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2019年10月 8日 (火)

夢のシネマパラダイス322番シアター:とある家族の物語

海よりもまだ深く

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出演:阿部寛、真木よう子、小林聡美、リリー・フランキー、池松壮亮、橋爪功、樹木希林

監督・脚本:是枝裕和

(2016年・日本・117分)WOWOW

内容:篠田良多は作家として15年前に新人賞を受賞したものの、その後は鳴かず飛ばずで今は探偵事務所勤務。しかもギャンブル好きで、老母・淑子や姉・千奈津に金をせびる日々。当然妻の響子からは愛想を尽かされ、とうの昔に離婚していた。そんな良多にとって唯一の楽しみは月に一度、息子・真悟と会えること。そして巡ってきた面会の日、淑子の家で真悟と過ごしていたが、台風が接近していた・・・。

評価★★★★/80点

誰もが知る役者さんが顔をそろえているから“演じている”と認識できるけど、そうでなければどこかの団地の家族をモニタリングしているような感覚に陥っていたのではなかろうか。それくらい生活感の生々しさが尋常ではない濃さで描写されていて、何が起きるわけではないのに見ていられる不思議な映画。

しかも説明セリフ一切なしの日常会話だけで映画が進行していくにもかかわらず、ひとつひとつのセリフが登場人物に血を通わせるのに機能しているところがスゴイ。

フィクションとしての違和感が全くないし、会話の中に時折り空気穴からプスプスと漏れ出てくるようなシニカルな毒気が散りばめられていて、まさに寝かせて寝かせて味がしみ込んだ苦味と渋味と旨味が一緒くたになったような梅干しみたいな映画だった。

まぁ、妻子に愛想を尽かされた博打好き主人公のダメ男ぶりを延々眺めているだけなんだけどねw

歩く後ろ姿からしてうだつの上がらなさが一目瞭然な阿部寛は絶妙だったし、何といっても樹木希林!すべてがアドリブじゃないのかと思ってしまうほどに自然体で毎度のことながら釘付けになってしまった。

幸せとは何かをあきらめないと手に入らないもの、、かぁ。うーん、深すぎる。。

P.S.宝くじはギャンブルじゃない。夢なんだ!

そこだけは主人公に100%共感しますw

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家族ゲーム(1983年・日本・106分)NHK-BS

 監督・脚本:森田芳光

 出演:松田優作、伊丹十三、由紀さおり、宮川一朗太、辻田順一、戸川純、阿木燿子

 内容:大都市近郊の団地に住む4人家族の沼田家。高校受験を控えた中3の茂之は、出来の良い兄とは対照的に成績もいまひとつで口数の少ない問題児だった。持て余した父親は、家庭教師の吉本を雇うが、彼は三流大学の7年生で植物図鑑を持ち歩く風変わりな男だった。しかし、成績が上がれば特別ボーナスを払うと約束された吉本は、アメとムチを使い分けながら茂之を教育していく・・・。

評価★★★☆/70点

公開から30年経った今見ても斬新極まりないつくりになっていると思うけど、ネット社会、格差社会、モンスターペアレントetc..30年前にはなかった様々な社会問題が折り重なっている現代では、この映画で描かれた家族像はもはや真新しくもなんともないのかもしれない。

今はもっとパーソナル化が進んでいるので核家族という形態すら危うくなっているし、この映画を最も象徴するシーンであるカウンター方式で横一列に座る食卓風景だって、他方では専業主婦の母親がちゃんと手作りで食事の支度して皆で一緒に食べてるじゃんともいえるわけで。今ならレトルトや冷凍食品で済ますってこともざらでしょ。

ただ、冒頭で述べたように、家族内のディスコミュニケーションと上っ面だけの事なかれ主義をデフォルメして描いた作劇は白眉。

例えば、食事の席で家庭教師(松田優作)ってイケメンだよねっていう話の流れから彼の髪型を見た伊丹十三が「その頭って手入れするの?」と訊くと、松田優作が手ぐしで髪を整え始め、それを見た由紀さおりが「髪の毛いじらないで下さい。フケ落ちますよ」と怒ると、松田優作が「僕は家庭教師ですから」と答えるような脈絡のない会話や、伊丹十三が目玉焼きの黄身だけをチューチュー吸うのが好きなことを妻の由紀さおりが今まで知らなかったりと、繋がっているようで繋がっていない一方通行の距離感が奇妙な気持ち悪さを生んでいて思わず見入ってしまう。

あと、後で気付いたんだけど、この映画って音楽がないんだね。なんか食べる音とかヘリの音とかずっと騒々しい印象があったけど、そういう日常音がシュールな生々しさをより強調する効果を持っていたのかも。

ちなみに自分が一番笑ったセリフのやり取りは、伊丹十三に「君は酒は好きなんだな」と言われたのに対し、松田優作が「好きじゃありません。酔っ払いませんから」と答えるところw

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普通の人々

Dsop2出演:ドナルド・サザーランド、ティモシー・ハットン、メアリー・タイラー・ムーア

監督:ロバート・レッドフォード

(1980年・アメリカ・124分)NHK-BS

評価★★★★/80点

 

内容:シカゴ郊外に住む典型的な中流家庭のジャレット家では、優秀なスポーツ選手で秀才だった長男のバックを事故で失ったことを境に家族関係が冷え切っていく。長男を溺愛していた妻べスはふさぎ込んで、次男のコンラッドにつらく当たるようになり、一緒のボートに乗っていて自分だけ助かったコンラッドは兄の死に責任を感じ、母のヒステリーをまともに受け止め精神が不安定になり、自殺未遂まで引き起こしてしまう。弁護士の父親カルビンは家族の絆を取り戻すという空しい夢にすがるのだが・・・。アカデミー賞では作品・監督など4部門で受賞。

“不器用かつ無関心で冷ややかな母親べス。しかし、それ以上に不器用かつ無関心で冷ややかな監督レッドフォード。”

まずこの映画は、お堅く平凡なプロットに拠っているというよりは、役者たちの醸し出す雰囲気や情感を拠りどころとしている映画だといえると思う。

しかし、そういう役者陣の奮闘だけで登場人物を内面までしっかり描けるほど映画というものは甘くはない。そのことをいみじくも実証している映画でもある。

そう、この映画、登場人物がしっかり描かれているようにみえて実は底が浅い。

しかも問題がひとつ。映画を見ていくと感じること。

それは監督レッドフォードの立ち位置だ。

いったいどこまでクールなんだコイツはというくらいレッドフォード自身が映画の中に立ち入ってこない。もちろん監督としてという意味だが、モニターの後ろからただジーーッと見つめているだけ。まるで自分は何も関係ないという第3者のような視線で。

レッドフォードの中でおそらく意識的に引いたと思われる映画の世界との間の一線レッドラインを、彼は決して踏み越えてはいかない。もし越えてしまった時、それは彼にとってこの映画への侵害以外の何ものでもなくなるのだろう。

そしてこの彼の突き放したような立ち位置が先ほど述べた弊害を招いてしまっているともいえるのだが、しかしその立ち位置は決して弱気な逃げの態度から起因しているのではない。明らかに意図してあえてそういう立ち位置を選んだのだと思う。オープニングの入り方なんかはまさにその意思の表れだろうし。

マイナス要素もあるが、それ以上にプラス要素が大きな意味をもったということなのだろう。

あるファミリーの空しい崩壊を淡々とかつどこまでも第3者的な目線で、テンポを変えず(=ドラマ性を押し殺し)に描いていくこと。それが普遍的な時代の空気感、普通の人々のデリケートな問題をつぶさに見つめていくことにつながり、リアルで確実な作品に仕上がったのだと思う。

なかなか見ている側の主観が立ち入ることを許さないことを差し引いても非常に見応えのある映画であることには違いない。

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幸福な食卓(2006年・松竹・108分)NHK-BS

 監督:小松隆志

 出演:北乃きい、勝地涼、平岡祐太、さくら、羽場裕一、石田ゆり子

 内容:中学3年生の佐和子は4人家族だが、3年前の父親の自殺未遂をきっかけに家族の歯車は狂い始めていた。母親は近所に別居、秀才の兄は大学進学を拒否して農業に精を出す日々を送っていた。それでも家族は朝の食卓には集まり、家族としての体裁を保っていた。が、そんなある日、父親が朝食の席で突然、「今日で父さんを辞めようと思う」と宣言する・・・。

評価★★★/65点

“ミスチルの「くるみ」がすべて持ってっちゃったような・・・。”

主婦という肩書き、お父さんという役割、そういう当たり前の立場をいっさいがっさい捨て去って見えてくるものとは・・・?

いまいち分からなかった(笑)。

浪人生になればご飯に味噌汁かけてぶっ込むことができるし、サバは塩焼きと決まってるしってことは分かったけど・・・。

でも、唯一よぉく分かったのは、気付かないところで誰かにいろいろ守られてるんだってこと。そういう温かいぬくもりはすごくよく伝わってくる映画ではあったかな。

勉学くんも牛乳瓶の底のようなメガネをかけてる奴かと思いきや、純粋な好青年でよかったし。

でも、あの消え去り方はないよなぁ。。

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ほえる犬は噛まない(2000年・韓国・110分)NHK-BS

 監督・脚本:ポン・ジュノ

 出演:ぺ・ドゥナ、イ・ソンジェ、コ・スヒ、キム・ホジョン、キム・ジング

 内容:中流家庭の住む閑静な団地。教授を目指しているものの、なかなか昇進できないでいる大学非常勤講師のユンジュは、彼を養っている身重の妻に顎で使われる肩身の狭い日々を送っていた。しかも、飼うことを禁止されているはずの犬の鳴き声が鳴り止まず、彼の苛立ちは募るばかり・・。そしてある時、犬を見つけた彼はマンションの地下室に監禁するのだが・・・。

評価★★★☆/70点

ポン・ジュノ監督の作品は「殺人の追憶」(2003)、「グエムル漢江の怪物」(2006)ときて、今回の監督デビュー作は初めて見たんだけど、これ見て分かった!

ポン・ジュノは韓国の山下敦弘なのだと。。

なんか、作風が似てるよねっていう、ただそれだけなんだけどw。奇しくも「リンダリンダリンダ」(2005)でぺ・ドゥナを起用してるし、通じるところがあるのかもなんて。

ダラダラとした中の躍動、退屈な中の緊張、殺伐な中のユーモア、写実の中の漫画。

これら日常の中の非日常を切り取った絶妙なバランス加減は秀逸で、まさにナンセンスなリアリズムとでもいうべき境地に達しているのは見事というほかない。

決してパンチのきいた味ではないのだけれど、まるで韓国の甘辛い唐辛子味噌のごとくジワジワと効いてくる作品というのは、今の刺激を求めすぎる映画界においては貴重ではなかろうか。

ポン・ジュノ、、、これからも要注目の監督です。

2019年9月29日 (日)

夢のシネマパラダイス252番シアター:冬山に行く人の気が知れない・・

劔岳 点の記

S1292802861 出演:浅野忠信、香川照之、松田龍平、仲村トオル、宮崎あおい、笹野高史、夏八木勲、役所広司

監督:木村大作

(2008年・東映・139分)WOWOW

内容:明治39年、国防のため日本地図の完成を急ぐ陸軍参謀本部は、唯一の空白地である前人未到の劔岳の測量を測量官の柴崎芳太郎(浅野忠信)に命じる。欧州の最新機材を持ち込み初登頂を目指す日本山岳会というライバルが現れる中、柴崎ら測量隊は、案内人・宇治長次郎(香川照之)のもと劔岳山頂へ向かう・・・。

評価★★★☆/70点

登頂するのがこれほど難しい山が日本にもあったなんて東北人の自分は全く知るよしもなく、、剣岳自体知らなかったもんなぁ。日本にもヤバイ山ってあるんだねww

というのはさておき、肝心の映画の方だけど、正直なところ、映画のメイキングドキュメンタリー見てた方が数倍面白いのではなかろうかと思ってしまった、かも。。

いや、素晴らしい映画であることに何ら異論があるわけではなく、「天の視点から人間のやっていることを俯瞰の目で見て描きたい」と語った黒澤明の言葉に仮託してみるならば、今回の映画は剣岳の視点から人間のやっていることを俯瞰の目で見て描いた映画であるといえ、峻険な山岳風景の中にポツポツと黒い点描のように埋没して見える人間たちを捉えた映像はまさに圧巻きわまりないものがある。

また、登山というと己を見つめ己を知る孤高の闘いというイメージがあるけど、この映画では尊重と献身の心を持ち合わせた人とのつながりや仲間たちの絆というものを描き出しており、壮大な力強さの中にも控えめな品の良さがうかがい知れる良作になっているのはたしかだ。

近年稀にみる真摯で実直なつくりの映画といえよう。

しかし、それでもあえていうならば、「剣岳の視点」の中に人間ドラマが埋没している感も拭えず、男ばかりの映画にしては男臭さやその息遣いがあまり伝わって来ないのもちょっと気持ち悪いというか、人間ドラマがスマートすぎて緊迫感に欠けるきらいはあったかなと。

また、一面の雲海に沈む夕陽をバックにしたシーンなど、一体この景色を撮るためにどのくらい撮影スタッフは待ったんだろうとか凄く気になっちゃって(笑)、それこそ監督の怒号が常に聞こえてきそうな映画のメイキングを見た方がパッションや緊迫感を断然感じられるのではないかと思っちゃったww

しかしまぁ、作り手の映画に対する信念と、私利私欲にとらわれない測量官や案内人、登山家たちの信念がオーバーラップし、強い想いとなって伝わってくるという点において、この映画を自分の心に留め置いておきたいとは思う。

それにしても、紅一点の宮崎あおいタンみたいな嫁さん欲しいなぁ~~

夢のまた夢・・・。

(追記)

後日、WOWOWで「劔岳撮影の記、標高3000メートル、激闘の873日」というメイキングドキュメンタリーをやってて興味深く見たけど、「撮影じゃなくて苦行だと思わなきゃやってられない」という監督の言葉通りのあまりにもタフすぎる映画撮影に絶句しながら見てしまった。

登山して天気悪くて下山して翌日また登って、しかも撮影機材を背負って、、これを何週間も山にこもってやるっつーんだから、さらには冬山にまで・・。まさに苦行だわ。

ただ、、山でプカプカ煙草吸うのだけはいかがなものかと思うぞ。ぶっちゃけ山で煙草吸う人って初めて見たもん。

剣岳を見て涙する野郎がそこで平気で煙草吸うって、、恐ろしいくらいに敬意に欠けてるような気がするんだけどw

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エヴェレスト 神々の山嶺

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出演:岡田准一、阿部寛、尾野真千子、ピエール瀧、甲本雅裕、風間俊介、佐々木蔵之介

監督:平山秀幸

(2016年・日本・122分)WOWOW

内容:1993年、ネパールの首都カトマンドゥ。日本のエヴェレスト遠征隊が2人の犠牲者を出し登頂を断念した。随行していた山岳カメラマンの深町(岡田准一)は、失意の中でふと立ち寄った骨董屋で古いカメラを見つける。それが1924年に初登頂に挑んで消息を絶ったイギリス人登山家ジョージ・マロリーのものかもしれないと感じた深町だったが、突如現れた大男がこれは自分が盗まれたものだと言って持ち去ってしまう。深町は、その男が数年前に消息を絶った天才クライマーの羽生(阿部寛)であることに気づくが・・・。

評価★★★/65点

夢枕獏の原作は未読のせいか、思ったほど悪くはなかったw

特に「山に登るのは俺がここにいるからだ」と豪語し、山に取り憑かれた鬼気迫る執念を見せる羽生を演じた阿部寛の存在感は強烈だったし、生への信念を見せる岡田准一も良かった。

エヴェレストのド迫力映像や登はんシーンも力の入れ具合がしっかり伝わってきたし、ヴィジュアルエフェクトも織り交ぜていたのだろうけど、邦画でここまでのスケール感を描けたのは素直に拍手。

ジョージ・マロリーのカメラをマクガフィンとするドラマの展開に角川映画特有のチープさはかなり残るものの、全体的に見応えのある作品になっていたとは思う。

ただ、登山好きじゃないと分からないような心理描写をスルーしちゃってて、素人にはえっ?と感じるところも多々あったのと、羽生の恋人(尾野真千子)の中途半端な扱いなど掘り下げが足りなかったのはマイナス。。

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アイガー北壁(2008年・ドイツ/オーストリア/スイス・127分)

 監督:フィリップ・シュテルツェル

 出演:ベンノ・フユルマン、ヨハンナ・ヴォカレク、フロリアン・ルーカス、ウルリッヒ・トゥクール、ジーモン・シュヴァルツ

 内容:ベルリンオリンピックを目前に控えた1936年夏。ナチス政府は、登頂不可能といわれたアイガー北壁を登頂したドイツ人に金メダルを与えると発表。アイガーの頂を目指し多くの登山家が集結する中、若きドイツ人登山家トニーとアンディもやって来る。麓の高級ホテルには、ワインを片手にマスコミや野次馬が陣取り、その中には2人の幼なじみで駆け出し記者のルイーゼの姿もあった。そして2人は登攀を開始するが・・・。

評価★★★/65点

栄光か悲劇しか記事にならないというセリフがあったけど、それはそのまま映画に当てはめることもできるだろう。

とはいえ、まさか悲劇で終わるとは思いもよらず、絶望的な展開にしばし呆気に取られてしまった。

見終わっても、なぜに初登頂の栄光ではなくこの悲劇を映画化したのかイマイチ分かりかねたけど、ちょっとノリきれなかったかなぁ・・。

リアルな山岳シーンを凡庸な人間ドラマが引っ張っちゃってるというか、盛り上がりに欠けるんだよね。特にヒロインの駆け出し新聞記者の扱いがおざなりで、変に女っ気を入れない方が良かったのではないかなとさえ思ってしまった。

あとは、うーん、登頂の様子をネット中継することで有名になった栗城史多のドキュメンタリーと見比べちゃってる部分が確実にあって。。彼の挑戦を追ったドキュメンタリーを何本か見てるけど、その臨場感たるや圧倒的で、言葉が出ないほどスゴイ。本映画の中でアタックを下界から眺めている記者が、真実のドラマは現場にしかなく我々はそれを永遠に知り得ないと言ってたのが印象的だったけど、それを見れて体感できてしまうのだから、ただただ息を飲むばかり。なので、それと比べちゃうと・・。

ヒロインの目の前でぶら下がったまま恋人が凍死してしまう凄絶さはたしかにスゴイのだけども、やっぱ弛緩してしまう下界の人間ドラマがはっきりいって邪魔なんだよね・・。

うーん、、ドイツ映画、肌に合わないかもw

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ミッドナイト・イーグル(2007年・松竹・131分)WOWOW

 監督:成島出

 出演:大沢たかお、竹内結子、玉木宏、吉田栄作、袴田吉彦、石黒賢、藤竜也

 内容:かつて戦場カメラマンとして世界を駆け巡っていた西崎は、戦場でのトラウマから一線を退き、今では山岳カメラマンとして星空を撮り続ける日々を送っていた。そんな彼はある日、山中で赤い閃光を目撃する。やがて、米軍の戦略爆撃機ミッドナイトイーグルが北アルプス上空で消息を絶ったとの極秘情報が入り、政府は自衛隊を現場へ向かわせる。一方、西崎も、後輩の新聞記者・落合とともに厳戒の現場へ向かうが・・・。

評価★★☆/50点

猛烈な吹雪が吹き荒れる真冬の北アルプスを舞台にした視界のきかない山岳アクション、東京で事件の真相を追う週刊誌記者の私怨の入り混じったサスペンス、米軍ステルス機が墜落したにもかかわらず、全く蚊帳の外の米軍を差し置いて指令を下しつづけるリアリティのない国家安全保障会議室。

この3つが並行して描かれるのだが、しかしてこの欠点ありまくりの3つが足を引っ張り合って全くもって弛緩しまくった映画になってしまっている。

ラストの快晴の北アルプスの空撮シーンを見せたかったのはミエミエだけど、そこに至るまでの過程がいろんな意味で視界ゼロじゃあ全く体を成さない。

邦画版クリフ・ハンガーの道はまだまだ遠い、、らしい。。

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バーティカル・リミット

Image2171 出演:クリス・オドネル、ビル・パクストン、ロビン・タニー、スコット・グレン

監督:マーティン・キャンベル

(2000年・アメリカ・124分)MOVIX仙台

評価★★★/65点

 

内容:世界最高峰のひとつ“K2”を目指すアタック隊が遭難。女性クライマー、アニーら3人が取り残されてしまう。そしてアニーの兄ピーターら6人のレスキュー隊が氷壁爆破用のニトロを背負って救出に向う。肺気腫の危険が迫り、残された時間は22時間。想像を絶する決死の救出作戦が始まった。

“見てるこっちまで息苦しくなってくる。。”

肺水腫になってるわけじゃないのになぜかこっちまで呼吸が息苦しくなってくる。

自爆と窒息の恐怖感、切迫感は並々ならぬものがあり、クレバスの密閉空間も心理的に良くないw

そういう息苦しさはよく出来てるのだけど、、うーんなんだろう、余計な要素が多すぎるんだよねぇ。神聖なK2もそりゃ吹き荒れるわな。

特に人間関係が変に入り乱れているというのは余計だと思う。一応山岳レスキューアクションという触れ込みなのは分かるけど、ボーンのような憎まれ役は必要なのだろうか。。

ホントに憎むべきは自然の偉大なまでの力であって、それに比べたら人間関係のしがらみなんて小っぽけなもんでしょ。そんな小っぽけな要素がこの映画では大々的に描かれ吹き荒れるわけで、なんかねぇ。。ボーンへの復讐を見事に完遂してしまうウィックのラストや、ボーンがトムを殺す場面だとかホント安っぽく見えてしまうわけ。

こんなん描いてるヒマあったらもっとアニーのキャラを掘り下げてもらいたかった。どうもアニーの気持ちとか掴めなかったし、ボーンに1人が死ぬか3人全員死ぬかと言われて苦しむトムに、結局薬を打たないアニーの行動。明らかにそれまでの彼女の言動からすると矛盾してるわけでしょあれって。なんかアニーってよく分からない女だったんだよね。。

だからこの映画はアニーとピーターに的を絞ってやってもらいたかったなと思う。

それができないというのは、はっきりいえば作り手に自信がなかったということでしょ。いろいろ飾りつけてそれらしく見せるというやり方はあまり好きじゃない。

しかもK2という荘厳さに何を飾り付ける必要があるのか、もう少しよく考えてもらいたい。

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ホワイトアウト(2000年・東宝・129分)日劇東宝

 監督:若松節朗

 出演:織田裕二、松嶋菜々子、佐藤浩市、石黒賢

 内容:辺り一面、雪に覆われた12月。日本最大の貯水量を誇る新潟県奥遠和ダムの作業員・富樫は、遭難者の救出の途中、猛烈な吹雪による“ホワイトアウト”に遭遇し、共に救出に向かっていた同僚を亡くしてしまう。それから2ヵ月後、富樫は、ダムの爆破をネタに政府に50億円の要求を突きつけるテロリストグループによるダムジャック事件に巻き込まれてしまう・・・。

評価★★☆/50点

“これってあれでしょ、吹雪はハリウッド並みだってことをやりたかったんでしょ?”

まぁ頑張ったとは思うんだけど、いかんせん雪と吹雪にアクションを含めた映画そのものがうまくカモフラージュされてるなというかんじが強いんだよね。。なんかまん丸太っている羊の毛を剃ったら、めちゃか細い羊だったみたいな。

アクションなんかあまりどうってことない出来だったし。

だからってインパクト出すために平田満や河原崎建三をあっけなく殺しちゃう使い方っていうのもなんだかなぁ。しまいには松嶋菜々子の足を容赦なく撃っちゃうてのもなんだかなぁ。あげくのはてに、その松嶋菜々子を酷寒の中に置き去りにして行っちゃう織田裕二もなんだかなぁ。

それより何より、ダムの放流で流された織田裕二の服が速攻で乾いちゃうのもなんだかなぁ。

粗を探せばキリがないけど、これだけは言いたい。

寒い中ホントご苦労さん(笑)。

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八甲田山(1977年・東宝・169分)DVD

 監督:森谷司郎

 出演:高倉健、北大路欣也、栗原小巻、三國連太郎、秋吉久美子、緒形拳

 内容:明治35年、日露戦争に備えた耐寒訓練と国威発揚のために、真冬の八甲田山越えに挑むことになった徳島大尉率いる少数精鋭の弘前第31連隊27名は、綿密な計画のもとに十和田湖を迂回して八甲田を踏破する11日間の日程で弘前を出発。一方、3日遅れで青森を発った神田大尉率いる青森第5連隊は、大隊長の指示により210名という大編成になったばかりか、案内人もいない状態だった。かくして自然を力でねじ伏せようとした神田隊は寒波の中で立ち往生してしまう・・・。

評価★★★☆/70点

“ラストでガックリ・・・”

結局、死の行軍を生き残った連中も日露戦争で全員戦死かよっ!

今まで3時間ぶっ通しで見続けてきたのはいったい何だったんだ・・・。ものスゴッ虚しくなったんですけど。。

2019年9月 1日 (日)

夢のシネマパラダイス164番シアター:パニック・ルーム

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O0480091513629160745 出演:ブリー・ラーソン、ジェイコブ・トレンブレイ、ジョーン・アレン、ショーン・ブリジャース、ウィリアム・H・メイシー

監督・レニー・アブラハムソン

(2015年・アイルランド/カナダ・118分)WOWOW

内容:5歳の誕生日を迎えたジャックは、天窓から空しか見えない狭い部屋に母親ジョイと2人で暮らしていた。外には何もないと教えられ、部屋の中が世界の全てだと信じていたジャック。しかしその日、ジョイから自分たちはある男に拉致監禁された身であることを告げられる。そして脱出するために、ジョイは綿密な計画を立てて行動を開始するのだが・・・。

 

評価★★★★/80点

アカデミー主演女優賞目当てで見たけど、本当の見所は子役にあった!というオチ。

高校生の時に拉致監禁レイプされ、犯人との間に子供までもうけてしまい、7年経過したというあまりにも衝撃的な題材ながら、生まれた時からルームの中の世界しか知らない子供の無垢な空想視点を主軸に据えたことでルーム脱出前の嫌悪感すれすれのシリアスな要素を中和しているのがこの映画のキモ。

さらに、映画のメインとなるルームからの解放後も、好奇の目から気を病んでいく母親に対し、あっという間に新たな環境に適応していく子供のまっさらな感性が優しく包み込み母親をつなぎ止める。

子供の力がこの映画の何よりの生命線だったのだとすれば、子役の演技は文句なしの120点満点!

どのようにこんな難しい役柄を子供ながらに咀嚼して演技に持ち込んだのか考えただけで凄いなぁと感心しちゃうけど、お願いだからマコーレー・カルキンとかブラッド・レンフロのような悲劇的な道は歩まないでねw

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パニック・ルーム

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出演:ジョディ・フォスター、フォレスト・ウィテカー、ドワイト・ヨーカム、ジャレッド・レト

監督:デビッド・フィンチャー

(2002年・アメリカ・112分)MOVIX仙台

評価★★★/65点

 

内容:マンハッタンの高級住宅地。離婚したメグは11歳の娘サラを連れて、4階建てのエレベーター付き、かつ頑丈な“パニック・ルーム”付きの一軒家に引っ越した。しかし、その夜、何者かが家に侵入し・・・。

“自分だったら失禁しちゃうけどね・・・”

母娘たった2人で4階建てに住んじゃう神経も一般庶民の自分にとっては尋常ではないけど、それはともかくとしてあのメンツが実際ウチに入り込んできたら失禁しちゃうと思うマジでww冗談じゃなく、ウン。。

なのに、なにを呑気にトイレでオシッコしてるんだよジョディおばさんったら。眠いのは分かるし、水洗の音が犯人たちをビクリとさせたのも分かるけどさ。

なんだかユルいんだよね全体的に。

感覚的なものもあるけど、具体的にはパニック・ルームに備え付けられているモニターがご親切にもやけに多いことと、鍵穴まで通り抜けてしまうまるでネズミのようにチョロチョロと動き回るように見せかけて実は計算されつくした精密機械じかけのカメラワークが悪い意味で一役買っちゃってるかなと。

サスペンス・スリラーなはずなのに、安心・安全・安定の3大保険に加入しちゃってるんだよね・・。

一生懸命外で大雨降らせて不安感煽っても、この3大保険の効力の前にはなすすべなく、緊迫緊張などどこ吹く風。

緊張感がないから、パニック・ルームの鉄扉に手をはさんじゃうんだよ覆面レスラー、、ちゃう覆面ドロボーさんよ(笑)。

フォレスト・ウィテカー演じる犯人が、オレがこの頑丈な部屋を造ったんだと何度も豪語してらしたが、オレがこの一見何の穴もない流麗かつ完璧な映画を作ったんだと雄弁に語るデビッド・フィンチャーの神の手が垣間見えて余計に“つくりもの”世界という感が否めなくて、母娘の命をかけた攻防戦にイチイチ入り込むことができず、フツーにボーッと見てしまった。TV向きだねこれは。。

2017年1月 3日 (火)

夢のシネマパラダイス184番シアター:バクマン。

バクマン。

33210_original出演:佐藤健、神木隆之介、染谷将太、桐谷健太、新井浩文、皆川猿時、小松菜奈、宮藤官九郎、山田孝之、リリー・フランキー

監督・脚本:大根仁

(2015年・東宝・119分)WOWOW

内容:かつて週刊少年ジャンプに連載していた亡き叔父の影響で漫画家を目指したことはあるものの、今では毎日をダラダラと過ごしていた高校生の真城最高。ある日、漫画原作家を志す秀才・高木秋人に一緒に漫画家になろうと誘われる。最初は渋っていたものの、声優志望のクラスメイト亜豆美保との恋をきっかけに漫画家の道へ進むことを決意する。こうして秋人が原作、最高が作画というコンビを組んだ2人は、ジャンプ連載を目標に奮闘していく・・・。

評価★★★/65点

バクマンが実写映画になると知った時、はたして映画になるのだろうか!?と思ってしまった。

それはつまりバクマンを読んでいた時の面白さというのは、少年ジャンプに漫画が載る過程とマンガ編集部の裏側を垣間見れる楽屋ネタにあり、サイコーとシュージンの漫画家としての薄っぺらい成長譚やサイコーとあずきのケータイ小説ばりの青臭すぎる恋愛要素なんて正直どうでもいいわけでw

でも映画にするってことは、そのどうでもいい後者の方をクローズアップしていかなければ成り立たないわけで、そこがはたして映画としての面白さに繋がるのだろうかと危惧していたのだ。

しかし、今回の映画は漫画を描くという机上の地味な仕事をまるでアクション映画のごとくスタイリッシュな動きと音としてクローズアップしたのが白眉だったし、友情・努力・勝利という少年ジャンプのコンセプトもテンポよく表現できていて一定以上見応えのある作品に仕上がっていたとは思う。

ただ、生活感のなさとか日常のリアリティの欠如はマンガではどうってことないけど映画となると気になるところで、そこがやはりマイナスポイント。そういう意味ではサカナクションの主題歌の歌詞にあるような丁寧に描く部分とそれとは裏腹の粗雑な部分が混在していたと思う。なので評価はやや低め。

ただ、エンドロールは趣向を凝らしていて良し。

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ピンポン

Poster出演:窪塚洋介、ARATA、サム・リー、中村獅童、大倉孝二、松尾スズキ、荒川良々、夏木マリ、竹中直人

監督:曽利文彦

(2002年・日本・114分)仙台セントラル劇場

評価★★★★/80点

内容:卓球をこよなく愛し、勝つことに絶対的な自信を持ちながら天真爛漫で気分屋のペコ(窪塚洋介)と、卓球は単なるヒマつぶしと公言するクールで笑わないスマイル(ARATA)。2人は幼なじみで、小さい頃から近所にある卓球場に通っており、その頃からスマイルにとってペコはヒーローだった。高校生になった2人は共に同じ高校の卓球部に属していたものの、練習にはまともに参加しない毎日を送っていた。そんな2人が対戦すると必ずペコが優位に立つ。しかし、卓球部顧問の小泉(竹中直人)はスマイルの才能に目を付け、執拗に指導しようとするのだが・・・。

“確実に言えること。欽ちゃんの仮装大賞で優勝した「ピンポン」の方が断然面白い。”

様々にアングルを変えて見せるという「仮装大賞に革命を起こした!」とまで山本晋也審査委員長に言わしめた傑作。

はっきしいって映画「ピンポン」より映画的魅力にあふれていましたw

この映画はDVDで見れるけど、仮装大賞はもう見れないからなぁ、、って映画のことについて書かなきゃ。。

まあバタフライジョーこと小泉先生風に言えば、VERY GOOD!だったんじゃないでしょうか。

特に冒頭の橋から飛び降りて一時停止というくだりには自分の脳内細胞もざわめき色めき立った。おそらく仮装大賞の「ピンポン」は、この冒頭のシーンと卓球シーンからヒントを得ているはず。

とにかくCGでつかみはOKてなかんじで、あ、この映画はやっぱCGで勝負してる映画なのネ。と思いきや、CGを前面に押し出さずにキャラクターで勝負している映画ということに相当好印象を持った。

キャラクターでは個人的には荒川良々の大田キャプテンが1番好きかな。一方、どうにかしてもらいたいのが小泉先生役の竹中直人。もう見飽きた(笑)。。さらにYouとかMeとかいう言葉遣いどうにかならんのかい。スター・ウォーズEP1のジャー・ジャー・ビンクス思い出しちゃうんだよなぁww

と、ここまで書くと、冒頭のつかみはハッタリだったのかと思いがちだけど、決してそうではなかったね。

彼らの青春の一瞬、アツい闘いの一瞬を切り取り、彼らの持つ様々な内面へと昇華させていくという、ちょっと甘くみていた自分にはびっくりしてしまうくらいのこの映画のコンセプトを如実に表していて、もちろん隠し味としてのCGの醍醐味もこの映画にはあるけど、一瞬静止した画面をカメラが旋回するあのオープニングシーン。完全に痺れました

そう考えると卓球シーンも合点がいくわけで。

極端なカメラの人物への寄り、全体を捉えるのではなく表情、足などの個々のポイントに寄っていく視点、スローモーションの多用など全体ではなく一瞬の息遣いをとらえようとする手法をとったのも頷ける。

ただ、このオープニングを考えると、エンディングはちょっとスベッているような・・。

ペコとスマイルが決勝のコートに入っていく時のカメラの旋回、ここで終ってもよかったのではと思った。

でも序盤オババの卓球屋でペコがスマイルのことを「あれじゃただのサラリーマンだぜ。」と言うけど、まさに予定調和的にサラリーマンになってるスマイルをラストで見せるというのもこの映画の責任の果たし方をしっかと見たともいえるような気はする。

とにかく見てヨカッタといえるしっかりとした映画だったと思う。

Posted at 2003.04.07

2016年8月12日 (金)

夢のシネマパラダイス38番シアター:かぐや姫の物語

かぐや姫の物語

Poster2声の出演:朝倉あき、高良健吾、地井武男、宮本信子、高畑淳子、田畑智子、立川志の輔、上川隆也、伊集院光、宇崎竜童、中村七之助、橋爪功、仲代達矢

監督・脚本:高畑勲

(2013年・東宝・137分)盛岡フォーラム

内容:今は昔、竹林にやって来た翁は、そこで一本の光る竹を見つける。すると竹の根元から小さな小さな女の子が現われた。翁は大切に連れ帰り、媼とともに育てることを決心する。そして捨丸ら村の童たちから「竹の子」と呼ばれるようになった女の子はみるみるうちに大きく育っていく。やがて、翁は娘を高貴な姫君にするために都へ移り住み、美しく成長した娘はかぐや姫と名付けられる・・・。

評価★★★★/85点

アニメは子供心を楽しませるエンターテイメントであるべきだと思っている自分にとって、説教くさいイデオロギーや堅苦しい芸術志向が立ち入ってくると少なからず拒否反応を引き起こしてしまうのだけど、エンタメ寄りが宮崎駿ならアート寄りが高畑勲だったわけで、当然のごとく前者の方が好みだった。

しかし、自分の中で相いれないはずだったエンタメと芸術性をギリギリのところで見事に拮抗させた今回の作品は、文字通り今まで見たことのないような感動的な映画体験を味わわせてくれた。

竹取物語のオリジナルをおぼろげにしか覚えていなかったので、単純に物語が新鮮に映ったこともあるけど、月の都が極楽浄土の来世で、かぐや姫が降ろされた地上の世界が穢れ多き現世という構図は面白かったし、その中で、巡りめぐる春夏秋冬に彩られた自然の恵みと、喜び、悲しみ、人の情けに揺れ動く心のざわめきに満ちあふれたこの世こそが美しく、そこで生きることこそ何ものにも代えがたい幸せなのだとするメッセージはストンと胸に落ちてきた。

それゆえ、かぐや姫の生き生きとした情緒が月の羽衣をまとった瞬間に地上での記憶がチャラになり能面になってしまうシーンには涙を禁じえなかった。まるで「フランダースの犬」に通底するくらい胸を締めつけられるラストシーンだったように思う。

しかし、今までは高畑勲の思想的説教くささに邪魔されることが多かったのに、今回これほど純粋に映画の物語世界に入り込むことができるとは思わなかった。

これは、絵の力はもちろんだけど、それ以上に声優がめちゃくちゃ良くて、特にかぐや姫=朝倉あきと思えるほどかぐや姫の声が良かったことが大きかったのかなと。先に声を録ってからそれに合わせて絵を描くプレスコという手法が大吉と出たかんじだろうか。翁役の地井武男も印象深かったし。

生きることの素晴らしさを喜びや楽しさのベクトルではなく哀しみやせつなさといった悲劇性でもってより強く表現した作劇も素晴らしく、製作に8年かけただけのことはある傑作だったように思う。

“生きている手応えさえあれば幸せになれる”かぁ、、生きている手応え、あるかなぁ自分

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平成狸合戦ぽんぽこ

51bqc0cfwrl声の出演:野々村真、石田ゆり子、泉谷しげる、林家こぶ平

監督・脚本:高畑勲

(1994年・東宝・119分)

評価★★★/65点

内容:東京・多摩丘陵、のんびりとひそかに暮らしていたタヌキたちは、人間たちによる宅地造成が進んできたことから存亡の危機に瀕していた。開発阻止をもくろんだタヌキたちは、先祖伝来の化け学を復興させて人間に対抗しようとする。

“見ず嫌い  ジブリの中で  抜きん出て

           忘れたころに  見る金曜日”

他にみる  ものがないから  いざ見れば

           あれよあれよと  時は過ぎ

笑える小ネタ  満プクで

           人間研究  いとおかし

銃を乱射の  本官さん

           バカボン調で  登場し

あなおもしろや  と思いきや

           アニメで訓戒  高畑節

も一度見るかと  訊かれれば

          次は見ないと  即答す

めぐってくるぞや  再放送

           2年周期の  金曜日

そのとき見るか  見ないかは

            裏番組で  決すれば

いきつくところは  見ず嫌い

            ジブリの中で  抜きん出て

忘れた頃に  見る金曜日

2016年7月29日 (金)

夢のシネマパラダイス272番シアター:砂の惑星

ジュピター

Poster4_2出演:チャニング・テイタム、ミラ・クニス、ショーン・ビーン、エディ・レッドメイン、ダグラス・ブース、ぺ・ドゥナ

監督・脚本:ラナ&アンディ・ウォシャウスキー

(2015年・アメリカ・127分)WOWOW

内容:近未来。ロシアから密入国し、NYで細々と暮らしている女性ジュピター。ある日エイリアンに突如襲われるが、猿との交配によって驚異的な身体能力を持つ謎の傭兵ケインに救われる。ケインは、人類は宇宙を支配するある王族によって作られたものであり、ジュピターはその王族の末裔だと告げるのだった。そして、彼女は人類存亡をもかけた王族内の王位継承権争いに巻き込まれていく…。

評価★★☆/50点

マトリックス的世界観の幻影を垣間見せるディストピア&侵略SF、壮大な宇宙を舞台とするスペースオペラ、行きて帰りし物語という定型ファンタジーの三要素を融合した意欲作、、と言いたいところだけど、そのどれもが陳腐化してしまっていて1+1+1=3ではなく、0.5+0.2+0.3=1にしかなっていない凡作だったというオチ(笑)。

レトロなスチームパンク感を醸し出すテリー・ギリアム系と奇形的な美的センスを醸し出すデヴィッド・リンチ系のB級スパイスもほんのりまぶしているんだけど、とっ散らかって味がもう分かんねーよみたいな・・・。

しかも、大風呂敷広げるとみせかけて、話のメインストリームは骨肉の遺産相続争いって、裁判所行けーww

空中をスケートリンクのように滑空する反重力ブーツとか、大都会シカゴ上空でのドッグファイトなど映像的な見せ場はあっただけに、ストーリーとキャラクターをたらい回しにするのではなく、この作品ならではのオンリーワンな新機軸を創造してもらいたかった。

ウォシャウスキーでこの出来は、、正直評価に値しない。。

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ジョン・カーター

O0600080311920262916 出演:テイラー・キッチュ、リン・コリンズ、サマンサ・モートン、マーク・ストロング、トーマス・ヘイデン・チャーチ、ウィレム・デフォー

監督:アンドリュー・スタントン

(2012年・アメリカ・133分)WOWOW

内容:1881年、NYで大富豪ジョン・カーターが謎の失踪を遂げ、甥のエドガー・ライス・バローズに一冊の日記が託される。そこには、想像を絶する彼の冒険譚が記されていた。なんと彼は不思議な現象によって、未知なる惑星バルスームへ降り立ったというのだ・・・。

評価★★☆/50点

巷での酷評の嵐を知った上で観たためか最後までスラスラと見れてしまった。

が、面白くないことに変わりはない(笑)。

西部開拓時代の騎兵隊員がバルスーム(火星)へ転送され、そこでの種族間争いに巻き込まれていく英雄譚はカタチとしては悪くない。

しかしながら、バルスームの覇権をめぐるゾダンガ、ヘリウム、サーク族の三つ巴の戦いに全く血湧き肉踊らないことがこの映画をめっぽうツマラないものにしている。

例えば二大勢力ゾダンガとヘリウムの対立に第3勢力である戦闘民族サーク族がどういうふうに関わっているのかとか、この覇権争いの裏で糸を引いているマタイ・シャンのやってることが暇つぶしにしか見えないとか根本的なとこの描写が浅いし、さらにそこにサーク族内の闘争も絡んでくるため、支離滅裂な展開もはなはだしく、複雑な対立構図の中になかなか入り込んでいくことができない。

しかも、キャラクター描写がさらに輪をかけて浅すぎて、敵味方ともに魅力ゼロなので引き込まれないし、サーク族の見分けがつきづらいのもイタイ。。なんかアンガールズ田中のカニ真似にしか見えないんだよね(笑)。

あと、火星の重力が地球より軽いので、主人公がジャンプ力や腕力など超人的能力を獲得するという設定は面白いのだけど、映像にすると漫画チックで軽すぎて見栄えが悪いのもマイナス要素。

飛翔と落下にとって重力がいかに重要なのか逆に分かった気がした。

ただ、この作品の原作って1911年に書かれてるらしくて、100年前ってことを考えるとすごいイマジネーションだなぁと感心してしまう。

スターウォーズや砂の惑星、アバターの元ネタだと思えばこれはやっぱり見ておかなければならない映画なのかもしれない。

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不思議惑星キン・ザ・ザ(1986年・ソ連・134分)Video

 監督:ゲオルギー・ダネリヤ

 出演:スタニスラス・リュブシン、ユーリー・ヤコヴレフ、エヴゲーニー・レオノフ

 内容:妻に頼まれてマカロニを買いに街へ出た建築技師のマシコフに、怪しげなことを言っている変なオッサンがいると学生ゲデバンが助けを求めてくる。浮浪者のような身なりのそのオッサンは、自分は異星人で、自分の星に帰りたいと話す。そんな話など信じられるわけがないマシコフは、男が持っていた空間移動装置のボタンを押してしまい・・と、次の瞬間、マシコフとゲデバンは砂漠のド真ん中に。もちろんここはロシアのカラコルム砂漠かどこかだろうと思って歩いていると、何やらクー!クー!と鳴く男が現れ・・・。旧ソ連で公開当時1570万人を動員したという幻のカルトムービーここに見参!

評価★★★/65点

“「キュー」と「クー」の聞き分けに関して自分の右に出る者はいないと豪語できる!って日常使わないのが玉に瑕・・・。”

レンタル屋のSFコーナーにひっそりと隠れるように、しかもパッケージが何とも古めかしい佇まいで、1本だけ異質な雰囲気を醸し出しているビデオがあった。

手に取ってみると、ソビエトSFファンタジー大全集第1弾と書いてあるではないか。

なんじゃそりゃ。ソ、ソビエト!?ていうか第1弾てことは第2弾もあるのかよ。見あたらねえよみたいな。

しかしソビエトという響きだけでもいまや忘却の彼方だというのに、SFファンタジー?大全集?って、、、とにかくなんだか異質な触れてはならないようなものに触れてしまったような気がして、しかもそれが無性に気になる。

「リング」で主人公がロッジのカウンターの棚に無造作に置かれていた裸のビデオテープに引きつけられてしまったように。

そして、怖いものみたさに、、、借りた。

そして・・・

肩肘張って臨んだ自分がキュー、キュー、キュ~~(大バカ)だった・・・。

この映画のキュ~~度にはそんじょそこらの代物など到底及ばない。

楽々とバカの壁を飛び越え、不条理だと感じることさえすでにキューーだ。それくらいキュ~~なのだ。この映画。。。

これは観た者にしか分からない。自分はこんなキュ~~な映画を観たことがない。

恐るべしソビエト。

まさか第2弾もキューーなのか。。

いやぁ、とにかく参った参った。オープニングのテーマ曲と画面を見たときは、おっ、未来少年コナンかと思っちゃったけど・・・。

ちなみにこの年ハリウッドでは、「トップガン」「エイリアン2」「スタートレック4」などが公開されている。

ものすごい落差だ・・・。

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砂の惑星

00000468714l 出演:カイル・マクラクラン、フランチェスカ・アニス、ショーン・ヤング、スティング

監督・脚本:デイヴィッド・リンチ

(1984年・アメリカ・137分)

評価★★★☆/70点

内容:西暦10091年、人類は宇宙へ進出し、絶大な勢力を誇る皇帝シャダム4世は救世主の出現を危惧していた。予言によれば、救世主は皇帝のいとこアトレイデス公爵の息子ポールだった。皇帝は公爵に砂の惑星アラキスを与える陰で、彼の宿敵ハルコネン男爵と手を組んで公爵を襲い、公爵を自害に追い込む。生き逃れた母とポールは、アラキスの原住民である戦闘集団フレーメン一族のもとに潜伏。そして成長したポールは一族を率いて父の復讐とアラキスの奪回を目指す。。

“デイヴィッド・リンチ原産本格スパイス入りエキスをSFに数滴ポッタポッタと垂らしただけで、一度見たら忘れられない強烈な映像世界に変貌を遂げる。”

それほど強力な香料ですので、悪夢を見た場合は即刻使用を中止して下さい。

そのまま使用を続けると赤ん坊の泣き声が聴こえてくるといった幻聴や、シュークリームの中に切り取られた人間の耳を見つけてしまうといった幻覚に悩まされます。

狂気と神秘の世界のはざまで酔いしれたい方はそのままご使用下さって結構です。どうなっても知りませんが・・・。

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銀河ヒッチハイク・ガイド(2005年・米/英・109分)WOWOW

 監督:ガース・ジェニングス

 出演:マーティン・フリーマン、サム・ロックウェル、モス・デフ、ズーイー・デシャネル、ビル・ナイ、ジョン・マルコヴィッチ

 内容:自宅がバイパス建設で立ち退きを迫られている可哀想な英国人アーサー・デント。が、ある日突然、上空に無数の宇宙船が出現。ななんんと太陽系を通る銀河バイパス建設で地球が爆破されることになったのだ。そしてあっけなく地球は消滅・・。しかし、実は異星人だった親友フォードに助けられたアーサーは、銀河系最大のベストセラー“銀河ヒッチハイク・ガイド”を手にパジャマ姿で宇宙を旅するハメになった・・・。

評価★★★/65点

“わっけ分かんねーー!!!”

映画の中に出てくるセリフ、、、、

「皆は神が創造主と信じていたが、ジャトラヴァーティド人だけは宇宙はクシャミをしたアークルシージャーの鼻から出てきたと信じていた。白いハンカチの襲来と呼ばれるものを恐れる彼らは小さな青い生き物で、腕が1人50本あり、車輪が発明される以前に消臭スプレーを発明した唯一の種族だ。」

って、、わっけ分かんねーーー!!!(^д^)ハァ?

脈絡のない小ネタの数々と、どんどん脱線していくプロットに途中からストーリー追うのをやめかけたけど、一応起承転結を踏んでいるのでますますもってとっつきにくくなっちゃってる。疲れる映画です。。。CGの使い方は巧いけど。

原作は銀河ヒッチハイク・ガイドシリーズとして5巻出ているらしいけど、う~ん、、後ずさりしちゃうな。

まぁ「不思議惑星キン・ザ・ザ」と並ぶ脱力SF映画なのかもしれないけど、もし続編が製作されるようなことがあったらお勉強してみようかな。

2016年6月26日 (日)

夢のシネマパラダイス168番シアター:博士と彼女のセオリー

博士と彼女のセオリー

Poster2出演:エディ・レッドメイン、フェリシティ・ジョーンズ、チャーリー・コックス、エミリー・ワトソン、サイモン・マクバーニー、デヴィッド・シューリス

監督:ジェームズ・マーシュ

(2014年・イギリス・124分)WOWOW

内容:1963年、ケンブリッジ大学大学院。理論物理学を研究し天才物理学者として将来を嘱望されていたスティーヴン・ホーキングは、詩を学ぶジェーンと出会って恋に落ち、公私ともに充実した日々を送っていた。ところが、スティーヴンは難病のALSを発症し、余命2年と宣告されてしまう。それでも2人は共に病気と闘う覚悟を決め結婚する道を選び、のちに長男のロバートも誕生する。そしてスティーヴンは、研究者としての名声も得ていくのだが・・・。

評価★★★☆/70点

たったひとつで宇宙の全てを説明可能な方程式=統一理論を見つけようとする天才物理学者スティーヴン・ホーキング博士。

しかし、神をも恐れぬ領域に足を踏み入れる博士でも、余命2年と診断されながら50年以上も神から生を与えられている奇跡と、“愛”という不思議な方程式だけは解けなかったようだ。

天才数学者ながら精神分裂病にさいなまれるジョン・ナッシュの半生を描いた「ビューティフル・マインド」で、“愛”という方程式が全てを解き明かすという最終理論に到達するのとは正反対だったねw

とはいえ、両作ともに妻の献身には頭が下がるばかり。まぁ、本作の場合、敬虔なクリスチャンである妻と無神論者で自分の研究が神をほふることになっても構わないと考えるホーキング博士の陰と陽の関係性が見どころでもあるんだけど、原作者が妻であるため彼女の自立心の強さが強調されているとともに、夫の介護のはざまで揺れ動く葛藤と下した決断にいたる心の移ろいがよく伝わってきた。

エディ・レッドメインも素晴らしかったけど、より難しい役どころという点ではフェリシティ・ジョーンズも女優賞ものだったと思うんだけどなぁ。この2人は今後も要チェックだね。

P.S. ホーキングが果たそうとしている統一理論というのは、映画において量子論と相対性理論をくっつけようとするものだと説明があったけど、従来水と油だという両論からして全く知識外なので頑張ってちょっと調べてみた。

で、、自分で要点をまとめることができないほど何が何だか分かりませんでしたww

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ビューティフル・マインド

Img23出演:ラッセル・クロウ、ジェニファー・コネリー、エド・ハリス、クリストファー・プラマー

監督:ロン・ハワード

(2001年・アメリカ・134分)MOVIX仙台

評価★★★/60点

内容:プリンストン大学の大学院に進学したジョンは、独創的理論を研究し続け、目標だったウィーラー研究所へ進む。しかし、そんなジョンが政府の機密任務をまかされることになり・・・。ノーベル賞を受賞した数学者、ジョン・ナッシュの伝記をもとに、精神分裂症に苦しみぬいた彼と妻アリシアの苦悩の人生を描いたサスペンスフルな実話ドラマ。アカデミー賞では作品、監督、助演女優、脚色賞を受賞。

“う゛っ、ヤバイ・・・。映画見てる最中、モルダーとスカリーがサブリミナルの如く何回も画面に登場してきた。明らかにこれは自分だけにしか見えない幻覚症状と思われ

宇宙人の植民地化計画か!?腕に埋め込まれたチップは宇宙人に誘拐された時のものか!?政府は何かを隠しているのか・・・!?って途中まで「X-ファイル」の話かと思いながら見ていたけどw、終わってみれば“愛”という完全無欠の方程式が全てを解き明かすというお話だったんだね。

文系人間の自分からすると、群れているハトの動きからアルゴリズムを抽出するのに没頭するようなヘンテコ理系人間&インテリを鼻にかけるような人物であるジョン・ナッシュははなっから受け付けにくいキャラクターなんだけど、そんな取っつきにくい旦那に無償の愛を傾ける奥さん(ジェニファー・コネリー)の献身に心動かされてしまった。

だから、ジェニファーのアカデミー女優賞は大納得なんだけど、作品賞まで受賞するほどの力作だったかといえばやや疑問符のつくところ。

1つ1つのシーンやプロットが、映画の中で雑誌や新聞の文字や数字がパッパッと自然に浮かび上がっては消えていくのと同じようにどこか散文的で、全体的なインパクトには欠けてたかなと。

まぁ、人間ドラマ、サスペンス、ラブストーリーに難病ものとオールマイティなジャンルの垣根を取っ払ったつくりであることが逆に間延びしたような中途半端な印象を受けた要因なのかも。

あとは、なんで彼がノーベル賞取ったのかがよく分かんなかったのもいかがなものか・・w

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イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密

F818e1b3540c8d57071fc64a5d178c6c出演:ベネディクト・カンバーバッチ、キーラ・ナイトレイ、マシュー・グード、ロリー・キニア、マーク・ストロング

監督:モルテン・ティルドゥム

(2014年・米/英・115分)WOWOW

内容:第二次大戦下の1939年。英国政府は解読不可能とされていたドイツ軍の暗号機“エニグマ”の解読のために、ケンブリッジ大学の天才数学者アラン・チューリングやチェスのチャンピオンなど精鋭6人が諜報機関MI6のもとに集められた。ところが、チューリングだけは共同作業に加わろうとせず、一人で勝手に変なマシンを作り始めてしまい、孤立を深めていくが・・・。

評価★★★/65点

戦争は情報を制した方が勝つというけど、その最大の功績者が同性愛者としてわいせつ罪に問われ、日の目を見ることなく人知れず自死していたというなんとも哀しいお話で、正直後味は悪い。

さらに、エニグマ暗号機の解読に成功した後、それをドイツ軍に気付かれないように負け戦を適度にはさみつつ、勝利と終戦へのロードマップを描いていた、つまり誰を生かして誰を見殺しにするのか神の目になって自国民を選別していたという事実に驚愕

戦争というのはどこまでも非情で惨いものなのだと実感した。

ただ、映画として面白かったかどうかといえば、知的興奮の刺激材料として格好の題材である暗号解読や二重スパイといった情報・心理戦といったエンタメ視点よりも、問題解決のためにあらゆる手から最適解を導き出すのに愛や感情は弊害でしかないという機械の考え方に徹するチューリングの苦悩と、その裏に秘められたいびつともいえる純愛というパーソナルな方向にベクトルが向いていて、しかもチューリングの性格が天才につきものの社会性のない変人なので、ちょっと付いて行きづらかったかなぁと・・。

例えば、「アマデウス」における天才変人モーツァルトと凡人常人サリエリのような関係性を持つ人物視点で描いた方が理解しやすかった気も。今回の映画でいえばヒュー・アレグザンダーなのかな。

しかし、そもそもなんで“天気”“ハイル”と“ヒトラー”という単語をクリストファーに入力するだけで解読につながるのか、その暗号解読の仕組みとか原理がいまいち分からなかったので、、う~むむむ

まぁ、その3語が1400万人を救ったというのはスゴイ話だけどね。。

2016年6月19日 (日)

夢のシネマパラダイス356番シアター:神様、神様は本当にいるんですか?

エクソダス:神と王

Poster2_2出演:クリスチャン・ベイル、ジョエル・エドガートン、ジョン・タトゥーロ、アーロン・ポール、シガニー・ウィーバー、ベン・キングズレー

監督:リドリー・スコット

(2014年・アメリカ・150分)盛岡フォーラム

 

内容:古代エジプト王国。国王セティのもとで息子のラムセスと兄弟同然に育てられたモーゼ。成長した彼は、父王の信頼も厚く、国民からも慕われていた。ところがセティの死後に即位したラムセスは、モーゼが実は奴隷階級のヘブライ人であると知るや、モーゼを国外追放する。なんとか生き延びたモーゼは、過酷な放浪の末に一人の女性と巡り会い結婚し平穏な暮らしを得る。しかし9年後、そんな彼の前に少年の姿をした神の使いが現れる・・・。

評価★★★★/80点

普段、映画の感想を書く時に、やれ人間ドラマが薄っぺらいだとかキャラクターに深みがないだとかエピソードが単調だとかツッコミを入れてしまうのだけど、しかしそうはいっても1番スクリーンで見たいのは何かといえば、やはり映画でしか味わえないスケール感を体感したいというのが先にくる自分がいたりしてw

そして、文字通りそれがいの一番にくるのがリドリー・スコットであり、たいして面白くもない話を壮大な大作に仕上げてしまう、つまり40点のお話を70点以上に底上げしてしまう力技は決して期待を外さず、SFものや歴史ものとリドリー・スコットが組み合わさるとワクワク感が止まらなくなってしまう(笑)。

で、今回の作品はまさに40点を80点にグレードアップしたようなリドリー・スコット十八番の映画だったように思う。

地平線を否応なく意識させるワイドスクリーンに映し出される映像は「アラビアのロレンス」を想起させるほどスペクタクルな情感にあふれていて、作り話のようなウソっぽさを払拭させてしまうリアリティとともに映画的なカタルシスをも両立させてしまう魅力があったし、これぞ映画であると肯定させてしまう力技は今回も健在だった。

ただまぁ神仏習合の日本人には理解しがたい部分というか、白黒はっきりさせる一神教の容赦のないエグさだとか、モーゼとオサマ・ビン・ラディンは何が違うのかと一瞬思ってしまう違和感だとか、60年前の「十戒」では描けなかった今だからこその視点で切り取る方法論があってもよかったような気もする。

復讐の化身にしか見えない神、信じる者しか救わない宗教、狂信者と紙一重の人間、、う~ん、、ロクなことがないよね

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ノア 約束の舟

A1d764a44fc39a29575296986686ff7e出演:ラッセル・クロウ、ジェニファー・コネリー、レイ・ウィンストン、エマ・ワトソン、アンソニー・ホプキンス、ローガン・ラーマン

監督・脚本:ダーレン・アロノフスキー

(2014年・アメリカ・138分)WOWOW

内容:旧約聖書の時代。アダムとイブにはカイン、アベル、セトという3人の息子がいた。が、カインはアベルを殺し、やがてその子孫はこの世に善と悪を広めた。一方、セトの末裔ノアはある日、恐ろしい夢を見た。それは、堕落した人間たちを一掃するため、地上を大洪水が飲み込むというものだった。これを神のお告げと確信したノアは、妻と3人の息子と養女のイラと方舟を作り始め、この世の生き物たちも乗せられるように洪水から逃れる準備をする。しかしそんな中、カインの子孫たちが舟を奪うべく現われるが・・・。

評価★★/40点

宗教映画もここまでこじれるとどうにもならなくなっちゃうな(笑)。

旧約聖書にあるノアの箱舟がもともとどんな話なのかよくは知らないけど、これだけ見ると、マインドコントロールされた親父が自分の家族以外の人間を勝手に悪とみなして見殺しにし、さらに生まれてきてはダメなのだと初孫にまで手をかけようとするも、家族の懸命な説得で我に帰るっていうどーしょーもない話なわけでしょ・・。

まぁ、こういう一神教に特有の信じる者は信じない者を駆逐してかまわないという選民思想は日本人には理解しがたいものがあるので、ちょっとテーマ的にもなじめなかったなぁと。。

唯一、ハリー・ポッター組の中でエマ・ワトソンだけが順調に女優としてキャリアを積んでいってるなと確認できたことだけが救いだった。。

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パッション

Dvd出演:ジム・カヴィーゼル、マヤ・モルゲンステルン、モニカ・ベルッチ、ロザリンダ・チェレンターノ

監督・脚本:メル・ギブソン

(2004年・アメリカ・127分)盛岡フォーラム

内容:ローマ兵の虐待を受けながらゴルゴダの丘へ連行され、人々のために祈りつつ処刑されたイエス・キリストの最期を、見る者に嫌悪感を抱かせるほどの暴力描写と当時と同じアラム語とラテン語のセリフなど徹底したリアリズムで描いた問題作。

評価★★/45点

“自分の中にあるパッションは一度も高ぶることなく灯火さえともることがなかった。胸を張ってカミングアウトしよう。この映画に不感症だと。”

あなたはどんな映画が好きかと訊かれたら自分は間違いなくこう答えるだろう。

ぶっちゃけ人殺しをしようが何をしようがとにかく生への執着、生きることへの必死さ、そういう思いが伝わってくる映画を見るのが最も好きだと。

そんな映画が好きな自分にとって、生への執着を超越し、生きることへのひたむきさなどどこ吹く風のまったく対極にあるこの映画を見ることが自分の中にどのような反応をもたらすのか(正確には無反応)ある程度は予想がついてはいた。

しかしその予想を超越したレベルで自分はこの映画に無関心無感動無感覚だった。

殴る蹴る、さらされた血みどろの身体、飛び散る血しぶき、そんな目を覆うような映像の連続を目の当たりにしても自分の感情は喜怒哀楽どちらにも一向に傾くことはなかった。どこまでも平然かつ冷静沈着な自分がいた。エグイ描写でこんなに冷めてていいのだろうかと思ったくらい・・・。

前に座ってたカップルなんて、先に男の方が途中で席を立って、3,40分戻ってこないことに業を煮やした彼女がしぶしぶ席を立っていったり、かと思えば別な一角からはすすり泣く声が聞こえてきたり、、ふ~ん、やっぱ今の時代、男の方がヤワなんだなとかあそこで泣いてるのはクリスチャンなのかねぇとか劇場の反応の方まで冷ややかに見ている自分がいたりして

まずもって、この映画における徹底したリアリティの追及は、自分にとって何ら評価ポイントにはならなかったということだけは確かなようだ。

この映画のチラシには、「いかにもウソっぽい歴史大作」ではなく徹底したリアリティを追求するために世界最高のスタッフが集結した、というふれこみがあった。しかしこの徹底したリアリティの追求というのは一見映画に限りない実感と重みをもたらすと思われるが、それはまた諸刃の剣であるということも忘れてはならない。リアリティを追求しすぎることが今度はかえって映画のもつエンターテイメント性と観客のもつイマジネーションを削いでいってしまうという弱点をも内包しているといえるからだ。

そのことをふまえた上でいうと、人それぞれ好き嫌いはあると思うが、個人的に優れた歴史映画というのは、リアリティの追及と同時に、いかにうまくウソをつくかというその2点におけるバランスがうまくとれているもの。そういう映画が優れた歴史映画だと思う。

その点についてこの映画を評価するならば、優れた歴史映画という括りには全く入れることはできず、完全な宗教映画になってしまっているといえる。キリスト教信者以外何ら見るべき価値はない映画だと断言しちゃってもいいのではないかなと。

クリスチャンでも何でもない自分にとってはホント聖書を読んだときの堅っ苦しさと形式ばった窮屈さと全く同様のものを感じ取ってしまったわけで。

別に聖書を否定したいわけでは決してなくて、史劇とか人間劇といったエンターテイメントやスペクタクルにどううまく聖書を織り込んでいくか、その使い方とバランスが重要だってこと。

その好例としては例えば「ベン・ハー」が挙げられるかな。

とにかくあれだね、小学生の頃よく学校の帰り道でキリストの受難や天国とか地獄についての紙芝居をやってるのに出くわして見たことがあったんだけど、そのときに得たインパクトとパッションの方がメル・ギブソンの映画を見たときより何倍何十倍も大きかったことだけはここに記しておこう。

追記1.あ、そういえば思い返してみると幼稚園と大学がカトリック系のところだったんだっけ・・

2.自分が考える優れた歴史映画とは具体的には「ベン・ハー」や「グラディエーター」といった類の映画です。

3.ああいう虐待シーンを見せられるにつけ、イラク戦争におけるアメリカ軍の虐待など、人間って2000年経っても何にも変わってないんだなぁと悲しくなってしまった。

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ミッション(1986年・イギリス・126分)WOWOW

 監督:ローランド・ジョフィ

 出演:ロバート・デ・二―ロ、ジェレミー・アイアンズ、レイ・マカナリー、エイダン・クイン、リーアム・ニーソン

 内容:1750年、南米奥地イグアスの滝。イエズス会の神父ガブリエルは、布教活動のために滝の上流に住むインディオの村を訪れ、彼らの信頼を得ていく。一方、奴隷商人のメンドーサは、三角関係のもつれから弟を殺してしまう。罪の意識に苛まれる中で神父に帰依し、ガブリエルと共に伝道の道に入るのだが・・・。

評価★★★☆/70点

中南米のサッカー選手はピッチを出入りする時に十字を切って神のご加護を祈り、試合後のインタビューでは神への感謝の言葉を惜しげもなく口にし信仰心をあらわにする。サッカー好きの自分は以前から世界で最も敬虔なクリスチャンは中南米の人ではないかと思っていた。

しかし、なぜ中南米のほとんどの国がスペイン語を話し、カトリック教国なのか、、その裏にある痛ましい歴史を垣間見るとなんとも複雑な気持ちになってしまう。

世界は全てカトリック国になるべきだという強烈な使命感を持っていたスペインとポルトガルの庇護のもとキリスト教布教を目的に設立されたイエズス会。しかし、そんな崇高な理念とは裏腹に、この時代のカトリック宣教師が“侵略の尖兵”の役割を果たしてきたことは事実であり、平和目的のように聞こえる布教という言葉の裏で実際行われていたことは軍事的征服つまり侵略だった。

国を滅ぼして宗教と言語を押し付けるのが1番手っ取り早い“布教”だからだ。

しかもここが一神教のタチの悪いところだけど、彼らには侵略や虐殺をも神から与えられた使命と思い込んでいた。人間も含めたこの世界は唯一絶対の神が創造したもの、つまりもともと神の所有物なのに、その神の存在すら知らないあるいはニセモノの神を信じる無知な恩知らずがいて、そういう連中にキリスト教を教え広めるためなら何をしても構わない=正義の行いをしているという論理だ。

映画の中で枢機卿が「医者が命を救うために手術するように、この土地にも思いきった荒療治が必要なのだ」と豪語するのだが、勝手に手術される方はたまったものではない。

しかも、手術が成功し、理想郷ともいえるコミュニティが作り上げられたと思いきや、今度はスペインとポルトガルの領土の取り分争いから立ち退きを強要され結果虐殺されてしまう・・。

欺まんに欺まんを重ねた宗教の名を借りた侵略について深く考えさせられたけど、が、しかし中南米が完全にキリスト教文化圏となっている現代において、彼らの“正義”が勝ったのもゆるがない事実。

多神教的なメンタリティの方に共感を覚える自分にとっては、切っても切り離せない歴史と宗教の関係の中で宗教によって救われた人の方がもちろん多いだろうけど、宗教によって滅ぼされた人も数多いるのだということを忘れてはならないと思う。

P.S.とはいえ国境を越えて命の危険をかえりみず未知の世界各地に散らばっていった宣教師のフロンティアスピリットと使命感はスゴイの一言で、日本に来た宣教師も不安でいっぱいだったんだろうなと今回の映画を見て思った。。

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十戒(1956年・アメリカ・220分)NHK-BS

 監督:セシル・B・デミル

 出演:チャールトン・へストン、アン・バクスター、ユル・ブリンナー

 内容:1923年にセシル・B・デミルが監督した「十誡」を、デミル自らが再映画化したスペクタクル史劇。エジプト王ラムセス1世は、新しく生まれるヘブライの男子をすべて殺すという命を発した。母親の手によってナイル川に流されたモーゼという名の赤ん坊は、好運にも王女のもとへ流れ着く。成長したモーゼがエジプト王子として勢力を得てきた頃、宮廷では実の王子ラムセスが権力を振るっており、2人は王位と王女ネフレテリの争奪を始める。。

評価★★★/60点

どう見たってちゃちい紅海真っ二つシーン。

しかしなんだかんだ言ってモーゼといえばこの映画の映像しか頭に浮かばないというのはある意味スゴイ。

2016年2月 7日 (日)

夢のシネマパラダイス371番シアター:パニック・イン・パニック

デイ・アフター・トゥモロー

Day_after_tomorrow_ver4 出演:デニス・クエイド、ジェイク・ギレンホール、イアン・ホルム

監督・脚本:ローランド・エメリッヒ

(2004年・アメリカ・124分)MOVIX仙台

内容:温暖化による異常気象で、世界中が大災害に見舞われ始めた。そして地球は凄まじい速さで氷河期へ突入。気象学者のジャックは、ニューヨークにいる息子を救出すべく、極寒の中ワシントンを発つが・・・。

評価★★★/65点

“たった何日かで世界が浄化されてしまうというのは虫が良すぎはしないか。やっぱ腐海にはかなわないな。”

ラストの地球のアップと「こんなに空気が澄んでる地球は見たことない。」というセリフ・・・。

おもいっきりハデなディザスター軍団が風のようにやって来て風のように去っていった後のとってつけたような安易すぎるエコロジズム。

引っかかるねぇオイラは。

単純に楽しむべき映画だとは分かっていてもやはり引っかかる。

大海嘯が起った後、人類を待っていたのはさらに永く苦しい業苦だったはず・・・なんだけどね。

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ツイスター

Twister出演:ビル・パクストン、ヘレン・ハント、ジェイミー・ガーツ、ケイリー・エルウィズ

監督:ヤン・デ・ボン

(1996年・アメリカ・113分)仙台第1東宝

内容:幼い頃に大竜巻で父親を失ったジョーは、竜巻を追う観測チームのリーダーとなっていた。ある日、彼女のもとに夫のビルが離婚届にサインをもらうために新しい恋人のメリッサと一緒にやって来るが、かつて自分が考案した竜巻観測機ドロシーを見て心が騒ぎ出す。彼らのライバルであるチームも竜巻の観測に情熱を燃やしており、竜巻のド真ん中に命がけで観測機を置くことを競うが、巨大な竜巻になかなか近づくことができないでいた・・・。

評価★★★★/80点

人の不幸を見るのは実は内心好きなのだけど(笑)、自ら不幸に突き進んでいくおバカさんを見るのはもっと好きかもな憐れなわたくしめをどうかお許し下さい。。。

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イントゥ・ザ・ストーム

Poster2出演:リチャード・アーミテージ、サラ・ウェイン・キャリーズ、マット・ウォルシュ、アリシア・デブナム=ケアリー

監督:スティーヴン・クエイル

(2014年・アメリカ・89分)WOWOW

内容:アメリカ中西部の街シルバートン。竜巻の撮影を専門とするピート率いるストーム・チェイサーはなかなか成果を上げられずにいたが、チームの気象学者アリソンは、シルバートンにかつてない巨大竜巻の襲来を見出す。一方その日、地元高校では卒業式が執り行われようとしていた・・・。

評価★★☆/50点

ディザスタームービーは基本何も考えずに見て楽しむジャンルだけど、見せ方が一辺倒な流れだと飽きてきちゃうんだよね。

で、この映画の場合、のっけから竜巻をこれでもかと見せてくるサービス精神旺盛さがあるんだけど、15分でパターンが読めてしまう

例えば田舎町だけじゃなくて高層建築物や住宅街が密集する大都市を襲うとかロケーションに変化をもたせないと・・。

YouTubeを意識したPOV視点の動画仕立ての映像も、リアリティ志向とは裏腹に作り物感がありありでイマイチだったし。結局1番ハラハラドキドキしたのは高校生2人が密閉空間に閉じ込められて、そこがどんどん浸水してくる中で間一髪で救助するシーンというアナログなものだったww

まぁ、ここ数年で地震・津波・噴火・洪水etc.を目の当たりにしてきた日本人にとっては、このくらいのレベルじゃ驚かないよね

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ポセイドン・アドベンチャー(1972年・アメリカ・117分)NHK-BS

 監督:ロナルド・ニーム

 出演:ジーン・ハックマン、アーネスト・ボーグナイン、シェリー・ウィンタース、レッド・バトンズ

 内容:ギリシャに向って航行中の豪華客船ポセイドン号は、クリスマスパーティの最中に、海底地震による大津波を受けて転覆。瞬く間に数百名の命が奪われ、かろうじて生き残ったわずかな人々。混乱が続く中、神を頼るなと主張する型破りな牧師スコットに率いられた数人は、上下が逆になった船内を船底(上を)目指して進み始めるが・・・。’70年代に大流行したパニック映画ブームの元祖火付け役となったパニック・スペクタクル。

評価★★★☆/70点

“すべてが逆さまになった世界で何が正しいのか、何が間違っているのか分からないという極限状況を泥臭く描いたという点では評価できる。”

パンツまる見えだろうが、ブヨブヨの身体をさらけ出そうが、ケツにしがみつこうが、ずぶ濡れになって胸がスケスケになろうが、とにかく生き抜きたい!そのハンパない感情。

ベテラン俳優陣の底力には頭が下がります。

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ポセイドン

837c83z83c83h8393 出演:カート・ラッセル、ジョシュ・ルーカス、ジャシンダ・バレット、リチャード・ドレイファス

監督:ウォルフガング・ペーターゼン

(2006年・アメリカ・98分)盛岡フォーラム

評価★★☆/50点

内容:大晦日の夜。北大西洋をNYに向けて航行中の豪華客船ポセイドン号ではニューイヤー・イブのパーティが華やかに催されていた。ところが、50メートルに及ぶ巨大な大波に突如として呑まれた船は、瞬く間に船底を上に向けて完全に転覆。4千人の乗客の多くは一瞬にして命を失ってしまう。わずかながら生き残った生存者たち。船長は救助が来るまでその場にとどまるように命じる中、プロのギャンブラーであるディランは直感を信じて一人脱出を企てる。一方、前NY市長のロバートも別の場所にいる娘ジェニファーを捜すためディランと行動を共にする・・・。いわずと知れた「ポセイドン・アドベンチャー」のリメイク。

“こんなダイエット意味ない。。”

アクが強く人間臭さに満ちあふれた登場人物たちが織り成す人間模様、CG皆無の巨大実物船体セット、やや哲学じみたキリスト教精神、神との対決、スリリングな冒険アドベンチャーといった要素が詰め込まれた娯楽スペクタクル大作「ポセイドン・アドベンチャー」。

しかしこのオリジナルを体脂肪率が優に45%を超えるメタボリック症候群と断定したリメイクスタッフは苛酷なダイエットを課すことを決定!

そこで選ばれたのが、ドイツ仕込みのWolfgang式ダイエット。

それにより悪玉コレステロールと決めつけられた人間ドラマの完全除去に成功し、体脂肪率8%のシャープでスリムな体型へと見事に変貌を遂げた!

が、あまりにも性急なダイエットと出来合いの栄養分しか摂れなかったせいで、中身はスカスカ栄養失調寸前状態という有り様になってしまったのであった・・・。チャンチャン。

CGなどにより映像面では格段の進歩があったのはいいけど、肝心要の逆さま感覚が全く感じられないのは致命的だったね。

また、消防士になったら死ぬ運命の男カート・ラッセルは今回も「バックドラフト」同様の顛末を迎えるけどあっけなさすぎるし、人間ドラマが無いに等しいので、オリジナル作でのジーン・ハックマンの悲壮な結末ほどのインパクトも皆無。

はたして彼の死に意味はあったのだろうか、と逆に可哀想に思えてくる。

完全なムダ死にだね。。。

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タワーリング・インフェルノ

7089 出演:スティーブ・マックイーン、ポール・ニューマン、フェイ・ダナウェイ、フレッド・アステア、ウィリアム・ホールデン

監督:ジョン・ギラーミン

(1974年・アメリカ・165分)NHK-BS

内容:138階建ての超高層ビル“グラス・タワー”で完成披露パーティが行われている頃、81階の倉庫から出火したボヤが原因でビルは激しい炎に包まれた。135階のパーティ会場には逃げ遅れた人々が取り残され、外からの救出を待つ。消防隊長のオハラハンは、ビル設計者のダグと協力して消火、救出活動にあたる。。。

評価★★★★/80点

見始めたら止まらないカルビーかっぱえびせん♪

トイレに行くタイミングさえ見事にないよ。

後の映画に与えた影響も多々あるはずだけど、火事だというのにパーティを続行しつづける社長の無知と傲慢さは「ジョーズ」(1975)に出てくる市長そのもの。

また、オープニングのヘリ飛行シーンのアングルやカットなどそのまんま「ジュラシック・パーク」のヘリ飛行シーンなわけで、確実にその後の娯楽作に受け継がれていくネタの宝庫がぎっしりと詰まった超高層ビルであるともいえるだろう。

2015年12月26日 (土)

夢のシネマパラダイス44番シアター:はたして戦場は娯楽たりえるのか!?

フューリー

20141203181622a78出演:ブラッド・ピット、シャイア・ラブーフ、ローガン・ラーマン、マイケル・ペーニャ、ジョン・バーンサル、ジェイソン・アイザックス

監督・脚本:デヴィッド・エアー

(2014年・イギリス・135分)WOWOW

内容:1945年4月。連合国軍は戦況を優位に進めベルリンに向けて進軍していたが、ドイツ軍の捨身の反転攻勢に苦しめられていた。そんな中、北アフリカ→フランス→ドイツと転戦してきたベテラン曹長ウォーダディーが駆る戦車“フューリー号”に、補充兵として戦闘経験ゼロの新兵ノーマンが配属されてきた。乗員5名となったフューリー号は敵陣深くへと進軍していくが・・・。

評価★★★☆/70点

戦車に特化した戦争映画はたぶん初めて見たと思う。

話のつくりとしては、戦車に乗って巡る戦場1日体験ツアーといったロードムービー的要素を軸とし、そこに「硫黄島からの手紙」の二宮和也や「プライベート・ライアン」のジェレミー・デイビスのような戦争を知らない現代若者の視点を取り入れることで、戦争の惨状をより身近に真に迫ったものとして実感させるものになっていて、それは一応の成功をみせていたと思う。

また、ロードムービーの必須テーマである“成長”も、戦闘経験のない新兵が敵を殺しまくることに何のためらいもなくなるいっぱしの兵士に成長する姿として描き出されていて、わずか一日でそのように変貌してしまう恐ろしさはよく伝わってくる。

ただ、潜水艦映画は数多くあれど戦車映画はない理由がなんとなく分かったというか、絶対外には出られない&敵の姿を視認できない潜水艦は、密室の中に極限状況の緊迫感と人間関係が充満するわけだけど、戦車は外に出られるし敵の姿も見れるので、そこらへんがちょっとヌルくて中途半端なかんじはしたかな。

戦車の後ろに歩兵がついて敵陣地を進んでいくという遮蔽物としての役割も担っていたとかは目からウロコだったけど。。

しかし、この映画で特筆すべきはそんなことではない。

それは、ブラピをはじめとする米兵が正義ヅラしていないということだ。

第二次世界大戦はファシズムから自由と民主主義を守るために戦ったのだとし、原爆投下でさえも正義と言ってはばからないアメリカは、かの戦争を描いた映画でも、こちらは正義であちらは悪と白黒明確なキャラ付けをしていることがほとんどだった。

「プライベート・ライアン」なんて兵士を国もとの母親に帰してやるために捜し出すという崇高なミッションまで付与されていたりして(笑)、それはつまり米兵が汚い言葉は吐けども汚い行為はしないというキャラクターにつながっていくのだけど、今回は平気で捕虜を射殺するわ、民間人の家に押し入ってそこの娘に手を出すわ(ブラピが若い2人に任せておこうと母親を制するが、そんな道理が許されるはずはない)、かなり醜悪な一面をも描き出していて、善悪二元論では割り切れない戦争の姿をさらけ出している。

戦場とは文字通り無慈悲な殺し合いの場なのだということを正面切って描いていて、第二次大戦を題材にした従来の戦争映画とは一線を画していたと思う。

戦争とは悲惨なものなのだ。

長渕剛の歌にあるように、戦争には正義もクソもないのだから・・・。

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ハート・ロッカー

O0800112410516331041 出演:ジェレミー・レナー、アンソニー・マッキー、ブライアン・ジェラティ、レイフ・ファインズ、ガイ・ピアース

監督:キャスリン・ビグロー

(2008年・アメリカ・131分)WOWOW

評価★★★/60点

内容:2004年夏、イラク・バグダッド郊外。アメリカ陸軍ブラボー中隊の爆発物処理班。任務明けまで残り38日。が、新たにリーダーとして赴任してきたジェームズ二等兵の慎重とは真逆の無謀ともいえる爆弾処理のやり方にチームを組む周りの隊員は不安を感じていくのだった・・・。アカデミー作品賞、監督賞など6部門で受賞。

“映画は麻薬のようなものである”

この映画を見る前も見た後も思うこと。

「アバター」の方がアカデミー賞獲ってしかるべきだった!!

イマジネーションとテクノロジーの豊穣な結びつきによる誰も見たことのない世界と、リアリズムとテクノロジーの不条理な結びつきによる誰も見たことのない世界。

シネマ中毒の自分はやっぱり前者を支持してしまうのであるけれども、リアリズム=肉体とテクノロジー=爆弾の緊迫した対峙はたしかに見応えはあるし、その最たるものとして身体の中に爆弾を埋め込まれた人間爆弾という不条理でおぞましい現実には目を覆いたくなってしまう。

またリアリズム=手持ちカメラとテクノロジー=映像技術として捉えるならば、情緒を廃した客観性を主体とする中で不条理で虚無的な戦場の真実を浮かび上がらせることには成功している。

しかし、、だ。

あまりにもドライなこの映画のタッチは、その代償としてドラマまでをも廃棄してしまった感が否めず、感情移入すら入り込むことを許してくれない。

まるで黒ヒゲ危機一発ゲームを傍から見ているかのようで、しかもこのゲームに自分は参加していないのだという安心感が自分の心情を空疎にさせる。そして後半、差し込み穴の数が少なくなっていくうちに恐怖がジワジワと襲ってくるのだけども、エピソードの単調な羅列がそれを相殺していく・・・。

戦争ジャンキーとなったジェームズの姿が「ディア・ハンター」(1978)でロシアンルーレット漬けになるクリストファー・ウォーケンとダブって見えたけど、そこらへんもっと掘り下げてほしかったし、正直これだったら最初っからドキュメンタリーで撮ればよかったのにと思ってしまった・・・。

短絡的だとか露悪的と揶揄されようが、自分は安直なドラマ、もっとカッコ良くいえば自分のエモーショナルな部分を揺さぶるようなドラマをこそ見たい。

「アバター」には、それがあった。

P.S. クソイラクともやっとでオサラバだ!とエルドリッジがヘリで去るシーンがあったけど、同じようなシーンを「プラトーン」とかのベトナム映画でも見た気が。同じことをイヤというほど繰り返すんだアメリカって国は。。

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グリーン・ゾーン

Greenzone 出演:マット・デイモン、グレッグ・キニア、ブレンダン・グリーソン、エイミー・ライアン、ジェイソン・アイザックス

監督:ポール・グリーングラス

(2010年・米/仏/西/英・114分)WOWOW

内容:大量破壊兵器を保有しているとしてイラクに侵攻したアメリカ軍。バグダッド陥落から1ヶ月。ロイ・ミラー准尉率いる部隊は、大量破壊兵器の発見という極秘任務に就いていたが、その痕跡すら掴めずにいた。次第に、情報源への疑いを強めていくミラーだったが・・・。

評価★★★★/75点

イラクに大量破壊兵器はあったのか!?探しても探しても大量破壊兵器が見つからないのはなぜか!?

この大量破壊兵器をマクガフィンとして繰り広げられるアクションムービーの体をなしている今回の作品。

ジェイソン・ボーンシリーズを舞台をイラクに移植したような娯楽作でありながら、イラクの悲惨な状況下を社会派感覚織り交ぜて描き出した手腕はかなりのもので、そのスピーディな展開は2時間では足りないほど濃密。

事実を隠蔽してまで開戦に突っ走る国防総省(パウンドストーン)、ネオコン=国防総省と対立するCIA(マーティン・ブラウン)、政府のプロパガンダ機関になり下がるメディア(ローリー・デイン)、さらにそこに真相を握るイラク側のキーマン(アル・ラーウィ)、イラクの一市民(フレディ)を配置し、その中をスター気取りの自由人(ロイ・ミラー)が縦横無尽に駆け回ることでイラク戦争の背景を暴き出していく。

非常に単純化された構図ともいえるけど、あくまでアクションエンタメに舵を取ったスタンスの中でのバランス感覚は秀逸だ。

加えて、ポール・グリーングラスのスタイリッシュな映像もリアリティがあって抜群に良い。

即物的で人に興味のない、すなわちエモーショナルな部分に乏しい「ハート・ロッカー」よりも国家にノーを突きつけるあからさまなヒロイックを描くこっちの方が自分は好きだ。

おそらくそこには欺瞞であるとかプロパガンダであるといった揶揄がつきまとうのであろうけれども、人間対人間のむき出しのバトル(感情面であれ身体面であれ)こそ映画の真髄だと思うし、それをこそ見たい者にとっては、イラク戦争という関心事を舞台に強引にエンタメにまとめきったポール・グリーングラスの手腕を自分は買いたい。

しっかし、戦争ていうのはいかに茶番劇かってことだよね。こんなので数万人が無駄死にするなんて報われないよ・・・。

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プライベート・ライアン

P009 出演:トム・ハンクス、トム・サイズモア、エドワード・バーンズ、マット・デイモン

監督:スティーブン・スピルバーグ

(1998年・アメリカ・169分)仙台第1東宝

評価★★★★★/90点

内容:1944年、米英連合軍によるノルマンディー上陸作戦は多数の死傷者を出しながらもなんとか成功を収める。そんな中、戦渦を切り抜けたミラー大尉は、軍首脳から「ライアン2等兵を捜し出し、故郷の母親のもとへ帰国させよ」との命令を受ける。ミラーは部下を指揮して、落下傘の誤降下で行方が知れなくなったライアンを捜しに、敵地の前線へと向かうのだった。

“映画を観終わって、映画館を一歩出たときの眼前に広がる高層ビル群を前にして一瞬立ちすくんだ。あの息が詰まるようなクソ世界から、隔絶された現実世界へいきなり舞い戻ったための一種の時差ボケのような感覚だったのかもしれない。あの時の一瞬の眩暈と何ともいえない気持ちは一生忘れることはないだろう。”

それほどまでに映画の世界に入り込んでいた。

というよりは強引に入り込まされていたといえる。

冒頭30分については既に言い尽くされているが、あの揚陸艇のハッチが開けられた瞬間に自分も首根っこ引っつかまれて海中に引きずり込まれるように、突如として映画の中に入り込まざるを得なかったのだ。

なんともあざとい手法にまんまと引っかかってしまったものだ。

スピルバーグの手法のパターンについては熟知していたものを、予想を超える強烈なアッパーカットを喰らってしまった。

しかし、あの強烈な衝撃波こそ映画のリアリティそして戦争というリアリティなのかもしれない。

同年に公開され、今作と好対照をなす「シン・レッド・ライン」と合わせて、まさに20世紀、戦争の世紀を締めくくるのに相応しい映画だったと思う。

そして21世紀、戦争映画の世界標準となったことは疑う余地がない。(他ジャンルの映画にまで良くも悪くも影響を与えてしまったが・・・。)

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ローン・サバイバー

20140402220335出演:マーク・ウォルバーグ、テイラー・キッチュ、エミール・ハーシュ、ベン・フォスター、エリック・バナ、アレクサンダー・ルドウィグ

監督・脚本:ピーター・バーグ

(2013年・アメリカ・121分)WOWOW

内容:2005年、アフガニスタン。米海軍特殊部隊ネイビーシールズの4名が、タリバン指導者の暗殺任務“レッド・ウィング作戦”遂行のためアフガン山岳地帯に降下する。衛星電話さえ繋がりにくい孤立状況の中、タリバンの秘密基地を発見したまでは良かったものの、4人は運悪く現地の非戦闘員と遭遇。その処遇をめぐる苦渋の判断が4人を絶体絶命の状況に陥らせてしまう・・・。

評価★★★/65点

映画の構成力、映像の筆致はともにレベルが高い。特に冒頭4分弱で「フルメタル・ジャケット」の前半1時間分、殺人兵器養成合宿と同等のインパクトを与えるに足る実際の訓練風景がもたらす画力と巧さには唸ってしまう。これにより、その後の一見するとあり得なさすぎな転落に次ぐ転落劇に説得力が与えられている。

しかし、25年前だったらスタローンのランボー1人で敵を根絶やしにできたのだろうけどw、永久に終わらない泥沼の戦いを続けている現在では、そういう絵空事を娯楽アクションに転化する余裕はなくなっているらしい。

それどころか敵に追い立てられ、蜂の巣のなぶり殺し状態を延々見せられるに至っては感情移入することすらままならない。つまりは敵を狩る側にいたアメリカが、狩られる側に身を置くことになってしまった立場の逆転をまざまざと見せつけられるわけだ。

しかし、例え敵地の戦場で作戦が失敗し、いかなる代償を払おうとも、それは武勇伝という美談になり、変わらずアメリカは正義であり続け、これからも自由を守るために戦うのだ!と星条旗をなびかせながら決意を新たにする英雄気取りの正当化視点にはいささか違和感を覚える。

例えば、アメリカにタリバンが潜入し、米司令官を暗殺するべく隠密作戦を実行中、牧場のカウボーイと出くわすも人道的観点から解放。ところがそれがきっかけで米軍に察知され撃退されてしまう。あるいは、北朝鮮工作員が日本人を拉致するために潜入するも見つかって自衛隊にボコボコにされる。

このタリバン&工作員と今回のネイビーシールズは何が違う!?根っこは同じ自業自得な話ではないのか。

それでも他国に土足で踏み込むことを是とするアメリカの正義はやはりどこか違うだろ、と思ってしまう。

25年前、アフガンでランボーはタリバンと手を組みソ連軍と戦った。しかし今ではそのタリバンと戦うはめに陥り、反タリバン勢力と手を組んでいる。25年後、その構図はどうなっているのやら・・・。

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ブラックホーク・ダウン

Black 出演:ジョシュ・ハートネット、ユアン・マクレガー、トム・サイズモア、エリック・バナ

監督:リドリー・スコット

(2001年・アメリカ・145分)MOVIX仙台

評価★★☆/45点

内容:1993年、内戦が続くソマリアの秩序を維持するために、米軍は武装勢力アイディード派の幹部捕獲作戦を敢行。作戦は1時間で完了するはずだったが、戦闘ヘリ“ブラックホーク”が民兵によって撃墜され、戦いは泥沼に陥ってしまう・・・。

“アメリカ一極支配の終焉

オープニングでこの映画は事実に基づくと前置きする通り、実話ベースの映画ではあるのだけど、人物の掘り下げを敢えてすることもなく、ゆえに名前と顔も一致しないから見る側に感情の付け入る隙を与えず、淡々と戦闘を描き、淡々と死を描く。そして死は単なる客観的事実でしかないという感情度外視の描き方がハンパなく、見終わっても何も感じなかったのが逆に怖いくらいの作品だった。

作品世界との距離を縮める要素を持たないノースタンスの描写は、好意的にみれば観客側に委ねる作りともいえるけど、悪くいえば主義主張のない単なる逃げとも受け取れるわけで、どうも今回は後者の感が強かったような・・。

まじめな話、自分でもなんでだろうと思うくらい冷めて見てる自分がいて、、と、ふとこの映画を見ている自分の顔って、統合作戦本部のサム・シェパードの作戦指示を上空500フィートを旋回するヘリから伝える上官の無機質でのっぺりとした顔と同じであることに気付く。

それはつまり、テレビのニュース映像を通して戦争の断片にしか過ぎない成り行きをただ見ているだけのあまりにも遠すぎる距離感といってよい。要はこの距離感というのは、まさに映画の作り手側の意図するところであり、作り手側と映画自体との距離感でもあるのだろう。

しかし、先述したことに戻るけど、肝心の作り手側が最初からほっぽり出してるだけじゃんともいえるわけで、そこに何か意味を見出すというのはかなり難しいところではあると思う。

ただ、奇しくもアメリカ同時多発テロ事件と同じ年に映画が公開されたというのは時代性を捉えた作品であることもたしかで、世界の警察として秩序保持のために他人の揉め事に率先して首を突っ込んだあげく敢え無く自滅するアメリカの限界を赤裸々に描き出しているという点で見る価値はあるのかも。

それはまるでスズメバチの巣を突っついて返り討ちに遭う大バカ者といったかんじだけどw、映画のラストで「他人の戦争に飛び入り参加するなんて戦争中毒なのか?それとも英雄のつもりなのか?」という問いに対し、「仲間のために戦う。それだけだ」という主人公の答えが全然本質的な答えになっていないところがアメリカの矛盾を露呈させていて面白かった。

ところで、以前ピュリツァー賞写真展が開催されて足を運んだことがあって、ちょうどこの映画で描かれていた出来事を撮った写真が1993年だったかのピュリツァー賞を受賞していた。死んでいる米兵の遺体が裸にされて群衆に引きずり回されている写真だった。たった数枚の写真だけで、2時間半という長尺を割くこの映画を凌駕してしまう真実がそこにはあった。

もちろん様々なメディアや媒体ツールを通して考えなければならない問題ではあるけど、この映画を見ちゃうと、なにも映画がノンフィクションと同じ土俵に立ってそのマネ、模倣をしたって何の意味もないとも思ってしまう。

だって、どう頑張ったって虚構にしかすぎないのだから。

だから映画には作り手の主観が入って当然だと思うし、何も逃げることはない。英雄に描きたかったら描けばいいじゃんってだけのこと。あるいは批判的に描きたかったら描けばいいじゃんってだけのこと。

そしてノンフィクションとはまた違ったより多角的な視点から物事を考えたり捉えたりすることができるのではないかなと。

それでいいと思うんだよね映画って。映画というのはそういう一歩踏み込んだ自由な表現の媒体であるべきだと思うから。そこに踏み込めないというのはまた最初に戻っちゃうけど映画としてどうなんだろうと、自分は思ってしまう。

この映画にはもっとわがままに描いてもらいたかったけど、わずか10年かそこら前の話を描くにはまだ時期尚早だったということか・・・。

(*)ソマリア内戦について

一応2000年には国連の監視の下に暫定政権が樹立されはしたが、いまだに中央政権は確立されておらず、文字通りの無政府状態と言ってよい状態が続いている。2006年あたりからは隣国エチオピア軍をも巻き込んだ紛争が活発化し、つい先日にはアメリカ軍がアルカイダ掃討と銘打って空爆を行った。

個人的にはいわゆるソマリア内戦に関していえば、第三者が介入しなくてはならない、そうじゃないと解決しない問題だったと思う。たとえそれがアメリカであろうとも。

ソマリアにも十分すぎるほどの非はあることを忘れてはならない。特に問題の解決手段を武器と殺戮にしか求めないやり方には。

もちろんその武器を与えてやったのは冷戦時代のアメリカ、そして旧ソ連だったわけだけど・・・。しかも解決手段を同じ武器でもって介入するというアメリカのやり方もいかがなものか。難しい問題です。

19世紀のアフリカ全土にわたる植民地化時代、列強諸国のいいように民族が分断され、国境線が引かれ(話によると地図上に定規で線を引いて国境線が決められたという)、そのいいかげんなツケが今アフリカで多発する紛争という悲劇に結びついているのは言うまでもない。

そのツケから顔をそらして無関心を装う西欧諸国にも問題ありありなのだ。

しかるにこの映画はそんなこと1つも・・・。映画までもが顔をそらしてどないすんねん。一歩間違えるとただのエイリアン映画でっせ。

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遠すぎた橋(1977年・イギリス・175分)NHK-BS

 監督:リチャード・アッテンボロー

 出演:ロバート・レッドフォード、ジーン・ハックマン、ジェームズ・カーン

 内容:第二次世界大戦のノルマンディ上陸作戦から3ヵ月後の1944年9月、連合軍が企てた史上空前の空陸共同作戦、マーケットガーデン作戦が失敗に終わるまでを豪華スター共演で見せる戦争スペクタクル。

評価★★★/60点

いよいよダラけてきた頃に、最後の切り札レッドフォード登板というなんとも贅沢な使い方。

しかし、その効果もなくダラけたまま終了。。

ドイツ軍側からも描写するという斬新な試みをしているが、大風呂敷広げすぎて、戦争と人間の愚かさ、残酷さを描くには程遠いシロモノとなってしまった。

でも、壮大なスペクタクルとして見た場合、落下傘部隊の降下シーンなど見るべき価値はある、、かな。

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