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2022年12月22日 (木)

夢のシネマパラダイス589番シアター:ラ・ラ・ランド

ラ・ラ・ランド

170115_02出演:ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、ジョン・レジェンド、ローズマリー・デウィット、J・K・シモンズ

監督・脚本:デイミアン・チャゼル

(2016年・アメリカ・128分)東宝シネマズ日本橋

内容:ロサンゼルス。女優を目指すミアは、映画スタジオのカフェで働きながらオーディションを受けるも、なかなか役にありつけない。そんなある日、彼女は場末のバーでピアノを弾いているセバスチャンと出会う。彼も自分の店を持ってジャズを演奏するという夢を持っていた。そして2人はいつしか恋に落ち、互いに夢に向かって奮闘していくのだが・・・。

評価★★★★★/90点

取っつきにくいジャズよりもケニーGやそれこそザ・メッセンジャーズの音の方を大いに好む自分にとって、あんなのニセモノだし不本意だというセブのディスりは耳が痛くなった。。

いや、待て。じゃあアンタはホンモノを聴かせてくれるのか!?80年代ポップスまで揶揄しやがってー!

で、肝心のセブが言うところの本物のジャズが流れるのは、意外にもセブがミアを連れて訪れるジャズバーで演奏されている“ハーマンズ・ハビット”くらいなもので、ジャズピアニストとしてのセブの本気というか本領発揮はついぞ見ることができなかったというオチ(笑)

本物のジャズというのはセブがミアに力説したところから推測するに、個人技のぶつかり合いによる即興性のあるジャムセッション的なものだと思ったんだけど、ライアン・ゴズリングにそこまでの演技パフォを課すのは酷だったのか、そういうシーンがこれっぽちも出てこないんだよね。逆に嫌々やってるバンドシーンの方が記憶に残るというw

さらに、ミュージカルシーン含めた音楽もジャズを基調としながらもかなりマイルドテイストにアレンジされていて、もはやイージーリスニングの域。

でも、その裾野の広さがミーハー初心者な自分の琴線にものの見事に響いて虜になってしまうという逆説は、もうこれは監督の確信犯なのだろう。

「セッション」(2014)の時は思わなかったけど、今回は「ラ・ラ・ランド」を入口にジャズをもっと聴いてみたいと思わせられたし。なにせサントラまで買っちゃったんだから。。

あと感じたのは、ミュージカルシーンが意外に少ないなという印象。

大渋滞のLAの高速道路上で繰り広げられるオープニングのモブシーンミュージカルでガツンとインパクトを与えた後は、オーケストラから徐々にシンプルなピアノ演奏に変わっていく。そして最後はミアの力強いボーカルを主旋律とする“オーディション”(レミゼで5分に満たないパフォーマンスだけでアカデミー助演女優賞をかっさらったアン・ハサウェイのようにエマ・ストーンの受賞を決めた1曲)で締めるという、よりパーソナルなものに落とし込んでいく意図が感じられる。

なんだけど、モブシーンしかり幻想的なマジックアワーのハリウッドヒルズでミアとセブが文字通り心を弾ませる“ア・ラヴリー・ナイト”のアステア&ロジャースを彷彿とさせるダンスシーンしかり、それぞれ1曲かぎりで打ち止めなんだよね。

欲張りな自分はもう数シーン加えてもよかったのではという気持ちになったけど、捨て曲一切なしのクオリティと、四季ごとに章立ててミアとセブのドラマとシンクロさせる構成が間延び感をなくしたことで、終わってみれば腹八分目の非常にバランスの取れた作品になっていたと思う。

考えてみればミュージカル映画って、ミュージカルシーンが多いと満腹すぎて胸焼け起こすんだよねwそれ思うと少々物足りないくらいがちょうどいいのかも。

ラストに関しても、ミアのバイト先のカフェの前が「カサブランカ」に使われた建物という印象的なセリフがあったり、ミアの部屋にイングリッド・バーグマンのポスターが貼られていたり、あからさまなカサブランカ推しがあったので、ラスト見て完全にこれはカサブランカのオマージュなんだなと思って納得。

とにもかくにも映画見てこんな幸せな気分に浸れたのは久しぶりだ。

ヤバイ、、ほんとにジャズバー行ってみたくなってきた・・w

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レ・ミゼラブル

Poster出演:ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ、アン・ハサウェイ、アマンダ・セイフライド、エディ・レッドメイン、ヘレナ・ボナム=カーター、サシャ・バロン・コーエン

監督:トム・フーパー

(2012年・イギリス・158分)DVD

内容:19世紀フランス。妹の子供のためにひと切れのパンを盗んだ罪で19年獄中生活を送ったジャン・バルジャン。出獄した彼は施しを与えてくれた村の司教から銀の燭台を盗んでしまうが、司教がかばってくれたことで良心を取り戻し、真人間になることを誓う。そしてマドレーヌと名前を変えながらも市長にまで上りつめる。しかし、法に忠誠を誓うジャベール警部の執拗な追跡に逃亡を余儀なくされ、パリで身を隠しながら養女コゼットと暮らし始める。その一方、パリでは学生運動の嵐が吹き荒れていた・・・。

評価★★★/60点

今までめぼしいミュージカル映画は見てきたつもりだけど、全てのセリフをミュージカルで通すオペラ調の映画は初めて見た気がする。

で、これが自分にはちょっと合わなかったなと。

登場人物の感情の高ぶりや物語の重要な場面展開などポイント×2で歌いだすことに見慣れていた自分にとっては、ドラマと歌が常に一体となった今回のつくりは抑揚がなくてイマイチ乗り切れなかったし、妙に疲れた

まるで役者たちの生歌のど自慢大会を見に行った趣だったけど、物語の方もすごい駆け足で、なんか底が浅いというか。。非ミュージカルだった98年公開のレミゼの方がじっくり見れる余裕があったと思う。

で、レミゼは何度も映画化されているほど誰もが知っている古典中の古典なのだから、物語構成の焦点を大胆に絞ってもよかった気がする。

具体的にはコゼット、マリウス、エポニーヌを主体とする市民革命の盛り上がりを軸にして、ジャン・バルジャンの過去やジャベールとの確執を回想シーンなどを使って複合的に組み合わせていく方が、全編歌づくしには合っていたと思う。

でも、唯一この映画を見た価値があったのが、ファンテーヌ役のアン・ハサウェイだ。登場シーンは15分にも満たないものだったけど、幼い娘を育てるため髪を切って売り、歯を抜いて売り、娼婦にまで身をやつす結核に冒された極貧のシングルマザーを鬼気迫る演技で体現。絶望に打ちひしがれながら歌う“夢やぶれて”には思わず涙

この1曲だけでアカデミー賞獲ったようなものだけど、大納得した。

あと、ラストのジャン・バルジャンの死の間際に彼を神のみもとに誘う聖女として出てきた時の穢れのない神々しさにも息を飲んだ。

この映画は、アン・ハサウェイの一点押し!というのが自分の偽らざる感想だ。

2021年8月25日 (水)

夢のシネマパラダイス188番シアター:ミッドナイトスワン

ミッドナイトスワン

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出演:草彅剛、服部樹咲、田中俊介、上野鈴華、佐藤江梨子、平山祐介、根岸季衣、水川あさみ、田口トモロヲ、真飛聖

監督・脚本:内田英治

(2020年・日本・124分)WOWOW

内容:新宿のショーパブで働くトランスジェンダーの凪沙。ある時、育児放棄にあっていた親戚の中学生の娘・一果を養育費目当てで預かることにするが、一果は一向に心を開いてくれない。そんな中、凪沙に内緒でバレエ教室に通うようになった一果は、バレエに生きがいを見出していく。やがて凪沙と一果は次第に心を通わせていくが・・・。

評価★★★★/80点

身体を資本とするトップバレエダンサーのキャリア人生の短さと表裏一体である華麗な身体表現。そこに宿る美しさと儚さ。

そして、熾烈な競争と極限の重圧にさらされる中、華奢な身体ひとつだけで勝負しなければならないバレエは、フィジカルとメンタルの危ういバランスに左右される芸術だ。

そのため、喜怒哀楽を歌と踊りで表現するミュージカル映画と比べると、バレエ映画は魂を削るような悲劇性を避けて通れない宿命にある。

なので、映画にとっての最強の取り合わせは何だろうと考えた時、それはバレエなのではないかと思ってしまうくらい心を揺さぶられ圧倒されてしまう人間ドラマになることが多い。

その点で今回の映画も言葉のないバレエの身体表現ゆえの凄みを存分に感じさせる作品になっていたと思う。

社会の片隅で生きるトランスジェンダーと、母親からネグレクトを受けていた少女というヘビー級に重い設定ははっきり言って反則だけど、頭のてっぺんから足のつま先まで完ぺきなポジショニングとポージングが織りなす美しさを味わうバレエが、トランスジェンダーの苦しみをより際立たせる残酷なモチーフになっていたし、あざとさやベタに陥らないヘビー級の演技を見せた草彅剛とウソのないバレエパフォーマンスを見せた新人女優さんに引き込まれて見入ってしまった。

やや雑な作劇や救いのない展開など、途中からまるでページをめくる手に躊躇してしまうような面持ちにもなってしまったけど、バレエシーンに浄化されたかんじ。

音楽も印象的で、余韻から逃してくれない哀しみがあった。

アカデミー賞も納得。

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彼らが本気で編むときは、

Kareraga出演:生田斗真、柿原りんか、ミムラ、門脇麦、柏原収史、小池栄子、りりィ、田中美佐子、桐谷健太

監督・脚本:荻上直子

(2017年・日本・127分)WOWOW

内容:母親と2人暮らしの小5の女の子トモ。母が男と出て行き放置されるのは毎度のごとくで、その時は叔父マキオを頼って訪ねて行く。ある日、マキオの家に行くと、初めて会うリンコというマキオの恋人がいた。彼女は性別適合手術を受けて女性となったトランスジェンダーだった。家庭の温もりを知らないトモは、母親以上に愛情を注いでくれる明るく優しいリンコに戸惑うのだが・・・。

評価★★★★/80点

近年急速に耳にすることが多くなったLGBTとかトランスジェンダーとか性同一性障害といった言葉の正確な意味合いや違いを分かっていない自分にとって、今回トランスジェンダーのリンコさんを通して初めてその生き方に思いを巡らせ共感することができたように思う。

ていうか男とか女とか抜きに人として素敵だなと素直に思えた。

あまたの孤独や絶望、葛藤に直面してきたであろう心の傷を美しい心に変えていく強さを感じ取れたし、生田斗真の女性らしい細やかな仕草まで行き届いたあざとさゼロの演技が素晴らしすぎて説得力があった。

あとは何と言っても母親フミコ(田中美佐子)の存在がリンコさんにとって大きかったんだろうなぁって。いろいろなタイプの母親が出てきたけど、絶対的理解者の母親の愛によってリンコさんの優しさと強さは育まれたのだと思う。

一方、対照的に描かれるのが、トモちゃんの同級生カイくんと母親ナオミ(小池栄子)の関係性だけど、とはいえ「ああいう種類の人になることは罪深い」と吐き捨てるナオミのような保守的な視点の方がまだまだ世間一般的なのだろうか。

そしてほんわか幸せな疑似家族のあっけない結末には、う~む、そっかぁ、、と現実に引き戻されてやりきれなくなっちゃったけど、とはいえ考えてみれば親戚なわけだからね。ダメ母は放っといてこれからもトモちゃんをよろしくお願いします。。

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Laundry ランドリー

138147_01出演:窪塚洋介、小雪、内藤剛志、角替和枝、木野花

監督:森淳一

(2001年・日本・126分)シネ・アミューズ

評価★★★★/85点

 

内容:幼い頃、頭部に傷を負い、脳に知能障害を抱える青年テル。彼は毎日祖母の経営するコインランドリーで洗濯物を盗まれないように見張り続けている。彼にとってはこのコインランドリーだけが世界のすべてだった。そんなある日、コインランドリーに水絵という女性がやって来る。テルは彼女が置き忘れた洗濯物を届けてあげたことから言葉を交わすようになる。しかし、水絵はある日突然故郷へと帰ってしまった。最後にここにやって来たときに忘れたワンピースを残して・・・。

“★4っつ付けたのはオレが別に優しいわけだからじゃないんだぜ。ただちょっとこの映画が気に入っただけだからよ。”

と、サリー(内藤剛志)風に言ってみた。

いや、正直なところこの映画はなんかちょっと気に入っちゃったんだよね。

それしか上手い言葉が見当たらないんだ。なんか、ちょっとなんだよ。。

楽しくもあり、優しくもあり、哀しくもあり、せつなくもあり・・。いろいろな要素が渾然一体となっている。

つまりはこれすなわち“生きる”ってことなのでしょうか。

結局19戦負け続けのボクサーはそれでもボクシングが好きだからボクシングを続けるし、嫁に対する愚痴をこぼすジイさんだって孫ができれば嬉しいし、オバさんは毎度のごとく花を撮りつづけて、その写真を誰かに見せびらかすことを生きがいにするんだろうし、水絵の妹はラクダと付き合うことができて。

そしてテルは水絵と一緒になることができて。

最初この映画を見ていて違和感を持ったのが、登場人物に名前がないことだったんだよね。

テルと水絵だって途中までは、“ボク”と“あの人”か“女狐”だったわけで。

ここで、クローズアップされてくるのが、現代社会に通じる人間関係の希薄さであることは言うまでもない。

そもそもコインランドリーという空間自体がその地域社会における孤立感や孤独感を象徴するのに格好の空間なのではなかろうか。

これはあくまで個人的な印象かもしれないけど、なんか夜にコインランドリーで洗濯するのって寂しい気持ちになるんだよなぁ。昼間は昼間でまた侘しいし・・。銭湯は一人で行ってもそんな気分には全然ならないんだけど、コインランドリーだけはダメなんだよなぁ。。

まあとにかくコインランドリーの持つ閉鎖性と、現代社会における人間関係の希薄さ、これが“ボク”と“あの人”という距離感となって表れていたのではないかと思う。

そしてここで重要だと思うのが、現代社会における人間関係の希薄さは、つまるところ物語の希薄さにつながっちゃうということ。情報がどんどん過多になっていく中で個人ですべてが完結してしまう時代。

現代において、物語はもはや成立し得ないといえるのではないだろうか。

それに加えてこの映画には、コインランドリーという閉鎖性、孤立感が加わる。

この映画を見て感じた「なんかちょっとイイ感じ」という掴みどころの無さというのは、そういうところに原因を求めることもできそうだ。なんかフワフワしたかんじというか浮遊感というか。それがまた逆に現代という時代を象徴しているようで個人的にはすごく買いだったけど。

しかし、よくこの脚本を仕上げたよなぁと脚本・監督の森淳一に感心してしまう。いわば物語が成立しえないゼロの地点から立ち上げているわけだから。

しかもよくありがちなファンタジーに逃げるわけでもなく、あくまで現実世界を舞台としているところがなにげにスゴイ。

いわゆる社会的弱者でありながら、極めて純真無垢な要素を併せ持つテルというキャラクター。しかし、この映画では彼は強き者として描かれる。そして、現代における弱者とは、もしかして水絵に代表されるような他人との人間関係がうまくとれなくなってしまった人々なのかもしれないということをテルに救われる水絵を通して暗示する。

水絵の気持ちも何となく分かるなと感じたのは自分だけではないと思う。

ようするに皆弱いんだよ、人間ってのは。でも弱くても生きていけるんだよ、人間ってのは、助け合えばさ。

そう。“愛”を持てば!ってことをこの森淳一というお方は優しい眼差しでおっしゃってるわけだ。

「私は変わる!」と宣言した水絵。

結局彼女は変われたのかということについてこの映画は深追いしていない。

いや、それよりもそんな肩肘張って変わろうとしなくてもいいんだよ、というようなやはり森淳一監督の優しさが伝わってくる。

そういえばこの映画を見ていて思い出したことがあったんだ。

名作ドラマ「北の国から」でのシュウ・宮沢りえの言葉を。

「昔のこと消せる消しゴムがあるといい・・・」

アダルトビデオに出演していた過去が純・吉岡秀隆にバレてしまい、会ってくれなくなったことについて吾郎・田中邦衛にもらす言葉だ。

もちろんそんな消しゴムなんてあるわけないんだけど、この映画のLaundry<ランドリー>=洗濯=キレイにするということと何か相通じるものがあると思ったので。

結局シュウと純はまたやり直すことになり、水絵もテルによって救われまた生きる力を取り戻す。

そう、人生は何度でもやり直せるんだよな。

なんかちょっとじゃなく、実はすごくイイ映画を見させてもらった気がしてきたぞ。

2020年9月15日 (火)

夢のシネマパラダイス570番シアター:ライフ・オブ・パイ

ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日

Heder_img_01 出演:スラージ・シャルマ、イルファン・カーン、アディル・フセイン、タブー、レイフ・スポール、ジェラール・ドパルデュー

監督:アン・リー

(2012年・アメリカ・127分)盛岡フォーラム

 

内容:インドで動物園を営む一家に育ったパイ少年。16歳の時に一家はカナダに移住することになり、動物たちと一緒に貨物船に乗り込むことに。しかし、途中で嵐に巻き込まれ船は沈没。ただひとり救命ボートに乗り移ることができたパイだったが、ボートには他に逃げ延びたシマウマやハイエナ、オランウータン、そしてベンガルトラが乗り合わせていた・・・。

評価★★★★/75点

「アバター」をしのぐ映像という謳い文句にホイホイ乗せられて劇場に足を運んだわけだけど、それに見合う映像だったかといえば当初はそんなスゴイかぁ!?って感じてしまって。。

それは少年とトラがただ漂流するだけという単調な物語性に中だるみを感じてしまったことが大きく、さらにそれはつまるところ自分に宗教観念がほとんどないために哲学的、宗教的なメタファーや伏線などを深読みすることをはなっから除外してしまったことが大きい。

それゆえ、トラとの漂流が実はパイの創作であり、トラは人を殺めた自身の姿を表していたというオチがパイの口から語られたのには思わず目が点になってしまった。

そういえば、トラと心が通じ合ったと思ってるのは「トラの瞳に映った自分自身の姿を反映しているにすぎない」という父親の言葉があったっけと思い出したり、この漂流が一貫して救命ボートといかだの、あるいは帆布一枚隔てられた船の中でのパイとトラとの縄張り争いを描いていることからすれば、パイの中にある理性と野性(本能)の対峙を表現していたのかもなぁなんてことを考えさせられた。

しかし、かといってどっちの話がホントなのかということにはこれまたはなっから興味がなく・・w

そもそも証人のいないパイにしか語ることができない話についてどっちがホントなのかなど意味をなさないわけで、だからパイは最後にこう問いかける。

「どっちの話が好きですか?」と。

どっちの話が本当かではなく、どっちの話が好きかと。

深く考えずにファンタジーとして見ていた自分の答えは、かろうじてトラのいる方だけど、それに対しパイはこう答える。

「ありがとう。そっちこそ神が存在する物語だ!」と。

これはもう一度見なければならない映画だ(笑)。

P.S. 当初それほどスゴイ映像とは思っていなかったけど、映画を見て数日経ってからあることをきっかけに、漂流してからの時に残酷で時に幻想的な映像の数々が鮮明に脳裏に甦ってきて自分でも驚いてしまった。

それは、自分が小学4年生の時に少年少女友情の船ってやつでグアム・サイパンに行ったことがあるのだけども、ある日、甲板に寝そべっていたら真っ青な空と大洋の海原が円のように一体になり迫ってきて眩暈に襲われ、この世界にたった自分一人しかいないという錯覚にとらわれ急に怖くなってホームシックにかかってしまったことを思い出したからだった。

ついでにいうとグアムからの帰路で台風に遭って嵐にうねり狂う海を見たことも思い出したけど、映画のような雷は見なかった。

しかし、映画を見た1週間後くらいに、世界有数の雷発生地帯であるオーストラリアのノーザンテリトリーの雷を取り上げたNHKのグレートネイチャーという番組を見て、映画にあったような雷があるんだなと仰天してしまった。1秒間に1回雷が起こり、稲妻が空を走り何本も地に落ちる異様な光景はまさに神の領域というにふさわしいものだった。

今では言える。

この映画の映像は凄い!

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レッドタートル ある島の物語

169398_01監督・脚本:マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット

(2016年・日/仏/ベルギー・81分)WOWOW

内容:嵐で海を漂流し、無人島に流れ着いたひとりの男。いかだを作って幾度も脱出を試みるも何者かに壊されて失敗。アカウミガメのしわざだと思った男は、そのウミガメを殺めてしまう。すると数日後、ウミガメの甲羅の腹の中にひとりの女性が横たわっているのを見つける。やがて男と女は恋に落ち、数年後には男の子が産まれ、3人での暮らしが始まる・・。セリフ一切無しで、美しく詩的な映像と音楽のみで綴っていく長編アニメ。

評価★★★★/80点

見ていて「ライフ・オブ・パイ」と似たような感触を得たけど、あちらにあってこちらに無いものは“言葉”である。

主人公の男には名前さえ与えられず、独り言さえ発しない。

この徹底さは実験的手法ではあるのだろうけど、これはもう言葉のない世界と考えた方がいいのかもしれない。

まぁ、フツーに瓶が流れ着いているので外の世界には文明がちゃんとありそうだけど、言葉がないことで昔々あるところに云々といった物語性すら排除されていて、映画としてかなり特殊な部類に入る作品になっていると思う。

そういう点で副題が“ある男の物語”ではなく、“ある島の物語”になっているにも合点がいく。

つまり語り手が人間ではなく島であり海なのだ。人は自然の一部でありアカウミガメは自然の化身という視点。

こうなるとメタファーとか難しいことを類推するのもあまり意味をなさないというか、身を任せてありのままを眺めていくしかない。

個人的にはこういう作りは新鮮だったし、セリフ無しの中で、泳ぐ・よじ登る・走る・歩く・引っ張るetc.アニメの原点であるキャラクターの動きだけを追う80分は面白かった。

カリオストロ以来の身体表現と言ったら誉めすぎだろうかw

あと、抑え目かつシンプルでありながら独特な色彩感覚も含めて、長く心に残る貴重な映画体験をさせてもらった気がする。

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白鯨との闘い

Poster1出演:クリス・ヘムズワース、ベンジャミン・ウォーカー、キリアン・マーフィ、トム・ホランド、ベン・ウィショー

監督:ロン・ハワード

(2015年・アメリカ・122分)WOWOW

内容:1850年港町ナンケット。新進作家ハーマン・メルヴィルは、次回作のヒントを得るため30年前に起きた海難事故の生き残りであるトーマスを訪ねる。そして重い口を開いたトーマスの話は1819年に遡る・・。一等航海士のチェイスは、捕鯨船エセックス号の出航に際し船会社と船長契約を結んでいたはずが、経験の浅い名家のポラードがコネで船長に選ばれて大きな不満を抱えていた。そして、新米船員トーマスも乗船するエセックス号は一攫千金を夢見て船出するのだが・・・。

評価★★★/60点

何の前知識もなしに見たので、グレゴリー・ペック演じるエイハブ船長が打倒モビー・ディックのために片脚の狂人と化す「白鯨」(1956)のリメイクと勝手に思い込んでいた。なので、作家ハーマン・メルヴィルの古典小説のネタ元になったノンフィクションの映画化だったとは思いもよらず。。

ただ、この見当違いのハンデは特に悪影響を与えたというわけではなく、一個の海洋アドベンチャー映画として見られる作品になっていたとは思う。

しかし、そうは言っても、パイレーツオブカリビアンでのクラーケンとのスペクタクルな死闘にも、ジョーズの決して逃れられない恐怖にも、ライフオブパイの寓意に満ちた絶望にも遠く及ばない作劇は中途半端で、これといった特筆すべき強みがないのが玉にキズ・・。

そういう点では、主人公の一等航海士チェイスと船長ポラードの対立軸をもっと明確にメインに据えていればドラマとして芯の通った作品になっていたと思う。映像面は創意工夫があって見応えがあっただけに、少しもったいなかったね。

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ジャングル・ブック

168780_01出演:ニール・セティ

声の出演:ビル・マーレイ、ベン・キングズレー、イドリス・エルバ、ルピタ・ニョンゴ、スカーレット・ヨハンソン、クリストファー・ウォーケン

監督:ジョン・ファヴロー

(2016年・アメリカ・106分)WOWOW

 

内容:ジャングルに取り残されていた人間の赤ん坊モーグリは、黒ヒョウのバギーラに拾われ、アキーラが率いるオオカミの群れに託された。そして母親代わりのラクシャの愛情を受けてたくましく成長していった。ところがある日、人間への復讐を募らせるトラのシア・カーンが現われ、モーグリは命を狙われてしまう・・・。

評価★★★★/75点

ディズニーの王道アニメのテイストを損なわずにバランスの取れた案配で実写化している良作。

要は実写とアニメの境をきっちり線引きしていない作り方が、意図してのものなのかは分からないけれど個人的には好感触。

主人公のモーグリ少年以外フルCGというのも驚きだけど、「ライフオブパイ」のジャングル版というくらい映像クオリティが高く、すんなり童心に帰って楽しむことができた。動物の擬人化を違和感なくCGで実写表現してしまったという点ではライフオブパイより進化してるかも。

逆にいえば映像の一点張り映画なんだけど、ここまで超絶レベルだと見といて損はないw

2018年11月 6日 (火)

夢のシネマパラダイス568番シアター:天下分け目の決戦!

レッドクリフPartⅠ

279_2 出演:トニー・レオン、金城武、チャン・フォンイー、チャン・チェン、ヴィッキー・チャオ、中村獅童、リン・チーリン

監督:ジョン・ウー

(2008年・中/日/台/韓・145分)盛岡フォーラム

内容:西暦208年。魏の曹操は呉蜀の制圧に向け80万の大軍を率いて南下を開始した。最初の標的となった僅か2万の劉備軍は、関羽・張飛・趙雲らの猛将を擁しながらも敗走を重ねる。そして、天才軍師の諸葛孔明は、江東の孫権との同盟を結ぶ以外に道はないと進言し、自ら呉の地へと赴く。そこで孔明は、呉の司令官・周瑜と出会う。。

評価★★★★/75点

人形劇、漫画、TVゲームと子供の頃から連綿と付き合ってきた三国志が満を持して実写映画として登場!ということだけでも血湧き肉躍る心持ちにさせられるのだけど、と同時に横山光輝が60巻かけて描いた大長編を2部作とはいえ描ききるのは到底無理という中で、三国志最大の見せ場である赤壁の戦いに的を絞ったのは賢いやり方だったとは思う。

その中で、人物紹介もそこそこに観客をいきなり渦中に巻き込む演出は三国志初心者の目にどう映るかは疑問だけど、織田信長や徳川家康、武田信玄にいちいちキャラクター説明が不用なように、三国志の登場人物も同じである自分からするとかなり満足のいく出来。

唯一、劉備だけは覇気のないオッサン風のバカ殿っぽく描かれていて意外だったけど、孔明や関羽を引き立たせるための設定だったのかも。そういう点では孫権もやや頼りなさげで、これも周瑜を引き立たせるためだったのだろう。

まぁ、演出といったって、ぶっちゃけオールスターキャスト時代劇の忠臣蔵を見るようなものだから、大ボケかまさないかぎりは面白くならないはずがないフォーマットだからね。

その中で、全体としては、人海戦術とCGを駆使したド派手な戦闘アクションを基本とした構成の中で、関羽・張飛・趙雲といったおなじみの英雄の大見得を切る見せ場もたっぷりあってファンとしては嬉しいかぎりのシーンの連続だったし、周瑜と孔明のカリスマ博識バトルはゾクゾクもの、絶世の美女・小喬(リン・チーリン)には目を奪われっぱなし、さらに三国志の様々なTVゲームで大変お世話になった最強布陣・八卦の陣を壮大な実写で見れたとくれば、あれよあれよという間の2時間半で、赤壁の戦いに向けてオイラのテンションはMAX状態!

まだ、大本番前の第一幕でしかないので評価しづらいところだけど、まずはこの壮大な歴史スペクタクルの夢の映像化に祝福を送りたい。

約15年ぶりにアジア圏に凱旋してきたジョン・ウーの並々ならぬ意気込みがスクリーンからも伝わってきたし、久々にこれが娯楽映画だ!と思える映画を見れた気がする。

第二幕に期待っス。

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レッドクリフPartⅡ-未来への最終決戦-(2009年・中/日/台/韓/米・144分)盛岡フォーラム

 監督:ジョン・ウー

 出演:トニー・レオン、金城武、チャン・フォンイー、チャン・チェン、ヴィッキー・チャオ、中村獅童、リン・チーリン

 内容:80万の曹操軍を5万の軍勢で撃退した孫権・劉備連合軍だったが、依然として強い勢力を誇る曹操は、2千隻の軍船を率いて長江の赤壁へと進軍する。慣れない土地で疫病が蔓延するものの、曹操の非情な決断が功を奏し対岸の連合軍にも疫病が飛び火、劉備軍が撤退するハメに陥ってしまう。ひとり孫権軍に残った孔明と周瑜が策を練る中、周瑜の妹・尚香が曹操軍に潜入する・・・。

評価★★★/65点

PartⅠが145分だったからPartⅡもそのくらいじゃないとダメやろっちゅうことで作ったのかもしれないけど、完全に冗長な作品に堕してしまい、MAX状態だった自分のテンションは尻つぼみに・・・。

1作目は個々のキャラクターの見せ場を存分に引き出すことで娯楽大作として見所満載の作品に仕上がっていたけど、今回の第二幕の見せ場はスクリーンを焼き尽くさんばかりの爆薬たっぷりの炎と赤壁の海上戦のスペクタクルのみ。

たしかにそれで十分元は取れるのだけど、そこに介在する人間の魅力が決定的に乏しいのがなんともイタイ。

早々に劉備軍が撤退してしまうため、関羽・張飛・趙雲といった勇猛果敢な闘将の出番がほとんどなくなってしまったことがかなり影響していて、知将の周瑜と孔明の泰然自若の面構えだけが強調されすぎてしまい、さらに孫権も1作目同様パッとしなかったし、どうも人間味が足りず・・・。

さらに、蜀の将軍たちに代わって前線に出て行く周瑜の妹・尚香と敵のおデブ隊長とのロマンスも蛇足に過ぎて面白くないし、周瑜の妻・小喬の命を賭した決断と行動もイマイチ燃えず。

唯一、善悪二面性を強烈に持ち合わせた曹操だけが人間臭かったのはなんとも皮肉だ。

史実はどうあれ、人物がある程度ステレオタイプに描かれるのは致し方ないとしても、もうちょっと造型深く描いてほしかったかなと。

どうせだったら、関羽や張飛の出番が少ないぶん、他のキャラにもっとスポットを当てた方が良かったのかも。

例えば、赤壁の戦いにおいて重要な役割を担った呉の老将・黄蓋なんて絶対に面白いと思うんだけどなぁ。演じてる役者さんが北大路欣也に似てたしww

わざと周瑜と対立し、その不満を理由に曹操に投降した黄蓋。しかしそれは曹操を油断させるための偽りの投降で、戦いの火蓋が切って落とされると、自軍の軍船に火を放って曹操軍に突入。その最中、流れ矢に当たったものの九死に一生を得て火攻めの最大の功労者となった。わざと自身を苦しませて敵を欺いたこの黄蓋の行為は「苦肉の策」という名言の語源となったことでも有名だ。

ところがだ、映画ではこの苦肉の計は周瑜にあっさり却下されちゃって(笑)、かわりに小喬が曹操陣営に赴く話にすり替わってしまった。。

分かりやすすぎるくらい分かりやすいお話ゆえ、いろいろ脚色しやすかったのだろうけど、手を加えすぎて逆に「危急存亡の秋」(これも三国志からの語源)になってしまったら元も子もない。

とにもかくにも、第二幕はな~んか物足りなかったなぁ・・。

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関ヶ原

Mv61335_992725679791aa4c82204dff1486cfa8出演:岡田准一、有村架純、平岳大、東出昌大、北村有起哉、音尾琢真、滝藤賢一、西岡徳馬、松山ケンイチ、役所広司

監督・脚本:原田眞人

(2017年・東宝・149分)WOWOW

内容:1598年、豊臣秀吉が息を引き取った。幼い頃より秀吉に仕えてきた石田三成は、虎視眈々と次の天下の座を狙う徳川家康と対立していく。三成を筆頭にした文治派に不満を抱いていた福島正則・加藤清正をはじめとする武断派に甘言を説いて豊臣家臣団の分断を図るなど権謀術数を仕掛けてくる家康。それに対し三成は、天下を二つに割って家康と対峙し討つための準備を進めていく。そして1600年9月15日、三成率いる西軍優勢と思われる中で天下分け目の関ヶ原の戦いが幕を開けるが・・・。

評価★★★/65点

司馬遼太郎の原作は未読。

てっきり関ヶ原の戦場での状況を克明に描いていく作品なのかと思いきや、関ヶ原に至るまでの両陣営の経緯の方にかなりの時間を割いていて、見ている途中で関ヶ原に布陣したところでラストだったりして、とヤキモキしてしまった。

しかしまぁ、2時間半によくまとめて描ききったなぁと原田眞人監督の豪腕ぶりには感心してしまうけど、どうせだったら前後編に分ければよかったのに(笑)。

滑舌無視の早口言葉や方言丸出しでセリフが聞き取れない問題は置いとくとしても、関ヶ原への経緯を描いた再現ドラマを1.5倍速で見せられているような置いてけぼり感は少なからずあって、見る側にかなりのレベルを要求される映画なのはたしか。

完全に蛇足だった伊賀忍者とのエピソード含めて、面白さより中途半端なイマイチ感の方が勝っちゃったかなぁ・・。

例えば、敗軍の将として打ち首を待つ三成と天下取りの家康との対面シーンも「対面は無言で終わった」というナレーション付きのワンカットだけでスルーしてしまうツマラなさがあって、余韻も何もあったもんじゃないw

聞くところによると、当初は小早川秀秋を主人公にして描くプランもあったということで、映画の尺の制限を考慮すればそっちの方が分かりやすかったんじゃないかなぁ。あるいは、関ヶ原の前日にあった前哨戦・杭瀬川の戦いなどを織り交ぜた数日間の水面下の攻防とかけ引きに的を絞った方が、、というかそれが見たかった。。

2018年10月22日 (月)

夢のシネマパラダイス312番シアター:血ィ吸うたろか~・・

東京喰種 トーキョーグール

170691_04出演:窪田正孝、清水富美加、鈴木伸之、桜田ひより、佐々木希、村井国夫、蒼井優、大泉洋

監督:萩原健太郎

(2017年・松竹・119分)WOWOW

内容:人の姿をしながらも人肉を喰らう怪人・喰種(グール)が密かに人間社会の中で暮らしている東京。ある日、内気な大学生カネキは、喰種のリゼに襲われ重傷を負うも、直後に命を落としたリゼの臓器を移植されたことで半喰種になってしまう。人肉以外受け付けなくなり苦悩する彼は、やがて喰種が集まる喫茶店あんていくで働き始める。喰種である店長の芳村やアルバイトの女子高生トーカと交流を深めていく中、喰種の駆逐を目指す人間側の組織CCGの捜査官・亜門と真戸が現われ、戦いが激化していく・・・。

評価★★★/65点

原作マンガ推しのファンとしてはキャスト、映像ともに文句なしのクオリティで最低限のラインは難なくクリア。

しかし、大団円でバトルを繰り広げるカネキ(窪田正孝)と亜門(鈴木伸之)がそれぞれの立場で叫ぶ「この世界は間違っている!」というセリフがいまいちピンと響いてこないことに集約されるように、原作にほぼ忠実なアウトラインを敷きながら、なんでこんなに薄っぺらいんだろうw

と考えると、人間を捕食するグールに立ち向かう人間側ではなく、主人公がグール側に立つ視点で描くという、例えば「プレデター」でプレデター側から描くような異色作だけに、それを実写化するにはただでさえ説得力をもたせるのにハードルが上がっているはず。にもかかわらず、漫画をただなぞっただけの掘り下げのない描写力で、説明不足感は否めず・・。一見さんは赫子とクインケの違いなんて分かったんだろうかw

また、人間側がカネキの親友ヒデを除けばCCG捜査官の真戸(大泉洋)と亜門くらいしかいないのも問題。

特に前面に出る真戸が嗜虐性のある冷酷無比なキャラクターのため、人間側=悪の構図に誘導する演出がちょっと安易だったかなと。

その点でいえば、まともな捜査官の篠原や黒磐、またニシキがグールであることを知りながら付き合っている恋人の西野貴未あたりを出してもよかった気がする。

まぁ、ヴァンパイア映画「トワイライト」に出てくるベジタリアンな吸血鬼みたいな優しい設定がない分、感情移入させるのは難しかったとは思うけど、いやホント役者陣の頑張りにめちゃくちゃ救われた映画だったと思う。

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リンカーン/秘密の書

Poster出演:ベンジャミン・ウォーカー、ドミニク・クーパー、アンソニー・マッキー、メアリー・エリザベス・ウィンステッド、ルーファス・シーウェル

監督:ティムール・ベクマンベトフ

(2012年・アメリカ・105分)WOWOW

内容:第16代大統領エイブラハム・リンカーン。彼には知られざるもう一つ別の顔があった・・・。子供の頃に最愛の母をヴァンパイアに殺され、復讐を胸に誓っていたリンカーン。その後、青年となった彼はヴァンパイア・ハンターとしての修行を重ねていく。そしてヴァンパイアが奴隷制度を食糧供給源にしていることを知った彼は、政治家として奴隷解放を訴える一方、夜になると斧を手にしてヴァンパイアたちと戦うのだった・・・。

評価★★☆/50点

かの国はよほどヴァンパイアがお好きなのか、映画からTVドラマまで雨後のタケノコ状態だけど、ついに歴史上の偉人にまで手を伸ばしてしまった。しかもビミョーにつまらない

“剣はペンより強し”な国アメリカを揶揄したい気にもさせる展開だったけど、あんまりそういうことも意味がないレベルの映画だったなw

まぁ、リンカーンがヴァンパイアハンターというそもそもの設定からして興味を引かれないんだけどね・・・。

例えば、伊藤博文が怨霊退治するという映画が作られたら平将門とか菅原道真、崇徳上皇といった歴史上の大魔縁を登場させることもできるけど、リンカーンなんてアメリカ建国してから100年も経ってないうちに出てきたヒヨッコなわけで、アメリカの歴史の浅さがまんま映画の浅さに繋がっているかんじがした。

また、昼は高潔な大統領、夜は斧を振りかざすハンターというギャップも物語の肝になっておらず、ただ単にCG満載のB級アクションを撮りたいがための映画としかいいようがない。

まぁ、この監督のセンスはアクションにしか見出せないから仕方ないけど、はっきりいってリンカーンでやる必要性はなかったなww

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ブレイド

Blade01 出演:ウェズリー・スナイプス、スティーブン・ドーフ、クリス・クリストファーソン

監督:スティーブン・ノリントン

(1998年・アメリカ・120分)仙台フォーラム

内容:ヴァンパイアと人間との間に生まれたハーフのブレイドは、人間を脅かすヴァンパイアを抹殺するために闘うヴァンパイアハンターだった。彼は、母親を死に追いやった宿敵のヴァンパイア、フロストの世界征服を阻止するために立ち上がり、フロストのアジトである暗黒院に潜入する。

評価★★★/65点

情け容赦のない映像テクとすとんとツボにはまるギャグには、こ奴なかなかのセンスだなとホレボレしてしまうが、情け容赦のないプロットの丸投げを見せつけられるにつけ、こ奴は単なるおバカさんだなとちょっと残念に思ってしまうのだった。

まぁ、愛すべきおバカさんには違いないんだけどね。

このままおバカ街道を一路邁進していくのか、それとも・・・。

このての監督は一皮むけると大化けする可能性を秘めてるからね。その点では楽しみな監督なのだけど、でもやっぱ限りなくおバカ街道一直線タイプなんだろうなぁ。。

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ブレイド2(2002年・アメリカ・117分)MOVIX仙台

 監督:ギレルモ・デル・トロ

 出演:ウェズリー・スナイプス、クリス・クリストファーソン、レオノア・ヴァレラ、ロン・パールマン、ノーマン・リーダス

 内容:ブレイドは、父親代わりのウィスラーを救出し、吸血鬼達を追い詰める。そんなブレイドのもとにヴァンパイア族がやって来て、凶悪な吸血鬼リーパーズを倒すことを持ちかけてくるが・・・。

評価★★★★/75点

“孤高も度を超すと異様に映る。。”

仲間、友情、絆、信頼といった横のつながりなんかクソ喰らえだとばかりに、バッサバッサと斬り捨てていくという文字通りブレイドの孤高さがクローズアップされていく展開は、まぁ見ていて飽きはしない。

しかし見終わった後、まるでヴァンパイアが一瞬で塵になって消滅するかのごとくフツーに何も残らないのはある意味スゴイ。。

人間を餌食にする当のヴァンパイアが餌食にされてしまうという今回の設定は面白かったけど、ていうか相棒のスカッドの裏切りって必要だったかぁ?

あと、ブラッド・パック軍団のニッサ以外の誰かと親交を深めるくらいした方が味わいが出て良かったんじゃないかいブレイドさん・・。

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ブレイド3(2004年・アメリカ・114分)WOWOW

 監督:デビッド・S・ゴイヤー

 出演:ウェズリー・スナイプス、クリス・クリストファーソン、ドミニク・パーセル、ジェシカ・ビール

 内容:ブレイドは、人間のヴァンパイアハンター集団“ナイトウォーカー”から、ヴァンパイアの始祖ドレイク(=ドラキュラ)が4千年の眠りから目覚めたという衝撃の事実を聞かされる。ブレイドは最強の敵ドラキュラとの戦いに挑むが・・・。

評価★★★/60点

“ブレイドの角刈りよりも何よりもハンニバル・キングの不死身ぶりの方に度肝を抜かれる”

どうやっても死なないよねあの男(笑)。

しかし、この映画がイマイチなのは、やはり吸血鬼の始祖ドラキュラ・ドレイクの容姿にあることは否めず、、4000年の眠りから目を覚ました一族の始祖とは到底見えない。

しかも発見されたのがイラクだろ?イラクで何であんなゴツイ野郎が眠ってんだよ(笑)。

4000年未来からやって来たというなら分からんでもないが。。

まぁ紅一点ジェシカ・ビールのLOTRのレゴラスばりの弓使いに救われたかんじかな。

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アンダーワールド(2003年・アメリカ・121分)DVD

 監督:レン・ワイズマン

 出演:ケイト・ベッキンセール、スコット・スピードマン、シェーン・ブローリー、マイケル・シーン

 内容:ヴァンパイア族と狼男族(ライカン)の戦いが続く世界。ライカンがある目的のために人間の医師マイケルを執拗に追っていることを知ったヴァンパイア族の女戦士セリーンは、調査を開始するがなぜかヴァンパイア族の頭首クレイヴンに妨害される。しかしこのことが両種族を壮絶な決戦へと突入させていく・・・。

評価★★★/60点

吸血鬼と狼男の何十世紀にもわたる歴史的背景を盛り込み、壮大な世界観をなんとか醸し出そうとはしているが、やってることはただのヤクザの抗争・・。

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ツインズ・エフェクト(2003年・香港・107分)WOWOW

 監督:ダンテ・ラム

 出演:ジリアン・チョン、シャーリーン・チョイ、イーキン・チェン、カレン・モク、ジャッキー・チェン

 内容:香港の人気アイドルユニット“Twins”をフィーチャーしたアクション映画。バンパイアハンターのリーヴは、最大の敵デコテス公爵との対決で恋人でもあったパートナーを殺されてしまう。世界征服をもくろむデコテスがバンパイア界の聖典を我が物にしようと暗躍する中、リーヴは見習いハンターのジプシーを新パートナーに迎える。一方リーヴの妹ヘレンは兄の宿敵であるバンパイアの王子と恋に落ちてしまい・・・。

評価★★★☆/70点

“ジャッキーのNGシーンで締めるような映画だったかというと大いに疑問だが、楽しく見れればそれで良し。”

ヘレンはフジテレビのアヤパンに似てると思った。

と、それにしても映画序盤に出てくるヘレンとジプシーのクマのぬいぐるみ大争奪戦につづく物干し竿バトルは、アイドルユニットであるツインズを前面に出した名シーンだったと思う。

なんといっても彼女たちの本気モードアクションと彼女たちの可愛さとのアンバランスが非常にイイし、爽快感もぐんとアップ。

だてにドニー・イェンをアクション監督に据えてるわけじゃないんだぜというかんじ。

香港映画特有の甘さはあるものの、総じて楽しく見られる一品でありました。おセンチな吸血鬼てのも面白いね。

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ヴァン・ヘルシング(2004年・アメリカ・132分)MOVIX仙台

 監督・脚本:スティーブン・ソマーズ

 出演:ヒュー・ジャックマン、ケイト・ベッキンセール、リチャード・ロクスバーグ

 内容:19世紀ヨーロッパ。伝説のモンスターハンター、ヴァン・ヘルシングはバチカンの密命を受け、修道僧カールとともにトランシルバニアへ向かう。目的は、邪悪なパワーで世界征服を企むドラキュラ伯爵を抹殺すること。やがて彼らは、代々ドラキュラと闘いつづけてきたヴァレリアス一族の末裔、アナ王女と出会うが・・・。

評価★★★/60点

マンネリ街道 みんなで歩けば 恐くないってか。しかも歩いてるのはモンスター軍団。。

まぁ、オールスター感謝祭を見てとにかく楽しむしかないっていうかんじかな・・。

2018年9月29日 (土)

夢のシネマパラダイス271番シアター:るろうに剣心

るろうに剣心

T0010720q 出演:佐藤健、武井咲、吉川晃司、蒼井優、青木崇高、綾野剛、須藤元気、奥田瑛二、江口洋介、香川照之

監督・脚本:大友啓史

(2012年・日本・134分)盛岡フォーラム

内容:幕末の混乱期に人々を殺め“人斬り抜刀斎”と恐れられた剣客がいた。そして明治維新から10年後。再び抜刀斎が惨殺を繰り返し世間を騒がせる。そんな中、手配書に見入るひとりの浪人がいた。その名は緋村剣心。自ら立てた“不殺の誓い”に従い、斬れない刀を手に流浪の旅を続けていたのだ。そんなある日、亡き父の道場を引き継ぐ女剣士・神谷薫を抜刀斎を名乗る男から助けた剣心は薫の道場に居候することになるのだが・・・。

評価★★★☆/70点

*原作漫画は未読

ジャンプ漫画の実写化はドラゴンボールや北斗の拳など、ことハリウッドの実写化ではロクなことにならないのは周知の通りw

しかし、今回は幕末という史実のリアリティをベースにした世界観の中で、荒唐無稽な漫画のエッセンスをファンタジックに寄りすぎないレベルで巧みに織りまぜ、躍動感とケレン味あふれる本格時代劇アクションとなっている。

これはもはやジャンプ漫画の実写化という枠を超えたクオリティというにふさわしいテイストで、さすが自分と同じ盛岡出身の大友啓史監督だけのことはあるw

大河ドラマ「龍馬伝」での陰影のある映像の質感や長回しを用いた演出にハマッていた者としては今回も期待以上の画づらを見せてくれてまずは満足。

ただ、不満点がないわけではない。

話がめっぽうツマラナイのだ(笑)。

キャラクターに深みがないのが最大の要因だと思うのだけど、そのくせにせわしなくバトルシーンが続くので、映画のテンションとこちらのテンションが微妙にかみ合わない。

物語の運び方をもうちょっと丹念に煮詰めていって、状況説明の先にあるキャラクターの心情に寄り添ってちゃんと感情移入させてほしかった。

、、って、脚本書いたのも大友啓史だったのかい

まぁ、続編あったらもち見るけど、音楽もちょっとウザかったので今度は控え目でお願いします。。

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るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編

O0390052513068472391出演:佐藤健、武井咲、伊勢谷友介、青木崇高、蒼井優、神木隆之介、江口洋介、藤原竜也、小澤征悦、土屋太鳳、滝藤賢一、田中泯、福山雅治

監督:大友啓史

(京都大火編・2014年・日本・139分/伝説の最期編・同・135分)WOWOW

内容:明治11年。幕末に“人斬り抜刀斎”と恐れられた緋村剣心。今は東京の神谷道場で女師範の薫らとともに穏やかな日々を送っていた。しかしその頃京都では、剣心の後釜として幕府側の影の人斬り役を務めていた志々雄真実が暗躍していた。維新後、口封じのために明治新政府によって暗殺されたはずだったが、実は生きていて、復讐するために京都で恐るべき軍団を作り上げたという。危機を察した政府上層部の大久保利通は、剣心に志々雄の討伐を要請するが、その矢先に大久保は志々雄一派に暗殺されてしまう。そして剣心は京都へ向かうことを決断するが・・・。

評価★★★☆/70点

まずもってアクション演出にかけては最高点。

古今東西あるチャンバラ活劇&剣戟アクションの中で今作の殺陣のアクション演出ほど極みに達したものはないだろう。

アングル、カット割り、スピード感、即興性すべてにおいて言うことなしだし、例えば中国の武侠映画でよく見られるワイヤーアクションの飛翔感や浮遊感が生み出す優美性とは異なる身体性を強調したライブ感が、アクションシーンに圧倒的な迫力を生み出していたと思う。

また、時代劇の定石では、クライマックスにもってくるであろう一大決闘シーンを序盤からつるべ打ちのごとく畳みかけてくるのもエンタメ度全開でお腹いっぱいで、その点では大満足。

ただ、逆にいえば、良質な時代劇が持ちうる静の中に宿る緊張感や叙情性、また感情の奥行きを生み出す余韻や余白には絶対的に乏しく、それを大音量の音楽でとにかく埋め合わせているのがこの映画ともいえる。

前後編4時間半近く見ても一向にキャラクター(特にサブキャラ)に深みが感じられなかったのもある意味スゴイww

まぁしかし音楽のウザいこと×2セリフも聞き取れないくらいだったな・・。

P.S.歴史好きの戯れ言としていえば、ペリーの黒船がなしえなかった江戸砲撃を志々雄の鋼鉄船で見たかったような

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無限の住人

B9dc9809335a42e31a4deddc9af5ee04728x826出演:木村拓哉、杉咲花、福士蒼汰、市原隼人、戸田恵梨香、栗山千明、満島真之介、山本陽子、北村一輝、市川海老蔵、田中泯、山崎努

監督:三池崇史

(2017年・日本・141分)WOWOW

内容:かつて百人斬りの異名を持つ剣豪・万次。妹を目の前で殺され生きる意味を失い、さらに謎の老婆によって永遠の命を与えられ、以来50年以上まさに生きる屍として孤独に過ごしてきた。そんなある日、浅野凛という少女が現れ、統主・天津影久率いる剣客集団に両親を殺された仇討ちの助っ人を頼まれる・・・。

評価★★☆/50点

主人公の万次に謎の蟲を与えて不老不死の身体にする怪しい老婆・八尾比丘尼。

この名前を聞いた時に真っ先に思い浮かべたのが手塚治虫の「火の鳥・異形編」だ。

時は戦国、火の鳥の羽根でどんな病も治すことができる蓬莱寺の八尾比丘尼。暴君である父の病を治されてはならないと息子・左近介は比丘尼を殺害する。しかし、事を終えて寺領を出ようとするもそこから出られなくなってしまった左近介は、絶えず集まってくる病人のために仕方なく比丘尼として病を治していく。そして比丘尼として生きるようになって30年後、自分を殺しに左近介がやって来る、、

といういわゆる因果応報の無限ループものなんだけど、人を殺めた罰として永遠に背負うことになる人間の業の恐ろしさにただただ圧倒されてしまった。

それが頭に入っていたので、今回のキムタクじゃねーやw、万次はどのような業を背負わされるのかと思いきや、何回ゲームオーバーになってもTo be continuedできるテレビゲームばりのチープさだったというオチ・・。魅力的なはずの中ボスキャラたちもあれよあれよの使い捨てで、まるで何かの総集編w!?

そこには生命の重みどころか人生そのものすら感じられない無機質な物語しかなく薄っぺらい。

残る唯一の見所となるべきチャンバラ活劇も、るろ剣や十三人の刺客と比べれば及第点以下。

これだけの重厚キャストを揃えておきながら流しそうめんみたいな映画になっちゃうとは残念無念。。これは連続ドラマでやるべきだな。

杉咲花だけは二重丸✨

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五条霊戦記//GOJOE

Gojo1 出演:隆大介、浅野忠信、永瀬正敏、岸部一徳、國村隼

監督:石井聰互

(2000年・東宝・137分)仙台第一東宝

評価★★★☆/70点

 

内容:平安末期、平家が支配する闇の時代。源義経こと九郎義経は山にこもり日々武術や妖術の鍛錬に明け暮れていた。五条大橋で平家武者を次々と斬って捨てるその姿は鬼と恐れられ、近寄るものはほとんどいない。しかし、神から鬼を退治せよとの啓治を受けた武蔵坊弁慶は、義経を討つべく身の丈ほどもある刀を担いで乗り込んでいった。。

“雰囲気は好き。”

中世、闇の時代というオープニング字幕が示すように、この時代の雰囲気を出すことにこだわっていてそれがよく伝わってくる出来栄えだったと思う。

仙頭武則がプロデューサーだった効果はあったんじゃないかな。萌の朱雀なんかで見せた畏怖の自然を余すところなく見せていて、その点では成功していたと思う。

中世が闇、暗黒の時代だったかは別にしても、あの時代明らかに人々の観念の中に鬼や物の怪は存在していたわけで。タタリもざらにあったでしょう。

アニメ「もののけ姫」でも描かれていた通り、しかし、もののけ姫の色づかいよりもさらに深遠な森、誰も立ち入ることのできない場所というのは絶対あったはずで、そういう雰囲気はこの作品の中でよく出ていたと思う。

が、しかし、この映画、残念でならなかったのがカメラ。

バトルが見せ場なのに、ほとんど近いアングルからしか撮ってない!

こだわりすぎじゃないかってかんじで。

カメラは引くどころか近寄りすぎーー。。目ぇ疲れるーー。。剣と剣がぶち当たるとこしか写ってなーーい、火花バチッ×2

昨今は接近アングルが流行りなのかしらんけど、遠近織り交ぜてやった方が・・・。

サイバーバトルにこだわるのは別にいいのだが、、惜しい。

あと、浅野忠信の義経ってのもなんか妖艶さが足りなくて物足りなかったなぁ。。

Posted at 2000.10.20

2018年5月 2日 (水)

夢のシネマパラダイス562番シアター:家族はつらいよ

家族はつらいよ

E27d8733出演:橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優、小林稔侍、風吹ジュン

監督・脚本:山田洋次

(2016年・松竹・108分)WOWOW

内容:東京郊外に暮らす平田一家。ゴルフと酒をこよなく愛する家主の周造は、定年後の隠居生活を謳歌する日々。そんなある夜、妻・富子の誕生日に気付いて、何でもプレゼントするぞーと言って妻が出してきたのはなんと離婚届!サインとハンコが欲しいのだという。思いもよらぬ事態に同居する長男夫婦と近所に暮らす長女夫婦も集まって家族会議が開かれるが・・・。

評価★★★★/80点

現代版東京物語を松竹伝統の人情ものとしてトレースした「東京家族」にえらく心を打たれた自分。まさかその4年後に全く同じキャストでこれまた松竹伝統のホームコメディに仕上げてくるとは思いもよらなかった。

しかし、「男はつらいよ」「釣りバカ日誌」で培われた昭和印の喜劇調を久々に味わえたのはどこか温かい懐かしさに包まれたし、家族みんなで家の居間で見たんだけど、楽しい時間を共有できてよかった。

さすが安定の山田節といったところだけど、実際は細部まで緻密に作り込まれた隙のない職人芸ということができ、それを全く感じさせないありふれた日常風景として見せるところが山田洋次のなせる技なんだろうね。

また、それをしっかり咀嚼する役者陣も完璧そのもの。

性格を含め「東京家族」と瓜二つのキャラクター設定というのも、混同する違和感よりも既知の安心感の方が勝って映画の世界にすんなり入っていくことができたし。

特に、「東京家族」では大都会東京で行き所のない寄る辺なさに無愛想一辺倒の縮こまった型にはめられていた父親役の橋爪功が、今回は水を得た魚のようにやりたい放題で最高に面白かったし、あとはやはり何と言っても蒼井優♪

毎回言ってるかもしれないけど、理想の結婚相手は蒼井優ちゃんです

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歩いても歩いても

N_609bcdr2214rpl 出演:阿部寛、夏川結衣、YOU、高橋和也、田中祥平、樹木希林、原田芳雄

監督・脚本:是枝裕和

(2007年・日本・114分)CS

内容:夏のある日。子連れのゆかり(夏川結衣)と再婚した良多(阿部寛)は、15年前に亡くなった兄の命日に合わせて東京近郊の実家を訪れる。が、開業医を引退した父(原田芳雄)とはもともと反りが合わなかった上、失業中の身の上でもあり気が重い帰郷だった。ひと足先に、姉(YOU)一家も到着していて、久しぶりに家族全員が集まった。。

評価★★★★/80点

「男はつらいよ寅次郎相合い傘」(1975)にこんなシーンがある。

めちゃ美味メロンを人数分に切って食べようとしたら、ちょうどそこに寅さんが商売から帰ってくるんだけど、妹のさくらがうっかり寅さんの分を勘定に入れ忘れてしまい、いじけた寅さんがとらやの面々と大ゲンカになるという爆笑シーンだ。

たかが一片のメロンごときでしつこすぎるくらいムキになる寅さんの度量の小ささが笑いを生み出すわけだけど、今回の映画も男連中の他人から見れば笑ってしまうような「小っちぇ~」ことにこだわる様がリアルに描かれていてまことに面白い。

しかし、この面白さの裏には思わず背筋がゾクゾクしてしまうような怨念と、思わず卒倒してしまいそうな毒があるのがミソ。

和気あいあいとした空間に漂う様々な恨みつらみや口に出せない秘密、その中で料理を手順を踏んで作るように消化していく夏の一日、そんなお盆に3世代が集まる家族の風景、そしてそこに刻まれる何十年にも渡る家族の歴史劇が、建前9:最強本音爆弾1のセリフ劇で見事にあぶり出されていく今回の映画。

夫と妻、父と息子、母と娘、嫁と姑、祖父と孫、従兄弟、、、ズケズケと何でも言い合える関係もあれば、遠慮から奥歯に物がはさまったような言い方しかできないぎこちない関係もある・・・。その中でこの映画はそれぞれの関係性における微妙な間や会話の妙が絶妙で恐ろしいくらいにリアルなのだ。

まるで録音した自分の声を聴いた時のような居心地の悪さ、と同時に懐かしい思い出を思い起こさせる居心地の良さをも喚起させてくれる世界がそこには広がっている。

なんとも不思議な感覚を味わわせてくれる映画だ。

例えば自分なんかは、ゆかり(夏川結衣)の連れ子であるあつし(田中祥平)に妙にシンクロしてしまって(笑)。。

それはおそらく小学校時代に転校が多かったこととかも関係してると思うんだけど、彼が初めて敷居をまたいだ家で感じる居心地の悪さと緊張感が痛いくらいに伝わってきて見てて可哀想になってくる一方、彼がしたたかに立ち回る様もリアルに実感できて、コイツ大人やなぁと感心してしまった。

普段はあまりにもありきたりすぎて立ち止まって考えることがない家族の風景。温かくて痛くて優しくて哀しくてウザッたくて、それでも無性に帰りたくなって、、、そんな家族の愛おしい情景。

一年に一日、この映画を日本人全員が見る日ってのを作ってもいいんじゃなかろうか(笑)。

それにしても樹木希林、上手すぎ。そしてYOU、そのまんまww。原田芳雄は鈴木清順と見間違えちゃったけど・・。

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メゾン・ド・ヒミコ

Himiko 出演:オダギリジョー、柴咲コウ、田中泯、西島秀俊、歌澤寅右衛門

監督:犬童一心

(2005年・日本・131分)WOWOW

評価★★☆/50点

 

内容:ある日、24歳の沙織(柴咲コウ)のもとを岸本(オダジョー)という男性が訪ねてくる。彼は、沙織と母親を捨ててゲイ・卑弥呼として生きていく道を選んだ父親(田中泯)の恋人だった。岸本は、ゲイのための老人ホーム“メゾン・ド・ヒミコ”を建てて運営していた彼がガンになり余命いくばくもないことを沙織に伝え、ホームを手伝わないかと誘うのだが・・・。

“「たそがれ清兵衛」の田中泯の変身っぷりには脱帽・・・。”

「ハッシュ!」(2001)のときもそうだったけど、このての性的マイノリティを扱った映画には深入りするのを避けちゃう傾向があって、今回もやっぱダメだった・・・。

ゲイ老人たちのファッションにもドン引きだったし、ダンスホールでのハイテンションぶりもムリ

「ブスの処女と、性病持ちのオカマどっちがいい?ギャハハハ」、、、グーでぶん殴りたくなったんですけど、あのジジイ(笑)。

というかんじで、立ち入ることができない異界ワールドだったのだけど、ただ1つ思ったのは、このての人々ほど愛するということへの純粋さを持ち合わせている人種はいないだろうなということ。そこの点はちょっと羨ましさを抱いてしまったかも。

他人はおろか社会からも拒絶されてしまうという絶対的な孤独を身をもって知っているからこそ生み出される想いなんだろうね。そしてそこを突き抜けちゃうと、ああいう開放的な世界の住人になることができる、のかなw

その中で、彼らが作った小さな共同体にまぎれ込んでくるノンケの沙織の孤独と憂鬱の方が際立って見えてくるのはうまいつくりになっているなとは思う。

そういう点では、この映画は沙織の傷ついた人生の再生物語という側面の方が強いわけで、ゲイ映画ではないんだよね。彼らの人物像の内面に映画自体が深入りしてないし。ま、それでも生理的にちょっとダメだったけど・・・。

あとはまぁ、なんといっても柴咲コウの化粧っ気のない地味ぃ~なコンビニ店員姿だな。ちょっと引いたわ(笑)。。

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酒井家のしあわせ(2006年・日本・102分)NHK-BS

 監督・脚本:呉美保

 出演:森田直幸、ユースケ・サンタマリア、友近、鍋本凪々美、谷村美月、笑福亭仁鶴

 内容:三重県のとある田舎町。一見ごく普通の家族にみえる酒井家だったが、14歳の長男・次雄(森田直幸)は最近家庭にうんざりしていた。母・照美(友近)は再婚、次雄は事故死した前夫の連れ子、下の娘・光(鍋本凪々美)は母と義父・正和(ユースケ)との間にできた父親違いの妹という複雑な家庭環境にあったからだ。そんなある日、照美とケンカした正和が突然、好きな男ができたとカミングアウトして家を出て行ってしまう・・・。

評価★★★★/75点

“だ、ダマされた・・・。”

家族の何気ない日常を切り取っていく視点が独特の間の中でユーモアたっぷりに描かれていて、終始楽しく見ることができた。

例えば、家族で外出する時に、オカンが早くしなさいと急かしているくせに、当の本人が1番遅く家を出てくるシーンも、車の中でジィーッと待っている夫と子供たちの姿がたまらなくおかしかったり。どこの家のオカンも同じなんだな(笑)。

しかしこの監督、コミカルな間を作って、「あ、それってあるある」というエピソードをテンポよく見せていく演出の手腕はかなりこなれているなという印象。と思ったら新人さんなのね、この監督。。

あとこの映画で外せないのが、配役の妙。

テレビでのひとりコントにそのまんま出てきてもおかしくないような格好の友近が、決して類型的ではない妙にリアルなオカン像を演じていて新鮮だったし、関西弁をしゃべれないユースケ・サンタマリアの不器用なオトン役がものすごくしっくりきていた。

そして極めつけが仁鶴wwユースケが笑い転げちゃうのも無理ないわ。

とにかくほんわか温かいぬくもりが残るかなりしあわせな映画だったと思う。これからが楽しみな若手監督さんだね。

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アルゼンチンババア

Big 出演:役所広司、堀北真希、鈴木京香、森下愛子、手塚理美、岸辺一徳

監督:長尾直樹

(2007年・日本・112分)盛岡フォーラム

評価★★★/60点

 

内容:高校生のみつこは、両親との3人暮らしだったが、誰よりも活気のあった母親が病気で亡くなってしまう。そしてその直後、墓石彫り職人の父親が行方をくらましてしまうのだった。それから半年後、父親はどうやら町外れの草原に建つ古ぼけた洋館にいるらしいことが判明する。しかし、その屋敷にはアルゼンチンババアと呼ばれている謎の女が住んでいるらしい。みつこは勇気を出して訪ねてみるが・・・。

“あのハチミツ、、二缶ほど譲ってくれませんか(笑)”

アルゼンチンババア特製の媚薬ハチミツが欲しいってことと、堀北真希のムチウチ症姿が見れたってことくらいしか得るものがなかったな(笑)。

でも、フツー原作ものの映画って、映画が面白くなくても原作は読んでみたいなという場合が多いのだけど、今回は正直全く読みたいと思わなかったんだよね。そういう意味では逆に不思議な映画だったともいえるけど・・・。

登場人物の行動や会話がことごとく意味不明で伝わってこなくて、一人蚊帳の外で見続けなければならない、なんとも題名に相応しいわけの分かんない遠い世界の映画だったけど、その中で孤軍奮闘した堀北真希ちゃんを見るぶんには十二分に元が取れるのもまたたしかで。。やっぱ不思議な映画。

でも、、ババアに鈴木京香をあてるってどうなんだろという根本的なところも気になる。室井滋とか夏木マリはたまたYOU、久本雅美あたりだろフツー。あるいは大竹しのぶ、浅野温子あたり?

ちょっと鈴木京香は役違いのような気が。まぁ、「ゼブラーマン」でコスプレ好きになって一皮剥けた女優さんだからババアもやってみたかったのかな

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サバイバルファミリー

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出演:小日向文世、深津絵里、泉澤祐希、葵わかな、時任三郎、藤原紀香、志尊淳、柄本明、渡辺えり、大地康雄

監督・脚本:矢口史靖

(2017年・東宝・117分)WOWOW

内容:東京に住む鈴木家は、仕事一筋の父親、魚をおろせない母親、大学で女のコしか頭にない息子、スマホが漬けのJK娘の4人家族。そんなある日、電気・ガス・水道・車・スマホなど全てのライフラインが止まってしまう異常事態が発生する。復旧する見込みのないまま1週間が経ち、一家は鹿児島の実家に向かうことにするが・・・。

評価★★★☆/70点 

東日本大震災当時、盛岡に住んでいた自分は停電2日、断水1日を経験(ガスは使えた)。小雪舞う中スーパーの長蛇の列に震えながら並んだことを今でも覚えている。

まぁ、三陸の被災者に比べればグチることさえ憚られるレベルの実体験だったけど、その視点が入っちゃうとどうしてもリアリティの欠如は気になってしまうところ。

だって水&食料がどんどん枯渇していく中で2ヶ月かけて東京→岡山を自転車で移動するというのはインパール作戦なみに無理がある。ていうか2年半もライフライン寸断されたら食料自給率の低い日本は壊滅だろ😵

そういう意味では、ウォーキングデッドのような文字通り殺伐とした人間同士のサバイバル劇になる素材なんだけど、コメディタッチの矢口ワールドのフィルターにかかるとサバイバルサスペンス<ハートウォーミングコメディになってしまうのをどう見るか。

個人的には家族の絆の再生を描くロードムービーという視点は矢口監督らしくて面白かったし、ほとんど劇伴なしでも見せきる映像面はさすが。

長野あたりで観念して田舎の自給自足生活をメインに据えるという手もあったと思うけど、それだと前作ウッジョブと似たかんじになっちゃうかw

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リトル・ミス・サンシャイン

Lms 出演:グレッグ・キニア、トニ・コレット、スティーヴ・カレル、アラン・アーキン、ポール・ダノ、アビゲイル・ブレスリン

監督:ジョナサン・デイトン/ヴァレリー・ファリス

(2006年・アメリカ・100分)仙台フォーラム

評価★★★★★/95点

 

内容:アリゾナ州ニューメキシコに住むフーヴァー家は、家族それぞれに問題を抱え崩壊寸前。父は独自の成功論をまとめた自著の売り込みに必死、長男は一言も発さず、祖父はヤク中、伯父はゲイの恋人にフラれて自殺未遂と、まとめ役の母は一苦労。そんなある日、7歳の娘オリーヴがカリフォルニアで開かれる美少女コンテストの本選に進むことになる。そこで一家は、オンボロのミニバスに家族全員で乗り込み、カリフォルニア目指して出発するのだが・・・。

“オリーヴ(アビゲイル・ブレスリン)って誰かに似てるよねぇ・・・”

ってあれよあれ、フィギュアスケートの安藤美姫だよ。あの出っ腹はさておき、精神年齢もほぼ変わらんだろうし・・(笑)。

というのはさておき、この映画、オイラ的2007ベストムービーにまず間違いなく選ばれるであろう愛すべき一品になってしまいました。

とにもかくにも笑いと涙が同時に押し寄せてくる映画体験というのはそうざらにあることではないので、そういう意味でも心に残る一本となりますた。

しっかし、途中から笑いのドツボにハマッちゃって笑って泣いてんだか感動して泣いてんだか最後は分からなくなっちゃったな・・・。

色覚異常で空を飛べないと分かり、野っ原で完全ふてくされ状態になった15歳の兄ドウェーンを無言で肩に寄り添いながら慰める大人な7歳オリーヴ。

笑いの導火線に火が付いたのはこの次のシーン。ドウェーンが「分かった。」と気を取り直して車に戻るときに土手を登るわけだけど、オリーヴちゃんあの体型もあって登れないんだ(笑)。そこをドウェーンが抱っこして持ち上げて登る何気ないシーンがなんとも可笑しみのあるオチで、シリアスな感傷モードに入る一歩手前で何気なく笑いに転回させる絶妙さに完全に引き込まれてしまった。

クラクションが鳴り止まなくなったミニバスを警官に停車させられ、トランクに積んであるシーツにくるまれたジイちゃんの遺体が見つかってしまうのかという絶体絶命の状況で、エロ本がドサッと落ちてきて、それを見つけた警官がニヤリとするオチも最高で、何も知らない妻シェリル(トニ・コレット)の不安そうな表情とエロ本を3冊(うち1冊はゲイもの)も買い込んでいたフランク(スティーヴ・カレル)へのお前はなんて奴だ!というリチャード(グレッグ・キニア)の視線とフランクのえっ何?オレ何かした?という表情がこれまた何気なく描かれていて、逃げ場のないバスのミニ空間の中に凝縮される人間模様が面白おかしく自然に描かれてるんだよね。

この自然なオーソドックスすぎる演出も良くて、例えばギアのブッ壊れたミニバスを家族みんなで押して発進させて飛び乗るこの映画を象徴するシーンや、ラストの珍妙なダンスを家族みんなで踊るシーンだとか、とにかく映画的な動きというのが終始物語をしっかりと牽引していく。

しっかり映画しちゃってるんだよねこれ。こういう映画見ると嬉しくなっちゃう。

才能が少々欠けようが負け組と揶揄されようが前に進むしかないんだというメッセージも心にしみわたりました。

イイ映画です。

ちなみにオリーヴのタヌキ腹は、詰め物を入れてるのだそうで、実際のアビゲイルちゃんはフツーの体型らしいですw

2018年1月 1日 (月)

夢のシネマパラダイス466番シアター:怒り

怒り

30594159_53015出演:渡辺謙、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず、宮崎あおい、妻夫木聡、三浦貴大、高畑充希、池脇千鶴、ピエール瀧

監督・脚本:李相日

(2016年・東宝・141分)WOWOW

内容:東京八王子で夫婦の惨殺事件が起きる。現場に“怒”の血文字を残した犯人は、顔を整形して逃亡した。その一年後、千葉・東京・沖縄に、素性の知れない3人の男が現れる。千葉の港町で父親と暮らす愛子は、ふらりと現れ漁港で働き始めた田代に惹かれていく。東京で暮らすゲイの優馬は、クラブで直人と出会い同棲を始める。母親に連れられ沖縄の離島に引っ越してきた高校生の泉は、無人島に住みついているバックパッカーの田中と知り合う。そんな中、警察が事件の新たな手配写真を公開した・・。

評価★★★★/80点

もしかして広瀬すずの母親が宮崎あおい?と勘違いしてしまうくらい途中まで異なる時制を行き来した繋がりのある構成だとばかり思っていた。

まさか東京のゲイカップル、千葉の父娘と流れ者、沖縄の女子高生とバックパッカーという3つのストーリーラインが交錯することなくオムニバスのように平行して進むとは、このての映画に対する先入観からすると意外でビックリ。

その中で八王子夫婦殺害事件の犯人・山神とは一体誰なのか?というミステリーを手配写真1枚に集約させ、マクガフィンとして3つのストーリーを糊付けしているんだけど、これが糊付けどころか警察を狂言回しの役割に追いやってしまうほどの瞬間接着剤なみの機能を果たしていてこれまたビックリ。

見ながら自分も犯人は綾野だな→松ケンで決まりじゃん→やっぱ山本未來も怪しいなと、まんまとミスリードに乗っかって引き寄せられてしまった。

そして、犯人も警察も脇に差し置いて、犯人と接触しているかもしれない人々を主旋律にした斬新なアプローチは、親子・恋人・友人あらゆる繋がりにおける信じる力と悪魔のささやきのように切り裂いてくる疑念との葛藤の狭間を重く重く描き出した。

3本分の映画を一緒くたにしたような取っつきにくさはあったものの、役者陣の熱演も含めて人間が生きていく上での強さと弱さという普遍的なテーマを見事に切り取った映画だったと思う。

「本当に大切なものは増えるのではなく減っていくんだ」という言葉が自分の心を妙にざわつかせた・・。

にしても暗くてやるせないにも程があるw

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白ゆき姫殺人事件

Poster2_2出演:井上真央、綾野剛、蓮沸美沙子、菜々緒、金子ノブアキ、貫地谷しほり、谷村美月、染谷将太、生瀬勝久

監督:中村義洋

(2014年・松竹・126分)WOWOW

内容:長野の国定公園で地元化粧品会社の美人OL三木典子の惨殺死体が発見された。ワイドショー番組の契約ディレクター赤星は、典子の後輩社員だった同窓生から話を聞き、典子の同僚で事件後に失踪した城野美姫に疑いの目を向ける。そして周辺取材をもとに作った映像はスクープとして話題を集めた。一方で赤星は取材で得た情報をツイッターにどんどんアップしていくのだったが・・・。

評価★★★/60点

殺人事件の周辺関係者に対するルポルタージュのインタビュー形式で証言を積み重ねていく手法は、宮部みゆきの「理由」と同じかんじであまり新味はなかったし、人間の歪な心の闇をえぐり出す湊かなえ独特の陰湿さも薄まっていて印象としてはやや弱い。

逆にいえば小綺麗にまとまりすぎているのがあだになったのかなぁとも思うけど、有名原作小説を翻案に映画化することにかけては右に出る者がいない中村義洋監督の上手さと、どうしてもにじみ出る人の良い優しい作風が上回ったともいえ、湊かなえと身構えていたわりにはかなり安心して見られる利点はあった(笑)。しかもラスト感動までしちゃったし

ただ、あの人が典子(菜々緒)をメッタ刺しにするシーンだけは、らしいえげつなさで脳裏から離れない・・

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理由

Riyuu_2 出演:村田雄浩、寺島咲、岸部一徳、大和田伸也、久本雅美、宝生舞、松田美由紀、風吹ジュン、柄本明、渡辺えり子、菅井きん、小林聡美、古手川祐子、加瀬亮、ベンガル、伊藤歩、立川談志、石橋蓮司、小林稔侍、宮崎あおい、片岡鶴太郎、根岸季衣、峰岸徹

監督:大林宣彦

(2004年・日本・160分)WOWOW

評価★★★★/75点

内容:1996年6月5日の深夜未明、東京荒川区にある超高層マンションで、一家4人が殺される事件が発生する。当初、4人の遺体はこの部屋の住人である小糸家の人々と思われていたが、全くの赤の他人であることが判明する。マンション管理人によると、この部屋は以前から人の出入りが激しかったというのだが・・・。

“笑わず嫌い王決定戦!vs大林組”

大林宣彦は自分とは水と油のごとく合わない。恐ろしいほどに合わない。それが自分の中の常識であった。

マンガチックかつファンタジー色の強いタクトをこれ見よがしに執拗に振り回す姿が、もはや生理的にといっていいくらい性に合わない。。あまりにも合わなくて思わず笑っちゃうくらい。たぶん今まで見たことがある大林監督作の平均点は★2つを下回ると思う。

そんな中で、自分が最も好きな作家である宮部みゆきをよりによって大林宣彦!?しかも「理由」!?もうイジメか、と泣き叫びたくなりましたがな。

そして、蓋を開けてみたら、、尾道かよ(笑)。東京じゃなくて尾道のにおいがプンプン。尾道4部作ってか。

というのはさておき、妙な出来心を出さずに原作を忠実にトレースしてくれたのが、まぁ個人的には良かった。映画の作り方としてそれがいいのかどうかは別として、非常に見やすくできている。

普通、このての事件ものは極端にいえば、犯人は誰かという一点に集約され、それを目的として収束していくわけだけど、本作は事件という一点からまるで水面に落ちた石が波紋を描くように無限の広がりを見せていく。まるでネットサーフィンでもしているかのように無限のクリックを続けていく。

それは原作の持つ特色でもあるのだけど、しっかりと画面にすくい上げてくれたのはやはり評価したい。

ラストの加瀬亮のダイブも、なにか「攻殻機動隊」みたいでヨロシ。

がしかし、ことさらにこれは映画ですよ~という記号をチラつかせるのは頂けない。しかも最後はガマンできなくなって全景写しちゃうし。。

でもこれ下手すると、“映画化”じゃなくてただの“映像化”と言われてもおかしくないので、、それでこれは映画化なんだぞということをあくまでも強調したくてあんなパフォーマンスしちゃったのかもね

2016年8月28日 (日)

夢のシネマパラダイス23番シアター:ジュラシック・パーク

Pa_jyura 出演:サム・ニ-ル、ローラ・ダ-ン、ジェフ・ゴールドブラム、リチャード・アッテンボロー、サミュエル・L・ジャクソン

監督:スティーヴン・スピルバーグ

(1993年・アメリカ・126分)盛岡ピカデリー

評価★★★★/80点

 

内容:コスタリカ沖の孤島に建設されたテーマパーク「ジュラシック・パーク」。そこでは、化石化した琥珀に入っていた蚊から恐竜の血のDNAを抽出することに成功し、そこから作り出されたクローン恐竜が闊歩し放し飼いにされている驚異のテーマパークだった。ところが、コンピューターのトラブルから制御不能になったテーマパークは文字通り肉食恐竜の棲む驚異のジャングルへと変貌を遂げるのだった・・・。

“スピルバーグは結局ハモンドなのだ、と思った。そして彼はキートンをこよなく愛するらしい”

様々な映画へのオマージュが散りばめられている中で、「キートンの船長」へのオマージュといえる場面が少なくとも2ヶ所はあった。

それがどうしたと言われれば別にどうでもないことなのだが、スピルバーグはやはりサイレントの連続活劇をはじめとする古典映画が純粋に好きなのだ、とつくづく思う。

そして敬意を表して拝借するのだ。最新のSFXと結びついて。

しかもそのやり方、見せ方が心憎いほどに巧い。

やはりこの監督、顧客第一主義で撮らせたら右に出る者はいない。「ジョーズ」で既に実証済みではあるが、この作品でも緻密な計算に基づいて作られていることがよく分かる。

オープニングでラプトルの檻に引きずり込まれる男、しかもラプトルを映さない。「ET」も最初はそうだっけか。

とにかく一気に映画の中に引きずり込ませておいて、あとは徐々に徐々に小出しにして引っ張っていくわけだ。

オープニング後の発掘現場でも太った子供に対してグラントがラプトルの獰猛、狡猾性をホラーを語るかのように教える場面が出てきて、後々こういうシーンが出てくるのか?と思わせる。

島に着いてもアッと驚く草食恐竜を見せるが、餌の牛は見せても檻の中のラプトルは依然として見せない。しかし、相当な喰いっぷりからなんか凄そう、、と思ってしまう。

太古の恐竜が現代によみがえるシステムを見せる施設もテーマパーク的感覚で見せてくれ、この時点で完全にジュラシック・パークの世界に入り込んでいる自分。

そうしてようやっと上映1時間後にコップの水が揺れる衝撃振動とともにTレックス登場!

むむむっ、やはりスピルバーグという男、決して数学者マルカムタイプではないね。

ハモンドその人じゃん、と思ってしまうのだ。マルカムの警鐘なんて見てる自分には関係ないのさ、とすぐに頭の隅に追いやられてしまう。

観客の心を手玉に取るように掴んでしまう上手さ、特に構成の上手さはホント心憎い。

でも、忘れてはならないのはSFXの力なくしてこの映画は成り立たなかった、ということだろう。

これに気をよくして次々にCGをふんだんに使った映画が量産されている現在。

「ジュラシック・パーク」を見たジョージ・ルーカスがスターウォーズの新たなシリーズ(エピソード1)では最新SFXを大量投下してやる!と鼻息荒く意気込んだそうだが、あんまり使いすぎてもねぇ・・・。最凶キャラのジャージャービンクスとか(笑)。

マルカムの言葉を借りれば、“CGIの力は、いまだかつてスクリーン上に存在した中で最も恐るべき力だ!なのにアンタ等はそれを父親の拳銃を見つけた子供みたいに振り回している。”といったところか。

最近のハリウッド映画を見るとどうしてもそう思っちゃうな。

P.S. 

 DNA操作でコントロールされ、コンピュータで完全管理されている生態系。

 その存在そのものが実は生命の本来にはそぐわない。

 どんなにみじめな生命であっても生命はそれ自体の力によって生きていく。

 この星では生命はそれ自体が奇蹟なのだ。

 世界の再建を計画した者たちがあの行動をすべて予定していたというのか。

 それ自体が生命への最大の侮蔑と気づかずに・・・・・

                    -「風の谷のナウシカ」第7巻より参照-

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ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク

Image3110 出演:ジェフ・ゴールドブラム、ジュリアン・ムーア、ピート・ポスルスウェイト、リチャード・アッテンボロー、ヴィンス・ヴォーン

監督:スティーブン・スピルバーグ

(1997年・アメリカ・129分)仙台第1東宝

評価★★★/65点

内容:前作の惨事から4年、イアンはジュラシック・パークの創始者ハモンドから、イスナ・ソルナ島に遺伝子工場が置かれており、人知れず恐竜たちが生き延びて繁殖しているという事実を聞かされる。イアンは恋人の古生物学者サラとともに島の調査に向かう・・・。

“初めて東京ドームに行った時の感覚と同じものを感じた。”

小学生の頃、東京ドームでやってる野球をテレビ観戦するたびになんてスケールのでかい球場なんだろうと25インチのテレビ画面を通していつも感じていた。

中学の時初めて訪れるまでテレビ画面から伝わってくるその感覚は全く変わらなかった。

が、しかし、初めて行ったときに感じたのは、、小っちぇーー&狭ーーい。野球場ってこんなに小っちゃかったっけ。テレビで見てイメージしてたのとは全然違うなぁと。

、、と同じことをこの映画でも感じてしまった。町に出たTレックスを見て・・。

それまではスクリーンの中で所狭しと暴れまくり咆えまくっていた恐竜どもが生き生きと映り、それがスケールのでかさにもつながっていたのに。

サンディエゴの町という現実に直面するやいなや、いきなりショボくなってしまった感覚。いや、あれはもうお笑いの域に達しちゃってるよね。

冒頭、島に着いたときに誰かがまだ見ていない恐竜のことを「でっかいトカゲだろう。」と言うシーンがあって、イアンがその言葉をあざ笑うかのように、「君たちは全然分かってない」と言うけど。

でもさ、町を徘徊するTレックスは間違いなく「でっかいトカゲ」だった。

まぁそんなこといっても、かくいう自分こそ都会の町でTレックスが暴れたらさぞかしスゴイんだろうなと想像してしまったクチなのだけど・・・。

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ジュラシック・パーク3(2001年・アメリカ・93分)MOVIX仙台

 監督:ジョー・ジョンストン

 出演:サム・ニール、ウィリアム・H・メーシー、ティア・レオーニ、アレッサンドロ・ニヴォラ、トレヴァー・モーガン

 内容:恐竜発掘資金を調達するために、アラン博士は実業家夫妻に依頼を受け、イスナ・ソルナ島の上空をガイドする。しかし、そこはインジェン社が恐竜たちを蘇らせた“サイトB”と呼ばれる島だった!今回から翼竜が初登場。

評価★★★★/75点

登場人物のアホ度(少年は除く)にはほとほと頭が下がるが、無駄な描写を省いてイイとこ取りに特化した点は買う。

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ジュラシック・ワールド

Cd61mabvaaasaa7出演:クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード、ヴィンセント・ドノフリオ、タイ・シンプキンス、ニック・ロビンソン

監督:コリン・トレヴォロウ

(2015年・アメリカ・125分)盛岡フォーラム

内容:ジュラシック・パークでの惨劇から20年。新たな経営者と最新システムの下、同じコスタリカ沖の孤島にジュラシック・ワールドとして生まれ変わった恐竜テーマ・パークは、1日2万人が訪れる盛況を見せていた。そんなある日、パーク全体を監督するクレアの甥っ子2人が来園するが・・・。

評価★★★★/80点

「ジュラシック・パーク」で驚異のCG技術が映画史を変える瞬間を目撃し、「ロスト・ワールド」で商魂たくましいハリウッドのズッコケスペクタクルに落胆し、「ジュラシック・パークⅢ」の頃にはスケールダウンした怪獣映画がひっそりと公開しているくらいにしか思わなくなっていた・・・。そしてあれから14年。

3作目の印象しかない中での公開とあって最初は興味薄だったのだけど、まさかの世界的特大ヒットを受けてミーハー映画通の自分は俄然見る気満々になり、3Dメガネ持参で映画館へ駆け込んだ(笑)。

で、作りとしては1作目を下地として、2作目の密林、3作目の翼竜とそれぞれのエッセンスを取り入れた過去3作のリブートといっていいかんじになっているのだけど、生きた恐竜を目の当たりにする驚きと感動、自分もあのテーマパークに行ってみたいと思えるドキドキワクワクに包まれた時点で満足度はかなり高かったし、なにより映画は見るものから体験するものへ変わったことを実感させるには十分の出来栄えだったと思う。

特に体験するという意味では恐竜の生身のリアリティが半端なくて、例えばパドックに収容され口枷を装着されたラプトルの顔をなでるシーンがあるんだけど、そのクローズアップされたラプトルのうごめく皮膚感や鼻息、息づかい、まばたきに至るまでどこをとっても本物の恐竜にしか見えなくて、映画の求心力を一段と高めていたと思う。

その点では、ラプトルみたいな小型恐竜をあと1、2種出してほしかったけど、それは次作に期待かなw!?

でも今から22年前の「ジュラシック・パーク」のフォーマットが今でも通用するというのは、かの作品がいかに偉大かってことだよね。スピルバーグには小難しい映画はいいから子供から大人まで楽しめるような活劇に回帰してほしい。

2016年1月24日 (日)

夢のシネマパラダイス347番シアター:世紀の大泥棒

ルパン三世 カリオストロの城

200505_img_5声の出演:山田康雄、島本須美、増山江威子、小林清志、井上真樹夫、納谷悟朗

監督・脚本:宮崎駿

(1979年・東宝・100分)DVD

評価★★★★★/100点

内容:人気テレビアニメの劇場版第2作。宮崎駿が初めて手掛けた劇場用長編アニメとしても知られている。カジノから盗んだ札束が精巧なニセ札であることに気付いたルパンは、ニセ札の出所と思われるヨーロッパの小国・カリオストロ公国に相棒の次元とともに潜入する。カリオストロでは大公家の孫娘クラリスが、権力を独占しようと画策する摂政のカリオストロ伯爵から結婚を迫られていた。。

“ウソは泥棒の始まり!ならぬウソは宮崎アニメの真骨頂!”

宮崎アニメの真骨頂。

それはアニメの作劇術におけるウソのつき方だと思う。

例えば、ルパンと次元がローマ水道を泳いでカリオストロ城内に侵入しようとする場面で、急流の滝にルパンが押し流されながらも必死こいて泳ぎ登ろうとするシーンがある。

このシーンだけを取り上げると、どう考えても現実的にはありえないシーンなのだが、しかし見ている最中はありえなくもないと思わせてしまう。

それはつまり滝を泳いで上れるなんて実際不可能でリアリティがないということと、滝の流れに逆らおうとする必死さと意志は可能でリアリティがあるということ、すなわち不可能と可能のバランス感覚とそれをアニメで表すという宮崎駿の演出力が図抜けているということだ。

特に、なさそうでありそうだという表現がピッタリのバランス感覚はもの凄いと思う。

簡単そうで実は難しい、マネできそうでマネできない、これは天性のものなのかもしれない。

それが宮崎アニメを他のアニメと隔絶させている1つの大きな要因だと思う。

そしてTVアニメ「未来少年コナン」と、それから遅れること約1年で公開されたカリオストロの城にこそ宮崎アニメの真骨頂が原液そのままで表されているわけで、それはもう★5つ以外に評価のしようがないわけでっす。

カリオストロでいうと、他に分かりやすいシーンは、冒頭のカーチェイスでのフィアットの崖登りシーン「まくるゼーー!」

同じくルパンとクラリスが乗った車が崖から落っこちるシーンで、ルパンがワイヤーを木に投げてぶら下がるシーン。どう考えても人間2人を支えきれるわけがないのだが、ここでルパンのバックルに小道具的な装置を付け、さらにハンドルをキコキコ回して上に昇るのかと思いきや下へ降りていくという心憎い演出を見せてしまう、、さっすが宮崎駿。

そしていわずもがなの全速直滑降ダッシュ&ジャンプでベタッと塔の壁面にへばりつく有名なシーン。あと、重傷を負ったルパンの食い意地も付け加えときましょうかね。

そうそう、宮崎アニメに出てくる食べ物って美味しそうだよねぇホント。

分厚い肉にぶっ太いソーセージ、ボリュームたっぷりスパゲティにフルーツ盛り合わせ、、ありゃ傷も癒えるわ。銭形が食ってるカップラーメンまで美味しそうなんだもん。

また、ストーリーテリングについては、未来少年コナンの設定と話のつくりをそっくりそのまま持ってきてるよね。

ルパンと銭形という追う者と追われる者というルパン三世を成立させている大前提を逆転させることさえ意に介していないという点では、これはルパン映画ではなく完全に宮崎アニメの文法そのもの。

まぁこの点については全然OKなんだけども。

面白いからといえばそれまでだけど、そもそもルパン三世というアニメは、TVシリーズなり劇場版なりでやることはやってしまったという感もあるからね。それでもさらにルパン映画を作っていくという時にそれまでと同じことをまたやっていくのか。。。

なんかそれだと作り手としても見る方としてもモチベーションみたいなものがなかなか上がっていかないんじゃないかな。

ドラえもんの劇場作品でのび太とジャイアンが手を取り合うような、TVシリーズとは違う劇場版ならではの特別な気風が感じられた方が心にも残りやすいと思う。

その点でもこのカリオストロは出色の出来。

P.S. 宮崎アニメは緑も豊か。宮崎アニメの真骨頂その2。

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怪盗グルーの月泥棒

154509_01声の出演:笑福亭鶴瓶、山寺宏一、伊井篤史、京田尚子、須藤祐実、矢島晶子、芦田愛菜

監督:クリス・ルノー、ピエール・コフィン

(2010年・アメリカ・95分)WOWOW

内容:ある日、ピラミッドが盗まれた。盗んだのは、悪党銀行の御曹司ベクター。それに対し、大泥棒を自負するグルーは負けてなるものかと月を盗むことを決意する。武器作りの天才科学者ネファリオ博士と手下のミニオンたちを従え準備万端かと思いきや、月を盗むのに使う秘密兵器をベクターに盗まれてしまう。そこで、ベクターの大邸宅に出入りしている養護施設の三姉妹を利用することにして養女として引き取ることにするが・・・。 

評価★★★/65点

悪党グルーを見て真っ先に思い浮かべたのが、「レミーのおいしいレストラン」に出てくる辛口料理評論家アントン・イーゴだった。

偏屈で嫌みったらしくて、あえて誰にも心を開かないような高慢ちきなキャラクターだと先入観をもって見てしまったから、さぁ大変(笑)!

大の子供嫌いなはずなのに、三姉妹の可愛さに即陥落して良い人になってしまうなど、想定していたキャラとはブレブレでいまいち乗り切れず。。

自分勝手が招いた自業自得といえばそれまでだけどw、グルー以外の取り巻きはキャラが確立していただけに、もう少しビターテイストが欲しかった気が。

まぁ、鶴瓶の声がグルーの風貌とえらくマッチングしていて小物感がありありと出ていたので、これはこれで良かったのかな。

ミニオンは、まっくろくろすけのような愛嬌と、ウォレスとグルミットのような所作の充実があいまって見事な造形。それこそミニオンで映画作った方が・・w

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ルパン三世 ルパンvs複製人間(1978年・東宝・102分)金曜ロードショー

 監督:吉川惣司

 声の出演:山田康雄、小林清志、増山江威子、井上真樹夫、納谷悟郎、西村晃

 内容:峰不二子におねだりされ、エジプトのピラミッドから“賢者の石”を盗み出したルパンだったが、何者かに命を狙われるようになる。実は不二子の裏で謎の大富豪マモーが糸を操っていたのだ。そしてマモーに捕らえられ、賢者の石が不老不死の力を得るために必要な秘宝だと知ったルパンは、なんとか脱出して逃亡するが、次元、五右衛門とケンカ別れしてしまう・・・。

評価★★★/60点

カーチェイスひとつとっても宮崎駿お子様ランチには到底かなわないのが正直なところ。

しかしまぁ、2001年宇宙の旅でラストかと思ったら三波春夫へバトンタッチという荒技には一気に気抜けというかなんというか・・w

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ルパン三世

Lupinthemovie_2014_title出演:小栗旬、玉山鉄二、綾野剛、黒木メイサ、浅野忠信、ジェリー・イェン、キム・ジュン、ニック・テイト

監督:北村龍平

(2014年・東宝・133分)WOWOW

内容:古代ローマで「その所有者は世界を統べる」といわれた幻の秘宝“クリムゾン・ハート”が、アジアの闇社会を牛耳るプラムックの手に渡った。そして世界最強の鉄壁セキュリティに覆われた要塞に封印してしまう。それに対し、ルパン一味は秘宝奪還に乗り出すが・・・。

評価★★/40点

まったくもってツマラなかった。

それ以上でも以下でもないんだけど、ものの開始5分でこれはダメだなと思った(笑)。安っぽい香港映画じゃんこれ。。

なんだろなぁ、、アジアの力を結集して面白いアクション映画を作ろうっていうヤル気は買うけど、ルパンでやる企画じゃないんだよなぁ

ルパン三世と香港映画はイメージ的にもつながらないし。。

あと、なんか中身の方もアジア版ミッション・インポッシブルな趣だったけど、アップを多用し無用なカメラワークで騙しだまし繰り出されるアクションシーンのちゃちさが本家との比較でさらに際立って、目に余ってどーしょーもないw

まぁ、そもそもルパン三世にとってアクションの質はそんなに重要ではないとはいえ、例えばカーチェイスでふた回り以上もデカい敵のハマーに体当たりを受けてボッコボコになっているはずなのに、フィアットの車体に傷ひとつ付いていないとか思わず目を疑ってしまうようなガサツなディテールが随所にあって、映画のレベルを著しく下げている。

あとはなんといってもキャスティングw

ここにケチをつけたらキリがないんだけど、やっぱりルパン三世で最も重要なのはコミカルな作風とそれに合うキャラクターなんだよね。そこもこの映画は圧倒的に弱い・・・。

で、ルパン三世ってコミカルでちょっとエッチで肝心なところはハードボイルドで締めるという大人テイストな作品なわけで、やっぱりコメディ感覚を持った監督と演者じゃないとそのルパン三世の色って出ないと思うわけで。

それを考えると、ルパンは大泉洋が適役なんじゃないかな。

峰不二子は米倉涼子、次元が阿部寛、五右衛門が江口洋介、銭形が佐藤浩市、役所広司、生瀬勝久あたり。で、監督・脚本は三谷幸喜。これぞ最強w

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