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2018年5月15日 (火)

夢のシネマパラダイス255番シアター:魔法にかけられて

美女と野獣

168785_04出演:エマ・ワトソン、ダン・スティーヴンス、ルーク・エヴァンス、ケヴィン・クライン、ユアン・マクレガー、イアン・マッケラン、エマ・トンプソン

監督:ビル・コンドン

(2017年・アメリカ・130分)

内容:読書好きで好奇心旺盛な娘ベルは、田舎の小さな村で父親モーリスと暮らしているが、周りから変わり者と見られて悩んでいた。そんなある日、仕事に行ったまま戻ってこないモーリスを探しに森に入ったベルは、たどり着いた城でモーリスを捕えている野獣と出会う。そして父の身代わりに城に留まることにした彼女は、召使いの動く家財道具たちからおもてなしを受けるのだが・・・。

評価★★★☆/70点 

91年アニメ版のリメイクということでアニメ版と連チャンで見たけど、世界観をブラッシュアップした上でトレースしていて、その趣旨に沿っていえば満点。

が、逆にいえば、実写化した上でのプラスアルファがあったかといえば疑問。

特に、アニメ版より40分以上尺が延びているわりに登場人物のキャラクターに深みが比例していってなくて表面的。少なくともベルと野獣が心を通わせる過程にもっと説得力をもたせてほしかった。

例えば、行きたい場所を思い浮かべて触れるとそこに一瞬で行けるどこでもドアならぬ魔法の本で2人がベルの生まれたパリの家に行き、ベルの母親が不在である理由が明かされるくだり。ここってわざわざ描く必要あったのか!?しかもこんなある意味夢のような本を魔女が野獣に贈っていたというのもイマイチよく分からないし(※)。

それよりも野獣が王子の姿をしていた頃に、その傲慢なパーソナリティーの由来が母親の早逝と父王のダメ教育にあったというセリフがちょこっと出てくるけど、そここそもっと掘り下げて描くべきだったように思う。

だって、醜い野獣に変えられたはずなのに、はっきり言って恐くないというかルックスも整ってるし(笑)。アニメ版のように牙をむき出しにしたしゃくれ顔とかできたはずなのに。。

まぁ、それでも字幕版と吹き替え版両方見ちゃったくらいなので、悪い出来ではなかったことだけは確か。ちなみに字幕版の方が断然良い。

※魔女の正体が実は野獣の母親だったのではないかというネット記事を目にして、目からウロコというかなんかストンと腑に落ちたような気がする。

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魔法にかけられて

N0013780_l_2 出演:エイミー・アダムス、パトリック・デンプシー、スーザン・サランドン、ジェームズ・マースデン

監督:ケヴィン・リマ

(2007年・アメリカ・108分)WOWOW

評価★★★★/75点

内容:魔法の王国アンダレーシアに暮らすジゼル姫。彼女はエドワード王子との結婚を控えていたが、義母のナリッサ女王の陰謀により井戸に突き落とされてしまう。が、彼女が目を覚ますと、そこは現実世界のニューヨークだった!彼女はバツイチの離婚弁護士ロバートに助けられるが・・・。

“この残酷な世界では、ハトはゴキブリを食べるんです。。”

現実の世界からおとぎの世界へ行くというのがファンタジー映画の定型だと思うんだけど、おとぎの世界の住人が現実世界へやって来てしまうという今回の作品。

テレビは魔法の箱に、シャワーは魔法の泉に、デートは魔法の体験に、怒りは魔法の感情に様変わりしてしまう現実世界。

ディズニーランドが人々にとっての夢の国であるように、おとぎの国の住人にとっての夢の世界が、ドブネズミとゴキブリが跋扈する喧噪の大都市NYという逆転の発想は奇抜で、その中で繰り広げられるディズニー映画のセルフパロディと、白馬の王子様とのキスを夢見る古典的なヒロイン像から脱皮し多面的な人物になっていくお姫様というストーリーラインは誰が見ても面白いものに仕上がっている。

さらにそこに、「サウンド・オブ・ミュージック」や「メリー・ポピンズ」を連想させる開放的なミュージカルが華を添え、最後はドラゴンとの大格闘で締めて、終わってみれば非常に優れたファンタジーになっているのもヨロシイ。

そういう意味では様々な要素が入り混じっている型破りな映画ではあるんだけど、ディズニーの王道路線が基本としてしっかりあるので安心して見ていられるし、なんといってもおとぎの国のお姫様役のエイミー・アダムスの一挙手一投足が完璧な説得力を持っているのも特筆もの。

エンディングのない現実世界と、永遠の幸せがつづくファンタジー世界の素晴らしい融合、、この映画、買いです

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カラー・オブ・ハート

Pleas19 出演:トビー・マグワイア、リース・ウィザースプーン、ジョアン・アレン、ジェフ・ダニエルズ、ウィリアム・H・メーシー

監督:ゲイリー・ロス

(1998年・アメリカ・123分)WOWOW

評価★★★★/80点

内容:1950年代のホームドラマ“プレザントヴィル”に夢中の内気な男子高校生デイビッド。ある日、双子の姉ジェニファーとテレビのチャンネル争いをしていた彼は、ふとしたことから姉とともにTVの世界に入ってしまう。その白黒の世界は暴力もセックスもないアットホームで完璧にコントロールされた清潔な世界。しかし本能のままに行動する現代ッコの姉によって、白黒の世界は次第に色づき始める・・・。

“素晴らしい人生讃歌の映画だと思って見ていたら・・・”

メアリー・スーのお母さんがお風呂でお試し初体験をする場面で、当時付き合っていた彼女の姪御ちゃんに、なんであのママお風呂でアーン、アーンって言ってるの?と訊かれて何と答えればいいのか窮してしまったじゃんかよ(笑)

でも、お風呂に入ったときに、いい湯だな~アハハーン♪いい湯だーな~アハハーン♪って歌うじゃん。そのアハハーンの部分を言ってるんだよ、と苦しまぎれに答えたら納得してくれた。

お義姉さんにも後で誉められた。

これでまた勝ち点を稼いだオレ。フッ

<追記> 後に彼女とは破局しました・・。フッ

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ハート・オブ・ウーマン(2000年・アメリカ・127分)DVD

 監督・脚本:ナンシー・マイヤーズ

 出演:メル・ギブソン、ヘレン・ハント、マリサ・トメイ、アラン・アルダ

 内容:ある日、バスルームで転倒し感電したことをきっかけに、突然女心が聞こえるようになった男と、広告代理店に勤める彼の上司でもある孤独なキャリアウーマンとの恋愛劇。

評価★★★★/75点

女心がつかめないから男としちゃ燃えるわけじゃん。そして時には恐っろしい面も垣間見せたりする・・・。

、、感電してまでわたくしは知らなくていいです、ハイ。

ま、他人事だと思って映画見ながらゲラゲラ笑ってたけどねw

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千年女優(2001年・日本・87分)DVD

 監督:今敏

 声の出演:折笠富美子、小山茉美、荘司美代子、飯塚昭三

 内容:映像製作会社社長・立花源也は、かつて一世を風靡した大女優・藤原千代子の半生を振り返るドキュメンタリー制作を依頼された。千代子の大ファンだった立花は若いカメラマンを引き連れ、30年前に人気絶頂の中、忽然と姿を消した千代子の屋敷へ向かった。そして70を越えた千代子は自らの人生を語り始める。それは、女優になる前、女学生の頃に恋した名も知らぬ男性を、生涯をかけて追い求める壮大なラブストーリーだった。。

評価★★★/60点

女優という人間がもつ業をアニメが描いてしまうとは・・・。

“未来永劫恋の炎に身を焦がす”女の恐ろしいほどに一途な想いを、彼女が女優として出演した映画の劇中劇という形で描き出しているのがなんともユニークで、昭和初期の女学生、宇宙飛行士、戦国時代のお姫様、くノ一、、と銀幕の世界から時空を超えた一大ラブロマンスへと昇華させているのがこの作品のスゴイところ。

ただ、この初恋に囚われつづける女に共感できるかといえば、個人的にはかなり疑問符で、逆に怖いくらいで・・。純愛も度を過ぎると怖さ倍増ってか。ある意味ホラーです。。

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ニューヨークの恋人(2002年・アメリカ・118分)MOVIX仙台

 監督・脚本:ジェームス・マンゴールド

 出演:メグ・ライアン、ヒュー・ジャックマン、リーヴ・シュレイバー、ブレッキン・メイヤー

 内容:キャリアウーマンのケイトは、1876年のNYからやって来たレオポルド公爵と出会う。2人は時と文化のギャップを超えて惹かれあっていくが、レオポルドが現代にいられる時間は残りわずかで・・・。

評価★★★/60点

タイムスリップものとしても恋愛ものとしても見せ場となるネタがあちこちに散らばっているのに、それらには一切目もくれずラブコメの王道を突っ走る。

ある意味卑怯です(笑)。

寸止めでもいいから、せめてネタを拾おうとする姿勢くらいは見せてもいいのに・・。

その姿勢すら見せないことを潔いというのか無知というのかは人それぞれだろうけど、場が煮詰まってくるとメグの笑顔で切り抜けようとするのはもうそろそろどうなんだろうと・・・。

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星に願いを。(2002年・東宝・106分)WOWOW

 監督:富樫森

 出演:竹内結子、吉沢悠、高橋和也、中村麻美、牧瀬里穂、國村隼

 内容:北海道の函館。笙吾は3年前の交通事故で失明し声も失って以来、心を閉ざしていたが、担当看護師の青島カナに献身的に支えられ生きる勇気を取り戻していく。そして2人は恋仲になっていくが、その矢先、笙吾が車にはねられ亡くなってしまう。しかし、流星のはからいで別人の身体として自分の正体を決して明かさないことを条件に再び数日間の命を与えられた笙吾は、戸惑いながらもカナのところに会いに行くのだが・・・。

評価★★/40点

微妙にズレまくっている映画。

笙吾のキャラがまずは嫌い。國村隼よく殴った!!てかんじ。

あと失明してたはずの笙吾が初めてカナを見たときの映画的感動を全く描いていない。おっぱいビビビッのクソガキよりも描かなければならないことをしっかり描きや。

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フォーエヴァー・ヤング/時を超えた告白(1992年・アメリカ・102分)CS

 監督:スティーブ・マイナー

 出演:メル・ギブソン、ジェイミー・リー・カーティス、イライジャ・ウッド

 内容:恋人が事故で植物人間になったことに絶望した空軍パイロットが冷凍睡眠装置の実験台になる。50年後目覚めた彼は恋人が生きていることを知り、会いに行こうとするのだが・・・。

評価★★★☆/70点

極度の閉所恐怖症のオイラには、冷凍睡眠なんざ到底耐えられるものではない・・!

2018年5月 2日 (水)

夢のシネマパラダイス562番シアター:家族はつらいよ

家族はつらいよ

E27d8733出演:橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優、小林稔侍、風吹ジュン

監督・脚本:山田洋次

(2016年・松竹・108分)WOWOW

内容:東京郊外に暮らす平田一家。ゴルフと酒をこよなく愛する家主の周造は、定年後の隠居生活を謳歌する日々。そんなある夜、妻・富子の誕生日に気付いて、何でもプレゼントするぞーと言って妻が出してきたのはなんと離婚届!サインとハンコが欲しいのだという。思いもよらぬ事態に同居する長男夫婦と近所に暮らす長女夫婦も集まって家族会議が開かれるが・・・。

評価★★★★/80点

現代版東京物語を松竹伝統の人情ものとしてトレースした「東京家族」にえらく心を打たれた自分。まさかその4年後に全く同じキャストでこれまた松竹伝統のホームコメディに仕上げてくるとは思いもよらなかった。

しかし、「男はつらいよ」「釣りバカ日誌」で培われた昭和印の喜劇調を久々に味わえたのはどこか温かい懐かしさに包まれたし、家族みんなで家の居間で見たんだけど、楽しい時間を共有できてよかった。

さすが安定の山田節といったところだけど、実際は細部まで緻密に作り込まれた隙のない職人芸ということができ、それを全く感じさせないありふれた日常風景として見せるところが山田洋次のなせる技なんだろうね。

また、それをしっかり咀嚼する役者陣も完璧そのもの。

性格を含め「東京家族」と瓜二つのキャラクター設定というのも、混同する違和感よりも既知の安心感の方が勝って映画の世界にすんなり入っていくことができたし。

特に、「東京家族」では大都会東京で行き所のない寄る辺なさに無愛想一辺倒の縮こまった型にはめられていた父親役の橋爪功が、今回は水を得た魚のようにやりたい放題で最高に面白かったし、あとはやはり何と言っても蒼井優♪

毎回言ってるかもしれないけど、理想の結婚相手は蒼井優ちゃんです

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歩いても歩いても

N_609bcdr2214rpl 出演:阿部寛、夏川結衣、YOU、高橋和也、田中祥平、樹木希林、原田芳雄

監督・脚本:是枝裕和

(2007年・日本・114分)CS

内容:夏のある日。子連れのゆかり(夏川結衣)と再婚した良多(阿部寛)は、15年前に亡くなった兄の命日に合わせて東京近郊の実家を訪れる。が、開業医を引退した父(原田芳雄)とはもともと反りが合わなかった上、失業中の身の上でもあり気が重い帰郷だった。ひと足先に、姉(YOU)一家も到着していて、久しぶりに家族全員が集まった。。

評価★★★★/80点

「男はつらいよ寅次郎相合い傘」(1975)にこんなシーンがある。

めちゃ美味メロンを人数分に切って食べようとしたら、ちょうどそこに寅さんが商売から帰ってくるんだけど、妹のさくらがうっかり寅さんの分を勘定に入れ忘れてしまい、いじけた寅さんがとらやの面々と大ゲンカになるという爆笑シーンだ。

たかが一片のメロンごときでしつこすぎるくらいムキになる寅さんの度量の小ささが笑いを生み出すわけだけど、今回の映画も男連中の他人から見れば笑ってしまうような「小っちぇ~」ことにこだわる様がリアルに描かれていてまことに面白い。

しかし、この面白さの裏には思わず背筋がゾクゾクしてしまうような怨念と、思わず卒倒してしまいそうな毒があるのがミソ。

和気あいあいとした空間に漂う様々な恨みつらみや口に出せない秘密、その中で料理を手順を踏んで作るように消化していく夏の一日、そんなお盆に3世代が集まる家族の風景、そしてそこに刻まれる何十年にも渡る家族の歴史劇が、建前9:最強本音爆弾1のセリフ劇で見事にあぶり出されていく今回の映画。

夫と妻、父と息子、母と娘、嫁と姑、祖父と孫、従兄弟、、、ズケズケと何でも言い合える関係もあれば、遠慮から奥歯に物がはさまったような言い方しかできないぎこちない関係もある・・・。その中でこの映画はそれぞれの関係性における微妙な間や会話の妙が絶妙で恐ろしいくらいにリアルなのだ。

まるで録音した自分の声を聴いた時のような居心地の悪さ、と同時に懐かしい思い出を思い起こさせる居心地の良さをも喚起させてくれる世界がそこには広がっている。

なんとも不思議な感覚を味わわせてくれる映画だ。

例えば自分なんかは、ゆかり(夏川結衣)の連れ子であるあつし(田中祥平)に妙にシンクロしてしまって(笑)。。

それはおそらく小学校時代に転校が多かったこととかも関係してると思うんだけど、彼が初めて敷居をまたいだ家で感じる居心地の悪さと緊張感が痛いくらいに伝わってきて見てて可哀想になってくる一方、彼がしたたかに立ち回る様もリアルに実感できて、コイツ大人やなぁと感心してしまった。

普段はあまりにもありきたりすぎて立ち止まって考えることがない家族の風景。温かくて痛くて優しくて哀しくてウザッたくて、それでも無性に帰りたくなって、、、そんな家族の愛おしい情景。

一年に一日、この映画を日本人全員が見る日ってのを作ってもいいんじゃなかろうか(笑)。

それにしても樹木希林、上手すぎ。そしてYOU、そのまんまww。原田芳雄は鈴木清順と見間違えちゃったけど・・。

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メゾン・ド・ヒミコ

Himiko 出演:オダギリジョー、柴咲コウ、田中泯、西島秀俊、歌澤寅右衛門

監督:犬童一心

(2005年・日本・131分)WOWOW

評価★★☆/50点

 

内容:ある日、24歳の沙織(柴咲コウ)のもとを岸本(オダジョー)という男性が訪ねてくる。彼は、沙織と母親を捨ててゲイ・卑弥呼として生きていく道を選んだ父親(田中泯)の恋人だった。岸本は、ゲイのための老人ホーム“メゾン・ド・ヒミコ”を建てて運営していた彼がガンになり余命いくばくもないことを沙織に伝え、ホームを手伝わないかと誘うのだが・・・。

“「たそがれ清兵衛」の田中泯の変身っぷりには脱帽・・・。”

「ハッシュ!」(2001)のときもそうだったけど、このての性的マイノリティを扱った映画には深入りするのを避けちゃう傾向があって、今回もやっぱダメだった・・・。

ゲイ老人たちのファッションにもドン引きだったし、ダンスホールでのハイテンションぶりもムリ

「ブスの処女と、性病持ちのオカマどっちがいい?ギャハハハ」、、、グーでぶん殴りたくなったんですけど、あのジジイ(笑)。

というかんじで、立ち入ることができない異界ワールドだったのだけど、ただ1つ思ったのは、このての人々ほど愛するということへの純粋さを持ち合わせている人種はいないだろうなということ。そこの点はちょっと羨ましさを抱いてしまったかも。

他人はおろか社会からも拒絶されてしまうという絶対的な孤独を身をもって知っているからこそ生み出される想いなんだろうね。そしてそこを突き抜けちゃうと、ああいう開放的な世界の住人になることができる、のかなw

その中で、彼らが作った小さな共同体にまぎれ込んでくるノンケの沙織の孤独と憂鬱の方が際立って見えてくるのはうまいつくりになっているなとは思う。

そういう点では、この映画は沙織の傷ついた人生の再生物語という側面の方が強いわけで、ゲイ映画ではないんだよね。彼らの人物像の内面に映画自体が深入りしてないし。ま、それでも生理的にちょっとダメだったけど・・・。

あとはまぁ、なんといっても柴咲コウの化粧っ気のない地味ぃ~なコンビニ店員姿だな。ちょっと引いたわ(笑)。。

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酒井家のしあわせ(2006年・日本・102分)NHK-BS

 監督・脚本:呉美保

 出演:森田直幸、ユースケ・サンタマリア、友近、鍋本凪々美、谷村美月、笑福亭仁鶴

 内容:三重県のとある田舎町。一見ごく普通の家族にみえる酒井家だったが、14歳の長男・次雄(森田直幸)は最近家庭にうんざりしていた。母・照美(友近)は再婚、次雄は事故死した前夫の連れ子、下の娘・光(鍋本凪々美)は母と義父・正和(ユースケ)との間にできた父親違いの妹という複雑な家庭環境にあったからだ。そんなある日、照美とケンカした正和が突然、好きな男ができたとカミングアウトして家を出て行ってしまう・・・。

評価★★★★/75点

“だ、ダマされた・・・。”

家族の何気ない日常を切り取っていく視点が独特の間の中でユーモアたっぷりに描かれていて、終始楽しく見ることができた。

例えば、家族で外出する時に、オカンが早くしなさいと急かしているくせに、当の本人が1番遅く家を出てくるシーンも、車の中でジィーッと待っている夫と子供たちの姿がたまらなくおかしかったり。どこの家のオカンも同じなんだな(笑)。

しかしこの監督、コミカルな間を作って、「あ、それってあるある」というエピソードをテンポよく見せていく演出の手腕はかなりこなれているなという印象。と思ったら新人さんなのね、この監督。。

あとこの映画で外せないのが、配役の妙。

テレビでのひとりコントにそのまんま出てきてもおかしくないような格好の友近が、決して類型的ではない妙にリアルなオカン像を演じていて新鮮だったし、関西弁をしゃべれないユースケ・サンタマリアの不器用なオトン役がものすごくしっくりきていた。

そして極めつけが仁鶴wwユースケが笑い転げちゃうのも無理ないわ。

とにかくほんわか温かいぬくもりが残るかなりしあわせな映画だったと思う。これからが楽しみな若手監督さんだね。

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アルゼンチンババア

Big 出演:役所広司、堀北真希、鈴木京香、森下愛子、手塚理美、岸辺一徳

監督:長尾直樹

(2007年・日本・112分)盛岡フォーラム

評価★★★/60点

 

内容:高校生のみつこは、両親との3人暮らしだったが、誰よりも活気のあった母親が病気で亡くなってしまう。そしてその直後、墓石彫り職人の父親が行方をくらましてしまうのだった。それから半年後、父親はどうやら町外れの草原に建つ古ぼけた洋館にいるらしいことが判明する。しかし、その屋敷にはアルゼンチンババアと呼ばれている謎の女が住んでいるらしい。みつこは勇気を出して訪ねてみるが・・・。

“あのハチミツ、、二缶ほど譲ってくれませんか(笑)”

アルゼンチンババア特製の媚薬ハチミツが欲しいってことと、堀北真希のムチウチ症姿が見れたってことくらいしか得るものがなかったな(笑)。

でも、フツー原作ものの映画って、映画が面白くなくても原作は読んでみたいなという場合が多いのだけど、今回は正直全く読みたいと思わなかったんだよね。そういう意味では逆に不思議な映画だったともいえるけど・・・。

登場人物の行動や会話がことごとく意味不明で伝わってこなくて、一人蚊帳の外で見続けなければならない、なんとも題名に相応しいわけの分かんない遠い世界の映画だったけど、その中で孤軍奮闘した堀北真希ちゃんを見るぶんには十二分に元が取れるのもまたたしかで。。やっぱ不思議な映画。

でも、、ババアに鈴木京香をあてるってどうなんだろという根本的なところも気になる。室井滋とか夏木マリはたまたYOU、久本雅美あたりだろフツー。あるいは大竹しのぶ、浅野温子あたり?

ちょっと鈴木京香は役違いのような気が。まぁ、「ゼブラーマン」でコスプレ好きになって一皮剥けた女優さんだからババアもやってみたかったのかな

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サバイバルファミリー

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出演:小日向文世、深津絵里、泉澤祐希、葵わかな、時任三郎、藤原紀香、志尊淳、柄本明、渡辺えり、大地康雄

監督・脚本:矢口史靖

(2017年・東宝・117分)WOWOW

内容:東京に住む鈴木家は、仕事一筋の父親、魚をおろせない母親、大学で女のコしか頭にない息子、スマホが漬けのJK娘の4人家族。そんなある日、電気・ガス・水道・車・スマホなど全てのライフラインが止まってしまう異常事態が発生する。復旧する見込みのないまま1週間が経ち、一家は鹿児島の実家に向かうことにするが・・・。

評価★★★☆/70点 

東日本大震災当時、盛岡に住んでいた自分は停電2日、断水1日を経験(ガスは使えた)。小雪舞う中スーパーの長蛇の列に震えながら並んだことを今でも覚えている。

まぁ、三陸の被災者に比べればグチることさえ憚られるレベルの実体験だったけど、その視点が入っちゃうとどうしてもリアリティの欠如は気になってしまうところ。

だって水&食料がどんどん枯渇していく中で2ヶ月かけて東京→岡山を自転車で移動するというのはインパール作戦なみに無理がある。ていうか2年半もライフライン寸断されたら食料自給率の低い日本は壊滅だろ😵

そういう意味では、ウォーキングデッドのような文字通り殺伐とした人間同士のサバイバル劇になる素材なんだけど、コメディタッチの矢口ワールドのフィルターにかかるとサバイバルサスペンス<ハートウォーミングコメディになってしまうのをどう見るか。

個人的には家族の絆の再生を描くロードムービーという視点は矢口監督らしくて面白かったし、ほとんど劇伴なしでも見せきる映像面はさすが。

長野あたりで観念して田舎の自給自足生活をメインに据えるという手もあったと思うけど、それだと前作ウッジョブと似たかんじになっちゃうかw

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リトル・ミス・サンシャイン

Lms 出演:グレッグ・キニア、トニ・コレット、スティーヴ・カレル、アラン・アーキン、ポール・ダノ、アビゲイル・ブレスリン

監督:ジョナサン・デイトン/ヴァレリー・ファリス

(2006年・アメリカ・100分)仙台フォーラム

評価★★★★★/95点

 

内容:アリゾナ州ニューメキシコに住むフーヴァー家は、家族それぞれに問題を抱え崩壊寸前。父は独自の成功論をまとめた自著の売り込みに必死、長男は一言も発さず、祖父はヤク中、伯父はゲイの恋人にフラれて自殺未遂と、まとめ役の母は一苦労。そんなある日、7歳の娘オリーヴがカリフォルニアで開かれる美少女コンテストの本選に進むことになる。そこで一家は、オンボロのミニバスに家族全員で乗り込み、カリフォルニア目指して出発するのだが・・・。

“オリーヴ(アビゲイル・ブレスリン)って誰かに似てるよねぇ・・・”

ってあれよあれ、フィギュアスケートの安藤美姫だよ。あの出っ腹はさておき、精神年齢もほぼ変わらんだろうし・・(笑)。

というのはさておき、この映画、オイラ的2007ベストムービーにまず間違いなく選ばれるであろう愛すべき一品になってしまいました。

とにもかくにも笑いと涙が同時に押し寄せてくる映画体験というのはそうざらにあることではないので、そういう意味でも心に残る一本となりますた。

しっかし、途中から笑いのドツボにハマッちゃって笑って泣いてんだか感動して泣いてんだか最後は分からなくなっちゃったな・・・。

色覚異常で空を飛べないと分かり、野っ原で完全ふてくされ状態になった15歳の兄ドウェーンを無言で肩に寄り添いながら慰める大人な7歳オリーヴ。

笑いの導火線に火が付いたのはこの次のシーン。ドウェーンが「分かった。」と気を取り直して車に戻るときに土手を登るわけだけど、オリーヴちゃんあの体型もあって登れないんだ(笑)。そこをドウェーンが抱っこして持ち上げて登る何気ないシーンがなんとも可笑しみのあるオチで、シリアスな感傷モードに入る一歩手前で何気なく笑いに転回させる絶妙さに完全に引き込まれてしまった。

クラクションが鳴り止まなくなったミニバスを警官に停車させられ、トランクに積んであるシーツにくるまれたジイちゃんの遺体が見つかってしまうのかという絶体絶命の状況で、エロ本がドサッと落ちてきて、それを見つけた警官がニヤリとするオチも最高で、何も知らない妻シェリル(トニ・コレット)の不安そうな表情とエロ本を3冊(うち1冊はゲイもの)も買い込んでいたフランク(スティーヴ・カレル)へのお前はなんて奴だ!というリチャード(グレッグ・キニア)の視線とフランクのえっ何?オレ何かした?という表情がこれまた何気なく描かれていて、逃げ場のないバスのミニ空間の中に凝縮される人間模様が面白おかしく自然に描かれてるんだよね。

この自然なオーソドックスすぎる演出も良くて、例えばギアのブッ壊れたミニバスを家族みんなで押して発進させて飛び乗るこの映画を象徴するシーンや、ラストの珍妙なダンスを家族みんなで踊るシーンだとか、とにかく映画的な動きというのが終始物語をしっかりと牽引していく。

しっかり映画しちゃってるんだよねこれ。こういう映画見ると嬉しくなっちゃう。

才能が少々欠けようが負け組と揶揄されようが前に進むしかないんだというメッセージも心にしみわたりました。

イイ映画です。

ちなみにオリーヴのタヌキ腹は、詰め物を入れてるのだそうで、実際のアビゲイルちゃんはフツーの体型らしいですw

2018年4月 2日 (月)

夢のシネマパラダイス385番シアター:6歳のボクが、大人になるまで。

ムーンライト

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出演:トレヴァンテ・ローズ、アンドレ・ホランド、ジャネール・モネイ、アシュトン・サンダーズ、ジャレル・ジェローム、ナオミ・ハリス、マハーシャラ・アリ

監督・脚本:バリー・ジェンキンズ

(2016年・アメリカ・111分)WOWOW

内容:マイアミの貧困地域。小学校でチビ呼ばわりされ毎日いじめられている内気な少年シャロン。麻薬中毒の母親ポーラから育児放棄にも遭っている彼にとって心を許せるのは、ひょんなことから助けられ何かと面倒を見てくれる麻薬の売人フアンとその恋人テレサ、そして同級生のケビンだけだった。やがて高校生になったシャロンは、ケビンに友だち以上の感情を抱き始め・・。

評価★★★☆/70点

人種差別、LGBT、貧困、イジメ、虐待、ドラッグと、主人公を取り巻くありとあらゆるマイノリティの苦難。

あまりにもヘヴィーでキレイごとではない内容ながら、見終わってみるとキレイな映画だったなぁという意外な印象。

それはおそらくリトル、シャロン、ブラックの3話構成に起承転結でいうところの承しかないという大胆な省略術によるところが大きいのだと思う。

特にシャロン→ブラックへのまるで別人な変貌は完全に転なのだけど、その間の過程および因果関係が全く描かれていないため、自壊寸前のダークな暴力性よりも感傷に流されるピュアな叙情性の方がより強調されたということだろう。

この映画はそこをどう捉えるかがキモだと思うけど、個人的には映画としてのパンチ力に若干欠けるかなという印象。。

ただ、役者がすこぶる良いので、描かれなかった余白にこちら側がくみ取れるだけの具体的な心情を乗せることができているのは、さすがアカデミー受賞作だけのことはあるなとは思った。

しかし、フアンをあっさり退場させるなんて10人脚本家がいたら1人くらいしか思いつかない芸当だろうなw

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6歳のボクが、大人になるまで。

20150410230940出演:パトリシア・アークエット、エラー・コルトレーン、ローレライ・リンクレーター、イーサン・ホーク

監督・脚本:リチャード・リンクレーター

(2014年・アメリカ・165分)盛岡フォーラム

内容:テキサスの小さな田舎町に住む6歳の少年メイソンは、シングルマザーのオリヴィアと姉サマンサとの3人暮らしで、父親は離婚してアラスカへ旅立ったまま。そんな中、母親が博士号を取るためにヒューストンへ引っ越すことに。そこで少年時代を送っていくメイソンは、母の再婚や父との再会、そして初恋と様々な経験を重ねていく・・・。オーディションで選ばれた6歳の少年エラー・コルトレーンを主演に据え、主人公の6歳から18歳までの12年間の成長と家族の物語を、実際に12年間かけて撮影するという斬新な手法で描き出したヒューマンドラマ。

評価★★★☆/70点

数あるメディアの中で映画に最も魅かれるのはなぜなのか。

それは言いかえれば、映画の映画たるゆえんは何なのかということでもある。

映画は視覚芸術だという一言で片付けることもできるけど、おおむね2時間前後しかない強い拘束力を受けている中で、時間軸の省略や要約などスクリーン上で時間を変化させ再創造する、その映画固有の時間表現ーカットとモンタージュの組み合わせーに夢のような能力を感じ取っているからなのかもしれない。

それは飛躍、短縮、シンクロなど時として目も覚めるような形で時間の流れの異様さをあらわにする。

そういう点では今回の映画は、同じキャストで足かけ12年に渡る撮影を経て家族の軌跡を3時間に収めるという今までにない手法で作られているのだけど、12年という淡々とした時間の流れ=人生がすでに立派なドラマになっているのだということを如実に感じられる作品だったと思う。

映画のひとコマひとコマ1ショット1ショットが一瞬間を表し、これらの固定した各コマの映像の一連続から映画全体が成り立っていることを思えば、「時間は途切れない。一瞬というのは常に今ある時間のことだ」というラストのセリフはこの映画の構造を象徴していて印象深い。

瞬間瞬間の積み重ねが人生を形づくっていく、まさに“今を生きる”ことの愛おしさ、尊さが染み渡ってきた。映画を流れるこういう時の流れも悪くはない。

あと、興味深かったのが家庭環境あるいは食卓風景の中にまで大統領選などの政治やイラク戦争、マリファナ、銃などが当たり前のように浸透していることで、アメリカの社会背景が垣間見れて面白かった。

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マイライフ・アズ・ア・ドッグ

084 出演:アントン・グランセリウス、マンフレッド・セルネル、メリンダ・キンナマン

監督:ラッセ・ハルストレム

(1985年・スウェーデン・102分)NHK-BS

評価★★★★/75点

 

内容:1950年代末のスウェーデン、海辺の町に住む少年イングマルは、たとえつらいことがあっても、ソ連の人工衛星スプートニクに乗せられて死んでしまったライカ犬よりは自分の方がまだマシだといつも思っていた。母親の病気がひどくなって、叔父の家に引き取られることになったイングマルは、ある日、サッカーの練習に行って鮮やかにゴールを決めるガキ大将サガに出会う・・・。人生に目覚め、少しずつ大人になっていくナイーブな少年の成長物語。

“見たいものと見たくないもの”

少年イングマルはベリットの裸は見たかった。しかし母親の怒り叫ぶ姿と怒鳴り声には耳をふさぎ自分のワーワー声でかき消して目をそむけていた。

星空の向こうにある母親との楽しい思い出は見たかったが、病床で母親が苦しむ姿からは目をそむけて見たくなかった。

ライカ犬が自分より不幸だったであろう姿は必死に頭をめぐらせて見たかったが、自分が抱えている悩みや苦しみからは他の不幸に代用することによって目をそむけていた。

しかし、叔父の家で成長した今のイングマルなら、それら見たくないものからも目をそむけることはないだろう。

そいえば、個人的なことになるけど、自分が小1の時に劇場で親に見せられたアニメ映画「はだしのゲン」は自分の想像力を破壊してしまうほどの残酷さにもう見れなくて見れなくて耐え切れなくて、ずっと後ろを振り返って映写機から出てくる透明で青白い光の粒子のカーテンをじっと見つめていたことが今でも思い出される。でもそれから数年後に見た「火垂るの墓」はちゃんと見れたっけ。

ちなみに小1の時に、「はだしのゲン」は見たくなかったけど、テレビで夕方5時からやってたテレビドラマで毎回出てくる大原麗子の入浴シーンは見たかった(笑)。5時までに遊びを切り上げてまで見てたからなぁ・・

20年経った今でも記憶に残ってるくらいなのだから大原麗子にメロメロだったんだろうなオレ。。イングマルがベリットに夢中だったように。

それにしてもベリットの像は何処へ・・・。

今自分が見たいのはあの像だな。見たくないのはもちろん我が愛しのレアル・マドリーの敗れた姿です。

2018年1月 4日 (木)

夢のシネマパラダイス547番シアター:日本版あの頃にタイムスリップ!

だけがいない

Poster2出演:藤原竜也、有村架純、鈴木梨央、中川翼、林遣都、福士誠治、安藤玉恵、及川光博、杉本哲太、石田ゆり子

監督:平川雄一郎

(2016年・日本・120分)盛岡フォーラム

内容:売れない漫画家・藤沼悟は、事件や事故に遭遇すると、その原因が取り除かれるまで発生直前の時点に何度もタイムスリップする“再上映(リバイバル)”と呼ぶ能力を持っていた。しかし、それは自分ではコントロールできないのでほとほと嫌気が差していたが、リバイバルがきっかけでバイト仲間の愛梨と親しくなる。そんなある日、またもやリバイバルが発生。悟が違和感の正体をつかめない中、一緒にいた母親だけが何かに気づきリバイバルは解消された。しかしその直後、母親は何者かに殺害されてしまい、悟が犯人に仕立て上げられてしまう。そして母を助けようとする悟にリバイバルが再発動。今度は20年前の小学生時代にタイムスリップしてしまう・・・。

評価★★★/65点

総じて漫画原作の実写映画化は期待ハズレに終わることが多い。あるいは漫画と映画は全くの別物ということもできるけど、今回の原作は緻密に組み立てられた構成力とキャラクター造形、完璧な伏線回収など、漫画としてはもちろんそれだけで映像媒体としてもすでに完成されたハイクオリティ作品なので、映画化もよほどのヘマをしなければ失敗しないはず、だと思っていたw

そういう点で今回の映画を見ると、雛月加代を親の虐待から助け出すところまでは、ドンピシャのキャスティングしかり風景からプロダクトデザインに至るまでの映像しかり、ビックリするくらい忠実に原作をトレースし、正直マンガを知らないで映画見てたらより面白かったかもと思ってしまうくらいほぼ完璧な仕上がり。

が、しかし、この雛月救出までに1時間半を費やしてしまい、残り30分でまるで夏休み最後の日に徹夜で溜まりにたまった宿題を大慌てで取りかかる小学生のようにあたふたと風呂敷を畳むもあえなく轟沈

第4コーナー過ぎてからのまさかの失速にこちらも撃沈しちゃったんだけど、犯人が八代先生(及川光博)ということにたどり着くのも拙速すぎだし、何より1番分かりづらくて混乱するのが1988年の世界で悟が八代に橋から川に突き落とされた後、2006年の現在に戻ってからなんだよね。

2006年に愛梨(有村架純)と河川敷で会った悟が警察に逮捕された直後にリバイバルが起きたにもかかわらず、八代に突き落とされた悟が戻ったのはそこではなく、映画の冒頭でピザ屋の配達中に小学生を助けようとしてトラックにはねられた後の病室で、しかも病室にいるのは事故を目撃していた愛梨ではなく、妊娠している加代。さらになぜか愛梨とは面識がなくなっている、と矢継ぎ早に進むので見ているこちら側は混乱するばかり。。

さらにデパートの屋上で八代と格闘して悟が首を切られるも八代は逮捕されて一件落着、かと思いきやエピローグでいきなり2016年に飛んで、お墓参りの墓石に悟の名前が、、えっ?死んだの!?と呆然とする中でジ・エンド。

例えば、愛梨と面識がないことは原作通り悟がずっと植物状態になっていたということで済む話のはずなのに、、どうなっているんだこの脚本ww

半ば見切り発車としか言いようがないラスト30分の力技にある意味ド肝を抜かれたけどw、それまでの丁寧さとかけ離れた粗雑な出来とのあまりの落差に監督2人いるのか!?といぶかってしまうくらい目が点になってしまった・・・。

リバイバルというのが普通のタイムトラベルものと異なり、意識だけが当時の自分自身に飛ぶ(あるいは当時の自分の姿になる)ところが新機軸な設定だけに、うーん、、この出来というか納め方には残念至極としか言いようがない。

タイムトラベルものはお手の物のハリウッドで実写化求ム。

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青天の霹靂

P1399016757866出演:大泉洋、柴咲コウ、劇団ひとり、笹野高史、風間杜夫

監督・脚本:劇団ひとり

(2014年・東宝・96分)WOWOW

内容:39歳の売れない独り身マジシャンの晴夫は、幼い頃に母に捨てられ、父親ともいまや10年以上絶縁状態だった。そんなある日、警察からホームレス状態の父の死を知らされる。遺骨を抱え、やりきれない気持ちで父の住み家だった荒川の河川敷に佇む晴夫だったが、そんな彼を一閃の雷が直撃。そして気付くと、40年前の浅草にタイムスリップしていた。やがて演芸ホールでスプーン曲げを披露して人気マジシャンとなった晴夫は、同じくマジシャンをやっていた若き日の父とその助手を務める母と出会う。そして、父とコンビを組むことになるのだが・・・。

評価★★★☆/70点

手品とタイムスリップという映画のモチーフに鑑みていえば、プロットの運び方、伏線の張り方、心象風景の描き方、カットバックの使い方、スローモーションや省略などの時間軸の操作、巧みなカメラワークetc..要は映画とは嘘をついていいものだという心得をしっかりわきまえた手練れの演出に満ちている。

しかしその反面、冒頭の主人公のマジックを吹き替えなしのワンカット長回しで捉えるシーンなど、映画につかみとリアリティをもたせるツボもちゃんと押さえているのも強みだ。

多少その手法に酔いすぎてクドく見えるようなシーンもあるけど、およそこれが初監督作とは思えないほどエモーショナルにあふれた非常に見やすい作品に仕上がっていたと思う。

ただ、しいて希望を挙げれば、お腹いっぱいになる前に終わっちゃったてことかなw

でもこういうのってもっと盛っちゃいたいはずだし、見る方もそれを期待している所もあるんだけども、逆に編集でバッサバッサとカットして90分弱にまとめてしまう肝っ玉の強さは、やはり大いなるセンスといわなければならないだろう。

次回作が楽しみな監督のひとりになったな。

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この胸いっぱいの愛を

C_b0010500579_tl_2 出演:伊藤英明、ミムラ、勝地涼、宮藤官九郎、吉行和子、愛川欽也、倍賞千恵子

監督:塩田明彦

(2005年・東宝・130分)MOVIX仙台(試写会)

評価★★☆/45点

内容:百貨店に勤める比呂志は、出張で小学生時代を過ごした北九州・門司を訪れた。しかし、何か様子が違う。新聞見ると、、えっ?1986年?20年前じゃん!タ、タイムスリップ。。ていうか、少年時代の自分にも会っちゃった・・・。そんなこんなで比呂志は実家だった旅館に住みついてしまう。そんなある日、彼は憧れだった近所の和美姉ちゃんと再会する。彼女は難病のすえこの世を去ってしまう運命にあるのだが、今ならば救えるかもしれないと比呂志は考える・・・。

“タイムパラドックスの定石を捨ててまで描き出したのがこれなの・・・?思わず失笑。”

タイムスリップする1986年という時代設定がまずはビミョー・・・。

だって昭和61年やろ。

バブル景気がちょうど幕を開けた頃だと思うのだけど、なんかイメージとしてパッとしないというか、そんな昔でもなければつい最近でもないという時代背景の中途半端さが気になった。

しかもそれに輪をかけたように伊藤英明のメインストーリーがこれまたビミョーなんだよなぁ・・・。タイムパラドックスなど眼中にないくらいお構いなしで突き進むのは大目に見るとしても、肝心要のメインストーリーに力がなかったら、ただの独りよがりなだけの映画じゃないか。。

サブストーリーである若いヤクザ(勝地涼)、老婦人(倍賞千恵子)、クドカンのエピソードの方がフツーに感情移入できただけにメインの物足りなさが一層際立ってしまった。

これは多分に失われた命を取り戻そうという事の重みに対して、シナリオに力がないのか、伊藤英明に力がないのか、あまりにも人間ドラマの描写が軽すぎるというアンバランスさに起因するように思う。

そもそも「黄泉がえり」(2002)では現世で生きる人々のもとに亡くなった大切な人が舞い降りてくるという、あちらから会いたい人がやって来るという構図なのだけど、今作ではこちらから会いに行くという構図になっている。その点ですでに作為的要素が含まれているといってもいいのだけど、この映画のメインとなるのは結局この世を去った憧れの人を救おう、生き永らえさせようとする話なわけで、そこら辺はどうも自分は胡散臭さを感じてしまった。

だって要は積極的に未来を変えて死者を甦らせようとするわけで、そこに十分な説得力、つまり死んだ者は絶対に生き返らないという命題を覆す魔力を持たせるにはやはりタイムパラドックスの定石を使っていくしかないと思うのだけど。。

しかし、この映画はそれをあえて無視した上で完全に人間ドラマに徹した感がある、、、のだが、ものの見事に肩透かしをくらったような力の無さには目を覆うばかり。

作為に満ちた独りよがりな映画とはまさにこのことを言うのではなかろうか。

ただ、塩田監督もなにやら罪滅ぼしでもしたかったのか、それとも塩田監督なりのケジメの付け方なのか、ラストに出てきた生き永らえた和美(ミムラ)の姿にはなんとも厳しすぎる年輪が刻まれていて、それまでの演出とはかけ離れていたので驚いたというか、また別な意味で肩透かしをくらっちゃった・・(笑)。なんだかわけの分からん映画だったな。。

自分が思うに、生んだ直後に亡くなってしまった母親、今まで幻だった母親に会うことになる若いヤクザ(勝地涼)の話をメインにすればそれなりに見れたのではないかと思う。命のやり取りはこの映画には重すぎる・・・。

あるいは、どうせだったらどっかの老人ホームのバスが崖下に転落しちゃうとかさ(笑)、んでその拍子に1946年にタイムスリップしちゃうとか。だってジッちゃんバッちゃんの方が人生で本当にひとつだけやり直したいことの重みって説得力がありそうだし。

とにかく「黄泉がえり」の二匹目のドジョウとはなりえなかったな今回は。

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バブルへGO!!タイムマシンはドラム式(2006年・東宝・116分)WOWOW

 監督:馬場康夫

 出演:阿部寛、広末涼子、吹石一恵、伊藤裕子、劇団ひとり、薬師丸ひろ子

 内容:2007年の日本。国は800兆円の借金を抱え、日本経済は破綻寸前。そんな日本の危機を救うべく、財務省官僚の下小路(阿部寛)はある計画をぶち上げていた。それは、1990年にタイムスリップしてバブル崩壊をくい止めようというものだった。ところが、先にタイムスリップしていた開発者の田中真理子(薬師丸ひろ子)がそのまま行方不明になってしまう。そこで下小路は、真理子の娘で借金取りに追われているフリーターの真弓に目をつけ、真弓は母親を救うためにタイムマシンに乗り込むのだったが・・・。

評価★★★/60点

バブル全盛期に山ん中に秘密基地を作ったりして駆けずり遊んでいた小学生時代の自分にははっきりいってあまりピンとこなくて実感がわかない題材だし、しかしかといってバブル崩壊後の失われし10年の真っ只中で就職超氷河期にブチ当たってしまった自分からするとああいう軽いノリで描かれるとなんだかしゃくにさわるし・・・(笑)。なんだかなぁ。。

タイムマシーンを起動するのに洗剤を入れるというのは笑えたけどね。

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地下鉄<メトロ>に乗って(2006年・日本・121分)WOWOW

 監督:篠原哲雄

 出演:堤真一、岡本綾、常盤貴子、大沢たかお、笹野高史、吉行和子

 内容:43歳の営業マンである真次(堤真一)はある日、父が倒れたという連絡を受ける。が、真次は大財閥の総帥であった傲慢な父に反発し、高校卒業後に家を出たっきり一度も会っていなかった。そんな真次が地下鉄を出ると、、、昭和39年の東京にタイムスリップしていた!しかも真次の恋人であるみち子(岡本綾)もタイムスリップしてしまう。そして真次は、若き日の父(大沢たかお)に出くわすのだった・・・。

評価★★★/60点

とうとう解りあえなかった父親が戦前、戦中、戦後という激動の昭和をどのように生きてきたのか、その知られざる真実にスポットを当てることによって父親と息子がつながっていくという、いたってシンプルなお涙頂戴もののはずだったのに。

そこにいきなり80年代角川映画もビツクリの近親相姦ネタに、あげくの果てに妹が自殺(正確には存在自体を消してしまう)しちゃうって、、、こんなん2時間で消化しきれねぇよ。韓流ドラマみたいに全50話くらいでやってくれ(笑)。

しかも、階段から突き落とされたお時(常盤貴子)の人生はどうなっちゃうんだよ。全然消化不良じゃん。

ていうか肝心のテーマが一気にボヤけちゃったし・・・。

自分の祖父も小沼佐吉(大沢たかお)と同じように、戦時中に満州行って結局ソ連軍に連行されて、シベリア抑留を体験してなんとか生きて日本に帰ってくることができた人だったから、かなりリンクするところはあったと思うんだけど、ラストの仰天ネタに一気にガクッときてしまった・・・。

2017年12月31日 (日)

夢のシネマパラダイス561番シアター:カンヌに好かれる女、河瀬直美

萌の朱雀

Moeno_2 出演:國村隼、尾野真千子、和泉幸子、柴田浩太郎、神村泰代

監督・脚本:河瀬直美

(1997年・日本・95分)DVD

評価★★★/65点

内容:ふるさとを愛する気持ちとは裏腹に、離ればなれになって暮らすことを余儀なくされる一家の様子を綴ったドラマ。河瀬直美監督の故郷である奈良県の山間部を舞台に、出演者の大半に地元の素人を起用して、セリフを極端に排した即興風の演出により、日本の風土や人間性を浮き彫りにしていく。カンヌ国際映画祭で、カメラ・ドール(新人監督賞)を史上最年少で受賞した。

“関西人って、、こんな寡黙だったっけ。。”

光と影の淡い存在感、風に揺らめく風鈴、森のざわめき、染み込んでくるような生活音、それら日常にひそむ何気ないものの存在感が、土地の力や空気感となって静かだが確かな呼吸としてフィルムにとらえられていく。

感覚がいやでも研ぎ澄まされていく映像にただただ身を任せてみるのも一興ではある。

ただ、自分にとって映画は、やはり1スジ2ヌケ3ドウサ=シナリオ→映像→キャスト・演技・演出という優先順位で見ていきたいタイプなので、省略に省略を重ねたある意味不親切なストーリー描写には正直途中でついて行くのをやめたくなってしまうくらいにどうでもよくなってくる。

きっちりと作り込まれたシナリオじゃないとダメという自分の勝手なスタンスがこの映画とキョリを置かせちゃうんだよね。

それにしたって何しゃべってるのか分からないのよね、これ。耳に残るはヒグラシの鳴き声のみ。。

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殯の森(2007年・日本・97分)盛岡フォーラム

 監督・脚本:河瀬直美

 出演:うだしげき、尾野真千子、渡辺真起子、ますだかなこ、斉藤陽一郎

 内容:我が子を幼くして亡くし、夫とも別れた過去を背負っていた真千子は、奈良の山間部にあるグループホームに介護福祉士として赴任する。彼女はそこで33年前に亡くした妻との思い出の中に浸るひとりの老人と出会う。そんなある日、真千子は、老人を妻のお墓参りに連れて行くのだが・・・。カンヌ国際映画祭でグランプリ(審査員特別大賞)を受賞。

評価★★★/65点

“彷徨と迷子の違い”

死や老いというものに対してまだ真剣に向き合うことがない年代の自分にとって、それをまともに感じられるのは映画を観たときくらいのものだ。

しかし、それでも自分にとってどういう映画が好きかといわれれば、ワラにもすがる思いでとにかく必死に生きようとする者を描いた映画が好きだと答えるだろう。死という絶対的に抗えない存在に対し、しゃにむに対峙する光り輝く生をこそ見たいのだ。

その中でこの映画は、妻を亡くした夫、子供を亡くした母親という身近な人の死という逃れられない喪失の中で、生きる意味を見出せずに漂いつづける2つの魂を描いている。

そして亡くした妻の墓がある原初の森深くの聖域で癒しの光により浄化され、生の実感を取り戻すという、そういう意味では極めて幻視的な映画だといえるだろう。

いわば必死な生というよりは闇に彷徨う生を描いているといった方がいいかもしれないが、その彷徨う生が、森という闇と彷徨そして生と死の境界にはもってこいの舞台装置の中で、再生への一歩を見出す姿を描いている。

しかし、そうはいっても映画という、監督が対峙する世界に対し監督自らが自覚的に再構築するという点でかなり無自覚かつ説明不足な作品であることは間違いなく、緑が目に迫ってくる映像世界だけでもっていた映画といえなくもないし、かと思えば情感の喚起を促すにあたっての監督のエゴが徹底されているわけでも決してないという、観る側にとっては立ち位置に非常に苦心してしまう映画だといえると思う。

そこらへんはセルフドキュメンタリーとフィクションの区別がつけづらいという河瀬直美の作風も少なからず影響しているのだと思われるが、個人的にはちょっととっつきにくいな、と。

まぁ、人が彷徨う映画というのは実は好きで、例えば北野武の「ドールズ」(2002)なんかはけっこうお気に入りなのだけど、ただやはりそこで死あるいは生が絶えずそこにあって透けて見えてくる情景だとか心象というものを描いてくれないと文字通りただの迷子としか見えなくなっちゃうんで、映画としては味も素っ気もないものになってしまうんだよね。

そこらへんもうちょっと今回の映画は詰めていって描いてもらいたかったな、と。

なんかまだ粗い素描というか下絵を見せられただけのような感が強く、決して満足のいく作品ではなかったことはたしかだ。

ただ、映像面に関しては感性豊かな繊細さが感じられて思わず見入ってしまったところもあり、一応最後まで見られるプラマイゼロの映画だったというかんじかなぁ。。

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あん

An_main2385x580出演:樹木希林、永瀬正敏、内田伽羅、市原悦子、太賀、浅田美代子、水野美紀

監督・脚本:河瀬直美

(2015年・日/仏/独・113分)WOWOW

内容:町の公園前にある小さなどら焼き屋で雇われ店長をしているワケあり男、千太郎。常連の女子中学生くらいしか寄り付かないような中、ある日求人募集の張り紙を見てバイトしたいと老女、徳江が訪れる。当初は渋っていた千太郎だったが、徳江さん手作りの粒あんの絶品的美味さに雇うことに。するとたちまち評判となり大繁盛していくが・・・。

評価★★★★☆/85点

“神ってる樹木希林に5万点!”

春の風に優しく揺れる満開のソメイヨシノの桜並木の花びらを一身に愛でながら、どら焼き屋を訪ねてくる徳江さん(樹木希林)の姿、、そのお店で働けると分かって喜ぶ姿、、客足がパッタリ途絶えて店を早仕舞いした時に店長にあいさつして退出していく姿、そのどれもに思わず涙がこみ上げてきてしまった。

樹木希林を見ただけでパブロフの犬のようになってしまうなんて涙もろくなるにも程があるんだけどw、所さんの笑ってコラえてのダーツの旅に出てくるおばあちゃん村人を見てウルっときてしまうのに似ていて、アドリブとも演技ともつかない自然体な存在感に吸い込まれていったかんじ。

これが例えば同じハンセン病患者役の市原悦子だと、やはり演じてる感がより強く出ちゃってて、逆に若干の違和感を感じちゃうんだよね。それくらい樹木希林の凄さが際立つんだけど、考えてみれば出演してきたどの映画でもボソボソっと呟いてただそこに居るだけなのに圧倒的な存在感を醸し出してきた女優さんだと気付かされる。

おばあちゃんの笑顔の裏に隠された本音爆弾をブスリブスリと突き刺していく「歩いても歩いても」とか、「借りぐらしのアリエッティ」の家政婦役なんて声だけなのにジブリ史上最も醜悪なキャラに仕上がっちゃってたし・・(笑)。

以前、女友達が1番好きな女優は樹木希林だと言ってて一瞬引いちゃったことがあったけどw、ようやっとその意味するところが理解できた気がする。

また、風景を主役としてきた河瀬直美監督が大都会東京をどう撮るのかというのも興味深かったけど、桜の季節からひと巡りする四季の移ろいを陽射しと風と木々の色づきで優しく映し取っていて印象的だったし、商業映画ベースのフォーマットで作られていたのもあって今までで1番見やすい作品だった。

癩(らい)病という烙印を押された途端に社会の目が単色化し、一切の個性がはぎ取られていく中でも光を求め人間であることを求め続けた徳江さんの「何かになれなくても自分たちには生きる意味がある」という言葉は本当に心に響いたなぁ。

ハンセン病については、「もののけ姫」でチラッと扱われていて知る程度だったんだけど、まさか1996年まで公益の名の下に強制隔離政策がとられていたなんて驚きを超えて唖然とするばかり。

って、そういう自分も無自覚な悪意と無理解の一人だったんだなぁと思う。自戒を込めて・・。

2017年12月30日 (土)

夢のシネマパラダイス504番シアター:忘れられない人

思い出のマーニー

Mig声の出演:高月彩良、有村架純、松嶋菜々子、寺島進、杉咲花、吉行和子、黒木瞳

監督:米林宏昌

(2014年・東宝・103分)盛岡フォーラム

内容:中1の杏奈は幼い頃に両親を相次いで亡くし、里子に出されて育ったが、心を閉ざし気味で周りから浮いた存在だった。そんな中、ぜんそくの療養を兼ねて養母の親戚が住む海辺の田舎町で夏休みを過ごすことに。そこで彼女は、入江に建つ古い洋館を目にしてなぜか懐かしさを覚える。そして夏祭りの夜、小舟で洋館へやって来た杏奈は、マーニーという金髪の少女と出会う・・・。

評価★★★/65点

主人公アンナの活気と生気のない病んだ魚の目をした顔を見て、ジブリ最大の迷作「ゲド戦記」の主人公アレンを想起してしまい、背中に何かザワザワしたものを感じながら見てしまったのだけど、それは要するにアンナが闇に取り込まれて彼岸からこちらの世界に戻ってこられない危険性を感じ取ったからだ。

つまりマーニーはあちらの世界の住人で、アンナはそれに憑りつかれて引きずり込まれてしまう、となるとそれは完全にホラーだ。

まぁいくら何でもジブリに限ってそれはないとはいえ、そう思わせる不穏さが今のジブリにはあるのかも(笑)。

それは千と千尋なんかと比べると顕著で、親に見捨てられたのかもという不安感や育ての親になじめないなど他人を受け入れることができない主人公のキャラクター設定は、常に親不在の運命をウジウジせず事もなげに受け入れるジブリキャラクターを見慣れている者にとってはやはり違和感を感じてしまったし、いやそこが見たいんじゃないんだけどっていう不満感はずっとくすぶっていたかも。。

しかし、親の愛を受けられずに悩むのって「ゲド戦記」といい今作といい、ジブリの偉大な父・宮崎駿の存在を後進はいまだに払拭できていないってことなのかもね。

そういう点では東京から洋館に引っ越してきた彩香ちゃんの方がよっぽどジブリらしかったと思うけど、生きる意味を探すのに四苦八苦する時代だからこその作劇なのかな。

けど、ジブリに自分探しの旅なんて似合わないよね・・・。

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マイ・ガール

R080610209l 出演:アンナ・クラムスキー、マコーレー・カルキン、ダン・エイクロイド、ジェイミー・リー・カーティス

監督:ハワード・ジフ

(1991年・アメリカ・102分)NHK-BS

評価★★★★/80点

内容:1972年、ペンシルベニア州。葬儀屋を営む父親と祖母の3人暮らしをしている11歳の少女ベーダは、大好きな父にガールフレンドができたことから悩み始める。そして相談相手の幼なじみトーマスとの間に淡い恋が・・・。

“なかなかにシビアな題材を扱っているが、映画のバランスの取り方が絶妙で心に残る作品に仕上がっている。”

ベーダは11歳という設定だったけど、自分自身も8,9歳くらいの時かな。死という恐怖に対して異常ともいえるほど悩み抜いたことを鮮明に覚えているのだけども、自分の抱えていた死のイメージというのが、死とは永遠の孤独という黒沢清の「回路」で描かれたイメージに近いものがあって。

死そのものというよりも家族や友達に永遠に会うことができないという恐怖に打ち震えていたといった方が正しいかも。

だから、11歳の少女ベーダが死について割り切れない複雑な感情を抱いているというのも自分自身の体験と感情に見事にリンクして、ベーダの日常世界に容易に入っていくことができた。

それゆえ、ラストの方で息子トーマス(M・カルキン)の死に打ちひしがれる彼の母親に対して「私の母親が天国でトーマスを見守って一緒にいるから大丈夫よ。」と慰めるベーダの言葉は胸に響いたし、彼女なりにしっかりと死というものを受け止め、成長した姿を見せてくれてうれしかった。

また、一方では、妻と死に別れ男手ひとつでベーダを育ててきた父親(D・エイクロイド)の心情というものもよく描かれていて、父娘の葛藤が繊細に見る者に伝わってくる。

こういう流れでいくと、ともすれば重くなりそうなものだが、それをコメディのベクトルにうまく舵取りしたJ・リー・カーティスの存在も素晴らしい。

この映画における描写は、あくまでも子供の日常世界を軸としながらも、まるで水平線から朝日が昇るかのように確実に大人の世界が広がってくる。そして次第に少女の頃の世界は太陽が出ている青空にうっすらと浮かぶ真昼の月のごとく淡い思い出となっていくのだろう。

そういう微妙なバランスが絶妙なサジ加減でとれているのが、この映画が心にいつまでも残る所以なのだろう。

名作です。

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マイ・フレンド・フォーエバー(1995年・アメリカ・100分)CS

 監督:ピーター・ホルトン

 出演:ブラッド・レンフロ、ジョゼフ・マゼロ、アナベラ・シオラ、ダイアナ・スカーウィッド

 内容:母子家庭の孤独な12歳のエリックの隣に住むのは、輸血が原因でエイズ感染した11歳のデクスター。2人は打ち解け合うようになり、エイズ治療の特効薬発見の記事を頼りに旅に出るが・・・。

評価★★★★☆/85点

“我が映画人生で1番泣いた映画”

エリック(ブラッド・レンフロ)とデクスター(ジョゼフ・マゼロ)のひと夏のかけがえのない思い出を、ありふれた演出で描いていくプロットには別段感傷にひたることもなく見ていたのだけど、ラストの“スニーカー”には思わずヤラレてしまった。

全ての思い出と友情の証の象徴としてスニーカー、しかも片方のスニーカーというアイテムを持ち出してくるとは全くの予想の範囲外で、完全に無防備だったマイハートはめちゃくちゃに揺れまくり、後はもうゲリラ豪雨のごとく泣き崩れてしまいますた。。

声をあげて泣いた初めての映画だな。でも、先日、久方ぶりに泣く気マンマンで見たっけ、もう泣けないのね(笑)。

そっかぁ、やっぱ不意打ちというのが1番効果があるんだなぁ。不意打ち以外で泣けるのは「火垂るの墓」だけだな。

しかし、、その泣かせてくれたブラッド・レンフロも25歳という若さで逝っちゃうんだから、、現実の方がツライね・・。

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きみに読む物語

20051003_36049 出演:ライアン・ゴズリング、レイチェル・マクアダムス、ジーナ・ローランズ、ジェームズ・ガーナー

監督:ニック・カサヴェテス

(2004年・アメリカ・123分)MOVIX仙台

評価★★★★/75点

内容:療養施設で暮らす老婦人を初老の男が訪ね、物語を読み聞かせる・・・。現代からの回想形式で、1940年のアメリカ南部、裕福な少女アリーと地元の青年ノアの恋物語が綴られていく。

“終わり良ければ全てよし、、もとい始め良ければ全てよし。”

珠玉のラブストーリーとまでは言えないかもしれないが、心に響く純粋な愛の物語だったとは確実に言える、そんな映画だったと思う。

特に真っ赤な夕映えの湖をゆっくりボートが進んでいくオープニングはピカイチだった。

映画としては、先の展開が読めるというありがちなストーリーでありながら、オープニングから滞ることのないしかも透明度の高い流れをしっかり作り出していて、変なつっかかりや邪推などに陥る前に純粋にその流れに乗れてしまう。

美しい映像と音楽にただただ身を任せながら物語の中に入っていくことができた。

この映画には“流れ”がある。この映画はそれに尽きると思う。それがなければただの平凡な映画に終わっていたことだろう。

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マイ・ルーム(1996年・アメリカ・99分)NHK-BS

 監督:ジェリー・ザックス

 出演:レオナルド・ディカプリオ、ダイアン・キートン、メリル・ストリープ、ロバート・デ・ニーロ

 内容:20年間連絡を取っていなかった姉ベッシーから電話を受けたリー。姉は白血病で、親類からの骨髄移植以外に助かる望みはなかったが・・・。

評価★★★★/80点

絆を縛り付ける負の連鎖を優しい眼差しと素直な心が解きほぐしていく。家族にとって1番の良薬は皆の笑顔なんだね。納得!

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トニー滝谷

Tony 出演:イッセー尾形、宮沢りえ、篠原孝文、四方堂亘

監督・脚本:市川準

(2004年・日本・75分)仙台フォーラム

内容:トニー滝谷の名前は、本当にトニー滝谷だった・・・。太平洋戦争時、上海のナイトクラブでトロンボーン吹きをしていた父親にトニーと名付けられたトニー滝谷。生まれて3日で母親が死に、孤独な幼少期を送ったトニーは、やがて美大に進みデザイン会社に就職。その後独立してイラストレーターになったトニーは、彼の家に出入りする編集者の一人、小沼英子に恋をし結婚する。しかし、幸せな日々は長くは続かなかった・・・。村上春樹の短編集「レキシントンの幽霊」に収められた同名小説を映画化した切ない愛の物語。

評価★★★★☆/85点

「トニー滝谷の名前は、本当にトニー滝谷だった。」で始まるストーリーテリング。微細な音まで丁寧に拾い上げ収めている映像。孤独を背負う男トニー滝谷と、恐いくらい幸せな在りし日々の思い出が影として残るほどの残り香を漂わせる妻を見事に体現しきったイッセー尾形と宮沢りえ。

それら3つの要素が全くぶつかり合うこともなく本当に自然に融けあっている。

こういう映画を見たのはもしかして初めてかもしれない。

ほとんどの映画は3つの要素のうちどれかひとつが突出していて他をカバーしているか、あるいはそれぞれの要素がぶつかり合って互いに強め合ったり弱め合ったりする中から映画という眼差しや面白さを抽出しようとするか、またはそうせざるを得ない映画が大半だと思う。

しかし、この「トニー滝谷」という映画には、それが恐いくらいに無いのだ。よどみと衝突と干渉というものが一切ない。

だから恐いくらいに心地良い。

それでいて世界観は恐いくらいにしっかりと確立されているという。。これが完璧ということなのだろうか。

市川準は村上春樹という透明な地肌に静かで柔らかなタッチで映画の香りを浸透させていき、スクリーンという鏡に見事に投影させたといえるのではないだろうか。

これほどの技量をもったメイクアップアーティストを自分は他に知らない。

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ぼくの伯父さん(1958年・フランス・120分)NHK-BS

 監督・脚本:ジャック・タチ

 出演:ジャック・タチ、ジャン=ピエール・ゾラ

 内容:ユニークな詩情と文明批評、アバンギャルド風の構成などをない交ぜにし、場面の動きと音楽によって進行していく独特の喜劇映画で、ジャック・タチ監督によるユロ氏を主人公とした一連のシリーズの代表作。プラスチック工場の社長の息子はモダン住宅の自宅が大嫌いで、ユロ伯父さんと彼が住む庶民街を好んでいた。社長夫妻にはそれが面白くなく、就職やお嫁さんを世話してなんとかユロ氏を一人前の人物にしようとするが・・・。

評価★★★/65点

“映画を見るというよりは上質の4コマ漫画をパラパラめくって読むかんじに似ている。”

ひとつひとつのエピソードの中には面白くないエピソードもあるのだけども、全体を通して1つの作品としてみれば面白かったといえる、そんなちょっと不思議な魅力に彩られたクスッと笑える映画。

ユロ伯父さんがアパートの部屋の窓ガラスに反射した太陽光を向かいの日陰の鳥小屋に当ててあげるところなど、どこか優しいタッチがいいね。

世の中には、ビリー・ワイルダーの「情婦」(1957)で、自分のメガネに太陽光を反射させてわざと他人の目に向けるクソジジイもいるからな(笑)。いや、もとい、法曹界の大御所ウィルフレッド卿(チャールズ・ロートン)でございますた。。

2017年12月13日 (水)

夢のシネマパラダイス506番シアター:愛憎渦巻く家族愛

永い言い訳

168434_02出演:本木雅弘、竹原ピストル、藤田健心、白鳥玉季、堀内敬子、池松壮亮、黒木華、深津絵里

監督・脚本:西川美和

(2016年・日本・124分)WOWOW

内容:人気作家の津村啓(ペンネーム)として活躍する衣笠幸夫。不倫相手と密会していたある日、旅行中の妻・夏子がバス事故で亡くなったとの知らせを受ける。すでに夫婦関係が冷え切っていた中で涙を流すことさえできない幸夫は、遺族への説明会で同じ事故で亡くなった夏子の親友ゆきの死に取り乱す夫・大宮陽一と出会う。トラック運転手の陽一は、まだ手のかかる2人の子どもを抱え、途方に暮れていた。子供のいない幸夫は、ふとした思いつきから子どもたちの世話を買って出るが・・・。

評価★★★★/80点

とりあえず黒木華を濡れ場要員として消費してしまう女優の使い捨て感がハンパない。

しかし、そんな女性不在の映画にもかかわらず、早々に退出したはずの深津絵里の存在感が全編を通して消えないのもある意味凄くて、生者が死者に縛られる構図に最後まで説得力をもたせていたと思う。

ましてや何も語らないはずの死者に「もう愛していない、ひとかけらも」なんてとどめの一撃まで残させるこの監督の情け容赦のなさには、ダメ男の幸夫にさすがに同情w

しかし、身近な人を喪って初めて知る大切さや愛おしさ、そして何より人は一人で生きていくことはできないんだという考えてみれば当たり前のことに気付かされる過程を、麻痺しない程度の毒針でもってチクチクと刺してくる西川美和のいじわるな筆致には相変わらず引き込まれてしまった。

自分の置かれた現実に四面楚歌状態になりながらも、斜に構えたインテリ感が消えない幸夫のカッコ悪い姿は、パーソナリティーが真逆な大宮(竹原ピストル)と比べると感情移入しづらい面はあったけど、だからこそ先述したテーマ性がよく伝わってくる仕掛けになっていたように思う。

その点で竹原ピストルと子役2人の果たした役割は大きかったな。

いやぁ、全てを見透かす西川美和ってやっぱり恐いわーw

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父、帰る

00000579138l 出演:イワン・ドブロヌラヴォフ、ウラジミール・ガーリン、コンスタンチン・ラヴロネンコ

監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ

(2003年・ロシア・111分)仙台チネラヴィータ

評価★★★/65点

 

内容:ロシアの片田舎。2人の兄弟アンドレイとイワン母と祖母とつつましくも幸せに暮らしていた。そんな夏のある日、12年間音信不通で写真でしか見たことがなかった父親が突然家に帰ってきた。寡黙な父はこれまでのことを何も語ろうとせず、母も何も説明しようとはしない。兄弟の戸惑いをよそに、翌朝父は彼らを小旅行に連れ出すが・・・。

“役者陣の存在感、詩的な映像美、静謐な音楽とひとつひとつの素材は満点に近いゆえに、なおさら映画の中になかなか入っていけないもどかしさが大きくのしかかってくる。”

旧ソ連時代を含めてロシア映画はほとんど見たことがないのだけど、この映画における役者陣の存在感と質の高さには舌を巻くばかりだった。

兄弟の強い視線が道先案内人としてこの映画を照らし出す光となっているのは言うに及ばず、特筆すべきは父親役コンスタンチン・ラヴロネンコの圧倒的存在感。

ただそこに立っているだけでその場の空気が彼のオーラによって充満し密度が増すのだから。

12年間どこで何をしていたのかが全くの謎に包まれた父親、しかし、その12年という重みと年輪が静かにかつ確実に刻まれていたように見えてしかたなかった。

そして登場時間は少なかったものの兄弟の母親。これがまた素晴らしいのなんの。

夫を12年間待ち続けてきたであろう妻、しかし帰ってきた夫に対してどこかそっけない態度で逆に不安な夜を過ごしてしまう、そんな複雑な心の内を垣間見せる彼女のストーリーをもっと見たかったり。「ジャック・サマースビー」みたいになっちゃうのかな。

また、映像もCM畑出身の監督らしく凝ってはいるが、肌にまとわりついてくることがない美しさで迫ってきて、個人的には好みの画。

と、ここまでべた褒めしてきたように、各々の要素は素晴らしいのだが、映画の中に入っていくことができないというこの映画に対する唯一の不満がはっきりいって全てをチャラにしてしまう・・・。

映画の世界へ入るためのドアが半開きになっていて、爽やかな風が流れてくるのだが、ドアノブに手をかけようとしてもどうしても手が届かず、追いかけても追いかけてもなかなか追いつくことができない。まるで永遠に追いつけないのではないかと思うくらい。

だから自分は途中で追いかけるのをやめた。ひとり車を下ろされ降りしきる雨の中でじっとうずくまるイワン少年のように、ただ目で追うことしかできなかった。

と、ずっと目で追ってたらラストで半開きのドアからモノクロ写真がパラパラと落ちてくる始末。

それを拾って見て、そこで初めてこの映画に触れられた気がしたのだが、あくまでも気がしたであって、その意味するところなど分かろうはずもない。

といってもう一度見る気にもなれず、僕、帰る。。ガクッ

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Mr.&Mrs.スミス

Imgf633ca7bzik6zj 出演:ブラッド・ピット、アンジェリーナ・ジョリー、ヴィンス・ヴォーン

監督:ダグ・リーマン

(2005年・アメリカ・118分)MOVIX仙台

内容:結婚5年目のスミス夫妻。表向きはアツアツの夫婦だったが、裏の顔は2人とも別組織に属する一流の殺し屋だった。互いにその正体を隠し結婚生活を送っていた2人だったが、ある時ついに仕事の現場でバッタリ出くわしてしまい・・・。

評価★★★/60点

う~ん、宮川大助・花子のドツキ漫才の方が面白い。そんなレベル。。

最強サド・マゾ夫婦の幸せ家族計画、もとい異常性欲の発露を徹底的に暴いた真実の映画、とも言えなくもない・・。良い子のみなさんは決してマネしないように

でもジョン(ブラピ)とジェーン(アンジー)の大格闘シーンでやけになったブラピのマジ蹴り連発にはさすがに吹いちゃったけどね(笑)

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幻の光(1995年・日本・110分)NHK-BS

 監督:是枝裕和

 出演:江角マキコ、内藤剛志、浅野忠信、柄本明、柏山剛毅

 内容:12歳の時、祖母が失踪してしまったゆみ子は、その事件以来、祖母を引き留められなかったことを深く悔やんでいる。やがて25歳で郁夫と結婚し、息子も生まれ幸せな日々を送っていたが、ある日、郁夫は自転車の鍵だけを残して列車に飛び込み命を絶ってしまった。5年後、ゆみ子は民雄と再婚して奥能登の小さな村に移り住む・・・。生と死、喪失と再生をテーマに、宮本輝の同名小説を映画化したヒューマン・ドラマ。

評価★★★☆/70点

“宮崎駿は、すべては闇から生まれ闇に帰るとナウシカに言わせしめたが、もしかしたら幻の光とは生命も清浄も汚濁も苦悩も善も悪もすべてが溶け合った原初の源から生まれた最初の光だったのかもしれない。”

永遠に打ち寄せる波のごとく繰り返される彼女の喪失への問いに対する答えを彼女は永遠に知ることはできないだろう。

しかし永遠に鳴り止まない波の音色がいつしか日常に溶け合っていくように、彼女の決して癒されない悲しみは、能登の厳しい自然にゆっくりと吸い込まれ取り込まれ溶け合っていく。

宮崎駿が言うように、命は闇の中のまたたく光なのだとしたら、漆黒の闇をまとっていた彼女の中にうっすらと光が差し込み、闇を背負ってなおそれがまぶしく光り輝き、いつしか色鮮やかな衣を身にまとうことができる日がやって来るような気がする。

そうほのかに感じさせる静かだが確かなラストだったように思う。

P.S.黒い服は死者に祈る時にだけ着るの~~♪っていう宇多田ヒカルの歌が頭の中で鳴り響いてしまった。。

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楢山節考

Balladofnarayama2783us 出演:坂本スミ子、緒形拳、あき竹城、倍賞美津子、左とん平、清川虹子

監督・脚本:今村昌平

(1983年・東映・131分)WOWOW

評価★★★★/75点

 

内容:ある山奥の寒村では、食料不足のために70歳を過ぎた老人は子供に背負われて近くの楢山の頂に捨てられるという掟があった。“楢山さま”と呼ばれる神様を信じている老女おりんは、捨てられに行くことを神のもとに召されることだと信じ、その日を待っていた・・・。カンヌ国際映画祭作品賞。

“蛾と蛇と蛙と蝙蝠と、清川虹子。。人間が蟲になる夜、蟲祭りの夜、、”

こいつらを土鍋に放り込み今村風ゴッタ煮でグツグツ煮込む。

すると今まで見たことも感じたこともないような強烈な色とにおいのするアクがゴボコポと吹き出してくるのだ。

それは日本人の生と性の営みの根源的な部分が土気色の泡状となったものであり、取れども取れどもそのアクは吹き出してくる。

しかも今村風ゴッタ煮は、煮汁が煮詰まりアクが壁面にこびり付くまで煮詰めるしつこさが売りで、その熱と執着は見ている者の芯深くに眠っている影を呼び覚まし恐怖さえ抱かせる。

人間を動物でも獣でもなく、虫のように描いてしまう今村昌平のどぎつい眼力に、見てはいけないものを見ているような、蛇ににらまれた蛙状態になってしまった・・。

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生きたい(1999年・日本・119分)NHK-BS

 監督・脚本:新藤兼人

 出演:三國連太郎、大竹しのぶ、吉田日出子、塩野谷正幸

 内容:姥捨て山伝説と現代の高齢化社会における老人の置かれた現状を交錯させ、ユーモラスなタッチで描いた社会派人間ドラマ。

評価★★★/65点

弟の苦悩を描いた方が面白い映画になりそうだけど・・。

それはともかく、さんまが怖れる女優、大竹しのぶ。

普段のキャラがこの作品にちょっとでも含まれているのだろうか。彼女の映画を見るたびにどんどん分からなくなる。

これを天才と呼ばずして何と呼ぼう。

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ホワイト・オランダー(2002年・アメリカ・109分)NHK-BS

 監督:ピーター・コズミンスキー

 出演:ミシェル・ファイファー、レニー・ゼルウィガー、アリソン・ローマン、ロビン・ライト=ペン

 内容:15歳のアストリッドは、才能豊かな芸術家の母と2人暮らし。恋人殺しの罪で服役する母は、娘に手紙で「私だけを信じて」と訴え続ける。しかしそれは、才能、美貌などすべてを手にした母親の独善的な愛だった。。。

評価★★★/65点

“石の上にも三年を、文字通り悩み苦しみながら、しかし凛々しさとたくましさをもって見事に体現しきったアリソン・ローマンに魅入られた男ここにあり”

ミシェル・ファイファーも適役で見事にハマっていたと思う。

くもりのないクリーンな白みを湛え、華奢でどこか可憐ではかなげでありながら、蒼い瞳と額に浮かぶ青スジで冷徹な面を醸し出す。

なんかジョジョの奇妙な冒険に出てくる、ブチ切れてスイッチが入ると豹変するアブない香りのする女キャラに似てたな・・。

2017年5月29日 (月)

夢のシネマパラダイス43番シアター:未知との遭遇

メッセージ

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出演:エイミー・アダムス、ジェレミー・レナ―、フォレスト・ウィテカー、マイケル・スタールバーグ、マーク・オブライエン

監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ

(2016年・アメリカ・116分)TOHOシネマズ日本橋

内容:ある日、地球の12カ所に楕円形の宇宙船が出現する。友好か侵略なのかその目的も分からない中、言語学者ルイーズに宇宙船とのコンタクトを試みるアメリカ政府から協力要請がくる。そして同じく要請を受けた物理学者のイアンとともに異星人との対話に挑むが・・・。 

山の稜線から這うように落ちてくる分厚い滝雲の眼下に広がる草原に鎮座する楕円形の黒い巨大物体。その奇妙な風景を覆うように流れる神秘的な音楽が荘厳さを際立たせて印象的。

この引きの絵づらだけでグイッと引き込まれてしまったけど、話自体もお隣の国とすらロクに意思疎通できないのに、異星人とコミュニケーションなんてできるのか!?という根本問題に的を絞っているのが新機軸で面白い。

アボット&コステロとのコンタクトの過程を丁寧に追う筆致も好印象だったし、言語が異なれば思考もそれによって異なっていくという面白い考え方をさらに推し進めたまさかのドンデン返しも今まで見たことのないようなオチで深い余韻を残してくれた。

でもこれって2回目見たらオープニングですでに主人公自らの独白で豪快にネタバレ宣言してるんだよね。常識に縛られてる地球人は気付かないよなぁ。。

何もしない異星人と疑心暗鬼になり殺伐としていく人類という構図も新鮮だったけど、カギを握るのはやっぱ中国なのねw

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第9地区

T02200310_0355050010445128158 出演:シャールト・コプリー、デヴィッド・ジェームズ、ジェイソン・コープ、ヴァネッサ・ハイウッド

監督:ニール・ブロンカンプ

(2009年・アメリカ・111分)WOWOW

内容:南アフリカ・ヨハネスブルグ上空に正体不明の巨大宇宙船が現われ、そのまま居座ってしまう。が、その中に乗っていたのは栄養失調の弱ったエイリアンだった。それから28年後、難民として受入れられた彼らだったが、居住区“第9地区”はいまやスラムと化し、地域住民の不満は爆発寸前。そこで政府は、エイリアンたちを新たな難民キャンプへ強制移住させることを決定。現場責任者にエイリアン対策課のヴィカスが任命される・・・。

評価★★★★/75点

焦らして焦らして姿を見せないことで恐怖をあおってきた存在、あるいは獰猛で食欲旺盛だったはずの存在、そして人間を圧倒的に支配凌駕するはずの存在として描かれてきたエイリアン。

より知的で高尚なエイリアンも描かれてきたことはあれど、このエビ型wのエイリアンはこの常識から逸脱することはほぼなかったはずだ。

しかして今回の映画は、栄養失調で気力もなく、人間に保護・隔離されて20年間難民キャンプに居続けるエイリアンという非常識な設定をぶっ込んできた。

これは端的にいえば虚構“非日常”を現実“日常”に反転させる発想の転換といえ、この設定だけで映画の面白さの8割方できているといってもいいと思うのだけど、現実を現実として認識させる描写力がしっかりベースとして確立しているからこそこの転換も生きたのだと思う。

手持ちカメラや防犯カメラを用いたドキュメンタリータッチの手法は最も大きな要素だと思うけど、例えばヨハネスブルグ上空に20年間鎮座しつづける巨大宇宙船が遠景の中に完全になじんでいる絵ヅラなんかはホレボレするほどで、映像面ではその役割を十分果たしているといっていい。

そしてその中でエビより醜悪な人間の姿が暴き出されていくわけだけど、舞台が南アフリカというストロングポイントをほぼ放置状態にしてB級テイストのオゲレツ話が繰り広げられるサジ加減も個人的には説教臭くなくてよかった。

大風呂敷広げようと思えばいくらでも広げられただろうに、つーか自分が作り手だったらエビを解放するべく現れた救世主ヴィカス参上!とばかりに、それこそアバターばりの人間vsエビの構図で描いちゃいそうだけどww

しかし、このヴィカスという男、正真正銘の小物なんだわ・・(笑)。

その点ではややこじんまりとしている感はあるのだけども、設定をはじめとしたディテールの作り込みはそれを補ってあまりあり、見る価値は十分ある。

個人的にはヴィカスが乗り込むモビルスーツが頭にこびりついて離れないくらいカッコ良くて、あれはマジにキタね

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未知との遭遇

Mp139 出演:リチャード・ドレイファス、フランソワ・トリュフォー

監督・脚本:スティーブン・スピルバーグ

(1977年・アメリカ・137分)NHK-BS

評価★★★★/80点

 

内容:インディアナポリス一帯に原因不明の停電事故が発生し、電気技師のロイはすぐに調査に向かった。その途中、小高い丘の上を通過していくUFOを目撃した彼は、その日から何かに憑かれたように山の形の模型を作り始めるのだった。

“これぞという悪役も黒幕も不在で映画をもたせる力量の凄さ。政府や国家権力の介在さえも強調しないという薄味仕立て。そこにあるのは、未知なるものへの不安と期待、見る者の想像力、そして人類としての我々人間一人一人である。”

だってX-ファイルだったら抹殺されまくり間違いなしでっせ。

トリュフォーから「君は子供が喜ぶ映画を作りつづけていくべきだ。」という教えを受けたスピルバーグ。今もってその姿勢は変わっていない。

そういうスピルバーグがやはり大好きなのです。

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地球が静止する日(2008年・アメリカ・106分)WOWOW

 監督:スコット・デリクソン

 出演:キアヌ・リーヴス、ジェニファー・コネリー、ジェイデン・スミス、キャシー・ベイツ

 内容:ある日、謎の巨大な球体が地球に飛来。宇宙生物学者のヘレン(ジェニファー・コネリー)をはじめあらゆる分野の専門家が集められ、対策チームが組織される。そして、政府の厳戒態勢が敷かれる中、NYセントラルパークに降り立った球体からクラトゥと名乗る男(キアヌ・リーヴス)と、銀色の巨大ロボットが出てきて・・・。1951年に製作されたSF映画の古典「地球の静止する日」のリメイク。

評価★★☆/50点

1928年のカラコルム山脈の雪山から始まるプロローグからジェニファー・コネリーが政府の情報機関に強制的に連れ出され、異様な未確認飛行“球体”がセントラルパークに着地するまでの序盤はサクサクと進んでいき、一見すると非常にとっつきやすいのだけども、作劇としては非常に甘くて浅いといわざるを得ない。

例えば、この映画に通底している母性愛(クラトゥが胎盤に包まれていたり、それこそ母なる星・地球といったテーマetc.)というところからしても、ヘレンと義理の息子ジェイコブのぎくしゃくとした関係性は最初からもっと強調して描いてもよかったはず。

なんてったってこの2人が本物の親子関係になっていくのを見てクラトゥは人類絶滅という最後の審判を覆すわけだから。

とするならば、やはりこの映画の描写力・演出力というのは決定的に弱いんだよね。

マックで人類絶滅を決めるくだりで、70年前に地球にやって来た中国人のジイさんが、人間は破壊的な種族だが、と同時に人間には別の面もあり、自分は人間として生きてきて良かったとのたまうのだけど、怪訝そうな顔で聞いていたクラトゥがそれを実感していく過程を全てヘレンとジェイコブに集積させるのもまたスゴイ話でww、、だったらそれならそれでもっとちゃんと描写してもらわないと。。

ジェニファー・コネリーは配役としてはドンピシャだっただけに・・・。

また、巨大ロボット、ゴートの造型なんかを見ても全体的にロバート・ワイズ監督のオリジナル作や50年代SF映画の素地や空気感を尊重して描き出そうとしている節は感じられるのだけど、CG技術を駆使した現代的な素地とイマイチ融合しきれていないというか、上っ面だけをなぞったような中途半端さだけが目についてしまったかんじ。

そしてその中途半端さがサスペンス演出をも軽くしてしまっていて、無表情のキアヌ以上に見てるこっちが無表情にならざるを得ず、面白くもなんとも・・。

現代においてこういう映画を作るなら、それこそティム・バートンの「マーズ・アタック!」(1996)のようにメッセージ性などクソくらえのB級おバカ映画として作るとか、あるいはシャマランの「ハプニング」(2008)みたいにそれなりの見せ方や演出力をつけてから作ってもらいたいもんだわさ。

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アビス

D110582652 出演:エド・ハリス、メアリー・エリザベス・マストラントニオ、マイケル・ビーン

監督・脚本:ジェームズ・キャメロン

(1989年・アメリカ・171分/完全版)NHK-BS

評価★★★★/80点

 

内容:アメリカの原子力潜水艦が計器故障で制御不能となり、海溝に沈んだ。現場近くには海底油田採掘用の海底住居があり、主任のバッドら9人のクルーは救出に向かう。海軍のダイバーチームを率いるコフィ大尉と、海底住居の設計者リンジーも到着し、調査が開始されたが、潜水艦の乗組員は全員死亡していた・・・。最先端のテクノロジーと多くの才能が結集され、崇高で幻想的なシーンを見事に完成させた深海版「未知との遭遇」。

“宇宙であれ深海であれ殺人マシーンが送られてくる世界であれ、人間を究極の世界にセットすればそこで試されるのは「人間力」にほかならない。常にそういう舞台を題材にとり「人間力」を追求しつづけてきたキャメロンがやはり好きなのだと再確認した。”

この映画で1番撮りたかったのは海底で蠢くケーブルであり、1番描きたかったのは深海よりも深く強い人間力ではないかと思うのだが、観客の求めるニーズと監督の撮りたい描きたいこだわりにちょっとズレがあるなと思ったのはたしかだ。

下手すると観客置いてきぼりで監督の自己満足の世界にただ没入していくだけの作品になるすれすれのところをいってる感触があったのだが、逆に個人的にはそれがツボにハマッたかんじ。

スケールでかそうでいて、実はスケールの小ちゃい息もつまりそうな密閉空間、、未確認物体との接触を描くようでいて、実は愛の絆の強さをじっくり描いたキャメロンの愛すべき小品といったかんじで好きなんだよねぇ。

当時の最新技術を駆使した映像は、CG映画の礎を築いた「プレデター」の直系の作品といってもいいと思うけど、すでにこの「アビス」で最新技術をしっかり人間ドラマとバランス良くかみ合わせているというのはやはりキャメロンのバランス感覚と非凡な才のなせる技だと思ったり。

CGや特撮を駆使する金かけた大作を作ることにかけては右に出る者がいないキャメロン、しかし人間力を追求しつづけるという点においても右に出る者はいないのではなかろうか。そこが自分を魅きつけてやまないのかもしれない。

、、って「私を溺れさせて仮死状態にして後で蘇生させて」なんて、そんな究極の選択考えたくもないけどもw

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ミッション・トゥ・マーズ(2000年・アメリカ・114分)WOWOW

 監督:ブライアン・デ・パルマ

 出演:ゲイリー・シニーズ、ティム・ロビンス、ドン・チードル、コニー・ニールセン

 内容:2020年、人類は火星の有人着陸に成功する。しかし、探査隊からの送信は途絶え、第2ミッション・チームが救援に向かう。たどり着いた救援隊が、火星で見たものとは・・・。

評価★★★/60点

サスペンスの巨匠が挑んだSF大作!ということで見てみたら、、完全な畑違いでしたっていうお話(笑)。。

なんだろ、バタフライの金メダリストが背泳ぎに挑戦して、スタートと同時にバサロ泳法で潜行したものの、いつまでたっても浮上してこず、あれっいつまで潜ってるんだ?と思いきや、ただ単に底に沈んでたみたいなww

いや、例えば火星が地球の生命の起源というのは、自分もそういうの想像したりするの好きなんだけど、それをキューブリックとスピルバーグを足して4で割ったくらいの凡庸さで描かれちゃたまらんわっていう。。

デパルマの名を伏せてこの映画見せても誰も監督がデパルマだとは答えられないくらいSFというフレームワークの中にデパルマ節が埋没しちゃってて、単なる想像力の欠如した中途半端な作品にしか見えないのがイタイ。

しかもテーマが愛と友情というド直球なものであったがゆえ余計に際立っちゃったかんじ・・。

デパルマさん、自分のお星(フィールド)にお帰りなさいww

2016年8月11日 (木)

夢のシネマパラダイス372番シアター:となりのトトロ

となりのトトロ

Posterart_theateranimeab526011声の出演:日高のり子、坂本千夏、糸井重里、島本須美、北林谷栄、高木均、丸山裕子

監督・脚本:宮崎駿

(1988年・東宝・88分)

評価★★★★/80点

内容:舞台は昭和30年ごろの日本。母親の長期療養のため、父親とともに病院に近い田舎の家へ越してきた4歳のメイは、ある日、庭で2匹の不思議な生き物を見かける。後をつけて行くと、森の中で昼寝している巨大なトトロを目撃した。姉のサツキも雨降りのバス停でトトロと出くわす。姿は奇妙だが心は優しい変な生き物トトロと姉妹の交流が始まる。

“自分だけだろうか。子供の時分にこの映画を見た印象がどこか陰鬱で物悲しいのは、”

小学3年生の時に劇場で見たのが最初で、たしか「火垂るの墓」と同時上映だったんだよね。

この同時上映というのが実はクセモノだったわけで、同時上映で見たが上での弊害、火垂るの墓のイメージや心象風景といったものがトトロと結びついてしまい、後に見るたびに1つの独立した映画としてまっとうに見れないという時期があった、ということは「火垂るの墓」のレビューで述べた通り。

しかし、実はその点を除いたとしてもトトロを見る上でその当時の自分には重大な弱点があったのだった。

それは、死とオバケ。

死んだらどうなるんだろうという得体の知れない恐怖に駆られていた時期がちょうどこの頃で、そのためか親が仕事から帰ってくるまでの夕方から夜にかけての時間が本当に心細かったことを今でも鮮明に憶えていたりする。

このまま親は帰って来ないんじゃないかとか、外はもう真っ暗なのに。すぐ外を走る国道の車やトラックの音だけが妙に大きく聞こえてきたりしていっそう心細くなってきて・・。

そして玄関のドアが開く音がすると、スーッと胸の不安が取り除かれ幸せな安堵感でいっぱいになったものだ。今日も一緒に普通に夕飯を食べられるって。

だから、サツキとメイが稲荷さまの社の前でお父さんの乗ったバスを待つ場面は、なんというか今見ても寂寥感に駆られてしまうんだよね。

今のバスに乗ってくるはずなのに、乗ってない。

このときのなんとも言葉で言い表せないような悲しさと寂しさと不安といったら、だからこの映画で1番印象に残っているシーンは、このお父さんをバス停で待つシーンなのだ。

まぁ今見返してみるとこのシーンでの静寂な間の取り方なんかホント上手いんだけどね。

あとはお母さんの病気。

電報が届いてもしかして容態が悪くなって夏休みに帰ってこれないかもしれない、あるいは死んでしまうのかということが、ものの見事に当時の自分の抱えていた言い知れぬ不安と恐怖とダブってしまうわけで。

オバケに関しては、もうホントあの頃は信じてたし、怖くて怖くて仕方なかった怖がり屋のガキんちょ(笑)。

だから、サツキが夜、薪を拾いに行くシーンで突風が吹いてきて周りの木々がざわめいたり、バケツがガラガラと転げたり、ガラス戸がガタガタ震えるところなんかはやっぱ怖いんだよねぇ(笑)。

そっか、そういう時はでっかい声を上げればいいんだな、とこの映画から教わったのだった。

ネコバスがニターッと笑ったときの顔や目つきもイヤだったからなぁ・・・。

まぁ今となればどうってことない笑えちゃう話だし、あれから年月が経って見てみるとこの映画からいろいろ再発見することもあったりして。

夢だけど夢じゃなかったという、ファンタジーとリアリティの高質なバランス。

考古学の論文書いてるお父さん、、っておいおい、この映画のせいで自分も大学で考古学専攻しちゃったじゃないかよ(笑)。いや、映画のせいじゃないよw

しかし、そうこう言ってもやはり子供の時分に初めて見たときの記憶と印象というものはこれから先も消えないでずっと残っていくんだろうな。

自分にとって、となりのトトロとは、親を喪失してしまうことへの不安と恐れを喚起させた宮崎アニメ唯一の作品となったのだ。

ところで、考えてみると、宮崎アニメの主役キャラっていつも親がいない。

片親だったり、親元から離れたり。

でもトトロの前に見たラピュタ、またトトロの後に見た魔女宅をリアルタイムで劇場で見たときはそういう不安や恐れは微塵も感じなかったわけで。。

やっぱり見た時期や年齢と映画のもつリアリティさが関係してるのかな。

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モンスターズ・インク

Monstersinc01 声の出演:ジョン・グッドマン、ビリー・クリスタル、ジェームズ・コバーン、スティーヴ・ブシェーミ

監督:ピート・ドクター

(2001年・アメリカ・92分)MOVIX仙台

内容:子供部屋のクローゼットの向こう側に広がるモンスターたちの世界。彼らは夜な夜なドアを開けては子供たちを怖がらせているのだが、実は彼らは“モンスターズ株式会社”のれっきとした社員なのだった。しかもこの会社は、モンスターシティの貴重なエネルギー源である子供たちの悲鳴を集めるのがその仕事。そんなある日、モンスターたちが実は最も怖れる人間の女の子がモンスターシティに紛れ込むという大事件が発生した。

評価★★★★☆/85点

“よーし、雪男とかビッグフットにばったり出くわしたら、こっちから脅かしてやる!”

返り討ちにあうことは必至!?

ま、皆さん難しく考えないで大いに泣いて笑ってあちら側に貢献しちゃいましょう。

ウチの者みたいに、子供部屋の隣には親の寝室があるんでしょ?などという合理的解釈はこの映画には必要ありません(笑)。

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モンスターズ・ユニバーシティ(2013年・アメリカ・103分)WOWOW

 監督:ダン・スカンロン

 声の出演:ビリー・クリスタル、ジョン・グッドマン、スティーヴ・ブシェーミ、ヘレン・ミレン、アルフレッド・モリーナ

 内容:最恐のモンスターを目指しているマイクは、身体が小さく見た目が可愛いという悩みがあった。それでもポジティブなマイクは、超難関大学モンスターズ・ユニバーシティの“怖がらせ学部”へ進学する。そこでマイクは、エリート学生が多く通う中でも一二を争う名門一家に生まれたサリーと出会う・・・。「モンスターズ・インク」の前日譚を描く物語。

評価★★★/60点

シニカルでひねりの利いたエスプリの香り漂うピクサーで正直学園ものを見せられるとは思いもしなかったけど、しかも12年越しの続編でこれは、というイマイチ感は拭えず・・。

マイクのサリーに対する劣等感と対抗意識の他にもう一本軸がほしかった気もするね。その点では、前作でイヤミな悪役となったカメレオントカゲのランドールの方が当初はマイクと仲が良かったというのはもっと引っ張ってもよかったような。。

怖がらせ大会のシークエンスもちょっと盛り上がらなかったしなぁ・・・。

しかし、モンスターズインク社の稼ぎ頭であるマイク&サリーが大学を1年で中退してたとはねぇ(笑)。

自分にしかできない強みや個性を見つけてそれを生かせば新たな価値観を見出すことができ、なおかつまた別なアングルから夢に近づくことができるという至極真っ当なメッセージは良い。考えてみれば大学ってそういうとこだからね。

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ミニオンズ

166561_03声の出演:天海祐希、設楽統、日村勇紀、宮野真守、藤田彩華、LiSA

監督:ピエール・コフィン、カイル・バルダ

(2015年・アメリカ・91分)WOWOW

内容:バナナが好きな謎の生物ミニオンは、人類以前の太古の昔から存在していた。彼らの生きがいは、最凶悪なボスに仕えること。が、ナポレオン以降仕えるボスがいなくなり、氷の洞窟に長く閉じこもっていた。そんな中、ケビンは新たなボスを探すことを決意。仲間のスチュアートとボブを引き連れ旅に出る。そして着いた所は1968年のNY・・。

評価★★★/65点

怪盗グルーのスピンオフというよりメインストリームに乗るべくして乗ったと言った方がいいミニオン主演作だが、これがまぁまぁツマラない・・。

個人的にミニオンを最初に見た時に思い浮かべたのがウォレスとグルミットの犬キャラであるグルミットだった。

でも、言葉を話さず目と眉だけで感情を雄弁に物語るグルミットに比べると、ミニオンの場合は一見すると意味不明なミニオン語を話すことが逆に感情表現に制約の枷をはめてしまっていてスゴイもったいないなぁと。

分からない外国語でも声のトーンなどで喜怒哀楽くらいは推測できるように、結局言葉が感情表現の一部になっていて、しかもミニオン語ってけっこう単語が多くて、いっぱしの外国語になっちゃってるんだよね。

例えばロシアのカルトSF「不思議惑星キンザザ」みたいに“クー”“キュー”しか話せないとか、語彙を極端に少なくすればよかったのに。。

そう考えるとピクサーの「ウォーリー」はやっぱ凄かったんだなぁと再確認w

P.S.マシュマロマンは自分でも分かったけど、ラストは鉄腕アトムからと考えていいのかな!?

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ももへの手紙(2012年・日本・120分)NHK-BS

 監督・脚本:沖浦啓之

 声の出演:美山加恋、優香、坂口芳貞、谷育子、チョー、山寺宏一、西田敏行

 内容:小学6年生の女の子ももは、父親の死をきっかけに母親と瀬戸内の島に移り住む。彼女は、亡くなる日の朝に父とケンカしたこと、そして父が自分に残した書きかけの手紙のことが頭から離れず、ひとり悩みを抱えていた。そんなある日、彼女は不思議な妖怪たちと出会う・・・。

評価★★★/65点

作画の質、背景の緻密さ、キャラクターの動線などアニメーションとしてのレベルは格段に高いし、親の喪失からの回復という真っ当なドラマはリアルな現実感を醸し出す。

舞台が瀬戸内だけに大林宣彦に監督させて実写でやってもいいくらいだ。

しかし、これはアニメ。

リアルな現実感にファンタジーがブレンドされるわけだけど、このブレンドの仕方が個人的にはイマイチで中途半端な印象を抱いた。

要はもののけ3人組のキャラが弱すぎると思う。西田敏行や山寺宏一の声に助けられているとはいっても、正直あまり妖怪である意味がないというか、ファンタジーとしてのデフォルメが足りてないと思う。

これはおそらく現実と非現実の住み分けというよりは現実の地続きのものとしてファンタジーを位置づけている意図があるのだろうけど、自分としてはちょっとそこに違和感を感じちゃったのかも。

とはいっても、昨今のアニメ映画の中では全然悪くない出来なのはたしかで、普通におススメできる映画だとは思う。

2016年7月29日 (金)

夢のシネマパラダイス601番シアター:マッドマックスシリーズ

マッドマックス

Max2出演:メル・ギブソン、ジョアン・サミュエル、ヒュー・キース・バーン

監督・脚本:ジョージ・ミラー

(1979年・オーストラリア・94分)NHK-BS

内容:追跡専門のパトカーに乗る警官のマックスが暴走族を追跡していた途中、彼らのうちの一人が事故死した。復讐を開始した暴走族は、マックスの相棒を焼き殺し、妻子を連れて旅に出ていたマックスを追いかけ、マックスの妻と子をひき殺す・・・。暴走族に妻子を殺された警察官が復讐のために戦いを挑む姿を、ハードなカーアクションとショッキングな残酷描写で見せるアクション映画。

評価★★★/65点

環境に悪そうな車がブギャンブギャンいわせながら爆走する様は、古ぼけた時代性も感じられて逆に心地良かったりするし、悪玉の額にハエが止まっている安っぽさはB級ぽくて良いんだけど、けっこう後味は悪い映画なんだよね。

まるで「激突!」(1971)のトラックかはたまた「ジョーズ」(1975)のサメのごとく、どこまでも追っかけてくる暴走族軍団に、引っ張って引っ張って終盤ついに轢き殺されてしまうマックス(メル・ギブソン)の妻子。

そして復讐の鬼と化すマックスの青い瞳が不気味に瞬くとき、後に残るは死体と空しさだけ・・・。

はっきりいって、めちゃくちゃ怖いです。。

しかし、、ホント、オーストラリアってハエ多いよねぇ(笑)。水曜どうでしょうでオーストラリア横断ロケやってた時も大泉洋にハエたかりまくってたからなぁ。。しかも、日本のよりも一回り大きいらしいし、、って、この話引っ張ります??いえ・・。

いや、ゴキブリもめちゃ多いんだってよ

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マッドマックス2(1981年・豪・96分)WOWOW

 監督・脚本:ジョージ・ミラー

 出演:メル・ギブソン、ブルース・スペンス、ヴァーノン・ウェルズ

 内容:前作から数年後。石油が枯渇し無政府状態となった世界。砂漠を旅するマックスは、凶悪な暴走族と懸命に戦う小さな村から用心棒を頼まれ、協力することにするが・・・。

評価★★★/60点

砂埃、オッパイ、モヒカン、野生児、火炎放射器、ハンドボウガン、暴走族、荒野、改造車、ボンテージファッション、、、

まんま北斗の拳!

でも、実は北斗の拳の2,3年前に公開されてるんだね、この映画って。

この映画が全ての元凶だったのか。。ひでぶっ

と冗談はさておくとしても、物語のアウトラインは馬をバイクと車に変えた現代版SF西部劇になっているんだけど、今回の話は聞くところによると日本のテレビ時代劇「隠密剣士」のエピソードが元ネタになってるらしくて、そう考えると流れ者の一匹狼が最初はうさん臭がられながらも善意の人々を救って去っていく基本プロットって黒澤明の「椿三十郎」なんかにも通じるところはあるのかも。

あるいはこのような普遍的なヒーロー像はそれこそ西部劇の「シェーン」をも想起させるところだけど、オーストラリアの乾ききった風土のせいかあまりにも描写がドライすぎて道徳観念そっちのけのバイオレンスが際立ってしまい、メル・ギブソンの憂いを秘めた青い瞳をもってしてもかの作品のような神話性までを獲得するには至らなかったようだ。

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マッドマックス/サンダードーム(1985年・オーストラリア・107分)WOWOW

 監督・脚本:ジョージ・ミラー

 出演:メル・ギブソン、ティナ・ターナー、アンジェロ・ロシット、ポール・ラーソン

 内容:生きるために砂漠を彷徨うマックスが辿り着いた町バータータウン。そこは女王が治める町で、豊富な電力により栄えており、住民たちはサンダードームと呼ばれる闘技場での残酷な決闘ショーに熱狂していた。そんな中、町の電気技師が女王に反逆を企て、それに巻き込まれたマックスは砂漠へ追放されてしまう。が、行き倒れた所を謎の子供たちに救われる・・・。

評価★★☆/50点

前2作の出がらしの薄まったお茶みたいな中身で、狂気と憎悪が渦巻く殺伐とした空気はどこかへ雲散霧消、しかもティナ・ターナーの印象が強すぎてメル・ギブソンがかすんじゃってるという体たらく。しかも武器がフライパンって、そりゃないだろww

完全なファミリー映画に成り下がっちゃったね。。

でも、線路を爆走する機関車の逃走劇が「怒りのデスロード」のウォータンクにつながってると思うと少しは見所あるのかも。。

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マッドマックス 怒りのデスロード

Poster_3_fury_road_mad_max_by_cesar出演:トム・ハーディ、シャーリーズ・セロン、ニコラス・ホルト、ヒュー・キース=バーン、ロージー・ハンティントン・ホワイトリー、ゾーイ・クラヴィッツ

監督・脚本:ジョージ・ミラー

(2015年・オーストラリア・120分)盛岡フォーラム

内容:資源が枯渇し、砂漠化が進行した世界。愛する家族を守れなかったトラウマを抱え、本能のままに彷徨する元警官のマックスは、ある日、ウォーボーイズという武装集団に拉致されてしまう。彼らは、水を独占し、一帯を支配する独裁者イモータン・ジョーに仕える狂信者たちで、マックスは放射能被ばくのため短命な彼らの“輸血袋”として利用される。そんな中、ジョー配下の女戦士フュリオサが、ジョーに囚われていた5人のワイブス(子産み女)を引き連れ逃亡。裏切りに怒り狂うジョーは、容赦ない追跡を開始する。そしてマックスもまた、この狂気の追跡劇に巻き込まれていくが・・・。

評価★★★★★/100点

バカと天才は紙一重というけど、こと映画に関してはバカはバカのままで終わるのが常だった。

しかし今回、天才というバカの向こう側に行き着いた映画を初めて体感してしまった。掛け値なしのB級バカ映画が正真正銘の大傑作に変貌を遂げる奇跡を目の当たりにする快感といえばいいだろうか。

普段ならこのての狂乱のバイオレンスアクションなど見向きもしない還暦過ぎの母親と妹まで虜にしてしまったのだから、まさに麻薬ばりのブッ飛び映画である。

それはつまるところ緩急の急でしか成り立っていない映画だからだといえるけど、それを可能にしているのは極端なセリフの少なさにある。特に説明セリフはほとんどなく、そのぶん映像イメージで全てを語らせる。

そしてそれを保証担保するのがCGを極力排した実写ありきの映画的リアリティと、人喰い男爵というネーミングに恐怖ではなく笑いがこぼれてしまうようなマンガ的なお遊び感覚との絶妙なブレンドである。

それはオープニングに端的に表れていて、石油と水の奪い合い、、核戦争、、人類は汚染され、、世界は崩壊した、と断片的にワードを羅列した直後に、一面の荒涼とした砂漠を背景に双頭のトカゲをむさぼり食う男が佇む、その圧倒的な画づらだけで世界観を表現し説得力をもたせてしまう。さらに、このトカゲの踊り食いするようなヤバそうな奴が30秒後には謎の集団にあっけなく拉致されるというまさに緩急の急な定石外しがイカれた世界観をさらに強固なものにしていて一気に引き込まれてしまう。

そして極め付きがインディ・ジョーンズ最後の聖戦に出てくるペトラ遺跡を彷彿させるイモータン・ジョーの砦の威容と滝のように降り注ぐ水に群がる群衆シーンのスペクタクルショーだ。

ここまで開巻わずか10分の早業、セリフはほとんど無いにもかかわらず、あふれんばかりのイメージの洪水に完全に飲み込まれ、その後はウォータンクとともに映画内をアドレナリン全開で爆走させられてしまった。

そのイメージとは先にインディ・ジョーンズを挙げたけど、圧政を敷くイモータン・ジョーとウォーボーイズたちはインディ・ジョーンズ魔宮の伝説の邪教集団を想起させるし、棒飛び隊をはじめとする彼らの武装改造マシン軍団は風林火山の武田騎馬軍団、皮膚病に冒されたジョーの出で立ちはナウシカの皇弟やダースベイダーをも想起させる。さらにフュリオサはクシャナ殿下だし、大砂嵐は竜の巣だし、タイヤに無数のスパイクを装着した“ヤマアラシ”は「ベン・ハー」の戦車隊、汚泥の大地を竹馬で歩く人間(?)はハリーポッターの死喰い人、そして「激突」「スピード」「駅馬車」「十戒」というふうに自分にとっての古典イメージを刺激されまくりで、もうどうにも止まらない♪

砂塵舞う殺風景な一面の荒野を車で突っ走るだけなのに、とめどなくイマジネーションを喚起する豊饒の海を疾走するような爽快感に包まれるといえばいいだろうか。

自分のライブラリの引き出しをこれほど開放してくれた映画はなかなか稀で、近年では「アバター」くらいだけど、3DCG技術などテクノロジーの追求により未知なる異世界を創造し体感させる=サイエンスフィクションとリアリティを両立させたのが「アバター」だとしたら、今作はアナクロ趣味全開でそれを実践してしまったのだから恐れ入る。

例えばコーマドーフ・ウォリアーの火炎放射器付きエレキギターのボディに便器のフタが使われていたり、イモータン・ジョーの愛車ギガホースのダッシュボードに今まで葬ってきた無数の車のエンブレムが装飾されていたり、その他にもスパナ、フォーク、スプーン、電話のダイヤル、道路標識、自転車のタイヤ、空き缶、馬の歯etc..ありとあらゆる廃品が至る所で使われていて映像の密度を濃くしているし、ディストピアな終末世界に現代と地続きのリアリティを付与している。

さらに、フュリオサの左手が義手になった経緯にほとんど触れないなど説明セリフの少なさで多くを語らせず、シーンごとの意味合いを見る側にゆだねることで逆に情報量を増幅させているのもミソ。

それゆえ例えば、ウォーボーイズが口に銀のスプレーを噴霧したり、フュリオサが額に黒いグリースを塗りたくる行為なども俄然濃厚なイメージをかき立てられるわけだ。

この省略の美学のもと、凄まじいアクションが研ぎ澄まされたリアリティをもって120分間ダイレクトに迫ってくるので、脳内が覚醒しまくりで大変なことに・・

アカデミー賞では技術・美術部門を総なめにしたけど、惜しむらくは監督賞逃したことだね。獲らせてあげたかったなぁ。

しかし、場外ホームランをかっ飛ばした次の続編はいろんな意味で難しくなったぞ~w

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