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2019年8月 3日 (土)

夢のシネマパラダイス530番シアター:原爆が残したもの・・・

母と暮せば

D0_hzneucaicqbd出演:吉永小百合、二宮和也、黒木華、浅野忠信、小林稔侍、橋爪功

監督・脚本:山田洋次

(2015年・松竹・130分)WOWOW

内容:長崎に原爆が投下された昭和20年8月9日、医大生の浩二は一瞬にしてこの世からいなくなった。夫を病気で、長男を南方戦線で亡くしている母親の伸子は、次男坊はどこかで生きていると思いながら助産婦の仕事をしながら一人で暮らしていた。浩二の婚約者だった町子はそんな伸子のことを気にかけ、足繁く訪ねてくれていた。そして3年目の8月9日、伸子の前にひょっこり浩二の幽霊が現われる。そして2人は思い出話に花を咲かせるのだった・・・。

評価★★★☆/70点

終戦から70年経ち、今や戦地に行った兵士たちは年齢的に考えてもほとんどいない世の中になってしまった。13歳の時に終戦を迎えたという山田洋次もすでに85歳。

銃後の世代でさえもはや危うい。自分が思っている以上にあの戦争は風化してしまっているのだと思う。そして高齢になっても精力的に映画を撮り続ける山田洋次にとって最近のきな臭い世の中の風潮もあいまって撮らずにはいられなかったのだろう。

昭和15年の東京を舞台にした「母べえ」(2007)で市井の人々のささやかな幸せを喰いつぶしていく不気味な戦時の空気を描いていたけど、今回は数多の生命を一瞬で消し去った原爆投下から3年後の長崎を舞台に、いまだ消えることなく日常に刻まれた傷跡を描き出した。

広島が舞台の「父と暮せば」と対になった作りになっていて、生き残った者の負い目というテーマは同じなのだけど、生き残った自分は幸せになってはいけないんだと自問自答する娘の痛々しさが心に刺さった「父と暮せば」と比べると、今回は母と息子というマザコンすれすれの親子愛とキリスト教の死生観が根本にあるために若干メッセージ性が甘めの方向に出てしまった感はあるかなとは思う。

けど、原爆を語り継ぐことをライフワークとしてきた吉永小百合の演技は心に響くものがあったし、菩薩のような彼女でさえも「どうしてあの娘だけが幸せになるの?」と呪詛の言葉を吐かざるを得ないところに、戦争・原爆のもたらした虚しさとおぞましさが胸をついた。

あとは何といってもたった2カットで表現した原爆投下直後の惨劇シーンだろう。

医科大の教室内がビカッと真っ白に光った後に万年筆のインク瓶がトロトロと溶けていき、ガラス片の粉塵が猛烈な爆風で吹きすさび真っ暗闇に覆われていく、、、そのあまりの衝撃に何も言葉が出てこなかった。

山田洋次渾身の一作になったといっていいだろう。

ただ、映像から色や温度は伝わってきても匂いまではあまり伝わってこなくて、戦争を知る最後の世代の山田洋次でさえも描き切れないところに風化の恐ろしさを感じてしまったことも付け加えておきたい。

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父と暮せば

Kura 出演:宮沢りえ、原田芳雄、浅野忠信

監督・脚本:黒木和雄

(2004年・日本・99分)NHK-BS

評価★★★★/80点

 

内容:広島に原爆が投下されてから3年。図書館に勤める美津江は、愛する人たちを原爆で失い、自分だけが生き残ったことに負い目を感じながらひっそりと暮していた。そんな彼女はある日、図書館で大学助手の木下という青年と出会い、互いに惹かれあっていったが、「うちは幸せになってはいけんのじゃ」と恋心を押さえ込んでしまう。それを見かねた彼女の父・竹造は亡霊となって姿を現し、“恋の応援団長”として娘の心を開かせようとするのだが・・・。

“広島の原爆慰霊碑に記銘されている「安らかに眠って下さい。過ちは二度と繰り返しませんから。」という言葉を忘れずに受け継いでいくためには、とにかく語り継いでいくことしか道はない。”

戦争・被爆体験の記憶を風化させてはならないという声は、戦後70年が経ち、TVゲームばりのシミュレーション感覚で戦争がTV画面から流れてくることにどこか感覚が麻痺しかけている現在、特に声高に叫ばれていることだが、風化を防ぐためにはとにかく戦争体験者の悲惨な記憶を世代を越えて語り継いでいかなければならない。

風化させてはならないのならば語り継いでいかなければならない。~しなければならない、それは義務であり責任であり使命である。戦争を体験した者としての。

と、疑問のはさみ込む余地などないような当然なこととして自分なんかは考えてきたのだが、この映画を見てハッと気付かされたことがある。

それは、語り継ぐ者の苦悩とツラさだ。

思い出したくもない、他人に話したくもない悲惨な体験の記憶を吐露すること。そのエネルギーと勇気はそれを受け取る側からは計り知れないほどのものがあるのだろう。

原爆投下から3年後の広島で生きる美津江の苦悩、未来を断絶させてしまうほどの人間そのものを深くえぐる傷。

「あんときの広島では死ぬるんが自然で、生き残るんが不自然なことじゃったんじゃ。」という言葉にしばし絶句してしまう。

生き残った者としての苦しみを切々と表現した宮沢りえと、その何十倍もの苦しみを背負いながら美津江を大らかに包んでいく「恋の応援団長」原田芳雄の存在感にただただ脱帽するばかりだ。

次の世代に継いで行く、それにはもちろん受け取る次の世代の側にも義務と責任と使命が課されるわけだが、はたして語り継ぐ側とどれだけ価値観を共有できるのか、どれだけ彼らのつらく苦しい記憶を実体と重さのあるものとして受け止められるのかという問題も最近は出てきたように感じられる。

先の戦争では日本軍兵士の多くが実は餓死で亡くなっているというのは事実だが、この飽食の時代に、はたして飢餓を想像できるだろうか。以前TVで、あまりにも空腹で、炭をガリガリかじって食べたんです、という元兵士の話を聞いたが正直自分はわけが分からなかった。だって、炭って・・・。

また、例えば、ひめゆり部隊の沖縄戦に関する語り部の証言が「退屈で飽きてしまった」などということが高校の入試問題に平気で出てしまう、今はそんな時代になってしまったのだ。

風化は日々進んでいる。

とにかくもう時間がない。次の世代に継いでいかなければならない時間が・・・。

戦後70年経って、涙を流しながらやっとで重い口を開く方もいる。戦後70年経っても、いまだに戦争の悪夢にうなされる方々がいる。

自分の祖父はシベリア抑留を経験していたが、中学生の時に交通事故であっけなく逝ってしまった。

祖父には右手の親指がなかったが、戦争で銃弾を受けたせいだと言っていた。

結局、祖父からは戦争体験らしいものを聞くことなく別れてしまったのだが、今となっては少し心残りな気もする。

シベリア抑留、ほとんど分からないし知らない。

これは、問題だ。。

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黒い雨

Bnashzxau 出演:北村和夫、田中好子、市原悦子、小沢昭一、三木のり平、沢たまき

監督・脚本:今村昌平

(1989年・東映・123分)NHK-BS

評価★★★★★/90点

 

内容:1945年8月6日、高丸矢須子は瀬戸内海の小船の上で強烈な閃光を見た。その直後、空は見る見る暗くなり、矢須子は黒い雨を浴びてしまう。5年後、福山市に移り住んだ矢須子は、原爆症の疑いをかけられて縁談がなかなかまとまらず、彼女の面倒を見る叔父は気をもんでいた。やがて、矢須子は発病し、被爆の後遺症に悩まされる・・・。

“「正義の戦争より不正義の平和の方がマシ」という印象的なセリフがあったけど、昭和20年の日本より平成20年の日本の方がマシ、、、と今の後期高齢者の方々は本当に思えるんだろうか、、というのもなんだか怪しい世の中になってきちゃってるような気がしてならない。。”

自分にとってトラウマになっている映画というのは何本かあって、それは例えば「ターミネーター」だとか「オーメン」「バタリアン」など小学校低学年で見た映画が多いのだけど、その中で最強のトラウマ映画といえるのが、小1で見せられたアニメ版「はだしのゲン」。

ヤッター!アニメ見れるぜー!と意気込んで見に行ったが最後、劇場の座席が電気イスに感じられてしまうほどの苦痛を味わってしまったわけで。それはまさに永遠に続くかと思われるほどの醒めない悪夢だった・・・。

ただ小さい頃、親にこの手の反戦映画を網羅させられたのは今となっては良い経験になったと思うし、戦争という悲劇のトラウマを小学生くらいで植え付けるというのは教育上大変によろしいことだと思うので、親には感謝しております(笑)。。

んで「火垂るの墓」をはさんで「黒い雨」を見たのが小5くらいだったと思うんだけど、これがまたエライ思い出があって。

母親に連れられて自分と弟、妹の4人で見に行ったのだけど、劇場窓口でチケットを買って劇場に入っていったら、職員のオバちゃんが風船だとかキャラクターもののお面だとかの特典グッズをくれるわけ。

お、ラッキーと思いながら「黒い雨」が上映される2階に上がっていこうとしたっけ、そのオバちゃんが「東映アニメ祭りはそっちじゃなくて1階ですよ!」と教えてくれる(笑)。ようするにそのオバちゃんは自分らが東映アニメ祭りを見に来たんだろうと早合点してそのグッズをくれたのだ。そりゃそうだよなぁ妹なんてまだ幼稚園かそこらだったんだから、まっさか今村昌平のゲテモノ作品を見に来たなんて露ほども思わないだろうよ。

しかし母親が「いいえ、黒い雨を見に来たのでこっちでいいんです!」とキッパリ。ポカーンとしてるオバちゃんの顔が今でも忘れられない・・。

とともに田中好子のオッパイを見てしまったという記憶もしっかり残ってるんだけど(笑)。

いやぁ、、、自分が親になったら絶対に東映アニメ祭りの方を見せるよ、ウン。

ただ、ガキの時点でこの映画、半分分かって半分分からないような映画だったんだけど、胃の中を何かドス黒く熱いものがうごめき、這いずり回っているような息苦しさと圧迫感を終始感じたのはたしかだ。

電車の中で叔父さん(北村和夫)が被爆するシーンの衝撃、そして死屍累々の廃墟と化し、焼けただれた皮膚がズルリと剥け落ちてくるゾンビと化した人間たちが呻き声を上げながら方々をさまよう広島の街を、叔父さん、叔母さん(市原悦子)、矢須子(田中好子)の3人が必死で逃げ回る情景はあまりにも強烈で、川を流れてくる死体とか、道ばたに転がっている黒コゲになった死体だとか、おそらくこういう衝撃は自分の中の記憶としてずっと残っていくんだろうと思う。

つい先日、二次被爆の悲劇を描いた「夕凪の街、桜の国」の原作マンガを読んだときに、髪の毛が抜け落ちるシーンを見て、この「黒い雨」を見たときの圧迫感と同じものを感じて何とも言い表すことのできない重苦しさにとらわれてしまった。

遠い国で起きている戦争が、夕飯時のTVから流れてくるヴァーチャルなものとしか感じられない今の時代にあって、いかに戦争の悲惨さを子供たちに実感できるものとして伝えていくかというのは、戦後から3世代経った自分たちに課された大きな宿題なのかもしれない。

そういう意味では映画の果たす役割って大きいんだよなぁ。

人間、こういうことはすぐ忘れていっちゃう生き物だから・・・。

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夕凪の街 桜の国

Ph1_yugagi20comic 出演:田中麗奈、麻生久美子、吉沢悠、伊崎充則、藤村志保、堺正章

監督:佐々部清

(2007年・日本・118分)2007/08/07・盛岡フォーラム

評価★★★/65点

 

内容:原爆投下から13年後の広島。母(藤村志保)と2人で暮らす平野皆実(麻生久美子)は、会社の同僚・打越(吉沢悠)から告られるが、原爆で死んでいった多くの人々を前にして自分だけ幸せになっていいのだろうかとためらってしまう。やがて、そんな彼女を原爆症の恐怖が襲う・・・。所かわって現在の東京。定年退職した父・旭(堺正章)と暮らしている娘の七波(田中麗奈)。ある日、父の行動を不審に思った七波は、親友の東子(中越典子)と父の後をつけるが、乗り込んだバスがたどり着いたのは広島だった・・・。

“いい映画だったな止まり。根本的に何かが足りない。。”

佐々部清という監督は、一貫して理想的な人間関係のもとにある心優しき人間ドラマを描きつづけていて、その作風はどこまでも爽やかかつ良心的、なおかつ昭和の良き時代の家族観と温かさ、懐かしさを共有しているという点では山田洋次の系譜に連なる作り手さんだと思う。

しかし、今回はその持てる特徴がアダになってしまった感が強いのではないかと思う。

こうの史代の原作を素直なほど忠実に映像化しているのは認めるが、翻っていえば100P足らずの物語をトレースすることは誰にでもできることだ。

問題は、原作でこうの史代が描く温かく優しい街並みや笑顔の絶えない人々、その表面と上っ面だけをバカ正直にトレースしてしまったことであり、その裏にある決して癒されない悲しみ、決して終わることのない憎しみと怒り、決して消えることのない記憶、つまりは広島が「ヒロシマ」になってしまった原爆という毒がすっぽり抜け落ちているのだ。

たった1発の爆弾、たった一瞬の閃光が60年間3世代にわたり刻みつける負の遺産、その重みと痛みがこの映画からは伝わってきにくい・・・。

原作を読み終わったときの読後感は、かなり精神的にズシリとくるものがあり、なんて哀しいマンガなんだと思ったものだが、この映画を見終わると、いい映画だったな止まりで終わっちゃうんだよね。

そういう意味ではかなりガッカリしたかも。。。

マンガと映画、どっちを薦めるかといったら、100%マンガの方をすすめるな。

記憶が歴史というものを形づくるとするならば、この記憶を決して風化させてはならない、決して忘れてはならない。

今も続く物語・・・。

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ひろしま(1953年・日本・104分)WOWOW

 監督:関川秀雄

 出演:岡田英次、原保美、加藤嘉、山田五十鈴、月丘夢路

 内容:昭和28年夏の広島。高校教師北川が受け持つクラスで、授業中に女子生徒が鼻血を出して倒れた。それは原爆の放射能による白血病が原因で、このクラスでは生徒の3分の1が被爆者だった。8年前のあの日、彼らが見たもの体験したこととは・・・。8万人を超す広島市民がエキストラとして参加し、原爆投下直後の広島を再現。ベルリン国際映画祭で長編劇映画賞を受賞。しかし、大手配給元がGHQに忖度して反米的な描写シーンのカットを製作側に要求するも折り合わず、一般公開が中止になったことで、長らく日の目をみることがなかった幻の作品。

評価★★★★☆/85点

原爆を扱った映画というと真っ先に思い浮かぶのが今村昌平監督の「黒い雨」とアニメ映画「はだしのゲン」で、小学生時分に見たこともあってトラウマともいうべき強烈な映画体験として記憶に刻まれている。

あれから約30年、最近ではヒロシマ・ナガサキの映画をとんと見なくなってしまったのだけど、まさか60年以上前に製作され、一般公開されることなくお蔵入りになっていた原爆の映画があったとは驚きだったし、なにより今回初めて見て、その凄絶すぎる映像に衝撃を受けた。

特に原爆投下直後の広島の惨状を映し出した30分以上のシーンは今まで見た原爆映画の中で最も生々しく直視に堪えないものだった。

3ヘクタールのオープンセットを作り80棟に及ぶ家屋や電車を燃やし、黒焦げに焼き尽くされガレキに埋まる街の様子を映像化したそうで、使われたガレキは原爆で生じた実物だったそうだ。

しかし、なによりこの地獄絵図が真に迫り心に突き刺さるのは、阿鼻叫喚の修羅場を彷徨する群衆を演じているのが一般市民のエキストラで、その中には実際の被爆者も多くいたということで、原爆の恐ろしさや被爆の苦しみ、その一人一人の思いや声が画面から圧倒されんばかりに伝わってくることにある。

しかもこれが原爆投下からたった8年後に地元で作られたというのが凄いところで、それこそ戦争と天災の違いはあれど東日本大震災での惨状をここまで克明に描けるかと考えると、今回の映画のもの凄さはある意味常軌を逸しているとまで言えると思う。

しかし、それが政治的圧力で未公開になってしまったというのは本当に悲劇としか言いようがないけど、記憶をつなぎ語り継ぐという意味で全ての日本人そして世界中の人々に目をそらすことなく見てもらいたい映画だ。そういう普遍性を持ったかけがえのない作品だと思う。

P.S. 宮島のおみやげ屋さんでピカドン土産として原爆で亡くなった人々の頭蓋骨(一応セリフではレプリカに決まってるだろうと言っていたが・・)が売られていたり、その後のシーンで戦災孤児が掘り出した本物の頭蓋骨を米兵に売ろうとするシーンがあったけど、これって実話だそう・・。

他にも墨汁のような黒い雨や、被爆直後の灼熱地獄から逃れるために飛び込んだ川で女学生たちが「君が代」を歌うところなど本当に脳裏に焼き付くようなシーンの連続する映画だった。

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鏡の女たち(2002年・日本・129分)NHK-BS

 監督・脚本:吉田喜重

 出演:岡田茉莉子、田中好子、一色紗英、山本未來、室田日出男

 内容:東京郊外に住む川瀬愛(岡田茉莉子)。以前は亡き夫と娘・美和の3人で暮らしていたが、美和は娘の夏来を産むと、母子手帳だけを持って失踪した。それから24年後、その母子手帳を持った女性が見つかるが、その女性は尾上正子と名乗る記憶喪失者(田中好子)だった。実の娘か確信を持てない愛は、アメリカに住む夏来(一色紗英)を呼び寄せる。やがて、正子の記憶の断片は、3人を愛が美和を産んだ地、広島へと向かわせる・・・。

評価★★☆/50点

割れた鏡、抑揚のない語り口、泳がない視線、微動だにしないカメラ・・・。

様々なメタファーが込められているとは思いつつ、まるで能でも見せられているかのような様式美に彩られたつくりは、はっきりいって不気味以外の何ものでもない。

能面の下に覆い隠された、一瞬の閃光で焼きつくされたヒロシマの亡霊。

かがみ合わせのように表裏一体となったあの世とこの世、その死の世界に向かって開かれた窓である鏡が割れているというのは、両者の間に決定的な欠落があるということだろうか。

すなわち、生者は死者について語ることはできない、ヒロシマの真実を語ることはできないのだと。それをアイデンティティを喪失した女性たちを通して描き出そうとしたのかもしれない。

しかし、逆説的にいうならば、この映画には決定的にヒロシマというものが欠落しているともいえ、個人的には理解に苦しむ難しい映画だったというのが正直なところ・・・。

でも、語りつくせないからこそ、我々は絶えず原爆について語り継ぎ語りつくそうと努力しなければならないのかもしれない。

忘却の彼方に決して置き忘れてはならないために・・・。

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TOMORROW 明日(1988年・日本・105分)NHK-BS

 監督・脚本:黒木和雄

 出演:桃井かおり、南果歩、仙道敦子、黒田アーサー、佐野史郎、原田芳雄

 内容:昭和20年8月8日の長崎。結婚式が執り行われていたある家では、肺病で兵役を免除された花婿と看護婦の花嫁を、両家の家族が祝福していた。花嫁の姉は臨月のお腹を抱え、花婿の友人は戦場で捕虜を見殺しにしたことを悔やみ、花嫁の妹は召集令状を手にうろたえる恋人を慰める。やがて姉が産気づき、難産の末、明け方に小さな命が誕生した。そして8月9日・・・。

評価★★★☆/70点

「どうやって子供はできるの?」という少年の問いかけに対し、「こうやってできるんだよ」というのを丹念に綴った夏の一日、、、1945年8月8日。

少年は性に目覚め、乙女は恋に恋焦がれ、花嫁は花婿と結婚式をあげ、女は男と結ばれ、子供を出産し、女は母になり男は父になる。

「アメリ」(2001)で、アメリが「今この瞬間に愛を交わし合い絶頂を迎えているカップルはどのくらいいるんだろう・・」と想像するシーンがあるけど、そうやって日々生命は紡がれ、次の世代につながっていく。

そうやって家族というものはできていくのだ。

「どうやって子供はできるの?」「こうやってできるんだよ」

その日常が、一瞬で霧のごとく消されてしまうラストの衝撃はあまりにも重い。

連綿とつながれてきた彼らの生の営みがブツリと断絶されてしまうことが最初から予定調和として分かっている映画、、、それをはたして映画と呼んでいいのだろうか。

いや、そんな映画があっていいはずがない。こんな恐ろしい映画があっていいはずがない。

彼らに明日が来ないことをはじめから知っている映画なんて・・・。

と同時に核兵器の恐ろしさをこれほど如実に描き出した映画もないこともまたたしかなのだ。

閃光が走る直前に映し出される路地裏で遊ぶ子供たちの楽しそうな姿が目に焼きついて離れない。

2016年10月16日 (日)

夢のシネマパラダイス364番シアター:犯人は、まだそこにいる。

64-ロクヨン-前編/後編

A0163972_8525372出演:佐藤浩市、綾野剛、榮倉奈々、夏川結衣、窪田正孝、鶴田真由、芳根京子、瑛太、椎名桔平、滝藤賢一、奥田瑛二、仲村トオル、吉岡秀隆、緒形直人、永瀬正敏、三浦友和

監督・脚本:瀬々敬久

(前編2016年・東宝・121分/後編2016年・東宝・119分)WOWOW

内容:昭和64年1月3日に発生した少女誘拐殺人事件。三上刑事(佐藤浩市)らが捜査にあたる中、1月7日に昭和が幕を閉じる。そしてロクヨンと隠語で呼ばれるその事件も未解決のまま時が経った平成14年。刑事部から警務部広報官に異動になった三上は、ある交通事故の報道方針をめぐる記者クラブとの対応で県警との板挟みにあい、神経をすり減らしていく。そんな中、ロクヨンの時効を1年後に控え、警察庁長官が被害者家族の雨宮(永瀬正敏)と面会する話が持ち上がる。三上は14年ぶりに雨宮のもとを訪ねるが・・・。

評価★★★★/80点

原作未読。NHKドラマ視聴済。

「八日目の蝉」といい「紙の月」といいNHKドラマが映画をしのぐハイクオリティだったため、今回もどうなんだろうと思ったら、やっぱりTVドラマの方が見応えがあった。

もちろん尺の違いはあるんだけど、地方の閉塞感の中で蠢く様々な感情や葛藤が澱のように沈み溜まっていく陰うつな質感や、ノイズの気色悪い響きが重苦しさを喚起する劇伴などTVドラマの方が印象的だったし、主人公三上も受け身な中間管理職オジさんの悲哀をよく表していたという点でドラマ版のピエール瀧の方がハマっていたと思う。佐藤浩市はやっぱカッコ良すぎなんだよねw

でもまぁ、映画の方も豪華すぎるオールスターキャストの演技合戦は十分見応えがあったし、前後編に分けてボリューム感を出した気概は買いたい。

ただ、唯一どっちらけだったのが、ヘリウムガスが切れてなんとか地声を隠そうと頑張る吉岡秀隆の声つぶし演技。もうコントでしょあれ・・

あと、ひとつ消化不良だったのが、後編で雨宮(永瀬正敏)が目崎(緒形直人)の次女を車に乗せて家まで送る時に雨宮が号泣するシーンが唐突に出てくるんだけど、常識的に考えて小さい女の子がそんな簡単に知らない男の車に乗るかなぁ(雨宮翔子ちゃんは目崎の車に乗っちゃったわけだけど・・)という疑問があって、もしかして当初雨宮は誘拐しようとしたのか!?とも勘繰りたくなったけど、何の状況描写もなかったので、そこは見終わった後も引っかかった。

あと、TVドラマでは目崎の逮捕を匂わせるところで終わるものの、映画の方は目崎逮捕のために三上がとんでもない行動に打って出て目的を果たすものの警察を追われることを匂わせるところで終わるという違いがあって、随分と突っ走ったものだなぁと驚いたけど、これはこれで悪くない着地点だなとは思った。

結局最後に言いたいこと。今後はNHKドラマより映画の方を先に見ることにします(笑)。

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予告犯

142642565665371468179出演:生田斗真、戸田恵梨香、鈴木亮平、濱田岳、窪田正孝、小松菜奈、小日向文世、滝藤賢一、荒川良々

監督:中村義洋

(2015年・東宝・119分)WOWOW

内容:ある日、新聞紙製の頭巾をかぶった男が、集団食中毒を起こした食品加工会社に制裁を加えるとする予告動画がネットに投稿され、翌日実際に会社の工場が放火された。その後も、“シンブンシ”と名付けられた男は、世の中の不正義に対してネットで私刑を予告し次々に実行していく。一方、警視庁サイバー犯罪対策課の捜査官・吉野絵里香は、男の正体を探ろうと捜査を続けるが・・・。

評価★★★/65点

日本文化礼賛番組が幅を利かせる一方、「腎臓を売ってまで来たかった国がこんなザマでごめん」というセリフを真と受け取らざるを得ない現実、そして自分の境遇を社会のせいにするなんて卑怯だという詰問に対し「あなたには分からない」と言い放つ格差社会の諦念が胸に迫る。

この頑張っても報われない時代が生み出した勝ち組と負け組の断絶はよく描けていたと思うし、予告犯と警察との攻防戦も見ごたえがある。

ただ一方、どこかでこの映画に一抹の違和感を拭えなかったのもたしかで、それはネットの動画配信で法で裁けない悪をさらし者にして成敗するシンブンシの行為に、痛快さよりもイスラム国の残虐動画を連想させる怖さを感じ取ったからだ。

しかもこれを正当化するのに情緒話に落として風呂敷を畳もうとするのも少し気持ち悪くて興ざめしたし、犯人目線で描いているだけに死をもって解決するというのがなおさら後味が悪くてすっきりしなかったなと。

まぁ、共感できそうでできないというか、共感したくない自分がいるというか・・。そういう意味では戸田恵梨香の女刑事の方に6:4で肩入れしたいんだけどねw

現代版「天国と地獄」にはなりえなかったな・・・。

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犯人に告ぐ

Xnqrhdllga 出演:豊川悦司、石橋凌、小澤征悦、笹野高史、片岡礼子、井川遥

監督:瀧本智行

(2007年・日本・117分)WOWOW

評価★★★/65点

内容:6年前、自ら指揮を執っていた誘拐事件でミスを犯し、人質の少年を殺された責任を取らされ左遷された神奈川県警警視・巻島は、川崎市内で起きた連続児童殺人事件の捜査責任者として本部に呼び戻された。そして生放送のニュース番組に出演した巻島は、BADMANと名乗る犯人に直接語り始め、犯人を挑発。ここに劇場型捜査の幕が切って落とされた・・・。

“今夜は震えて眠れ!”

かっちょええーー!!スィ、スィびれますた。。

このセリフ聞いただけでも、これ見た甲斐はあったかんじだけど、映画としてはバカ正直なまでにご丁寧なつくりで、映画的な躍動に乏しい面はあったかな、と。

また、プロローグの6年前の誘拐事件の捜査でナンパ男を犯人と間違えてしまうところで、あんなオバハンをナンパする奴なんているのか?という点・・。

過去に会見で逆ギレした巻島(トヨエツ)が、左遷された足柄署から、テレビ慣れしているという理由で呼び戻されるというのもフツーありえるのか?という点・・。

また、同級生のニュースキャスター杉村(片岡礼子)の胸元を見てとち狂った植草(小澤征悦)の暴走ぶりや、ラスト近くでトヨエツが刺されちゃうのも「踊る大捜査線」をもじったようで間が抜けるし、全体的にもうちょっと精査してもらいたいような出来ではあった。

ただその中で、トヨエツの刑事っぷりは見応えがあったし、あとは笹野高史が要所要所でイイ味出してるんだよねぇ。

そんなこんなでなんとか最後まで見れてしまったけど。まぁ、テレビで見る分にはちょうどいいかなというかんじかな。

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大誘拐 Rainbow Kids(1991年・東宝・120分)NHK-BS

 監督・脚本:岡本喜八

 出演:北林谷栄、緒形拳、風間トオル、西川弘志、樹木希林、嶋田久作

 内容:紀州一の大富豪・柳川とし子刀自がド素人3人組に誘拐された。ところが、刀自は犯人たちから自分の身代金が5千万円と聞くや、自分のプライドが許さないとブチギレ、身代金を100億と勝手に決めてしまう。てんやわんやの犯人たちに毅然とした態度で指図をしていく刀自。一方、和歌山県警本部長の井狩は、捜査に全力を注ぐが・・・。

評価★★★☆/70点

風間&内田&西川の大根役者っぷりが際立つ冒頭15分を見て思わず心が折れそうになったけど(笑)。。

しかし、彼ら誘拐犯のトーシロ同然のお粗末ぶりも、彼らを取り巻く緒形拳や樹木希林、天本英世、竜雷太といったプロの名役者たちで固めた脇役陣との対比が物語上うまくリンクしていて、そういう点では適材の配役だったのかも。

そしてそして忘れてはならない北林谷栄の素晴らしさ。

微笑ましく見ていられる可愛いお婆ちゃんの裏の顔にプロを手玉にとるしたたかさと、ダテに資産家やってるんじゃないのヨ!というプライド、そして子供たちをお国に持っていかれた戦禍を乗り越えてきた経験値を36キロの小さな身体に沸々とわき立たせるその姿はなんとも凛々しく、痛快なオチもあいまって印象的だった。

しかし、、場になじまない音楽だけはダサくて気になったなw。

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模倣犯(2002年・東宝・123分)日劇2

 監督:森田芳光

 出演:中居正広、藤井隆、津田寛治、木村佳乃、山崎努、伊東美咲

 内容:東京の下町で豆腐屋を営む有馬義男。20歳になる孫娘・古川鞠子が失踪してから10ヶ月、事件は何の進展も見せていなかった。が、そんなある日、下町の公園のゴミ箱から女性の右腕とショルダーバッグが発見される。そして、それを報じるワイドショーの生放送中に犯人からの電話が入り、一連の女性誘拐殺人の犯行声明を告げるのだった・・・。

評価★★/40点

山崎努以外オーバーアクションにしか見えない役者陣にはなんら落ち度はない。脚本もつとめた監督にこそ難があるのは一目瞭然。

特に犯人が説明セリフで逐次報告してくれる映画ほどツマラナイものはないわけで、小説と映画は別物とはいうけど、登場人物の心の機微を子細に描いていく宮部原作をここまでシュールに換骨奪胎してしまう森田演出が自分には全く合わなかった・・・。

だって犯人が遺体を埋めるために闇夜に山中で土を掘っているところをわざわざ下から見上げるアングルで撮って、その上空の星空にこれ見よがしに流れ星がいくつも流れていくなんて、もうドン引きするしかないでしょ(笑)。

食べ物が全然美味しそうに見えない食事風景も含め、何かしらの演出意図があったのだろうけど、それを知ったとしてもダメだなこれは。。

映画化するのが10年早かった気がする・・w

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レディ・ジョーカー(2004年・東映・121分)DVD

 監督:平山秀幸

 出演:渡哲也、徳重聡、吉川晃司、國村隼、大杉漣

 内容:新製品発売を1週間後に控えたビール業界最大手の日之出ビール社長・城山恭介が“レディ・ジョーカー”と名乗る5人の犯行グループによって誘拐された。その5人とは、小さな町薬局の老店主、元自衛官のトラック運転手、信用金庫の職員、町工場の若い旋盤工、ノンキャリア刑事。彼らは競馬場で知り合い、それぞれ異なった理由で犯行に至った。しかし、誘拐の2日後、捜査陣が事件解決へ動き出す中、犯人側が突然城山を解放する・・・。

評価★★/40点

NHKの土曜ドラマでじっくり見たいなぁ、、ってかんじ。。

2016年3月 5日 (土)

夢のシネマパラダイス587番シアター:紙の月

紙の月

Poster2出演:宮沢りえ、池松壮亮、大島優子、小林聡美、田辺誠一、近藤芳正、石橋蓮司

監督:吉田大八

(2014年・松竹・126分)WOWOW

内容:バブル崩壊直後の1994年。銀行の契約社員として働く梅澤梨花は、地味だが顧客の信頼も得ていて上司の評価も高い。しかし家庭では、エリート商社マンの夫の冷めた態度に空しさを抱き始めていた。そんなある日、彼女は資産家の顧客の孫で大学生の平林光太と出会い恋に落ちる。そして、光太に多額の借金があることを知った彼女は銀行のお金に手をつけて渡してしまう。それをきっかけにあの手この手で着服を繰り返していくのだが・・・。

評価★★★/65点

原作未読。NHKドラマ視聴済。

テレビドラマの方が映画1本分尺が長く、にもかかわらず大金横領(ドラマでは計1億円)に走る主人公・梅澤梨花の行動原理と心情が最後までなかなか理解できずじまいだったので、映画はそれをどう凝縮して描くのか興味津々だったのだけど、文字通り映画1本分、だと何もなくなっちゃうのでw、ドラマ2話分底が浅かったかんじw

体裁としては、妻を人形みたいにただ家にいればいい存在としか見ていない夫の悪意なき無関心が生み出すモラハラにより、自分の存在証明を喪失した妻が若い男に走って愛のない孤独感を埋めるというのが入口になっていて、そこは定番としてありがちなんだけど、問題はその先。

恋におぼれて男に貢ぐために大金を横領し続ける単純な話かと思いきや、それは表の顔にすぎないことがあらわになってくる。要は、お金があればあるだけ違う自分になれて誰かに必要とされ愛される何者かになれる、つまりお金によってもたらされる万能感におぼれて自分ではない自分を演じ続けるために大金を横領し続けていたというのが本当の顔だったのだ。

高級セレブを装った目で世の中を見ると、みんな笑顔で親切で、そこには悪意も無自覚も乱暴も軽べつもなく、ふわふわとした善意に包まれ、世の中が柔らかく見えるのだと。

しかし、これは普通ならば金持ちの優越感で片付けられるところなのだけど、梅澤梨花にとっての“違う自分になる”本質はそこにはなくて、問題はさらにその先にあるところがやっかいこの上なく・・・(笑)。なぜなら彼女はいいとこのお嬢さま育ちで、旦那もカルティエの時計をさらっと買ってこれるような高級取りで何ひとつ不自由のない暮らしをしてきたはずだからだ。

では彼女の違う自分になる本質は何なのか。そこでヒントになるのが彼女がミッション系スクールに通っていた少女時代のエピソードにさかのぼる。

外国の恵まれない子供への募金活動がクラスで先細りになっていった時に、彼女が父親の財布から5万円を抜き取って募金箱に入れて、それがバレて募金活動が中止に追い込まれてしまうが、しかし彼女は悪びれるどころか恵まれない子供のためになるのであれば別にいいではないかと開き直る。

この意味するところは、要するに最終的に本当にお金を必要とする人にお金が渡ればお金の出どころや途中の流れや手段はどうであろうと関係ないということであり、その底流にあるのは、お金はただの紙切れにすぎないのだからモラルや信用に縛られるのはバカバカしいという考え方だ。

これは高級化粧品を買う時に持ち合わせのお金が足りなくて、あとでATMで下ろせばいいやということで預かった顧客のお金で立て替えてしまったり、交際相手の大学生が学費の借金があることが分かった時に学費補助を出し渋る祖父は親族だから別にいいじゃんということで簡単に横領してその大学生に渡してしまうことにつながっている。

そしてその上で最も彼女をつき動かしている“違う自分になる”本質というのは、貧しい弱者にお金を恵んであげることができるほどの高みにいる自分が1番幸せという欲求なのだ。

この純粋な善意と虚栄心、また拝金主義をバカにしながらも誰よりもお金に依存しているという大きな矛盾をわけもなく両立させているところが彼女をつかみどころのない理解しがたい存在にしているのだと思う。

ただ、それでもテレビドラマは彼女の心の闇に説得力をもたせるだけの小さな要素の積み重ねを描くことで正義感と罪悪感の葛藤といった等身大のキャラクターに寄せていこうとしているのだけど、一方映画の方は、そういう心情をスルーして昼の顔と夜の顔をこともなげに使い分け横領をさらりとやってのける身軽さが前面に出ていて、より能動的な悪女感が強調されている。

そのファム・ファタールが颯爽と堕ちていく転落劇は2時間枠の中では一応の形を成しているものの、彼女が大学生と不倫関係になる過程の内面など端折りすぎで腑に落ちない点も多く、全体的に突き抜けた面白さはなかったかなぁ、と。。

テレビドラマの質量にかなわない中で、バレバレの手口で横領に手を染める動機に説得力をもたせるには、やはり少女時代の生い立ちにもっと焦点を当てるとかした方がよかったような気がするし、悪女感より透明感の方が勝っている宮沢りえのキャスティングもどうだったんだろうという気も・・・。

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夢売るふたり

20120606_yumeuru5_v出演:松たか子、阿部サダヲ、田中麗奈、鈴木砂羽、安藤玉恵、木村多江、倉科カナ、伊勢谷友介、香川照之、笑福亭鶴瓶

監督・脚本:西川美和

(2012年・日本・137分)WOWOW

内容:東京の片隅で小料理屋を営む貫也と妻の里子。ところが開店5周年の日に店が全焼してしまう。前向きな里子はパートに出ながら家計を支えるが、すっかりヤル気を失くした貫也は店の常連客と浮気してしまう始末。里子はそんな夫の浮気に怒りながらも、再び店を持つ夢をかなえるための資金集めに、夫を使って結婚詐欺をすることを思いつく・・・。

評価★★★/65点

この監督の撮る濡れ場はなんでこんなに生々しいんだろうというのが真っ先に思い浮かぶ感想だけど、それは置いといて、、いややっぱり置いとかなくてw、気だるい自慰行為とか生理用ショーツを履くシーンも含めてホント女性にしか描けない生々しさというのがあるんだけど、個人的には阿部サダヲが旦那だし、もっとライトなコメディ路線でいくのかと思っていた。

またそっちの方を期待していたので、ここまでシリアス路線だとはちょっと意外だったし、な~んかビミョー

というか、里子(松たか子)の複雑怪奇でおどろおどろしい女のサガや内面というのが、男の自分からするとなかなか掴めなくてイマイチ乗り切れなかったというかんじかな。

1番理解に苦しんだのが結婚詐欺に手を染めていくきっかけになった里子の内面描写だ。

貫也(阿部サダヲ)の一夜の過ちに対し何かタガが外れたような表情をするのだけども、これが貫也への復讐の決意なのか、それとも小料理屋を再建しさえすれば幸せな日々を取り戻すことができると考え、その資金を得るためなら何だってしてやるという開き直りなのか、いやそのどちらも真なのだろうけど、その時点ですでに旦那に見切りをつけてもいいはずなのになぜそこまで執着するのか、といったことがない交ぜになっていて、男の自分には何かこうストンと胸に落ちてこないのだ。

それが複雑怪奇な女のサガと呼ぶべきものなのだろうが、お金を手に入れてもまだ足りないとボヤく里子の心情とは一体どういうことなのか。いったい何をもって心を満たそうとしているのか、、分からなくて怖い(笑)。

いや、実はだんだん見ていくうちに、里子の本当のオンターゲットは貫也ではなく、結婚詐欺にハメる独身女性たちそのものだったのだということは分かってくるのだけども。。

要は、自分は幸せな結婚生活を送っていたはずなのに、という傷ついたステータスを修復するためのオンターゲットが結婚できない独身女性に対する優越感であり、そこから金を巻き上げることに快感を覚えていったということなのだろう。

さらにその際、旦那を駒にして自分の思い通りにコントロールする、端的には他の女と寝て金獲ってこいと命令することで旦那に復讐を果たし、しかもちゃんと自分の元に旦那が帰ってくることで傷ついた自尊心をも満たしてしまおうという魂胆だったのだろう。

当の旦那にとっては、浮気はバレないから浮気なのであって、妻から強制され報酬までもぎ取ってこなければならないというのはただの強制労働でしかないわけだ。

しかし、そんな彼女の思惑も最初は結婚というステータスが欲しくて欲しくてたまらないOL(田中麗奈)たちからまんまと金を巻き上げることで味をしめていくのだけど、次第に貫也が里子の手綱を放れて羽を伸ばし始めたことで、夫を支える良妻賢母という理想にどっぷり浸かっていた自分の生き方の空虚さに気づかされていく。

それを物語るシーンで最も強烈だったのが、ウエイトリフティングをしている女性アスリートを引っかける際に里子が貫也に「気の毒だから止めよっか」と言うシーン。

純真な彼女をダマすのは可哀想という意味なのかと思いきや、あんな図体のデカい女とSEXするのは不憫だろうという意味で、そんな最低発言を平気でかましてしまう里子にはさすがにドン引き

自分の足でしっかりと立ち自分の人生を歩いている独身女性たちと、自分の夢や生きる目的ひっくるめて全て旦那に任せて生きることを選んだ女の対比は、貫也に里子の方がよっぽど気の毒だと言わせしめるに至る。

そして、シングルマザーの女性が持ちうる団らんという最強の武器を前に、自分を保っていた優越感が崩れ去り、旦那への殺意へと変容していくのは当然の流れであった。

独身女性の孤独につけ込んでいたはずが逆に自分が孤独の中に落ちていく悲哀・・。

港でフォークリフトを操る里子の漆黒の闇を湛えた瞳は、他人の力ではなく自分の力で生きていくという凛とした決意に見えた。

とはいえ、後味はビミョーに悪いw

やはり里子の秘めた愛憎があまりにも屈折しすぎていて、自分の価値観とは決定的に相容れない一線をゆうに踏み越えていってしまう彼女を理解できない自分がいる。

まぁ、でも最低なのはやっぱ旦那なんだけどねww

夢のシネマパラダイス175番シアター:生涯モラトリアム宣言

もらとりあむタマ子

Poster2出演:前田敦子、康すおん、伊東清矢、鈴木慶一、中村久美、富田靖子

監督:山下敦弘

(2013年・日本・78分)WOWOW

内容:東京の大学を卒業したものの就職もせず、スポーツ用品店を営む父親が一人で暮らす甲府の実家へ戻ってきたタマ子。店を手伝うわけでもなく、家事も父親任せで、漫画を読んだりしてただゴロゴロと過ごす日々を送っていた。そんな中、父親にアクセサリー教室の講師との再婚話が持ち上がり・・・。

評価★★★★/80点

天下のAKBでセンターを務めたスーパーアイドルが劇中ではアイドル志望のぐうたらニートを演じるというのは大きなチャレンジだったと思う。

ところが、履歴書用の写真を見て父親がププッと吹き出してしまうシーンで、実際そのアイドルっぽいブリッ子な写真を見るとたしかに笑わずにはいられなくて

この写真一枚でアイドルから女優に脱皮したといっていい(笑)。それくらい、前田敦子の性格ブスなタマ子はハマっていた。

また、20代の頃に延べ2年プータローを経験し、30代となった今は職を得てはいるものの相変わらずパラサイトシングルと化している自分にとってはタマ子のモラトリアムな生活はかなり身に覚えのあることで・・はっきりいって面白かったww

ただ、三十路ともなると、年頃の娘と暮らす男やもめの心持ちもよく分かり、そんな2人の絶妙な距離感というのがよく描けていたと思う。

その距離感というのは、減らず口は一丁前でも少なくとも今は動きたくないと父親に甘えっぱなしの娘と、それに苛立ちながらも本音では可愛い子には旅をさせたくない父親の共犯関係ともいえる。

しかし、実は最も敏感にその相互依存に気付いているタマ子。季節を追うごとにモラトリアムの居心地の良さを侵食してくる包囲網が狭まっていき、ラストで「夏終わったら家を出てけ」という父親の一言に「合格」と答えるやり取りはこれまた絶妙だった。

やっぱ親にも突き放す勇気がないとダメなのかもしれないけど、なかなか言える言葉じゃないよねぇ。

そういえば自分の大好きなTVドラマ「北の国から帰郷編」で、東京から帰省してきた純が父・五郎にこのまま富良野に残って父さんと一緒に居ていいかと訊くとそれを断る名シーンを思い出したw

ま、、自分のこと考えると笑えなくなっちゃうけどね

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百円の恋

Poster2出演:安藤サクラ、新井浩文、稲川実代子、早織、宇野祥平、根岸季衣

監督:武正晴

(2014年・日本・113分)WOWOW

内容:実家にひきこもり、仕事もせずダラダラと過ごす32歳の一子。ある日、離婚して子連れで実家に戻ってきた妹とケンカしたことがきっかけで、アパートで一人暮らしをするハメに。仕方なく100円コンビニで深夜のバイトを始めるが、人付き合いが苦手で接客なんてやる気なし。そんな中、近所のボクシングジムで練習に励む中年ボクサーの狩野と知り合い、デートに誘われるという珍事に見舞われるのだが・・・。

評価★★★☆/70点

実家でスナック菓子をボリボリ頬張りながらぐうたらしている三十路の独身ニート女、、おそらく世の中で1番イタイ人種であると同時に映画の主人公に1番なりづらいキャラクターではないだろうか。

さらにそこにボクシングときたらもう南海キャンディーズのしずちゃんくらいしか思い浮かばないんだけどw、安心してください、ここにいますよ!安藤サクラが!

最近の女優で役のためなら太ることもいとわないデニーロアプローチをするほどの演技派は「そこのみにて光り輝く」の池脇千鶴くらいしか思い浮かばないけど、今回の安藤サクラの女優魂にはほとほと感服した。

「モンスター」のシャーリーズ・セロンと「ミリオンダラー・ベイビー」のヒラリー・スワンクを一人で演じきってしまったような凄さといっても過言ではないだろう。

最初見た時は安藤サクラと気付かないくらいでっぷりとしたオバハン体型に仰天したけど、そこからシャープなボクサー体型に変貌をとげるのだから恐れ入る。しかも撮影期間がたったの2週間って、ライザップでも無理だろ(笑)。

また、ボクシングシーンも凄いのなんの。聞くところによると朝の6時から深夜2時半までぶっ通しで撮影してたらしく、極限の向こう側にイッた妥協のなさに圧倒された。

負け犬が一念発起して立ち上がるというありきたりなストーリーを安藤サクラの身ひとつで説得力をもたせてしまう、、この映画を見て役者の力量がストーリーを転がしていくという意味をあらためて再認識した気がする。

安藤サクラ。

ガチの女優である。

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横道世之介

8bf053b7出演:高良健吾、吉高由里子、池松壮亮、伊藤歩、綾野剛、井浦新、國村隼、きたろう、余貴美子

監督・脚本:沖田修一

(2012年・日本・160分)WOWOW

内容:1987年。長崎から大学進学で上京してきた横道世之介(高良健吾)。あか抜けないお人好しの世之介は、嫌みのない図々しさが人を吸い寄せ入学式早々から友達ができる。一方、年上の女性・片瀬千春(伊藤歩)に片思いをするも、お嬢様の与謝野祥子(吉高由里子)から猛烈アタックをかけられたりと大学生活を満喫していたが・・・。

評価★★★★/75点

不思議な映画だ。

160分間大きな山場も感動もないにもかかわらず、最後まで心地よく見られ、しかも160分という大長編を見た疲労感もなく後味も爽やかなのだ。

これは一体何なのか、見終わったあともよく分からないけど、なにかこう全体的にNHKの朝ドラの味わいに似た安心感はあったかな。それはドラマに無鉄砲なドタバタや非日常的な逸脱を排し、あくまで日常に寄り添った作劇の安心感といえばいいだろうか。

例えば、サンバサークルが牧場で合宿する一見シュールな場面であっても、ジャージ姿というアイテムが日常あるあるに落とし込み豊かなユーモアにしてしまう。

そういう巧さがこの映画にはあると思う。

そしてなにより人の懐に土足で踏み込んでくるKY男でありながら、他人の頼み事ははなっから受け入れる根っからのお人好しという世之介の天然キャラが良い。

鬱陶しさが優しさや真面目さと両立されているため、かえって共感を呼ぶ不思議な魅力に引き込まれてしまったし、さらなる天然ぶりを発揮する吉高お嬢さまとの相性もバツグンで、とにかく見ていて楽しい。

まさか楽しいなんていう感想をこの映画に抱くとは思いもよらなかったけど、世之介の屈託のない笑顔が過去のものだと分かる中盤以降はせつなさも加わって、より心に残る映画になっていたと思う。

この映画を見て、なにか特別な出来事とかではなく、長い時を経てふと甦ってくる懐かしい日々の思い出の中に登場することが、自分の生きた証なんだなぁと感じて、なんかちょっと楽になったw

いや、別に人の心に残る生き方をしようなんてこれっぽちも思ってないけど、あるひと時を一緒に過ごしていくであろう仲間たちとの何気ない日常こそ大切なんだなぁって。だからこの映画を見ていて楽しかったんだと思う。

忘れた頃にまた横道世之介に会いにこよっかな

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百万円と苦虫女

100man出演:蒼井優、森山未來、ピエール瀧、竹財輝之助、齋藤隆成、笹野高史、佐々木すみ江

監督・脚本:タナダユキ

(2008年・日活・121分)NHK-BS

内容:短大を卒業したものの、アルバイト生活を送る21歳の鈴子(蒼井優)。ひょんなことから警察沙汰を起こしてしまった彼女は、受験中の弟に前科者扱いされ、勢いあまって百万円貯まったら家を出て行く!と宣言する。そして百万円が貯まると、宣言通り実家を後にして、誰も知らない土地へと旅立つ鈴子だったが・・・。

評価★★★★/75点

三十路で独身で実家暮らしで低収入の典型的パラサイトチルドレンの自分は、自分のことを誰も知らない土地で暮らしてみたいと思うことが少なからずある。自分の所在をなくしてしまいたいという願望だ。

それは18で地元から都会に出て10年もたずに舞い戻ってきてしまった自分の場合、いつまでたっても結婚も自立もできずに親に迷惑をかけ続けていることからくる所在のなさだ。家族、親せき、地元の目が精神衛生上の圧迫になっていることは否めない・・

一方、映画の主人公、鈴子は21歳。前途洋々の若さであるが、就職浪人中のフリーター生活を変えようと家を出ること自体オイラから言わせればすでに自立している(笑)。

しかもこの女、決定的にモテるのである。どこ行ってもモテまくるのであるww

他者とのつながりに思いやりを求めるよりも傷つくことの方を恐れている鈴子の冷め具合いは自分も含めた現代の若者世代に共通する感性だとはいえ、ここまでモテる女のコが人間関係を忌避して土地をさすらうというのは若干の無理がある。

また、そこで出てくるのが“前科”というキーワードになるのだけど、同居人の男の持ち物を全て捨てたというのは後ろめたい犯罪というよりは武勇伝という方がまっとうで、所在なさの根拠とするには弱い気がする。

要は全体的にリアリティがないのだ。

まぁ、友達とその彼氏と3人でルームシェアするというそもそものところからしてあり得ない話だけど。。

しかし、このリアリティのなさを蒼井優のぶっちぎりの存在感が吹き飛ばしていて、映画を最高に魅力あるものにしているのだから、やっぱり映画はやめられない。映画も自分にとってある意味現実逃避だけど・・・w

でも、ホントにこの映画見て蒼井優にゾッコン

床に大の字になって寝転がるところとか、キュートな外面とは裏腹にグチや毒を吐くところとか最高にイイ♪

良妻賢母ぶりが板につきすぎている宮崎あおいが聖母マリア化している一方、いまだに手の届きそうなところにいるフツーの女のコでいつづける蒼井優の良さに今さらながらに気付かされただけでもこの映画を見てヨカッタ×2(^^♪

今一番好きな女優は誰かと訊かれたら迷うことなく蒼井優と答えます!

あ゛ー、蒼井優みたいな人いないかなぁw

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パレード

52897d159a6db740790ccace4e77482e出演:藤原竜也、香里奈、貫地谷しほり、林遣都、小出恵介、キムラ緑子、正名僕蔵、石橋蓮司

監督・脚本:行定勲

(2010年・日本・118分)NHK-BS

内容:都内のマンションの一室。そこでは映画会社の宣伝マン・直輝(藤原竜也)、酒好きのイラストレーター・未来(香里奈)、先輩の彼女に恋をした大学生・良介(小出恵介)、若手人気俳優と極秘交際中の琴美(貫地谷しほり)の男女4人がルームシェアしていた。彼らの共同生活の基本理念は、居たければ居ていいし、居たくなくなったら出ていけばいいというチャットのようなもの。しかし、ある日そこに男娼のサトル(林遣都)が加わったことで彼らの穏やかな日常は微妙に歪み始めていく・・・。

評価★★★☆/70点

冒頭、マンションの一室の外からヘリコプター音がしているのを見て真っ先に思い浮かべた映画があった。

森田芳光監督の「家族ゲーム」だ。

あの映画では、同じく外でけたたましくヘリの音がしているにもかかわらず、そんなのお構いなく惰眠をむさぼる家族の姿が印象的だった。それは社会や他者に対する無関心のカリカチュアといえるけど、その“家族”すら“個人”にとって代わられた現在にあっては、マンションの一室は家族団らんの場ではなく、チャットや掲示板のような匿名空間と化してしまった。

孤独はイヤだけど干渉されたくない、干渉されるのはイヤだけど誰かとは繋がっていたい、イヤなら去ればいいし居たければ笑っていればいいという、なあなあで居心地が良いかわりに真実味のない上辺だけの付き合いの場。

しかし一方では、ヘリの音がすれば目を覚まして外をのぞき見るし、隣の住人が怪しいことをしていると思えば詮索してみたりと、自分たちのテリトリーの外には人一倍好奇心旺盛だったりする。

まさにその他大勢が跋扈する“世間”と仮装して仮面をかぶった彼らとは本質的には変わらないのだ。

しかもその自分たちのテリトリーであっても匿名と実名の狭間にあるという危ういバランスの中にある。しかし、彼らにとってはそれが予定調和の日常に安住するための強固な土台となっているのだ。

そこらへんのビミョーかつ絶妙な若者の距離感をこの映画は非常にうまく描き出していたと思う。

そして、仮装行列“パレード”に仮面を付けずに闖入してきた男娼のサトルによって彼らの匿名性が徐々に引きはがされていき、ついには直輝が仮面を取っ払おうとしてそのバランスが崩壊するのかと思いきや、「それでも今まで通り仮装行列を続けていくよね?分かってんだろKY男!」というラストの同居人たちの刺すような冷めた視線は強烈だった。

赤信号みんなで渡れば怖くない的な、ゆるそうに見えて実はスゴイ窮屈な運命共同体だったのか。

自分含めて現代人がストレス溜まりまくりなのも道理なわけだ・・

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ばしゃ馬さんとビッグマウス(2013年・東映・119分)WOWOW

 監督・脚本:吉田恵輔

 出演:麻生久美子、安田章大、岡田義徳、山田真歩、秋野暢子、松金よね子、井上順

 内容:学生時代から脚本家を目指すも一向に芽の出る気配のない34歳の馬淵みち代(麻生久美子)は、友人を誘ってシナリオスクールへ通うことに。するとそこで、超自信過剰な28歳の自称天才脚本家・天童義美(安田章大)と出会う。ものの見事に対照的な2人だったが、天童はばしゃ馬のように頑張り続ける馬淵に一目惚れ。対する馬淵は、口先だけの天童を毛嫌いしていたが・・・。

評価★★★☆/70点

この映画のシナリオがコンクールの1次予選を通過するとはとても思えないんだけどw、何気ない日常をイタイ笑いに切り取っていく描写力はグランプリ級!

ちょっとした会話の間や表情、雰囲気など微妙なニュアンスを的確につかみ取るさりげない演出を一貫して持続できる才はなかなかのもので、なにより役者のオーラを消し去る容赦のなさは唯一無二。

それにより、自分は特別な何かなのだと頑なに信じ込む何ものでもない者のどんぐりの背比べと傷の舐め合いに生々しいリアリティが生み出されている。

そして、ばしゃ馬さん(麻生久美子)とビッグマウス(安田章大)のこじらせぶりのいたたまれなさがどこか身に覚えのある自分に跳ね返ってきて、見ていて笑えるんだけど切なくてツラくなってくるんだよね・・・。

でも、この映画の教えてくれる教訓は、自分をさらけ出さないと夢をあきらめることを肯定して真に前に進んでいくことはできないってことなのだろうけど、誰に吐き出すでもなく人知れずフェードアウトしていった自分はあの2人に比べたらよっぽどカッコ悪いよなぁ、、と身につまされていくのは自分だったというオチ・・

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中学生円山(2013年・東映・119分)WOWOW

 監督・脚本:宮藤官九郎

 出演:草彅剛、平岡拓真、鍋本凪々美、刈谷友衣子、YOU、ヤン・イクチュン、坂井真紀、仲村トオル

 内容:妄想癖のある中2の円山克也は両親と妹と団地住まい。今日も頭の中はエロい妄想でいっぱいの克也は前々から“エッチなあること”を成就するために日夜柔軟体操に励んでいる。そんなある日、仕事はせずベビーカーを押しながら団地をうろつく謎めいたシングルファーザーの下井が上階に引っ越してくる。そしてほどなくして、団地で殺人事件が発生。克也は下井が犯人ではないかとの妄想に取り憑かれていくのだが・・・。

評価★★★/60点

神が人間に与えたもうたオマケみたいな力=妄想を人並み以上に持ち合わせている自負はあるものの、あのような目的の屈伸運動にいそしんだこともなければ試してみたいと思ったことすらない自分としては(笑)、この中2のガキに共感しうるところはあまりなかった。

まぁようするにプロットの1つ1つがツマラなかったといえばそれまでだけど、悪ノリと悪ふざけと映画的でたらめさだけで出来ているかんじでイマイチ乗り切れなかった。

唯一、「息もできない」のヤン・イクチュンが出てくる韓流くずれネタはウケたw、、ってそれもちょっと悲しいな。。

うーん、、クドカンの映画畑でのクリエイティブな仕事はもう底が見えたかなぁ・・。小ネタの天才であることは疑う余地はないけど、映画という枠内で大きな物語を描くことにかけては凡庸なのだということで、やっぱこの人は舞台とテレビの人なんだと思う。

あまちゃんでクドカンワールドに初めて触れた年配の人はこれ見て卒倒するだろうなww

2015年10月21日 (水)

夢のシネマパラダイス222番シアター:ウソは生き抜くための芸術品!?

ユージュアル・サスぺクツ

Pya03_2出演:ガブリエル・バーン、ケヴィン・スペイシー、スティーヴン・ボールドウィン、チャズ・パルミンテリ、ケヴィン・ポラック、ピート・ポスルスウェイト、ベニチオ・デル・トロ

監督:ブライアン・シンガー

(1995年・アメリカ・105分)

評価★★★★★/100点

内容:コカイン密輸事件の陰で集められた5人の犯罪者たちと、それを追う捜査官の姿を描いたクライム・ミステリー。ある夜、コカイン取引き現場の貨物船が大爆発し、27人が死亡、大量のコカインと9100万ドルが消えるという事件が起きた。捜査官のクイヤンは、現場でただ1人生き残ったヴァーバルを尋問。ヴァーバルは、事件の黒幕が伝説のギャング、カイザー・ソゼで、彼が襲撃の実行犯として5人の犯罪者を集めたと語り始める・・・。

“映画を観つづけていく指標”

映画が好きになる端緒になったのが「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や「インディ・ジョーンズ」であるとすれば、週1必ずレンタル屋に行くルーティンワークを定着させるきっかけになったのが「ゴッドファーザー」(1972)と「スティング」(1973)だ。

そして映画なしでは生きられない体質にさせてしまった映画が、この「ユージュアル・サスペクツ」なのだ。

当時高校生だった自分は、この映画を観終わるやいなや親や友達、恋人にあたりかまわず薦めて、一緒に観て驚愕のラストの反応を脇で眺め、そうだろそうだろスゲェだろと一人ニヤケていたのを今でも覚えている(笑)。

とにかく誰かにこの興奮を伝えたくて伝えたくてタマらなくなった最初の映画でもあったわけで、間違いなく自分の中で殿堂入りしている映画といっていい。

二転三転するプロット、ドッヒェーと驚くどんでん返しのラスト、そしてそれとともにドミノ倒しのごとくそれまでの伏線や暗示が一気に答えにつながるカタルシスと快感を味わえるという点では、「スティング」の系譜に連なる映画といえるけど、この「ユージュアル・サスペクツ」が映画史に残る1回限りの大ウソにダマされる快感であるとすれば、ちょうど同時期に公開された「セブン」では、あまりにも理不尽な絶望のラストが同じケヴィン・スペイシーによってもたらされることになる。

さらに「ゲーム」(1997)における全く先の読めない展開と、開いた口がふさがらなかった幸福のどんでん返し、そして「シックス・センス」(1999)のトンでもない秘密と系譜は続いていくわけだけど、「ユージュアル・サスペクツ」ほど純粋にダマされた、シマッタァァ、、と思った作品はない。

たぶんこういう映画にまた出会いたいがために、自分はこれからも映画を観つづけていくのだと思う。

カイザー・ソゼに再び出会うために・・・。

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スティング

20051003220003 出演:ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、ロバート・ショウ、チャールズ・ダーニング

監督:ジョージ・ロイ・ヒル

(1973年・アメリカ・129分)

評価★★★★★/100点

内容:「明日に向って撃て!」の監督・主演トリオが再び組み、アカデミー作品・監督賞など7部門を獲得。全体を7章に分け、それぞれに本の扉のようなタイトルを挿入したクラシカルな構成、当時のファッションを念入りに再現した衣装デザイン、ラグタイムピアノをアレンジした音楽など、古き良き時代の雰囲気に満ちたノスタルジックなスタイルが特色の娯楽映画の傑作。

シカゴの下町を根城にケチな詐欺を働いていたフッカーら3人組のチンピラは、大組織の手下と知らずに1人の男をカモって大金を手にする。怒った組織はリーダー格のルーサーを殺害。ルーサーの親友ゴンドーフを頼ったフッカーは、ルーサーを殺したのが大親分のロネガンだと知るやゴンドーフとともに復讐を計画する。ゴンドーフは昔の詐欺仲間を集め、競馬のインチキノミ屋を開いてロネガンから50万ドルをだまし取る計画を練る。。。

“とどめの一撃!ヤラれた!イッた!ヌケる!鮮烈!快感!失神!オシャレな最強絶頂計画全7コース(前説付き)3800円!レンタル体験コースも実施中!”

ダマされたと思ってご購入下さい。

なんてったって映画というものにのめり込むきっかけになったのがこの作品ですから。

「スティング」と「ゴッドファーザー」。

自分の生涯ベスト1です。

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アメリカン・ハッスル

Poster2出演:クリスチャン・ベイル、ブラッドリー・クーパー、ジェレミー・レナー、エイミー・アダムス、ジェニファー・ローレンス、マイケル・ペーニャ、ロバート・デ・ニーロ

監督:デヴィッド・O・ラッセル

(2013年・アメリカ・138分)WOWOW

内容:ハゲ頭のセットに余念がない中年親父アーヴィンは、愛人シドニーと詐欺を働いていたが、ある時ついに摘発されてしまう。ところがFBI捜査官リッチーは司法取引として、カジノ建設に絡む政治家の汚職を暴くための捜査協力を2人に迫ってきた。そして市長を狙ったおとり捜査が開始となったが、アーヴィンは別居妻ロザリーとシドニーの間に挟まれ右往左往。さらに、リッチーがシドニーにベタ惚れしてしまい・・・。

評価★★★/60点

ダマしダマされの痛快な犯罪サスペンス劇であるコンゲーム映画を思わせるストーリーライン、アクの強い個性的なキャラクター、脂の乗り切った演出術、とそれぞれの要素は最高なのに、それらが面白さに全く繋がっていかない作劇に心底驚いた(笑)。

話の本筋はFBIと詐欺師がタッグを組んでカジノ利権に群がる汚職政治家とそのバックにいる大物マフィアを出し抜いて検挙することなんだけど、出し抜く側の捜査チームが一枚岩ではないことと、真っ黒だと思われていた市長(ジェレミー・レナー)が実はクリーンな善人だったことが話をややこしくしているんだよね。

特に前者については、そもそも上から目線で無理難題を吹っかけるFBIとそれに従うしかない詐欺師の危うい信頼関係があるところに、さらにハゲ詐欺師(クリスチャン・ベイル)&セクシー愛人(エイミー・アダムス)&チリチリ頭(ブラッドリー・クーパー)の三角関係と、ハゲ詐欺師&セクシー愛人&バカ妻(ジェニファー・ローレンス)の三角関係がダブルで加わって、そっちの方が本筋よりも本筋になっちゃってw、要するに命をかけた危険なおとり捜査の緊迫感を惚れた腫れたのグダグダ感が相殺してしまい、カタルシスの欠片もなくなっていき・・。

さらに市長が真っ当なシロだったことで、生き残りをかけた詐欺師の矛先がFBIに変わるオチも唐突でカタルシスはもはやゼロ。

もうこうなると役者陣の演技合戦しか見所がないよねっていう・・。まぁ、それで元は取れるっちゃあ取れるし、エイミー・アダムスの半チチ丸見えファッションは目の保養になったし

でも、アカデミー賞10部門ノミネートという勲賞を期待して見ると、正直肩すかしだよなぁ~。。

って、無冠だったのね。納得ww

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レインディア・ゲーム(2000年・アメリカ・104分)WOWOW

 監督:ジョン・フランケンハイマー

 出演:ベン・アフレック、ゲイリー・シニーズ、シャーリズ・セロン

 内容:クリスマスに起こったカジノ襲撃事件。犯人は射殺されたが、全員が殺されたわけではなかった。生き残ったのは3人。いったい誰が誰を欺き、誰と誰が憎みあっているのか?複雑に絡み合う人間関係とドラマが繰り広げられるサスペンス。

評価★★/40点

何なんだこれは。。出てくる奴みんな低脳。コメディとしても見れないという救いようの無さ。

ヌードになる価値があるのかいシャーリズさんよ・・。

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コンフィデンス(2003年・アメリカ・97分)WOWOW

 監督:ジェームズ・フォーリー

 出演:エドワード・バーンズ、レイチェル・ワイズ、アンディ・ガルシア、ダスティン・ホフマン

 内容:詐欺師のジェイクが奪った金は、暗黒街の大物キングのものだった。ジェイクは穴埋めのため別の詐欺計画を練るが、新たに女スリ師やFBI捜査官も登場し、二転三転の騙し合いが始まる・・・。

評価★★/40点

詐欺というかパクリというか盗用というか三番煎じというか盗作というか、、、ようするに訴えたら勝てるんちゃう。「スティング」からのまんま盗用だろこれって(笑)。

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パーフェクト・ストレンジャー(2007年・アメリカ・110分)CS

 監督:ジェームズ・フォーリー

 出演:ハル・ベリー、ブルース・ウィリス、ジョヴァンニ・リビシ、ゲイリー・ドゥーダン

 内容:毒薬で殺害された幼なじみのグレースの殺人事件を追う女性記者のロウィーナ。彼女は、グレースが出会い系サイトで知り合った広告業界の大物ハリソン・ヒルと不倫関係にあったことから、ヒルに疑いの目を向けるが・・・。

評価★★★/60点

<ラスト7分11秒、衝撃の事実にあなたは絶対ダマされる>というキャッチコピーからして胡散臭いものがあるけど(笑)、微に入り細をうがつような伏線を描いてこそ、その強弁も生きてくるだろうに、故意にそれを描かない中で豪語するんだから、ただのタチの悪い誇大広告でしかない。

たしかにラスト7分11秒までは真相が分からないんだけど、何度も言うようだけど、これといった伏線を描かないのだから当たり前なわけで、そんな中でネタばらしされても何のダマされた感も沸かないし、ただストーリーを追うことしかできない映画としか言いようがないっしょ。

そこに何の面白味も見出すことができない中で、ハル・ベリーのお色気しか印象に残らないという・・。まぁ、その目の保養にプラス1点なんだけど(笑)。

2015年10月14日 (水)

夢のシネマパラダイス478番シアター:許されざる者

許されざる者

Mv705_1_f265400出演:渡辺謙、柄本明、柳楽優弥、忽那汐里、小池栄子、近藤芳正、國村隼、滝藤賢一、小澤征悦、三浦貴大、佐藤浩市

監督:李相日

(2013年・日本・135分)WOWOW

内容:明治維新から10数年経った1880年の北海道。かつて人斬り十兵衛と恐れられた旧幕府軍の殺し屋・釜田十兵衛。彼は落ちのびた最北の地で所帯を持ち農夫として暮らしていたが、3年前に妻を亡くし、残された2人の娘との生活は極貧の有り様。そんな時、昔の仲間だった馬場金吾が現われ、賞金首の話を持ちかける。もう人殺しはしないという亡き妻との約束を心に留める中、十兵衛はその話に乗るのだが・・・。クリント・イーストウッドが監督・主演したアカデミー賞受賞作のリメイク。

評価★★★★/75点

はたしてイーストウッド西部劇を時代劇としてリメイクしたらどうなるのか。

昔は黒沢映画の「七人の侍」や「用心棒」が西部劇にリメイクされたけど、今回はその逆、しかも「用心棒」のリメイク版「荒野の用心棒」で主役を張ったイーストウッドの作品ということで、歴史がひと回りしたんだなと感慨深くなった。

そして、そのバトンを受け継いだのは李相日。

ロマンや勧善懲悪とは一線を画すリアリストで、清濁のきれいごとではない荒んだ負の部分をしっかり描ける骨太演出が真骨頂の正統派監督だけに、三池崇史のスキヤキ・ウエスタンジャンゴのようなハチャメチャな娯楽映画にはなりようがないなと安心できる人選w

しかも、前作「悪人」では人間の奥底にある善悪のあやふやさを描き出していて、これは「許されざる者」に通底するテーマでもあり、李相日にとってはチャレンジ精神を大いにかき立てられる企画だったに違いない。

そしてその大胆な挑戦は、借り物ではないれっきとした日本映画として見事に結実していたように思う。

なにより北海道という大地がこれほど和風西部劇にマッチしているとは思いもよらなかった。まるでダンス・ウィズ・ウルブズに出てくるサウスダコタの平原かと見まがうばかりで、まさに目からウロコだったけど、本場西部劇のドライな風土とは異なる日本ならではのウェットな気質が反映されていたのはまた趣が違って面白かった。

陽気な空っ風に巻き上がる砂じんではなく陰うつな寒風に粉雪が舞う北の大地、そこはあくまでも“辺境”であり、そこに赴任するということは“左遷”を意味することは自暴自棄になっている警察署長(佐藤浩市)をみれば分かる通り。さらに、「賞金を元手に石炭でひと山当てるという話はウソで自分には行く場所がもうない。」という金吾(柄本明)の告白は決定的で、そこには無限の可能性を持ったフロンティアスピリットなど欠片もないことが明示される。

まさにそこは本土では生きていけない逆賊、敗残者、行き場のない人々がいやいや流れ着いた最果ての地なわけで、北海道=蝦夷地のもつ歴史性がイーストウッドのオリジナル作にはない閉塞感を醸成している。

しかし、アメリカの西部開拓史が先住民を暴力で駆逐し、土地を奪い取っていった暗黒史の一面を持っているように、蝦夷地開拓もアイヌ民族を迫害し駆逐していった歴史があり、その点をアイヌの血を引く青年・五郎(柳楽優弥)に仮託して描いているのも上手い。

総じて穴のないよく出来た作品だったと思う。

しいていえば、冒頭で佐藤浩市が森で熊と出くわす話を引き合いに出して、自分が殺されると分かれば人も獣も死に物狂いで向かってくると生存本能の強烈さを語っていて、死にたくない&生き残るためには何だってするという映画の開巻宣言と捉えたのだけど、そのわりにその点が思ったほどではなかったのは不満点だったかな。

結局、十兵衛も署長も自ら望んで彼岸に片足を突っ込んでいるようなキャラクターなので生きることに懸命じゃないんだよねw

少なくとも署長をその立ち位置に置いたのは失敗だったと思う。

その点では、死んだフリして生きるのはもう飽き飽きしたと吐き捨てる女郎や、初めて人を殺したことに後悔の念に駆られる五郎の方が生きることに執着しているわけで。一方、金吾は葛藤の末に脱落して去っていくけど、それはイコール生への執着からも脱落したことを暗示していて、あの後どこかで野たれ死にしたのではないかと思う。

そういう意味ではラストの十兵衛が涙をこぼしながら雪原を彷徨するシーンは強烈で、自分なんかは思わず仲代達矢が満州の雪原をひたすら彷徨し力尽きていく「人間の条件」のラストを想起してしまったけど、このラストになんか上手いこと言いくるめられてしまった感もするな

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夕陽のガンマン

5201 出演:クリント・イーストウッド、リー・ヴァン・クリーフ、ジャン・マリア・ヴォロンテ

監督・脚本:セルジオ・レオーネ

(1965年・イタリア・132分)NHK-BS

評価★★★★/80点

内容:2人の賞金稼ぎ、モンコと初老の元南軍“大佐”は、凶悪な強盗殺人犯インディオを追いかけてエル・パソにやって来た。インディオの銀行襲撃を待ち伏せた彼らは、裏をかかれて逆にリンチに遭ってしまう。ようやく命が助かった大佐は、自分の弟を惨殺した犯人がインディオであることを知り、彼に決闘を挑む。。

“能ある鷹は爪を隠さない!”

この映画はどこからどう見たってモーティマー大佐が主人公だろう。

汽車の中で聖書を読んでいる登場シーンから、停車しないはずの駅で無理やり汽車を止めて悠々と馬で降りるシーン、そして街でお尋ね者を確実に仕留めるシーンとつづくオープニングは前菜からいきなり黒トリュフを使ってきやがったといってもいいくらい魅力満載なお腹一杯状態にさせてしまう。

そして猛禽類の風貌と、追う獲物は決して逃がさない鋭い眼差しに思わずゾクゾクしてしまうのだ。

さらに彼の秘められた過去と心の傷が明らかになってくるや、もうイーストウッドなんかどうでもよくなってくる。

そしてラスト、妹の思い出とともに響くオルゴール時計を耳に当てながらひたひたと夕陽に向かって去っていくモーティマー大佐の姿がなんとも印象的。イーストウッドの姿はもはやそこには、なかった。。

いやはや「夕陽のガンマン」という邦題はズバリこの映画の真実を見抜いていてよろし。

原題“For a Few Dollars More”はおそらく荒野の用心棒の原題“For a Fistfull of Dollars”からモジッたんだろうけど。金のために、というのはあまりにも味気ない。

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続・夕陽のガンマン(1966年・イタリア・155分)NHK-BS

 監督・脚本:セルジオ・レオーネ

 出演:クリント・イーストウッド、リー・ヴァン・クリーフ、イーライ・ウォラック

 内容:お尋ね者の懸賞金をだまし取っていたジョーとテュコ。2人はある日、逃走中の強奪犯から20万ドルもの大金を奪う。だが、その金を狙ってセテンサという凄腕のガンマンがやって来て・・・。3人の男たちの虚々実々の駆け引きをユーモラスに描いた痛快ウエスタン。ちなみに原題は「いい奴、悪い奴、醜い奴」。

評価★★★★☆/85点

“実は「荒野の用心棒」よりも黒澤臭の濃度が高いセルジオ・レオーネのマカロニウエスタン集大成!西部劇史上最強のエンターテインメントだ!”

黒澤が娯楽作をつくる際に「カツ丼にカレーとソースをぶっかけて思いっきりかき込む」というコンセプトを提示したことは有名だが、この作品はまさにこのコンセプトを具現化した作品ではないだろうか。

質量ともに見どころ満載、善玉・悪玉・卑劣漢という3人のキャラクターの造形力の魅力も凄まじい。

ハゲタカそのものの鋭い目を持ったリー・ヴァン・クリーフにエンジェル・アイという名前を付けたのには度肝を抜かれるとともになんとも乙だなぁと感心したし、あとは特にイーライ・ウォラック。

あの汚っねえ歯を前面に出してくる笑顔の憎めなさといったら(笑)、ホントいい味出してる。黒澤映画に出てくるよね、ああいうストーリーの道先案内人キャラ。

そしてラストの衝撃の三角形には思わずめまいが・・・。

西部劇って、すぐに分かる定型パターンがあって、自分の中で西部劇を見るというのはある種のダルさとユルさとのお付き合いでもあったのだけど、この作品は180度違っていた。

倦怠とは無縁の最高エンタメだ。

もう、今の自分はぶっちゃけ首に縄を掛けられてもいい気分だね。誰か、椅子の足を銃で撃ってくれ!

エンニオ・モリコーネにも乾杯!

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アウトロー(1976年・アメリカ・137分)NHK-BS

 監督:クリント・イーストウッド

 出演:クリント・イーストウッド、チーフ・ダン・ジョージ、ソンドラ・ロック

 内容:南北戦争末期、たった一人で北軍に抵抗を続ける7丁の銃を持つ男がいた。妻子を北軍のゲリラに惨殺され、復讐に燃えるその男の名はジョージ・ウェルズ。北軍は彼にアウトローの烙印を押し、多額の賞金をかけた。賞金目当ての殺し屋たちが次々と狙ってくるが、ジョージは彼らを早撃ちで倒し、開拓者たちを見方につけて北軍部隊との戦闘を繰り広げる。。

評価★★★☆/70点

“旧来の伝統的な西部劇では決して描かれることはなかった人々を描くというイーストウッドの性格と作家姿勢が表れていてヨロシイ。”

妻子を殺された農夫の復讐劇でありながら、まるでドラゴンクエストのパーティのごとき疑似家族を呈していく不思議かつ温もりのある旅を描いていて、なかなか見どころの多い作品だったと思う。

しかも仲間になるのが、老インディアン、宿場で虐げられていたインディアンの女性、南軍ゲリラ、犯されそうになるソンドラ・ロック、あげくの果てに婆さんときたもんだ。

さらに、その彼らが一丸となって銃で闘う大団円もフツーなら非現実的なんだけど、そこまでのストーリーの転がし方だとか描写力といったイーストウッドの手腕に加えて、孤高のジョージ・ウェルズのキャラクターにも確かな説得力があって一気に見させてしまう。

いわば、それまでの伝統的な西部劇では決して描かれてこなかった人々を描いているという点でも新しいし、ガトリング砲をブッ放すところなんかはやはりイーストウッドの原点であるマカロニ・ウエスタンの系譜を見て取れるという点でも、それまでの西部劇とは異なる匂いのする映画だと思う。

奇しくも、同じ年にジョン・ウェインの遺作となった「ラスト・シューティスト」が公開されているが、いわばこの作品をもって西部劇のもつ神話性は消滅し、西部劇=時代遅れという図式が成立してしまった。

ジョン・ウェイン&ジェームズ・スチュワートの「リバティ・バランスを射った男」(1962)で、“西部は事実よりも伝説を選ぶ”というセリフが語られたのは有名だけど、西部劇のもつ伝説や神話性はアメリカン・ニューシネマの台頭で完全に打ち砕かれることになるのだ。

そういう観点でみると、イーストウッドの作る西部劇というのは、決定的にオールド・ウエスタンのノスタルジーに欠けるし、伝統的な西部劇の醍醐味とはやはり異なる味のする西部劇なのだと思う。

なんかこの映画のジョージ・ウェルズが16年経つと「許されざる者」のアウトロー、マニーに繋がっていくのかと思うと、それもまた感慨があっていいね。

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許されざる者(1992年・アメリカ・131分)DVD

 監督:クリント・イーストウッド

 出演:クリント・イーストウッド、ジーン・ハックマン、モーガン・フリーマン

 内容:1880年のワイオミング。列車強盗や殺人で悪名を轟かせたマニーは、今では農場を営みながら2人の子供と静かに暮らしていた。しかし家畜や作物は順調に育たず、妻にも先立たれたマニーは、2人組の強盗にかけられた1000ドルの賞金を得るために一緒に組もうという若いガンマン、キッドの誘いにのり11年ぶりに銃を手にする。マニーのかつての相棒ネッドも加わり、3人は保安官ダゲットが牛耳る町へ足を踏み入れるが・・・。アカデミー作品・監督賞受賞。

評価★★★☆/70点

この映画が当時公開された時は高校に上がったばかりだったけど、今どき西部劇なんて古臭くない!?みたいな認識を持っていて、それはいわば水戸黄門みたいな型にはまった勧善懲悪を見てスカッとする感性はジジババ連中しか持ち得ていないと思っていた

しかし、ふたを開けてみると、主人公はジョン・ウェインとは程遠いかつての凶悪な無法者、対する保安官もゲイリー・クーパーとは程遠い権力欲の強い偏見に満ち満ちた人物で、単純な勧善懲悪から脱したあやふやな設定になっていて、一筋縄ではいかない作品になっていた。

イーストウッドはこの映画を“最後の西部劇”と銘打ったけど、実際のところは“現代の西部劇”と言った方が正確なのかもしれない。

加害者、被害者、傍観者みんな罪びと。それが如実に垣間見える今この時代だからこそ鋭い印象を残す映画になったのだと思う。

2015年9月 9日 (水)

夢のシネマパラダイス494番シアター:しねまロボット大戦

リアル・スティール

Realsteel_101 出演:ヒュー・ジャックマン、ダコタ・ゴヨ、エヴァンジェリン・リリー、アンソニー・マッキー

監督:ショーン・レヴィ

(2011年・アメリカ・128分)WOWOW

内容:かつて将来を嘱望されていたボクサーだったチャーリー。しかし、時代は人間に代わって高性能のロボットたちによるロボット格闘技の時代に突入、戦う場所を奪われたチャーリーは人生のどん底にいた。そんな中、別れた妻が急死し、赤ん坊の時以来11年間会っていない息子マックスの面倒を見るハメになってしまう。当然2人の関係はギクシャクするのだったが、ある日、ゴミ置き場でスクラップ同然の旧式ロボット“ATOM”を発見し・・・。

評価★★★★/80点

昨今ガンダムがエライことになっている。

お台場に等身大立像がお目見えし、ガンダムのキャラをイメージした豆腐や車までできてしまった。

長く愛されすっかり社会になじんだ感のあるガンダムだけど、自分にとっては今に至るまでガンダムは縁遠い存在であり続けてきた。

それはある意味今までガンダムを敬遠しつづけてきたからといってもよく、つきつめていえばロボットの内部に人が乗り込んで操縦する形態に魅力を感じなかったというところに行き着くのかもしれない。

と、今回この映画を見てはじめて思った。

つまり、ロボット=兵器という扱いであり、そこに人格や個性は認められないというところ、強いていえば「エイリアン2」でシガニー・ウィーバーが乗り込むロボットや「アバター」で大佐が乗り込むパワードスーツ以上の役割を担っていないことに魅力を感じなかったのだと。

そして、やはりロボットであっても自立した自我=“心”を持ったロボットが好きなのだということに気付かされたわけで。

そう、まさに鉄腕アトムのような。

で、今回の映画のアトムである。

今回、映画に出てくるロボットたちはリモコンで動かす遠隔操作型で、アトムも最初はリモコンで動かしていたのだけど、途中でそれをやめ音声認識機能と人の動きを真似する形態模写機能(シャドウ)でやり、最終的にはシャドウだけで動かすことになる。

電子制御という束縛から解放され、よりスタイルフリーになっていくことで人間的に見えてくるところが巧いし、何度打たれても立ち上がる姿はもはやロッキーそのもの!また、マックスの真似をしてダンスを踊るシーンなんかを見ると無機質であるはずのアトムにも心があるようにすら感じてしまう。

あとはやはりボクシングに目をつけたのが白眉で、ボクシング映画十八番のアメリカンドリームで王道感を盛り立てるとともに、ロボットボクシングに取って代わられたためにボクサー廃業を余儀なくされたチャーリーとアトムが同化していくというのがなんとも上手い。

あと、父子愛という点で取りざたされる「チャンプ」のような悲壮感漂うお涙頂戴というより、茶目っ気たっぷりで陽気なスタイルだったのも見やすくて良かったかも。

まぁ、そんなつもりはなかったけど、いい映画の拾い物をさせていただきました♪

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パシフィック・リム

Poster出演:チャーリー・ハナム、イドリス・エルバ、菊地凛子、チャーリー・デイ、ロブ・カジンスキー、ロン・パールマン

監督:ギレルモ・デル・トロ

(2013年・アメリカ・131分)WOWOW

内容:太平洋の深海から突如現れた巨大生命体“KAIJU(怪獣)”により滅亡の危機に瀕していた人類は、イェーガーと呼ばれる2人で操縦する巨大ロボットを開発した。しかしそれでもなお劣勢が続く中、かつて怪獣との戦闘で操縦パートナーの兄を失いパイロットを引退していたローリーが最終決戦のために復帰を決意する。彼と新たに組むのは、幼い頃に家族を失った復讐に燃える日本人モリ・マコだった・・・。

評価★★★/65点

マジンガーZからエヴァンゲリオンに至るまで日本のロボットアニメのエッセンスをそのまま濃縮したようなクオリティで実写化してしまうハリウッドのクリエイティビティには今さらながら驚愕してしまう。

メカニックデザインはもとより最も驚かされたのはロボットの圧倒的な重量感で、例えばスケートのような滑らかな動きをするトランスフォーマーにはどこか二次元的な軽さがあったのに対し、今回のイェーガーには高さビル25階、重さ2千トンの巨大さを肌で感じられるような現実感があって見応えがあった。

が、、しかしである。

自分みたいにエヴァをちょいかじりした程度にしかロボットアニメに食指が動いてこなかったにわか者からすると、人物造形もそこそこに、のっけからロボットと怪獣のガチバトルに突き進んでいく作劇はイマイチ乗り切れず・・・。

また、視界不良の悪コンディションのオンパレードで目が疲れるのもマイナスだし、海上戦ばかりで地上戦が少ないのもダイナミズムが削がれて飽きてきたし・・。

まぁ結局、特撮が良くても肝心の人間ドラマがおざなりだとツマラないってことを肌で感じたな

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アイアン・ジャイアント

Bovnjdpie_2 声の出演:ジェニファー・アニストン、ハリー・コニックJr.、ヴィン・ディーゼル

監督:ブラッド・バード

(1999年・アメリカ・86分)DVD

評価★★★★/80点

内容:嵐の夜、小さな村に空から鉄でできた謎の巨人が落ちてくる。記憶も言葉も失くした鉄人はやがて1人の少年と出会い、あたたかい友情を育んでいく。しかし、その鉄人の正体は異星人が戦争のために作り出した戦闘ロボットだった・・・。

“ロボットの悲しみは、人間の悲しみ”

片田舎の少年と鉄の巨大兵器ロボットのかけがえのない友情をコミカルに描いているだけでも十分面白い。

しかし、この作品が本当に心に残るのは、彼らが心を通わせていく過程を縦軸に、戦闘を宿命づけられたロボットの深い悲しみと、それを乗り越えてなりたい自分になるんだ!という意志の強さと心の素晴らしさを真摯に描き出しているところにあるからだと思う。

そして、ロボットが破壊の道具として使われることへの悲しみが、いわば自分たちの意志で、命を奪うための戦いという暴力にいわば永遠に憑かれてきた人間の凶暴性や悲しみさえあぶり出していく。

子供はもちろん、大人にも十分すぎるくらい伝わってくるメッセージとテーマを持っている作品だ。

悲劇的な美しさをたたえたクライマックスでのミサイル体当たりシーンから、思わず泣き笑いへと変化してしまう真のラストオチに本当に心の中が温かくなりました。

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ヤッターマン

E38389e383ade383b3e3839ce383bc 出演:櫻井翔、福田沙紀、生瀬勝久、ケンドーコバヤシ、阿部サダヲ、深田恭子

監督:三池崇史

(2008年・松竹・111分)WOWOW

内容:4つ全部集めると願いが叶うという伝説のドクロストーンをめぐって繰り広げられるドロンジョ一味と、犬型の巨大ロボット・ヤッターワンを操るヤッターマン1号&2号の泥沼の争奪戦!

評価★★★/65点

最近カラオケのアフレコにハマッていて、その中にヤッターマンが入っているのだけど、そのシーンのほとんどはドロンジョ一味のもので、やっぱこのアニメの醍醐味はこの3人組がいかにいたぶられボロボロになるのかというサド的な快楽(?)にあるのだと実感したw

まぁ、このアニメは自分が生まれる1年前に放送されたので、リアルタイムでは見ていないのだけど、かなり小さい頃に再放送かなにかで見てはいて記憶の片隅にある程度。

でも、ドロンジョがやけにオッパイポロリしてたのは覚えてて・・

とまぁその話は置いといて、映画の方は、“ジャンボパチンコ”を“ジャンボ○チンコ”と読ませるような程度の低さで覆われているのだけど、ユルユルでナンでもありの作劇は決して間違ってはおらず、例えば福田沙紀のぞんざいな扱いなんかはよく分かっていらっしゃる。

映画のつくりとしては、それこそ「CASSHERN」とか「デビルマン」などとは一線を画するレベルにあるといっていいと思う。

その点では本気度の中に絶妙な遊び感覚を有する三池崇史の器用さとたしかな腕を感じさせるのだけど、それ以上に深キョン&生瀬&ケンコバ3人組のハマリっぷりが特筆もので、映画史に残る3バカトリオといってもよかったりしてw!?

それでもこの点数なのは、ぶっちゃけヤッターマンに思い入れがほとんどないっつーことで(笑)。

要はやはりこの映画はドロンジョ様に尽きるわけで、その中で乙女チックな深キョンも十分ハマッてるんだけど、見ていてイタくなってくる存在感てところまでは突き抜けていなくて、そういう意味では女性芸人で誰かおらんかったかなぁと思っちゃったんだけどw。。

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ロボッツ(2005年・アメリカ・90分)WOWOW

 監督:クリス・ウェッジ

 声の出演:ユアン・マクレガー、ハル・ベリー、ロビン・ウィリアムズ、メル・ブルックス

 内容:小さな田舎町の貧しい家で、中古部品で作られて生まれたロボット・ロドニーは、発明家ビッグウェルドの「外見が何で作られていても、誰もが輝ける」という言葉を信じながら発明家になることを夢見る。やがて青年へと成長したロドニーは、大都会ロボット・シティへと旅立つが・・・。

評価★★★★/75点

3DCGアニメから鼻につく鉄サビの匂いが漂ってきたことだけでもこの映画を観た甲斐はあったというものだ。

ニック・パークのウォレスとグルミットみたくクレイアニメーションだったら満点だったけども、それでもロボットのボディに映る背景だとか光沢、陰影などの質感には目を見張るものがある。

物語の平板さにも思わず目をつぶってしまうくらいだ。

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鉄人28号

07_06 出演:池松壮亮、蒼井優、薬師丸ひろ子、香川照之、阿部寛、柄本明、中村嘉葎雄

監督:冨樫森

(2004年・松竹・114分)MOVIX仙台

評価★★/40点

内容:横山光輝の名作マンガ「鉄人28号」を最新のCG技術で実写化。サイバーテロに始まり、巨大ロボット“ブラックオックス”が東京を破壊する。小学生の正太郎は父の遺志を受け継ぎ、鉄人28号を操り悪に立ち向かう。

“平成「鉄人28号」に対する違和感”

自分は横山光輝の「鉄人28号」を知らないし、見たこともない。テレビでやってる懐かし映像で見かけた程度だと思う。

しかし、昭和31年という戦後復興著しい時代に連載された昭和を代表する人気ロボット漫画ということで、今回の映画はてっきり「ALWAYS三丁目の夕日」テイストの昭和ノスタルジーを背景に、昭和という時代を背負った鉄人28号がウガーッと仁王立ちする絵を勝手に想像していたのだが・・・。

フタを開けてみたら、、、へっ?何?平成なの?げ、現代ですか!?

おもわず面食らっちゃったんだけど。

で、率直な感想といえば、平成の世に鉄人28号を降臨させる意味が全く分からなかったということ・・・。

だって、やっぱ現代を舞台にするならば徹底的にリアリティを追求してくれないと、とどうしても思っちゃうわけよ。在日米軍がミサイルぶっ放すとか(笑)。

あるいは、横山光輝の原作では金田正太郎くんは少年探偵なわけだから、それこそ「スパイキッズ」ばりに徹底的に荒唐無稽なキッズアドベンチャーとして描いてくれればストンと納得できたのかもしれないけど。

その方が、年端もいかない少年が日本転覆を企むテロリスト相手に担ぎ出されるという、およそ現実味のない展開も気にならないだろうし。

ところが、この映画ははっきりいってリアリティと荒唐無稽なファンタジーとの狭間であっち行ったりこっち行ったりしていかにも中途半端なんだよね。

1番リアリティがあったのは鉄人28号vsブラックオックスのロボット対決だったと思うけど、ぎこちなくてぎこちなくて皮肉にも絵としては1番ツマラなかった・・。

だから、要は時代設定からして間違ってると思うんだ。やっぱ昭和3,40年代を舞台にしてやった方が良かったのでは。。

リアリティとファンタジーの狭間における中途半端さも昭和ノスタルジーというフィルターを通すことによって逆に味が出るわけだし。

あとは、やっぱねぇ、、旧日本軍の秘密兵器として開発された巨大ロボット・鉄人28号を少年探偵・金田正太郎がリモコンを使って操作する、、っていくら任天堂のWiiが売れてるからって平成の世にこの設定は合わないと思うし、あとは何よりも鉄人28号のもつ時代性なんだよね。

その時代を背負った象徴的な漫画キャラクターやアニメキャラクターってあると思うのだけど、鉄人28号はやはり昭和のキャラクターだと思うんだよね。

そういう点でも今回の映画にはスゴイ違和感を感じてしまったな・・・。

例えば平成のキャラクターであるエヴァンゲリオンを現代を舞台に実写化するっつうなら分からんでもないけどさ。

平成の世で「鉄人28号」は何を背負うのか・・・。

それが全く見出せなかったのはあまりにも痛い。魂が入っていない人形を見せられても何も感じない。

残念な作品だ。

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スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー(2004年・米/英・107分)DVD

 監督・脚本:ケリー・コンラン

 出演:ジュード・ロウ、グィネス・パルトロウ、アンジェリーナ・ジョリー、ジョバンニ・リビジ

 内容:1939年のNY。科学者失踪事件を追っていたポリーの前に突然、巨大ロボット軍団が出現。彼女を救ったのは、元恋人で空軍のエースパイロット、ジョーだった・・・。世界征服の陰謀と闘う空軍パイロットの活躍を、CGのフル活用と多彩なキャストで、レトロ感たっぷりに描くSFアクション。

評価★★/40点

この映画から人物を全て取っ払ったCG全カットをオレにくれ(笑)!

イメージ先行型の映画だと思うけど、イメージにストーリーとキャラが埋没しちゃっている映画を見せられるのは、この上なくツマラナイし、不快で疲れる・・・

2015年7月 3日 (金)

夢のシネマパラダイス19番シアター:9.11と映画

ゼロ・ダーク・サーティ

200出演:ジェシカ・チャステイン、ジェイソン・クラーク、ジョエル・エドガートン、ジェニファー・イーリー、マーク・ストロング

監督:キャスリン・ビグロー

(2012年・アメリカ・158分)WOWOW

内容:9.11のテロ以降、CIAはアルカイダの首謀者オサマ・ビンラディンを血眼になって追うも居場所をつかめずにいた。そんな中、ビンラディン捜索の前線基地であるパキスタン支局にまだ20代の女性分析官マヤが配属される。しかし、彼女の奮闘むなしく捜査は困難をきわめ、その後もテロは続発し、マヤの同僚はじめCIA局員にも多くの犠牲が出てしまう・・・。2011年5月、米海軍特殊部隊によるビンラディン暗殺をめぐる舞台裏を映画化。

評価★★★/65点

はたしてこれを見たアメリカ人はビンラディン殺害にもろ手を挙げて快哉を叫ぶのだろうか。だとするならば幻滅せざるをえない。

なぜならテロ撲滅という名の正義のもとで行われる拷問、蹂躙、殺りくはただの醜悪な報復としか見れないからだ。

あげくの果てに他人の家に上がりこんで容赦なく人を撃ち殺す一方、おびえる子供たちには大丈夫だから怖がらなくていいよと言う無神経さには開いた口がふさがらず胸くそが悪くなった。

この映画を見るかぎり、どっからどう見てもアメリカのやってることは野蛮であり、これを正当化することはできない。

毒をもって毒を制することがはたして正義といえるのか、そういう善悪の線引きをあいまいにした描き方は確信犯だとは思うのだけど、いかんせん主人公である女性局員マヤがその狭間でもがき苦しみ感情を爆発させるようなシーンが皆無なため、見てるこちら側も映画に対するスタンスを測りかねてしまってどうもすっきりしない。

その中で伝わってくるのは、ビンラディンを見つけられないという焦燥のみだが、しかし2時間半だらだらと付き合わされて気付くことは、もう一歩も引くに引けないという強迫観念に晒された主人公の姿がアルカイダの狂信的テロリストと表裏一体、何ら変わりがないということだ。アメリカもアルカイダも同じ穴のむじな・・・。

そんな中で示されるラストのマヤの気の抜けたような涙は、やられたらやり返すという血と報復の連鎖の先にあるものは喪失と虚無しかないことを明白に示した表情だったのではなかろうか。

ビンラディンを消したところで憎悪のループが閉じられることはないのは誰もが分かっているのだから・・・。

それでも続けられる対テロ戦争とジハード、そのために一体どれだけの人が犠牲にならなければならないのか・・・。否応なく虚脱

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ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

Poster1 出演:トム・ハンクス、サンドラ・ブロック、トーマス・ホーン、マックス・フォン・シドー、ヴァイオラ・デイヴィス、ジョン・グッドマン、ジェフリー・ライト

監督:スティーヴン・ダルドリー

(2011年・アメリカ・129分)WOWOW

内容:2001年9月11日、あの日商談で世界貿易センタービルにいた父親からかかってきた電話に出られなかったことを悔やみ、その留守電に吹き込まれた父の声を忘れられない少年オスカー。そんなある日、彼は父の遺品の花瓶の中から一本の鍵を見つける。そして鍵が入っていた封筒には“Black”の文字が。オスカーはこの鍵に父のメッセージが託されていると確信し、Black姓の人物をしらみつぶしにあたっていくが・・・。

評価★★★☆/70点

9.11テロから10年。ようやくあの惨事を冷静に振り返り、いち家族の物語として語ることができるようになったという点で今回の映画は見るべき価値のある作品だといえる。

どんな些細なネタにも闇雲に飛びつくハリウッドでさえもこれを扱うのに10年を要したというのは、いかにアメリカにとってあの出来事が巨大な喪失と傷をもたらしたのかをうかがい知ることができる。

物語としては、父親を911で亡くし、しかもその時にかかってきた父からの電話に出ることができなかったという悲しみと罪悪感を背負った少年が、父親の遺品に残されたメッセージを探し回る過程でNY中の様々な人々と出会っていき、ポッカリと空いた心の穴を埋めていくというもの。

911自体にことさら拘泥するわけではなく、あくまで父親を亡くしたひとりの少年の視点に寄り添って親子のつながり、人と人のつながりという普遍的なテーマを描いていて、例えば少年だけが喪失に苦しんでいるわけではなく、誰もが何かしらの悲しみを抱えて生きていて、その心にあいた穴を埋めるのは人なのだということ、人はひとりでは生きていけないのだということを痛感させられる。

表情と身ぶりだけで感情を伝える言葉を話せない老人、実は少年のために秘かに先回りしてサポートしていた母親など、大人たちが言葉ではなく行動で示すことで愛と絆を形にしていくのも共感ポイントだったし、人の優しさや家族の愛を感じられる佳作だったと思う。

世の中が苦手でありながら理屈だけはのべつ幕なしに出てくる傍若無人な主観と、細かなことまで数値でデータ化する緻密な客観が入り混じったオスカー少年は、どっからどう見ても面倒で、たとえ彼がウチを訪ねてきても軽くあしらってしまう自信があるけどw、少年から手紙が送られてきたら思わず笑顔がこぼれてしまうのだろうな

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11’09’’01/セプテンバー11(2002年・仏・134分)スカパー

 監督:サミラ・マフマルバル、クロード・ルル-シュ、ユーセフ・シャヒ-ン、ダニス・タノヴィッチ、イドリッサ・ウェドラオゴ、ケン・ローチ、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ、アモス・ギタイ、ミラ・ナイ-ル、ショーン・ペン、今村昌平

 内容:2001年9月11日、アメリカで起きた同時多発テロ事件を、世界各国を代表する11人の監督が11分9秒1フレームという共通の時間枠にそれぞれの文化、立場を背景に描く。

評価★★★★/80点

“人の個性ほど素晴らしいものはない。どれとして同じものはなく、全てがダイヤの原石のように輝いている。しかし、時としてその原石が一瞬にして砕け散ってしまうことがある、、、この世の中”

サミラ・マフマルバフはイラン映画らしく“子供”。クロード・ルルーシュはやはり“男と女”。ケン・ローチはやっぱり“移民”。そして今村昌平は意地でも“エロ”。

麻生久美子の太股をさする必要があんのかい?と思いつつ、しかし、それでいいのだ。

表現するという行為が本当に素晴らしいものだということが、11人の監督の内面的、主観的な個性に触れてみてあらためて分かった。

1つのテーマを取り上げるにしたって全く異なるアプローチと思考が繰り広げられるのだから。

そしてより多角的な視点で物事を考えることができる。

大学で歴史を学んでいた自分としてはこの点は重要です。

大本営発表を鵜呑みにしてはいけない。例えば、日本書紀1つ採ったって当時の政権が自分たちのいいように書いているわけで、他の中国の史書等と対照してみなければならない。

9.11テロでも、いや最近の世界情勢の中ではますますもってそのことの重要さを感じてしまう。地球の裏側の情報が一瞬にして分かる今の時代だからこそ。

しかし恐ろしいことに、素晴らしい個性が国家という名のもとに1つの枠組みの中に埋没し、ときに排除されてしまうというとんでもないことが起こってしまう。

マジでヤバイことだ。そうならないことを切に願います。

個人的にはイドリッサ・ウェドラオゴの“掴め!2500万ドル”が面白かったな。ショーン・ペンはそう来たかぁ、と思わず唸ってしまいました。

Posted at 2006.09.11

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ワールド・トレード・センター

070223_wtc_dvd 出演:ニコラス・ケイジ、マイケル・ペーニャ、マギー・ギレンホール、マリア・ベロ、スティーブン・ドーフ

監督:オリバー・ストーン

(2006年・アメリカ・129分)2006/10/15・MOVIX仙台

評価★★★/65点

内容:2001年9月11日の早朝。いつものように家を出て署へと向かう港湾警察のマクローリン巡査部長。ところが、ありきたりな日常は突然破られた。世界貿易センタービルに旅客機が激突する大惨事が発生、港湾警察官たちに緊急招集がかけられた。現場へと急行したマクローリンは、4人の警官とともにビル内に入る。しかし、その直後、大音響とともにビル全体が崩れ始め・・・。9.11同時多発テロの際、崩落したビルの瓦礫の中から生還した2人の港湾警察官の実話をもとに映画化。

“いっそのことカーンズ軍曹を主人公にすれば・・・”

2001年9月11日火曜日。

オイラはPM7:30頃に仕事から帰宅し、シャワーを浴びてPM8:00から日テレ「踊るさんま御殿」を見ながら夕食をとる。PM9:00からTBSのバラエティ「ガチンコ!」を見る。優勝者は日本武道館で歌えるという企画“アイドル学院”をやっていて、学院生をケチョンケチョンのメッタ打ちにする歌唱指導の鬼教師に戦々恐々としながら見たのを覚えている。

そして、PM9:54、今日のトップニュースを見ようとニュースステーションにチャンネルを合わせる、、、と、どこぞやの高層ビルの上の方から白い煙がたなびくように出ている映像が映し出されている。

久米宏は夏休み中でいなくて、渡辺真理だったかがアメリカCNNからの中継だということを言っていて、オイラは真っ先に「タワーリング・インフェルノ」(1974)を思い出しちゃったりしたのだけど、ま、すぐに消化する火災だろと思ったし、国内ニュースに切り換わったので、土曜日に録っていたケビン・コスナーの「ポストマン」を見ようとビデオをセット。

そして、ビデオ画面に切り換えると、偶然にもNHKに合わさっていて、ニュース10でもビルの映像が映し出されている。へぇ~、NHKでもトップに持ってくるてことはけっこうな大火災なんだぁと意外に思ってしまった。

そしてテレビ画面を一応2分割して「ポストマン」を見ようとした、、、次の瞬間。

画面右から何かが飛んでくるのが見えた、気がした。

あ、カラスだ。え?アメリカにカラスっているのか?アメリカといえば鷲だろ、、のわりにはデカイ鳥だなぁ、とその間わずかゼロコンマ数秒の間に頭を駆け巡ったことまでもが鮮明な記憶として残っている。

しかし、その直後に巨大な火柱があがったことで、飛行機だーーーッ!とようやく認識できたのだった。

それからは誰しもが知っている通りの映画やフィクションをはるかに凌駕したショッキングな現実が刻まれていくことになる。おそらく今まで生きてきた中で、最も重く深く脳裏に刻まれた事件映像となった。

高3のときの阪神大震災や中1のときの湾岸戦争も衝撃だったが、リアルタイムで目撃してしまったという点では、やはりこの9.11同時多発テロはそれまでの自分の既成概念や常識をブチ破ってしまうくらいの衝撃を与えたという意味でも一生涯忘れえない事件となった。

さて、映画以上に映画的だった9.11同時多発テロの映画化をすると知った時、オイラはネタ尽きハリウッドのことだから9.11に飛びつくのも当たり前かと思いつつ、たいした作品にはならないだろう、というか果たして9.11を映画化することにいったいどういう意義があるのだろうという疑問を抱いてしまった。

スローモーションのように脳裏深くに刻まれた衝撃的な映像の数々を超える緊張感を生み出すのは不可能ではないかと思ったし、また、その映像を再現し、リピートすることに果たしてどんな意味があるというのか、とも思ってしまった。

例えば、9.11後に数々の関連番組が放送されたが、ちょうど事件の1年後に放送された日テレの特番「カメラはビルの中にいた」で映し出されたビル内部の映像は記憶に新しい。

ボコン、ボコンと落下してくる人間が天井にブチ当たる音はあまりにも生々しかった。

そこでやはり思うのは、はたしてこれを映画化することに何かテーマを見出し得るのだろうかということであり、さらにいえば映画という虚構をはるかに超えた現実を、映画が超えることなどできようはずがないではないかということだ。

せいぜいテレビの再現映像止まりが関の山であり、あとはそこにどのようなテーマをふりかけるかでどのくらいプラスアルファになるかといったところなのだろうけど多くは望めないだろう、と。

しかし、その中で唯一の興味といえたのは、監督が社会派の御大オリバー・ストーンだということだった。数々のセンセーションを巻き起こしてきたオリバー・ストーンが9.11をどのように料理するのだろうか。

スピルバーグやイーストウッドあたりなら安定地点に軟着陸できそうなかんじはするけど、オリバー・ストーンと9.11となるといやでも何かアブない匂いが漂ってきてしまう。

そして、出来上がった作品を観てみると、、、情熱の塊のようなオリバー・ストーンの作風とは対極にあるような非常に冷静かつ地味な筆致にまずは驚く。

朝日昇るNYの街並みの静かな目覚めを優しく描き出し、あの大惨事をことさら大仰に映像として描き立てることなどせず、瓦礫の下に閉じ込められた港湾局警察官とその家族、そして救助に駆けつけた人々の姿を淡々と映すのみ。

そこには何かを暴きたててやろうというような変な気概はなかった。

そこにあるのは、様々な人種と国籍が集うアメリカが受けた深い傷と深い鎮魂のまなざし、ただそれだけだった。

例えば誰しもの記憶に刻み込まれてしまっている数々の衝撃的なニュース映像の再現をこの映画は全くといっていいほど避けているが、単なるハリウッドテイストのディザスタームービーに陥らせたくないという思いがよく伝わってくる演出意図ではある。この映画は観客のエンタメ欲を刺激して満足させるような映画になってはならないのだという思い。

その中で、激突の瞬間をマンハッタンの上空を横切る機影として表現したことをはじめとして、オリバー・ストーンの演出には文句の付けようがなく、演出意図としてはけっして間違っていない作品に仕上がっていることはたしかだ。

しかし、そう理解した上で、イチャモンをつければやはりどこかで物足りなさを感じてしまうのも事実なわけで。。

なにか傷物に触るような当たり障りのないかんじで、オリバー・ストーンでさえもこのように描かざるをえなかったという意味では、アメリカが受けた深い傷はいまだに癒えていないのだということだけはよく分かったが、ある意味ただそれだけで、悪くいえば面白くもなんともない映画だな、と。

また、ぶっちゃけオリバー・ストーンである意味もないような・・・。人間ドラマのエモーショナルな部分をうまく引き出せる監督はオリバー・ストーンよりも他にいるだろみたいな。ちょっと畑違いというか。。

だって、あのオリバー・ストーンがキリストの光臨を描くなんて、どう考えたって異常だよ(笑)。

オリバー・ストーンが描きたいのは、どちらかといえばカーンズ軍曹の方だろ。怪しいというよりちょっとアブない元海兵隊員・・。ラストに、イラクに志願して戦った、とポツンと字幕で示されたのがまたなにか気味が悪くなっちゃったのだけど、オリバー・ストーンが監督するんだったら、この謎のカーンズ軍曹を主人公にすればよかったんじゃないかなとも思ってしまう。

10年後、また9.11が映画化されたらどんなふうになるのだろうか・・・。

Posted at 2006.10.17

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ユナイテッド93

United932706int27lus 出演:ハリド・アブダラ、ポリー・アダムス、オパル・アラディン、ルイス・アルサマリ、リチャード・ベキンス

監督・脚本:ポール・グリーングラス

(2006年・アメリカ・111分)WOWOW

評価★★★/65点

内容:2001年9月11日早朝、ニューアーク空港を飛び立ったサンフランシスコ行きのユナイテッド航空93便。しかしその頃、地上の管制センターでは針路を外れた旅客機数機がワールド・トレード・センターと国防総省ペンタゴンに激突したことが伝わる。そして、93便はハイジャックされた・・・。ターゲット(ホワイトハウスか連邦議事堂といわれている)に到着することなく、ペンシルベニア州郊外に墜落、全員が死亡した93便の乗客たちの緊迫した様子を描き出すノンフィクション・サスペンス。

“あれから5年・・・。”

リアルタイムで目撃してしまった9.11同時多発テロ事件の生々しい惨劇は、いまだに脳裏に焼きついて離れない。

あの日の夕食は何だったかだとか、あの夜見ていたTV番組だとか今でもはっきりと覚えている。そして、22時3分に目の前で起こったことも。

まるで永遠に時を止められてしまったかのようなあの衝撃は一生忘れることはないだろう。

そして約3千人にのぼる犠牲者の遺族の方々にとっては、いまだにあの9月11日から歩みを進められない人々も多いであろうことは想像に難くない。

一方で9.11後、急速に保守化したアメリカの常軌を逸した暴走は、アフガン、イラクで繰り広げられた対テロ戦争という名の報復により10万人ともいわれる犠牲者を出している。

9.11から始まった負の連鎖は今なお世界に大きな傷跡を残しつづけているのだ。

そのことを鑑みるに、いくらあれから5年経って冷静さを取り戻そうとも、9.11を物語ることにおいてフィクションや創作が入り込む余地など一寸もないことは明らかだろう。

それゆえエンタメ帝国ハリウッドと9.11がはたして結びつくのかという疑問は、オリバー・ストーンの「ワールド・トレード・センター」を見ても感じてしまったし、9.11を物語り描くことにおいてのテーマと意義は、ことさら大仰に傷を暴き立て掘り返すことなどではなく、ただ“真実”と“鎮魂”しかないのだということも不気味なほど冷静なオリバー・ストーンの姿勢と演出を目の当たりにして感じた。

9.11に対して陰謀論なども取りざたされる中で、“真実”と“鎮魂”を描くフィクションや創作たりえない物語を撮るには、今作のようなドラマ性や作り手の意思・主張を排除した疑似ドキュメンタリーになるのは当然の帰結だっただろうと思う。

ハッピーエンドではないと分かっている物語を手持ちカメラのブレのみが揺り動かし、リアルな感情を引き出していく。今までありそうでなかった斬新かつよく出来た演出だと思う。

が、、、一個の映画として見るには「ワールド・トレード・センター」同様、物足りなさを感じてしまったのもたしかだ。

アメリカとアメリカ映画がいつかは踏み越えていかなければならない9.11というテキストに5年経って手を付けたという意味では、映画としてどうこうというよりもメモリアルな作品としての意味合いの方が強いのかもしれない。

唯一この映画でメッセージ性を出したと思われるシーンが、飛行機内で神に必死で祈りを捧げるキリスト教徒とイスラム教徒が同じフレーム内に収まっているシーンだと思うが、それを見てなんともやり切れない複雑な悲しい気持ちになってしまった。

神って、、祈りって、、何のためにあるんだろう。。人殺しをするためにあるものでは決してないはずなのに・・・。

こんな悲しい映画が作られなくて済むような世の中になってほしいものです。。

Posted at 2007.06.15

2015年5月26日 (火)

夢のシネマパラダイス479番シアター:ハードボイルドは男の美学

アウトロー

Poster出演:トム・クルーズ、ロザムンド・パイク、リチャード・ジェンキンス、デヴィッド・オイェロウォ、ヴェルナー・ヘルツォーク、ロバート・デュバル

監督・脚本:クリストファー・マッカリー

(2012年・アメリカ・130分)WOWOW

内容:ピッツバーグで5人の男女が狙撃銃で殺害される無差別殺人事件が発生。現場に残された遺留品から、イラクに従軍していた陸軍狙撃兵ジェームズ・バーが容疑者として逮捕された。警察の取り調べに黙秘を続けるジェームズは、元米軍の秘密捜査官ジャック・リーチャーへの連絡を要求する。ところがその直後、ジェームズは護送中に他の囚人に襲われ意識不明の重体に。そんな中、ジャック・リーチャーがどこからともなく現われる・・・。

評価★★★☆/70点

顔と名前だけで客が呼べるハリウッドのドル箱スターシステムは00年代以降完全に廃れてしまったといっていい中で、いまだにミスターハリウッドであり続けるトム・クルーズは稀少な絶滅危惧種である王道スターだ。

それは言いかえれば演技力よりスターオーラの方が勝ってしまうタイプということができるけど、例えばキムタクがどんな役を演じようともキムタクにしかならないように、トムもどんな映画をやろうがトム・クルーズ映画にしかならない。

キューブリック、オリバー・ストーン、レッドフォード、スピルバーグ、ロン・ハワード、デパルマ、マイケル・マン、キャメロン・クロウ、JJエイブラムズetc..とこれだけ名の知れた大物作家や新進気鋭の監督と組んでもトム・クルーズというブランドイメージが消えないというのはある意味別格に凄いことだと思う。

しかも、そのブランドイメージはカジュアルでクリーンなものなので、ことさらスター気取りというクドさが感じられないのもトム・クルーズ特有の強みで、自己プロデュース能力に関しては天賦の才を持っているといっていい。それが長くハリウッドの顔であり続けられる理由なのだろう。見る側としてもトム・クルーズというキャラクターを承知の上でとりあえず見てみようという気になってしまうのだからw

しかし、そんな王道の中の王道スターがアウトロー役というのは本来なら相容れないキャラクターのはずで、例えばミッション・インポッシブルシリーズのイーサン・ハントのようなヒーローアクションのひな形とは真逆のアプローチがうまくフィットするのだろうかというイメージのしづらさはあった。

また、初の悪役を演じた「コラテラル」が映画としていまいちスッキリしなかったことも頭にあって、ハードボイルドはトム・クルーズにはどうなんだろうという不安もあった。

しかし、フタを開けてみれば一匹狼の元軍人という役柄は思った以上にフィットしていてよく出来ていたと思う。

これにはトムの魅力の他に話の作り方も大きく関与したといっていい。

アウトローというと、えてして復讐譚を軸とし、たった一人で法で裁かれない巨悪に立ち向かうのが定石なのだけど、この映画は“復讐”ではなく“正義”を軸とすることで、アウトローでありながらヒーローというありそうでなかったキャラクターを作り上げた。これだとトムの魅力を削がずにうまく合わせられることができるだろうし、ヒールに徹した「コラテラル」ほどの無理さもない。

実はこれは「シェーン」などの西部劇の作劇とほぼ同じだと思うのだけど、これを現代劇として当てはめたことが新鮮で面白かったと思う。大団円の採石場での決闘なんてイーストウッド西部劇に出てきそうなシチュエーションで面白かったし。

シリーズ化するにはやや地味めな気がするけど、もしその企画を通すのであれば、ジャック・リーチャーとは何者なのか、彼を真にアウトローたらしめている奥底にあるべき“喪失”を描かなければ意味がないと思う。そういう点で、それこそイーストウッドに監督させたら絶対に見たいと思わせる魅力はあるんだけどねw

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ダーティハリー

00000436165l 出演:クリント・イーストウッド、ハリー・ガーディノ、アンディ・ロビンソン

監督:ドン・シーゲル

(1971年・アメリカ・103分)NHK-BS

評価★★★/65点

内容:性格異常の殺人狂を追う刑事の冷酷非情な執念を描いた犯罪アクション。サンフランシスコのビルの屋上から一般市民が銃撃される事件が起きた。犯人は10万ドルを要求し、支払わなければ次の犠牲者を狙うと警察に通告する。殺人課の敏腕刑事ハリーは犯人を待ち伏せするが、激しい銃撃戦の末に犯人を取り逃がしてしまった。その後、犯人は14歳の少女を誘拐して20万ドルの身代金を要求。ハリーは20万ドルを手に、犯人の指定したマリーナへと向かった・・。

“44マグナムよりも女の素っ裸の方が多く出てきたと思ったのは、気のせいか・・・。”

なんか1870年代の西部劇を100年後のサンフランシスコにそのまま移し変えただけのようなかんじ。

1870年代だったら“ヒーロー”ハリーになっただろうが、100年経った現代アメリカ社会では“ダーティ”ハリーになっちゃうってことなのかな。

しかし、趣味で人殺しをする殺人鬼(アンディ・ロビンソン)はハリー以上に法の限度を超越しとるやろ。法の掟などなんのそののハリーじゃないとどうにもならないのではないかな、とも思ってしまったのもたしかだ。。

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ブリット(1968年・アメリカ・114分)NHK-BS

 監督:ピーター・イェーツ

 出演:スティーヴ・マックイーン、ジャクリーン・ビセット、ロバート・ヴォーン、ロバート・デュバル

 内容:サンフランシスコの街に、仲間を裏切って200万ドルの金を持ち逃げしたシカゴのギャングが潜入した。ある裁判の証人としてこの男の証言を必要としている政治家チャルマースは、男の護衛を一匹狼の刑事ブリットに命じる。ところが、ブリットの油断から男が何者かに射殺されてしまった。ブリットは、男が生きているように見せかけて敵をおびき出そうとするが・・・。

評価★★★/65点

マックイーンといえば「大脱走」「パピヨン」「ゲッタウェイ」において逃走の美学を自由気ままに体現したイメージが強いけど、今作における追走の美学を体現した硬派なマックイーンもめちゃくちゃ良い。

タートルネックをあんなにカッコ良く着こなす男をマックイーン以外に自分は知らない。

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夜の大捜査線(1967年・アメリカ・109分)NHK-BS

 監督:ノーマン・ジュイソン

 出演:シドニー・ポワチエ、ロッド・スタイガー、ウォーレン・オーツ

 内容:ミシシッピーの田舎町。パトロールの警官が路上に殺人死体を発見。捜査が開始され、駅で張り込み中の警官が列車を待っていた黒人を容疑者として連行してくる。ところが、その黒人はフィラデルフィア警察殺人課の敏腕刑事ティッブスで、故郷の母を訪ねた帰途であった。殺人事件を扱ったことのない署長のギレスビーは、ベテランのティッブスに協力を求めたいと思ったが、人種偏見の強い土地柄、彼自身も黒人に頭を下げる気にはなれずにいた・・。

評価★★★★/75点

道なき道を切り拓いてきたポワチエその人から発せられるオーラと佇まいがそのままティッブスにのり移っているのも凄みがあるが、ガムを噛みながらコーラを飲むロッド・スタイガーの田舎の頑固なオッサン臭にも凄いものがある。

好対照な2人の見事なブレンド!

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刑事ジョン・ブック/目撃者(1985年・アメリカ・113分)NHK-BS

 監督:ピーター・ウィアー

 出演:ハリソン・フォード、ケリー・マクギリス、ルーカス・ハース、ダニー・グローバー

 内容:独自のコミュニティを作り、信仰のもと簡素な生活を送るアーミッシュの少年サミュエルは、殺人事件を目撃してしまう。刑事ジョン・ブックは捜査への協力を依頼するが、サミュエルの母親は他者との関わりを恐れて協力を拒もうとする。ところが、ようやくサミュエルが明かした犯人は警察の麻薬課長で、真相を知ったブックは母子とともに命を狙われてしまう・・・。

評価★★★★/75点

本当の題名は「刑事ジョン・ブック/のぞき見男」だと思うんだけど・・(笑)。

それはさておき、M・ナイト・シャマランの「ヴィレッジ」(2004)に出てきそうなアーミッシュの人々。黒服を着た彼らは、まるで西部開拓時代の「大草原の小さな家」に出てきそうな人々なんだけど、現代文明の中では奇異に映るその姿からは変な新興宗教をも想起させる。

しかし、その創始は17世紀のスイスにあるんだそうで。その後、弾圧を受けた彼らはアメリカに移住し、そこで自給自足の生活を営み、アメリカに入植した18世紀そのままの生活様式を守っているという。

しかも厳格な聖書解釈に基づき、あらゆる文明機器を使用せず、投票や徴兵などアメリカ国民の権利や義務さえ拒否しているというんだから徹底してるわな。

しかし、そんな禁欲社会にカッコいいバリバリの白人男がやって来たら、、、という異文化コミュニケーションがこのての刑事ドラマにしてはかなりしっかり描かれていて好印象だし、ちとエロイのも良いww

見てはいけないものを見てしまった、知ってはいけないことを知ってしまったという人間心理をくすぐる構成が大人の恋愛劇と絡めて上手くまとめられていてなかなかに偏差値は高い映画だと思うな。

ケリー・マクギリス、、イイです

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ヒート(1995年・アメリカ・171分)仙台第1東宝

 監督・脚本:マイケル・マン

 出演:アル・パチーノ、ロバート・デ・ニーロ、バル・キルマー、ジョン・ボイト、トム・サイズモア

 内容:ロサンゼルスの犯罪組織のボス、ニール・マッコーリー(デ・ニーロ)は、クリス(バル・キルマー)、チェリト(サイズモア)らと現金輸送車を襲い有価証券を強奪。捜査にあたるロス市警の敏腕刑事ヴィンセント(パチーノ)は、少ない手がかりから次第にマッコーリーたちへ近づいていく・・・。12分間に及ぶ市街での銃撃戦は映画史に残るド迫力。

評価★★★☆/70点

“敵”と書いて“とも”と呼ぶ。そんな漢(おとこ)映画!

まぁ、古臭いっちゃあ古臭いんだけど・・。しかも下手するとただの傷の舐め合い、いや馴れ合いでっせ。

しかし、そこはさすがのロバート・デニパチーノ。なんとか見れたけど。

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フレンチ・コネクション

Lbfawpzu出演:ジーン・ハックマン、フェルナンド・レイ、ロイ・シャイダー

監督:ウィリアム・フリードキン

(1971年・アメリカ・105分)NHK-BS

内容:NY市警の実在の2人の刑事の活躍を描いたノンフィクションをもとにしたポリスアクション。NYのブルックリンでジミー・ドイルとバディ・ロッソの2人の刑事は、麻薬の密輸ルートを追求していたが、ドイルはこの仕事に深く関与するにつれて命を狙われるようになる。やがて2人は張り込み中のチンピラが事業家を装ってマルセイユからやって来た中年紳士シェルニエと接触するところを突き止め、尾行を開始。そしてフレンチ・コネクションと呼ばれる大犯罪組織の解明に乗り出していくのだが・・・。アカデミー賞で作品・監督賞など5部門で受賞した。

評価★★★★/75点

“地獄の果てまで追いかける!!”

たとえ世の子供たちに夢を与えるサンタクロースになろうとも、その足で、その執念で、その野蛮な目つきで、その獰猛な嗅覚で、とにかく走って走って走りまくって犯人たちを執拗に追いつめていく。

ポパイことジミー・ドイルに追っかけられたらもう最後。車に乗ろうが電車に乗ろうが金をいくら積もうが逃げつく先に待つのは地獄の門番ジミー・ドイルその人なのだから。

問答無用の存在にしばし言葉も出ず・・。

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フレンチ・コネクション2(1975年・アメリカ・119分)NHK-BS

 監督:ジョン・フランケンハイマー

 出演:ジーン・ハックマン、フェルナンド・レイ、ベルナール・フレッソン

 内容:前作で逃げられた麻薬密輸組織のボス、シャルニエを追ってフランスへ渡るNY市警のドイル刑事。しかし逆に組織に捕らえられ、彼は麻薬漬けにされてしまう・・・。麻薬組織壊滅に執念を燃やす“ポパイ”ことドイル刑事の活躍を描いた刑事アクション第2弾。

評価★★★/65点

1作目をはるかに上回っている、、、、無法者度が・・・。

ヤク打ちまくって放火して殴るわ蹴るわ銃ブッ放すわ、まるで西部劇の無法地帯からやって来たかのような、主人公にあるまじき姿をさらけ出しまくりのトンでもねえオッサンもとい主人公ポパイ。

おまけに42.195km追っかけてくるだけの走力と執念を持ちあわせているのだから、たまったもんじゃない。

オイラの住む街には絶対に来ないで下さい。。

2015年3月12日 (木)

夢のシネマパラダイス369番シアター:私はココで生きていく!

みなさん、さようなら

Minasan_poster_600出演:濱田岳、倉科カナ、永山絢斗、波瑠、ナオミ・オルテガ、田中圭、ベンガル、大塚寧々

監督・脚本:中村義洋

(2012年・日本・120分)WOWOW

内容:1981年。マンモス団地に暮らす中学1年の悟は突然、「一生、団地の中だけで生きていく!」と宣言し、敷地から出ずに学校へも行かなくなった。しかし、規則正しい生活に努め、夜には団地のパトロールも欠かさない。そんな悟は16歳で団地内のケーキ屋に就職、その後恋人もでき、順風満帆な団地生活が続くかと思われたが、その間にも107人いた団地の同級生は次々と団地を去って行った・・・。

評価★★★/65点

団地の中から外に出ないで一生を生きていくと決めた主人公という奇想天外な設定には、社会問題となっている引きこもりやモラトリアムからの自立、また朽ちゆく団地そのものに豊かさを次世代につなげることができずに停滞化していく日本の現状を重ねたりといった様々なメタファーを見出すことが可能ではある。

いや、それどころか“団地”を別なワードに置き換えれば、自分の殻を打ち破ってその世界から外に出ることがいかに難しいことかというのは容易に理解ができることだ。

なのに、どこかでだからどうしたと冷めた視線で見てしまったのは、脱力コメディのノリとセットになるべき不条理性がなかったのと、団地から出ない理由がトラウマにあると明らかにされた途端、永遠につづく日常という寓話性がなくなって、ただのグダグダな物語になっちゃったかんじで面白くなかったからだ。

まぁ、そもそも寓話として見るにしても下系が過ぎてダメなんだけどねw

でも、12歳から30歳までをフツーに演じられる濱田岳はやはり凄いと思う。

ところで最近、“普通であること”を求めるフレーズを様々な映画で見聞きすることが多くなった。今回も倉科カナが涙ながらに普通でいたいと願っていて、あっ!また来たなと思ったけど、現在の閉塞的な社会状況と何か影響し合ってるのかね。。

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夜を賭けて

Xjbmamxqu 出演:山本太郎、ユー・ヒョンギョン、山田純大、樹木希林、李麗仙、清川虹子、唐十郎、奥田瑛二、風吹ジュン

監督:金守珍

(2002年・日本・133分)シネ・アミューズ

評価★★★★/80点

内容:1958年、大阪。かつて東洋一を誇った兵器工場跡地近辺に朝鮮人部落があった。ある日、その住人のヨドギ婆が、工場跡地から鉄クズを掘り起こして大金を得た。その噂は瞬く間に集落の住人たちに広まっていく。そんな時、かつて集落に住んでいた金義夫が帰ってきた。義夫たちも鉄クズ盗みを始め、そのうち彼らは“アパッチ”と呼ばれるようになる。しかし、鉄クズは国有財産のため、警察の取り締まりは日々厳しくなっていき・・・。

“今ではもはやアナクロとなってしまったアツさを画面に甦らせようと、モノづくりの情熱を賭けてジタバタドタバタ懸命に悪戦苦闘している姿に好感を覚えずにはいられない。”

アツさ、アツいことが表舞台を大手を振って歩けたのはひと昔もふた昔も前のこと。今それを直球で描こうというのは恥ずかしいとされる時代である。

さらに、そのアツさを描けたとしてもそれが直球であればあるほどコメディにしかならなくなってしまうというジレンマを抱えてしまう。

アツいことはもうすでに時代遅れのお寒いものなのだ。

がしかし、その点でこの映画を観ると、危うさはあるがギリギリ成功している映画だといえるのではないだろうか。

下手をするとドタバタ喜劇に陥ってしまう一歩手前でしっかりと地に足をつけ現実を直視している映画だといえると思う。

だが、下手をするとと述べたように、あくまでも危うさは抱えている。

ひと昔前ふた昔前のアツい映画にはなんといっても“鬱陶しさ”があった。

それはベットリとしたむさ苦しさであり、焼けつくような匂いであり、どす黒い汚さであり、それらがみなぎる生へとつながっていく。

みなぎる生とはつまり“人間”である。

この映画には、その“鬱陶しさ”がない。

ゆえにこの映画のアツさとは、湿度がない汗をかかないアツさなのだ。

言葉を変えれば軽い。重い剛速球ではなく軽い直球といったところか。

そういう意味ではやはり今の時代を反映してスマートなのだが、今の時代ではここまでが限界だろう。

しかもこれを在日ではないフツーの日本人だけで描けたかどうか。

たぶん無理。

アツさがまだちゃんと生きている朝鮮半島の血、そしてそれを受け継いできた在日の人たちの力がなければ今こういう映画を作り上げるというのは難しいだろう。

日本の役者陣もそれに応えてよく頑張ったと思うけどね。

うん、良い映画だ。

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ホテル・ハイビスカス

Cpdgdxuyyz 出演:蔵下穂波、照屋政雄、余貴美子、平良とみ、ネスミス

監督:中江裕司

(2002年・日本・92分)DVD

評価★★★/65点

内容:沖縄の名護にある家族経営の宿「ホテル・ハイビスカス」(ちなみに客室はたった1室)。三線とビリヤードが得意な父ちゃん、働き者で美人のチヨコ母ちゃん、黒人とのハーフのケンジ兄にぃ、白人とのハーフのサチコ姉ねぇ、そしていつもくわえタバコのおばぁ。小学3年の美恵子はこんな“インタァナソナル”な家族に囲まれ楽しい毎日を過ごしていた。。。

“ま、ようするに何が言いたいかっていうと、、、沖縄はエエところだっちゅうことサァ!それが分かればエエ。”

「男はつらいよハイビスカスの花」で沖縄の魅力にとりつかれた自分の飛行機初体験が沖縄だった。

車走らせてると、どこまで続いてるんだと思うくらいフェンスが延々と巡らされてて、不思議に思って後で尋ねたら米軍基地のフェンスだと地元のおじいが教えてくれたっけ。

重い歴史を今も変わらず背負っているところではあるんだけど、それも含めてほんとエエ所なんだよね。

ヨーシ、洗剤1年分ホテル・ハイビスカスに贈呈ダァッ!!新しい洗濯機も入ったみたいだしネ。

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永遠のアフリカ(2000年・アメリカ・114分)NHK-BS

 監督:ヒュー・ハドソン

 出演:キム・ベイシンガー、バンサン・ペレーズ、エバ・マリー・セイント

 内容:イタリアの上流階級で優雅な生活を送るクーキーは、ある日、恋人のパウロからアフリカで生活したときの話を聞く。幼いころからアフリカに憧れていた彼女は、母親の反対を押し切りパウロと一人息子の3人でアフリカへと旅立つ。

評価★★★/65点

学生時代、ケニアの留学生がこんな事言ってたな。

アフリカのほとんどの人たちは日本と同じで、動物園に行かないとキリンやゾウやライオンを見ることはできないと。

まぁ考えてみりゃそうだよな(笑)。

でもアフリカのイメージってどうしてもこの映画に出てくる大自然そのものだしねぇ・・・。

まだオイラには遠くて遠いところなんだなアフリカって。そんなことを考えさせられたりもしました。

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アンジェラの灰(1999年・アメリカ・145分)NHK-BS

 監督:アラン・パーカー

 出演:エミリー・ワトソン、ロバート・カーライル、マイケル・リッジ、ジョー・ブリーン

 内容:1930年代アイルランドの街リムリック。マラキとアンジェラは5人の子供に恵まれていたが、マラキは仕事もなく、失業手当すら酒代に使ってしまうダメ親父。アンジェラはそんな夫の尻を叩く毎日だが、ひとりまたひとりと子供たちが天国へ旅立っていってしまう。そんな中、長男のフランクは自由の国アメリカへ行くことを夢見ながら毎日を懸命に生きていく。。

評価★★★☆/70点

“「わたしは神を信じますがここまでの仕打ちが続くとさすがに疑わざるを得ません。」、、、ってなんでお前が言えんねん!このゴキブリ糞親父!”

神さまがお手上げなのは、お前の飲んだくれとバカ気位の高さと果て無き性欲だろがボケ(笑)。

そのせいでアンジェラは真っ白に燃えつきて灰になりましたとさ、、と思ったら灰になったのは金貸し強欲ババァだったというオチ。。

神さまはお手上げです、ハイ。

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マグノリアの花たち(1989年・アメリカ・116分)WOWOW

 監督:ハーバート・ロス

 出演:サリー・フィールド、ジュリア・ロバーツ、シャーリー・マクレーン、ドリー・パートン

 内容:アメリカ南部の小さな町を舞台に、6人の女性たちの愛と友情を映し出していく。シェルビーの結婚式の日、トルーヴィーの美容院には常連客が集まっていた。シェルビーの母マリン、町長の未亡人で温厚なクレリー、金持ちの未亡人で偏屈なウィザーたちだ。半年後のクリスマスの日、シェルビーは妊娠を発表したがマリンは素直に喜べない。シェルビーは糖尿病で、子供を産んではいけない体だったのだ・・・。

評価★★★/60点

“あの女性陣にとっては、ロットを頭に巻いてただダベッていることが実は何よりも1番幸せなひとときなのかもね。”

井戸端会議してるときの奥さま方の目って爛々と光り輝いてるもんな・・・。

ま、男のオレには何がおもろいのかよく分からんが(笑)。。。

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ケス

198 出演:デヴィッド・ブラッドレイ、リン・ペリー、コリン・ウェランド、フレディ・フレッチャー

監督:ケネス・ローチ

(1969年・イギリス・112分)1996/07/26・シネ・アミューズ

評価★★★★/80点

内容:イングランド北部ヨークシャー地方の寂れた炭坑町バーンズリーに住むビリー・キャスパーは年の離れた兄とケンカが絶えず、学校でもチビでおとなしい地味な少年。ある日、ビリーは修道院跡でハヤブサの巣を見つけ、巣からヒナを持ち帰り、そのヒナをケスと名付けて飼育を始める。ケスの調教は日ごとに成果を見せていくが、ひょんなことから悲劇が起きてしまう・・・。ハヤブサと戯れることだけが生きがいの労働者階級の少年の姿を、叙情性と冷酷さが同居する鮮やかなタッチで描き出した秀作。

“味も素っ気もない風景、味も素っ気もない日常、何の飾り気もない描写。しかしこれらもバイタリティーにあふれた子供たちの手にかかれば味のある色が付くのです。”

体育の授業でサッカーやってる場面が1番ウケる。

子供相手にマジになってる負けず嫌いの先公。しかもマンUの背番号9のユニ着てるんだもんなぁ。授業じゃねえよあれは(笑)。

ボビー・チャールトンに憧れるビールっ腹のオヤジ。ああいうオヤジ今でもいるんだよね。スカパーでプレミアリーグ見てるとああいうオヤジだらけだもん。

でも苛酷な環境の厳しい映画の中での何とも微笑ましいシーンだったね。

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