

グローバル化した世界の末端にいる人々の現実を。あまりにも悲惨な現実を。

自分にできること。この映画を周りに広めるくらいのことは出来る。自分みたいに何にも知らない人々に。無知を改める手助けをするくらいのことは出来る。

映画の中で、夜警に従事している男が「戦争があればみんな儲かって助かるのに。みんな戦争が起きればいいのにと思っている。」と言っていたのも衝撃的だった。

かなりヘコム映画だ。何にもできない自分に鬱になる映画だ。あまりにも世界の現実を知らない自分に腹が立ってくる映画だ。

でも、自分は知ってしまった・・・。

2016年10月23日 (日)

夢のシネマパラダイス606番シアター:キングスマン

キングスマン

Poster1出演:コリン・ファース、マイケル・ケイン、タロン・エガートン、マーク・ストロング、ソフィア・ブテラ、サミュエル・L・ジャクソン、マーク・ハミル

監督:マシュー・ヴォーン

(2014年・イギリス・129分)盛岡フォーラム

内容:「キングスマン」は表向きはロンドンの高級スーツ店だが、実はどの国にも属さない民間スパイ組織の本拠地。ある時、失踪した科学者を追っていたエージェントの一人が殺害されたため、欠員補充の新人採用テストが実施されることになる。チーム指折りのエリートスパイであるハリーは、かつての同僚の息子でチンピラ生活をしている若者エグジーをスカウトする。こうしてエグジーは過酷な採用テストに臨むが・・・。

評価★★★★/75点

一言でいえば全編ノリノリな悪ふざけのスパイ映画だけど、これがまぁとにかくスゴイ。

何が凄いのか、、それは下品なのに上品、悪趣味なのに小粋、ポップなのにクラシカル、ハードなのにエレガント、カジュアルなのにオフィシャル、グロテスクなのにビューティフル、、要はメイド・イン・アメリカの野蛮なポピュリズムに彩られたやかましさと、メイド・イン・イギリスのシニカルな美意識に彩られた落ち着きが共存している絶妙なあんばいがスゴイのだ。

それはハンバーガーをがっつく米国人ラッパーと、ナイフとフォークを常用する英国紳士の対比に表れているんだけど、そのアンバランスさが映画の色になっていて面白いんだよね。なんか007をタランティーノが撮ったらこうなるみたいなかんじで。

しかしまぁ、脳漿花火までいくともう笑っちゃうしかなかったけど、続編でガラリと色を変えてくれたらまた面白いなと思う。

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コードネームU.N.C.L.E.

Cef8ff23出演:ヘンリー・カヴィル、アーミー・ハマー、アリシア・ヴィキャンデル、ジャレッド・ハリス、ヒュー・グラント

監督・脚本:ガイ・リッチー

(2015年・イギリス・116分)WOWOW

内容:米ソ冷戦が続く1963年。CIAエージェント、ナポレオン・ソロが東ベルリンへ潜入する。行方不明の天才科学者テラー博士捜索のカギを握る娘ギャビーを西側へ亡命させるためだったが、KGBのイリヤ・クリヤキンの妨害に遭う。が、ナチス残党の犯罪組織が核開発を進めていることが判明。その阻止のために米ソは協力を余儀なくされ、ソロはあろうことかイリヤと手を組まされるハメに・・・。

評価★★★★/75点

21世紀に入ってアメリカ一極支配が早々に崩れ去り多極化が進むのかと思いきや、暴言王が大統領になるわ、イギリスがEUから離脱するわ、中国が領土拡張に躍起になって好き勝手するわ、テロは頻発するわ、多極化どころかカオスのるつぼと化す中で、米ソ東西冷戦の二項対立軸なんて今やカビの生えたような古臭い過去の遺物なわけで、もはや映画の題材としては使い物にならないのは自明の理。

しかし、その点今回の映画は水と油の米ソのスパイ同士がコンビを組むという意表をつく設定になっていて、しかもそれが好センスのバディムービーに昇華されていたと思う。

特に、ルパンみたいな元天才泥棒で稀代のプレイボーイ紳士ナポレオン・ソロと、クールなのに情緒不安定なのが玉にキズのキレきれマザコン男イリヤ・クリヤキンと、レスリングが強いコケティッシュな小悪魔運転手ギャビー・テラーのキャラクターバランスがすこぶる良い。

例えていえば、ピアース・ブロスナンとダニエル・クレイグのジェームズ・ボンド2人の間に峰不二子が割って入るようなかんじで、殺意の入り混じる丁々発止のやり取りがコミカルで軽妙なテンポを生み出していて面白かった。

また、60~70年代風の画作りもオシャレで良かったけど、まさかこれが60年代の海外ドラマがオリジナルだったとは驚き。そういう点ではレッドフォードとマックイーンあたりも彷彿とさせるくらいシナリオではなくキャラクターで魅せる映画だと思うので、ぜひ続編を作ってほしいところ。

あと、ギャビー役のアリシア・ヴィキャンデルにも要注目

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ウォンテッド

Wanted2出演:アンジェリーナ・ジョリー、ジェームズ・マカヴォイ、モーガン・フリーマン、テレンス・スタンプ、トーマス・クレッチマン

監督:ティムール・ベクマンベトフ

(2008年・アメリカ・110分)WOWOW

内容:仕事もプライベートもさえず、パニック障害の薬も手放せない若者ウェスリー。そんな彼の前にある日、謎の美女フォックスが現われる。なんと彼女いわくウェスリーは、千年以上前から存在してきた秘密の暗殺組織“フラタニティ”の正統な継承者だというのだ。しかし、全くのド素人である彼にはいったい何のことだか飲み込めず・・・。

評価★★★/60点

仕事も恋愛もドン底のしがないサラリーマンが秘密の暗殺組織にスカウトされ殺し屋になっていくという話からして既にありえないんだけど(笑)、しかも何か特殊な身体能力を得たりだとか全身武器の重装備をするでもなく、ただ有能な殺し屋だった父親の血を引いているだけって、そりゃないだろっていう・・

よって、実戦形式のスパルタ修行を積み重ねていくしか強化方法がなく、それで怪我をすればお風呂に入って全快って、それもねえだろ!とツッコミどころは満載ww

例えば「マトリックス」の場合だと、仮想現実が舞台なので脳トレを繰り返せば強くなれるというところに説得力が生まれるけど、今回のようにド素人が殺しのライセンスを獲得するというのは無理あるだろっというのは最後まで引っかかったままだった。

また、弾丸の軌道を自在に操れるというのも個人的には反則技に見えて好かなかったなぁ・・。

まぁ、アクションシーンに新機軸を打ち出すために作られた設定ともいえるけど、そこまでアクションシーンが刺激的だったとも自分の目には映らなかったので・・・。

話の筋立てもあって無きようなレベルなので、アンジーのカッコ良さに鑑みてかろうじてこの点数というかんじかな。。

夢のシネマパラダイス605番シアター:KAMIKAZE TAXI

KAMIKAZE TAXI

5068c320出演:役所広司、高橋和也、片岡礼子、内藤武敏、矢島健一、ミッキー・カーチス

監督・脚本:原田眞人

(1995年・日本・169分)WOWOW

内容:恋人を殺された一件で、政治家・土門と組長の亜仁丸を恨むチンピラやくざの達男が、土門から大金を盗み出した。しかし、その裏切りが組織にバレて仲間を惨殺された彼は、日系ペルー人運転手・寒竹のタクシーで逃亡するが・・・。

評価★★★☆/70点

血生臭いヤクザの闘争劇、特攻隊の裏歴史、日系移民の苦難、うさんくさい新興宗教、片言の日本語、殺し屋に見えないミッキー・カーチス、そよ風のように哀愁を運んでくる飄々としたインカの音楽・・・。

これら一見何の脈絡もない要素をタクシーの運転手とお客のロードムービーとして繋ぎとめた変わり種は、やけに寄り道が多くて7割方グダグダなんだけど、それも含めて文字通り今まで味わったことのない摩訶不思議な味わい。

それは、ミッキー・カーチスはもちろんだけど、孤独をたたえた旅人スナフキンのようなキャラクターに扮した役所広司のベストワークによるところが大きかったと思う。なんか若干嘘くさく見えるところがまたいい味出してるんだよねw

原田眞人監督も大人数の群像劇を得手としながら一糸乱れぬ統制のとれた画を撮る印象が強いのだけど、まだこの頃は動きのある粗さがあって、そこも新鮮だった。

しかし、1番衝撃的だったのは出撃前の特攻隊員に覚せい剤が与えられていたということ。知りたくなかった~

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テルマ&ルイーズ

Rtaizykzt出演:スーザン・サランドン、ジーナ・デイヴィス、ハーヴェイ・カイテル、ブラッド・ピット

監督:リドリー・スコット

(1991年・アメリカ・128分)NHK-BS

内容:平凡な主婦のテルマとウェイトレスのルイーズは、退屈な日常から抜け出そうと週末旅行に出かけた。食事に寄ったバーで、はしゃぎ過ぎたテルマがレイプされそうになり、ルイーズは男を撃ち殺してしまう。警察を信用しない2人はその場から逃げ出してしまうが・・・。旅行に出た2人の女性が、思いがけない事件をきっかけに指名手配犯として追いつめられていく経緯を描いたアクション・ロードムービー。

評価★★★/65点

自分の周りの女友達に訊くとほとんどがこの映画が好きだという・・・。

ついでに母親までこの映画が好きだという・・・。ましてや彼女はこの映画が大好きだという・・・。

自分の女性観を間違いなく変えた一本

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ミッドナイト・ラン(1988年・アメリカ・126分)NHK-BS

 監督:マーティン・ブレスト

 出演:ロバート・デ・ニーロ、チャールズ・グローディン、ヤフェット・コットー

 内容:ロスの“バウンティ・ハンター”ジャックは保釈金融会社から依頼され、ギャングの金1500万ドルを横領し慈善事業に寄付した経理士ジョナサンを、NYから連行する仕事を請け負った。NYでジョナサンと合流したジャックは、彼の命を狙うギャング一味と、やはり彼を捜すFBIの双方から追われるハメになり、追っ手を逃れ広大なアメリカ大陸を横断することに・・・。

評価★★★/60点

危険な香りのしないデ・ニーロは、見ていてツマラナイ。。

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バンディッツ(1997年・ドイツ・109分)NHK-BS

 監督・脚本:カーチャ・フォン・ガルニエ

 出演:カーチャ・リーマン、ヤスミン・タバタバイ、ニコレッテ・クレビッツ

 内容:刑務所でバンドを結成した4人の女囚が脱獄に成功した。彼女たちはTVに出演し、CDデビューも果たし一躍大人気。警察の追跡をかわしながら彼女らはバンド活動を続けていくが・・・。女囚たちがドイツ中を痛快に逃避行するロードムービー。

評価★★★/60点

“おセンチでヒステリックで場当たり的な女たちの存在感が際立つつくりに、まるでネコでも見てるような気分。。”

映画自体にストーリーを追おうという気が毛頭ないのがやや問題ありかなと。そういう意味でもネコっぽい。

あるいはホント長ったらしいビデオクリップてかんじ・・。

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普通じゃない(1997年・アメリカ・104分)WOWOW

 監督:ダニー・ボイル

 出演:ユアン・マクレガー、キャメロン・ディアス、ホリー・ハンター

 内容:小説家志望の貧乏青年ロバートは、掃除夫のバイトをクビにされて逆ギレ。社長令嬢を誘拐するのだが、実はそれは天使たちの陰謀によるものだった!?自ら誘拐の手ほどきをする気の強いわがまま令嬢と頼りない誘拐犯のドタバタ逃亡劇。

評価★★☆/50点

普通じゃない=ミラクルではなく、普通じゃない=異常というふうに描いている暴走もの。

こういうのは、吉本新喜劇で十分じゃなかろうか・・w

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ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア(1997年・ドイツ・90分)DVD

 監督・脚本:トーマス・ヤーン

 出演:ティル・シュヴァイガー、ヤン・ヨーゼフ・リーファース、ティエリー・ファン・ヴェルフェーケ

 内容:脳腫瘍に冒されたマーチンと、末期骨髄腫のルディは病室が一緒になり意気投合。海を見たことがないルディのため、病室を抜け出し車を盗み逃走した。しかし、その車には大金が積んであり、マフィアと警察の両方に追われてしまうハメに・・・。

評価★★★/65点

“ガ^^^^^^^^^ン、NO------ッ 主よーーー。”

2016年8月21日 (日)

夢のシネマパラダイス484番シアター:ノーカントリー

ノーカントリー

51awagswsfl 出演:トミー・リー・ジョーンズ、ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブローリン、ウディ・ハレルソン、ケリー・マクドナルド

監督・脚本:ジョエル&イーサン・コーエン

(2007年・アメリカ・122分)DVD

内容:メキシコとの国境沿いにあるテキサスの荒野でハンティング中に、死体が転がっている麻薬取り引き現場に出くわしたルウェリン・モス(ジョシュ・ブローリン)。彼はそこで200万ドルの大金を見つけて家に持ち帰る。しかし、そのため冷血非情な殺人者シガー(ハビエル・バルデム)に追われる身となってしまう・・・。

評価★★★★/80点

デヴィッド・フィンチャーの「セブン」(1995)で、「こんな世の中に生まれてきた子供は可哀想だから生みたくない」という残酷なセリフが出てくるけど、コーエン兄弟の今回の映画を見てこのセリフをふと思い出してしまった。

「セブン」を見たときは、なんつー現実離れした悲観論だと思ったものだけど、今回の映画を見てなんか妙に納得できちゃったというか、、それくらい救いも何もない映画だったなと。。

と同時にこれほど緊迫感を持って画面にじっと釘付けになった映画もついぞ久方ぶりに味わったような気がする。

面白いか面白くないかという枠ではとらえきれない、まるで研ぎ澄まされた生存本能が決して映画から目をそらすなと警告しているかのような、自分の五感を全開にして見入ってしまった。

それはなにより酸素ボンベを片手にルール無用の非情を通り越した殺戮を繰り返していく怪物アントン・シガーの不気味なおかっぱ頭と感情の見出せないギョロ目から片時も目を離せなかったことが大きく、悪役造型としては「ターミネーター」(1984)以来の衝撃を受けたといってもいい。

例えば史上最強の悪役とうたわれる「羊たちの沈黙」のハンニバル・レクターや、それこそ「セブン」のジョン・ドゥの雄弁さを見るまでもなく、どんな残忍な悪役でも対話=ダイアローグがある程度通用するものだけど、このアントン・シガーの何が恐いって、対話そのものすら通じないことが恐いのだ。

雑貨店の店主との会話にならない会話とか、相手の投げかけてきた対話のボールをそのままエアガンでブッ放して返したりと、まさに感情のないターミネーターでも見ているかのような、こいつに睨まれて追っかけられたら100%命はないと観念せざるをえない最凶レベルのシリアルキラー、アントン・シガー・・・

しかしてこの感情のないターミネーター、重傷を負って足からボトボトと赤黒い血を滴らせ、あげくの果てには交通事故に遭い、白い腕の骨がむき出しになったりと生の身体性を痛いほどに見せつけもし、これは現実の世界なのだと虚構という安住の地へ逃げることを許してくれない。

それでいて傷を負っても表情ひとつ変えずに黙々と処置していくその姿はやっぱりターミネーターとダブってしまうww。

いずれにしても恐すぎるのだ。。

そんな怪物の前では、しゃべくりまくりのウディ・ハレルソンも、追跡にかけては右に出る者がいないトミー・リー・ジョーンズも全く出る幕はない。

「逃亡者」(1993)、「依頼人」(1994)、「追跡者」(1998)などで現代アメリカの保安官の模範像を体現してきたといってもいいトミー・リーだからこそ、老兵となった彼の諦観の姿からはよりいっそうの救いのなさを痛感してしまう。

例えば、勝ち目のない戦いにひとり敢然と立ち向かった「真昼の決闘」(1952)の保安官ゲイリー・クーパーとはあまりにも対照的なのだけど、あの映画にあった正午きっかりにならず者たちが保安官に復讐しにやって来るという単純なルールの通用しない複雑怪奇なめまぐるしい時代の移り変わりの中で、老保安官はただ立ちすくむしかないのかもしれない。

その中で彼は「昔はこんな理解できない事件はなかった、、、昔はまだ良かった」と嘆くが、しかし、アメリカ西部の伝統的なロケーション、ひいてはアメリカそのものを貫いてきたのは銃と暴力以外の何ものでもないわけで。

そして、それを不条理なレベルにまで具現化したのがおかっぱの怪物だったとするならば、その怪物を生み出したのは映画の原作の題名である「血と暴力の国」=アメリカに他ならず、自分たちが築き上げ培ってきたフロンティア・スピリットの矛盾と闇にウエスタンハットをかぶった西部の男が追いつめられていくというのは痛烈な皮肉だろう。

また、ウエスタンハットの男モスが真夜中に何を思ったのか、瀕死のメキシコ人に水をやるために殺戮現場に舞い戻ったがゆえに墓穴を掘ってしまったり、ルール無用の殺人鬼が信号無視の車に追突されたりと、シニカルな視点が随所に見られるのもこの映画を印象深いものにしている。

モスがベトナム帰還兵だったり、トミー・リーのラストの夢の独白など、アメリカ人の皮膚感覚でしか分からないようなメタファーが含まれていると思うのだけども、そこまで深読みするにはもう2回くらい見ないとダメかも・・w。

しかし、そういう難しいことはさておき、追う者と追われる者の死にもの狂いの逃走(闘争)劇だけでも十二分にインパクトのある作品であることはたしかだ。

自分の生存本能を刺激する映画を見る、これほど至極の映画体験はない。

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バーン・アフター・リーディング(2008年・アメリカ・93分)WOWOW

 監督:イーサン&ジョエル・コーエン

 出演:ブラッド・ピット、ジョージ・クルーニー、ジョン・マルコヴィッチ、フランシス・マクドーマンド、ティルダ・スウィントン

 内容:アル中が原因でCIAをクビになったオズボーン(ジョン・マルコヴィッチ)は、暴露本を執筆中。一方、連邦保安官ハリー(ジョージ・クルーニー)と不倫中の妻ケイティ(ティルダ・スウィントン)は、離婚を有利に進めるべくオズボーンのPCからデータをコピーする。ところが、そのCD-ROMがひょんなことからスポーツジムのインストラクター、チャド(ブラピ)の手に。彼は整形費用が欲しくてたまらない同僚のリンダ(フランシス・マクドーマンド)と組んでオズボーンを脅迫しようとするが・・・。

評価★★★★/75点

地球の衛星画像からCIA本部にズームアップしていく仰々しいオープニングだけ見ると、トニー・スコットあたりが撮るようなスパイもののハイテクアクションみたいなのを想起させるけど、フタを開けてみたら、ハイテクどころか保険会社への問い合わせ電話もろくに繋がらないようなローテク極まりない映画だった・・・。

しかも、CIAの機密情報が入った(?)CD-ROMをいわゆるマクガフィンとして事は進んでいくわけだけど、それを取り巻く連中が、全身整形が悲願の40女にセックスマシーンの色ボケに、ipod好きの筋肉バカにアル中のイカレ親父という米ロが見向きもしないようなド素人というのもこの映画をよりいっそう“残念な”ものにしているww。

いやぁ、、こういう映画大っ好きなのよね(笑)。

アカデミー賞獲った後に原点に立ち返ったようなおバカ映画をサラリと作ってしまうコーエン兄弟はやっぱりさすが。

しっかし、役者陣だけ見るとなんとも贅沢な映画だけど、後味が何にも残らないっちゅうのもある意味スゴイ話だわな(笑)。。

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凶悪

Poster出演:山田孝之、ピエール瀧、池脇千鶴、小林且弥、白川和子、吉村実子、リリー・フランキー

監督:白石和彌

(2013年・日活・128分)WOWOW

内容:ある日、死刑囚の元ヤクザ・須藤から雑誌社の編集部に手紙が届いた。それは、まだ世間に知られていない3件の殺人事件についての告白だった。須藤曰く、「先生」と呼ばれる首謀者の不動産ブローカーの男が自分を裏切りのうのうと生きていることが許せず、雑誌で告発記事を書いてほしいという。須藤の記憶はあいまいで真偽も定かでない中、記者の藤井は裏付け調査に没頭していくが・・・。

評価★★★/65点

数年前、自分の中学校の同級生が金づちで妻を殴り殺してしまう事件が起こった。

中学を卒業してから約20年、TVニュースで容疑者の名前を見た時に仰天すると同時に、あぁ~やっぱりなぁと納得してしまった自分もいて。。

それは、自分の転校の事情もあり、小学校2,3年と中学校2,3年の4年間同級生だったのだけど、「山猿」と呼ばれるくらい当時から手のつけられない問題児で、理性よりも野性の方が勝ってしまうような、暴力的な行動に自制がきかなくなる恐さがあったからだ。

この何をしでかすか分からない野蛮な体臭を常に発散していたかんじが、何食わぬ顔で暴虐のかぎりをつくす須藤(ピエール瀧)と重なって見えて気持ち悪くなってしまった。

しかし、善良そうな普段着でありながらさらにその上をいく嗜虐性をみせるリリー・フランキーの凶悪ぶりもさることながら、家庭を省みない藤井(山田孝之)を尻目に義母の介護に疲弊して暴力までふるっていたという妻(池脇千鶴)の告白の方が日常と地続きな、いずれ訪れるであろう親の老介護において、なにか自分もある一線を超えてしまわないともいえないような怖さがあったように思う。

ただ、藤井の家庭を破綻に追い込むに至る老人介護の現実と、時計を質屋に預けるくらいの心持ちで老人を焼却炉で焼き殺すような凶悪犯罪とが映画としてうまく連関していたかというとちょっとビミョーで、正直いって前者は付け焼き刃的なかんじが否めなかったと思う。

まぁ、それだけ後者の悪が突き抜けちゃってるわけだけど、人間生活の表(善)と裏(悪)という点ではリリー・フランキーのとこを掘り下げるだけで十分だったと思うし、ちょっと作劇が狙いすぎというか生真面目というか、もっと図太くてもよかった気がした。

でも、これ見ちゃったら不動産ブローカーは一生信じられないなw

うわー、うちアパート持ってるんだよなぁ

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