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2021年12月26日 (日)

夢のシネマパラダイス79番シアター:ハリー・ポッターシリーズ

ハリー・ポッターと賢者の石(2001年・米・152分)DVD

 監督:クリス・コロンブス

 出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、ジョン・クリース

 評価★★★/65点

 内容:ハリー・ポッターは孤児。意地悪な従兄一家にいじめられ虐待されながら育てられていたが、11歳の誕生日を迎えようとしていた時、ホグワーツ魔法学校からの入学許可証が届き、自分が魔法使いだと知る。キングズ・クロス駅、9と3/4番線から汽車に乗り、ハリーは未知の世界へ旅立った。そして、親友となるロン、ハーマイオニ-に助けられながらハリーの両親を殺した邪悪な魔法使いヴォルデモートの陰謀に立ち向かう。

“なーんだ、映画館行かなくてヨカッタヨカッタ”

見に行くかどうか相当迷ったが、結局行かなくてよかった。DVDで十分だこりゃ。

2時間半長く感じたのが何よりの証拠。中盤クィディッチの試合までは良かったのだが。

以降テンションは下がる一方。

なぜだろう。なんて言えばいいのか言葉が見当たらないが、子供にはウケるつくりになっているのは間違いない。

なんかディズニーアニメとかスター・ウォーズと同じ部類の映画だと思うんだよな。ディズニーアニメって紛うことなき子供向けだし、宮崎アニメとは違って大人の観賞にはちょっと、、それと同じことがハリポタ映画版にもいえると思う。

あと、スター・ウォーズ的というのは、スター・ウォーズって映画の内容よりも“スター・ウォーズ”というサーガが作られること、あるいはそのサーガに参加することの方に意味がある、いわばイベント的なものというかんじがするわけで、内容は二の次というか。

世界観はすごいが、その中で浅く広くやってる。決して深く狭くではないと思う。ハリポタもまさに浅く広くってかんじ。世界観は垣間見えるけど、深くは入っていけない、そういう作りになってたと個人的には受けとめました。

んで、映画観た後、原作を読んだら、もうどうにも止まらない!面白い。世界観もキャラもちゃんと立ってるし。

そして思ったこと。

2時間半に全部突っ込んだのかぁ。

散漫さや平面をなぞったような平易さはこれが原因なんだと納得。

まあしかし、まだ原作が完結していない中での映画化ということを考えれば無理もないか。

しかし、これだけは言える。

これからも劇場にハリポタを見に行くことはない!

(初記:2001/12/10)

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ハリー・ポッターと秘密の部屋

237942view017 出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、リチャード・ハリス

監督:クリス・コロンバス

(2002年・アメリカ・161分)DVD

評価★★★☆/70点

内容:夏休みを過ごしていたハリーは、妖精ドビーに「ホグワーツに戻ってはならない」と警告されるが、意地悪な叔父と叔母に監禁状態のハリーはもう餓死寸前。なんとか親友のロンに助け出されてホグワーツへ急行する。しかし、新学期が始まった途端、ハリーは恐ろしい陰謀に巻き込まれてしまう。ホグワーツ校を襲う姿なき声。次々と出る犠牲者。そして、ハリーに疑惑の目が向けられてしまう・・・。

“ハリポタ映画版の有効利用法、そして逃れられない宿命。”

ハリー・ポッターがヴォルデモートとの対決から逃れられない宿命を背負っているのと同様にハリポタ映画版も逃れられない宿命を背負っている。ハリー・ポッターの本の世界の枠から逃れられないという宿命を。

それはつまり暫時発表されていくハリー・ポッターの本の世界とほぼ同時進行で映画を作っていかなければならないという条件に制約されることを意味する。そしてこの制作条件の下ではハリー・ポッターの本の世界の枠から逸脱することは許されない。いや、できないと言った方が正しいか。

さらにいえば、ハリー・ポッターの本の世界の枠の外へ突き破っていくことができないばかりか、枠の内側へ突き進んでいくこともままならないといえる。(やれば出来るはずだが、相当な勇気と賭けが要求される)

つまり、ハリー・ポッターの本の世界の最大公約数たる枠の線上、外郭をなぞることしかできない。それで精一杯なのだ。

ハリー・ポッターシリーズの原作が完結していない中での映画化ゆえの弊害という他ない。

そして本の世界の枠の線上、外郭をなぞることしかできない結果どうなるか。

言うまでもなかろう。

濃密な本の世界に映像の世界が吸収されてしまうのだ。

映像の世界は本の世界の一部にしかすぎなくなる。利点としては本の世界と映像の世界が合致することくらいか。すなわち本の世界をより分かりやすく理解するための副教材としてしか映画の生きる道はない。

映画が独立して1つのハリー・ポッターの世界を構築するというにはあまりにも脆弱すぎる。まずお子ちゃまにしか通用しない世界であろう。

それゆえ「ハリー・ポッターと賢者の石」のレビューでも述べた通り、ハリポタを見るためにわざわざ劇場に足を運ぶことはこれから先もないとだけは強く言っておきたい。

だが、しかし副教材としてこれほど使えるありがたいものはないことは確かで、自分みたいに原作本「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」を読むにあたって、前作「ハリー・ポッターと秘密の部屋」をもう1回読み返すのがめんどくさいからDVDを借りてきて2時間ちょい見ればそれで事足りちゃうわけで。

原作本「ハリー・ポッターと秘密の部屋」の世界の最大公約数を映像で分かりやすく挙げてくれる。「アズカバンの囚人」を読むにあたって前作を軽~く復習するにはもってこいなのです。

そういう映画の見方しかできないかなぁハリポタに限っては。

一個の映画としては★3以下、教材としては★4以上。

(初記:2003/8/3)

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ハリー・ポッターとアズカバンの囚人

241897view002 出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、ゲイリー・オールドマン

監督:アルフォンソ・キュアロン

(2004年・アメリカ・142分)DVD

内容:魔法学校の3年生になったハリーたち3人は、人間世界で魔法を使ってしまい、進級早々に退学の危機に直面。さらに脱獄不可能の牢獄アズカバンから凶悪犯のシリウス・ブラックが脱獄し、ハリーの命を狙うという恐ろしい事件が降りかかる。

評価★★★☆/70点

初めて省略と取捨選択という技法を学習したハリポタ3年生。しかし、ハリポタ世界の奥行きと深さまで省略してしまうところは文字通り小学3年レベル。

4年生では応用力を身につけましょうね。

(初記:2005/12/11)

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ハリー・ポッターと炎のゴブレット(2005年・米・157分)DVD

 監督:マイク・ニューウェル

 出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、レイフ・ファインズ

 評価★★★/60点

 内容:魔法界のサッカー、クィディッチのワールドカップが行われ、ハリーたちを夢中にさせるが、そこで恐ろしい事件が起きる。そして、100年ぶりに開かれることになった三大魔法学校対抗試合に、ヴォルデモートが仕掛けた罠はハリーを絶体絶命の危機に陥れる。しかも、味方になってくれるはずのロンに思いもかけない異変が・・・。

“シリーズが重なるにつれ原作と映画の形骸化とのブレ幅が相当開いてきた気がする。。”

ハリー・ポッターの映画化シリーズ全般に関しては「ハリー・ポッターと秘密の部屋」のReview“ハリポタ映画版の有効利用法、そして逃れられない宿命”として述べたことが自分の中での確固とした共通認識となっているので、今回の作品に関しても別段変わらぬ印象だったし、新たに特に言うことはないんだけども。。。

ただ、登場人物たちの驚き、悲しみ、喜び、嫉妬、痛み、笑い、達成感といった感情の機微の数々や、機知に富んだストーリーテリングの中に隠された暗号と伏線の数々、それら原作に詰め込まれた膨大な情報量を一気に圧縮し、ハリー・ポッターという一人称で語ることができること以外は消去するという二次加工を施したこの映画は、まるで原作を180倍速という高速回転で見せられているようなかんじで、感情の起伏の入り込む余裕を与えない。

また、ハリーのエピソードに絞ったことにより原作の奥行きが文字通り圧縮され、小学校低学年レベルの絵日記風の羅列にしか見えないことは、この作品に対する自分の評価をどうしても低調なレベルに陥らせてしまう。

そして「秘密の部屋」のReviewで述べた通り、2時間半のダイジェストとして見ればこれほど有益なものはないということもこの作品にそのまま当てはめることができる。

しかし、シリーズが重なってくるにつれ原作と映画の形骸化とのブレ幅が相当開いてきた気がするなぁと感じてしまうのも確かだ。

トム・リドルの墓に大蛇が絡みつくオープニングは、大団円の伏線となっていて、最高の出だしだったけど、その後はもう登場人物しかり重要なエピソードしかり端折るわ端折るわ飛ばすわ飛ばすわ、まるでポートキーで1ページ目から100ページ目に一気に移動していくような瞬間速で飛び越えていき、立ち止まることを許してくれない。

クィディッチW杯の会場(といっても肝心のビクトール・クラムのスーパープレーは省略)とポートキーの映像化、ハンガリー・ホーンテールとの闘い、トライウィザード・トーナメントの最終課題に出てくる迷路の遠景くらいかな、原作を読んでいた自分の想像力を映画が上回ったといえるのは・・(いかに原作がスゴイかってことだよなぁ)

ハリーとロンの断絶による友情の危機はあまりにもちっぽけにしか見えなかったし、しもべ妖精は出てこない、尻尾爆発スクリュート見たかったよー!

と不満と消化不良はタラタラもんである・・・。

個人的にはハリポタの4作目までの原作の中で「炎のゴブレット」が、一層読者を引き込む流れるようなストーリーテリングと張り巡らされた伏線の数々、そして終盤一気に畳みかけるように解き明かされる真実と過去の衝撃とその展開力に舌を巻き、1番アツくのめり込んだ作品だっただけに、この映画のいまいち自分の中でハジけない消化不良さは、いつまでも残りそうだ。

まあ、映画の中で1番心に残ったシーンは、ハーマイオニーの「ビクトール(・クラム)って、、体ばっかり。」という意味深な爆弾発言だろう(笑)。

その直後に「あ゛、、そういうことじゃなくて・・・」みたいに訂正してるんだけど、そういうことって一体どういうことなんだ??気になる(笑)。まあ、もう14歳だもんな、、、ありえるか、もう、、おいおい!

話が思わぬ方向にそれてしまったが、とにかく本を読もうよ原作を。

映画は原作のダイジェストでしかないのだから。

(初記:2006/3/19)

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ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団

Gynnkzsmma 出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、ヘレナ・ボナム=カーター、レイフ・ファインズ、マイケル・ガンボン、ゲイリー・オールドマン、アラン・リックマン、マギー・スミス、エマ・トンプソン

監督:デヴィッド・イェーツ

(2007年・英/米・138分)2007/08/07・盛岡ピカデリー

評価★★★★/75点

内容:魔法学校の5年生になったハリー。休暇中のある日、ハリーは人間界で吸魂鬼(ディメンター)に襲われ、禁じられている魔法を使ってしまい、魔法省に告発されてしまう。ダンブルドア校長は、ヴォルデモートが復活したせいだと擁護するが、魔法省大臣は自分の地位をダンブルドアが貶めるためのまやかしだと言って信じない。ハリーはなんとか処罰を免れたものの、魔法省は闇の魔術に対する防衛術の新任女教師を監視役としてホグワーツに送り込む。一方、ヴォルデモートは仲間を集め、ハリーたちを陥れようと暗躍し始めていた・・・。

“ダークファンタジーへ急転回!?”

ハリポタの映画は劇場では見ないと宣言してから6年、その禁を破ってついに劇場鑑賞してしまいますた・・。

というのはさておき、ハリポタの原作が新しく出るたびに、今回の新作が今までで1番面白かった!という自分の中の履歴が更新されてきたわけで、5作目となった「不死鳥の騎士団」も2冊分一気に読みふけってしまうくらいにシリーズの中で1番のめり込んでしまった。

前作でヴォルデモートが復活し、それを見たハリーを誰も信じてくれないばかりか、魔法省から迫害に近いことまでされ、唯一の頼みの綱であるダンブルドアからも無視されつづけ、ハグリッドも不在、あげくの果てに心の拠り所としていた今は亡き父親が若かりし頃にスネイプをイジメまくっていたという事実まで明るみになり、完全孤立状態に陥ってしまうハリー。

その中でハリーを襲う魔の夢、魔法大臣コーネリウス・ファッジが送ってきた悪女ドローレス・アンブリッジの昼ドラばりの嫌がらせ(笑)。

情緒不安定になっていくハリーをなんとか支えようとするロン、ハーマイオニー。

チョウ・チャンとの淡い恋。

そして大団円でのシリウスの死と、今作に関しては、今まで周囲におだてられ助けられてきた感が強いお坊ちゃまハリーが独力で事態を切り拓いていかなければならない状況になり、その中で精神的に一段成長し強くなっていくという過程を描いている。

「自分かヴォルデモートどちらか一方は必ず死ななければならない。」という予言を受け入れたハリーの決意表明は今までで最も重いものであり、その点でもハリポタシリーズの核心に一気に近づいてきたゾという緊迫感をヒシヒシと感じながら読み進めていった。

しかし、それだけのめり込んでしまったためか、自分の頭の中で文章を映像化するのが最も難しいと感じたのもこの作品で、魔法省の神秘部だとか不思議系少女ルーナ・ラブグッドとかハグリッドが連れてきた巨人だとか、最強の敵ドローレス・アンブリッジの独特な声だとか、とにかく今回ほど見たい!聞きたい!感じたい!と映像化を切望したことはなかった。

その観点からいうと、今回の映画は、自分の願いを見事にかなえてくれたといっていい。

もともと今回の原作自体、ハリー視点を中心にして進むストーリー展開だし、ヴォルデモートとの対決というハリポタシリーズの大団円に今までの作品の伏線やストーリーが一気に集約・収束されていく展開なだけに、要点をまとめやすく描けるという易しさはあったのだろうが、テンポよくまとめられていたと思う。

まぁ、2時間半に収めるために要点を点と点で足早に結んだという感も否めず、原作未読の人には消化不良かもとは思ったけど、それも毎度のことだからね。個人的にはギリギリ許容の範囲内だった。

とにもかくにも守るべき価値のあるもののために闘うんだ!というハリーの大人への脱皮とともに、お子ちゃまファンタジーからダークファンタジーへと急激にかじを転回させていきそうな今後の展開が楽しみでならない。

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ハリー・ポッターと謎のプリンス(2008年・英/米・154分)WOWOW

 監督:デヴィッド・イェーツ

 出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、ジム・ブロードベント、ヘレナ・ボナム=カーター、マイケル・ガンボン、アラン・リックマン

 内容:闇の帝王ヴォルデモートの支配力がいよいよ高まり、その脅威はホグワーツにも及んでいた。来るべき最終決戦に向けて準備を進めるダンブルドアは、かつてホグワーツで教鞭をとり、若き日のヴォルデモートことトム・リドルと深い関わりを持っていたスラグホーンを魔法薬学教授として迎え入れる。一方、ハリーは敵対していたドラコの不可解な行動に猜疑心を募らせていた・・・。

評価★★★/60点

今回の原作はボリュームがあるわりには1番地味で暗い印象で、基本軸としてはヴォルデモート(トム・リドル)の過去、ロンとハーマイオニーの恋わずらい、ハリーのマルフォイに対する疑惑の目の3本柱にデスイーターの暗躍や魔法薬学の授業が差し挟まれる程度で、それぞれが連動して絡むことがないので単調で奥行きがない。

最終決戦に向けての嵐の前の静けさといったところなのだけど、ただでさえ原作が薄味なのに原作の40%濃度の映画がダラダラとしたダイジェストになることは致し方ないこととはいえ、もう少し工夫できなかったか・・。

例えば、ヴォルデモートの過去をもっとクローズアップさせてロンとハーマイオニーのラブコメをバッサリ切り捨てラストの悲劇を際立たせるとか。

また、“半純潔のプリンス”は誰かということについてももっと興味を引くような描写はできなかったかと思ってしまう。

緩急もなければ伏線もない、、かなり魅力に乏しい作品だったといえよう。

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ハリー・ポッターと死の秘宝PART1&PART2

131083268068013416287 出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、ヘレナ・ボナム=カーター、レイフ・ファインズ、アラン・リックマン、マギー・スミス、デヴィッド・シューリス、ジェイソン・アイザックス、マイケル・ガンボン

監督:デヴィッド・イェーツ

(PART1:2010年・英/米・146分、PART2:2011年・130分)

内容:亡きダンブルドア校長の残した手がかりをもとにハリー、ロン、ハーマイオニーは、ヴォルデモートの不死の鍵を握る分霊箱を見つけ出し、破壊するための旅に出るが・・・。

評価★★★☆/70点

原作を読んでから映画を見るというサイクルを続けてきたハリポタシリーズにあって、今回ほど原作を読むのに時間がかかったことはなかった。なにせ上巻だけで3ヶ月以上かかってしまったのだから・・。

下巻はわずか1週間あまりで読破したことを考えると、このモチベーションの差は何だったんだろうと思ってしまうけど、はっきりいえば上巻は面白くなかった・・

分霊箱を探し求めるあてどもない旅は変化に乏しく単調でストレスが溜まってしまうのだ。

おかげでハリーたちの長きに渡る彷徨の時間の流れを3ヶ月かかって自分も味わうはめになったのだけども、映画はいやでも2時間ちょいで終わるので見るぶんには気楽w

単調で唐突にすぎるきらいはあるものの、おおよそ原作通りに要所要所を押さえて最低限の仕事は果たしていたとは思う。PART2も同様で、無難に着地したというかんじ。

しかし、これはあくまでも原作を読んだ頭で常に情報を補正・捕捉しながら見なければならないという条件つきであり、そうでなければ細かいところがチンプンカンプンで分かりづらいだろうと思う。

原作に忠実にという体面を重んじたのかもしれないけど、2部作合計4時間半もの尺を与えられていたことを考えると、もうちょっと工夫の余地があったのではないかなと。

個人的には憂いの篩で明かされるスネイプの記憶と本当の思いを描いたシーンをもうちょっと引き伸ばして丁寧に見せてもらいたかったんだけど。

しかしまぁ、10年にわたって主要なキャストが外れることなく続いてきたというのは奇跡としかいいようがなく、映画史上最強ファンタジーという称号を与えるにふさわしいシリーズだったと思う。

ギャランドゥを生やすまでになったハリー、お腹ブヨブヨのロン、やたら色っぽくなったハーマイオニー!10年間ありがとー!なんじゃそりゃww

2021年12月25日 (土)

夢のシネマパラダイス356番シアター:神様、神様は本当にいるんですか?

沈黙ーサイレンスー

Blog_import_5c819b874025a出演:アンドリュー・ガーフィールド、アダム・ドライヴァー、浅野忠信、窪塚洋介、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、リーアム・ニーソン

監督・脚本:マーティン・スコセッシ

(2016年・アメリカ・162分)T・ジョイPRINCE品川

内容:17世紀、江戸時代。日本で布教活動していたイエズス会宣教師フェレイラが、幕府のキリシタン弾圧によって棄教し消息を絶ったとの知らせがローマに届いた。弟子のロドリゴとガルペはそれを信じられず日本へ向かい、マカオで出会った日本人キチジローの手引きで長崎の隠れキリシタンの村に潜入する。そして村人たちの手厚い歓迎を受けて信仰心を通わせていくが、キチジローの裏切りでロドリゴが捕縛されてしまう。長崎奉行・井上筑後守は布教の無意味さを説き、「転び」=棄教を迫るのだった・・。

評価★★★★☆/85点 

信仰心は薄いけど、歴史好きな自分にとって宗教について確信をもって言えることがある。

それは洋の東西を問わず歴史を動かしてきた最大の原動力は宗教だということだ。

「今までの歴史の中で記録されている残酷な罪の数々は全て宗教という名の下に行われている」というガンジーの言葉や、イギリスの歴史家ギボンの「宗教のことを一般人は真実のみなす一方、支配者は便利とみなしている」という言葉の通り、宗教は権力者が国をまとめるための道具に使われてきた。

特に他の神々を認めない一神教が牙をむいた時の禍々しさは、これだけ文明の進んだ今でも変わらない。

人間が生み出した最も純粋偉大な思想が邪悪野蛮な行動を生み出してしまうという点で人間の写し鏡でもある宗教。

だからこそ宗教について知ることは、人を知ること歴史を知ることに繋がっていって面白いのだと思うし、例えばキリスト教とイスラム教はもともとはユダヤ教から派生した姉妹宗教であるとか、インドで生まれた仏教がシルクロードを通って中国、朝鮮半島を経て日本へ渡ってくる間にその土地の風土気候文化や土着の宗教と結びついて変容していくプロセスを知るのも面白かったりする。

その中で、針供養からシロアリ供養あるいはトイレの神様に至るまで自然万物すべてに八百万の神が宿る日本人の宗教観は、世界的にはかなり特殊な部類に入ると思うけど、だからこそ逆に面白いし、日本人として誇りに持ちたいところ。

と、前置きが長くなってしまったけど、肝心の映画について。

信仰心は薄いけど歴史好きな自分としては、250年に渡って数万人が殉死したという教科書でしか見たことがなかった踏み絵などのキリシタン弾圧の実相を映像として見られるというスタンスでしか臨めなかったのが正直なところで・・。

だって、キチジローより早く踏み絵を踏んじゃう自信あるし(笑)、やっぱりそういう一神教信者の内面というのはなかなか分からないところがあって。。映画自体もそこは踏み込んで描いていない面もあったけど、純粋な信仰心を疑ってやまないモキチ(塚本晋也)の顔を見せられるとグウの音も出なくなっちゃうていうのは映画として上手いんだか何なんだかw

でも、スコセッシが足かけ28年かけてようやく作り上げただけあって、ハリウッド映画にありがちなココがヘンだよニッポン描写みたいな違和感はなく。全編台湾ロケだったようだけど、江戸初期長崎の風景もちゃんとしていたし、日本キャスト陣の頑張りもあって160分の長尺を感じさせない作品になっていたと思う。

切っても切り離せない“宗教と暴力”。そしてスコセッシが一貫して描き続けてきた“信仰と暴力”というテーマ。それを音楽のない映像の力だけで結びつけたのはやはりさすがだったし、これからはNHKの大河ドラマもいいけど歴史から抹殺された弱者たちを描いた歴史ドラマをこそ見たいなと思った。

P.S.後日、1971年公開の篠田正浩監督版を鑑賞。

井上筑後守が元キリシタンだったことにビックリw

またエンディングの収め方も、スコセッシ版ではロドリゴが棄教して妻帯するも最後まで禁欲的印象を受けるのに対し、篠田版では妻として差し出された元キリシタンの女の身体を本能のおもむくままに貪るロドリゴを赤裸々に映し出すカットで終わる。

篠田版の方が分かりやすく核心を突いているような気はしたけど、個人的には丁寧でありながらこちらの想像力・読解力の入り込む余白を残しているスコセッシ版の方が好み。

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エクソダス:神と王

Poster2_2出演:クリスチャン・ベイル、ジョエル・エドガートン、ジョン・タトゥーロ、アーロン・ポール、シガニー・ウィーバー、ベン・キングズレー

監督:リドリー・スコット

(2014年・アメリカ・150分)盛岡フォーラム

 

内容:古代エジプト王国。国王セティのもとで息子のラムセスと兄弟同然に育てられたモーゼ。成長した彼は、父王の信頼も厚く、国民からも慕われていた。ところがセティの死後に即位したラムセスは、モーゼが実は奴隷階級のヘブライ人であると知るや、モーゼを国外追放する。なんとか生き延びたモーゼは、過酷な放浪の末に一人の女性と巡り会い結婚し平穏な暮らしを得る。しかし9年後、そんな彼の前に少年の姿をした神の使いが現れる・・・。

評価★★★★/80点

普段、映画の感想を書く時に、やれ人間ドラマが薄っぺらいだとかキャラクターに深みがないだとかエピソードが単調だとかツッコミを入れてしまうのだけど、しかしそうはいっても1番スクリーンで見たいのは何かといえば、やはり映画でしか味わえないスケール感を体感したいというのが先にくる自分がいたりしてw

そして、文字通りそれがいの一番にくるのがリドリー・スコットであり、たいして面白くもない話を壮大な大作に仕上げてしまう、つまり40点のお話を70点以上に底上げしてしまう力技は決して期待を外さず、SFものや歴史ものとリドリー・スコットが組み合わさるとワクワク感が止まらなくなってしまう(笑)。

で、今回の作品はまさに40点を80点にグレードアップしたようなリドリー・スコット十八番の映画だったように思う。

地平線を否応なく意識させるワイドスクリーンに映し出される映像は「アラビアのロレンス」を想起させるほどスペクタクルな情感にあふれていて、作り話のようなウソっぽさを払拭させてしまうリアリティとともに映画的なカタルシスをも両立させてしまう魅力があったし、これぞ映画であると肯定させてしまう力技は今回も健在だった。

ただまぁ神仏習合の日本人には理解しがたい部分というか、白黒はっきりさせる一神教の容赦のないエグさだとか、モーゼとオサマ・ビン・ラディンは何が違うのかと一瞬思ってしまう違和感だとか、60年前の「十戒」では描けなかった今だからこその視点で切り取る方法論があってもよかったような気もする。

復讐の化身にしか見えない神、信じる者しか救わない宗教、狂信者と紙一重の人間、、う~ん、、ロクなことがないよね

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ノア 約束の舟

A1d764a44fc39a29575296986686ff7e出演:ラッセル・クロウ、ジェニファー・コネリー、レイ・ウィンストン、エマ・ワトソン、アンソニー・ホプキンス、ローガン・ラーマン

監督・脚本:ダーレン・アロノフスキー

(2014年・アメリカ・138分)WOWOW

内容:旧約聖書の時代。アダムとイブにはカイン、アベル、セトという3人の息子がいた。が、カインはアベルを殺し、やがてその子孫はこの世に善と悪を広めた。一方、セトの末裔ノアはある日、恐ろしい夢を見た。それは、堕落した人間たちを一掃するため、地上を大洪水が飲み込むというものだった。これを神のお告げと確信したノアは、妻と3人の息子と養女のイラと方舟を作り始め、この世の生き物たちも乗せられるように洪水から逃れる準備をする。しかしそんな中、カインの子孫たちが舟を奪うべく現われるが・・・。

評価★★/40点

宗教映画もここまでこじれるとどうにもならなくなっちゃうな(笑)。

旧約聖書にあるノアの箱舟がもともとどんな話なのかよくは知らないけど、これだけ見ると、マインドコントロールされた親父が自分の家族以外の人間を勝手に悪とみなして見殺しにし、さらに生まれてきてはダメなのだと初孫にまで手をかけようとするも、家族の懸命な説得で我に帰るっていうどーしょーもない話なわけでしょ・・。

まぁ、こういう一神教に特有の信じる者は信じない者を駆逐してかまわないという選民思想は日本人には理解しがたいものがあるので、ちょっとテーマ的にもなじめなかったなぁと。。

唯一、ハリー・ポッター組の中でエマ・ワトソンだけが順調に女優としてキャリアを積んでいってるなと確認できたことだけが救いだった。。

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パッション

Dvd出演:ジム・カヴィーゼル、マヤ・モルゲンステルン、モニカ・ベルッチ、ロザリンダ・チェレンターノ

監督・脚本:メル・ギブソン

(2004年・アメリカ・127分)盛岡フォーラム

内容:ローマ兵の虐待を受けながらゴルゴダの丘へ連行され、人々のために祈りつつ処刑されたイエス・キリストの最期を、見る者に嫌悪感を抱かせるほどの暴力描写と当時と同じアラム語とラテン語のセリフなど徹底したリアリズムで描いた問題作。

評価★★/45点

“自分の中にあるパッションは一度も高ぶることなく灯火さえともることがなかった。胸を張ってカミングアウトしよう。この映画に不感症だと。”

あなたはどんな映画が好きかと訊かれたら自分は間違いなくこう答えるだろう。

ぶっちゃけ人殺しをしようが何をしようがとにかく生への執着、生きることへの必死さ、そういう思いが伝わってくる映画を見るのが最も好きだと。

そんな映画が好きな自分にとって、生への執着を超越し、生きることへのひたむきさなどどこ吹く風のまったく対極にあるこの映画を見ることが自分の中にどのような反応をもたらすのか(正確には無反応)ある程度は予想がついてはいた。

しかしその予想を超越したレベルで自分はこの映画に無関心無感動無感覚だった。

殴る蹴る、さらされた血みどろの身体、飛び散る血しぶき、そんな目を覆うような映像の連続を目の当たりにしても自分の感情は喜怒哀楽どちらにも一向に傾くことはなかった。どこまでも平然かつ冷静沈着な自分がいた。エグイ描写でこんなに冷めてていいのだろうかと思ったくらい・・・。

前に座ってたカップルなんて、先に男の方が途中で席を立って、3,40分戻ってこないことに業を煮やした彼女がしぶしぶ席を立っていったり、かと思えば別な一角からはすすり泣く声が聞こえてきたり、、ふ~ん、やっぱ今の時代、男の方がヤワなんだなとかあそこで泣いてるのはクリスチャンなのかねぇとか劇場の反応の方まで冷ややかに見ている自分がいたりして

まずもって、この映画における徹底したリアリティの追及は、自分にとって何ら評価ポイントにはならなかったということだけは確かなようだ。

この映画のチラシには、「いかにもウソっぽい歴史大作」ではなく徹底したリアリティを追求するために世界最高のスタッフが集結した、というふれこみがあった。しかしこの徹底したリアリティの追求というのは一見映画に限りない実感と重みをもたらすと思われるが、それはまた諸刃の剣であるということも忘れてはならない。リアリティを追求しすぎることが今度はかえって映画のもつエンターテイメント性と観客のもつイマジネーションを削いでいってしまうという弱点をも内包しているといえるからだ。

そのことをふまえた上でいうと、人それぞれ好き嫌いはあると思うが、個人的に優れた歴史映画というのは、リアリティの追及と同時に、いかにうまくウソをつくかというその2点におけるバランスがうまくとれているもの。そういう映画が優れた歴史映画だと思う。

その点についてこの映画を評価するならば、優れた歴史映画という括りには全く入れることはできず、完全な宗教映画になってしまっているといえる。キリスト教信者以外何ら見るべき価値はない映画だと断言しちゃってもいいのではないかなと。

クリスチャンでも何でもない自分にとってはホント聖書を読んだときの堅っ苦しさと形式ばった窮屈さと全く同様のものを感じ取ってしまったわけで。

別に聖書を否定したいわけでは決してなくて、史劇とか人間劇といったエンターテイメントやスペクタクルにどううまく聖書を織り込んでいくか、その使い方とバランスが重要だってこと。

その好例としては例えば「ベン・ハー」が挙げられるかな。

とにかくあれだね、小学生の頃よく学校の帰り道でキリストの受難や天国とか地獄についての紙芝居をやってるのに出くわして見たことがあったんだけど、そのときに得たインパクトとパッションの方がメル・ギブソンの映画を見たときより何倍何十倍も大きかったことだけはここに記しておこう。

追記1.あ、そういえば思い返してみると幼稚園と大学がカトリック系のところだったんだっけ・・

2.自分が考える優れた歴史映画とは具体的には「ベン・ハー」や「グラディエーター」といった類の映画です。

3.ああいう虐待シーンを見せられるにつけ、イラク戦争におけるアメリカ軍の虐待など、人間って2000年経っても何にも変わってないんだなぁと悲しくなってしまった。

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ミッション(1986年・イギリス・126分)WOWOW

 監督:ローランド・ジョフィ

 出演:ロバート・デ・二―ロ、ジェレミー・アイアンズ、レイ・マカナリー、エイダン・クイン、リーアム・ニーソン

 内容:1750年、南米奥地イグアスの滝。イエズス会の神父ガブリエルは、布教活動のために滝の上流に住むインディオの村を訪れ、彼らの信頼を得ていく。一方、奴隷商人のメンドーサは、三角関係のもつれから弟を殺してしまう。罪の意識に苛まれる中で神父に帰依し、ガブリエルと共に伝道の道に入るのだが・・・。

評価★★★☆/70点

中南米のサッカー選手はピッチを出入りする時に十字を切って神のご加護を祈り、試合後のインタビューでは神への感謝の言葉を惜しげもなく口にし信仰心をあらわにする。サッカー好きの自分は以前から世界で最も敬虔なクリスチャンは中南米の人ではないかと思っていた。

しかし、なぜ中南米のほとんどの国がスペイン語を話し、カトリック教国なのか、、その裏にある痛ましい歴史を垣間見るとなんとも複雑な気持ちになってしまう。

世界は全てカトリック国になるべきだという強烈な使命感を持っていたスペインとポルトガルの庇護のもとキリスト教布教を目的に設立されたイエズス会。しかし、そんな崇高な理念とは裏腹に、この時代のカトリック宣教師が“侵略の尖兵”の役割を果たしてきたことは事実であり、平和目的のように聞こえる布教という言葉の裏で実際行われていたことは軍事的征服つまり侵略だった。

国を滅ぼして宗教と言語を押し付けるのが1番手っ取り早い“布教”だからだ。

しかもここが一神教のタチの悪いところだけど、彼らには侵略や虐殺をも神から与えられた使命と思い込んでいた。人間も含めたこの世界は唯一絶対の神が創造したもの、つまりもともと神の所有物なのに、その神の存在すら知らないあるいはニセモノの神を信じる無知な恩知らずがいて、そういう連中にキリスト教を教え広めるためなら何をしても構わない=正義の行いをしているという論理だ。

映画の中で枢機卿が「医者が命を救うために手術するように、この土地にも思いきった荒療治が必要なのだ」と豪語するのだが、勝手に手術される方はたまったものではない。

しかも、手術が成功し、理想郷ともいえるコミュニティが作り上げられたと思いきや、今度はスペインとポルトガルの領土の取り分争いから立ち退きを強要され結果虐殺されてしまう・・。

欺まんに欺まんを重ねた宗教の名を借りた侵略について深く考えさせられたけど、が、しかし中南米が完全にキリスト教文化圏となっている現代において、彼らの“正義”が勝ったのもゆるがない事実。

多神教的なメンタリティの方に共感を覚える自分にとっては、切っても切り離せない歴史と宗教の関係の中で宗教によって救われた人の方がもちろん多いだろうけど、宗教によって滅ぼされた人も数多いるのだということを忘れてはならないと思う。

P.S.とはいえ国境を越えて命の危険をかえりみず未知の世界各地に散らばっていった宣教師のフロンティアスピリットと使命感はスゴイの一言で、日本に来た宣教師も不安でいっぱいだったんだろうなと今回の映画を見て思った。。

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十戒(1956年・アメリカ・220分)NHK-BS

 監督:セシル・B・デミル

 出演:チャールトン・へストン、アン・バクスター、ユル・ブリンナー

 内容:1923年にセシル・B・デミルが監督した「十誡」を、デミル自らが再映画化したスペクタクル史劇。エジプト王ラムセス1世は、新しく生まれるヘブライの男子をすべて殺すという命を発した。母親の手によってナイル川に流されたモーゼという名の赤ん坊は、好運にも王女のもとへ流れ着く。成長したモーゼがエジプト王子として勢力を得てきた頃、宮廷では実の王子ラムセスが権力を振るっており、2人は王位と王女ネフレテリの争奪を始める。。

評価★★★/60点

どう見たってちゃちい紅海真っ二つシーン。

しかしなんだかんだ言ってモーゼといえばこの映画の映像しか頭に浮かばないというのはある意味スゴイ。

2020年12月29日 (火)

夢のシネマパラダイス467番シアター:究極サバイバル!

新幹線大爆破

Ibqkquwku 出演:高倉健、宇津井健、千葉真一、山本圭、織田あきら、渡辺文雄、竜雷太、宇都宮雅代

監督・脚本:佐藤純彌

(1975年・東映・153分)DVD

評価★★★★/75点

 

内容:東京から博多へ向けて走る新幹線「ひかり109号」に爆弾を仕掛けたという脅迫電話が国鉄に入った。その爆弾はスピードが時速80キロ以下になると爆発するという。犯人は500万ドルを要求し、警察も捜査を開始するが、途中の駅に停車することもできない新幹線は、パニックに陥った乗客たちを乗せて、タイム・リミットへとひた走る。キアヌ・リーブス主演の「スピード」の元ネタになったともいわれる快作。

“まるで速度を落とすのを執拗に恐れているかのごとく一本調子で走り続ける人力シネマ超特急”

2時間半後、終着駅で停車して降りるものの、シネマのほとぼりはなかなか冷めない。

それほどまでに、ああ、映画を見たぞぉーっという満腹感でいっぱいなのだが、しかし実はその実体はなかなか大雑把なやっつけ仕事の鬼とでもいえばいいだろうか。至るところで映画の道筋のレールが寸断されているのだが、そんなことなどお構いなしにとにかく走り続ける。

さすがに図面がある喫茶店が偶然にも火事で焼けてしまうというのは作劇としてはあまりにもいい加減で思わず閉口してしまったし、犯人を確保するどころか2人連続で死に至らしめてしまう警察のバカっぷりなどお世辞にもプロの仕事とはいえない。

ある意味、映画のいい加減な体裁をとるために山本圭は自爆させられたといってもよく、結局、高倉健も撃たれて死んでしまうわけで、警察や国鉄にしてみたら動機が分からないまま終わっちゃったわけだ。

彼ら犯人たちの抱えていた背景は世に出ることはなく、、それもまた可哀想な話だ。

しかし、あの山本圭が自爆って。80年代生まれの自分にとっては山本圭といったら心優しい良き父親といった印象が強いのだけど、まさかこんな闘う男だったなんて。。

まぁ、普通に考えたら、司令室、新幹線、犯人、警察と四足のわらじを履くこと自体どっかで無理が生じるのは目に見えているのだけど、よりによって犯人側にウエートを置くというのは映画と映画内のリミットを考えたら1番難しい大冒険だろう。

しかもこの犯人たちにあまりにも大きなものを背負わせてしまった。日本を動かしている秩序、彼らが言うところの歪んだ体制を。。

それを必要最低限の描写で目ぇ一杯最大限体現できる役者として高倉健をあてたのは理にかなってはいる。

しかし、やはりリミット制限ギリギリの爆弾パニックムービーにおいて、犯人たちの両手に爆弾以上に重い十字架を持たせることがはたしてよかったのかどうか、意味があるのかどうか疑問は残る。

壊すという行為においては、全共闘も新幹線爆破も同じだが、そこに何か正義を求められるのかという意味では新幹線爆破に正義と同情のつけ入る隙も余地も全くない。れっきとした凶悪犯罪である。

やはりその点においてこの映画のウエートの置き方には疑問が残るし、その描写がやや効果のないブレーキになっていたのもたしかだ。

それでもなお★4っつにしたのは、映画の作り手の意気込みと熱意、それを燃焼材としてとにかく2時間半走り続けた血と汗の結晶、人力シネマ超特急にいやが上にも魅せられたからだ。

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ロスト・バケーション

Shallows2016a

出演:ブレイク・ライブリー、オスカー・ジャネーダ、ブレット・カレン、セドナ・レッグ

監督:ジャウマ・コレット=セラ

(2016年・アメリカ・86分)WOWOW

内容:医学生のナンシーは女友達と一緒にメキシコを旅行。亡き母から教わったいまだ観光客には知られていないビーチを訪れた。現地の男といちゃつく友達を置いて浜辺へ向かった彼女は、さっそくサーフィンに興じる。最初は他のサーファーが2人いたものの、やがて1人に。すると突然、何かにぶつかり脚を負傷し出血してしまい、岸から200m離れた近くの岩場に一時避難するのだが・・・。

評価★★★/65点

スピルバーグの「ジョーズ」から40年。

40年経ってもかの作品を超える作品が出てこないというのも考えてみればスゴイことだよなぁw

けど、あの映画の面白さってもちろんサメの恐怖がいの一番にあるものの、登場人物のキャラクターのぶつかり合いという一面も実は大きなウェートを占めていて。

サメのホームグラウンドにもかかわらず、なかなか一枚岩にならない大人たちを見て子供心にそんなことしてる場合じゃないだろと思ったものだけど、サメ退治に名乗りをあげる3人のキャラクターは今でも思い出せるくらい印象的なんだよね。

その点今回は、砂浜から200mほど離れたポイントでひとりの女性サーファーと一匹のサメが対峙するという非常にシンプルなワンシチュエーションものになっていて、サメの姿をなかなか見せないオリジナルマインドを押さえているのは前提としても、距離・潮の満ち引き・負傷した足のハンデの3点のみで映画として機能させた演出力は及第点だし、90分以内に収めたのも良い。

特に砂浜が見えるといったどうにかすれば助かるかもしれないという絶望の一歩手前の“距離感”は絶妙で、その中での孤独感とそれを和らげる一羽のカモメの配置も上手い。

ザックリ咬まれた足の痛々しさや、トゲトゲ珊瑚を踏んでしまったりクラゲに刺されたり痛覚刺激も120%で、総じてシンプルさゆえのリアリティがあって面白かった。

ただ、肝心のサメがあまりにもストーカーすぎて、ちょい冷めw

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127時間

O0586082312315252485 出演:ジェームズ・フランコ、アンバー・タンブリン、ケイト・マーラ、ケイト・バートン、トリート・ウィリアムズ

監督・脚本:ダニー・ボイル

(2010年・米/英・94分)WOWOW

内容:休日はグランドキャニオンを駆け回るほどのロッククライミング好きの青年アーロンは、自分の冒険する姿を自撮りして悦に入るような自信家。しかしある日、庭のように慣れ親しんだブルー・ジョン・キャニオンで、ふとしたアクシデントから、大きな落石に右腕を挟まれ、谷底で身動きがとれなくなってしまう・・・。

評価★★★☆/70点

何の予備知識もなしに見たので、主人公はこのまま衰弱死しちゃうのだろうか、それとも腕を切り落としちゃうの!?とゾワゾワしながら見てしまったのだけど、絶対的な孤独と迫り来る死の恐怖に閉所恐怖症の自分は心が折れかかってしまった。いや、半分折れた

まさに主人公の陥った極限状況を疑似体験しているようなかんじで、途中でなんでこんなの見てなきゃならないんだとキレかかってしまった・・

なんかホラー映画はどこかアトラクション感覚で見てる部分があるけど、これは全然違うんだよね。もっとリアルで異質で皮膚感覚に突き刺さってくるような。。

ダニー・ボイルの演出もダサかっこ良くてw、鼻につく一歩手前で許せた。

まぁ、アンビリバボーで20分くらいでやるような企画をハラハラドキドキの映画に仕上げちゃう手腕はやっぱりスゴイと思うけどね。ダサってのが先にどうしても付いちゃうのはご愛嬌としようww

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スピード

Speed 出演:キアヌ・リーブス、サンドラ・ブロック、デニス・ホッパー

監督:ヤン・デ・ボン

(1994年・アメリカ・115分)盛岡ピカデリー

内容:爆弾魔がロスの市バスに時速が80キロ以下になると爆発するという爆弾を仕掛け、身代金を要求する。疾走するバスを追い、飛び乗ったロス市警特別隊員ジャックは、重傷を負った運転手の代わりにハンドルを握る女性アニーとともに必死の努力を続けるが・・・。

評価★★★★★/100点

ヤクだ、クスリだ、スピードだ

アドレナリンじゃんじゃん放出、覚醒する脳。

起承転結すべて★5っつ!シンプルこそ命。

スピード、、忘れた頃に摂取したくなるシロモノです。。

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運命を分けたザイル

Un 出演:サイモン・ウェーツ、ブレンダン・マッキー、オーリー・ライアル

監督:ケビン・マクドナルド

(2003年・イギリス・107分)2005/02/17・盛岡フォーラム

評価★★★★/75点

 

内容:1985年、イギリスの若き登山家ジョーとサイモンは、難関とされるシウラ・グランデ峰の登頂に成功する。しかし、下山の際にジョーは滑落。命のかかった極限の状況下、サイモンは2人をつなぐザイルを切る決断を下すのだった・・・。世界中でベストセラーになったノンフィクション文学の映画化。

“想像を絶するとはまさにこのこと。彼らの体験を映像と語りで追体験させようとするが、自分の頭の中の想像力では決して越えられない絶壁が立ちふさがり、ただ唖然として凝視するほかに方法がない・・。”

スキー・スノボを毎シーズンやってる自分にとっては、猛吹雪の中、強風で乗ってたリフトが非常停止してしまった状況を思い浮かべるだけで精一杯。

しかも1シーズンに数回あるかどうかだし、長くてせいぜい30分てとこだからなぁ。

でも、このたった30分が地獄なんだよね。それが7日間、しかも骨折&クレバス転落のおまけ付きときたもんだ。

天上から垂らされた蜘蛛の糸をつたって這い上がるのならまだしも、地獄へと下っていく選択をするというのは今の自分の思考回路では到底考えられない。。

想像を絶するとはまさにこのことだ。

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フロム・ダスク・ティル・ドーン(1996年・アメリカ・111分)WOWOW

 監督:ロバート・ロドリゲス

 出演:ジョージ・クルーニー、クエンティン・タランティーノ、ハーヴェイ・カイテル、ジュリエット・ルイス

 内容:銀行を襲撃したセスとリチャードの兄弟は、メキシコに逃亡。2人は元牧師一家を人質にとり、仲間の待つ酒場へ向かうが、そこはなぜか吸血鬼の巣窟で、夜明けまで凄絶なサバイバルバトルを繰り広げることになる・・・。タランティーノ&ロドリゲスがコンビを組んだアクション・ホラー。

評価★★★/65点

“前半映画楽しむも 後半マンガになりにけり。。”

しかも前半は良い意味で異常かつ異様だったのが、後半のゾンビ漫画は悪い意味で正常かつフツーになっちゃってるという逆転現象に、しばし閉口。

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オープン・ウォーター(2003年・アメリカ・79分)DVD

 監督・脚本:クリス・ケンティス

 出演:ブランチャード・ライアン、ダニエル・トラビス、ソウル・スタイン、エステル・ラウ

 内容:バカンスを利用してカリブ海にやって来たアメリカ人夫婦が、ふとしたことからダイビング中に海に取り残されてしまう。やがて2人の目の前には、数え切れないほどのサメが集まってきて・・・。

評価★★★/60点

“1対1の本音夫婦げんかバトルをする場所としては最適だということだけは分かった。”

映画としてはお腹一杯どころか腹八分にも満たない出来。

スーザンの素っ裸以外は自分の予想の範疇といったかんじで、うちのソファにゆったり身をまかせて見ることができてしまう。

小学生の頃によく読んでた海の図鑑や本に出てくるサメの話にビクビクしていたときの恐怖感の方が確実に残る。

もしかしてこの映画のメイキングドキュメンタリーの方が真に恐くて面白いのでは・・・。

2019年10月 8日 (火)

夢のシネマパラダイス322番シアター:とある家族の物語

淵に立つ

Wc3zncn2xzpezfjtycz7on55l4出演:浅野忠信、筒井真理子、古舘寛治、太賀、三浦貴大

監督・脚本:深田晃司

(2016年・日/仏・119分)WOWOW

内容:町工場を営む鈴岡利雄は、妻でクリスチャンの章江と10歳の娘・蛍と穏やかな家庭を築いていた。そんなある日、利雄の古い友人・八坂が訪ねてくる。そして最近出所したという彼を利雄は住み込みで雇い入れてしまう。最初は当惑していた章江だったが、礼儀正しく、蛍のオルガン練習も手伝ってくれる八坂に好感を抱いていく・・・。

評価★★★★/80点

途中でなぜか「シェーン」を思い出した。

開拓農民の3人家族のもとに草原の彼方からやって来た1人の男。その男シェーンは、息子の少年から憧れの眼差しを受け、妻との間にはほのかな慕情が芽生えるまでになる。それに気づく夫の複雑な感情。そして一家に害をなす悪党どもをやっつけた後に黙って去っていく。

これを深読みすれば、本来は神々に属していながら大地に根を下ろした人間に味方するギリシャ神話における火を盗むプロメテウスのような神話上の文化英雄といわれる存在にも擬することができる。

しかし、今回の八坂(浅野忠信)は災厄の元凶をもたらす神だったという・・。

穏和な仮面をかぶった狂暴な神に理性の仮面をはずされ欲望と罪をむき出しにされたことにより、仮面家族から「本当の家族になった」と錯覚させといての堰を切ったような崩壊劇は凄まじいの一言。

一体次に何が起こってどういう展開になるのか予想ができず、まるでホラーでも見ているかのような気分・・。

もっと感情を露わにするような生々しさがあった方が良かった気もするけど、古舘&筒井の印象的な演技と、画面に現れなくても終始強烈な存在感をにおわせる浅野に圧倒されただけでもういいやってなる。そんな映画だった(笑)

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海よりもまだ深く

6599ea60出演:阿部寛、真木よう子、小林聡美、リリー・フランキー、池松壮亮、橋爪功、樹木希林

監督・脚本:是枝裕和

(2016年・日本・117分)WOWOW

内容:篠田良多は作家として15年前に新人賞を受賞したものの、その後は鳴かず飛ばずで今は探偵事務所勤務。しかもギャンブル好きで、老母・淑子や姉・千奈津に金をせびる日々。当然妻の響子からは愛想を尽かされ、とうの昔に離婚していた。そんな良多にとって唯一の楽しみは月に一度、息子・真悟と会えること。そして巡ってきた面会の日、淑子の家で真悟と過ごしていたが、台風が接近していた・・・。

評価★★★★/80点

誰もが知る役者さんが顔をそろえているから“演じている”と認識できるけど、そうでなければどこかの団地の家族をモニタリングしているような感覚に陥っていたのではなかろうか。それくらい生活感の生々しさが尋常ではない濃さで描写されていて、何が起きるわけではないのに見ていられる不思議な映画。

しかも説明セリフ一切なしの日常会話だけで映画が進行していくにもかかわらず、ひとつひとつのセリフが登場人物に血を通わせるのに機能しているところがスゴイ。

フィクションとしての違和感が全くないし、会話の中に時折り空気穴からプスプスと漏れ出てくるようなシニカルな毒気が散りばめられていて、まさに寝かせて寝かせて味がしみ込んだ苦味と渋味と旨味が一緒くたになったような梅干しみたいな映画だった。

まぁ、妻子に愛想を尽かされた博打好き主人公のダメ男ぶりを延々眺めているだけなんだけどねw

歩く後ろ姿からしてうだつの上がらなさが一目瞭然な阿部寛は絶妙だったし、何といっても樹木希林!すべてがアドリブじゃないのかと思ってしまうほどに自然体で毎度のことながら釘付けになってしまった。

幸せとは何かをあきらめないと手に入らないもの、、かぁ。うーん、深すぎる。。

P.S.宝くじはギャンブルじゃない。夢なんだ!

そこだけは主人公に100%共感しますw

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家族ゲーム(1983年・日本・106分)NHK-BS

 監督・脚本:森田芳光

 出演:松田優作、伊丹十三、由紀さおり、宮川一朗太、辻田順一、戸川純、阿木燿子

 内容:大都市近郊の団地に住む4人家族の沼田家。高校受験を控えた中3の茂之は、出来の良い兄とは対照的に成績もいまひとつで口数の少ない問題児だった。持て余した父親は、家庭教師の吉本を雇うが、彼は三流大学の7年生で植物図鑑を持ち歩く風変わりな男だった。しかし、成績が上がれば特別ボーナスを払うと約束された吉本は、アメとムチを使い分けながら茂之を教育していく・・・。

評価★★★☆/70点

公開から30年経った今見ても斬新極まりないつくりになっていると思うけど、ネット社会、格差社会、モンスターペアレントetc..30年前にはなかった様々な社会問題が折り重なっている現代では、この映画で描かれた家族像はもはや真新しくもなんともないのかもしれない。

今はもっとパーソナル化が進んでいるので核家族という形態すら危うくなっているし、この映画を最も象徴するシーンであるカウンター方式で横一列に座る食卓風景だって、他方では専業主婦の母親がちゃんと手作りで食事の支度して皆で一緒に食べてるじゃんともいえるわけで。

ただ、冒頭で述べたように、家族内のディスコミュニケーションと上っ面だけの事なかれ主義をデフォルメして描いた作劇は白眉。

例えば、食事の席で家庭教師(松田優作)ってイケメンだよねっていう話の流れから彼の髪型を見た伊丹十三が「その頭って手入れするの?」と訊くと、松田優作が手ぐしで髪を整え始め、それを見た由紀さおりが「髪の毛いじらないで下さい。フケ落ちますよ」と怒ると、松田優作が「僕は家庭教師ですから」と答えるような脈絡のない会話や、伊丹十三が目玉焼きの黄身だけをチューチュー吸うのが好きなことを妻の由紀さおりが今まで知らなかったりと、繋がっているようで繋がっていない一方通行の距離感が奇妙な気持ち悪さを生んでいて思わず見入ってしまう。

あと、後で気付いたんだけど、この映画って音楽がないんだね。なんか食べる音とかヘリの音とかずっと騒々しい印象があったけど、そういう日常音がシュールな生々しさをより強調する効果を持っていたのかも。

ちなみに自分が一番笑ったセリフのやり取りは、伊丹十三に「君は酒は好きなんだな」と言われたのに対し、松田優作が「好きじゃありません。酔っ払いませんから」と答えるところw

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普通の人々

Dsop2出演:ドナルド・サザーランド、ティモシー・ハットン、メアリー・タイラー・ムーア

監督:ロバート・レッドフォード

(1980年・アメリカ・124分)NHK-BS

評価★★★★/80点

 

内容:シカゴ郊外に住む典型的な中流家庭のジャレット家では、優秀なスポーツ選手で秀才だった長男のバックを事故で失ったことを境に家族関係が冷え切っていく。長男を溺愛していた妻べスはふさぎ込んで、次男のコンラッドにつらく当たるようになり、一緒のボートに乗っていて自分だけ助かったコンラッドは兄の死に責任を感じ、母のヒステリーをまともに受け止め精神が不安定になり、自殺未遂まで引き起こしてしまう。弁護士の父親カルビンは家族の絆を取り戻すという空しい夢にすがるのだが・・・。アカデミー賞では作品・監督など4部門で受賞。

“不器用かつ無関心で冷ややかな母親べス。しかし、それ以上に不器用かつ無関心で冷ややかな監督レッドフォード。”

まずこの映画は、お堅く平凡なプロットに拠っているというよりは、役者たちの醸し出す雰囲気や情感を拠りどころとしている映画だといえると思う。

しかし、そういう役者陣の奮闘だけで登場人物を内面までしっかり描けるほど映画というものは甘くはない。そのことをいみじくも実証している映画でもある。

そう、この映画、登場人物がしっかり描かれているようにみえて実は底が浅い。

しかも問題がひとつ。映画を見ていくと感じること。

それは監督レッドフォードの立ち位置だ。

いったいどこまでクールなんだコイツはというくらいレッドフォード自身が映画の中に立ち入ってこない。もちろん監督としてという意味だが、モニターの後ろからただジーーッと見つめているだけ。まるで自分は何も関係ないという第3者のような視線で。

レッドフォードの中でおそらく意識的に引いたと思われる映画の世界との間の一線レッドラインを、彼は決して踏み越えてはいかない。もし越えてしまった時、それは彼にとってこの映画への侵害以外の何ものでもなくなるのだろう。

そしてこの彼の突き放したような立ち位置が先ほど述べた弊害を招いてしまっているともいえるのだが、しかしその立ち位置は決して弱気な逃げの態度から起因しているのではない。明らかに意図してあえてそういう立ち位置を選んだのだと思う。オープニングの入り方なんかはまさにその意思の表れだろうし。

マイナス要素もあるが、それ以上にプラス要素が大きな意味をもったということなのだろう。

あるファミリーの空しい崩壊を淡々とかつどこまでも第3者的な目線で、テンポを変えず(=ドラマ性を押し殺し)に描いていくこと。それが普遍的な時代の空気感、普通の人々のデリケートな問題をつぶさに見つめていくことにつながり、リアルで確実な作品に仕上がったのだと思う。

なかなか見ている側の主観が立ち入ることを許さないことを差し引いても非常に見応えのある映画であることには違いない。

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幸福な食卓(2006年・松竹・108分)NHK-BS

 監督:小松隆志

 出演:北乃きい、勝地涼、平岡祐太、さくら、羽場裕一、石田ゆり子

 内容:中学3年生の佐和子は4人家族だが、3年前の父親の自殺未遂をきっかけに家族の歯車は狂い始めていた。母親は近所に別居、秀才の兄は大学進学を拒否して農業に精を出す日々を送っていた。それでも家族は朝の食卓には集まり、家族としての体裁を保っていた。が、そんなある日、父親が朝食の席で突然、「今日で父さんを辞めようと思う」と宣言する・・・。

評価★★★/65点

“ミスチルの「くるみ」がすべて持ってっちゃったような・・・。”

主婦という肩書き、お父さんという役割、そういう当たり前の立場をいっさいがっさい捨て去って見えてくるものとは・・・?

いまいち分からなかった(笑)。

浪人生になればご飯に味噌汁かけてぶっ込むことができるし、サバは塩焼きと決まってるしってことは分かったけど・・・。

でも、唯一よぉく分かったのは、気付かないところで誰かにいろいろ守られてるんだってこと。そういう温かいぬくもりはすごくよく伝わってくる映画ではあったかな。

勉学くんも牛乳瓶の底のようなメガネをかけてる奴かと思いきや、純粋な好青年でよかったし。

でも、あの消え去り方はないよなぁ。。

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ほえる犬は噛まない(2000年・韓国・110分)NHK-BS

 監督・脚本:ポン・ジュノ

 出演:ぺ・ドゥナ、イ・ソンジェ、コ・スヒ、キム・ホジョン、キム・ジング

 内容:中流家庭の住む閑静な団地。教授を目指しているものの、なかなか昇進できないでいる大学非常勤講師のユンジュは、彼を養っている身重の妻に顎で使われる肩身の狭い日々を送っていた。しかも、飼うことを禁止されているはずの犬の鳴き声が鳴り止まず、彼の苛立ちは募るばかり・・。そしてある時、犬を見つけた彼はマンションの地下室に監禁するのだが・・・。

評価★★★☆/70点

ポン・ジュノ監督の作品は「殺人の追憶」(2003)、「グエムル漢江の怪物」(2006)ときて、今回の監督デビュー作は初めて見たんだけど、これ見て分かった!

ポン・ジュノは韓国の山下敦弘なのだと。。

なんか、作風が似てるよねっていう、ただそれだけなんだけどw。奇しくも「リンダリンダリンダ」(2005)でぺ・ドゥナを起用してるし、通じるところがあるのかもなんて。

ダラダラとした中の躍動、退屈な中の緊張、殺伐な中のユーモア、写実の中の漫画。

これら日常の中の非日常を切り取った絶妙なバランス加減は秀逸で、まさにナンセンスなリアリズムとでもいうべき境地に達しているのは見事というほかない。

決してパンチのきいた味ではないのだけれど、まるで韓国の甘辛い唐辛子味噌のごとくジワジワと効いてくる作品というのは、今の刺激を求めすぎる映画界においては貴重ではなかろうか。

ポン・ジュノ、これからも要注目の監督です。

2019年9月29日 (日)

夢のシネマパラダイス252番シアター:冬山に行く人の気が知れない・・

劔岳 点の記

S1292802861 出演:浅野忠信、香川照之、松田龍平、仲村トオル、宮崎あおい、笹野高史、夏八木勲、役所広司

監督:木村大作

(2008年・東映・139分)WOWOW

内容:明治39年、国防のため日本地図の完成を急ぐ陸軍参謀本部は、唯一の空白地である前人未到の劔岳の測量を測量官の柴崎芳太郎(浅野忠信)に命じる。欧州の最新機材を持ち込み初登頂を目指す日本山岳会というライバルが現れる中、柴崎ら測量隊は、案内人・宇治長次郎(香川照之)のもと劔岳山頂へ向かう・・・。

評価★★★☆/70点

登頂するのがこれほど難しい山が日本にもあったなんて東北人の自分は全く知るよしもなく、、剣岳自体知らなかったもんなぁ。日本にもヤバイ山ってあるんだねww

というのはさておき、肝心の映画の方だけど、正直なところ、映画のメイキングドキュメンタリー見てた方が数倍面白いのではなかろうかと思ってしまった、かも。。

いや、素晴らしい映画であることに何ら異論があるわけではなく、「天の視点から人間のやっていることを俯瞰の目で見て描きたい」と語った黒澤明の言葉に仮託してみるならば、今回の映画は剣岳の視点から人間のやっていることを俯瞰の目で見て描いた映画であるといえ、峻険な山岳風景の中にポツポツと黒い点描のように埋没して見える人間たちを捉えた映像はまさに圧巻きわまりないものがある。

また、登山というと己を見つめ己を知る孤高の闘いというイメージがあるけど、この映画では尊重と献身の心を持ち合わせた人とのつながりや仲間たちの絆というものを描き出しており、壮大な力強さの中にも控えめな品の良さがうかがい知れる良作になっているのはたしかだ。

近年稀にみる真摯で実直なつくりの映画といえよう。

しかし、それでもあえていうならば、「剣岳の視点」の中に人間ドラマが埋没している感も拭えず、男ばかりの映画にしては男臭さやその息遣いがあまり伝わって来ないのもちょっと気持ち悪いというか、人間ドラマがスマートすぎて緊迫感に欠けるきらいはあったかなと。

また、一面の雲海に沈む夕陽をバックにしたシーンなど、一体この景色を撮るためにどのくらい撮影スタッフは待ったんだろうとか凄く気になっちゃって(笑)、それこそ監督の怒号が常に聞こえてきそうな映画のメイキングを見た方がパッションや緊迫感を断然感じられるのではないかと思っちゃったww

しかしまぁ、作り手の映画に対する信念と、私利私欲にとらわれない測量官や案内人、登山家たちの信念がオーバーラップし、強い想いとなって伝わってくるという点において、この映画を自分の心に留め置いておきたいとは思う。

それにしても、紅一点の宮崎あおいタンみたいな嫁さん欲しいなぁ~~

夢のまた夢・・・。

(追記)

後日、WOWOWで「劔岳撮影の記、標高3000メートル、激闘の873日」というメイキングドキュメンタリーをやってて興味深く見たけど、「撮影じゃなくて苦行だと思わなきゃやってられない」という監督の言葉通りのあまりにもタフすぎる映画撮影に絶句しながら見てしまった。

登山して天気悪くて下山して翌日また登って、しかも撮影機材を背負って、、これを何週間も山にこもってやるっつーんだから、さらには冬山にまで・・。まさに苦行だわ。

ただ、、山でプカプカ煙草吸うのだけはいかがなものかと思うぞ。ぶっちゃけ山で煙草吸う人って初めて見たもん。

剣岳を見て涙する野郎がそこで平気で煙草吸うって、、恐ろしいくらいに敬意に欠けてるような気がするんだけどw

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エヴェレスト 神々の山嶺

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出演:岡田准一、阿部寛、尾野真千子、ピエール瀧、甲本雅裕、風間俊介、佐々木蔵之介

監督:平山秀幸

(2016年・日本・122分)WOWOW

内容:1993年、ネパールの首都カトマンドゥ。日本のエヴェレスト遠征隊が2人の犠牲者を出し登頂を断念した。随行していた山岳カメラマンの深町(岡田准一)は、失意の中でふと立ち寄った骨董屋で古いカメラを見つける。それが1924年に初登頂に挑んで消息を絶ったイギリス人登山家ジョージ・マロリーのものかもしれないと感じた深町だったが、突如現れた大男がこれは自分が盗まれたものだと言って持ち去ってしまう。深町は、その男が数年前に消息を絶った天才クライマーの羽生(阿部寛)であることに気づくが・・・。

評価★★★/65点

夢枕獏の原作は未読のせいか、思ったほど悪くはなかったw

特に「山に登るのは俺がここにいるからだ」と豪語し、山に取り憑かれた鬼気迫る執念を見せる羽生を演じた阿部寛の存在感は強烈だったし、生への信念を見せる岡田准一も良かった。

エヴェレストのド迫力映像や登はんシーンも力の入れ具合がしっかり伝わってきたし、ヴィジュアルエフェクトも織り交ぜていたのだろうけど、邦画でここまでのスケール感を描けたのは素直に拍手。

ジョージ・マロリーのカメラをマクガフィンとするドラマの展開に角川映画特有のチープさはかなり残るものの、全体的に見応えのある作品になっていたとは思う。

ただ、登山好きじゃないと分からないような心理描写をスルーしちゃってて、素人にはえっ?と感じるところも多々あったのと、羽生の恋人(尾野真千子)の中途半端な扱いなど掘り下げが足りなかったのはマイナス。。

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アイガー北壁(2008年・ドイツ/オーストリア/スイス・127分)

 監督:フィリップ・シュテルツェル

 出演:ベンノ・フユルマン、ヨハンナ・ヴォカレク、フロリアン・ルーカス、ウルリッヒ・トゥクール、ジーモン・シュヴァルツ

 内容:ベルリンオリンピックを目前に控えた1936年夏。ナチス政府は、登頂不可能といわれたアイガー北壁を登頂したドイツ人に金メダルを与えると発表。アイガーの頂を目指し多くの登山家が集結する中、若きドイツ人登山家トニーとアンディもやって来る。麓の高級ホテルには、ワインを片手にマスコミや野次馬が陣取り、その中には2人の幼なじみで駆け出し記者のルイーゼの姿もあった。そして2人は登攀を開始するが・・・。

評価★★★/65点

栄光か悲劇しか記事にならないというセリフがあったけど、それはそのまま映画に当てはめることもできるだろう。

とはいえ、まさか悲劇で終わるとは思いもよらず、絶望的な展開にしばし呆気に取られてしまった。

見終わっても、なぜに初登頂の栄光ではなくこの悲劇を映画化したのかイマイチ分かりかねたけど、ちょっとノリきれなかったかなぁ・・。

リアルな山岳シーンを凡庸な人間ドラマが引っ張っちゃってるというか、盛り上がりに欠けるんだよね。特にヒロインの駆け出し新聞記者の扱いがおざなりで、変に女っ気を入れない方が良かったのではないかなとさえ思ってしまった。

あとは、うーん、登頂の様子をネット中継することで有名になった栗城史多のドキュメンタリーと見比べちゃってる部分が確実にあって。。彼の挑戦を追ったドキュメンタリーを何本か見てるけど、その臨場感たるや圧倒的で、言葉が出ないほどスゴイ。本映画の中でアタックを下界から眺めている記者が、真実のドラマは現場にしかなく我々はそれを永遠に知り得ないと言ってたのが印象的だったけど、それを見れて体感できてしまうのだから、ただただ息を飲むばかり。なので、それと比べちゃうと・・。

ヒロインの目の前でぶら下がったまま恋人が凍死してしまう凄絶さはたしかにスゴイのだけども、やっぱ弛緩してしまう下界の人間ドラマがはっきりいって邪魔なんだよね・・。

うーん、、ドイツ映画、肌に合わないかもw

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ミッドナイト・イーグル(2007年・松竹・131分)WOWOW

 監督:成島出

 出演:大沢たかお、竹内結子、玉木宏、吉田栄作、袴田吉彦、石黒賢、藤竜也

 内容:かつて戦場カメラマンとして世界を駆け巡っていた西崎は、戦場でのトラウマから一線を退き、今では山岳カメラマンとして星空を撮り続ける日々を送っていた。そんな彼はある日、山中で赤い閃光を目撃する。やがて、米軍の戦略爆撃機ミッドナイトイーグルが北アルプス上空で消息を絶ったとの極秘情報が入り、政府は自衛隊を現場へ向かわせる。一方、西崎も、後輩の新聞記者・落合とともに厳戒の現場へ向かうが・・・。

評価★★☆/50点

猛烈な吹雪が吹き荒れる真冬の北アルプスを舞台にした視界のきかない山岳アクション、東京で事件の真相を追う週刊誌記者の私怨の入り混じったサスペンス、米軍ステルス機が墜落したにもかかわらず、全く蚊帳の外の米軍を差し置いて指令を下しつづけるリアリティのない国家安全保障会議室。

この3つが並行して描かれるのだが、しかしてこの欠点ありまくりの3つが足を引っ張り合って全くもって弛緩しまくった映画になってしまっている。

ラストの快晴の北アルプスの空撮シーンを見せたかったのはミエミエだけど、そこに至るまでの過程がいろんな意味で視界ゼロじゃあ全く体を成さない。

邦画版クリフ・ハンガーの道はまだまだ遠い、、らしい。。

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バーティカル・リミット

Image2171 出演:クリス・オドネル、ビル・パクストン、ロビン・タニー、スコット・グレン

監督:マーティン・キャンベル

(2000年・アメリカ・124分)MOVIX仙台

評価★★★/65点

 

内容:世界最高峰のひとつ“K2”を目指すアタック隊が遭難。女性クライマー、アニーら3人が取り残されてしまう。そしてアニーの兄ピーターら6人のレスキュー隊が氷壁爆破用のニトロを背負って救出に向う。肺気腫の危険が迫り、残された時間は22時間。想像を絶する決死の救出作戦が始まった。

“見てるこっちまで息苦しくなってくる。。”

肺水腫になってるわけじゃないのになぜかこっちまで呼吸が息苦しくなってくる。

自爆と窒息の恐怖感、切迫感は並々ならぬものがあり、クレバスの密閉空間も心理的に良くないw

そういう息苦しさはよく出来てるのだけど、、うーんなんだろう、余計な要素が多すぎるんだよねぇ。神聖なK2もそりゃ吹き荒れるわな。

特に人間関係が変に入り乱れているというのは余計だと思う。一応山岳レスキューアクションという触れ込みなのは分かるけど、ボーンのような憎まれ役は必要なのだろうか。。

ホントに憎むべきは自然の偉大なまでの力であって、それに比べたら人間関係のしがらみなんて小っぽけなもんでしょ。そんな小っぽけな要素がこの映画では大々的に描かれ吹き荒れるわけで、なんかねぇ。。ボーンへの復讐を見事に完遂してしまうウィックのラストや、ボーンがトムを殺す場面だとかホント安っぽく見えてしまうわけ。

こんなん描いてるヒマあったらもっとアニーのキャラを掘り下げてもらいたかった。どうもアニーの気持ちとか掴めなかったし、ボーンに1人が死ぬか3人全員死ぬかと言われて苦しむトムに、結局薬を打たないアニーの行動。明らかにそれまでの彼女の言動からすると矛盾してるわけでしょあれって。なんかアニーってよく分からない女だったんだよね。。

だからこの映画はアニーとピーターに的を絞ってやってもらいたかったなと思う。

それができないというのは、はっきりいえば作り手に自信がなかったということでしょ。いろいろ飾りつけてそれらしく見せるというやり方はあまり好きじゃない。

しかもK2という荘厳さに何を飾り付ける必要があるのか、もう少しよく考えてもらいたい。

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ホワイトアウト(2000年・東宝・129分)日劇東宝

 監督:若松節朗

 出演:織田裕二、松嶋菜々子、佐藤浩市、石黒賢

 内容:辺り一面、雪に覆われた12月。日本最大の貯水量を誇る新潟県奥遠和ダムの作業員・富樫は、遭難者の救出の途中、猛烈な吹雪による“ホワイトアウト”に遭遇し、共に救出に向かっていた同僚を亡くしてしまう。それから2ヵ月後、富樫は、ダムの爆破をネタに政府に50億円の要求を突きつけるテロリストグループによるダムジャック事件に巻き込まれてしまう・・・。

評価★★☆/50点

“これってあれでしょ、吹雪はハリウッド並みだってことをやりたかったんでしょ?”

まぁ頑張ったとは思うんだけど、いかんせん雪と吹雪にアクションを含めた映画そのものがうまくカモフラージュされてるなというかんじが強いんだよね。。なんかまん丸太っている羊の毛を剃ったら、めちゃか細い羊だったみたいな。

アクションなんかあまりどうってことない出来だったし。

だからってインパクト出すために平田満や河原崎建三をあっけなく殺しちゃう使い方っていうのもなんだかなぁ。しまいには松嶋菜々子の足を容赦なく撃っちゃうてのもなんだかなぁ。あげくのはてに、その松嶋菜々子を酷寒の中に置き去りにして行っちゃう織田裕二もなんだかなぁ。

それより何より、ダムの放流で流された織田裕二の服が速攻で乾いちゃうのもなんだかなぁ。

粗を探せばキリがないけど、これだけは言いたい。

寒い中ホントご苦労さん(笑)。

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八甲田山(1977年・東宝・169分)DVD

 監督:森谷司郎

 出演:高倉健、北大路欣也、栗原小巻、三國連太郎、秋吉久美子、緒形拳

 内容:明治35年、日露戦争に備えた耐寒訓練と国威発揚のために、真冬の八甲田山越えに挑むことになった徳島大尉率いる少数精鋭の弘前第31連隊27名は、綿密な計画のもとに十和田湖を迂回して八甲田を踏破する11日間の日程で弘前を出発。一方、3日遅れで青森を発った神田大尉率いる青森第5連隊は、大隊長の指示により210名という大編成になったばかりか、案内人もいない状態だった。かくして自然を力でねじ伏せようとした神田隊は寒波の中で立ち往生してしまう・・・。

評価★★★☆/70点

“ラストでガックリ・・・”

結局、死の行軍を生き残った連中も日露戦争で全員戦死かよっ!

今まで3時間ぶっ通しで見続けてきたのはいったい何だったんだ・・・。ものスゴッ虚しくなったんですけど。。

2019年9月 1日 (日)

夢のシネマパラダイス164番シアター:パニック・ルーム

ルーム

O0480091513629160745 出演:ブリー・ラーソン、ジェイコブ・トレンブレイ、ジョーン・アレン、ショーン・ブリジャース、ウィリアム・H・メイシー

監督・レニー・アブラハムソン

(2015年・アイルランド/カナダ・118分)WOWOW

内容:5歳の誕生日を迎えたジャックは、天窓から空しか見えない狭い部屋に母親ジョイと2人で暮らしていた。外には何もないと教えられ、部屋の中が世界の全てだと信じていたジャック。しかしその日、ジョイから自分たちはある男に拉致監禁された身であることを告げられる。そして脱出するために、ジョイは綿密な計画を立てて行動を開始するのだが・・・。

 

評価★★★★/80点

アカデミー主演女優賞目当てで見たけど、本当の見所は子役にあった!というオチ。

高校生の時に拉致監禁レイプされ、犯人との間に子供までもうけてしまい、7年経過したというあまりにも衝撃的な題材ながら、生まれた時からルームの中の世界しか知らない子供の無垢な空想視点を主軸に据えたことでルーム脱出前の嫌悪感すれすれのシリアスな要素を中和しているのがこの映画のキモ。

さらに、映画のメインとなるルームからの解放後も、好奇の目から気を病んでいく母親に対し、あっという間に新たな環境に適応していく子供のまっさらな感性が優しく包み込み母親をつなぎ止める。

子供の力がこの映画の何よりの生命線だったのだとすれば、子役の演技は文句なしの120点満点!

どのようにこんな難しい役柄を子供ながらに咀嚼して演技に持ち込んだのか考えただけで凄いなぁと感心しちゃうけど、お願いだからマコーレー・カルキンとかブラッド・レンフロのような悲劇的な道は歩まないでねw

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パニック・ルーム

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出演:ジョディ・フォスター、フォレスト・ウィテカー、ドワイト・ヨーカム、ジャレッド・レト

監督:デビッド・フィンチャー

(2002年・アメリカ・112分)MOVIX仙台

評価★★★/65点

 

内容:マンハッタンの高級住宅地。離婚したメグは11歳の娘サラを連れて、4階建てのエレベーター付き、かつ頑丈な“パニック・ルーム”付きの一軒家に引っ越した。しかし、その夜、何者かが家に侵入し・・・。

“自分だったら失禁しちゃうけどね・・・”

母娘たった2人で4階建てに住んじゃう神経も一般庶民の自分にとっては尋常ではないけど、それはともかくとしてあのメンツが実際ウチに入り込んできたら失禁しちゃうと思うマジでww冗談じゃなく、ウン。。

なのに、なにを呑気にトイレでオシッコしてるんだよジョディおばさんったら。眠いのは分かるし、水洗の音が犯人たちをビクリとさせたのも分かるけどさ。

なんだかユルいんだよね全体的に。

感覚的なものもあるけど、具体的にはパニック・ルームに備え付けられているモニターがご親切にもやけに多いことと、鍵穴まで通り抜けてしまうまるでネズミのようにチョロチョロと動き回るように見せかけて実は計算されつくした精密機械じかけのカメラワークが悪い意味で一役買っちゃってるかなと。

サスペンス・スリラーなはずなのに、安心・安全・安定の3大保険に加入しちゃってるんだよね・・。

一生懸命外で大雨降らせて不安感煽っても、この3大保険の効力の前にはなすすべなく、緊迫緊張などどこ吹く風。

緊張感がないから、パニック・ルームの鉄扉に手をはさんじゃうんだよ覆面レスラー、、ちゃう覆面ドロボーさんよ(笑)。

フォレスト・ウィテカー演じる犯人が、オレがこの頑丈な部屋を造ったんだと何度も豪語してらしたが、オレがこの一見何の穴もない流麗かつ完璧な映画を作ったんだと雄弁に語るデビッド・フィンチャーの神の手が垣間見えて余計に“つくりもの”世界という感が否めなくて、母娘の命をかけた攻防戦にイチイチ入り込むことができず、フツーにボーッと見てしまった。TV向きだねこれは。。

2018年10月22日 (月)

夢のシネマパラダイス312番シアター:血ィ吸うたろか~・・

東京喰種 トーキョーグール

170691_04出演:窪田正孝、清水富美加、鈴木伸之、桜田ひより、佐々木希、村井国夫、蒼井優、大泉洋

監督:萩原健太郎

(2017年・松竹・119分)WOWOW

内容:人の姿をしながらも人肉を喰らう怪人・喰種(グール)が密かに人間社会の中で暮らしている東京。ある日、内気な大学生カネキは、喰種のリゼに襲われ重傷を負うも、直後に命を落としたリゼの臓器を移植されたことで半喰種になってしまう。人肉以外受け付けなくなり苦悩する彼は、やがて喰種が集まる喫茶店あんていくで働き始める。喰種である店長の芳村やアルバイトの女子高生トーカと交流を深めていく中、喰種の駆逐を目指す人間側の組織CCGの捜査官・亜門と真戸が現われ、戦いが激化していく・・・。

評価★★★/65点

原作マンガ推しのファンとしてはキャスト、映像ともに文句なしのクオリティで最低限のラインは難なくクリア。

しかし、大団円でバトルを繰り広げるカネキ(窪田正孝)と亜門(鈴木伸之)がそれぞれの立場で叫ぶ「この世界は間違っている!」というセリフがいまいちピンと響いてこないことに集約されるように、原作にほぼ忠実なアウトラインを敷きながら、なんでこんなに薄っぺらいんだろうw

と考えると、人間を捕食するグールに立ち向かう人間側ではなく、主人公がグール側に立つ視点で描くという、例えば「プレデター」でプレデター側から描くような異色作だけに、それを実写化するにはただでさえ説得力をもたせるのにハードルが上がっているはず。にもかかわらず、漫画をただなぞっただけの掘り下げのない描写力で、説明不足感は否めず・・。一見さんは赫子とクインケの違いなんて分かったんだろうかw

また、人間側がカネキの親友ヒデを除けばCCG捜査官の真戸(大泉洋)と亜門くらいしかいないのも問題。

特に前面に出る真戸が嗜虐性のある冷酷無比なキャラクターのため、人間側=悪の構図に誘導する演出がちょっと安易だったかなと。

その点でいえば、まともな捜査官の篠原や黒磐、またニシキがグールであることを知りながら付き合っている恋人の西野貴未あたりを出してもよかった気がする。

まぁ、ヴァンパイア映画「トワイライト」に出てくるベジタリアンな吸血鬼みたいな優しい設定がない分、感情移入させるのは難しかったとは思うけど、いやホント役者陣の頑張りにめちゃくちゃ救われた映画だったと思う。

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リンカーン/秘密の書

Poster出演:ベンジャミン・ウォーカー、ドミニク・クーパー、アンソニー・マッキー、メアリー・エリザベス・ウィンステッド、ルーファス・シーウェル

監督:ティムール・ベクマンベトフ

(2012年・アメリカ・105分)WOWOW

内容:第16代大統領エイブラハム・リンカーン。彼には知られざるもう一つ別の顔があった・・・。子供の頃に最愛の母をヴァンパイアに殺され、復讐を胸に誓っていたリンカーン。その後、青年となった彼はヴァンパイア・ハンターとしての修行を重ねていく。そしてヴァンパイアが奴隷制度を食糧供給源にしていることを知った彼は、政治家として奴隷解放を訴える一方、夜になると斧を手にしてヴァンパイアたちと戦うのだった・・・。

評価★★☆/50点

かの国はよほどヴァンパイアがお好きなのか、映画からTVドラマまで雨後のタケノコ状態だけど、ついに歴史上の偉人にまで手を伸ばしてしまった。しかもビミョーにつまらない

“剣はペンより強し”な国アメリカを揶揄したい気にもさせる展開だったけど、あんまりそういうことも意味がないレベルの映画だったなw

まぁ、リンカーンがヴァンパイアハンターというそもそもの設定からして興味を引かれないんだけどね・・・。

例えば、伊藤博文が怨霊退治するという映画が作られたら平将門とか菅原道真、崇徳上皇といった歴史上の大魔縁を登場させることもできるけど、リンカーンなんてアメリカ建国してから100年も経ってないうちに出てきたヒヨッコなわけで、アメリカの歴史の浅さがまんま映画の浅さに繋がっているかんじがした。

また、昼は高潔な大統領、夜は斧を振りかざすハンターというギャップも物語の肝になっておらず、ただ単にCG満載のB級アクションを撮りたいがための映画としかいいようがない。

まぁ、この監督のセンスはアクションにしか見出せないから仕方ないけど、はっきりいってリンカーンでやる必要性はなかったなww

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ブレイド

Blade01 出演:ウェズリー・スナイプス、スティーブン・ドーフ、クリス・クリストファーソン

監督:スティーブン・ノリントン

(1998年・アメリカ・120分)仙台フォーラム

内容:ヴァンパイアと人間との間に生まれたハーフのブレイドは、人間を脅かすヴァンパイアを抹殺するために闘うヴァンパイアハンターだった。彼は、母親を死に追いやった宿敵のヴァンパイア、フロストの世界征服を阻止するために立ち上がり、フロストのアジトである暗黒院に潜入する。

評価★★★/65点

情け容赦のない映像テクとすとんとツボにはまるギャグには、こ奴なかなかのセンスだなとホレボレしてしまうが、情け容赦のないプロットの丸投げを見せつけられるにつけ、こ奴は単なるおバカさんだなとちょっと残念に思ってしまうのだった。

まぁ、愛すべきおバカさんには違いないんだけどね。

このままおバカ街道を一路邁進していくのか、それとも・・・。

このての監督は一皮むけると大化けする可能性を秘めてるからね。その点では楽しみな監督なのだけど、でもやっぱ限りなくおバカ街道一直線タイプなんだろうなぁ。。

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ブレイド2(2002年・アメリカ・117分)MOVIX仙台

 監督:ギレルモ・デル・トロ

 出演:ウェズリー・スナイプス、クリス・クリストファーソン、レオノア・ヴァレラ、ロン・パールマン、ノーマン・リーダス

 内容:ブレイドは、父親代わりのウィスラーを救出し、吸血鬼達を追い詰める。そんなブレイドのもとにヴァンパイア族がやって来て、凶悪な吸血鬼リーパーズを倒すことを持ちかけてくるが・・・。

評価★★★★/75点

“孤高も度を超すと異様に映る。。”

仲間、友情、絆、信頼といった横のつながりなんかクソ喰らえだとばかりに、バッサバッサと斬り捨てていくという文字通りブレイドの孤高さがクローズアップされていく展開は、まぁ見ていて飽きはしない。

しかし見終わった後、まるでヴァンパイアが一瞬で塵になって消滅するかのごとくフツーに何も残らないのはある意味スゴイ。。

人間を餌食にする当のヴァンパイアが餌食にされてしまうという今回の設定は面白かったけど、ていうか相棒のスカッドの裏切りって必要だったかぁ?

あと、ブラッド・パック軍団のニッサ以外の誰かと親交を深めるくらいした方が味わいが出て良かったんじゃないかいブレイドさん・・。

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ブレイド3(2004年・アメリカ・114分)WOWOW

 監督:デビッド・S・ゴイヤー

 出演:ウェズリー・スナイプス、クリス・クリストファーソン、ドミニク・パーセル、ジェシカ・ビール

 内容:ブレイドは、人間のヴァンパイアハンター集団“ナイトウォーカー”から、ヴァンパイアの始祖ドレイク(=ドラキュラ)が4千年の眠りから目覚めたという衝撃の事実を聞かされる。ブレイドは最強の敵ドラキュラとの戦いに挑むが・・・。

評価★★★/60点

“ブレイドの角刈りよりも何よりもハンニバル・キングの不死身ぶりの方に度肝を抜かれる”

どうやっても死なないよねあの男(笑)。

しかし、この映画がイマイチなのは、やはり吸血鬼の始祖ドラキュラ・ドレイクの容姿にあることは否めず、、4000年の眠りから目を覚ました一族の始祖とは到底見えない。

しかも発見されたのがイラクだろ?イラクで何であんなゴツイ野郎が眠ってんだよ(笑)。

4000年未来からやって来たというなら分からんでもないが。。

まぁ紅一点ジェシカ・ビールのLOTRのレゴラスばりの弓使いに救われたかんじかな。

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アンダーワールド(2003年・アメリカ・121分)DVD

 監督:レン・ワイズマン

 出演:ケイト・ベッキンセール、スコット・スピードマン、シェーン・ブローリー、マイケル・シーン

 内容:ヴァンパイア族と狼男族(ライカン)の戦いが続く世界。ライカンがある目的のために人間の医師マイケルを執拗に追っていることを知ったヴァンパイア族の女戦士セリーンは、調査を開始するがなぜかヴァンパイア族の頭首クレイヴンに妨害される。しかしこのことが両種族を壮絶な決戦へと突入させていく・・・。

評価★★★/60点

吸血鬼と狼男の何十世紀にもわたる歴史的背景を盛り込み、壮大な世界観をなんとか醸し出そうとはしているが、やってることはただのヤクザの抗争・・。

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ツインズ・エフェクト(2003年・香港・107分)WOWOW

 監督:ダンテ・ラム

 出演:ジリアン・チョン、シャーリーン・チョイ、イーキン・チェン、カレン・モク、ジャッキー・チェン

 内容:香港の人気アイドルユニット“Twins”をフィーチャーしたアクション映画。バンパイアハンターのリーヴは、最大の敵デコテス公爵との対決で恋人でもあったパートナーを殺されてしまう。世界征服をもくろむデコテスがバンパイア界の聖典を我が物にしようと暗躍する中、リーヴは見習いハンターのジプシーを新パートナーに迎える。一方リーヴの妹ヘレンは兄の宿敵であるバンパイアの王子と恋に落ちてしまい・・・。

評価★★★☆/70点

“ジャッキーのNGシーンで締めるような映画だったかというと大いに疑問だが、楽しく見れればそれで良し。”

ヘレンはフジテレビのアヤパンに似てると思った。

と、それにしても映画序盤に出てくるヘレンとジプシーのクマのぬいぐるみ大争奪戦につづく物干し竿バトルは、アイドルユニットであるツインズを前面に出した名シーンだったと思う。

なんといっても彼女たちの本気モードアクションと彼女たちの可愛さとのアンバランスが非常にイイし、爽快感もぐんとアップ。

だてにドニー・イェンをアクション監督に据えてるわけじゃないんだぜというかんじ。

香港映画特有の甘さはあるものの、総じて楽しく見られる一品でありました。おセンチな吸血鬼てのも面白いね。

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ヴァン・ヘルシング(2004年・アメリカ・132分)MOVIX仙台

 監督・脚本:スティーブン・ソマーズ

 出演:ヒュー・ジャックマン、ケイト・ベッキンセール、リチャード・ロクスバーグ

 内容:19世紀ヨーロッパ。伝説のモンスターハンター、ヴァン・ヘルシングはバチカンの密命を受け、修道僧カールとともにトランシルバニアへ向かう。目的は、邪悪なパワーで世界征服を企むドラキュラ伯爵を抹殺すること。やがて彼らは、代々ドラキュラと闘いつづけてきたヴァレリアス一族の末裔、アナ王女と出会うが・・・。

評価★★★/60点

マンネリ街道 みんなで歩けば 恐くないってか。しかも歩いてるのはモンスター軍団。。

まぁ、オールスター感謝祭を見てとにかく楽しむしかないっていうかんじかな・・。

2018年9月 7日 (金)

夢のシネマパラダイス159番シアター:エイリアンシリーズ

エイリアン:コヴェナント

171293_02出演:マイケル・ファスベンダー、キャサリン・ウォーターストン、ビリー・クラダップ、ダニー・マクブライド、デミアン・ビチル

監督:リドリー・スコット

(2017年・アメリカ・122分)WOWOW

内容:人類初の大規模な宇宙への移住計画により、宇宙船コヴェナント号は惑星オリガエ6を目指し、船を管理するアンドロイドのウォルターと、コールドスリープ中の2千人の入植者を乗せて地球を旅立った。ところが、航行中に大事故に見舞われ船長などが死亡。さらに女性の歌が混じった謎の電波を受信し、副船長オラムは、亡くなった船長の妻で科学者のダニエルズの反対を押し切り発信元の惑星へ向かう。そして実地で調査してみると地球環境に近い惑星であることが分かるのだが・・・。

評価★★★/60点

人類誕生の秘密を探る旅という哲学的テーマをドカンと打ち上げておいてトンズラこいた前作。

今回はそのシケた花火をパスンと打ち上げつつも回収を早々にあきらめ、エイリアン1&2のSFホラーのお約束をことごとく踏襲したつくり。

はっきり言って新味はないが、内心1番見たかったパターンでもあり、それなりに楽しめたのはたしか。

ただ、ほぼほぼデジャヴなので怖さもインパクトもなく、グロさだけが際立つ結果に・・。でもってマイケル・ファスベンダーの二人勝ちw

うーん、1回J・J・エイブラムスにバトン投げてみたら(笑)。

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プロメテウス

1b8fb381377359cc7fe772b1efa6c1ad 出演:ノオミ・ラパス、マイケル・ファスベンダー、シャーリーズ・セロン、イドリス・エルバ、ガイ・ピアース、ショーン・ハリス

監督:リドリー・スコット

(2012年・アメリカ・124分)盛岡フォーラム

内容:2089年、世界各地の古代遺跡からある共通するサイン-人型の記号が天空の星を指し示している-が発見される。考古学者エリザベス・ショウは、これこそ地球外知的生命体が残した“招待状”と確信。そして巨大企業ウェイランド社の支援を得て、宇宙船プロメテウス号でその星を目指し4年後に到達するのだが・・・。

評価★★★/60点

“人類はいったいどこからやって来たのか!?壮大な謎が今、解き明かされる!”という大仰なキャッチコピー&「エイリアン」「ブレードランナー」でそれまでのSF映画のイメージを塗り替え、いまやデヴィッド・リーンにひけを取らないほど大作が最も似合う巨匠となったリドリー・スコットが30年ぶりにSFを撮るということで、いやが応にも期待値のハードルは上がっていったのだけども、、、

圧倒的なプロダクトデザインと映像しか見るべき所がなかった。

「エイリアン」の密室ホラー、「エイリアン2」の戦争ごっこ、「エイリアン3」のゴシック要素、「エイリアン4」のヌメリ感とシリーズを網羅した集大成のようなかんじだったけど、単なる模倣にしか見えないほど出来がおそろしくフツーで拍子抜け。。

端的にいえばシナリオが決定的にツマラなくて、シリーズの要素を独創的なものとして活かせていないのが最大問題。

神でもなく進化論でもない人類の起源という挑発的かつ壮大なテーマをブチ上げといてこれかよーという物足りなさは否めなかったな・・・。

まぁ、オープニングで白塗りマッチョマンwが黒い液体を飲んで自らの肉体を崩壊させるかわりに新たなDNAを生み出し、人類誕生の源となった!といきなり答えを出しているので、じゃあこの白マッチョは誰でいったい何の目的で太古の地球に降り立ったのか。そこに主眼は移っていくわけだけど、答えが明確に提示されていないことはこの際どうでもいいとして(笑)、要は謎を追うプロセスが面白くないことがこの映画の致命的欠陥なのだと思う。

その点でいえば、人物描写が魅力ゼロなのも問題。何が何でも生き残っちゃると鬼気迫る奮戦をみせるノオミ・ラパス以外はさっぱりで・・。

というか、世界選抜の科学者とは思えないほどアホばっかりで萎えたww

せめて最後、宇宙船に自爆攻撃を選ぶクルーたちの男気に涙できるくらいの描写をみせてもらいたかったな。

ビジュアル面は100点満点だっただけに、うーん、、残念。。

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エイリアン

B0001fx9ne_large 出演:シガニー・ウィーバー、ジョン・ハート、ヴェロニカ・カートライト

監督:リドリー・スコット

(1979年・アメリカ・117分)DVD

評価★★★★/80点

 

内容:宇宙を航行するノストロモ号に謎の緊急信号が送られる。発信源である惑星に向かうが、そこで奇妙な生物が1人の乗組員の体内に入り込む。やがてその生物は体内を突き破り、乗組員を次々に殺していった。1人残された二等航海士のリプリーは、その生物“エイリアン”に命を賭けて挑むのだった。

“衝撃の半ケツ!!”

いくらひと安心したからといって、あの下着姿はどうかと思うぞ。。案の定エイリアンに襲われちゃうし。

あと、個人的にはエイリアンもすごい恐いんだけども、リプリーを抹殺しようと暴れまくるアンドロイドもなんかイヤ。表情ひとつ変えずに殺そうとするじゃん。

挙句のはてにブン殴られて上半身からひしゃげてしまうけど、その場面の方が印象に残ってたりする。口から白い液をドボドボ吐き出してさ。あわあわ・・。

そう考えると、エイリアンの方も人間以上に必死だったんだろうね(笑)。

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エイリアン2

B000eqipoi_large 出演:シガニー・ウィーバー、マイケル・ビーン、ランス・ヘンリクセン

監督・脚本:ジェームズ・キャメロン

(1986年・アメリカ・155分)DVD

評価★★★★/85点

 

内容:前作の死闘の末、唯一生き残った女性航海士リプリー。57年後、救命艇の低温睡眠カプセルの中で発見された彼女は、エイリアンの卵の巣である惑星に、宇宙海兵隊の案内役として派遣される。その惑星には宇宙技術者とその家族が住み着いていたが、連絡が途絶えていたのだ。到着後、さっそく海兵隊員は多数のエイリアンの四面楚歌攻撃に次々と倒れ、またも生き残ったリプリーは、エイリアンにさらわれた宇宙技術者の娘ニュートを救うために単身立ち向かう。

“いるのに、いない!!”

発信機は間近にエイリアンが迫っていることを示しているのに、見回してもいない。これほど恐ろしいことはない。

発信機とか小道具の使い方が上手いんだよなぁ。

ところで、作り手はどのくらい意識しているのかは分からないけど、多分にベトナム戦争の要素が含まれていると感じるのは自分だけだろうか。なんてったってこの映画のキャッチコピーが、「今度は戦争だ!」だもんな。

エイリアンをべトコンに置き換えるとそのままベトナム戦争映画になっちゃう。

エイリアンのもの凄さを隊員たちに必死こいて説明するリプリー。しかし、ほとんど真に受ける様子も見せない隊員たち。俺たちが焼き捨てて撃ちまくればなんのことはないだろう(なんてったって俺たちゃ世界最強のアメリカ海兵隊員でっせ!)みたいな軽い気持ちでいざ乗り込んだら、どこからともなく現れるべトコンのゲリラ戦法に全く打つ手無し。。この映画における無能ともいえる隊長なんてその典型。

ま、そこまで深読みしてもあまり意味がないけども。。

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エイリアン3

Alien 出演:シガニー・ウィーバー、チャールズ・ダンス、ランス・ヘンリクセン

監督デビッド・フィンチャー

(1992年・アメリカ・115分)NHK-BS

評価★★/45点

内容:宇宙を漂流するリプリーの救命艇は、凶悪犯の住む流刑惑星に不時着する。しかし、この救命艇にはエイリアンの幼生が潜んでいて・・・。犬に寄生したことによる“ドッグ・エイリアン”は見もの。

“エイリアンの知能指数がIQ85より上であることだけは分かったw”

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エイリアン4(1997年・アメリカ・109分)仙台第1東宝

 監督:ジャン・ピエール・ジュネ

 出演:シガニー・ウィーバー、ウィノナ・ライダー、ロン・パールマン、ダン・ヘダヤ

 内容:前作から200年後、宇宙船オーリガ号で武器として利用するために養殖したエイリアンが脱走!クローンとして蘇ったリプリーが因縁の戦いに身を投じていく。エイリアン同士の共食いなど終始異様なムードを醸しだす・・・。

評価★★★★/75点

“キモイ、キショイ、エグい、グロい、ジトい、クサイ、べトい、ドロい、ネトい、ビチョい・・・

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エイリアン VS.プレデター

83g83c838a83a83938296829383v838c83f835e8 出演:ランス・ヘンリクセン、サナ・レイサン、ラウル・ボヴァ、ユエン・ブレンナー

監督・脚本:ポール・W・S・アンダーソン

(2004年・アメリカ・101分)ルミエール1

評価★★/40点

内容:南極で発見されたピラミッド。調査にやって来た隊員達は、壮絶な戦いに巻き込まれることになる。。そのピラミッドは、エイリアンたちが眠る場所で、対するプレデターたちにとっては儀式を行う場所でもあったのだ。これぞ2大異星人にとっての聖地エルサレム争奪戦か!?

“ヴェロキラプトルvsTレックスのパロディ”

にしか見えない。

常に密閉された閉鎖空間の中で恐怖を生み出してきたエイリアンと、ジャングルや街を縦横無尽に駆け回るプレデターとでは、そもそものところで折り合いがつかない。。

結局本作では、縦横無尽のピラミッドという設定を舞台として用いてきたが、これがなんとも苦しい。

10分おきに作動するだとかそんなのはどうでもいいことだ。なんだかこの舞台設定の時点で十分足を引っ張っちゃってるような。。

しかもプレデターは味方っスか・・。

敵の敵は味方なんかじゃない、、大敵なんだよ!!

Tレックスがケツふりふりさせながら一緒に走るかっちゅうの。

とんだ肩透かしだ。

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AVP2 エイリアンズVSプレデター(2007年・アメリカ・94分)WOWOW

 監督:コリン・ストラウス

 出演:スティーヴン・パスクール、レイコ・エイルスワース、ジョン・オーティス、ジョニー・ルイス

 内容:南極での死闘を終えたプレデターの宇宙船、、が、一体のプレデターの腹の中からエイリアン・プレデター両方の能力を併せ持つ“プレデリアン”が誕生してしまう。そして、コントロール不能となった宇宙船は、あろうことかコロラドの森の中に墜落してしまい・・・。

評価★★☆/50点

湖のほとりで若いネエちゃんが水着さらしてお色気攻撃ぃ~、っていつから「エイリアン」は安ものティーンズムービーに成り下がっちゃったんだ。。

シガニー・ウィーバーが見たら怒るゾこれ(笑)。リドリー・スコットのオリジナルがどんどん形骸化していく・・・。

そのくせして今回の映画、子供から妊婦に至るまで、そんなの関係ねぇとばかりに容赦なくブッ殺していくのね。。あげくの果てに街ごと爆破かよっ!「エイリアン2」でさえ子供には手をかけなかったのに・・・。

さらに、そのくせして今回の映画、画面が暗くて何やってんだかさっぱり分かりましぇんww

こんなバカなことに力を入れずに、本家本元でさっさと続編作った方がよっぽど有意義じゃなかろうか。。

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プレデター

Mp234 出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、カール・ウェザース、ビル・デューク

監督:ジョン・マクティアナン

(1987年・アメリカ・107分)WOWOW

内容:某国に拉致された米政府要人の救出のために、ジャングルに派遣された特殊コマンド部隊。要人救出には成功したものの、姿なき殺戮者に襲われ・・・。それはなんと宇宙からやって来た狩猟族プレデターだった。

評価★★★★/75点

“カ、カブトガニ!?”

ブサイク型宇宙人の流行を作ったこの映画の犯した罪は、重いw!?

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プレデター2(1990年・アメリカ・108分)WOWOW

 監督:スティーブン・ホプキンス

 出演:ダニー・グローバー、ゲイリー・ビジー、ルーベン・ブラデス、マリア・コンチータ・アロンゾ

 内容:1997年、宇宙の狩猟族プレデターは、人間狩りのためロサンゼルスに出現。これに対抗する警察特殊部隊は、以前のデータをもとに立ち向かうが・・・。

評価★★★★/80点

正真正銘リーサル・ウェポンの称号をかけた意地の戦いがアツい!

2018年4月18日 (水)

夢のシネマパラダイス429番シアター:異国の地ヨーロッパ紀行

グッバイ、レーニン!

Bye 出演:ダニエル・ブリュール、カトリーン・ザース、チュルパン・ハマートヴァ、マリア・シモン

監督:ヴォルフガング・ベッカー

(2003年・ドイツ・121分)仙台フォーラム

評価★★★★/80点

 

内容:1989年の東ベルリン。母が心臓発作で昏睡状態に陥っていた間に、ベルリンの壁が崩壊。息子アレックスは、愛国主義者の母に2度とショックを与えないよう、崩壊以前の東ドイツを強引に演出するのだが・・・。

“親思う心にまさる親心 今日のおとずれ何と聞くらむ”

資本主義だろうが社会主義だろうがグッバイだろうがウェルカムだろうがこの際そんなこたぁどうでもいい。

それよりも、とにかくご立派なお息子さんを育て上げたクリスティアーネお母さんの親心と息子アレックスへの暖かな眼差しに心打たれる。

これを母親と息子の話ではなく、親父と息子の話にしていればそれはそれでもの凄い作品になっていたと思うのだけども、やはり笑いと涙のペーソスにあふれているという点では今作の撮り方で正解だと思う。

親父さんも含めた家族にあった壁が取り払われていくのって、いいね。

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地下水道(1956年・ポーランド・96分)NHK-BS

 監督:アンジェイ・ワイダ

 出演:テレサ・イジェフスカ、タデウシュ・ヤンチャル、ヴィンチェスワフ・グリンスキー

 内容:第二次世界大戦末期のワルシャワ。パルチザン部隊による地下運動は悲惨な最終段階に達していた。ザドラ率いるパルチザン中隊は、ドイツ軍に追われて地下水道を通り、市の中央部に出て再び活動を続けることにするが・・・。地下水道で苦悶するレジスタンスの姿を、ドキュメンタリータッチでとらえた作品。

評価★★★/65点

人物のキャラクターが自分の中に浮上してくる前に地下の暗闇と絶望に突き落とされてしまい、監督よりも冷徹で突き放した視線で見つめてしまっている自分がいた。

なんといっても冒頭の、「悲劇の主人公がそろった。彼らの人生の最期をお目にかけよう」というまるで他人事のようなモノローグがエグイ。

でも、笑うに笑えないのがどうにも窮屈で息苦しくて仕方なかったな。閉所恐怖症だもん・・。

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パパは、出張中!(1985年・ユーゴスラビア・136分)NHK-BS

 監督:エミール・クストリッツァ

 出演:モレノ・デバルトリ、ミキ・マノイロヴィッチ、ミリャーナ・カラノヴィッチ

 内容:1950年代、スターリン主義の排除に躍起となっていたユーゴスラビア。サラエボに住む少年マリックの父・メイシャは、愛人との情事の際にスターリン批判の漫画に、これはやり過ぎだ!と憎まれ口を叩いた。ところが、彼女がそれを人民委員会に漏らしたため、父は遠い鉱山へ奉仕労働に送られてしまう。母はマリックたちに「パパは出張中だ」とごまかすのだが・・・。カンヌ国際映画祭で作品賞受賞。

評価★★★/65点

パパはヤリ過ぎ!に変えた方がよくねえ?

スターリン批判の風刺漫画に「やりすぎだ」と言って逮捕される親父はいろんな女とヤリすぎです。座布団1枚!

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トレインスポッティング

Pta46 出演:ユアン・マクレガー、ユエン・ブレンナー、ジョニー・リー・ミラー、ロバート・カーライル、ケリー・マクドナルド

監督:ダニー・ボイル

(1996年・イギリス・93分)仙台セントラル劇場

内容:ヘロイン中毒に陥った若者たちの生態を、斬新な映像感覚で描いた青春群像劇。麻薬常習者のレントンは、何度目かの麻薬断ちを決意し、健全な性欲を満たすべくディスコへ向かった。そこでダイアンという美女に心惹かれたレントンは、彼女の家に行ってセックス漬けに。そして何事もなかったかのように翌朝には再び麻薬を打ってしまうのだった。あげくの果てにそれまで麻薬はやらなかった仲間のトミーも麻薬をガンガン打ってくれ!とせがみに来て・・・。

評価★★★/60点

“3K”

ヘロイン中毒の若者のノンストップの場当たり的クズ人生を、刹那性や暴力性を排除して小気味よく描いた爽快さは認めるところで、学生時代にめちゃくちゃ流行った映画。当時周りでは“クレイジー・クール・カッコいい”のファッション感覚でもてはやされていたような気がする。

けど、自分にとってこの映画は、やはり今も昔も“臭い・汚い・キモい”の3Kなのだったww

P.S.追記

今作から20年後を描いた続編を鑑賞。ていうかこの続編いるかw!?しかもキャストスタッフがそのまま集まってという点にもビックリしたんだけど・・。

で、96年に18歳だった自分もあれから20年経って立派なオッサンになったけど、精神年齢は中2から停止したまま。いつ自分は大人になったんだろうと未だ大人になりきれない未熟さに歯がゆさや恥ずかしさを覚えることが出てきたりして。。でもコイツらに比べれば自分は全然マシだなと自信を持てただけでもこの映画を見る価値はあった(笑)

と同時に若さはもう通用しないんだということも痛切に感じられる作品になっていたと思う。

前作はヘロインクソまみれのただただ無軌道な暴走映画だったけど、イギリス映画特有の湿り気がなくて、開けっ広げで陽気な疾走感がある意味で爽快さを生んでいた点が稀有だった。

しかし、さすがに歳食うと悲惨さがリアリティをもって迫ってくるんだよね💧

昔はあーだこーだと過去に拘泥するオッサンたちと、そんなセンチメンタル意味ないじゃんとしたたかに前を見るベロニカの対比も良いアクセントになっていたと思う。

また、20年経ってもロック音楽を基調とした小気味よいテンポとダニー・ボイルのチープなスタイリッシュさ(いや、進化はしてるw)が変わらないままなのはなんだか微笑ましかった。

また20年後か(笑)!?

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ロッタちゃんと赤いじてんしゃ(1992年・スウェーデン・76分)NHK-BS

 監督:ヨハンナ・ハルド

 出演:グレテ・ハヴネショルド、ベアトリス・イェールオース

 内容:「長くつ下のピッピ」で知られるスウェーデンの童話作家アストリッド・リンドグレーンが生んだもうひとりのヒロイン“ロッタちゃん”シリーズの第2作。頑固で意志の強い5歳児ロッタちゃんが今回も大暴れ!

評価★★★☆/70点

東の横綱メイ、西の横綱ローラ・ワイルダー、そして北の横綱ロッタちゃん。

これを世界3大ふくれっ面エンジェルという!

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ソフィーの世界(1999年・ノルウェー・111分)NHK-BS

 監督:エリック・グスタヴソン

 出演:シルエ・ストルスティン、トーマス・ヴァン・ブロムセン、アンドリン・サザー

 内容:ある日、14歳の少女ソフィーのもとに一通の手紙が届く。文面には「あなたは誰?」とだけ。そして再び届いた二通目の手紙には「世界はどこから来た?」とだけ。この手紙に不思議な気持ちを掻き立てられたソフィーは、手紙の主アルベルトとともに古代ギリシャから帝政ロシアまで、時空を超える旅を重ねていく・・・。深淵で哲学的なテーマをファンタジックにつづった同名ベストセラー原作の映画化。

評価★★/40点

“バカでも分かる西洋史”

をなぜに映画でやる必要がある?というのが率直な疑問。

映画見てかえって原作読む気なくしたんだけど・・w

2017年11月 8日 (水)

夢のシネマパラダイス328番シアター:ブレードランナー

Blade_runner 出演:ハリソン・フォード、ショーン・ヤング、ルトガー・ハウアー、ダリル・ハンナ

監督:リドリー・スコット

(1982年・アメリカ・117分)

内容:遺伝子工学が極端に発達し、精巧な人造人間レプリカントが造られるようになった2019年、レプリカントは宇宙や惑星植民地で危険な労働に従事させられていた。そんな中、地球征服を企んだロイ・バッティをリーダーとするレプリカント4人がロサンゼルスの街に侵入。しかし、レプリカントは詳しいテストをしなければ本物の人間との違いが判別できない。彼らの犯罪を阻止し抹殺する使命を帯びた元刑事のデッカードは、レプリカントの製造元であるタイレル社を訪れ、レプリカントの寿命が短命なことを知る・・・。SF作家フィリップ・K・ディックの原作「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」を映画化したハードボイルドタッチの近未来アクション。酸性雨が絶えず降り注ぐ街、エアカーと自転車の混在、西洋人と東洋人のカオス、日本語のイルミネーションや看板が乱立する高層ビル群といった未来世界のディテールは後の数多の映画に影響を与えたことで有名。またビデオの普及に最も貢献した作品としても知られている。

評価★★★★/80点

“残酷すぎるくらい美しくダークな映像、美しすぎるくらい残酷な人間。リドリー・スコット版フランケンシュタインはかくも美しく残酷だ。”

デッカードが逃げるゾーラを後ろから容赦なく撃ち殺すシーンのなんとキレイなことよ。

流麗なスローモーションと割れるガラス、弾丸をブチ込まれ倒れながらもなんとか起き上がっては逃げようとするゾーラ、しかも一応女でっせ。にもかかわらず問答無用のデッカード。

しかもわざわざスローモーションにする必要がどこにあるってシーンなんだけど、そこがこの映画のポイントなのだろう。

人間の持つ豊かな創造力と表裏一体をなす恐ろしいまでの残虐性が見事に浮き彫りになるワンシーンだった。

個人的には思い切ってレプリカントを主人公にした方が自分好みの映画になったのではないかなとも思うけど。

だって彼らは人間以上に悩み苦しみ闘い、そして生きようとしたのだから。

その方が、我々はなぜ生まれ、そしてどこへ行くんだという彼らレプリカント自身の問いかけが真に見るわれわれ人間にも迫ってくると思うのだ。

ロイ・バッティの決して癒やされない悲しみを抱えた瞳と言葉が強く印象に残る、、“我思う、ゆえに我あり。”

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ブレードランナー2049

171036_02出演:ライアン・ゴズリング、ハリソン・フォード、アナ・デ・アルマス、マッケンジー・デイヴィス、ロビン・ライト、ジャレッド・レト、ショーン・ヤング

監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ

(2017年・アメリカ・163分)東宝シネマズ日本橋

内容:2022年にレプリカントによって引き起こされた大停電によりレプリカントは製造禁止となったが、2036年にウォレス社によって新型レプリカントが開発。旧型レプリカントは専任捜査官ブレードランナーによって抹殺される運命にあった。そして、さらなる荒廃が進む2049年。LA市警のブレードランナーでなおかつ新型レプリカントでもあるKは、ある捜査の過程で30年前に死んだ女性レプリカント・レイチェルが出産していたという重大な秘密を知ってしまう。やがて、かつて優秀なブレードランナーとして活躍し、レイチェルと共に姿を消した男デッカードの存在に辿り着くが・・・。

評価★★★☆/70点

に、に、2時間43分!?に尻込みするも、実際見てみると心地よい徒労感に襲われて、これぞ映画体験を満喫♪

このてのSFもので緩急どころか終始スローペースなまま進んでいく物語に、ストレスなしで身をゆだねられるのも不思議なかんじ。

それは人間もどきと揶揄されるレプリカント主人公Kの、自分は一体何者なのか、特別な存在なのかという自分探しの旅がストレートに胸に迫ってきたから。これは必然の長さだと納得した。

そして、ライアン・ゴズリングの眠たげな瞳wが内省的な主人公とうまくマッチングしていて印象深く、殊のほか良かったことにも引っ張られたかな。

ただ、デッカードと“運命の子”よりも、あくまでKと初音ミクの進化形ジョイの人間もどき2人のおとぎ話に収れんさせてほしかった気も。

ていうか、キャラクター設計としてジョイは明らかにヒロインのはず。なのにあまりにも切なすぎる最期が哀しすぎる😢

ジョイをもっと見ていたかったな~💕

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