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2023年5月12日 (金)

夢のシネマパラダイス502番シアター:南極物語

南極物語

Nankyoku2 出演:高倉健、渡瀬恒彦、萩野目慶子、夏目雅子、岡田英次、山村聰、15匹のカラフト犬

監督・脚本:蔵原惟繕

(1983年・東宝・145分)WOWOW

評価★★★☆/70点

内容:1958年、南極探検隊の第1次越冬隊で犬係を務める潮田と越智は、15匹のカラフト犬を鎖につないで残したまま昭和基地を後にしたが、悪天候で第2次越冬隊員が送り込まれず、犬たちは置き去りとなる。帰国した潮田は犬の飼い主に謝罪して歩くが、犬を見殺しにした彼らに世間の目は冷ややかだった。が、その頃南極では、8頭の犬が首輪からの脱出に成功していた・・・。

“犬好きの聖地、それは小さい頃にこの映画を見たときから南極だと信じ込んでいた・・・”

が、数十年ぶりに見返してみて、実は犬好きにとってのアウシュビッツだったということが分かって愕然とした。

子供のときの記憶って、いいようにすり替えられるんだなぁ(笑)。こんな暗くて重たい淡々とした映画だったっけ・・。

なんか犬がちゃんとしゃべって物語を進めていくマンガ本の方の記憶と混同しちゃってるらしい。

でもオーロラのシーンは子供心にゾッとしたことがありありと甦ってきたけども、そのくらいかなぁ当時の記憶と見事にダブったのは。

とにかくちょっといろいろな意味でショックだったかも。。

ただ、大空撮の多用をはじめとして映像のリアリティと本気度は今見ても凄くて、キャストスタッフそして犬たちの健闘には頭が下がる思いです。

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南極料理人(2009年日本・125分)WOWOW

 監督・脚本:沖田修一

 出演:堺雅人、生瀬勝久、きたろう、高良健吾、豊原功補、西田尚美

 内容:海上保安庁の調理人・西村は第38次南極観測隊の調理師として南極ドームふじ基地に1年以上派遣される。そこで7人の隊員の胃袋を満たすべく奮闘する西村であったが、平均気温-50℃以下という陸の孤島しかも男しかいない過酷な環境の中で隊員たちのフラストレーションは溜まっていく一方なのだった・・・。

評価★★★★/80点

南極基地で越冬隊員たちの食事を朝昼晩毎日作るって、こんな地味ィ~なお話がはたして映画になるのだろうかと思ったんだけど。

しかし、どんなテイストなのか皆目分からずに恐る恐るフタを開けてみたら、これが今まで味わったことのないような摩訶不思議な、しかしすこぶるやみつきになりそうな美味で、幸せな満腹感に浸れることができた。

気温マイナス54℃という、動物はおろかウイルスさえ生存できない真っ白な地に舞い降りたオッサン8人組。

太陽が4ヶ月も上らないような“地球最後の日”に誰がすき好んでむさっ苦しいオッサン共と過ごしたいと思うだろうか。1年半も・・・。

そんな網走も遠く足下に及ばない隔絶された酷寒の監獄wという非日常的空間が、次第に人間を圧迫していく様子がユーモラスに描かれていて終始笑いっぱなし

さらにその中で3食の美味しい食事が並ぶ食卓がストレス充満空間を解消していくとともに、非日常的日常を生き生きとあぶり出していく視点も新鮮で面白い。

しかし、この監督って劇場デビュー作らしいけど、控え目な日本人の突発的に暴走する姿、そして微妙な空気感と絶妙な間のアンサンブルはドツボにはまりまくりで、この人の笑いのセンスってズバ抜けてる。

次回作が楽しみッス。

あ、あと触れないわけにはいかないのがジブリアニメのお株を奪うボリューム満点料理の数々。

伊勢エビフライにカニ三昧に肉厚ビーフにフランス料理に中華に、、どんだけグルメやねんww

しかもそのボリューム度がハンパなくてめっちゃ美味そうなのね。実写でこれを撮れたってのはスゴイよ(笑)。

ローストビーフ松明を持っての鬼ごっことかホント笑えて、抱腹絶倒のシュールコメディに舌鼓を打たさせていただきますた

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南極日誌(2005年・韓国・115分)DVD

 監督:イム・ピルソン

 出演:ソン・ガンホ、ユ・ジテ、カン・へジョン、パク・ヒスン

 内容:チェ・ドヒョン隊長を中心に6人で構成された韓国の南極探検隊。彼らは、最低気温マイナス80度、ブリザード吹き荒れる海抜3700mの“南極到達不能点”を目指して歩みを進めていた。残された時間はあと60日で、それを過ぎると南極は半年間闇に閉ざされてしまう。しかし、21日目、80年前に遭難したイギリス隊によって書かれた日誌を発見したことから、彼らに不可解な出来事が立て続けに起こり始める・・・。

評価★★/40点

オゾンホールから直に紫外線受けて頭おかしくなったんちゃうか?

そうとでも考えないと、この中途半端な狂い方は説明がつかんぞw

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南極物語(2006年・アメリカ・120分)2006/03/27・MOVIX仙台

 監督:フランク・マーシャル

 出演:ポール・ウォーカー、ブルース・グリーンウッド、ジェイソン・ビッグス

 内容:高倉健主演の「南極物語」のハリウッドリメイク。

評価★★★★/75点

“ハリウッドの鉄則その1.基本的にアメリカ映画は度を越した人間のサバイバルは嬉々として描けるが、いざ動物、特に犬となると俄然お優しくなる。。”

しかも動物映画の王道ディズニーだもん。

その王道を踏み外さない予想通りの出来上がりで個人的にはスッキリ。

日本のオリジナルの方は淡々と犬たちの悲劇をドキュメンタリータッチで追い続け、申しわけ程度に高倉健の飼い主詫び状めぐりが挿入される。なんか高倉健だけにすごくお硬く不器用な印象というのが強くて。。

それが今回のリメイク版は容易に感情移入できてしまうんだよね。ま、ディズニーお決まりのパターンなんだけども。

しかし、オリジナル版がマイナス30度の冷たさと寒さを厳格に表現していたのに対し、今回のリメイク版はせいぜいマイナス5度くらい・・。

そういう温度差は確実にあったけどディズニー映画の場合はそれでちょうど良いのかもね。。

2022年1月 9日 (日)

夢のシネマパラダイス614番シアター:犯人は何処にー罪の声の真実ー

罪の声

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出演:小栗旬、星野源、松重豊、古舘寛治、市川実日子、火野正平、宇崎竜童、梶芽衣子、宇野祥平、篠原ゆき子

監督:土井裕泰

(2020年・東宝・142分)WOWOW

内容:1984年(昭和59年)に起きた食品会社を標的とした脅迫事件は、日本中を恐怖に陥れた劇場型犯罪として昭和最大の未解決事件となった。あれから35年後、新聞記者の阿久津はすでに時効となっている事件の真相を追う企画班に入れられ取材を始める。一方、京都でテーラーを営む曽根は、父親の遺品の中から見つけた古いカセットテープに小さい頃の自分の声が録音されていることに気づく。しかし、その声はあの事件で使われた脅迫テープと同じものだった・・・。

評価★★★★/80点

グリコ森永事件は自分が6歳の時だったのでほとんど記憶になく、2011年に放送された「NHKスペシャル未解決事件」でその詳細を初めて知った程度だった。

その点で当時5歳だった主人公・曽根俊也(星野源)の記憶をたどる旅は、どこか自分自身とも重ね合わせることができて感情移入しやすくて見入ってしまった。

また、プロットの構成も証言者のもとを訪ねてひたすら聞き込みを繰り返していくオーソドックスなものなんだけど、曽根と阿久津(小栗旬)2つのアプローチが交錯し真相に繋がっていくのは面白かったし、その真相が犯人捜しだけではなく、事件を通して十字架を背負わされた当事者たちの埋もれた人生にフォーカスしていくのも見ごたえがあった。

「目の前の不幸から目をそらさずに素数になるまで割り切って割り切って真実を明らかにする」というセリフが印象的だったけど、まさにその言葉通り丁寧に描写が積み重ねられていて、決して想像力に物を言わせたような突飛な小手先に陥らない説得力があったように思う。

考えてみれば先述したNHKスペシャルもドラマ仕立てで、めちゃくちゃ面白かったんだ。ノンフィクションドラマであれだけ面白いんだから、そりゃフィクションまぶしたら面白くならないはずがないよねw

ただ、あまりドバッと大量だと途端につまらなくなるし、その点この映画でのふりかける量は絶妙なんだよね。あくまで堅実に。良作。

P.S.

全共闘に対するどこか突き放したような冷めた視点とか分かるわーwと思ってたら、後日、原作者が自分と同学年であることを知って、この作品が自分にハマッた理由が腑に落ちた気がした。

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検察側の罪人

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出演:木村拓哉、二宮和也、吉高由里子、平岳大、大倉孝二、八嶋智人、酒向芳、キムラ緑子、松重豊、山崎努

監督・脚本:原田眞人

(2018年・東宝・123分)WOWOW

内容:若手検事の沖野は、心酔するエリート検事最上がいる東京地検刑事部に配属となり、さっそく老夫婦強盗殺人事件を担当することになる。が、事件の重要参考人の中にかつて時効になった女子高生殺害事件の重要参考人・松倉の名前を見つけた最上は、目の色を変えて松倉を追及していく。そのやり方に沖野は次第に疑問を抱き始めるが・・・。

評価★★★☆/70点

行動派で正義感の強い型破りな検事役で大ヒットを飛ばしたテレビドラマHEROとは真逆の絵に描いたようなエリート検事・最上を演じたキムタクの汚れ役は新鮮だったし、新米検事の二宮や異様な存在感を発する犯人役など役者陣は軒並み見応えがある。

が、いかんせんシナリオ演出ともに不親切で共感の足がかりを得られないのがイマイチ。

特に最上の親友で国会議員・丹野の収賄スキャンダルやインパール作戦との絡みが雑でうまく伝わってこない。

インパールについては、丹野が反旗を翻す戦前回帰思想の先につながるものの象徴として描かれている面があり、最上もついぞ自らの手で裁くことなく今に至る過去の愚行から生還した祖父を持つ。

そんな中で最上は法で裁くことができない悪に鉄槌を下すため一線を越えるわけだけど、法より自分の正義を優先した行為を正当化するために丹野の遺志(歴史修正主義の断罪)をまるで免罪符であるかのように持ち出してくる。

けれども、所詮100パー私怨による復讐にすぎない最上のやってることは、結局インパールを指揮した大本営のなりふり構わない暴走と何ら変わらないわけで。

しかし、映画はそこの矛盾点を半ば意図的に放っぽり出してるのでタチが悪いんだよねw

また演出においても、築地本願寺での葬儀シーンや、二宮と吉高がベッドインした後の上下逆さまで寝るシンメトリーなど妙に異様さが際立っている。

ようするに漫才コンビ千鳥のフレーズを借りていえば、原田眞人のクセがすごいんじゃ~(笑)!

とは言いつつ、観客置いてけぼり感も含めて見た後の疲労度は高いけど、こういう生半可にはいかない映画も時には良い。ってことにしておくw

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三度目の殺人

172308_02出演:福山雅治、役所広司、広瀬すず、満島真之介、市川実日子、橋爪功、斉藤由貴、吉田鋼太郎

監督・脚本:是枝裕和

(2017年・東宝・125分)WOWOW

内容:何よりも裁判の勝ちを優先するエリート弁護士の重盛は、供述が二転三転して手に負えないと同僚がサジを投げた殺人事件の弁護を引き受けることに。被告人の三隅は、解雇された工場の社長を殺害したかどで逮捕され、30年前にも殺人で服役しているうえ、今回も強盗殺人を認めており死刑は確実とみられていた。重盛は無期懲役に持ち込もうと戦略を立てるが、肝心の三隅は証言をコロコロ変え、重盛にも本心を見せないのだった・・・。

評価★★★☆/70点

いわゆる法廷サスペンスものの最終的なベクトルがたったひとつの真実の追求にあるとするならば、今回の映画はその定石をスルーしているので見る側としては戸惑ってしまうというのが正直なところ。

それどころか真実は十人十色であり、水面下の談合忖度調整により不条理や不都合=本当のことを取っ払ったストンと胸に落ちるそれらしいストーリーが形作られる。そして公の法廷の場にこれが真実ですよと差し出され、下される判決・・。

そんな人が人を裁く司法のあり方とそのシステムの内幕を描いているんだなと2回見てようやく気付いたけど、結局こちら側にはストンと胸に落ちてこないっていうオチ(笑)。

まぁ、原作によらないオリジナル映画だからこその強度が十二分にあるのは確かだし、いろいろ考えさせられるので見応えはあったけども。。

でもって頭の回転が鈍い自分の胸に1番響いたのは、万引きしないと父親に会えない娘の哀しさだった。でもこれも良い風にとった自分の信じたい解釈のひとつでしかないのかも・・w

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22年目の告白ー私が殺人犯ですー

Bc4c04a9出演:藤原竜也、伊藤英明、夏帆、野村周平、石橋杏奈、竜星涼、早乙女太一、平田満、岩松了、岩城滉一、仲村トオル

監督:入江悠

(2017年・日本・117分)WOWOW

内容:1995年、東京で連続殺人事件が発生。牧村刑事らの必死の捜査にもかかわらず2010年に時効を迎えてしまう。しかし、それから7年後。曽根崎という男が自ら犯人だと名乗り出て、告白本の出版会見を大々的に行う。マスコミ報道は過熱しネットも熱狂、本はベストセラーとなり、賛否渦巻く中で一躍時の人となっていくが・・・。 

評価★★★/65点

22年前って曾根崎(藤原竜也)はどう見ても未成年だったのでは?という違和感は最初からあったけど、あそこまでの展開は予想がつかず、サスペンスでこういうジェットコースタームービーは珍しいので楽しめたのはたしか。

とはいえ、どんでん返しの連チャンはその場しのぎの面白さで、強引なご都合主義を飲み込むほどの描写力には乏しかったかなと。

ようするに琴線にあまり響いてこないんだよね。

被害者遺族含めて登場人物の横のつながりが薄かったのが世界観の狭さにつながっていて、ヘヴィーな内容のわりにあくまでこれは画面の中で起きている出来事というライト感覚になっちゃってるのかなぁと。まぁ、破綻はせずによくまとめてるとは思うけどね。

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愚行録

E6849ae8a18ce98cb2e38386e382a3e382b6e383出演:妻夫木聡、満島ひかり、小出恵介、臼田あさ美、市川由衣、松本若菜、中村倫也、眞島秀和、濱田マリ、平田満

監督:石川慶

(2016年・日本・120分)WOWOW

内容:エリートサラリーマンの夫と美人で有名な妻、その一人娘の田向一家が殺害される事件が起きて1年。未解決の中、週刊誌記者の田中武志は、一家の関係者の取材を始める。そして被害者夫の会社の同僚や、妻の大学時代の友人らの証言から一家の意外な素顔が明らかになっていく。そんな中、田中も妹の光子が育児放棄の疑いで逮捕されるという問題を抱えていた・・・。

評価★★★/65点

地方私大出の自分からすると、有名ブランド私大の中の学内ヒエラルキーは全くもって別世界で、「あの世界を知らない人にどう言っても伝わらない」というセリフはまさに的確。

まぁそこが映画を見る上での足かせになっているわけではなかったけど、独特な距離感はあったかも。

ただ、題名通りなそれぞれの愚行っぷりがレベルは違えどどこか他人事ではない人間の姿をさらけ出していて気持ち悪かったし、犯人の犯行動機が単なる復讐ではないところが、もの凄く現代的な薄気味悪さがあって怖かった。

なんだけど、1番の凶行者が狂言回しのカイザー・ソゼだったことに気付かされてさらなるブルーの底に。。重すぎるよ・・。

役者陣は軒並み好演。特に実は素演技だった!?小出恵介ww

2022年1月 4日 (火)

夢のシネマパラダイス585番シアター:家族の愛のカタチ

万引き家族

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出演:リリー・フランキー、安藤サクラ、樹木希林、松岡茉優、城桧吏、佐々木みゆ、池松壮亮、高良健吾、池脇千鶴、柄本明

監督・脚本:是枝裕和

(2018年・日本・120分)TOHOシネマズ日本橋

内容:東京の下町の古ぼけた一軒家で暮らす5人の家族。治(リリー・フランキー)の日雇い稼ぎはあてにならず、一家の暮らしはおばあちゃん(樹木希林)の年金頼り。それでも足りない分は万引きでまかなっていた。そんなある日、治は団地のベランダで幼い女の子が部屋を閉め出され寒さに震えているのを見かねて連れ帰る。ゆりと名乗るその子は家に帰るのを拒否したため、そのまま一家と暮らし始めるが・・・。 

評価★★★★☆/85点

この映画で1番好きなシーンは、家族で海に行った時に祥太が亜紀姉ちゃん(松岡茉優)のビキニの胸元に目が釘付けになっているのを父リリー・フランキーがめざとく見つけて茶化すところ。オッパイに興味が湧くのも、朝起きた時にアソコが大きくなっているのも、それは病気じゃなくて大人の男なら誰でもそうなるんだと言って祥太を安心させるシーンにほっこり。

このシーンがなんで印象的だったかというと、名作ドラマ「北の国から」でシチュエーションは違えど、純くんと田中邦衛が全く同じやり取りをする場面があって、それを真っ先に思い出したから。パクリかと思ったくらいww

でも、この祥太とリリー・フランキーの関係性にしても、初枝ばあちゃん(樹木希林)と信代(安藤サクラ)や亜紀の関係性にしても、一言一言の会話の裏側にある複雑なバックグラウンドを想像させる演出が途轍もなく緻密かつ奥深くてホント見入っちゃった。

そして、余計な期待のいらない打算的なつながり、それでも芽生えてくる愛情と切りがたい心のつながり、そして結局まとわり付いてくる血のつながりという呪縛、これらが渾然一体と絡み合った一筋縄ではいかない疑似家族のカタチにいろいろと考えさせられて、終わってみればエゲツない余韻。。

いや、正確にいえばモヤモヤ~としたかんじに襲われて何とも言えない気持ちになったけど、自分の中でこんな良い意味でのモヤモヤ映画は初めてかもw

このモヤモヤは、セーフティネットからこぼれ落ちた彼らを見て見ぬふりをして、時にはワイドショーの表面的な情報を鵜吞みにして上から目線で断罪する世間様のひとりである自分が、彼らを善悪の物差しで測りかねている居心地の悪さだったのか。それともスカイツリーは見えるけど隅田川の花火は音しか聞こえないワンルームに独り暮らす自分も、下手したら彼らのような境遇に転げ落ちてもおかしくないのではないかという一抹の不安を感じた怖さなのか。

自分の心の中も渾然一体・・・。

とりあえず、自分の部屋はキレイにしておこう!とだけは決心したww

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浅田家!

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出演:二宮和也、妻夫木聡、黒木華、菅田将暉、渡辺真起子、北村有起哉、風吹ジュン、平田満

監督・脚本:中野量太

(2020年・東宝・127分)WOWOW

内容:幼い頃から写真を撮るのが大好きだった浅田政志は、なりたい&やりたいことをテーマに家族全員でコスプレした姿を撮った写真集を出版する。すると写真界の芥川賞・木村伊兵衛写真賞を受賞!プロの写真家として歩み始めるが、軌道に乗り出した矢先に東日本大震災が発生する・・・。

評価★★★★/75点

「湯を沸かすほどの熱い愛」では末期がんの宣告を受けた肝っ玉母ちゃんのダダ漏れの愛を、「長いお別れ」では認知症になった父親の介護の悲喜こもごもをそれぞれユーモアを交えて描いた中野量太監督。

絶望的な悲しみを陰うつなシリアスドラマではなく陽気なポジティブ喜劇に切り取っていくセンスは、その先にある生きる喜びこそ人の営みの本質であるということを謳い上げていて、昨今の閉塞リアリズム全盛時代において稀有な存在になっている。

繊細なテーマである東日本大震災という悪夢のような喪失を取り上げた今作でもそのスタンスが変わらないのがスゴイところで、家族写真にフォーカスして絆を描き出す演出にはあざとさがなく素直に見ることができる。ラストの二段落ちにもほっこり脱力w

ちびまる子ちゃんに出てくるたまちゃんのお父さんばりに写真好きだった父親からカメラを向けられると一目散に逃げまどっていた自分のことを少し後悔(笑)。

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湯を沸かすほどの熱い愛

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出演:宮沢りえ、杉咲花、伊東蒼、篠原ゆき子、駿河太郎、松坂桃李、オダギリジョー

監督・脚本:中野量太

(2016年・日本・125分)WOWOW

内容:銭湯を営んでいた幸野家。しかし、1年前に旦那の一浩が失踪してからは休業状態になり、妻の双葉は女手一つで中学生の娘・安澄を育てていた。そんなある日、双葉は末期ガンで余命2か月の宣告を受けてしまう。絶望に沈みながらも、家業の銭湯の再開やイジメにあっている安澄のことなど、死ぬまでに解決しなければならない問題が山ほどあると思い立った彼女は、すぐさま行動に移していく・・・。

評価★★★★/80点

冒頭、銭湯の入口に貼られた“湯気のごとく店主が蒸発しました。当分の間、お湯は沸きません”という張り紙のユーモアセンスがとにかく秀逸。

これを書いた双葉さんって人のパーソナリティに多大な魅力を感じさせるとともに、このてのジャンル映画お得意の涙の安売りというアウトラインを良い意味で裏切ってくれるのではないかとさえ期待。

で、結局泣かされちゃったけど(笑)、泣かせのポイントが死にゆく者の喪失によるセンチメンタルな悲しみではなく、残される者の絆の回復による救済の喜びにあるところが白眉。

しかも、その絆をつなぐのが先立つお母ちゃんの偉大な愛というのが良いし、作為的にもほどがある疑似家族描写のミルフィーユ状態が“ごっこ”に見えず納得させられてしまうのも、宮沢りえ=双葉さんの太陽のような存在感あってこそだったと思う。

総じて男はボケーッとだらしなくて、女は現実に立ち向かう強さを持っているんだよねw

その中でも、娘役の杉咲花には瞠目!助演女優賞です。

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おおかみこどもの雨と雪

Mainvisual声の出演:宮崎あおい、大沢たかお、黒木華、西井幸人、染谷将太、谷村美月、麻生久美子、菅原文太

監督・脚本:細田守

(2012年・東宝・117分)DVD

内容:都内の大学に通っていたわたしの母親・花は、学内でもぐりの学生だった父と出会い恋に落ちた。父は自分が二ホンオオカミと人間との間にできた末裔“おおかみおとこ”であることを打ち明けたが、母の気持ちは変わらなかった。やがて一緒に暮らし始めた2人の間には、雪の日に生まれたわたし・雪と、雨の日に生まれた弟の雨という2人の“おおかみこども”を授かった。しかし、雨が生まれて間もないある日、父親が突然亡くなった。そして母はわたしたちを一人で育てていくと決め、遠い田舎の農村に移り住んだのだった・・・。

評価★★★★/75点

母が好きになった人はオオカミ男でした、という突拍子もない一言から幕を開ける今回の作品。

ところが、人と獣が混じり合うというのは「トワイライト」のようなアメリカンファンタジーなら何の抵抗もなく見られるのだけど、ことこれが日本となると若干のアレルギーを催してしまうのはなぜだろう・・。

って考えると、手塚治虫がさんざん描いてきた異形と変身の系譜、あるいは今村昌平がイヤというくらい暴き立てた日本に深く根付く土着の自然信仰(オオカミの場合は山神信仰といっていいかもしれない)と近代化の間にはびこる差別、そしてなにより両者の作品に潜む特異なエロスの匂いを想起してしまうからかもしれない。

要は、差別という言葉を用いたように、ジブリ的な人と自然の対立の構図とは異なるもっと生々しい現実=タブーを避けては通れないということだ。

母が好きになった人はオオカミ男でした、という開巻宣言にはそういう命題が否応なく含まれてくるわけで、そこを見せられる怖さみたいなものを違和感というかアレルギーとして感じてしまうのかもしれない。

が、、フタを開けてみたら、それはほぼ杞憂に終わった

避けては通れない要素をさわりだけなぞってはいるものの、純然たる母性愛讃歌に特化することで、そういう描写を周到に回避しているのが本作の特徴といえるだろう。

まず、異形への恐れという点では、雪の変身シーンを見れば分かるように非常に漫画チックで愛嬌のあるものになっていてグロテスクさを排除しているし、花と彼氏が結ばれるくだりでも狼男と交わることに花は何ら逡巡することなく受け入れていることから異形というキーワードはかなり薄められているといってよい。

また、差別という点でも花の親や友達を登場させず、人里離れたド田舎に早々引っ込むことで差別に対し無自覚なマジョリティを排除しているし、それどころか人目を避けて引っ越してきたのにいつの間にか周りの人達にお世話になっていると花が言うように、外部との交流を前提としない村社会に簡単に受け入れられていて、もはやただの「北の国から」状態ww

そしてエロについては、ファミリー向けアニメをして排除されるのは当然なこととはいえ、狼男とのベッドシーンを描くこと自体すでにチャレンジャーだと思うけど、そのシーンで男の姿をオオカミの影として描いたことまでがギリギリのラインだったか。

ということで、何もそこまで難しく考えることはない。

“その程度の”作品なのだ(笑)。

しかし、その程度であることに失望よりも安心感の方が大いに上回ったのが正直なところで。。

自分はこの程度で良かったと思う

ただ、この映画のビジュアルポスターで両手に雪と雨を抱いてすっくと立っている花の力強い母としてのイメージを劇中の花から感じられなかったのは唯一の失望ポイントで、やっぱ結局線の細い10代少女キャラから抜け出せてないじゃんっていう思いは強く持った。

その点では宮崎あおいの声もいただけない。可愛すぎる宮崎あおいとしか聞こえないことがその違和感を増幅させてしまっているからだ。

清純な良き妻をイヤというほど演じてきても、なぜかほとんどの作品で子を育てる強き母親にはなれずじまいの宮崎あおいとダブって見えてしまうのは痛い。

まぁ、演出力は図抜けているし、背景画の細密さとかも良いし、一筋縄ではいかない作家性も出してきて、次回作が待ちきれない監督になったことは確かだ。

Posted at 2013.7.12

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人魚の眠る家

174949_02出演:篠原涼子、西島秀俊、坂口健太郎、川栄李奈、山口紗弥加、田中哲司、田中泯、松坂慶子

監督:堤幸彦

(2018年・松竹・120分)WOWOW

内容:娘・瑞穂の小学校受験が終わったら離婚する。播磨薫子と別居中のIT機器メーカー社長の夫・和昌はそう決めていたが、ある日、瑞穂がプールで溺れて意識不明になってしまう。医師から脳死と告げられ、臓器提供を一旦は受け入れる薫子だったが、直前になって翻意。和昌の会社の研究員・星野が開発した最新技術を取り入れて延命措置を取るのだが・・・。

評価★★★/65点

科学の力を駆使して死を操作してしまう神の領域に踏み込んだある種クレイジーな人間のエゴを描き出している今作。

そのエスカレートしていくベクトルが、逆に脳死や臓器移植という他人事のように考えていた難しくて重いテーマに対するハードルを下げることに繋がっていて、自分の無知に気づかされるとともに、常に自分の価値観と対峙させられて、なかなかに考えさせられる映画だったと思う。

まぁ、母親(篠原涼子)に感情移入するのは難しかったけど、母娘の愛情という普遍的なテーマに落ち着かせるのはグウの音も出ない展開ではあった。ただ、当たり前すぎてちょっと淡泊だった気もするけど。。

あと、もうちょっとホラーテイストを含んでるかと思ったら、エンドクレジットで東野圭吾原作と知ってビックリ!堤幸彦の演出スプレー臭だけは相変わらずだったのに(笑)

しかし、日本は臓器移植が極端に少なかったり、死の境界線があいまいだったり欧米のように合理的にならないのは、日本人の死生観が独特だったりするからなのかな。ホントに難しい問題。。

2021年12月25日 (土)

夢のシネマパラダイス356番シアター:神様、神様は本当にいるんですか?

沈黙ーサイレンスー

Blog_import_5c819b874025a出演:アンドリュー・ガーフィールド、アダム・ドライヴァー、浅野忠信、窪塚洋介、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、リーアム・ニーソン

監督・脚本:マーティン・スコセッシ

(2016年・アメリカ・162分)T・ジョイPRINCE品川

内容:17世紀、江戸時代。日本で布教活動していたイエズス会宣教師フェレイラが、幕府のキリシタン弾圧によって棄教し消息を絶ったとの知らせがローマに届いた。弟子のロドリゴとガルペはそれを信じられず日本へ向かい、マカオで出会った日本人キチジローの手引きで長崎の隠れキリシタンの村に潜入する。そして村人たちの手厚い歓迎を受けて信仰心を通わせていくが、キチジローの裏切りでロドリゴが捕縛されてしまう。長崎奉行・井上筑後守は布教の無意味さを説き、「転び」=棄教を迫るのだった・・。

評価★★★★☆/85点 

信仰心は薄いけど、歴史好きな自分にとって宗教について確信をもって言えることがある。

それは洋の東西を問わず歴史を動かしてきた最大の原動力は宗教だということだ。

「今までの歴史の中で記録されている残酷な罪の数々は全て宗教という名の下に行われている」というガンジーの言葉や、イギリスの歴史家ギボンの「宗教のことを一般人は真実のみなす一方、支配者は便利とみなしている」という言葉の通り、宗教は権力者が国をまとめるための道具に使われてきた。

特に他の神々を認めない一神教が牙をむいた時の禍々しさは、これだけ文明の進んだ今でも変わらない。

人間が生み出した最も純粋偉大な思想が邪悪野蛮な行動を生み出してしまうという点で人間の写し鏡でもある宗教。

だからこそ宗教について知ることは、人を知ること歴史を知ることに繋がっていって面白いのだと思うし、例えばキリスト教とイスラム教はもともとはユダヤ教から派生した姉妹宗教であるとか、インドで生まれた仏教がシルクロードを通って中国、朝鮮半島を経て日本へ渡ってくる間にその土地の風土気候文化や土着の宗教と結びついて変容していくプロセスを知るのも面白かったりする。

その中で、針供養からシロアリ供養あるいはトイレの神様に至るまで自然万物すべてに八百万の神が宿る日本人の宗教観は、世界的にはかなり特殊な部類に入ると思うけど、だからこそ逆に面白いし、日本人として誇りに持ちたいところ。

と、前置きが長くなってしまったけど、肝心の映画について。

信仰心は薄いけど歴史好きな自分としては、250年に渡って数万人が殉死したという教科書でしか見たことがなかった踏み絵などのキリシタン弾圧の実相を映像として見られるというスタンスでしか臨めなかったのが正直なところで・・。

だって、キチジローより早く踏み絵を踏んじゃう自信あるし(笑)、やっぱりそういう一神教信者の内面というのはなかなか分からないところがあって。。映画自体もそこは踏み込んで描いていない面もあったけど、純粋な信仰心を疑ってやまないモキチ(塚本晋也)の顔を見せられるとグウの音も出なくなっちゃうていうのは映画として上手いんだか何なんだかw

でも、スコセッシが足かけ28年かけてようやく作り上げただけあって、ハリウッド映画にありがちなココがヘンだよニッポン描写みたいな違和感はなく。全編台湾ロケだったようだけど、江戸初期長崎の風景もちゃんとしていたし、日本キャスト陣の頑張りもあって160分の長尺を感じさせない作品になっていたと思う。

切っても切り離せない“宗教と暴力”。そしてスコセッシが一貫して描き続けてきた“信仰と暴力”というテーマ。それを音楽のない映像の力だけで結びつけたのはやはりさすがだったし、これからはNHKの大河ドラマもいいけど歴史から抹殺された弱者たちを描いた歴史ドラマをこそ見たいなと思った。

P.S.後日、1971年公開の篠田正浩監督版を鑑賞。

井上筑後守が元キリシタンだったことにビックリw

またエンディングの収め方も、スコセッシ版ではロドリゴが棄教して妻帯するも最後まで禁欲的印象を受けるのに対し、篠田版では妻として差し出された元キリシタンの女の身体を本能のおもむくままに貪るロドリゴを赤裸々に映し出すカットで終わる。

篠田版の方が分かりやすく核心を突いているような気はしたけど、個人的には丁寧でありながらこちらの想像力・読解力の入り込む余白を残しているスコセッシ版の方が好み。

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エクソダス:神と王

Poster2_2出演:クリスチャン・ベイル、ジョエル・エドガートン、ジョン・タトゥーロ、アーロン・ポール、シガニー・ウィーバー、ベン・キングズレー

監督:リドリー・スコット

(2014年・アメリカ・150分)盛岡フォーラム

 

内容:古代エジプト王国。国王セティのもとで息子のラムセスと兄弟同然に育てられたモーゼ。成長した彼は、父王の信頼も厚く、国民からも慕われていた。ところがセティの死後に即位したラムセスは、モーゼが実は奴隷階級のヘブライ人であると知るや、モーゼを国外追放する。なんとか生き延びたモーゼは、過酷な放浪の末に一人の女性と巡り会い結婚し平穏な暮らしを得る。しかし9年後、そんな彼の前に少年の姿をした神の使いが現れる・・・。

評価★★★★/80点

普段、映画の感想を書く時に、やれ人間ドラマが薄っぺらいだとかキャラクターに深みがないだとかエピソードが単調だとかツッコミを入れてしまうのだけど、しかしそうはいっても1番スクリーンで見たいのは何かといえば、やはり映画でしか味わえないスケール感を体感したいというのが先にくる自分がいたりしてw

そして、文字通りそれがいの一番にくるのがリドリー・スコットであり、たいして面白くもない話を壮大な大作に仕上げてしまう、つまり40点のお話を70点以上に底上げしてしまう力技は決して期待を外さず、SFものや歴史ものとリドリー・スコットが組み合わさるとワクワク感が止まらなくなってしまう(笑)。

で、今回の作品はまさに40点を80点にグレードアップしたようなリドリー・スコット十八番の映画だったように思う。

地平線を否応なく意識させるワイドスクリーンに映し出される映像は「アラビアのロレンス」を想起させるほどスペクタクルな情感にあふれていて、作り話のようなウソっぽさを払拭させてしまうリアリティとともに映画的なカタルシスをも両立させてしまう魅力があったし、これぞ映画であると肯定させてしまう力技は今回も健在だった。

ただまぁ神仏習合の日本人には理解しがたい部分というか、白黒はっきりさせる一神教の容赦のないエグさだとか、モーゼとオサマ・ビン・ラディンは何が違うのかと一瞬思ってしまう違和感だとか、60年前の「十戒」では描けなかった今だからこその視点で切り取る方法論があってもよかったような気もする。

復讐の化身にしか見えない神、信じる者しか救わない宗教、狂信者と紙一重の人間、、う~ん、、ロクなことがないよね

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ノア 約束の舟

A1d764a44fc39a29575296986686ff7e出演:ラッセル・クロウ、ジェニファー・コネリー、レイ・ウィンストン、エマ・ワトソン、アンソニー・ホプキンス、ローガン・ラーマン

監督・脚本:ダーレン・アロノフスキー

(2014年・アメリカ・138分)WOWOW

内容:旧約聖書の時代。アダムとイブにはカイン、アベル、セトという3人の息子がいた。が、カインはアベルを殺し、やがてその子孫はこの世に善と悪を広めた。一方、セトの末裔ノアはある日、恐ろしい夢を見た。それは、堕落した人間たちを一掃するため、地上を大洪水が飲み込むというものだった。これを神のお告げと確信したノアは、妻と3人の息子と養女のイラと方舟を作り始め、この世の生き物たちも乗せられるように洪水から逃れる準備をする。しかしそんな中、カインの子孫たちが舟を奪うべく現われるが・・・。

評価★★/40点

宗教映画もここまでこじれるとどうにもならなくなっちゃうな(笑)。

旧約聖書にあるノアの箱舟がもともとどんな話なのかよくは知らないけど、これだけ見ると、マインドコントロールされた親父が自分の家族以外の人間を勝手に悪とみなして見殺しにし、さらに生まれてきてはダメなのだと初孫にまで手をかけようとするも、家族の懸命な説得で我に帰るっていうどーしょーもない話なわけでしょ・・。

まぁ、こういう一神教に特有の信じる者は信じない者を駆逐してかまわないという選民思想は日本人には理解しがたいものがあるので、ちょっとテーマ的にもなじめなかったなぁと。。

唯一、ハリー・ポッター組の中でエマ・ワトソンだけが順調に女優としてキャリアを積んでいってるなと確認できたことだけが救いだった。。

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パッション

Dvd出演:ジム・カヴィーゼル、マヤ・モルゲンステルン、モニカ・ベルッチ、ロザリンダ・チェレンターノ

監督・脚本:メル・ギブソン

(2004年・アメリカ・127分)盛岡フォーラム

内容:ローマ兵の虐待を受けながらゴルゴダの丘へ連行され、人々のために祈りつつ処刑されたイエス・キリストの最期を、見る者に嫌悪感を抱かせるほどの暴力描写と当時と同じアラム語とラテン語のセリフなど徹底したリアリズムで描いた問題作。

評価★★/45点

“自分の中にあるパッションは一度も高ぶることなく灯火さえともることがなかった。胸を張ってカミングアウトしよう。この映画に不感症だと。”

あなたはどんな映画が好きかと訊かれたら自分は間違いなくこう答えるだろう。

ぶっちゃけ人殺しをしようが何をしようがとにかく生への執着、生きることへの必死さ、そういう思いが伝わってくる映画を見るのが最も好きだと。

そんな映画が好きな自分にとって、生への執着を超越し、生きることへのひたむきさなどどこ吹く風のまったく対極にあるこの映画を見ることが自分の中にどのような反応をもたらすのか(正確には無反応)ある程度は予想がついてはいた。

しかしその予想を超越したレベルで自分はこの映画に無関心無感動無感覚だった。

殴る蹴る、さらされた血みどろの身体、飛び散る血しぶき、そんな目を覆うような映像の連続を目の当たりにしても自分の感情は喜怒哀楽どちらにも一向に傾くことはなかった。どこまでも平然かつ冷静沈着な自分がいた。エグイ描写でこんなに冷めてていいのだろうかと思ったくらい・・・。

前に座ってたカップルなんて、先に男の方が途中で席を立って、3,40分戻ってこないことに業を煮やした彼女がしぶしぶ席を立っていったり、かと思えば別な一角からはすすり泣く声が聞こえてきたり、、ふ~ん、やっぱ今の時代、男の方がヤワなんだなとかあそこで泣いてるのはクリスチャンなのかねぇとか劇場の反応の方まで冷ややかに見ている自分がいたりして

まずもって、この映画における徹底したリアリティの追及は、自分にとって何ら評価ポイントにはならなかったということだけは確かなようだ。

この映画のチラシには、「いかにもウソっぽい歴史大作」ではなく徹底したリアリティを追求するために世界最高のスタッフが集結した、というふれこみがあった。しかしこの徹底したリアリティの追求というのは一見映画に限りない実感と重みをもたらすと思われるが、それはまた諸刃の剣であるということも忘れてはならない。リアリティを追求しすぎることが今度はかえって映画のもつエンターテイメント性と観客のもつイマジネーションを削いでいってしまうという弱点をも内包しているといえるからだ。

そのことをふまえた上でいうと、人それぞれ好き嫌いはあると思うが、個人的に優れた歴史映画というのは、リアリティの追及と同時に、いかにうまくウソをつくかというその2点におけるバランスがうまくとれているもの。そういう映画が優れた歴史映画だと思う。

その点についてこの映画を評価するならば、優れた歴史映画という括りには全く入れることはできず、完全な宗教映画になってしまっているといえる。キリスト教信者以外何ら見るべき価値はない映画だと断言しちゃってもいいのではないかなと。

クリスチャンでも何でもない自分にとってはホント聖書を読んだときの堅っ苦しさと形式ばった窮屈さと全く同様のものを感じ取ってしまったわけで。

別に聖書を否定したいわけでは決してなくて、史劇とか人間劇といったエンターテイメントやスペクタクルにどううまく聖書を織り込んでいくか、その使い方とバランスが重要だってこと。

その好例としては例えば「ベン・ハー」が挙げられるかな。

とにかくあれだね、小学生の頃よく学校の帰り道でキリストの受難や天国とか地獄についての紙芝居をやってるのに出くわして見たことがあったんだけど、そのときに得たインパクトとパッションの方がメル・ギブソンの映画を見たときより何倍何十倍も大きかったことだけはここに記しておこう。

追記1.あ、そういえば思い返してみると幼稚園と大学がカトリック系のところだったんだっけ・・

2.自分が考える優れた歴史映画とは具体的には「ベン・ハー」や「グラディエーター」といった類の映画です。

3.ああいう虐待シーンを見せられるにつけ、イラク戦争におけるアメリカ軍の虐待など、人間って2000年経っても何にも変わってないんだなぁと悲しくなってしまった。

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ミッション(1986年・イギリス・126分)WOWOW

 監督:ローランド・ジョフィ

 出演:ロバート・デ・二―ロ、ジェレミー・アイアンズ、レイ・マカナリー、エイダン・クイン、リーアム・ニーソン

 内容:1750年、南米奥地イグアスの滝。イエズス会の神父ガブリエルは、布教活動のために滝の上流に住むインディオの村を訪れ、彼らの信頼を得ていく。一方、奴隷商人のメンドーサは、三角関係のもつれから弟を殺してしまう。罪の意識に苛まれる中で神父に帰依し、ガブリエルと共に伝道の道に入るのだが・・・。

評価★★★☆/70点

中南米のサッカー選手はピッチを出入りする時に十字を切って神のご加護を祈り、試合後のインタビューでは神への感謝の言葉を惜しげもなく口にし信仰心をあらわにする。サッカー好きの自分は以前から世界で最も敬虔なクリスチャンは中南米の人ではないかと思っていた。

しかし、なぜ中南米のほとんどの国がスペイン語を話し、カトリック教国なのか、、その裏にある痛ましい歴史を垣間見るとなんとも複雑な気持ちになってしまう。

世界は全てカトリック国になるべきだという強烈な使命感を持っていたスペインとポルトガルの庇護のもとキリスト教布教を目的に設立されたイエズス会。しかし、そんな崇高な理念とは裏腹に、この時代のカトリック宣教師が“侵略の尖兵”の役割を果たしてきたことは事実であり、平和目的のように聞こえる布教という言葉の裏で実際行われていたことは軍事的征服つまり侵略だった。

国を滅ぼして宗教と言語を押し付けるのが1番手っ取り早い“布教”だからだ。

しかもここが一神教のタチの悪いところだけど、彼らには侵略や虐殺をも神から与えられた使命と思い込んでいた。人間も含めたこの世界は唯一絶対の神が創造したもの、つまりもともと神の所有物なのに、その神の存在すら知らないあるいはニセモノの神を信じる無知な恩知らずがいて、そういう連中にキリスト教を教え広めるためなら何をしても構わない=正義の行いをしているという論理だ。

映画の中で枢機卿が「医者が命を救うために手術するように、この土地にも思いきった荒療治が必要なのだ」と豪語するのだが、勝手に手術される方はたまったものではない。

しかも、手術が成功し、理想郷ともいえるコミュニティが作り上げられたと思いきや、今度はスペインとポルトガルの領土の取り分争いから立ち退きを強要され結果虐殺されてしまう・・。

欺まんに欺まんを重ねた宗教の名を借りた侵略について深く考えさせられたけど、が、しかし中南米が完全にキリスト教文化圏となっている現代において、彼らの“正義”が勝ったのもゆるがない事実。

多神教的なメンタリティの方に共感を覚える自分にとっては、切っても切り離せない歴史と宗教の関係の中で宗教によって救われた人の方がもちろん多いだろうけど、宗教によって滅ぼされた人も数多いるのだということを忘れてはならないと思う。

P.S.とはいえ国境を越えて命の危険をかえりみず未知の世界各地に散らばっていった宣教師のフロンティアスピリットと使命感はスゴイの一言で、日本に来た宣教師も不安でいっぱいだったんだろうなと今回の映画を見て思った。。

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十戒(1956年・アメリカ・220分)NHK-BS

 監督:セシル・B・デミル

 出演:チャールトン・へストン、アン・バクスター、ユル・ブリンナー

 内容:1923年にセシル・B・デミルが監督した「十誡」を、デミル自らが再映画化したスペクタクル史劇。エジプト王ラムセス1世は、新しく生まれるヘブライの男子をすべて殺すという命を発した。母親の手によってナイル川に流されたモーゼという名の赤ん坊は、好運にも王女のもとへ流れ着く。成長したモーゼがエジプト王子として勢力を得てきた頃、宮廷では実の王子ラムセスが権力を振るっており、2人は王位と王女ネフレテリの争奪を始める。。

評価★★★/60点

どう見たってちゃちい紅海真っ二つシーン。

しかしなんだかんだ言ってモーゼといえばこの映画の映像しか頭に浮かばないというのはある意味スゴイ。

夢のシネマパラダイス298番シアター:四月物語

四月物語

51arj15s7el 出演:松たか子、田辺誠一、加藤和彦、藤井かおり、光石研、江口洋介

監督・脚本:岩井俊二

(1998年・ロックウェルアイズ・67分)1998/03/20・シネ・アミューズ

評価★★★★/80点

内容:4月、北海道から東京の大学に進学した卯月。ただ単純に憧れだった山崎先輩と同じ大学に通いたいというだけの理由で上京した卯月は武蔵野で一人暮らしを始めた。同級生のさえ子やアパートの隣人の照子など個性的な友人たちとの交流の中で、卯月は東京での生活にも馴染んでいく。そして愛の奇跡を信じながら山崎先輩がアルバイトをする書店に通い続けるのだった。そんなある日、ついに山崎先輩は卯月のことを思い出す・・・。一人暮らしを始めた女子大生の日常をフィルム・エッセイ風に綴った青春物語。

“これはノスタルジーでもなければメルヘンでもない。”

リアルな物語。

4月のとある心象風景を柔らかく描き出したにしてもこれは実にリアルだ。

高校を卒業して田舎の盛岡から杜の都仙台の大学へ進学した自分にとってはホントにリアルな空気感。

春の陽光に包まれ、暖かくて甘酸っぱくて、桜の花びらの色みたいにポッと恥ずかしくて・・。心の中はまるで虹がかかっているかのように夢であふれている。

しかしこの空気感は、5月になるときれいさっぱり吹き飛んじゃうわけです。

ほのかな桜色はすっかり新緑へと変容をとげ、自分の心の中もすっきりと青空のごとく澄み渡る。

もはやそこに甘酸っぱい空気はない。新天地での一人暮らし、学生生活に完全に慣れてしまった自分がいる。

4月にしかない、新天地での4月でなければ味わえない独特な空気感。それをこの映画は巧く描き出してくれた。自分もこれと同じような空気を吸っていたんだよなぁと。

大学4年間自分の足となってフル稼働した自転車が出てくるのもなんか嬉しかった。

やっぱチャリンコでしょ。バイクじゃダメなんだよね。あの空気感は時速60kmじゃ味わえない。

それくらいほのかで微かな香り。しかし確実に自分の心、胸の中いっぱいに拡がっていく香り。

まぁあんなサービス悪い引っ越し屋さんには出会ったことないけどねw

ところで、大学に合格したのは愛の奇跡と呼びたい、というラストのセリフ。

あまりにも甘ったるくてイタイしカユイんだけど、ああいう理由で大学行ったヤツ何人も知ってます

ま、4月にはあんなセリフも言えちゃうし、そして許せてしまうんだよね。

5月になって言ってたらただのアホだけどさ。

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何者

O1080108014988234098出演:佐藤健、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生、山田孝之

監督・脚本:三浦大輔

(2016年・東宝・98分)WOWOW

内容:大学の演劇サークルで熱心に活動していた拓人も、今は就活に励む日々。拓人のルームメイトで、バンド活動をしている光太郎。その元カノで拓人が想いを寄せる真面目女子の瑞月。彼女の友人で意識高い系女子の理香。理香と同棲中で就活に否定的な隆良。彼らはひょんなことから理香の部屋を就活対策本部と名付けて定期的に集まるようになる。大学院生のサワ先輩に見守られ、就活に悪戦苦闘する5人だったが・・・。

評価★★★/65点

これだけの豪華若手陣を招集してこの出来かぁっていう腰砕け感の方がちょっと上回ったかんじ。

たぶん舞台演劇だったら面白かったんだろなぁと感じたけど、映画としてはテレビドラマの域を出ないレベル。

いやまぁ、自分も就活には良い思い出がなく、自己分析も中途半端なまま行き当たりばったりで臨んだものだから、結局中途半端なまま会社に入社して2年足らずで転職組に入っちゃったくちなので、あの頃の後悔とか苦い思い出がよみがえってきて何とも言えない気分になったけど・・。

さらに、自分が就活してた2000年ってネット就活の黎明期で、スマホもSNSももちろんなく、情報&他者評価依存に陥るなんてこともなかったので、そういう観点でみると今の若者はホントに大変なんだなと同情したくなった。

しかもツイッターすらやってないので、これ見てますますツイッターやる気なくしたw

で、この映画で1番共感できて刺さったのは、コータロー(菅田将暉)がミズキ(有村架純)と「実はオレら付き合うことになったから」と拓人(佐藤健)に告げるシーンの拓人の「えっ・・」て言うシーン。これと全く同じシーンが自分の記憶のカギをかけた箱の中にひっそりしまい込まれていることを思い出して、泣きそうになった・・。ガクッ

2018年6月18日 (月)

夢のシネマパラダイス127番シアター:自分の子供たちを戦争に行かせたくありません。

硫黄島からの手紙

324563view001出演:渡辺謙、二宮和也、伊原剛志、加瀬亮、中村獅童、裕木奈江

監督:クリント・イーストウッド

(2006年・アメリカ・141分)2006/12/25・盛岡フォーラム

評価★★★★★/95点

内容:戦況が悪化の一途をたどる1944年6月。アメリカ留学の経験をもち、米軍との戦いの厳しさを誰よりも覚悟していた陸軍中将栗林が硫黄島に降り立った。着任早々、栗林は本土防衛の最期の砦である硫黄島を死守すべく、島中にトンネルを張り巡らせ、地下要塞を築き上げる。そんな栗林の登場に硫黄島での日々に絶望していた西郷ら兵士たちは希望を見出す。しかし、古参の将校たちの間では反発が高まり、、、。米軍は当初圧倒的な戦力の違いから5日で陥落できると踏んでいたが、予想以上の日本軍の抵抗により36日間に及んだ激戦となった硫黄島の戦いをイーストウッド監督、スピルバーグ製作により日米双方の視点から見つめた硫黄島2部作の第2作目。

“2006年から61年前の硫黄島にタイムスリップした現代人・二宮和也が間近で体験した硫黄島の激戦!世界ウルルン滞在記。”

といっても過言ではないつくりにはなっていると思う。

だって、あの言葉遣いは実際どうなの

なんかふと2005年の年末にテレ朝でやった山田太一ドラマスペシャル「終りに見た街」を思い出してしまった。

システムエンジニアをしている中井貴一扮する主人公とその家族が、朝家でフツーに起きたら昭和19年の東京になっちゃってたというとんでもない話。

主人公の友人(柳沢慎吾)も息子とともに昭和19年の東京にタイムスリップしてしまうのだけど、その息子(窪塚俊介)がなんか今回の映画の西郷(二宮和也)と似てたような気がしたもんで。。

冷めた視線とかやる気のない感じとか。だってあんなヤル気のない「天皇陛下万歳!」を映画で見たのは初めて(笑)。

それはともかくあのTVドラマはあの時代にタイムスリップしたことによるジェネレーションギャップをことさら強調して描くことで戦争の恐ろしさを過去の絵空事としてではなく、より現実感をもって伝えられていたように思うが、一方今回の「硫黄島からの手紙」は内地・東京のお話ではない。最前線の戦場に置かれた兵士たちの話なのだ。

ここにあのTVドラマとの大きな違いが生じる。

そう、、少なくとも自分は最前線の戦場に置かれた兵士たちどころか、あの戦争でお国のために戦ったいわゆる旧帝国軍人の話や体験談などことごとく聞いたことがないのである。

たぶん自分みたいに戦後何十年も経って生まれてきた人たちはみんなそうだと思う。

空襲や原爆、特攻、沖縄のひめゆり部隊などは耳にタコができるくらい聞かされてきたし、脳裏に焼きつくくらい映像で見せられてきたが、なぜか外地で戦っていた兵隊さんたちの話は、まるでタブーであるかのごとくほとんど聞かされたことがないし、そういう映画すらほとんど見たことがない。

なのに判で押したようなステレオタイプとして旧帝国軍人は人道にもとる極悪非道な絶対悪として言われ、教えられ、描かれてきた感は拭えない。

個人的には、人殺しを生業とする軍隊に良い軍隊などあるわけがないと思っているので、それが善か悪かと問われれば問答無用で悪と答えるだろう。

しかし、その悪の中に自ら進んで飛び込んでいった者であれ、強制的に放り込まれた者であれ、彼ら軍人一人一人を単純にいっしょくたに悪一色で片付けてしまう思考の処理の仕方は絶対におかしいと思うのだ。それは日本軍であれ米軍であれ。

問題は、善良な人間がその悪の中に入っていかざるをえなかった時に、その人間が内に持っていた理想や信じていた大義が、戦争の圧倒的に無慈悲な現実の前で打ちのめされ殺がれていく中で、次第に彼の中にある善なるもの悪なるもののせめぎ合いさえもなくなっていく、すなわち人間性が消失していくという愚かで醜くて空しい狂気の過程こそが重要であって、誰が善で誰が悪か、どっちが善でどっちが悪かという結果ありきの線引きは意味を成さないと思うのだ。

もちろんそのせめぎ合いの中で人間性を完全に消失してしまい、狂気の戦闘マシーンへとなりはてる者もいれば、かろうじて人間性を失わない者もいるだろう。

そしてその悲劇の過程を通した上で戦争という悪、軍隊という悪、死ぬことを強要する狂気という絶対悪へと駆り出していった国家の罪というものをあぶり出していくというのが至極まっとうな戦争映画だと自分は思う。

例えば今回の映画の製作にも名を連ねるスピルバーグが監督した「プライベート・ライアン」では、トム・ハンクス演じたミラー大尉がアメリカ本国にいた時に何の職業に就いていたかを部下たちが予想して賭けをするというシークエンスがあったが、国語の教師をしていたことが明らかになることで、生きることを子供たちに教えるはずの教師が暴力と殺戮の世界である戦争に駆り出されるという異常性と悲劇を如実に暴き出していたと思う。

しかし、今までの日本映画なりTVドラマなりで描かれてきた軍人像というのはそういう過程を骨抜きにして、最初っからこの人は善良で正直者で可哀想な人ですよ、こっちの人は悪の塊で善良な人や敵国の一般住民をとにかく虐げ、殺しまくる人間性の欠片もない人ですよというふうに完全に色分けして描かれてきた面が相当あると思う。

前々から戦場を描いた日本の戦争映画って、なんで狂気を描けなくてこんなうわべだけの薄っぺらい“青春映画”(戦争映画ではなく)になっちゃうんだろう、と思うことがしばしばだったのだけど、そういう思考回路で作っちゃうからそうなっちゃうわけで、この思考がいかに幼稚で薄っぺらなものかということは今回の映画を見るまでもなく分かろうものだ。

、、がしかし、ここが1番大きな問題だと思うのだが、今まで日本人はそれを建て前上良しとしてきた面があった(と自分は感じる)のではないだろうか。

心のどこかであの戦争の被害者を演じることで、加害者としての側面や戦争の闇、狂気の部分というものから逃避し思考をストップさせてしまうある種の逃避装置として働いてきたのではないだろうか、ステレオタイプな描き分けというあまりにも単純で通り一辺倒の手法を通してあの戦争の総括から逃げ続けてきたのではないだろうか、、そして日本の戦争映画というのはいつしか被害や加害、善か悪かを超えた理不尽な悲劇としてではなく、あくまで被害者として狂気ではなくいかに可哀想に描くか、ということになっていき、戦場を描いた映画というのが数えるほどもないという体たらくに陥ってしまったし、日本人もそれを良しとした・・・。

そういうことが今回のクリント・イーストウッド監督作のアメリカ映画を通して一気に骨抜きにされた気がしてならない。

日本人の多くが教えられてきたであろうあの戦争は間違った悪い侵略戦争だったという認識を暗黙の了解のもと旧日本軍=旧帝国軍人がやったことは全て悪という図式(逃避装置)でいっしょくたにして極力触れないようにしてきた一方、それじゃああの戦争を外地でお国のために懸命に戦った500万人(うち200万人余が戦死)もの日本人を断罪できるのか、といったらほとんどの日本人は断罪ではなく、哀悼の方を選ぶだろう(当たり前だ)。

しかも、うち300万人余は外地から無事復員してきて、生きて無事に帰ってこれて本当に良かったねぇと家族に迎えられ(かくいう自分の祖父もノモンハン事件からシベリア抑留などの死線を経て無事生きて帰ってきた)、その後良い父親なり良い息子、そして普通の良き日本人として戦後日本社会の礎として懸命に生きてきたはずなのだ。

そういう建て前と本音のひずみの中に埋没することを避け、上っ面の中を浮遊してきた日本人、、“天皇”や“靖国”の問題、突きつめていけば国家の戦争責任としての罪の問題にケリをつけられない、あるいはケリをつけようとしないできた日本人には「硫黄島からの手紙」のような映画は作れないし作りようがないのかもしれない。これから先も・・・。

そういうことを考えても、60年前にアメリカに戦争で負け、60年後映画でもアメリカに負けた、と言わざるをえないほどの衝撃を少なくとも自分は受けた。

日本人の自分でさえ、玉砕や潔い自決が美徳とされたあの時代の兵隊さんたちの内面を知ることや理解することが到底難しい中で、冷めた視線をもち、絶対に生きて帰るんだという意志をもつ現代っ子的なキャラである西郷(二宮和也)を中間点に置いて第三者的立場で語らせたのは上手いし、各々の人物の深みのある人間像の描き方には唸るしかない。

誇りある帝国軍人としての教育と鬼畜米英の精神的な貧弱さを徹底的に叩き込まれてきたであろうエリート憲兵隊員清水(加瀬亮)が現実と真実を目前で見せられることによって、理想と信念が揺らいでいき生への執着を見せ始める様、そして極めつけは今まで典型的ステレオタイプの憎まれ役で描かれてきたであろう厳格な帝国軍人伊藤中尉(中村獅童)のあまりにも皮肉の効いた顛末など、どれをとっても本当に考えさせられてしまう描写の連続だったと思う。

「天皇陛下万歳!」と叫ぶ姿、泣き叫びながら手榴弾を腹に抱いて自決する酷い姿、ものすごい砲弾の雨あられの中で排泄物の入ったバケツを四苦八苦しながら拾い上げる姿、、本音と建て前のひずみの中に埋没していき、もがき苦しむ日本兵の姿に、人間の、そして日本人の深い所をえぐられたような、そんな重い衝撃を受けた。

先日開業したばかりの最新設備が調っているシネコンで見たのだが、閉所恐怖症の自分は地下洞窟の中に響き渡る砲弾の轟音を聞いて足がガクガク震えそうになったくらいだ・・・。

そして、序盤で米軍が硫黄島を爆撃してくるシーンで空から爆弾がズドーンという腹に響くもの凄い爆音とともに砂塵を巻き上げて降り注いでくるところなんかは、ああ、これが爆弾が空から落ちてくるってことなんだ、と生まれて初めて実感したというか体感した気がする。

もちろん、この映画が硫黄島の戦いの悲劇を全て描き出していたとは思わない。

8月にNHKスペシャルで「硫黄島玉砕戦/生還者61年目の証言」を見たが、それによると米軍が硫黄島を制圧した後も何千という日本兵が地下にこもっていたそうだ。

そして“生きて虜囚の辱めを受けず”と徹底的に教育され投降が許されなかった彼らを新たに襲ったのが飢餓だったというのも悲しい・・・。

炭を食べたとか、遺族の方には決して話せないような仲間内での陰惨な悲劇など、それを証言者の一人は「畜生の世界」と言っていたのがあまりにも印象的だった。

いまだ1万数千もの日本兵の遺骨が未収集のまま眠っている硫黄島。

それを知っている日本人ははたしてどのくらいいるのだろうか。

自分も初めて知ったくちなのだが、渡辺謙がインタビューで言っていたように日本人は過去の戦争についてあまりにも知らなさすぎる。

それを戦後60年経った今考えさせてくれた今回の映画には感謝してもしきれないくらいだ。

中国映画の「鬼が来た!」(ちなみに本国中国では上映禁止処分)、そして今回のアメリカ映画「硫黄島からの手紙」で中国人、アメリカ人が提示した一言では括りきれない日本人像に自分は衝撃を受けた。

日本人自身の手で撮った真の戦争映画が世に出る日がいつかやって来るのだろうか・・・。

Posted at 2006/12/29

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野火

689ecc7e483d1c57f823484a793b2c00出演:塚本晋也、森優作、神高貴宏、入江庸仁、山本浩司、中村優子、中村達也、リリー・フランキー

監督・脚本:塚本晋也

(2014年・日本・87分)盛岡フォーラム

内容:日本軍の敗北が濃厚となった太平洋戦争末期のフィリピン・レイテ島。結核を患った田村一等兵は野戦病院行きを命じられ、部隊から追い出される。しかし野戦病院でも食糧不足を理由に追い返され、行き場を失った彼は、酷暑のジャングルを彷徨いつづける・・・。

評価★★★★/80点

今までの戦争映画は、反戦悲劇のイデオロギーを基調としながらも、いわゆる英雄譚めいたミッションもの(作戦遂行もの)のフォーマットをとって、そこにキャラクターやストーリーをかぶせてくることが多かったと思う。

しかし、指揮系統が失われ、飢えて痩せこけた兵士達の撤退作戦と呼べるものですらないジャングルの彷徨にはイデオロギーなど存在するわけもなく、ただただ餓鬼・畜生と化した人間の姿だけが浮き彫りになる。

戦争には物語などない。ある意味それが戦争の真実なのだろう。

また、そのリアリズムを強化するのが目を覆いたくなるほどの人体破壊描写なんだけど、肉体が金属化していく男の不条理をグロテスクに紡いだ「鉄男」から一貫して肉体の内部・深部にフォーカスを絞ってきた監督だけに、今回の映画は監督ならではの破壊衝動と肉体論を結実させたというなるべくしてなった流れだったのだと思う。

でも、人間の身体がいともたやすくグチャグチャになり、そこにウジ虫が湧くような光景こそが戦争の真実なのだろう。

さらにその中で世界から色が消えていくのが戦争だと思うけど、吸い込まれそうな空の青、生命力あふれる密林の緑、そして誘惑してくるような花の妖しげな赤と、大自然のどぎついまでの美しさが際立つ色もまた印象的だった。

しかし、自分は子供の頃、「はだしのゲン」や「黒い雨」「ビルマの竪琴」などを親に見せられて戦争に対するトラウマを植え付けられたくちなんだけどw、この映画はそのレベルを超えていて子供に見せるのは躊躇しちゃいそう

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野火(1959年・大映・105分)NHK-BS

 監督:市川崑

 出演:船越英二、ミッキー・カーティス、滝沢修、浜口喜博、石黒達也、稲葉義男

 内容:太平洋戦争末期、フィリピン戦線レイテ島で日本軍は山中に追い込まれ飢餓状況にあった。病気で原隊を追い出され、野戦病院にも入れてもらえない田村一等兵は、敗走する戦友2人と合流するが、飢餓に苦しむ彼らは“猿”と称して兵士の死肉を食べていた。田村は彼らと決別し、さらなる彷徨を続けるが・・・。

評価★★★/65点

2015年の塚本晋也監督版を先に見てからの鑑賞。大岡昇平の原作を読んだことがないので分からないけど、塚本版がかなり忠実にこの市川版を踏襲していることが分かってちょっと驚いた。

ただ、市川版の方がモノローグやセリフで状況を論理的に説明していて分かりやすいんだけど、視線を一向に合わせない上官など物語性を排除し、人間が人間でなくなる非論理の世界をまるで白昼夢のように肌感覚に迫るまで描き切った塚本版の方が上か。

あとはやっぱり市川版のモノクロに対し、塚本版のカラーが活写するどぎつい天然色の威力は凄まじく、映画の世界観をより増幅させていたと思う。

と、なぜか塚本版にばかり目がいってしまったけど、感傷に訴えてくる市川版の手法も決して悪くはない。

今度は原作の方をしっかり読んでみたいと思う。

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ハクソー・リッジ

171672_02出演:アンドリュー・ガーフィールド、サム・ワーシントン、ルーク・ブレイシー、ヒューゴ・ウィーヴィング、ヴィンス・ヴォーン

監督:メル・ギブソン

(2016年・豪/米・139分)WOWOW

内容:アメリカの田舎町で育ったデズモンド・ドスは、「汝、殺すことなかれ」の教えを胸に刻んで育ってきたが、第二次世界大戦が激化する中、衛生兵であれば自分も国に尽くせると陸軍に志願する。しかし訓練で武器に触れることを拒否。上官や他の兵士たちから嫌がらせを受け、ついには命令拒否で軍法会議にかけられるも自分の主張を貫き通し、晴れて衛生兵として従軍を認められる。そして1945年5月、デズモンドは沖縄の激戦地で150mの断崖がそびえ立つハクソー・リッジ(前田高地)に到着するが・・・。

評価★★★☆/70点 

実話というのは恐れ入った。

のどかで平和な平時に一般人がライフルを所持していたら逮捕され裁判にかけられるけど(当のアメリカは別としてもw)、戦時に一般人が兵士と名を変えた時に所持を拒否すると裁判にかけられるという、戦争の持つ矛盾。志願兵でありながら武器を持たないで戦争に向かう主人公のバックグラウンド。そして彼の宗教に裏打ちされた倫理観、正義感が軍隊においてはいかにおかしなことなのか。

これらを理解させるのに1時間もの長尺を使って描いたのは、メル・ギブソンの覚悟を感じさせて良い。

そして、それでもっての後半、肉片飛び散る沖縄の戦場の地獄絵図😵

四の五の言わせぬあまりの凄惨さは、前半の理屈などひねりつぶしてしまうほど強烈だけど、そこで信念を貫き通す主人公の神ってる姿にただただ圧倒されてしまった。

日本軍については、バンザイ突撃なども描かれていて特に違和感はなかったけど、沖縄戦の特徴である軍民混在の実像には程遠いように感じた。

ハクソーリッジのあった浦添では住民の2人に1人が亡くなり、4軒に1軒が一家全滅という悲劇を被ったという。

戦争はダメだねホントに。

日本映画でちゃんとした沖縄戦を描いた映画作ってくれないかなぁ。。

P.S.日本は赤紙1枚で戦争へというイメージが強いせいか嫌々行きました感がつきまとう。しかしアメリカは第二次世界大戦の映画を見ると先を争って志願したというイメージがあって、今作なんて入隊テストに落ちて地元の知り合いが2人自殺したなんて話まで出てきてビックリ。

そんな中、武器は絶対持ちたくないし、人を殺したくないけどお国のために戦争に行きたいって、お上の立場からしたら確かにめんどくさいのかもw

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太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-

Img_0出演:竹野内豊、ショーン・マッゴーワン、井上真央、山田孝之、中嶋朋子、岡田義徳、トリート・ウィリアムズ、ダニエル・ボールドウィン、阿部サダヲ、唐沢寿明

監督:平山秀幸

(2011年・東宝・128分)WOWOW

 

内容:1944年、日本軍の重要拠点であるサイパン島。劣勢に立たされていた守備隊は、圧倒的な兵力差を誇るアメリカ軍に上陸を許し、陥落寸前まで追い込まれていた。そしてついに軍幹部は玉砕命令を発令。そんな中、陸軍歩兵第18連隊の大場栄大尉は生きることに執着し、無駄死にすることなくアメリカ軍への抵抗を続けることを決意する。そんな彼の人望を慕って、上官を失った兵士や民間人たちが集まってきて、やがて彼らはサイパン島の最高峰タッポーチョ山に潜み、ゲリラ戦を展開していく・・・。

評価★★★/60点

サイパン島の激戦終結後も多数の民間人と共にジャングルにこもり1年半もの間アメリカ軍に抵抗しつづけた大場大尉の実話を日本軍、アメリカ軍双方に加えて民間人も含めた視点から描いた丁寧な筆致は好感が持てるのだけど、作品としてはあまりパッとしない印象。

要は、アメリカ軍視点はいらなかったと思う。

この映画の軸となるべきは、一人でも多くの敵を殺し、生きて虜囚の辱めを受けず徹底抗戦すべし!という、軍人勅諭や戦陣訓によって叩き込まれた軍人としての使命感と、一人でも多くの日本人を生かし日本の地を踏ませたいという人としての思いの狭間の葛藤を縦軸に、軍人と民間人がジャングル奥地で共生するという異常な状況下での苛酷さを横軸にして描かれるべきものだからだ。

しかし、それが米軍視点の勝手な賛美が介入してくることにより、何かうわべだけの美化描写になってしまった感が否めない。

例えば横軸として挙げた軍民一体化は、沖縄戦最大の悲劇といってもよく、その先駆として行われたサイパン戦でも追いつめられた民間人はバンザイクリフから次々に飛び降りていったわけで、“奇跡”などという綺麗事では片づけられないそういう戦争のおぞましさや悲惨さを描かなければサイパン戦を題材にした意味がなかろう。そこがこの映画は甘いし浅いと思う。

せっかくの井上真央や中嶋朋子の良い演技があるのに、その存在価値が軽くなっちゃってて、なんかもったいなぁと。

まぁ、唐沢寿明演じる堀内一等兵の人物造形なんかは完全に浮いてたけど、岡本喜八の独立愚連隊に出てきそうなキャラで個人的には好きだったw

って本当にいたんだ!こんな入れ墨兵士

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聯合艦隊司令長官山本五十六-太平洋戦争70年目の真実-(2011年・東映・141分)WOWOW

 監督:成島出

 出演:役所広司、玉木宏、柄本明、柳葉敏郎、阿部寛、吉田栄作、椎名桔平、坂東三津五郎、原田美枝子、田中麗奈、伊武雅刀、宮本信子、香川照之

 内容:日本が恐慌にあえいでいた1939年。国内では好戦ムードが盛り上がり、陸軍が日独伊三国同盟の締結を強硬に主張していた。しかし、海軍次官の山本五十六は慎重論を唱える。ドイツと結べばアメリカとの戦争は必然であり、両国の国力の差を見知っていた山本にとっては絶対に避けなければならない戦いだった。そんな中、山本は聯合艦隊司令長官に就任するが、その翌年に三国同盟が締結され、対米戦が日に日に現実味を帯びてくる・・・。

評価★★★/65点

太平洋戦争を題材にしたこのての映画を見ると、国力が日本の10倍のアメリカに勝てないことは明白でありながら、あの悲惨な戦争をおっ始めた挙句、日本を焼け野原にするまで延々と長引かせた責任者は誰なのかという視点を拭い去れないのだけど、この映画を見るかぎりその責任は内地で談合を繰り返す軍人官僚や日独伊三国軍事同盟を強行した陸軍上層部にあったということらしい。

また、真珠湾攻撃やミッドウェー海戦での不手際も南雲中将など取り巻きにその責任はあり、山本五十六はつとめて冷静かつ良心的な名将として描かれている。

要は、彼の言うとおりにしていればあんな事にはならなかったのに、という描き方だ。

そこに若干の違和感を感じずにはいられないのだけど、役所広司の堂々とした存在感と物腰柔らかな包容力にほだされて、結局受け入れてしまう(笑)。

いや、それじゃダメなんだけど、こういうエリート軍人を伝記ものに括るような映画はどうしても美化のフィルターがかかってしまうのだということを承知して見ないとダメなんだろうね。

ただこの映画、評価できるところも少なからずある。

それは戦争を遂行したのは軍部であることは明白なのだけど、軍部だけが突出して暴走していたのではなく、マスコミ・メディアが戦争をあおり、国民自身が好戦的ムードに包まれそれを後押ししていたという点を描いたところだ。

もちろんその背景には不景気や政治不信といった社会の閉塞感、また軍国教育や大本営発表といった情報操作があったのだろうけど、その図式はなにも当時にかぎったことではなく今の世の中にも通じるものだろう。

だからこそ「自分の目と耳と心を開いて広く世界を見なさい」という山本五十六の言葉をしっかり噛みしめなければならないのだと思う。あの戦争を絶対繰り返さないためにも・・・。

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陸軍(1944年・松竹・87分)WOWOW

 監督:木下恵介

 出演:田中絹代、笠智衆、上原謙、東野英治郎、杉村春子

 内容:九州小倉で質屋を営む高木家は、奇兵隊の山県有朋の知己を得たことをきっかけに、お国への滅私奉公を家訓としてきた。明治37年、智彦は使用人のわかと結婚。やがて日露戦争が勃発するが、智彦は病弱のため前線で働けず、銃後でしか国に尽くせなかった。それから時を経た昭和。智彦は果たせなかった思いを太平洋戦争に出征する息子に託す。妻のわかも天子様のために役立てるのだと安堵する中、出征の朝を迎えるが・・・。

評価★★★★/75点

原恵一監督の「はじまりのみち」において丸ごと引用した「陸軍」のラストシーンに痛く心を打たれ、見たいと思っていたらTV放送していたので鑑賞することに。

まず、冒頭の松竹のロゴの登場シーンからえらく古い映画だなと思ってたら昭和19年だって

しかし、軍が主導した戦意高揚映画が「陸軍」の他にも何本も作られていたなんて、不幸で悲しい時代だったんだなと改めて思う。

肝心の映画の方は国策映画とはいえ、当時の風俗や時代の風潮が色濃く感じられて有意義だったし、母親が戦地に向かっていく息子を見送るラスト10分はやはり感動的で胸に迫ってくるものがあった。

それまでは「天子様からの預かりもの」である息子が立派な兵隊になれるように小さい頃から厳しく叱咤しながら育ててきた軍国の母のお手本のような姿が印象的だったけど、いざ息子を送り出す段になると、気丈な建前から一転哀しみの本音が顔を出してくるのは母親として自然なことだろうし、当然なことを当然なこととして描いた勇気に拍手したい。

他にも子供が橋から川に飛び込む度胸試しみたいなところを通りかかった母親が、男なんだから潔く飛び込め!と背中を押したり、今の時代では考えられないシーンもあったりして面白かった。

あと、印象的だったのが水戸光圀編纂の大日本史が一家の家宝として象徴的に映し出されていたことだ。

これは光圀が創始した水戸学というものが、絶対の忠誠の対象は将軍や殿様などではなく天皇なのだとした朱子学的思想の一環として編まれたものであるため、天子様=天皇を尊ぶ教典として重宝されたことがうかがえるものなのだろうと思われる。

いずれにしてもこの映画は時代を越えて残されるべき作品だし、今だからこそ見なければならない映画だと思う。

2017年12月13日 (水)

夢のシネマパラダイス506番シアター:愛憎渦巻く家族愛

永い言い訳

168434_02出演:本木雅弘、竹原ピストル、藤田健心、白鳥玉季、堀内敬子、池松壮亮、黒木華、深津絵里

監督・脚本:西川美和

(2016年・日本・124分)WOWOW

内容:人気作家の津村啓(ペンネーム)として活躍する衣笠幸夫。不倫相手と密会していたある日、旅行中の妻・夏子がバス事故で亡くなったとの知らせを受ける。すでに夫婦関係が冷え切っていた中で涙を流すことさえできない幸夫は、遺族への説明会で同じ事故で亡くなった夏子の親友ゆきの死に取り乱す夫・大宮陽一と出会う。トラック運転手の陽一は、まだ手のかかる2人の子どもを抱え、途方に暮れていた。子供のいない幸夫は、ふとした思いつきから子どもたちの世話を買って出るが・・・。

評価★★★★/80点

とりあえず黒木華を濡れ場要員として消費してしまう女優の使い捨て感がハンパない。

しかし、そんな女性不在の映画にもかかわらず、早々に退出したはずの深津絵里の存在感が全編を通して消えないのもある意味凄くて、生者が死者に縛られる構図に最後まで説得力をもたせていたと思う。

ましてや何も語らないはずの死者に「もう愛していない、ひとかけらも」なんてとどめの一撃まで残させるこの監督の情け容赦のなさには、ダメ男の幸夫にさすがに同情w

しかし、身近な人を喪って初めて知る大切さや愛おしさ、そして何より人は一人で生きていくことはできないんだという考えてみれば当たり前のことに気付かされる過程を、麻痺しない程度の毒針でもってチクチクと刺してくる西川美和のいじわるな筆致には相変わらず引き込まれてしまった。

自分の置かれた現実に四面楚歌状態になりながらも、斜に構えたインテリ感が消えない幸夫のカッコ悪い姿は、パーソナリティーが真逆な大宮(竹原ピストル)と比べると感情移入しづらい面はあったけど、だからこそ先述したテーマ性がよく伝わってくる仕掛けになっていたように思う。

その点で竹原ピストルと子役2人の果たした役割は大きかったな。

いやぁ、全てを見透かす西川美和ってやっぱり恐いわーw

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父、帰る

00000579138l 出演:イワン・ドブロヌラヴォフ、ウラジミール・ガーリン、コンスタンチン・ラヴロネンコ

監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ

(2003年・ロシア・111分)仙台チネラヴィータ

評価★★★/65点

 

内容:ロシアの片田舎。2人の兄弟アンドレイとイワン母と祖母とつつましくも幸せに暮らしていた。そんな夏のある日、12年間音信不通で写真でしか見たことがなかった父親が突然家に帰ってきた。寡黙な父はこれまでのことを何も語ろうとせず、母も何も説明しようとはしない。兄弟の戸惑いをよそに、翌朝父は彼らを小旅行に連れ出すが・・・。

“役者陣の存在感、詩的な映像美、静謐な音楽とひとつひとつの素材は満点に近いゆえに、なおさら映画の中になかなか入っていけないもどかしさが大きくのしかかってくる。”

旧ソ連時代を含めてロシア映画はほとんど見たことがないのだけど、この映画における役者陣の存在感と質の高さには舌を巻くばかりだった。

兄弟の強い視線が道先案内人としてこの映画を照らし出す光となっているのは言うに及ばず、特筆すべきは父親役コンスタンチン・ラヴロネンコの圧倒的存在感。

ただそこに立っているだけでその場の空気が彼のオーラによって充満し密度が増すのだから。

12年間どこで何をしていたのかが全くの謎に包まれた父親、しかし、その12年という重みと年輪が静かにかつ確実に刻まれていたように見えてしかたなかった。

そして登場時間は少なかったものの兄弟の母親。これがまた素晴らしいのなんの。

夫を12年間待ち続けてきたであろう妻、しかし帰ってきた夫に対してどこかそっけない態度で逆に不安な夜を過ごしてしまう、そんな複雑な心の内を垣間見せる彼女のストーリーをもっと見たかったり。「ジャック・サマースビー」みたいになっちゃうのかな。

また、映像もCM畑出身の監督らしく凝ってはいるが、肌にまとわりついてくることがない美しさで迫ってきて、個人的には好みの画。

と、ここまでべた褒めしてきたように、各々の要素は素晴らしいのだが、映画の中に入っていくことができないというこの映画に対する唯一の不満がはっきりいって全てをチャラにしてしまう・・・。

映画の世界へ入るためのドアが半開きになっていて、爽やかな風が流れてくるのだが、ドアノブに手をかけようとしてもどうしても手が届かず、追いかけても追いかけてもなかなか追いつくことができない。まるで永遠に追いつけないのではないかと思うくらい。

だから自分は途中で追いかけるのをやめた。ひとり車を下ろされ降りしきる雨の中でじっとうずくまるイワン少年のように、ただ目で追うことしかできなかった。

と、ずっと目で追ってたらラストで半開きのドアからモノクロ写真がパラパラと落ちてくる始末。

それを拾って見て、そこで初めてこの映画に触れられた気がしたのだが、あくまでも気がしたであって、その意味するところなど分かろうはずもない。

といってもう一度見る気にもなれず、僕、帰る。。ガクッ

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Mr.&Mrs.スミス

Imgf633ca7bzik6zj 出演:ブラッド・ピット、アンジェリーナ・ジョリー、ヴィンス・ヴォーン

監督:ダグ・リーマン

(2005年・アメリカ・118分)MOVIX仙台

内容:結婚5年目のスミス夫妻。表向きはアツアツの夫婦だったが、裏の顔は2人とも別組織に属する一流の殺し屋だった。互いにその正体を隠し結婚生活を送っていた2人だったが、ある時ついに仕事の現場でバッタリ出くわしてしまい・・・。

評価★★★/60点

う~ん、宮川大助・花子のドツキ漫才の方が面白い。そんなレベル。。

最強サド・マゾ夫婦の幸せ家族計画、もとい異常性欲の発露を徹底的に暴いた真実の映画、とも言えなくもない・・。良い子のみなさんは決してマネしないように

でもジョン(ブラピ)とジェーン(アンジー)の大格闘シーンでやけになったブラピのマジ蹴り連発にはさすがに吹いちゃったけどね(笑)

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幻の光(1995年・日本・110分)NHK-BS

 監督:是枝裕和

 出演:江角マキコ、内藤剛志、浅野忠信、柄本明、柏山剛毅

 内容:12歳の時、祖母が失踪してしまったゆみ子は、その事件以来、祖母を引き留められなかったことを深く悔やんでいる。やがて25歳で郁夫と結婚し、息子も生まれ幸せな日々を送っていたが、ある日、郁夫は自転車の鍵だけを残して列車に飛び込み命を絶ってしまった。5年後、ゆみ子は民雄と再婚して奥能登の小さな村に移り住む・・・。生と死、喪失と再生をテーマに、宮本輝の同名小説を映画化したヒューマン・ドラマ。

評価★★★☆/70点

“宮崎駿は、すべては闇から生まれ闇に帰るとナウシカに言わせしめたが、もしかしたら幻の光とは生命も清浄も汚濁も苦悩も善も悪もすべてが溶け合った原初の源から生まれた最初の光だったのかもしれない。”

永遠に打ち寄せる波のごとく繰り返される彼女の喪失への問いに対する答えを彼女は永遠に知ることはできないだろう。

しかし永遠に鳴り止まない波の音色がいつしか日常に溶け合っていくように、彼女の決して癒されない悲しみは、能登の厳しい自然にゆっくりと吸い込まれ取り込まれ溶け合っていく。

宮崎駿が言うように、命は闇の中のまたたく光なのだとしたら、漆黒の闇をまとっていた彼女の中にうっすらと光が差し込み、闇を背負ってなおそれがまぶしく光り輝き、いつしか色鮮やかな衣を身にまとうことができる日がやって来るような気がする。

そうほのかに感じさせる静かだが確かなラストだったように思う。

P.S.黒い服は死者に祈る時にだけ着るの~~♪っていう宇多田ヒカルの歌が頭の中で鳴り響いてしまった。。

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楢山節考

Balladofnarayama2783us 出演:坂本スミ子、緒形拳、あき竹城、倍賞美津子、左とん平、清川虹子

監督・脚本:今村昌平

(1983年・東映・131分)WOWOW

評価★★★★/75点

 

内容:ある山奥の寒村では、食料不足のために70歳を過ぎた老人は子供に背負われて近くの楢山の頂に捨てられるという掟があった。“楢山さま”と呼ばれる神様を信じている老女おりんは、捨てられに行くことを神のもとに召されることだと信じ、その日を待っていた・・・。カンヌ国際映画祭作品賞。

“蛾と蛇と蛙と蝙蝠と、清川虹子。。人間が蟲になる夜、蟲祭りの夜、、”

こいつらを土鍋に放り込み今村風ゴッタ煮でグツグツ煮込む。

すると今まで見たことも感じたこともないような強烈な色とにおいのするアクがゴボコポと吹き出してくるのだ。

それは日本人の生と性の営みの根源的な部分が土気色の泡状となったものであり、取れども取れどもそのアクは吹き出してくる。

しかも今村風ゴッタ煮は、煮汁が煮詰まりアクが壁面にこびり付くまで煮詰めるしつこさが売りで、その熱と執着は見ている者の芯深くに眠っている影を呼び覚まし恐怖さえ抱かせる。

人間を動物でも獣でもなく、虫のように描いてしまう今村昌平のどぎつい眼力に、見てはいけないものを見ているような、蛇ににらまれた蛙状態になってしまった・・。

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生きたい(1999年・日本・119分)NHK-BS

 監督・脚本:新藤兼人

 出演:三國連太郎、大竹しのぶ、吉田日出子、塩野谷正幸

 内容:姥捨て山伝説と現代の高齢化社会における老人の置かれた現状を交錯させ、ユーモラスなタッチで描いた社会派人間ドラマ。

評価★★★/65点

弟の苦悩を描いた方が面白い映画になりそうだけど・・。

それはともかく、さんまが怖れる女優、大竹しのぶ。

普段のキャラがこの作品にちょっとでも含まれているのだろうか。彼女の映画を見るたびにどんどん分からなくなる。

これを天才と呼ばずして何と呼ぼう。

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ホワイト・オランダー(2002年・アメリカ・109分)NHK-BS

 監督:ピーター・コズミンスキー

 出演:ミシェル・ファイファー、レニー・ゼルウィガー、アリソン・ローマン、ロビン・ライト=ペン

 内容:15歳のアストリッドは、才能豊かな芸術家の母と2人暮らし。恋人殺しの罪で服役する母は、娘に手紙で「私だけを信じて」と訴え続ける。しかしそれは、才能、美貌などすべてを手にした母親の独善的な愛だった。。。

評価★★★/65点

“石の上にも三年を、文字通り悩み苦しみながら、しかし凛々しさとたくましさをもって見事に体現しきったアリソン・ローマンに魅入られた男ここにあり”

ミシェル・ファイファーも適役で見事にハマっていたと思う。

くもりのないクリーンな白みを湛え、華奢でどこか可憐ではかなげでありながら、蒼い瞳と額に浮かぶ青スジで冷徹な面を醸し出す。

なんかジョジョの奇妙な冒険に出てくる、ブチ切れてスイッチが入ると豹変するアブない香りのする女キャラに似てたな・・。

2017年6月 9日 (金)

夢のシネマパラダイス92番シアター:日本で一番悪い奴ら

日本で一番悪い奴ら

726e10046ecd674011df6e77103d9da710bfd01f出演:綾野剛、YOUNG DAIS、植野行雄、矢吹春奈、瀧内公美、青木崇高、音尾琢真、ピエール瀧、中村獅童

監督:白石和彌

(2016年・東映・135分)WOWOW

内容:柔道の腕を買われ北海道警察に入った諸星だったが、刑事の腕はさっぱり。そんな諸星は、やり手の先輩刑事・村井から成績を上げるためには裏社会に飛び込んで協力者(スパイ)を作れとアドバイスされる。言われるままにそれを実践した彼は、やがて暴力団幹部の黒岩と組み、拳銃検挙のエースに上り詰めていくのだが・・・。

評価★★★/65点

 

1976年道警に採用~2002年逮捕に至る悪徳刑事の四半世紀の転落人生。

成果主義の成れの果てもここまで行き着くと驚きを通り越して笑うしかないけど、法の番人がこんなことホントにしちゃうのかと思えてしまうくらい「アウトレイジ」も霞んでしまうほどの違法行為に唖然ボー然。

開巻直後、逃走する犯人を追うカーチェイスシーンで「シートベルトするバカがどこにいる!」と主人公が怒鳴られるセリフがあり、昭和リアリズムに徹する自負と覚悟がよく伝わってきて、全編通してそれは貫かれていたと思う。

また、序盤も序盤でヤバイ先輩の言うことを鵜吞みにして真面目な正義漢から簡単に道を踏み外してしまう行動力はまるで体育会系のノリで、到底頭の良いヤツのすることではないと思うんだけど、そのどこか間の抜けた単純バカっぷりを綾野剛が上手く体現していたように、役者陣も頑張っていたと思う。

けど、ギラギラギトギトとした脂ぎったエネルギーには乏しくまだ品の良さが抜け切れていないかんじがあって、そこは今の日本映画の限界点なのかなぁというかんじはした。

まぁ結局、体育会系のノリと言った通り、当事者の内面度外視で突っ走っていくので、もうお笑い茶番劇でいくしかないんだよねコレwその点で芸人のデニス植野やTKO木下の配役は的を射ているとは思った。

オープニングに東映のロゴマークが出てくるとそれだけで期待値3割減してしまうんだけど(笑)、その減退分は十分取り戻してくれる映画ではあったかな。

といっても、主人公があまりにも簡単に悪党に両足ズブズブになって豹変してしまう過程がドスルーされている所が消化不良で、そこが最後まで引っかかり、この点数。。

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L.A.コンフィデンシャル

115670_01出演:ケビン・スペイシー、ラッセル・クロウ、キム・ベイシンガー、ガイ・ピアース

監督・脚本:カーティス・ハンソン

(1997年・アメリカ・138分)1998/08/01・盛岡フォーラム

評価★★★★/80点

 

内容:ロサンゼルス、深夜のコーヒーショップで6人の男女が惨殺され、3人のロス市警刑事が独自の捜査に乗り出す。いがみ合いながら別の側面から事件を追う彼らは、それぞれに小さな手掛かりを見つけ、やがてそれは1本の線で結ばれていく。1950年代初頭のロスを舞台に、犯罪者を追い続ける刑事たちの非情な生きざまを描いたクライムサスペンス。

“バドに影響されて思わずとってしまった行動、、があえなく轟沈す。”

自分が学生時代にアパートで一人暮らしをしていた頃。

某テレビ局で月曜19時からやってた離婚相談番組が異様な高視聴率をとっており、かくいう自分も見ていたくちで、再現シーンで男が女に暴力をふるっている場面が出てくると一人で吠えてた頃のお話w

初夏のある日を境に自分の部屋の真上の2階の部屋から夜毎20代と思われる男女の言い争う声が聞こえてくるようになったのだ。

最初はただの喧嘩だなと思いながら、暇な時なんかはソッと聞き耳を立てたりして喧嘩の様子を窺ったりしてヒッチコックの「裏窓」的気分を味わっていたりした。

しかし、ひと月もすると何やら尋常ではない様子。男の罵声と女の叫び声がけたたましく鳴り、ドタバタ走り回ってるんだかプロレスでもしてるみたいな音が階下の自分の部屋に響き渡るようになったのだ。

こりゃ暴力ふるってるなと勘ぐりを入れるものの、はやる気持ちを抑えて様子をみることに(男の声から想像するにチーマーぽい奴なのではないかと思い、関わりたくないと思った・・)。

それからひと月ほどは一時小康状態になり、喧嘩だかの声とかもの凄い音が時折聞こえてくるくらいになった。今から思えば嵐の前の静けさ。。

そしてその日は突然やって来た。

連れと夕飯を食べていると、良い雰囲気をかき消すようにまた2階でいつものごとく始まってしまったらしい。

「窓閉めたら?」「閉めても聞こえるって。」「テレビの音量上げよっか。」「音量上げても聞こえてくるから集中できないって。」「ていうかチョー迷惑だよね。」

「バドだったら絶対ブチ切れて一目散に行ってるだろうなぁ。」「ああ、いつも話してる映画の人?」「そうそう。バドならたぶん2階から突き落とすと思う」とかなんとか話してるうちに、酒が入ってるらしい2階のバカ男がブチ切れたらしく、今までにないくらいヤバイ状態に。

もはや彼らの声だけで2階の惨状が分かってしまうくらいヤバイ状態。明らかに泣き叫んでいる女に男が暴力をふるっている。

もう居ても立ってもいられなくなり部屋の中をぐるぐるぐるぐる歩き回る、、う゛~~助けに行くべきか・・。

「警察呼んだ方がいいんじゃない?」「つーか隣の住人とか何やってんだ。ったくよーー!」周りの住人に対してあたる自分(頼むー。2階の隣の部屋の住人でもいいから何とかしてくれーと心の中ですがっていた・・)。

が、、遂に女の悲鳴と助けを求める声が聞こえてくるや、自分の中で臨界点突破!

外に飛び出し、2階に向かって「うっせーーんだよ2階っ、聞こえてんのかゴラァ」みたいなことを言ったはず。

そしたら見るからにヤバそうな奴が2階のベランダから顔を出し何やらほざいた。テメーには関係ぬぇんだよ、ブッち殺したろかぁ○×△ピー○×ピー△・・!

自分の中で臨界点蒸発!

気付いたら階段を駆け上り、2階のその部屋を開けようと必死こいていた。。

が、鍵がかかっている。ドアノブをいくらやってもドア開かず。。

と、ドアが突然開き、涙かなんかで目が真っ赤に充血している女性が出てきた。うっ、意外に若い。

それは置いといて、後ろから何やら瓶を手に持って呂律が回っていないヤバーい男が何かほざきながらやって来るではないか。

マジで一瞬退く。

あーもーどーにでもなれ!

たしか何秒か言い合いになったのは覚えている。

と、奴の不意の瞬速パンチを喰らい後は何がなんだか。。

2階に上がってきていた連れによると廊下でもみ合いになっており、結局奴に馬乗りになられ、ボカスカやられていたらしい(涙)、情けねー♪

しかし、話はそこで終わらない。

なんと見知らぬ第3の男が突然やって来て、馬乗りになっている奴にジャンプキックかなんかを食らわし、奴を簡単にのしてしまったのだ。

え!?誰?どなた??(助けてくれてアリガトーーっ)

「彼女と付き合ってるんだよ。ていうかお前は誰?」

え????「あ、、下に住んでる者なんスけど・・」

な、なななんと、目を腫れぼったくしているあの女、、二股かけてたことが発覚!

「あとはこれ3人の問題だからあとはいいよ。」とかなんとか第3の男に言われ、頭の整理も付かないまま部屋に戻った。

「・・・なんかバカみたね。」

たしかに・・。

結局バドになれなかった自分。

しかし、今もなおバドの人格は多大な影響を与えつづけている。いや、心の拠り所になっていると言ってもいいのかもしれない。

ていう映画レビューでも何でもない個人的体験談でありました。

2016年10月23日 (日)

夢のシネマパラダイス316番シアター:なぜ兄弟は映画にならなくて姉妹は映画になるのか

海街diary

News_20150528出演:綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず、加瀬亮、鈴木亮平、樹木希林、リリー・フランキー、風吹ジュン、堤真一、大竹しのぶ

監督・脚本:是枝裕和

(2015年・東宝・128分)WOWOW

内容:父は不倫のため15年前に、母もその2年後に再婚し家を出ている中、しっかり者の長女・幸、やんちゃな次女・佳乃、マイペースな三女・千佳の香田三姉妹は、鎌倉の実家で暮らしている。そんなある日、父の訃報が届き、3人は葬儀の行われる山形へ。そこで中学生になっている腹違いの妹すずと出会う。父の再々婚相手の家のため、血のつながった身寄りがいなくなり肩身の狭い思いをしているすずの姿に、幸は鎌倉で一緒に暮らさないかと提案する。こうしてすずが香田一家に加わり、四姉妹の暮らしが始まる。

評価★★★★/80点

好きな漫画は何かと訊かれたら真っ先に「海街diary」を挙げるほど原作漫画が好きな自分は、この漫画に関しては一風変わった読み方をしている。

それは家から職場まで車で片道50分かかるのだけど、通勤途中の信号待ちの時にサッと手に取る読み方だ(笑)。かなり邪な読み方かもしれないけど、一巻読むのに大体2~3週間はかかってしまう。

じゃあ、なんでこういう読み方をするかというと、端的に言えば一気読みしたくないというのがあって、要は4姉妹の日常を流れるゆったりとした時の流れを共有したいからだ。

その点で今回の映画は、原作の持つ世界観を的確に、そしてイメージ通りに映像化してくれたと思う。

鎌倉の街の情景や4姉妹が暮らす日本家屋など実写ならではの奥行きが彼女たちのキャラクターや物語に説得力をもたらしていたし、なにより4姉妹がイイ♪

サチ姉の綾瀬はるかと千佳ちゃんの夏帆は見る前は若干イメージと違うかなと思ってたけど、フタを開けてみたらしっくり役にハマっていて確かな女優力を垣間見れたかんじ。

あと完璧だったのが佳乃の長澤まさみ。自由奔放かつ大ざっぱでルーズでありながら冠婚葬祭や職場などオフィシャルな場ではきっちりしているという女の使い分けが上手い佳乃のイメージ通りだったと思う。法事が終わった後に大の字になってビール飲みてぇー!ってわめく所はドンピシャだったw

また、四女のすずに関しても言うことなし。なにより広瀬すずのサッカーのプレイ姿がめちゃくちゃ様になっていてビックリした。原作のすずはサッカー推薦で高校に行けるくらいの実力の持ち主なので、あのサッカーシーンだけでこの映画への信頼度はMAXになったといってもいいくらい。

2時間だけで終わらせるにはあまりにももったいない4姉妹のアンサンブルと世界観を堪能できたけど、どうせだったら連続ドラマで見たいね。

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イン・ハー・シューズ

20061231085807 出演:キャメロン・ディアス、トニ・コレット、シャーリー・マクレーン、マーク・フォイアスタイン

監督:カーティス・ハンソン

(2005年・アメリカ・131分)MOVIX仙台

評価★★★★/80点

内容:まわりが羨むスタイルと美貌を持ちながらも難読症というハンディキャップがコンプレックスとなり、定職にも就かない奔放なマギー。一方、姉のローズは、弁護士として成功しているものの、自分の容姿に自信が持てず、恋愛にも慎重。そんなある日、ローズの家に居候していたマギーは、ローズの恋人に手を出してしまったことから家を追い出されてしまう。行く当てのないマギーは、仕方なくまだ会ったことのない祖母エラのもとを訪ねるのだが・・・。

“これが私の生きる道!”

むやみやたらとご立派な靴を買い集めては開かずのクローゼットに新品のまま所狭しと並べている姉ローズ(トニ・コレット)と、姉のお気に入りの靴だろうがお構いなしにむやみやたらと靴を履き替えては折れたヒールをチューインガムでくっつけてしまうようなトンでもな妹マギー(キャメロン・ディアス)。

仕事はバリバリだけど堅物で恋に不器用な姉と、プーだけどルックス抜群で姉のお気に入りのボーイフレンドだろうが所かまわずガンガンヤリまくるイケイケ女の妹。

靴のサイズが同じこと以外は全く好対照な姉妹の2人のキャラクターが非常によく描かれているのがこの映画のミソで、時には嫉妬し、時にはケンカし、時には信頼し、時には自慢し合い、時には抱き合い、時には涙し、、、そんな姉妹のキッてもキレない関係が丹念に描き出されていくとともに、2人の“これが私の生きる道”を見つけていく道のりが心地良く綴られていく。

そして家族の再生と、人間的に成長し歩き出していく2人の姿に心が暖められ、思わず笑顔で2人の背中を見送ってあげたくなる良作に仕上がっている。

特にキャメロン・ディアスは最近の作品の中では1番良かった。

ゴージャスなモデルボディーのみが売りだったような「マスク」から10年。大金持ちのお姫様でルックス以外能がないような、それでいて映画史に残る大音痴を披露して場をさらった「ベスト・フレンズ・ウェディング」から早8年。

しかし、そんなゴージャスかつフレッシュで元気溌剌な若さが売りだったキャメロンも他の勝負できる“これが私の生きる道”を見出さなければならない世代にさしかかった。

ローズがマギーに言い放つ「中年のアバズレは惨めなだけよ!」というキャメロン自身にはね返ってくるような生々しくて強烈なセリフが耳に残ったが、「マスク」から「チャーリーズ・エンジェル」までフルスロットルで走り続けてきた彼女が10年ひと区切りで次なるステージへとかけ上がっていくスタート・ラインに立ったということなのかな。

欠点なり弱点をキュートでプラスな側面に自然に変えられる持って生まれた稀有な才能を持っているキャメロン・ディアスは例えば一見お下劣な映画でも笑って許せてしまうような独特で能天気な雰囲気と味わいを添えることができる。

「メリーに首ったけ」では○液ヘアジェルを髪になすりつけ、今回の映画でもレストランでデカイ声で「ヴァギナ」を連発だからね。志村けんのバカ殿と共演させたいよホンマ(笑)。

硬軟バランスよく使い分けることのできる女優になっていってもらいたいけどね。

あ、トニ・コレットもホント良かった。あ゛っ、それ以上にシャーリー・マクレーンもね。

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腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

20071004_451107 出演:佐藤江梨子、佐津川愛美、山本浩司、永作博美、永瀬正敏

監督・脚本:吉田大八

(2007年・日本・112分)CS

内容:石川県の片田舎。両親の訃報を受け、東京から戻ってきた和合家の長女、澄伽。4年前に女優を目指して上京したものの泣かず飛ばずの澄伽は、義兄の宍道に援助の強要を迫るわ、妹の清深をいじめ抜くわのやりたい放題。宍道の妻で度を越したお人好しの待子はその複雑な家族関係に右往左往するばかりだったが・・・。

評価★★★☆/70点

“和合”という日本人の本質を言い表しているような名字を持つ和合家の人々の救いのない醜態を面白おかしく見つめた物語は、最後まで飽きずに見れたのはたしか。

ただ、ラストに「やっぱお姉ちゃんは、最高に面白いよ。」と妹・清深(佐津川愛美)が姉・澄伽(佐藤江梨子)に鉄槌を食らわせるわけだけど、この1番印象的なセリフに十分な説得力を持たせるまでの描写がなされていたかというと、ちょっとビミョーで・・。

だって1番面白いネタになるのは待子(永作博美)>清深>宍道(永瀬正敏)>澄伽やんけ。

澄伽の人物造型を漫画的にもっと大胆にデフォルメしてアクの強さを前面に出してもよかったのかなとは思ったな。

そういう点では、永作博美にかなり助けられた作品だったと思う。

そばつゆがコンタクトレンズと角膜の間に入って失明しかけるというプロットなど細かいところまで随所に笑えるシーンはほとんどが待子がらみだったし、それを演じた永作博美の笑顔ふりまきながらの怪演ぶりは、清深が描くホラー漫画以上に怖いものがあった。

ニコニコしながら変な人形作ったり、宍道と合体しようと青アザ作りながら格闘したり、扇風機を念力で回そうとしたり、ホラーとユーモアの絶妙な同居を体現した演技力は女優としてホンモノなんだと確信。もっと前に気付けよw

駄作と異色作の狭間で奮闘した永作博美に乾杯です!!

でも、話は変わるけど、100万金を貸すのにスタンプカード80回ぶんって、、、1回1万2500円やろ。安すぎだろww。せいぜい1回3万で計算しいや。そこが気になって気になってしょうがなかった・・

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何がジェーンに起こったか?

Nanigajaneniokottaka_aus 出演:ベティ・デイヴィス、ジョーン・クロフォード、ビクター・ブルーノ、アンナ・リー

監督:ロバート・アルドリッチ

(1962年・アメリカ・132分)DVD

評価★★★★/80点

内容:名声を失ったのは姉のせいだと思いこんだ往年の子役スターが復讐を企てるスリラー。6歳の時から舞台に立っていたジェーンが子役としての人気を失いかけていた頃、姉のブランチは映画スターとして人気者になっていた。しかしそんなある日、ブランチは自動車事故で下半身不随となり映画界から退く。数十年後、姉と2人で暮らすジェーンは、酒に溺れ異常な行動をとるようになっていた・・・。

“嫉妬と憎しみから解放されるカタルシスが一転して悲しみに変わったとき、、、しばし絶句し呆然とする以外にない。”

見終わって思い返してみるとちょっとした違和感は冒頭で感じてたんだよなぁ・・・。

妹が表舞台で盛大なスポットライトを浴びてる中、姉のブランチは舞台袖でくやしそうな顔をしている。

母親から、「あなたもいつかスターになれる。もしスターになったらお父さんや妹の面倒をみるのよ。忘れないでね。」と言われたブランチの返しが、「ええ、忘れないわ。絶っっ対に。。。」と言ったときの表情と言葉つきに並々ならぬものを感じたのだけど。でも、まさかなぁ、そんなことって、、ありなのかよ。。

ヒッチコックの古典「レベッカ」と見比べてみても面白いかもね。

見えない強烈な存在感と、見える見える見えすぎてケバイ強烈な存在感と。レベッカに対抗しうるのはあの姿形のベティ・デイヴィスということなのか・・・。

いやはや凄すぎます。。

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とらばいゆ(2001年・日本・118分)NHK-BS

 監督・脚本:大谷健太郎

 出演:瀬戸朝香、塚本晋也、市川実日子、村上淳、鈴木一真、大杉漣

 内容:姉妹そろって女流棋士という姉・麻美(瀬戸朝香)と妹・里奈(市川実日子)。麻美は大企業に勤めるサラリーマンの一哉(塚本晋也)と結婚したが、途端にスランプに陥ってしまい、結婚早々ケンカばかり。一方、恋多き里奈は、弘樹(村上淳)という売れないミュージシャンの彼氏がいたが、里奈の浮気がバレて険悪な状態に。そして恋愛と勝負師という仕事の両立に悩む姉妹の関係もこじれてしまい・・・。

評価★★★★/75点

“将棋の指し方にはその人の性格が出るというけど、そういう意味でいえば自分は簡単に分かる。詰めが甘い!押しが弱い!人生においても、、恋愛においても、、ガクッ。”

と、半うつ状態になったところでこの映画の感想を。

まず、いじっぱりで強情で素直じゃない麻美のような女性ははっきりいって好みじゃない。

だって、良かれと思って買ってきた妻の大好物であるニコニコ亭の酢豚弁当を、「こんなのいらない!」と投げ捨てるねんでアータ。オイラだったら速攻ブチ切れるわ。

なのにこの肩身のせまそうな夫といったらキレるわけでもなく、「やめて下さい。。」の一点張り。温厚で優しくニコニコニコニコ。。自分にはできない(笑)。妹・里奈の恋人と合わせて、なんつう男は弱いんだと男どもに喝を入れたい気分にもなったのだが。

しかし、決して自分の弱みを見せない麻美が夫の前で涙を見せたとき、夫婦関係の真実が露わになるさまに思わず愕然。

夫・一哉の包容力と優しさが妻を支えていたという真実。

恋愛は“刺激”と“熱情”、結婚は“忍耐”と“寛容”とはよく聞くが、恋愛経験すら乏しい自分にとって夫婦関係の深淵を理解するには、その思考回路はスイッチの切り替え方を知るすべもないほどに単純すぎるのかもしれないな・・。

でも、それをテンポ良いコメディタッチに落とし込んだ日常の会話劇として垣間見ることができたのは、ただ見るぶんには面白おかしかったけど。

しかし実際、あんな都合のいい男なんていったいぜんたい居るのかね??

里奈の恋人・弘樹のような大らかさにさえかなり妥協しないと迫れない自分には、おとぎ話のような世界かも。。

ただひとつ、取るに足らないことからケンカになっていく様子は妙にリアルで、そこだけは120%自分と重ね合わせることができて、思わず笑わずにはおられなかった。

女がオトコ化し、男がオンナ化している今の時代、社会の矢面に立たされている女性とうまく付き合っていくには、男には癒しの能力が求められ必要とされているのかもしれない。

オイラには・・・・

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ハンナとその姉妹(1986年・アメリカ・106分)NHK-BS

 監督・脚本:ウディ・アレン

 出演:ウディ・アレン、マイケル・ケイン、ミア・ファロー、ダイアン・ウィースト

 内容:女優として成功して夫エリオットとの家庭生活も円満なハンナ、ハンナの妹で売れない女優のホリー、年の離れた画家と同棲している末妹のリー。NYで暮らす三姉妹の人間模様を描いた人間ドラマ。

評価★★★★/75点

“ダイアン・ウィースト、、細いっ!”

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若草物語(1994年・アメリカ・118分)NHK-BS

 監督:ジリアン・アームストロング

 出演:ウィノナ・ライダー、スーザン・サランドン、サマンサ・マシス、クリスチャン・ベール

 内容:『若草物語』4度目の映画化。

評価★★/40点

このての映画がいまいち好きになれないのは、コスチュームものが好みではない他に、見てるだけでウザったい女性陣の髪形にも一因があることがこれ観て判明した(笑)。

ついでに言えば、大林宣彦の映画が性に合わない自分には、この映画、、なんか同じ匂いがした。。

2016年8月21日 (日)

夢のシネマパラダイス484番シアター:ノーカントリー

ノーカントリー

51awagswsfl 出演:トミー・リー・ジョーンズ、ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブローリン、ウディ・ハレルソン、ケリー・マクドナルド

監督・脚本:ジョエル&イーサン・コーエン

(2007年・アメリカ・122分)DVD

内容:メキシコとの国境沿いにあるテキサスの荒野でハンティング中に、死体が転がっている麻薬取り引き現場に出くわしたルウェリン・モス(ジョシュ・ブローリン)。彼はそこで200万ドルの大金を見つけて家に持ち帰る。しかし、そのため冷血非情な殺人者シガー(ハビエル・バルデム)に追われる身となってしまう・・・。

評価★★★★/80点

デヴィッド・フィンチャーの「セブン」(1995)で、「こんな世の中に生まれてきた子供は可哀想だから生みたくない」という残酷なセリフが出てくるけど、コーエン兄弟の今回の映画を見てこのセリフをふと思い出してしまった。

「セブン」を見たときは、なんつー現実離れした悲観論だと思ったものだけど、今回の映画を見てなんか妙に納得できちゃったというか、、それくらい救いも何もない映画だったなと。。

と同時にこれほど緊迫感を持って画面にじっと釘付けになった映画もついぞ久方ぶりに味わったような気がする。

面白いか面白くないかという枠ではとらえきれない、まるで研ぎ澄まされた生存本能が決して映画から目をそらすなと警告しているかのような、自分の五感を全開にして見入ってしまった。

それはなにより酸素ボンベを片手にルール無用の非情を通り越した殺戮を繰り返していく怪物アントン・シガーの不気味なおかっぱ頭と感情の見出せないギョロ目から片時も目を離せなかったことが大きく、悪役造型としては「ターミネーター」(1984)以来の衝撃を受けたといってもいい。

例えば史上最強の悪役とうたわれる「羊たちの沈黙」のハンニバル・レクターや、それこそ「セブン」のジョン・ドゥの雄弁さを見るまでもなく、どんな残忍な悪役でも対話=ダイアローグがある程度通用するものだけど、このアントン・シガーの何が恐いって、対話そのものすら通じないことが恐いのだ。

雑貨店の店主との会話にならない会話とか、相手の投げかけてきた対話のボールをそのままエアガンでブッ放して返したりと、まさに感情のないターミネーターでも見ているかのような、こいつに睨まれて追っかけられたら100%命はないと観念せざるをえない最凶レベルのシリアルキラー、アントン・シガー・・・

しかしてこの感情のないターミネーター、重傷を負って足からボトボトと赤黒い血を滴らせ、あげくの果てには交通事故に遭い、白い腕の骨がむき出しになったりと生の身体性を痛いほどに見せつけもし、これは現実の世界なのだと虚構という安住の地へ逃げることを許してくれない。

それでいて傷を負っても表情ひとつ変えずに黙々と処置していくその姿はやっぱりターミネーターとダブってしまうww。

いずれにしても恐すぎるのだ。。

そんな怪物の前では、しゃべくりまくりのウディ・ハレルソンも、追跡にかけては右に出る者がいないトミー・リー・ジョーンズも全く出る幕はない。

「逃亡者」(1993)、「依頼人」(1994)、「追跡者」(1998)などで現代アメリカの保安官の模範像を体現してきたといってもいいトミー・リーだからこそ、老兵となった彼の諦観の姿からはよりいっそうの救いのなさを痛感してしまう。

例えば、勝ち目のない戦いにひとり敢然と立ち向かった「真昼の決闘」(1952)の保安官ゲイリー・クーパーとはあまりにも対照的なのだけど、あの映画にあった正午きっかりにならず者たちが保安官に復讐しにやって来るという単純なルールの通用しない複雑怪奇なめまぐるしい時代の移り変わりの中で、老保安官はただ立ちすくむしかないのかもしれない。

その中で彼は「昔はこんな理解できない事件はなかった、、、昔はまだ良かった」と嘆くが、しかし、アメリカ西部の伝統的なロケーション、ひいてはアメリカそのものを貫いてきたのは銃と暴力以外の何ものでもないわけで。

そして、それを不条理なレベルにまで具現化したのがおかっぱの怪物だったとするならば、その怪物を生み出したのは映画の原作の題名である「血と暴力の国」=アメリカに他ならず、自分たちが築き上げ培ってきたフロンティア・スピリットの矛盾と闇にウエスタンハットをかぶった西部の男が追いつめられていくというのは痛烈な皮肉だろう。

また、ウエスタンハットの男モスが真夜中に何を思ったのか、瀕死のメキシコ人に水をやるために殺戮現場に舞い戻ったがゆえに墓穴を掘ってしまったり、ルール無用の殺人鬼が信号無視の車に追突されたりと、シニカルな視点が随所に見られるのもこの映画を印象深いものにしている。

モスがベトナム帰還兵だったり、トミー・リーのラストの夢の独白など、アメリカ人の皮膚感覚でしか分からないようなメタファーが含まれていると思うのだけども、そこまで深読みするにはもう2回くらい見ないとダメかも・・w。

しかし、そういう難しいことはさておき、追う者と追われる者の死にもの狂いの逃走(闘争)劇だけでも十二分にインパクトのある作品であることはたしかだ。

自分の生存本能を刺激する映画を見る、これほど至極の映画体験はない。

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バーン・アフター・リーディング(2008年・アメリカ・93分)WOWOW

 監督:イーサン&ジョエル・コーエン

 出演:ブラッド・ピット、ジョージ・クルーニー、ジョン・マルコヴィッチ、フランシス・マクドーマンド、ティルダ・スウィントン

 内容:アル中が原因でCIAをクビになったオズボーン(ジョン・マルコヴィッチ)は、暴露本を執筆中。一方、連邦保安官ハリー(ジョージ・クルーニー)と不倫中の妻ケイティ(ティルダ・スウィントン)は、離婚を有利に進めるべくオズボーンのPCからデータをコピーする。ところが、そのCD-ROMがひょんなことからスポーツジムのインストラクター、チャド(ブラピ)の手に。彼は整形費用が欲しくてたまらない同僚のリンダ(フランシス・マクドーマンド)と組んでオズボーンを脅迫しようとするが・・・。

評価★★★★/75点

地球の衛星画像からCIA本部にズームアップしていく仰々しいオープニングだけ見ると、トニー・スコットあたりが撮るようなスパイもののハイテクアクションみたいなのを想起させるけど、フタを開けてみたら、ハイテクどころか保険会社への問い合わせ電話もろくに繋がらないようなローテク極まりない映画だった・・・。

しかも、CIAの機密情報が入った(?)CD-ROMをいわゆるマクガフィンとして事は進んでいくわけだけど、それを取り巻く連中が、全身整形が悲願の40女にセックスマシーンの色ボケに、ipod好きの筋肉バカにアル中のイカレ親父という米ロが見向きもしないようなド素人というのもこの映画をよりいっそう“残念な”ものにしているww。

いやぁ、、こういう映画大っ好きなのよね(笑)。

アカデミー賞獲った後に原点に立ち返ったようなおバカ映画をサラリと作ってしまうコーエン兄弟はやっぱりさすが。

しっかし、役者陣だけ見るとなんとも贅沢な映画だけど、後味が何にも残らないっちゅうのもある意味スゴイ話だわな(笑)。。

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凶悪

Poster出演:山田孝之、ピエール瀧、池脇千鶴、小林且弥、白川和子、吉村実子、リリー・フランキー

監督:白石和彌

(2013年・日活・128分)WOWOW

内容:ある日、死刑囚の元ヤクザ・須藤から雑誌社の編集部に手紙が届いた。それは、まだ世間に知られていない3件の殺人事件についての告白だった。須藤曰く、「先生」と呼ばれる首謀者の不動産ブローカーの男が自分を裏切りのうのうと生きていることが許せず、雑誌で告発記事を書いてほしいという。須藤の記憶はあいまいで真偽も定かでない中、記者の藤井は裏付け調査に没頭していくが・・・。

評価★★★/65点

数年前、自分の中学校の同級生が金づちで妻を殴り殺してしまう事件が起こった。

中学を卒業してから約20年、TVニュースで容疑者の名前を見た時に仰天すると同時に、あぁ~やっぱりなぁと納得してしまった自分もいて。。

それは、自分の転校の事情もあり、小学校2,3年と中学校2,3年の4年間同級生だったのだけど、「山猿」と呼ばれるくらい当時から手のつけられない問題児で、理性よりも野性の方が勝ってしまうような、暴力的な行動に自制がきかなくなる恐さがあったからだ。

この何をしでかすか分からない野蛮な体臭を常に発散していたかんじが、何食わぬ顔で暴虐のかぎりをつくす須藤(ピエール瀧)と重なって見えて気持ち悪くなってしまった。

しかし、善良そうな普段着でありながらさらにその上をいく嗜虐性をみせるリリー・フランキーの凶悪ぶりもさることながら、家庭を省みない藤井(山田孝之)を尻目に義母の介護に疲弊して暴力までふるっていたという妻(池脇千鶴)の告白の方が日常と地続きな、いずれ訪れるであろう親の老介護において、なにか自分もある一線を超えてしまわないともいえないような怖さがあったように思う。

ただ、藤井の家庭を破綻に追い込むに至る老人介護の現実と、時計を質屋に預けるくらいの心持ちで老人を焼却炉で焼き殺すような凶悪犯罪とが映画としてうまく連関していたかというとちょっとビミョーで、正直いって前者は付け焼き刃的なかんじが否めなかったと思う。

まぁ、それだけ後者の悪が突き抜けちゃってるわけだけど、人間生活の表(善)と裏(悪)という点ではリリー・フランキーのとこを掘り下げるだけで十分だったと思うし、ちょっと作劇が狙いすぎというか生真面目というか、もっと図太くてもよかった気がした。

でも、これ見ちゃったら不動産ブローカーは一生信じられないなw

うわー、うちアパート持ってるんだよなぁ

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