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2020年12月30日 (水)

夢のシネマパラダイス151番シアター:新聞記者

新聞記者

20190214shimbunkisha_full出演:シム・ウンギョン、松坂桃李、本田翼、岡山天音、西田尚美、高橋和也、北村有起哉、田中哲司

監督:藤井道人

(2019年・日本・113分)WOWOW

内容:日本人の父と韓国人の母のもとアメリカで育った東都新聞の社会部記者・吉岡(シム・ウンギョン)。ある日、社会部に医療系大学新設計画に関する匿名のFAXが届き、吉岡は上司の陣野(北村有起哉)からその極秘文書の裏を取るよう指示される。そして彼女は内閣府の神崎(高橋和也)という人物にたどり着く。一方、外務省から内閣情報調査室へ出向している杉原(松坂桃李)は、政権を維持するために情報操作する仕事に悩みながら日々を送っていた。そんな中、外務省時代の上司だった神崎が自殺してしまう・・・。

評価★★★★★/90点

ウォーターゲート事件を題材にした「大統領の陰謀」とその前日譚でベトナム戦争の愚行に迫る「ペンタゴンペーパーズ」、イラク戦争の大義の欺まんを暴く「記者たち衝撃と畏怖の真実」、原発問題に切り込む「チャイナシンドローム」、巨大宗教権力の闇に挑む「スポットライト世紀のスクープ」、政治権力に対するジャーナリズムの矜持を描いた「グッドナイト&グッドラック」etc..

“ペンは剣よりも強し”な実録社会派ドラマを量産してきたアメリカ映画の懐の深さに羨ましさを感じてきた中、まさか令和の時代に攻めに攻めたポリティカルサスペンスを日本映画で見ることができるとは思いもよらなかった。

しかも、憲政史上最長政権が健在だった中でガッツリ批判的な内容を一目でそれと分かるように描いてしまうのだから、その映画人としての勇気は大いに買いたいところ。

ただ、その気概が強すぎて娯楽作品としての遊びがないのと、総理に直結しながら霞が関の中でも実態がよく分からないとされる内閣情報調査室と田中哲司の仏頂面を権力体制の象徴として描き、政治家を一切出さないのも映画の奥行きを狭めたきらいはある。

まぁ、映画原案の東京新聞・望月衣塑子記者や元文部官僚が劇中のTV座談会に実際に登場するくらいだから、政権批判のベクトルに前のめりになる作りになるのは当初の狙いだったのだろうけど。

あと、キャラ設定にやや難ありだったとはいえ、主演女優のシム・ウンギョンの頑張りは大いに認めたいところ。

聞くところによると日本人女優がことごとくオファーを蹴ったということで白羽の矢が立ったらしいけど、望月記者に密着した森達也監督のドキュメンタリー映画の中で、彼女に対して朝鮮人呼ばわりする脅迫クレーマーが出てきたので、それに対する強烈な意趣返しだとしたら面白かったのに。

ちなみに、望月記者当人は感情の湿りが強い映画のシム・ウンギョンとは真逆の佐藤仁美みたいな男勝りキャラだったw

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スポットライト 世紀のスクープ

Spotlight560x840出演:マーク・ラファロ、マイケル・キートン、レイチェル・マクアダムス、リーヴ・シュレイバー、ビリー・クラダップ、スタンリー・トゥッチ

監督:トム・マッカーシー

(2015年・アメリカ・128分)WOWOW

内容:2001年、ボストン。地元のボストン・グローブ新聞社に編集局長として赴任したマーティ・バロンは、ゲーガン事件-神父による80人にものぼる子供への性的虐待事件-の見直しを命じる。しかし読者の多くをカトリック信者が占める中ではタブーとされる醜聞であり、幹部は難色を示す。そんな中でウォルター・ロビンソンら4人の記者たち“スポットライト”チームに事件の調査取材が任された・・・。

評価★★★/65点

いくら世界で最も宗教に疎い日本人のひとりとはいえ、ひとつの街で250人もの神父が児童の性的虐待に関わっていた事実、そしてこれは世界的にみれば氷山の一角にすぎないという事実には驚きを通り越してドン引きするしかない。

なんだけど、あまりにも実話としての重みがセンセーショナルすぎて各方面への配慮と慎重さが求められたのか、映画のプロット構築が真面目すぎて、角の立たない無難な作りに終始してる感が強かったかなぁ。

スポットライトのチームスタッフにあっても主人公を置かず、被害者は不特定多数、加害者は教会組織という中で個人の顔がなかなか見えてこなくて、そこが物足りない部分だったのかなという気はする。

まぁ、意図した作りだったんだろうし、その土地と教会が密接に結びついているアメリカ社会においてタブーに切り込んだだけでも評価すべきことなのかもしれないけど、これでアカデミー賞てのは正直意外。。

ただ、声なき声にスポットライトを当てるジャーナリズムの使命を疎かにしてしまった自省という面を重くとらえている向きもあって、ジャーナリズム=正義として必ずしも描こうとしていないところが、この映画の誠実さを如実に示しているところではあるんだよね。

しかしまぁ、事実は小説より奇なりとはいうけど、ここまでおぞましい事実を突きつけられるとなんだかねぇ・・。

教会は万能で何でもできるというセリフがあったけど、キリスト教に全くの門外漢な自分としては、教会が地域で果たす役割やその聖域性を肌で知っていれば、この映画に対する見方もかなり違ってくるんだろうなぁとは思った。だって警察や弁護士はじめ地域も薄々感づいていたわけでしょ。けど子供を守るべき大人が声を上げられない動けないってどんだけ硬直した社会なんだよ・・・。

日本でも教師のわいせつ事件とかビックリするくらい多いらしいけど、学校も閉鎖空間だし、もう第3者のカウンセラーとか学校に常設してオープンにするとか、あるいはそういう輩にはGPS付けるしか防ぎようがないと思うな。

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消されたヘッドライン

1 出演:ラッセル・クロウ、ベン・アフレック、レイチェル・マクアダムス、ヘレン・ミレン、ジェイソン・ベイトマン、ロビン・ライト・ペン

監督:ケヴィン・マクドナルド

(2009年・米・127分)WOWOW

 

内容:ワシントンDC。ある夜、ヤク中の黒人少年が何者かに射殺され、地元紙ワシントン・グローブの記者カル・マカフリーが取材を開始する。その翌朝、コリンズ下院議員の秘書ソニアが地下鉄で不審な死を遂げる。マスコミがコリンズとソニアの不倫疑惑を一斉に報じる中、コリンズは旧知の間柄であるカルにソニアの死は自殺ではないと主張する。カルは女性新米記者デラとともに取材を進めていくが・・・。

評価★★★☆/70点

真実を追い求めようとする者の姿ほどアツい人間力が発揮されるものはない。

銃という飛び道具を持つ刑事よりも、ペンと足と信用で勝負する新聞記者の方がより人間力が試されるという点で、個人的には新聞記者を描いた映画はかなり好みの部類。

骨太な社会派「紳士協定」(1947)やラブロマンス「ローマの休日」(1953)、戦場の真実を追った「キリング・フィールド」(1984)など古今を問わず様々なジャンルに及んでいるけど、やはり「クライマーズ・ハイ」(2008)のような新聞社を舞台にした作品や、権力を監視することが本来の職務であるジャーナリスト魂を感じさせる「大統領の陰謀」(1976)のような作品が好きかな。

その点でいえば、今回の映画はドンピシャのネタだと思うんだけども、軍産複合体の実態にジワリジワリと迫っていくプロセスはスリリングで面白かったものの、結局最後に個人の問題に帰結してしまったどんでん返しにはいささか辟易してしまった。

巨悪の闇を隠そうと事件を矮小化しようとする権力側とそれに対抗するジャーナリズムという「大統領の陰謀」的構図を踏襲しつつ、その裏側に売れることありきで針小棒大にネタを書き立てようとするメディアの危うさを盛り込んだのは買いなのだけど、さらにそこにひとひねり付け加えたことで、実は事実そのものが矮小なものだったのだというオチは、まるでピンと張り詰めた風船が一気にしぼんでしまったような呆気なさを感じて思わずガクッときてしまう。

誰よりも速く情報を知りたい、何よりもスキャンダラスなニュースを知りたいというWEB&メディア社会に生きる我々に対する皮肉とメディアへの警鐘が裏テーマとしてあったということなのだろうけど、ちょっと消化不良だったかな。

まぁ、とはいえ、ラッセル・クロウの一癖ある人物像や、脇に配された女性陣の印象深い存在感など役者陣はおおむね良かったし、二転三転する展開も面白く、見て損はない作品だとは思った。

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大統領の陰謀

Image848 出演:ロバート・レッドフォード、ダスティン・ホフマン、ジェイソン・ロバーズ

監督:アラン・J・パクラ

(1976年・アメリカ・132分)NHK-BS

評価★★★★/80点

 

内容:1972年6月17日、ワシントンのウォーターゲートビルにある民主党全国委員会本部に5人の男たちが侵入し逮捕された。男たちは盗聴器を仕掛けるために入り込んだが、共和党の狂信者による単独犯行として片付けられる。「ワシントン・ポスト」の若い記者バーンスタインとウッドワードは、事件の背後に何者かの陰謀を感じ取り、追跡調査に乗り出した。ウォーターゲート事件の真相究明に奔走した「ワシントン・ポスト」紙記者の実話の映画化。

“ディープ・スロートが始めからしゃべっとれば済む話ちゃうの?とついつい思ってしまう。。”

事件から30数年経った2005年に、ディープ・スロートの正体が元FBI副長官だったことが判明して一躍話題になっちゃったけど。

でも、この映画見ると、ラストでしゃべるくらいなら最初からしゃべっとけば逆に自分の身も安全だろうにと思っちゃった。。実際はどうだったのか分からんが。

そいえばX-ファイルにもディープ・スロートって出てきたっけ。この映画からきているのだろうか。

でもまぁ、この映画で気になったのはディープ・スロートくらいなもんで、他は全体を通していえばほぼ完璧ともいえる映画だったと思う。

幾層にも重なった断片的な情報の積み重ねを玉ネギの表皮を1枚1枚剥がしていくようにしっかりと描き出していく。

例えば、2万5千ドルの小切手にケネス・ダールバーグという名前を見つけるくだりでも、事務所になんとか入り込むために受付の女性との口八丁手八丁のやりとりをするところを手抜きをせずにちゃんと描く。

それによって、断片的な情報がより実体をもったものとして生きてくる。

そして、その積み重ねによって、最初は得体の知れない何かとしか分からなかったものの正体が徐々に明らかになっていく。

真実に辿り着くまでの過程の描き方が非常に緻密で素晴らしく、見ごたえのある作品になっていると思う。

ただ難点、アメリカ人にとっては難点じゃないだろうけど、特に初めてこの映画を見る日本人には見てるうちに何がナンだか分からなくなってくるのではないかなと。アメリカの選挙方式も含めて。。

恥ずかしながら自分も途中からわけが分からなくなったくちで・・。2回見てやっと理解。。

というのも関係者の人物名が多すぎて、人物関係がつかめなくなっちゃうんだよね。

ケネス・ダールバーグあたりまでは追えるけど、その後ずらりと次から次へとスタンズやらスローンやらポーター、、え?何者?カーンバック??カムバックじゃなくて?チェーピン???ホールドマンって誰?って黒幕かよ!

もうお手上げ~~。

結局2回目はメモしながら見たけど、これがけっこう凄い人物相関図になるのね。。

ハワード・ハントからチャールズ・コルソンとマレン社に枝分かれした後、ホールドマンに至るまでの流れがけっこうどころじゃなく凄い。

この映画に出てくるウォーターゲート事件に関連した人物名、ワシントンポスト勤務者以外でなんと25人くらいになります。これにウッドワード、バーンスタイン、ディープ・スロートなどを含めるとざっと30人にはなるんだよね。

脳の処理能力超えてるだろww

まあ逆にいえば2時間ちょいによく収めたなあってことなんだけど。

でもディープ・スロートが最初にしゃべっとけば、とやっぱり思っちゃうよねこれ・・。

2018年5月 3日 (木)

夢のシネマパラダイス302番シアター:お上に盾突くとは身の程知らずも大概にせい特集w

殿、利息でござる!

20160407103806出演:阿部サダヲ、瑛太、寺脇康文、きたろう、千葉雄大、西村雅彦、中本賢、妻夫木聡、竹内結子、羽生結弦、松田龍平、草笛光子、山崎努

監督・脚本:中村義洋

(2016年・松竹・129分)WOWOW

内容:江戸時代中期の仙台藩吉岡宿。藩から課される重税のため、百姓や町人の中には破産し夜逃げする者が後を絶たなかった。町の行く末を案じる造り酒屋の十三郎(阿部サダヲ)は、知恵者の篤平治(瑛太)からあるアイデアを打ち明けられる。それは、藩に大金を貸し付け、その利息で町の使役をまかなうというトンでもない奇策だった。必要な資金は千両(3億円)。話に乗った十三郎は出資者を集め始めるが・・・。

評価★★★/65点

物語の舞台となる吉岡宿、実は母親の実家の近所にありまして、えっ!?特に何もないあんな田舎の地区wが歴史ものの映画の舞台になるの!?とにわかには信じがたい目で見たんだけど、掘り起こせばあるんだねぇ色々な歴史が。

まさか百姓がお殿様に3億貸し付けるなんてことが本当にあったなんて。しかも1人3千万って豪農クラスになるとそこまでの大金持ってたのかと思うとビックリ

でも、この映画で描かれる“無私の日本人”っていかにも東北人らしいというか、岩手出身者としてなんか分かるなぁと思いつつ見てしまった。

地域のコミュニティを守るために見返りを求めない無私の精神-つつしみの心-で行動する。

個人の即物的な欲求ばかりがまかり通り、地域のつながりが低くなってきた今の日本ではあまり考えられないことだけど、東北人の中にはそういう公共に対する責任感とか共助の美徳がまだ根付いている部分があって、それこそ東日本大震災を見ても分かるように、お互い様の精神性がまだまだ残っているのだと思う。

まぁ、裏を返せば日本人独特の恥の文化が東北では色濃くあるということなのかもしれないけども。

しかし、そのためか登場人物が全員善人すぎてあまりにもつっかえる所がなくて逆に物足りなさも・・・。この生真面目さも東北人らしいとこだけど、もうちょいコメディ寄りでもよかったかも。

よしっ、今度吉岡通ったら今もあるという酒屋さんのぞいてみよっと♪

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県庁の星

Kencyo 出演:織田裕二、柴咲コウ、佐々木蔵之介、和田聰宏、紺野まひる、益岡徹

監督:西谷弘

(2006年・東宝・131分)盛岡フォーラム

評価★★★★/75点

内容:K県庁の35歳のエリート公務員、野村聡。ある時彼は、県政の目玉プログラムである民間企業との人事交流研修のメンバーに選ばれる。ところが、派遣されたのは田舎の三流スーパー「満天堂」。しかも、野村のお目付け役は、24歳のパート女性店員だった。プライドが高く、書類とマニュアル優先の仕事しか知らない野村はことあるごとに彼女と衝突してしまう・・・。

“県庁の何十階という高さから町を見下ろすことに慣れきった男が、3階建てスーパーから見るものとは!?”

民間の三流スーパーに派遣された“県庁の星”と期待されていたエリート公務員が、三流スーパーをどう改革するのか、というところからお話的に「スーパーの女」のようなハウツーものに流れていくのかと思っていたのだけど。。

しかし、あくまでも視点は織田裕二扮する野村聡の意識や心といった人間性に終始寄り添って、その変容の過程を主眼に描いていったのがなんとも秀逸だった。

形のみにこだわる公務員体質の野村が、“個人の顔”を直視し本当のマンパワーというものに気付いていくプロセスは見ていて面白かったし、妙に納得させられることしきりだった。

変革というのは制度や仕組み、システムを変えても、そこで働く人たちの意識が変わらなければただの形だけのものになり何の意味もないのだ、ということを身をもって経験した野村の晴れやかな表情が印象的だ。

やっぱ人間、一度奈落の底に落ちないと変わらないのかなぁ。自分みたいに奈落の底に落ちたまま這い上がれないカワイソス人間もいるけど・・

でも、一方では、なんかこの映画、出来レースぽいかんじもスゴイしたんだよね。

それは、要は野村という男の仕事に対する意識、ヤル気、スキルが半端ないくらい高いということに行き着くのだけども。

企画提案能力、情報処理能力、語学力(外国人従業員にそれぞれの言語でマニュアル本を作っちゃうんだから恐れ入る・・・)、書類作成能力、交渉力、計画力etc..ホンマにすきのないプロ中のプロやん。自分が持ち合わせてないものばかり・・

やっぱキャリア組って元から違うのね。。適当にやって半年ガマンすればいいんだ、と言いながらやってることはスゲェじゃねえか(笑)。生っ粋の目立ちたがり屋さんだし。

環境適応能力がちょっと不足していたのと過剰な自信の塊で覆われていたくらいなもので、マイナス要素と呼べるのは。逆にスーパー従業員の方がやる気あるの?みたいな。遅かれ早かれ改革されるだろこれは、と思っちゃう。とまぁ、そんな穿った見方もしちゃったんだけど。。

県庁の何十階という高さから町を見下ろすことに慣れきった男、その目線で民間へ行ってしまった男が、ほんのちょっと視線と目線を変えるだけで大事なコトに気付かされる。

それだけで意識は劇的に変わるのだということ、あとは彼の持ち合わせているプロなみの能力を適材適所で引き出していけば従業員の意識改革も含めて事はスムーズに運んでいくわけで、、改革順調!メデタシメデタシ。

ただ、大事なコトに気付かせてくれたのは、パート店員である二宮をはじめとするスーパーの皆だった。

官vs民バトルではなく官・民が相互に補い合って持ちつ持たれつガンバっていこーー♪で一件落着!

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金融腐蝕列島【呪縛】

Title1 出演:役所広司、椎名桔平、矢島健一、遠藤憲一、仲代達矢、根津甚八、風吹ジュン、若村麻由美

監督:原田眞人

(1999年・東映・115分)仙台フォーラム

内容:総会屋への多額の利益供与が発覚した朝日中央銀行に東京地検特捜部の捜査のメスが入る。経営陣はパニックに陥り、政財界の大物でもある黒幕、佐々木取締相談役の顔色ばかりをうかがう有り様。そんな上層部の態度に奮起した企画本部副部長で佐々木相談役の娘婿でもある北野をはじめとするミドル層と呼ばれる中堅行員たちは、銀行の悪しき因習を断ち切るべく再建のための改革を断行しようと立ち上がる。。

評価★★★★/80点

映画見てる最中、人物の立ち位置を異様なまでに意識させられたのはこれが初めてだ。なんか壮大な舞台劇を見たような気分。

改革を断行しようとする中堅組、自分たちの体裁を守ろうと組織のしがらみから抜け出せない上層部、皮肉たっぷりに描かれるマスコミ、この三者三様がめまぐるしく交錯してテンポも速く、アクション映画よりもアクション映画ぽかった。

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どら平太(2000年・日本・111分)NHK-BS

 監督:市川崑

 出演:役所広司、浅野ゆう子、宇崎竜童、片岡鶴太郎、石橋蓮司、石倉三郎、菅原文太

 内容:ある小藩の町奉行に着任した望月小平太は、その豪快ぶりから“どら平太”というあだ名までつく型破りな役人。彼はこの藩の壕外と呼ばれる売春や賭博が横行する藩の吹きだまり地区で権力を握る3人の親分の不正を正すべく動き出すが・・・。黒澤明、木下恵介、市川崑、小林正樹によって結成された「四騎の会」の第1回作品として共同執筆されながらもお蔵入りになっていた山本周五郎原作の時代劇を市川崑が映画化。

評価★★★/60点

“伏魔殿とやらはどこへやら。なぁんだ、実はみんないい奴じゃん・・・。”

この映画、現代の日本の政治と照らし合わせてみると意外に面白いかも。

ある小藩。ま、永田町のどこぞやの党ですか。改革を謳うどこぞやの首相が殿。

しかし改革をやるぞ!やります!やる!と言うだけで何ら行動しないお殿さま。一応、望月小平太を改革担当大臣に据える。んで改革実行は小平太に任せっきりでお殿様は最後まで姿を見せず。

そう、この映画、、お殿様が出てこない。。

一方、改革に乗り出した小平太のまわりには、いくつかの派閥に分かれてはいるが一応足並みが揃っている抵抗勢力の存在が。

上意!上意であるぞ!と叫びながら小平太は心血注いで改革に身を焦がす。

しかし殿は一向に姿を現さず。小平太は一人矢面に立って孤軍奮闘するのであった。ときにはバッサバッサと斬り捨てる痛みをともなう手段もとる小平太であったが、そこはさすがの小平太。刀の峰で討ったように命にかかわらない程度の最小限の痛みに抑えるのであった。

改革の本丸、壕外、それは悪の巣窟。汚辱と悪徳のゴミ溜め。財界、大企業、省庁、公団、社保庁、とまぁ次から次へと・・・。

しかし、一方では壕外から入ってくる献金、闇金が重要な財源となっているのもまた事実。

はたして小平太は癒着の毒の根を絶つことができるのでありましょうか。チャンチャン。

なんかこの映画の最後は内閣総辞職てなかんじで終わったけどね.とはいうものの冒頭に書いたように、なんかみんないい人になって終わるんだよね。

伏魔殿というよりは単なる馴れ合いだったか・・・。

2018年5月 2日 (水)

夢のシネマパラダイス358番シアター:潜入捜査は命がけ

土竜の唄 潜入捜査官REIJI

T02200310_0722101612825903589出演:生田斗真、仲里依紗、山田孝之、上地雄輔、的場浩司、遠藤憲一、岩城滉一、大杉漣、岡村隆史、堤真一

監督:三池崇史

(2014年・東宝・130分)DVD

内容:警察学校を史上最低の成績で卒業したダメ巡査の菊川玲二は、正義感だけは人一倍ある。が、ついに署長からクビを宣告されてしまう、、というのは表向きで、秘かに潜入捜査官(通称モグラ)としての密命が下されたのだ。その任務は、関東最大勢力“数寄矢会”に潜入し、4代目会長を挙げるという危険な任務だった・・・。

評価★★★★/75点

もはや飽きるを通り越して嫌悪感さえ催すこともしばしばになってきたクドカンワールド

が、今回は予想に反して大当たり

それはクドカンのシナリオの手癖をうまく咀嚼し、テンポ良く三池節に染め上げた演出力のなせる技にあるといっていいけど、「脳男」で不気味すぎるほどの静謐なオーラを醸し出していた生田斗真の180度異なるハジケっぷりも大いに貢献したといっていい。

予告編で印象的だった全裸で車のボンネットにくくり付けられて爆走するシーンがのっけから出てくるハイテンションに一気に映画の中に入っていけたけど、それを超える勢いで乗っかってきた生田斗真の体当たり演技には感服した。

そしてセルフ人間洗車、ホルモン蝶結び、タバスコ目薬、ゲテモノ不老不死ジュース、盃丸かじり、早漏防止術などヒネリも何もないカビの生えたような小ネタのマシンガン連発に大いに乗せられてしまったw

これだったら続編もあっていいかも。。

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X-ミッション

Poster2出演:エドガー・ラミレス、ルーク・ブレイシー、テリーサ・パーマー、デルロイ・リンドー

監督:エリクソン・コア

(2015年・独/中/米・114分)WOWOW

内容:Xスポーツのアスリートだったジョニー・ユタは、競技中の事故で親友を亡くしてしまう。そんな彼に目を付けたのはFBI捜査官ホールだった。巷ではXスポーツを駆使した犯罪集団による強盗事件が立て続けに発生。Xスポーツのカリスマであるボーディ率いるチームの関与が捜査線上に浮かび上がる中、FBIはユタを特別捜査官に任命し、ボーディのチームに潜入させることにするが・・・。

評価★★★/65点

映画を見終わった後にキアヌ・リーブスの出世作「ハートブルー」(1991)のリメイクと知って大仰天!それ早く教えてくれよ~と思ってしまったんだけど。。

というのもFBI捜査官が潜入捜査先のワルと固い友情で結ばれていくプロットがワイスピみたいで、そちらのベクトルで見ていたものだから、途中でそれが裏切られてただの凡庸なドンパチ映画になっちゃってガックリきてたんだよね。

山岳モトクロスから始まり、スカイダイブ、ウイングスーツでのベースジャンプ、サーフィン、スノボ、ロッククライミングなど繰り広げられる絶景パフォーマンスをスクリーンの大画面で見れば迫力が違ったんだろうなとちょっと後悔しつつ、それを抜きにしても見てるこちらのテンションがなかなか上がっていかなかったというのは、やはり取って付けたようなストーリー展開に魅力がないからと思われ・・。

こちらが見たかったのは人が死なない痛快作だったのに、シーシェパードにマシンガン持たせたらドン引きだろww

せっかくのCG無しという謳い文句もどこか宝の持ち腐れのような中途半端作だった。。

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インファナル・アフェア

Inf1出演:トニー・レオン、アンディ・ラウ、アンソニー・ウォン、エリック・ツァン、エディソン・チャン

監督:アンドリュー・ラウ

(2002年・香港・102分)MOVIX仙台

評価★★★★/80点

内容:ハリウッド史上最高額でリメイク権が落札された香港黒社会を舞台にしたサスペンスドラマ。1991年、ストリート育ちの青年ラウは香港マフィアに入ってすぐ、その優秀さに目を付けたボスによって警察学校に送り込まれる。一方、警察学校で優秀な成績を収めていた青年ヤンは、警視に能力を見込まれマフィアへの潜入を命じられる。やがて2人の青年は、偽りの身分の中で着実に実績を積みそれぞれの組織で重要なポストを与えられていく。そして10年後、麻薬取り引き絡みのもつれから警察、マフィア双方がスパイの存在に気付いてしまうのだった・・・。

“つかみはイマイチ、終り良ければすべて良しだ!”

ほとんど何の予備知識もなしで見に行ったのだけど、オープニングの不親切極まりないとってつけたような速攻プロローグでいきなりつまづいてしまった。顔の区別がつかねぇし。話の事態を理解するまでけっこうかかってしまった・・。

そんなわけで出だしは低調だったのだけど、しかし話が進めば進むほど加速度的に映画の中にのめり込んでいく自分をはっきりと認識することができた。圧倒的追い込みでクライマックスへとなだれ込んでいき、もう目が離せないとはこのことよw

しかし画面を支配しているのはあくまでも“静”。

だって1番あからさまな“動”っていったら指の動きぐらいじゃん(笑)。

この映画全体を支配しているのは、視線、空気、音、思考、疑念といった静であり、それら“静”の中でふつふつと“動”がみなぎっているのだ。

例えていえば、冷えた水風呂に焼け石を放り込んだといえばいいだろうか。そんなふつふつと上昇してくるような状態。

逆に焼け石に水風呂の水をぶっかけてもまさに焼け石に水だから何の効果も意味もないわけで。ただヌルくなるだけ。

そういうところはこの映画しっかりと分かっていらっしゃる。拍手。

えっ?ハリウッドがリメイク?“動”全快のハリウッドが・・・?

「焼け石に水」にならなきゃいいけど

Posted at 2003.10.21

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インファナル・アフェアⅡ無間序曲

Inf2 出演:エディソン・チャン、ショーン・ユー、アンソニー・ウォン、エリック・ツァン、カリーナ・ラウ

監督:アンドリュー・ラウ

(2003年・香港・119分)盛岡フォーラム

評価★★★★/80点

内容:1991年、香港マフィアのボスであるクワンが暗殺された。手を下したラウは警察学校に送り込まれ、一方、クワンの私生児であることが発覚したため警察学校を退学になってしまったヤンは、ウォン警部に拾われ、組織への潜入を命じられる。前作の10年前に遡り、中国返還に揺れる香港を舞台に、ヤンとラウがそれぞれスパイになる過程が描かれる。

“北野武も真っ青の無限ブルーに否応なしに暗黒映画の深淵までズルズルと引きずり込まれてしまう。”

黒か白か。はたまた灰色か。

いや、これは青と赤のせめぎ合いだ。

冷静なスピリットと激情のパッションとが絶え間なく対峙し絡み合い、無限の螺旋を形づくる。

この螺旋に魅せられて1度飛び込んだが最後、果てのない業の螺旋に捕らえられ、それこそ無間にまで呑み込まれてしまう。

どうやら自分ももはやそこから逃げる術をとことん見失ってしまったらしい。

見終わった後、矢も盾もたまらずエピソード2である前作を速攻借りに行きましたがな。

こんなことめったにないんだけど、銃で乱射されたような衝撃に駆られてしまった。1回見てはいるんだけど、これ見て見ないわけにはいかないっしょ

そう、それこそ螺旋だよ。

Posted at 2004.09.23

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インファナル・アフェアⅢ 終極無間

Imf3 出演:トニー・レオン、レオン・ライ、ケリー・チャン、アンソニー・ウォン

監督:アンドリュー・ラウ

(2003年・香港・118分)盛岡フォーラム

内容:ヤンの殉職から10ヶ月。警官として生きることを選んだ元マフィアのラウは、警察内部に残る潜入マフィアを次々と始末していく。しかし、彼の前に保安部のエリート警官・ヨンが立ちはだかる。本土の大物密輸商人・シェンと接触しているヨンが潜入マフィアであると確信したラウは、彼の身辺を調べ始めるが・・・。

評価★★★/65点

1、2作目に関しては映画とのガチンコ勝負で見る側の方が打ちのめされるほどの衝撃と完敗を喫したが、今回は土俵下から後出しジャンケンの連発を繰り出されたかんじで、勝負をさせてもらえないツマラなさで覆われている。

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ディパーテッド

A5c7a5a3a5d1a1bca5c7a5c3a5c9 出演:レオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン、ジャック・ニコルソン、マーク・ウォルバーグ、マーティン・シーン、アレック・ボールドウィン

監督・マーティン・スコセッシ

(2006年・アメリカ・152分)盛岡フォーラム

内容:マサチューセッツ州ボストン。犯罪組織とのつながりを持つ自らの生い立ちと決別すべく警官を志したビリー・コスティガン。一方、マフィアのボス、コステロによって育てられ、スパイとなるべく警察に送り込まれたコリン・サリバン。互いの存在を知らぬまま警察学校を優秀な成績で卒業した2人。やがて、コリンはマフィア撲滅のための特別捜査官に抜擢され、一方ビリーは、マフィアを内部から突き崩すべくコステロのもとへ潜入するという極秘任務を命じられるのだった。こうしてそれぞれに緊張の二重生活を送る2人だったが、ついに警察、マフィア双方ともに内通者の存在をかぎつけ、いよいよ2人は窮地に追い込まれていく・・・。アカデミー賞では作品・監督など4部門で受賞。スコセッシにとっては6回目のノミネートで念願かなっての初受賞となった。

評価★★★☆/70点

自分の好きな映画がリメイクされると、どうしてもオリジナルと比較してアラ探しをしてしまうのだけど、今回もその例にもれず。。

オリジナルの香港映画に関しては特に1作目、2作目が大好きでハマってしまったくちで。

静謐でダークな世界観の中で繰り広げられるギリギリのサスペンスと、シブくて陰のある男オーラをみなぎらせる俳優陣の存在感とぶつかり合いが人間の永遠に逃れられない業をえぐり出していく“無間道”ドラマは、香港ノワールの完成度としても一級品だったと思う。

さて、そこでスコセッシによるリメイク「ディパーテッド」となるわけだが、一言でいえば、きちっとしたフォーマットの中で合理的にサクサクと物語が処理されていく印象を受けたというのが見終わったときの第1印象だ。

スコセッシがこのリメイク企画の映画化にあまり乗り気ではなかったという話を聞いていたせいもあるのだろうけど、すっきりと型におさまりすぎていて、なにか逆にスコセッシらしくないというか。。

ただ、なぜスコセッシが乗り気ではなかったのかということについては、本作を見るかぎりほぼ明確に答えが出せるように思う。

それはスコセッシが数十年来構想をあたためていた企画をついに実現させた「ギャング・オブ・ニューヨーク」(2001年)にある。

この「ギャング・オブ・ニューヨーク」では、1800年代中頃のNYを舞台にプロテスタントvsカトリック=イングリッシュvsアイリッシュという人種・宗教対立の構図の中で、自分の父親を殺した仇を討つためにアイリッシュのディカプリオが、その仇であるダニエル・デイ・ルイスのもとに近寄り、組織の右腕にまで登りつめ父子愛に似た関係まで結ぶ。しかし一方で、復讐心をメラメラと煮えたぎらせるディカプリオと、真相を知ってもなお息子として見ようとする葛藤と苦悩の中でディカプリオを試すダニエル・デイ・ルイスの人間ドラマが描かれるわけで、「インファナル・アフェア」の擬似フォーマットがすでにこの「ギャング・オブ・ニューヨーク」にはあるのだ。

また、ディカプリオとダニエル・デイ・ルイスの2人の間に決定的な揺らぎをもたらしていくキャメロン・ディアスの三角関係もまんま「ディパーテッド」におけるディカプリオ、マット・デイモン、女性カウンセラーの三角関係として流用されているし(「インファナル・アフェア」ではカウンセラーのケリー・チャンに潜入捜査官トニー・レオンが想いを寄せているという形で、潜入マフィアのアンディ・ラウにはマリーという婚約者がいる)。

仏教観がにじみ出るのが「インファナル・アフェア」ならば、プロテスタントvsカトリックという宗教対立はもとより、スコセッシの宗教観がにじみ出ているのも「ギャング・オブ・ニューヨーク」なわけで、つまるところ「ギャング・オブ・ニューヨーク」で「インファナル・アフェア」のスコセッシ版リメイクは事足りているわけで・・・。

今回の「ディパーテッド」は、ディカプリオはまたまたアイリッシュの出自をもったキャラで、現代の「ギャング・オブ・ニューヨーク」もとい「ギャング・オブ・ボストン」といったところだが、そこに宗教観は全くなく、「インファナル・アフェア」とは異なるラストの合理的解釈の切り口などを見てもスコセッシらしくなく、あくまで雇われ監督としてのやっつけ仕事という感は否めない。

が、その中でスコセッシ節を堅実に出してきたがゆえ、なおさら残酷かつ痛々しいシーンばかりが目立ってしまったかんじ・・・。

役者陣に関しては奮闘は認めるとしても、ディカプリオ&マット・デイモンは童顔すぎて、う~ん・・・

いっそのことフォーマットを西部劇にした方がよかったのでは、というのはあまりにも冒険、かな。

でも、これで念願のアカデミー賞獲っちゃうというのも皮肉だよなぁ。。

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フェイク(1997年・アメリカ・126分)仙台第1東宝

 監督:マイク・ニューウェル

 出演:ジョニー・デップ、アル・パチーノ、マイケル・マドセン、アン・ヘッチ

 評価★★★★/75点

 内容:FBI捜査官ピストーネは、おとり捜査のためにマフィア組織に潜入することを命ぜられる。ドニー・ブラスコという名で接触を図った彼に最初に近づいたのは組織の末端の気さくな男レフティだった。レフティは聡明で行動力あふれるドニーとの出会いに、あきらめていた出世への夢を再び抱くようになるが・・・。

“あれだけ命張って、得たものが雀の涙ほどって一体・・・。”

ようするにメダルとたった500ドルで友情を裏切ってしまったという何とも哀しいお話。

話の展開としては、実話ゆえの難しさか、フィクションならばもっと盛り上げたりスリリングにできる展開にできるネタなのだけども、なんか淡々と進んでいくかんじで少し惜しい気もする。

例えば、兄貴分に付いたレフティは、俺たちは組織の小さな歯車の1コに過ぎないと半ばあきらめてるけど、このレフティがもしも上昇志向のある若手組員だったならばもっと違う展開にすることだってできたはずだ。

まぁレフティの人物造形がリストラされていく中年オヤジの悲哀たっぷりなので致し方ないか。。ホント、あの哀愁を帯びた表情が頭にこびりついて離れないもん。

だから、スリルよりも人物同士の友情に重きを置いた点は当然の帰結ともいえるし、やっぱりこの点は買いたい。

ただ、どうしてもマフィアものでアル・パチーノとくると「ゴッドファーザー」のマイケルを思い浮かべてしまうんだよね。マイケルをほとんど感じさせないキャラとアル・パチーノの巧い演技でその点は消されてるけど、ニューヨークとマイアミといったら「ゴッドファーザーPart2」そのまんまじゃんみたいな(笑)。ソニーソニーソニーっていったらゴッドファーザーの長男ジェームズ・カーン扮するソニーじゃんみたいな・・・。ちょっとかぶりすぎw

2018年4月18日 (水)

夢のシネマパラダイス429番シアター:異国の地ヨーロッパ紀行

グッバイ、レーニン!

Bye 出演:ダニエル・ブリュール、カトリーン・ザース、チュルパン・ハマートヴァ、マリア・シモン

監督:ヴォルフガング・ベッカー

(2003年・ドイツ・121分)仙台フォーラム

評価★★★★/80点

 

内容:1989年の東ベルリン。母が心臓発作で昏睡状態に陥っていた間に、ベルリンの壁が崩壊。息子アレックスは、愛国主義者の母に2度とショックを与えないよう、崩壊以前の東ドイツを強引に演出するのだが・・・。

“親思う心にまさる親心 今日のおとずれ何と聞くらむ”

資本主義だろうが社会主義だろうがグッバイだろうがウェルカムだろうがこの際そんなこたぁどうでもいい。

それよりも、とにかくご立派なお息子さんを育て上げたクリスティアーネお母さんの親心と息子アレックスへの暖かな眼差しに心打たれる。

これを母親と息子の話ではなく、親父と息子の話にしていればそれはそれでもの凄い作品になっていたと思うのだけども、やはり笑いと涙のペーソスにあふれているという点では今作の撮り方で正解だと思う。

親父さんも含めた家族にあった壁が取り払われていくのって、いいね。

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地下水道(1956年・ポーランド・96分)NHK-BS

 監督:アンジェイ・ワイダ

 出演:テレサ・イジェフスカ、タデウシュ・ヤンチャル、ヴィンチェスワフ・グリンスキー

 内容:第二次世界大戦末期のワルシャワ。パルチザン部隊による地下運動は悲惨な最終段階に達していた。ザドラ率いるパルチザン中隊は、ドイツ軍に追われて地下水道を通り、市の中央部に出て再び活動を続けることにするが・・・。地下水道で苦悶するレジスタンスの姿を、ドキュメンタリータッチでとらえた作品。

評価★★★/65点

人物のキャラクターが自分の中に浮上してくる前に地下の暗闇と絶望に突き落とされてしまい、監督よりも冷徹で突き放した視線で見つめてしまっている自分がいた。

なんといっても冒頭の、「悲劇の主人公がそろった。彼らの人生の最期をお目にかけよう」というまるで他人事のようなモノローグがエグイ。

でも、笑うに笑えないのがどうにも窮屈で息苦しくて仕方なかったな。閉所恐怖症だもん・・。

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パパは、出張中!(1985年・ユーゴスラビア・136分)NHK-BS

 監督:エミール・クストリッツァ

 出演:モレノ・デバルトリ、ミキ・マノイロヴィッチ、ミリャーナ・カラノヴィッチ

 内容:1950年代、スターリン主義の排除に躍起となっていたユーゴスラビア。サラエボに住む少年マリックの父・メイシャは、愛人との情事の際にスターリン批判の漫画に、これはやり過ぎだ!と憎まれ口を叩いた。ところが、彼女がそれを人民委員会に漏らしたため、父は遠い鉱山へ奉仕労働に送られてしまう。母はマリックたちに「パパは出張中だ」とごまかすのだが・・・。カンヌ国際映画祭で作品賞受賞。

評価★★★/65点

パパはヤリ過ぎ!に変えた方がよくねえ?

スターリン批判の風刺漫画に「やりすぎだ」と言って逮捕される親父はいろんな女とヤリすぎです。座布団1枚!

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トレインスポッティング

Pta46 出演:ユアン・マクレガー、ユエン・ブレンナー、ジョニー・リー・ミラー、ロバート・カーライル、ケリー・マクドナルド

監督:ダニー・ボイル

(1996年・イギリス・93分)仙台セントラル劇場

内容:ヘロイン中毒に陥った若者たちの生態を、斬新な映像感覚で描いた青春群像劇。麻薬常習者のレントンは、何度目かの麻薬断ちを決意し、健全な性欲を満たすべくディスコへ向かった。そこでダイアンという美女に心惹かれたレントンは、彼女の家に行ってセックス漬けに。そして何事もなかったかのように翌朝には再び麻薬を打ってしまうのだった。あげくの果てにそれまで麻薬はやらなかった仲間のトミーも麻薬をガンガン打ってくれ!とせがみに来て・・・。

評価★★★/60点

“3K”

ヘロイン中毒の若者のノンストップの場当たり的クズ人生を、刹那性や暴力性を排除して小気味よく描いた爽快さは認めるところで、学生時代にめちゃくちゃ流行った映画。当時周りでは“クレイジー・クール・カッコいい”のファッション感覚でもてはやされていたような気がする。

けど、自分にとってこの映画は、やはり今も昔も“臭い・汚い・キモい”の3Kなのだったww

P.S.追記

今作から20年後を描いた続編を鑑賞。ていうかこの続編いるかw!?しかもキャストスタッフがそのまま集まってという点にもビックリしたんだけど・・。

で、96年に18歳だった自分もあれから20年経って立派なオッサンになったけど、精神年齢は中2から停止したまま。いつ自分は大人になったんだろうと未だ大人になりきれない未熟さに歯がゆさや恥ずかしさを覚えることが出てきたりして。。でもコイツらに比べれば自分は全然マシだなと自信を持てただけでもこの映画を見る価値はあった(笑)

と同時に若さはもう通用しないんだということも痛切に感じられる作品になっていたと思う。

前作はヘロインクソまみれのただただ無軌道な暴走映画だったけど、イギリス映画特有の湿り気がなくて、開けっ広げで陽気な疾走感がある意味で爽快さを生んでいた点が稀有だった。

しかし、さすがに歳食うと悲惨さがリアリティをもって迫ってくるんだよね💧

昔はあーだこーだと過去に拘泥するオッサンたちと、そんなセンチメンタル意味ないじゃんとしたたかに前を見るベロニカの対比も良いアクセントになっていたと思う。

また、20年経ってもロック音楽を基調とした小気味よいテンポとダニー・ボイルのチープなスタイリッシュさ(いや、進化はしてるw)が変わらないままなのはなんだか微笑ましかった。

また20年後か(笑)!?

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ロッタちゃんと赤いじてんしゃ(1992年・スウェーデン・76分)NHK-BS

 監督:ヨハンナ・ハルド

 出演:グレテ・ハヴネショルド、ベアトリス・イェールオース

 内容:「長くつ下のピッピ」で知られるスウェーデンの童話作家アストリッド・リンドグレーンが生んだもうひとりのヒロイン“ロッタちゃん”シリーズの第2作。頑固で意志の強い5歳児ロッタちゃんが今回も大暴れ!

評価★★★☆/70点

東の横綱メイ、西の横綱ローラ・ワイルダー、そして北の横綱ロッタちゃん。

これを世界3大ふくれっ面エンジェルという!

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ソフィーの世界(1999年・ノルウェー・111分)NHK-BS

 監督:エリック・グスタヴソン

 出演:シルエ・ストルスティン、トーマス・ヴァン・ブロムセン、アンドリン・サザー

 内容:ある日、14歳の少女ソフィーのもとに一通の手紙が届く。文面には「あなたは誰?」とだけ。そして再び届いた二通目の手紙には「世界はどこから来た?」とだけ。この手紙に不思議な気持ちを掻き立てられたソフィーは、手紙の主アルベルトとともに古代ギリシャから帝政ロシアまで、時空を超える旅を重ねていく・・・。深淵で哲学的なテーマをファンタジックにつづった同名ベストセラー原作の映画化。

評価★★/40点

“バカでも分かる西洋史”

をなぜに映画でやる必要がある?というのが率直な疑問。

映画見てかえって原作読む気なくしたんだけど・・w

2018年1月 3日 (水)

夢のシネマパラダイス207番シアター:震える魂、男の使命!

海賊とよばれた男

E6b5b7e8b38ae381a8e38288e381b0e3828出演:岡田准一、吉岡秀隆、染谷将太、鈴木亮平、野間口徹、ピエール瀧、綾瀬はるか、堤真一、黒木華、光石研、國村隼、近藤正臣、小林薫

監督・脚本:山崎貴

(2016年・東宝・145分)盛岡フォーラム

内容:1912年、石炭主流の中いずれ石油の時代が来ると確信していた国岡鐡造は、北九州門司で石油販売業“国岡商店”を起業する。やがて海賊まがいの破天荒な商法で頭角を現し、戦時中は満州から東南アジアにまで販路を拡大していった。また終戦の混乱期にも一人としてクビにしないという鐡造の方針のもと、GHQや石統(石油販売権を国が管轄するための機関)と渡り合って業界に返り咲いていくが、さらなる行く手には巨大資本の海外石油メジャーが立ちはだかっていた・・・。

評価★★★★/75点

原作既読。

偉人の人生をトレースした伝記ものは間延び感がしてもともとあまり好みではなく、実は今回の原作も読み進めるのに悪戦苦闘してしまった。

しかし、田舎で立ち上げた小さな会社を一代にして世界を股にかける大企業にまで築き上げた成り上がりゴッドファーザーのブレない大和魂は深く心に刻み込まれたし、エネルギー資源のほぼ100%を輸入に頼っている日本の隅々まで石油を行き渡らせるのにいかに多くの人々の尽力が注がれていて、いかに自分たちはその恩恵を享受しているのか、普段何気なく生活している中でまるで他人事のように思っていたことー石油がなければ国は回らないーに今更ながらに気付かされた。

そして日本人としての矜持を持って働く店主と店員たちに憧れを抱いた。

さて、本題の映画について。

明治・大正・昭和、および戦前・戦中・戦後を網羅する歴史巨編をどうやって2時間半に収めるのか不安だったけど、そこはさすが「永遠の0」の映画シナリオを完璧にまとめ上げた山崎貴。今回も小気味いいテンポとバランス感覚を兼ね備え、なおかつ重量感のある本に仕上げてくれたと思う。

相変わらず原作の取捨選択が上手いというか肝をしっかり押さえていたんだけど、映画のパンフに「鐡造にも流れる男の精神」のキーワードとして“やられたらやり返す”半沢直樹、“夢をあきらめない”下町ロケット、“仲間を見捨てない”沈まぬ太陽、“不敵な戦術で翻弄する”真田丸と挙げられていて、なるほど上手いこと考えたなぁとストンと納得。はっきり言って小説読む前にこのパンフ見たかった(笑)。

このシナリオの出来の良さに加えて、ミニチュア撮影やCGを織り交ぜたVFXを主体とした映像がリアリティを高めていて安心して映画の世界に入っていくことができた。さすがに鐡造の90代の老いた顔までCG加工を施していたとは驚きだったけど、違和感は全く感じなかった。

あと実写化の強みという点では、原作でイメージがつかみづらかった部分、例えば旧海軍の燃料タンク底にたまっている油の過酷な汲み上げ作業の場面とか、満州鉄道でメジャーと争った車軸油とか具体的に映像で見せられると理解度が深まって良かった。

あとは20代から90代まで一人一役で通した岡田准一の存在感がやはり大きかったなと。大河ドラマで黒田官兵衛を老年まで演じきっただけあって安定感は抜群だったと思う。

総じて1スジ2ヌケ3ドウサが的を射た見応えのある作品になっていたんじゃないかな。

しかし、最初から分かりきっていたことではあるけど、やっぱ2時間半じゃ足りないよねぇ

TBS日9でぜひドラマ化を!

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沈まぬ太陽

O0668096310289902547 出演:渡辺謙、三浦友和、松雪泰子、鈴木京香、石坂浩二、香川照之、柏原崇、戸田恵梨香、草笛光子

監督:若松節郎

(2009年・東宝・202分)WOWOW

内容:1962年。国民航空の労働組合委員長を務めていた恩地(渡辺謙)に対し、経営側は10年近い海外僻地勤務というあからさまな懲罰人事を強いる。一方、恩地の片腕として共に闘っていた同期の行天(三浦友和)は、重要ポストと引き換えに会社側へ取り込まれてしまう。時は流れ1985年、500人以上もの死者を出すジャンボ機墜落事故が起こり・・・。

評価★★★★/80点

3時間を超える超大作を見るというのはかなりの覚悟が必要で、ハズレだと食べても食べても減らない不味いラーメンのごとく無間地獄を味わってしまうリスクがつきまとう。

しかし、それ以上に素晴らしい映画体験を味わわせてくれる確率もかなり高く、映画の醍醐味がつまったこのパンドラの箱を開けるのは実は好きで好きでたまらなかったりする。

「ベン・ハー」「アラビアのロレンス」「ドクトル・ジバゴ」「タイタニック」etc..自分にとってパンドラの箱がかけがえのない宝石箱になった例は数多く、そのどれもが自分の記憶に強烈に刻みつけられている。

それはやはり長尺ゆえのスケールの大きさとドラマの奥行きの深さによって登場人物の人生を追体験したような感覚を味わえるからだろう。

その意味でいえば今回の映画も自分の記憶にしっかと刻み込まれた映画になった。

公開初日の舞台あいさつで渡辺謙が号泣していたのが印象的だったけど、なるほど映画のすみずみから作り手の映画にかける熱意、ヤル気、魂のほとばしりがギュンギュン感じられて非常に見応えがあった。

見終わった後に、なんか一冊の小説を読み終えたような心地良い疲労感を覚えて、映画見たぞーッていう気になったw

また、仕事を数回変えている自分にとって、ひとつの会社に骨を埋めるのが当然とばかりに仕事に人生を捧げる恩地の姿はギラギラと輝く太陽のように見えて眩しかった。

それは恩地と対になっている行天も同じで、ああこれが昭和を支えたニッポンのサラリーマン、お父さんたちの生き様だったんだなと、今の自分には持ちえない男の矜持というものを感じ取ることができて、なんだか見ていてすごいカッコ良かったし憧れてしまった。

まぁ、とはいえ自分はもはやこういう仕事人間にはなりようもないけどw、もうちょっと人生頑張ってみようという気にはさせられたな。

もうちょっと恩地の思想的バックボーンを掘り下げてくれたら満点入れてもよかったかも。。

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クライマーズ・ハイ

Climbershigh_1_1b 出演:堤真一、堺雅人、尾野真千子、高嶋政宏、山崎努、西田尚美、小澤征悦

監督:原田眞人

(2008年・東映・145分)CS

内容:1985年8月12日。乗員乗客524名を乗せた羽田発大阪行き日航機123便が墜落する。現場となった群馬県の地元有力紙・北関東新聞の編集局は騒然となるが、一匹狼として動いていた遊軍記者・悠木(堤真一)が全権デスクを命じられ、怒涛の1週間が幕を開けた・・・。

評価★★★☆/70点

今の日本映画界にあってクセのある濃密な社会派群像劇を描くことのできる数少ない映画監督だと思う原田眞人の作品は、見る側にとっては吹きこぼれてくるアクの強さを自力ですくい取らなければならない度量の大きさと忍耐力が必要で、途中でそれに挫折しようものなら一気に置いてけぼりをくらってしまう小難しさを持っている。

なのだけど、なにより映画を見たゾ!という気にさせられるし、個性派ぞろいのアンサンブルキャストとスタイリッシュな映像で畳み掛けてくる演出と作風は、今まで見たこともないような舞台劇に引きずり込む力強さも持っていてけっこう好きで。

それに加えて熱いオトコ臭空間を仕立てることにも長けている和製マイケル・マンの今回の作品は、地方新聞社の編集局が舞台。

事件そのものよりも、新聞社という巨大組織の中でうごめく男たちの嫉妬と野心渦巻く喧噪劇に視点が置かれたところは、まるで銀行を舞台にした「金融腐蝕列島・呪縛」(1999)を焼き直ししたような構成になっていて、遊軍記者・悠木とナベツネを想起させる社長(山崎努)との関係は同作における役所広司と仲代達矢の関係と瓜二つ。

とはいうものの、さすがは原田眞人。

「金融~」よりもさらにまとまりのない混沌とした作劇になっている(笑)。

現場とデスク、現在と過去、父と子、組織と個、世代間対立といった二項対立のエピソードが空回りに空回りしまくっていて、それぞれのつながりが弱くてまとまりに欠けるのが最大の難点なのだけども、リズムのある臨場感で頂上まで一気に踏破し満腹感一杯に映画を見た気にさせる見せ切り方はなんだかんだいってやはりスゴイと思う。

NHKの土曜ドラマ版(主演は佐藤浩市)の方が個人的には好きだけど、ホンモノの“クライマーズ・ハイ”を味わえるという点では映画の方が的を射ているのかもしれない。

しかし、よくぞここまでクセのある役者さんを集めたもんだわ。感心しちゃいます。

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突入せよ!「あさま山荘」事件

Image197 出演:役所広司、宇崎竜童、伊武雅刀、天海祐希、椎名桔平、篠原涼子、武田真治、八嶋智人、藤田まこと

監督:原田眞人

(2002年・東映・133分)DVD

評価★★★★/75点

内容:1972年2月、連合赤軍のメンバー5人がひとりの女性を人質に、雪に閉ざされた軽井沢のあさま山荘に立てこもる事件が発生。10日間におよぶ攻防の末、警察が強行突入。運良く人質を無事救出、犯人全員の逮捕に成功するが、2人の殉職者と民間人1人が死亡、多数の負傷者を出す悲劇となった。この日本犯罪史上に残る大事件を、当時指揮官の一人だった佐々淳行氏の原作を基に映画化。

“青島刑事も和久さんも恩田刑事も出てこないどころか、犯人たちもただの謎の凶悪犯としか描かれていない完全特化フィクション映画。ドキュメンタリーXにもYにもZにもならない、劇映画としての立場をわきまえているトンだ代物。”

佐々氏の原作を読んだことがないばかりか、肝心のあさま山荘事件のことさえよく分かっていない自分。

以前NHKのプロジェクトXで事件について2夜連続だったかで取り上げていたが、それを見て初めて人質がいたことなどを知ったくらいだ。なにせ事件から約10年後に生まれてるんだから・・・。

連合赤軍はどんな輩なのか、どういうことをしていたのか今でもよく分からんし。ただ当時の人々がテレビの前にくぎ付けになったということだけは知っていた。

そして、、この映画である。

映画の冒頭でこの映画は事件を基にしたフィクションであると前置きされていたとおり完全に原田眞人の作品世界やテーマに舵を取っていっているなというのが、事件のことをあまり知らない自分でもさすがによく分かるつくりになっている。

どの程度事実と符合しているのかしていないのか分からないし、佐々氏から一方的に見た事の本質なのかどうかも分からないが、ただ1つ確かなのは、脚本も手がけている原田眞人の作品世界に実際にあったあさま山荘事件そのものが完全に組み込まれてしまっていることである。

それについての是非については個人的には完全に肯定する。あくまでも劇映画として撮っているわけだから、作り手の主観が入るのは当然だし、自分が撮りたいことのみを撮るというのも一向に構わないはずである。

そういう作り手の姿勢(主観が入ること、撮りたいことのみを撮ることetc.ようするに作り手が自由であること)について真っ先にとやかく言うつもりはない。

そのかわり、まずとやかく言うべきなのは、作り手の主観や主義主張そのものであり、またそれらをベースにして出来上がった作品や作品世界についてであろう。

つまり、作り手がやりたいように好きなように作るということに関してはどうぞご勝手にやって下さいなというわけだが、それで出来上がった作品についてはとやかく言わさせてもらいます、というのが自分のスタンスである。

よって前提としてはやりたいように映画は作るべきだと言っておきながら、出来上がった作品を見ると、やりたいようにやったからこんな体たらくな作品になっちゃってるんだとも言えちゃうわけで。なんかスゴイずるくて矛盾しているような映画批評スタンスかもしれないけども・・・。

ただ、やりたいようにやるというのは、決して作り手の無責任などではなく、必ず作り手の意志や主観が入っているはずだから重い責任が課されている(自由であることは実は重い責任を負うことでもある)のは当然なわけで、だから作り手の意志や主観をまずは第1に見ていこう、それを踏まえてから作り手の制作姿勢について思うことがあれば言おうと考えていて。。

要は順序を間違えちゃうと、こちらもただ一方的になっちゃってるということになってしまう。難しいところだね。

まぁ自分の中では納得しているので。といいつつ納得してるわりに全然うまく表現できないんだけど

さてさて、余談はさておき出来上がった今回の作品について言わせてもらうと、まあ自分好みの映画かなという印象はもったかな。

警察組織の呪縛と矛盾という観点から撮ったのであろうこの映画は、前々作の「金融腐蝕列島・呪縛」と同様の観点でもあるし、中央と所轄という視点でみれば、踊る大捜査線の逆バージョンの構図ともいえるわけで、個人的には非常に興味深いコンテンツだった。

しかしそのコンテンツのみに特化して描くための道具立て、題材が実際にあった浅間山荘事件というのはやはり少しばかり腑に落ちないところもある。

武田真治と篠原涼子なんてどこに出てたんだ??とエンドロールを見てビックリしたように、犯人と人質の描写はほとんど皆無といってよいし、長野県警もただの低脳集団としか描かれていない、いささか一方的な描き方なのはやはり気になった。

青島刑事が現場にいたらあの台詞が聞こえてきただろう。

「事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ!」

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不毛地帯(1976年・東宝・181分)NHK-BS

 監督:山本薩夫

 出演:仲代達矢、丹波哲郎、山形勲、神山繫、北大路欣也、大滝秀治、加藤嘉、八千草薫、藤村志保、秋吉久美子

 内容:大本営参謀を務めた陸軍中佐・壱岐は、11年に及ぶシベリアでの抑留生活を経験、ようやく日本に帰国できた彼は大手総合商社の近畿商事に入社する。近畿商事は、総額1兆円といわれる次期主力戦闘機の買い付けに関わり、ラッキード社製の戦闘機を売り込んでいたが、ライバル会社の東京商事はグラント社を推していた。社長に目をかけられていた壱岐は、二度と軍隊には関わるまいと決していたが、やがて政界をも巻き込んだ醜く激しい利権争いの渦中に身を投じていく・・・。

評価★★★/65点

関東軍軍属として満州で終戦を迎えた自分の祖父は、直後ソ連軍に捕まってシベリアに抑留されたものの、5年後無事に帰国を果たし銀行員の職を得た。

この境遇が映画の主人公・壱岐正と重なり興味深く見ることができたけど、大日本帝国の太平洋戦争と平和国家日本の経済戦争を同じ土俵に見立てた視点はなかなかに面白かった。

しかし考えてみれば惨い戦争の匂いが色濃く残っていたであろう昭和30年代、元帝国軍人たちは企業戦士に姿を変えて高度経済成長の礎を築いたのだから、先人の不屈の気骨には頭が下がる思いがする。

あと祖父のことで思い出したのだけど、地区の自治会長をしていた時、市役所に手続きに訪れた際に、担当職員がみすぼらしい身なりをした祖父に対し横柄な態度をとったのだそうだが、一緒に来ていた副会長が「このお方は関東軍参謀石原莞爾直属の部下として先の戦争を闘い抜いた方なるぞ!」と怒鳴るとその職員はひれ伏したように態度を一変させたという。昭和40年代頃の話だそうだ。

それは畏怖の念だったのか、それとも関東軍の悪名高さから来る恐怖だったのか知る由はないが、戦後20年以上経っても関東軍の名が轟いていたということに驚いてしまう。

一方、昭和50年代生まれの自分にとって祖父は、ロシア語通訳として国際交流に励む活発なおじいちゃんのイメージが強かったけど、毅然とした矜持と信念が醸し出す近付きがたい一面も子供ごころにあったことを思い出した。それは元軍人の血だったのかもしれないが、戦後50年を前に不慮の事故で他界してしまったのが悔やまれる。

壱岐正=仲代達矢の姿を見て祖父のことが頭を去来することしきりだった180分は、しかしちょっと長かったかも・・・

2018年1月 1日 (月)

夢のシネマパラダイス117番シアター:ターミネーターシリーズ

ターミネーター(1984年・アメリカ・107分)WOWOW

 監督:ジェームズ・キャメロン

 出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、リンダ・ハミルトン、マイケル・ビーン

 内容:2029年の未来から現代のロスに不死身の殺人マシーン、ターミネーターがやって来る。彼の任務は、機械社会に抵抗する人間側のリーダー、ジョン・コナーの母サラを抹殺すること。しかし、サラの命を守るため、ターミネーターを追って現代にやって来た戦士カイル・リースは、まだ大学生だったサラを連れ出し、ターミネーターの執拗な攻撃から彼女を守る。

評価★★★★/75点

“最凶のトラウマ映画”

7歳にこういう映画見せるなよ!

ホントにトラウマだもん、この映画ww

特に、過激なバイオレンスは今見てもゾワッてなっちゃう

だって問答無用に撃ち殺しちゃうんだもの。

さらに中盤、シュワちゃんが小刀で自分の腕を切り裂いたり、鏡の前で左目を抜き取り、ポチャンと洗面所に落とすシーン以降はとにかく不死身さが際立つターミネーターの執拗に追ってくる恐怖感も加わって、胸がドクドクと圧迫されてくる。

久々に見直した時でも、イヤ~に口の中が変に渇くかんじっていうのかなあ、、7歳の身に降りかかった衝撃は自分の身体に記憶としてしっかりと刻み込まれている、みたいです。

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ターミネーター2

347x5002005032300215 出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、リンダ・ハミルトン、エドワード・ファーロング、ロバート・パトリック

監督:ジェームズ・キャメロン

(1991年・アメリカ・156分)2003/09/27・TOHOシネマズにて再見

評価★★★★★/100点

内容:1994年、未来の戦士カイルとサラ・コナーとの間に生まれたジョンは、10歳に成長していた。サラは息子と引き離され、今は精神病院に収容されていた。そんなある日、ジョンの前に2体のターミネーターが出現!警官の姿をしたT-1000型ターミネーターがジョンの命を執拗に狙う。それに対し前作の悪役旧型T-800型ターミネーターは、、、。

“最凶の鬼ごっこ”

「ターミネーター」。。小学校低学年の時に見てあまりにも強烈なインパクトとトラウマを残していった映画。悪夢で夢に出てきた映画。怖くてトイレに行けなかった映画・・。強迫観念ともいえる不安が幼心に押し寄せてきたのを時が経った今でもはっきり覚えている。

ついでにいえば、濃厚なラブシーンなるものを見たのもこの映画が最初かもしれない

とにかく「ターミネーター」のインパクトは今作を見る時点でも多大な影を落としていたのは事実なのだった。

そう、無敵のシュワルツェネッガーがまた執拗に追っかけてくるのか、と。

そして、フタを開けてみたら、ああ、やっぱりそうなのね。冒頭の服を奪い取るシーンがレストラン風の所、、あ゛ー「ターミネーター」の忌まわしい記憶が甦ってくる~

と?もう一人全裸の男が、、マイケル・ビーンと同じような華奢な体格。そりゃ正義の味方だ!と思うわなぁ。

そしたらそしたらいきなり大大ドンデン返し!さらにその新型T-1000のもの凄さにド肝を抜かれる。

旧型は殺戮マシーンとしてのむごたらしさが感じられるけど、T-1000にはそれすら感じさせない。冷徹にしとめる無機質感覚。キン肉マンでウォーズマンが登場した時と同じような衝撃!!引用古っ・・・。

こんなん勝てんのかよー、と思いながら無条件でまんまとハマってしまう自分。特にT-1000型が登場する時の重低音がたまらない。でも考えてみると、これだけ勝てそうもない敵が出てくる映画はこのシリーズくらいなもんでしょ。

しかも、過去に敵だったキャラが見方になるというカタルシスと安心感。実はこれって宮崎アニメの常套手段なんだよね(笑)。人間性が急速にクローズアップされていく特性を持つという、、この映画もご他聞にもれずターミネーターボブおじさん化計画が同時進行で描かれる。

そう、この作品は宮崎アニメと同じ手法を使っている映画だということが判明!てことにしといてw

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ターミネーター3(2003年・アメリカ・110分)TOHOシネマズ

 監督:ジョナサン・モストウ

 出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、ニック・スタール、クリスタナ・ローケン、クレア・デーンズ

 内容:前作から10年後。放浪を続けるジョン・コナーは、幼なじみのケイトと再会する。しかし、その2人を最強のターミネーター“T-X”が急襲。間一髪2人を救ったのはあの旧型ターミネーターだった。そして彼は、2人に訪れる衝撃の未来を語り始める・・・。

評価★★/40点

“大変です!本作を製作したインターメディア社が暴走を始めました。どうもまだ続編があるようで、暴走を止めるすべがありません。このままではJ・キャメロンのターミネーターの世界がウイルスに完全に犯されてしまいます。これはもうこの映画に核爆弾仕掛けるしか他に手はありません。ハイ。”

女ターミネーターT-Xより2作目のT-1000型の方が強いと思う人手を挙げてーー!

はーーい

ホントなんか1作目のエッセンスと2作目のエッセンスをブレンドしただけってかんじ。それも見せかけの・・・。

しかもブレンドした結果、1+2が3になるんじゃなくて-3になっちゃってるのよ。。最悪。

シュワちゃんが冒頭、サングラスをかけてカッコ良くきめようとしたらトンだ星形のグラサンだったという時点で血の気がサーッと引いていきましたがな。

自分にとってターミネーターシリーズの世界は、最強かつ最凶じゃなきゃダメなんです。

小学生の時にみた「ターミネーター」が最強かつ最凶のトラウマを残していった映画といえるなら、「ターミネーター2」では最強かつ最凶のリアル鬼ごっこに一気に引きずり込まれていったわけで。

何度も言うようだけど、ターミネーターシリーズ=最凶シリーズ!だからヘタな小細工やギャグネタはいらないわけ。禁止事項の中でも1番トップに書かれるはずのことだろうに。それを臆面もなくやらかしちゃうんだから、あきれ笑いすら出なかったぞ、ったく。

さらにこの映画でやってることって1作目&2作目で見たのばっかり。。

オマージュを捧げてるんだか知らないけど、トラックとバイクの爆走なんて2作目ですでにやってることだろ。同じの見たってアドレナリンなんてほとんど出るわけない。しかもそのことは作り手もきちんと分かっているのか、物量にものをいわせた目くらまし作戦をとってきやがる。骨抜きにしたらハイ、何も残りません。ってなんだこれ・・。もうホント中途半端かつ最悪な出来にがっかり。

キャラも全然立ってないし。シュワちゃんの旧型ターミネーターの凄みは最初からなりを潜め、女ターミネーターも2作目のT-1000より弱く見える始末・・・。

さらにラストを見てさらにビツクリ。本当の戦いはこれからだぁ!?

どうも続編がまだあるらしい・・・。ジェームズ・キャメロンはいったいどう思ってるんだろうか。

しかし、考えてみると、このシリーズって80年代、90年代、00年代を通して1本ずつ作られてるんだよね。

1作目はそれまでのバイオレンスアクションの形を画期的に変えるとともに、なんといってもシュワちゃんを本当の意味で発掘した映画であり、80年代を象徴する映画となった。

2作目は革新的CGで度肝を抜かせ、90年代のCG映画隆盛時代の礎となったまさに90年代を象徴する映画となった。

では、今回の3作目はどうなのか。。

00年代を象徴する映画とは到底言えない代物であることは確かだけど、80年代後半から時代の流れをつくってきたCG、SFX映画、またビッグバジェット、ブロックバスター映画の行き詰まり感、ネタつき感を奇しくも象徴してはいないだろうか。

90年代後半からリメイク作が幅を利かせ、大作のネタも多くが続編というかたちで補われている昨今。その手づまり感をよく象徴しているという意味では、こういう結果になるべくしてなった的を射た作品といえるのかもしれない。。

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ターミネーター4

N0017634_l 出演:クリスチャン・ベイル、サム・ワーシントン、アントン・イェルチン、ムーン・ブラッドグッド、ブライス・ダラス・ハワード、ヘレナ・ボナム=カーター

監督:マックG

(2009年・アメリカ・114分)盛岡フォーラム

内容:2018年。スカイネットが引き起こした核戦争「審判の日」を生き延びた人間たちは抵抗軍を組織し、スカイネット率いる機械軍と死闘を続けており、大人になったジョン・コナーもそこに身を投じていた。そんなある日、ジョンは、脳と心臓以外すべて機械化されている謎の男マーカス・ライトと出会う。自分は人間だと主張するマーカスに対し、敵か味方か判断しかねるジョンだったが・・・。

評価★★★★/80点

“これがホントのT3!?”

「ターミネーター3」があまりにも自分の趣味からかけ離れていたので、このまま惰性で作りつづけられたらタマらんなぁと思っていたのだけど、新生3部作ということで、それこそバットマンシリーズの大復活パターンもあるし、それを信じて見てみたら、、、

無難に面白かった。

シュワちゃんの決めゼリフ「I’ll be back!!」が使われていたり、シリーズ1作目「ターミネーター」(1984)の時の無表情の殺人兵器T-800として若き日のシュワちゃんが出てきたり、しかもそれが絶妙なタイミングで出てきて、なかなかツボを抑えたつくりになっていて安心して見られた。

あとは役者陣がT3から格段に良くなっていたのも安心感につながったような。

今までのジョン・コナーのイメージとはちょっと違うような気もしたけど、クリスチャン・ベイルの存在感は映画を引き締めてくれたし、カイル・リース役のアントン・イェルチンやブレア役のムーン・ブラッドグッドなども印象的だったし、あとはなんといってもマーカス役のサム・ワーシントン。

憂いを秘めた眼差しの中に人間と機械の狭間で自己のアイデンティティを模索しつづける姿を投影させた演技力はなかなかのものだった。

とにかく、サム・ワーシントンをはじめとして目ヂカラのみなぎった役者陣の眼光は、映画の世界に引き込むには十分なほどの説得力をもって自分の心を射抜いてくれた。

あと、新シリーズを見る上でポイントになるのは、“パワーのインフレ”のリセットだろう。

ターミネーターシリーズというと、「絶望的」という言葉がすぐ思い浮かぶんだけど、それは例えば絶望的な未来、絶望的な戦い、絶望的な宿命といったフレーズに置き換えられるわけで、その上で1作目と2作目は紛うことなく絶望で満ち満ちていた。

しかし、T3では、T-1000型ターミネーターを超える史上最強の性能を持ったT-Xなるターミネーターが登場したものの、そこに“最凶”は感じられず、絶望的な戦いには程遠いスーパーサイヤ人ばりの超人バトルになってしまった。

T3は、パワーのインフレにより逆に面白さが半減してしまった好例といえるだろう。

ひるがえって新シリーズの幕開けとなった今回の作品は、いわゆる旧型ターミネーターT-800型よりさらに旧式のタイプを出してきたことでパワーのインフレをリセットしているのがミソ。

しかもその旧式のT-600型。ごつい体躯で歩き方はぎこちなく、ゴム製の皮膚はボロボロで、内骨格のフレームがむき出しになっている様はまるで腐った死体かゾンビのようで不気味きわまりない。その上、ちょっとやそっとでは機能停止せず、上半身だけになっても執拗に迫ってくる不死身さは恐怖と絶望感をかき立てる。

また、パワーのインフレのリセットによって生じた鈍足さを様々なタイプの機械軍を登場させることで補っているのも見所。

4本の腕を持ち、肩にはキャノン砲を有する巨体ターミネーター・ハーヴェスターの圧倒的威圧感、そしてそのハーヴェスターの両すね部分に格納されているバイク型ターミネーター・モトターミネーターがマッドマックス的世界観の中を疾駆する絵はかなり魅力的だ。

その他にもジェット機型や水中型などが出てきて、最後の締めでシュワちゃんのT-800型が登場と十分満足のいく出来栄えだったと思う。

ただ、最後の方で、瀕死のジョンに対し自分の心臓を提供すると言い出したマーカスの提案に速攻でうなずき、即行われた手術によって生き永らえるジョンの安易な倫理観には思わずえ゛っ!?と呆気にとられちゃったけど、そこらへんの人間描写をもうちょっと詰めて描いてもらいたかったかなと。

まぁでも、予想以上によく出来てた作品だったんじゃないかな。

新シリーズも3部作になるということらしいけど、どのようにオリジナル1作目にループしてつながっていくのか楽しみでならない。そんな期待を抱かせる新たな出発だったと思う。

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ターミネーター:新起動/ジェニシス

81kdaercytl__sy445_出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、ジェイソン・クラーク、エミリア・クラーク、ジェイ・コートニー、イ・ビョンホン、J・K・シモンズ

監督:アラン・テイラー

(2015年・アメリカ・125分)WOWOW

内容:2029年。ジョン・コナー率いる人類抵抗軍は、機械軍スカイネットとの戦いで遂に勝利を収めようとしていた。追い込まれたスカイネットは、1984年にターミネーターT800型を送ってジョンの母サラ・コナーの抹殺を図る。一方これを阻止するため、ジョンはカイル・リースを送り込む。ところが1984年では、サラはタフな女戦士になっていて、敵のはずのT800型通称「おじさん」と一緒に行動していた。そして新型T1000が敵として襲ってきて、明らかに時間軸がズレていることを知るのだが・・・。1&2作目をもとにリブートしたシリーズ5作目。

評価★★★/65点

同じお茶っ葉で5回も淹れ直すとお茶の出がらしにもならないような薄っぺらな味になるはずだけど、無いネタを絞りに絞り出していっぱしのエンタメ作に仕上げてしまうハリウッドのド根性は認めたいところ。

ただ、過去・未来の上書きにつく上書きやパラレルワールドの存在など時間軸をいじりすぎたストーリーラインはややこしすぎて、もはや興味を持てるものではなくなっており、懐かしのオリジナル復刻味を楽しむことがメインだったというのが正直なところ。

逆にいえばそれだけオリジナル1・2作目が神がかった傑作だったことを再認識したけど、タイムトラベルSFで5作もやるというのはやはりどう考えても土台無理があるってことなんだね。タイムパラドックスとかもう辻褄合わせの後付けとしてしか機能してないし。

老体にムチ打つシュワちゃんもすっかり丸くなったオジさんターミネーターとしての愛嬌があってそれはそれで良かったけど、壮絶な最期を遂げたかと思いきやケロリとした顔で復活しちゃってるし。ホントもう何でもありってかんじ。。

そもそもジョン・コナーがラスボスってのも、そりゃないだろっていう(笑)。今まで30年かけて見てきたのは一体何だったんだろうと空しくなっちゃった・・。

まぁ、15年後に完全新作で復活するくらいの間を置かないと次はないなwていうかT4の続きはどうなってるの??

2017年12月30日 (土)

夢のシネマパラダイス504番シアター:忘れられない人

思い出のマーニー

Mig声の出演:高月彩良、有村架純、松嶋菜々子、寺島進、杉咲花、吉行和子、黒木瞳

監督:米林宏昌

(2014年・東宝・103分)盛岡フォーラム

内容:中1の杏奈は幼い頃に両親を相次いで亡くし、里子に出されて育ったが、心を閉ざし気味で周りから浮いた存在だった。そんな中、ぜんそくの療養を兼ねて養母の親戚が住む海辺の田舎町で夏休みを過ごすことに。そこで彼女は、入江に建つ古い洋館を目にしてなぜか懐かしさを覚える。そして夏祭りの夜、小舟で洋館へやって来た杏奈は、マーニーという金髪の少女と出会う・・・。

評価★★★/65点

主人公アンナの活気と生気のない病んだ魚の目をした顔を見て、ジブリ最大の迷作「ゲド戦記」の主人公アレンを想起してしまい、背中に何かザワザワしたものを感じながら見てしまったのだけど、それは要するにアンナが闇に取り込まれて彼岸からこちらの世界に戻ってこられない危険性を感じ取ったからだ。

つまりマーニーはあちらの世界の住人で、アンナはそれに憑りつかれて引きずり込まれてしまう、となるとそれは完全にホラーだ。

まぁいくら何でもジブリに限ってそれはないとはいえ、そう思わせる不穏さが今のジブリにはあるのかも(笑)。

それは千と千尋なんかと比べると顕著で、親に見捨てられたのかもという不安感や育ての親になじめないなど他人を受け入れることができない主人公のキャラクター設定は、常に親不在の運命をウジウジせず事もなげに受け入れるジブリキャラクターを見慣れている者にとってはやはり違和感を感じてしまったし、いやそこが見たいんじゃないんだけどっていう不満感はずっとくすぶっていたかも。。

しかし、親の愛を受けられずに悩むのって「ゲド戦記」といい今作といい、ジブリの偉大な父・宮崎駿の存在を後進はいまだに払拭できていないってことなのかもね。

そういう点では東京から洋館に引っ越してきた彩香ちゃんの方がよっぽどジブリらしかったと思うけど、生きる意味を探すのに四苦八苦する時代だからこその作劇なのかな。

けど、ジブリに自分探しの旅なんて似合わないよね・・・。

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マイ・ガール

R080610209l 出演:アンナ・クラムスキー、マコーレー・カルキン、ダン・エイクロイド、ジェイミー・リー・カーティス

監督:ハワード・ジフ

(1991年・アメリカ・102分)NHK-BS

評価★★★★/80点

内容:1972年、ペンシルベニア州。葬儀屋を営む父親と祖母の3人暮らしをしている11歳の少女ベーダは、大好きな父にガールフレンドができたことから悩み始める。そして相談相手の幼なじみトーマスとの間に淡い恋が・・・。

“なかなかにシビアな題材を扱っているが、映画のバランスの取り方が絶妙で心に残る作品に仕上がっている。”

ベーダは11歳という設定だったけど、自分自身も8,9歳くらいの時かな。死という恐怖に対して異常ともいえるほど悩み抜いたことを鮮明に覚えているのだけども、自分の抱えていた死のイメージというのが、死とは永遠の孤独という黒沢清の「回路」で描かれたイメージに近いものがあって。

死そのものというよりも家族や友達に永遠に会うことができないという恐怖に打ち震えていたといった方が正しいかも。

だから、11歳の少女ベーダが死について割り切れない複雑な感情を抱いているというのも自分自身の体験と感情に見事にリンクして、ベーダの日常世界に容易に入っていくことができた。

それゆえ、ラストの方で息子トーマス(M・カルキン)の死に打ちひしがれる彼の母親に対して「私の母親が天国でトーマスを見守って一緒にいるから大丈夫よ。」と慰めるベーダの言葉は胸に響いたし、彼女なりにしっかりと死というものを受け止め、成長した姿を見せてくれてうれしかった。

また、一方では、妻と死に別れ男手ひとつでベーダを育ててきた父親(D・エイクロイド)の心情というものもよく描かれていて、父娘の葛藤が繊細に見る者に伝わってくる。

こういう流れでいくと、ともすれば重くなりそうなものだが、それをコメディのベクトルにうまく舵取りしたJ・リー・カーティスの存在も素晴らしい。

この映画における描写は、あくまでも子供の日常世界を軸としながらも、まるで水平線から朝日が昇るかのように確実に大人の世界が広がってくる。そして次第に少女の頃の世界は太陽が出ている青空にうっすらと浮かぶ真昼の月のごとく淡い思い出となっていくのだろう。

そういう微妙なバランスが絶妙なサジ加減でとれているのが、この映画が心にいつまでも残る所以なのだろう。

名作です。

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マイ・フレンド・フォーエバー(1995年・アメリカ・100分)CS

 監督:ピーター・ホルトン

 出演:ブラッド・レンフロ、ジョゼフ・マゼロ、アナベラ・シオラ、ダイアナ・スカーウィッド

 内容:母子家庭の孤独な12歳のエリックの隣に住むのは、輸血が原因でエイズ感染した11歳のデクスター。2人は打ち解け合うようになり、エイズ治療の特効薬発見の記事を頼りに旅に出るが・・・。

評価★★★★☆/85点

“我が映画人生で1番泣いた映画”

エリック(ブラッド・レンフロ)とデクスター(ジョゼフ・マゼロ)のひと夏のかけがえのない思い出を、ありふれた演出で描いていくプロットには別段感傷にひたることもなく見ていたのだけど、ラストの“スニーカー”には思わずヤラレてしまった。

全ての思い出と友情の証の象徴としてスニーカー、しかも片方のスニーカーというアイテムを持ち出してくるとは全くの予想の範囲外で、完全に無防備だったマイハートはめちゃくちゃに揺れまくり、後はもうゲリラ豪雨のごとく泣き崩れてしまいますた。。

声をあげて泣いた初めての映画だな。でも、先日、久方ぶりに泣く気マンマンで見たっけ、もう泣けないのね(笑)。

そっかぁ、やっぱ不意打ちというのが1番効果があるんだなぁ。不意打ち以外で泣けるのは「火垂るの墓」だけだな。

しかし、、その泣かせてくれたブラッド・レンフロも25歳という若さで逝っちゃうんだから、、現実の方がツライね・・。

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きみに読む物語

20051003_36049 出演:ライアン・ゴズリング、レイチェル・マクアダムス、ジーナ・ローランズ、ジェームズ・ガーナー

監督:ニック・カサヴェテス

(2004年・アメリカ・123分)MOVIX仙台

評価★★★★/75点

内容:療養施設で暮らす老婦人を初老の男が訪ね、物語を読み聞かせる・・・。現代からの回想形式で、1940年のアメリカ南部、裕福な少女アリーと地元の青年ノアの恋物語が綴られていく。

“終わり良ければ全てよし、、もとい始め良ければ全てよし。”

珠玉のラブストーリーとまでは言えないかもしれないが、心に響く純粋な愛の物語だったとは確実に言える、そんな映画だったと思う。

特に真っ赤な夕映えの湖をゆっくりボートが進んでいくオープニングはピカイチだった。

映画としては、先の展開が読めるというありがちなストーリーでありながら、オープニングから滞ることのないしかも透明度の高い流れをしっかり作り出していて、変なつっかかりや邪推などに陥る前に純粋にその流れに乗れてしまう。

美しい映像と音楽にただただ身を任せながら物語の中に入っていくことができた。

この映画には“流れ”がある。この映画はそれに尽きると思う。それがなければただの平凡な映画に終わっていたことだろう。

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マイ・ルーム(1996年・アメリカ・99分)NHK-BS

 監督:ジェリー・ザックス

 出演:レオナルド・ディカプリオ、ダイアン・キートン、メリル・ストリープ、ロバート・デ・ニーロ

 内容:20年間連絡を取っていなかった姉ベッシーから電話を受けたリー。姉は白血病で、親類からの骨髄移植以外に助かる望みはなかったが・・・。

評価★★★★/80点

絆を縛り付ける負の連鎖を優しい眼差しと素直な心が解きほぐしていく。家族にとって1番の良薬は皆の笑顔なんだね。納得!

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トニー滝谷

Tony 出演:イッセー尾形、宮沢りえ、篠原孝文、四方堂亘

監督・脚本:市川準

(2004年・日本・75分)仙台フォーラム

内容:トニー滝谷の名前は、本当にトニー滝谷だった・・・。太平洋戦争時、上海のナイトクラブでトロンボーン吹きをしていた父親にトニーと名付けられたトニー滝谷。生まれて3日で母親が死に、孤独な幼少期を送ったトニーは、やがて美大に進みデザイン会社に就職。その後独立してイラストレーターになったトニーは、彼の家に出入りする編集者の一人、小沼英子に恋をし結婚する。しかし、幸せな日々は長くは続かなかった・・・。村上春樹の短編集「レキシントンの幽霊」に収められた同名小説を映画化した切ない愛の物語。

評価★★★★☆/85点

「トニー滝谷の名前は、本当にトニー滝谷だった。」で始まるストーリーテリング。微細な音まで丁寧に拾い上げ収めている映像。孤独を背負う男トニー滝谷と、恐いくらい幸せな在りし日々の思い出が影として残るほどの残り香を漂わせる妻を見事に体現しきったイッセー尾形と宮沢りえ。

それら3つの要素が全くぶつかり合うこともなく本当に自然に融けあっている。

こういう映画を見たのはもしかして初めてかもしれない。

ほとんどの映画は3つの要素のうちどれかひとつが突出していて他をカバーしているか、あるいはそれぞれの要素がぶつかり合って互いに強め合ったり弱め合ったりする中から映画という眼差しや面白さを抽出しようとするか、またはそうせざるを得ない映画が大半だと思う。

しかし、この「トニー滝谷」という映画には、それが恐いくらいに無いのだ。よどみと衝突と干渉というものが一切ない。

だから恐いくらいに心地良い。

それでいて世界観は恐いくらいにしっかりと確立されているという。。これが完璧ということなのだろうか。

市川準は村上春樹という透明な地肌に静かで柔らかなタッチで映画の香りを浸透させていき、スクリーンという鏡に見事に投影させたといえるのではないだろうか。

これほどの技量をもったメイクアップアーティストを自分は他に知らない。

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ぼくの伯父さん(1958年・フランス・120分)NHK-BS

 監督・脚本:ジャック・タチ

 出演:ジャック・タチ、ジャン=ピエール・ゾラ

 内容:ユニークな詩情と文明批評、アバンギャルド風の構成などをない交ぜにし、場面の動きと音楽によって進行していく独特の喜劇映画で、ジャック・タチ監督によるユロ氏を主人公とした一連のシリーズの代表作。プラスチック工場の社長の息子はモダン住宅の自宅が大嫌いで、ユロ伯父さんと彼が住む庶民街を好んでいた。社長夫妻にはそれが面白くなく、就職やお嫁さんを世話してなんとかユロ氏を一人前の人物にしようとするが・・・。

評価★★★/65点

“映画を見るというよりは上質の4コマ漫画をパラパラめくって読むかんじに似ている。”

ひとつひとつのエピソードの中には面白くないエピソードもあるのだけども、全体を通して1つの作品としてみれば面白かったといえる、そんなちょっと不思議な魅力に彩られたクスッと笑える映画。

ユロ伯父さんがアパートの部屋の窓ガラスに反射した太陽光を向かいの日陰の鳥小屋に当ててあげるところなど、どこか優しいタッチがいいね。

世の中には、ビリー・ワイルダーの「情婦」(1957)で、自分のメガネに太陽光を反射させてわざと他人の目に向けるクソジジイもいるからな(笑)。いや、もとい、法曹界の大御所ウィルフレッド卿(チャールズ・ロートン)でございますた。。

2017年12月20日 (水)

夢のシネマパラダイス479番シアター:ハードボイルドは男の美学

アウトロー

Poster出演:トム・クルーズ、ロザムンド・パイク、リチャード・ジェンキンス、デヴィッド・オイェロウォ、ヴェルナー・ヘルツォーク、ロバート・デュバル

監督・脚本:クリストファー・マッカリー

(2012年・アメリカ・130分)WOWOW

内容:ピッツバーグで5人の男女が狙撃銃で殺害される無差別殺人事件が発生。現場に残された遺留品から、イラクに従軍していた陸軍狙撃兵ジェームズ・バーが容疑者として逮捕された。警察の取り調べに黙秘を続けるジェームズは、元米軍の秘密捜査官ジャック・リーチャーへの連絡を要求する。ところがその直後、ジェームズは護送中に他の囚人に襲われ意識不明の重体に。そんな中、ジャック・リーチャーがどこからともなく現われる・・・。

評価★★★☆/70点

顔と名前だけで客が呼べるハリウッドのドル箱スターシステムは00年代以降完全に廃れてしまったといっていい中で、いまだにミスターハリウッドであり続けるトム・クルーズは稀少な絶滅危惧種である王道スターだ。

それは言いかえれば演技力よりスターオーラの方が勝ってしまうタイプということができるけど、例えばキムタクがどんな役を演じようともキムタクにしかならないように、トムもどんな映画をやろうがトム・クルーズ映画にしかならない。

キューブリック、オリバー・ストーン、レッドフォード、スピルバーグ、ロン・ハワード、デパルマ、マイケル・マン、キャメロン・クロウ、JJエイブラムズetc..とこれだけ名の知れた大物作家や新進気鋭の監督と組んでもトム・クルーズというブランドイメージが消えないというのはある意味別格に凄いことだと思う。

しかも、そのブランドイメージはカジュアルでクリーンなものなので、ことさらスター気取りというクドさが感じられないのもトム・クルーズ特有の強みで、自己プロデュース能力に関しては天賦の才を持っているといっていい。それが長くハリウッドの顔であり続けられる理由なのだろう。見る側としてもトム・クルーズというキャラクターを承知の上でとりあえず見てみようという気になってしまうのだからw

しかし、そんな王道の中の王道スターがアウトロー役というのは本来なら相容れないキャラクターのはずで、例えばミッション・インポッシブルシリーズのイーサン・ハントのようなヒーローアクションのひな形とは真逆のアプローチがうまくフィットするのだろうかというイメージのしづらさはあった。

また、初の悪役を演じた「コラテラル」が映画としていまいちスッキリしなかったことも頭にあって、ハードボイルドはトム・クルーズにはどうなんだろうという不安もあった。

しかし、フタを開けてみれば一匹狼の元軍人という役柄は思った以上にフィットしていてよく出来ていたと思う。

これにはトムの魅力の他に話の作り方も大きく関与したといっていい。

アウトローというと、えてして復讐譚を軸とし、たった一人で法で裁かれない巨悪に立ち向かうのが定石なのだけど、この映画は“復讐”ではなく“正義”を軸とすることで、アウトローでありながらヒーローというありそうでなかったキャラクターを作り上げた。これだとトムの魅力を削がずにうまく合わせられることができるだろうし、ヒールに徹した「コラテラル」ほどの無理さもない。

実はこれは「シェーン」などの西部劇の作劇とほぼ同じだと思うのだけど、これを現代劇として当てはめたことが新鮮で面白かったと思う。大団円の採石場での決闘なんてイーストウッド西部劇に出てきそうなシチュエーションで面白かったし。

シリーズ化するにはやや地味めな気がするけど、もしその企画を通すのであれば、ジャック・リーチャーとは何者なのか、彼を真にアウトローたらしめている奥底にあるべき“喪失”を描かなければ意味がないと思う。そういう点で、それこそイーストウッドに監督させたら絶対に見たいと思わせる魅力はあるんだけどねw

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ジャック・リーチャー NEVER GO BACK

O0480064113796584990出演:トム・クルーズ、コビー・スマルダーズ、オルディス・ホッジ、ダニカ・ヤロシュ

監督:エドワード・ズウィック

(2016年・アメリカ・118分)WOWOW

内容:元陸軍内部調査部のエリート軍人で除隊後は流浪の旅を続けるジャック・リーチャー。ある日、かつての同僚スーザン・ターナー少佐を訪ねるが、彼女がスパイ容疑で逮捕されたことを知る。陰謀の可能性を察知したリーチャーは、陸軍基地から少佐の拘束を解き2人で逃亡するが・・。

評価★★★☆/70点

フォーマットとしてはリーアム・ニーソンの「96時間」。

さすらいの一匹狼的なハードボイルド感は薄まり、子連れ狼のファミリー感丸出しで前作の趣旨とはかけ離れてしまったかんじ。

が、従来から他を寄せ付けないオーラで単独で何でもやり遂げてきたオールマイティのトムに非力な女性を庇護するという足かせをつけたことで、相対的に不死身感が減殺されたのは格闘乱戦アクション主体の作品にあっては完全にプラス。

そっか、これは「96時間」というより「ターミネーター2」だということに気づいたw

しかも、15歳の思春期娘がトムの言うことを聞かなくて手を焼かせるものだからさぁ大変!って、これでホントに良かったのかトムさんw!?

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ダーティハリー

00000436165l 出演:クリント・イーストウッド、ハリー・ガーディノ、アンディ・ロビンソン

監督:ドン・シーゲル

(1971年・アメリカ・103分)NHK-BS

評価★★★/65点

内容:性格異常の殺人狂を追う刑事の冷酷非情な執念を描いた犯罪アクション。サンフランシスコのビルの屋上から一般市民が銃撃される事件が起きた。犯人は10万ドルを要求し、支払わなければ次の犠牲者を狙うと警察に通告する。殺人課の敏腕刑事ハリーは犯人を待ち伏せするが、激しい銃撃戦の末に犯人を取り逃がしてしまった。その後、犯人は14歳の少女を誘拐して20万ドルの身代金を要求。ハリーは20万ドルを手に、犯人の指定したマリーナへと向かった・・。

“44マグナムよりも女の素っ裸の方が多く出てきたと思ったのは、気のせいか・・・。”

なんか1870年代の西部劇を100年後のサンフランシスコにそのまま移し変えただけのようなかんじ。

1870年代だったら“ヒーロー”ハリーになっただろうが、100年経った現代アメリカ社会では“ダーティ”ハリーになっちゃうってことなのかな。

しかし、趣味で人殺しをする殺人鬼はハリー以上に法の限度を超越しとるやろ。法の掟などなんのそののハリーじゃないとどうにもならないのではないかな、とも思ってしまったのもたしかだ。。

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ブリット(1968年・アメリカ・114分)NHK-BS

 監督:ピーター・イェーツ

 出演:スティーヴ・マックイーン、ジャクリーン・ビセット、ロバート・ヴォーン、ロバート・デュバル

 内容:サンフランシスコの街に、仲間を裏切って200万ドルの金を持ち逃げしたシカゴのギャングが潜入した。ある裁判の証人としてこの男の証言を必要としている政治家チャルマースは、男の護衛を一匹狼の刑事ブリットに命じる。ところが、ブリットの油断から男が何者かに射殺されてしまった。ブリットは、男が生きているように見せかけて敵をおびき出そうとするが・・・。

評価★★★/65点

マックイーンといえば「大脱走」「パピヨン」「ゲッタウェイ」において逃走の美学を自由気ままに体現したイメージが強いけど、今作における追走の美学を体現した硬派なマックイーンもめちゃくちゃ良い。

タートルネックをあんなにカッコ良く着こなす男をマックイーン以外に自分は知らない。

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夜の大捜査線(1967年・アメリカ・109分)NHK-BS

 監督:ノーマン・ジュイソン

 出演:シドニー・ポワチエ、ロッド・スタイガー、ウォーレン・オーツ

 内容:ミシシッピーの田舎町。パトロールの警官が路上に殺人死体を発見。捜査が開始され、駅で張り込み中の警官が列車を待っていた黒人を容疑者として連行してくる。ところが、その黒人はフィラデルフィア警察殺人課の敏腕刑事ティッブスで、故郷の母を訪ねた帰途であった。殺人事件を扱ったことのない署長のギレスビーは、ベテランのティッブスに協力を求めたいと思ったが、人種偏見の強い土地柄、彼自身も黒人に頭を下げる気にはなれずにいた・・。

評価★★★★/75点

道なき道を切り拓いてきたポワチエその人から発せられるオーラと佇まいがそのままティッブスにのり移っているのも凄みがあるが、ガムを噛みながらコーラを飲むロッド・スタイガーの田舎の頑固なオッサン臭にも凄いものがある。

好対照な2人の見事なブレンド!

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刑事ジョン・ブック/目撃者(1985年・アメリカ・113分)NHK-BS

 監督:ピーター・ウィアー

 出演:ハリソン・フォード、ケリー・マクギリス、ルーカス・ハース、ダニー・グローバー

 内容:独自のコミュニティを作り、信仰のもと簡素な生活を送るアーミッシュの少年サミュエルは、殺人事件を目撃してしまう。刑事ジョン・ブックは捜査への協力を依頼するが、サミュエルの母親は他者との関わりを恐れて協力を拒もうとする。ところが、ようやくサミュエルが明かした犯人は警察の麻薬課長で、真相を知ったブックは母子とともに命を狙われてしまう・・・。

評価★★★★/75点

本当の題名は「刑事ジョン・ブック/のぞき見男」だと思うんだけど・・(笑)。

それはさておき、M・ナイト・シャマランの「ヴィレッジ」(2004)に出てきそうなアーミッシュの人々。黒服を着た彼らは、まるで西部開拓時代の「大草原の小さな家」に出てきそうな人々なんだけど、現代文明の中では奇異に映るその姿からは変な新興宗教をも想起させる。

しかし、その創始は17世紀のスイスにあるんだそうで。その後、弾圧を受けた彼らはアメリカに移住し、そこで自給自足の生活を営み、アメリカに入植した18世紀そのままの生活様式を守っているという。

しかも厳格な聖書解釈に基づき、あらゆる文明機器を使用せず、投票や徴兵などアメリカ国民の権利や義務さえ拒否しているというんだから徹底してるわな。

しかし、そんな禁欲社会にカッコいいバリバリの白人男がやって来たら、という異文化コミュニケーションがこのての刑事ドラマにしてはかなりしっかり描かれていて好印象だし、ちとエロイのも良いww

見てはいけないものを見てしまった、知ってはいけないことを知ってしまったという人間心理をくすぐる構成が大人の恋愛劇と絡めて上手くまとめられていてなかなかに偏差値は高い映画だと思うな。

ケリー・マクギリス、、イイです

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ヒート(1995年・アメリカ・171分)仙台第1東宝

 監督・脚本:マイケル・マン

 出演:アル・パチーノ、ロバート・デ・ニーロ、バル・キルマー、ジョン・ボイト、トム・サイズモア

 内容:ロサンゼルスの犯罪組織のボス、ニール・マッコーリー(デ・ニーロ)は、クリス(バル・キルマー)、チェリト(サイズモア)らと現金輸送車を襲い有価証券を強奪。捜査にあたるロス市警の敏腕刑事ヴィンセント(パチーノ)は、少ない手がかりから次第にマッコーリーたちへ近づいていく・・・。12分間に及ぶ市街での銃撃戦は映画史に残るド迫力。

評価★★★☆/70点

“敵”と書いて“とも”と呼ぶ。そんな漢(おとこ)映画!

まぁ、古臭いっちゃあ古臭いんだけど・・。しかも下手するとただの傷の舐め合い、いや馴れ合いでっせ。

しかし、そこはさすがのロバート・デニパチーノ。なんとか見れたけど。

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フレンチ・コネクション

Lbfawpzu出演:ジーン・ハックマン、フェルナンド・レイ、ロイ・シャイダー

監督:ウィリアム・フリードキン

(1971年・アメリカ・105分)NHK-BS

内容:NY市警の実在の2人の刑事の活躍を描いたノンフィクションをもとにしたポリスアクション。NYのブルックリンでジミー・ドイルとバディ・ロッソの2人の刑事は、麻薬の密輸ルートを追求していたが、ドイルはこの仕事に深く関与するにつれて命を狙われるようになる。やがて2人は張り込み中のチンピラが事業家を装ってマルセイユからやって来た中年紳士シェルニエと接触するところを突き止め、尾行を開始。そしてフレンチ・コネクションと呼ばれる大犯罪組織の解明に乗り出していくのだが・・・。アカデミー賞で作品・監督賞など5部門で受賞した。

評価★★★★/75点

“地獄の果てまで追いかける!!”

たとえ世の子供たちに夢を与えるサンタクロースになろうとも、その足で、その執念で、その野蛮な目つきで、その獰猛な嗅覚で、とにかく走って走って走りまくって犯人たちを執拗に追いつめていく。

ポパイことジミー・ドイルに追っかけられたらもう最後。車に乗ろうが電車に乗ろうが金をいくら積もうが逃げつく先に待つのは地獄の門番ジミー・ドイルその人なのだから。

問答無用の存在にしばし言葉も出ず・・。

2017年12月13日 (水)

夢のシネマパラダイス506番シアター:愛憎渦巻く家族愛

永い言い訳

168434_02出演:本木雅弘、竹原ピストル、藤田健心、白鳥玉季、堀内敬子、池松壮亮、黒木華、深津絵里

監督・脚本:西川美和

(2016年・日本・124分)WOWOW

内容:人気作家の津村啓(ペンネーム)として活躍する衣笠幸夫。不倫相手と密会していたある日、旅行中の妻・夏子がバス事故で亡くなったとの知らせを受ける。すでに夫婦関係が冷え切っていた中で涙を流すことさえできない幸夫は、遺族への説明会で同じ事故で亡くなった夏子の親友ゆきの死に取り乱す夫・大宮陽一と出会う。トラック運転手の陽一は、まだ手のかかる2人の子どもを抱え、途方に暮れていた。子供のいない幸夫は、ふとした思いつきから子どもたちの世話を買って出るが・・・。

評価★★★★/80点

とりあえず黒木華を濡れ場要員として消費してしまう女優の使い捨て感がハンパない。

しかし、そんな女性不在の映画にもかかわらず、早々に退出したはずの深津絵里の存在感が全編を通して消えないのもある意味凄くて、生者が死者に縛られる構図に最後まで説得力をもたせていたと思う。

ましてや何も語らないはずの死者に「もう愛していない、ひとかけらも」なんてとどめの一撃まで残させるこの監督の情け容赦のなさには、ダメ男の幸夫にさすがに同情w

しかし、身近な人を喪って初めて知る大切さや愛おしさ、そして何より人は一人で生きていくことはできないんだという考えてみれば当たり前のことに気付かされる過程を、麻痺しない程度の毒針でもってチクチクと刺してくる西川美和のいじわるな筆致には相変わらず引き込まれてしまった。

自分の置かれた現実に四面楚歌状態になりながらも、斜に構えたインテリ感が消えない幸夫のカッコ悪い姿は、パーソナリティーが真逆な大宮(竹原ピストル)と比べると感情移入しづらい面はあったけど、だからこそ先述したテーマ性がよく伝わってくる仕掛けになっていたように思う。

その点で竹原ピストルと子役2人の果たした役割は大きかったな。

いやぁ、全てを見透かす西川美和ってやっぱり恐いわーw

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父、帰る

00000579138l 出演:イワン・ドブロヌラヴォフ、ウラジミール・ガーリン、コンスタンチン・ラヴロネンコ

監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ

(2003年・ロシア・111分)仙台チネラヴィータ

評価★★★/65点

 

内容:ロシアの片田舎。2人の兄弟アンドレイとイワン母と祖母とつつましくも幸せに暮らしていた。そんな夏のある日、12年間音信不通で写真でしか見たことがなかった父親が突然家に帰ってきた。寡黙な父はこれまでのことを何も語ろうとせず、母も何も説明しようとはしない。兄弟の戸惑いをよそに、翌朝父は彼らを小旅行に連れ出すが・・・。

“役者陣の存在感、詩的な映像美、静謐な音楽とひとつひとつの素材は満点に近いゆえに、なおさら映画の中になかなか入っていけないもどかしさが大きくのしかかってくる。”

旧ソ連時代を含めてロシア映画はほとんど見たことがないのだけど、この映画における役者陣の存在感と質の高さには舌を巻くばかりだった。

兄弟の強い視線が道先案内人としてこの映画を照らし出す光となっているのは言うに及ばず、特筆すべきは父親役コンスタンチン・ラヴロネンコの圧倒的存在感。

ただそこに立っているだけでその場の空気が彼のオーラによって充満し密度が増すのだから。

12年間どこで何をしていたのかが全くの謎に包まれた父親、しかし、その12年という重みと年輪が静かにかつ確実に刻まれていたように見えてしかたなかった。

そして登場時間は少なかったものの兄弟の母親。これがまた素晴らしいのなんの。

夫を12年間待ち続けてきたであろう妻、しかし帰ってきた夫に対してどこかそっけない態度で逆に不安な夜を過ごしてしまう、そんな複雑な心の内を垣間見せる彼女のストーリーをもっと見たかったり。「ジャック・サマースビー」みたいになっちゃうのかな。

また、映像もCM畑出身の監督らしく凝ってはいるが、肌にまとわりついてくることがない美しさで迫ってきて、個人的には好みの画。

と、ここまでべた褒めしてきたように、各々の要素は素晴らしいのだが、映画の中に入っていくことができないというこの映画に対する唯一の不満がはっきりいって全てをチャラにしてしまう・・・。

映画の世界へ入るためのドアが半開きになっていて、爽やかな風が流れてくるのだが、ドアノブに手をかけようとしてもどうしても手が届かず、追いかけても追いかけてもなかなか追いつくことができない。まるで永遠に追いつけないのではないかと思うくらい。

だから自分は途中で追いかけるのをやめた。ひとり車を下ろされ降りしきる雨の中でじっとうずくまるイワン少年のように、ただ目で追うことしかできなかった。

と、ずっと目で追ってたらラストで半開きのドアからモノクロ写真がパラパラと落ちてくる始末。

それを拾って見て、そこで初めてこの映画に触れられた気がしたのだが、あくまでも気がしたであって、その意味するところなど分かろうはずもない。

といってもう一度見る気にもなれず、僕、帰る。。ガクッ

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Mr.&Mrs.スミス

Imgf633ca7bzik6zj 出演:ブラッド・ピット、アンジェリーナ・ジョリー、ヴィンス・ヴォーン

監督:ダグ・リーマン

(2005年・アメリカ・118分)MOVIX仙台

内容:結婚5年目のスミス夫妻。表向きはアツアツの夫婦だったが、裏の顔は2人とも別組織に属する一流の殺し屋だった。互いにその正体を隠し結婚生活を送っていた2人だったが、ある時ついに仕事の現場でバッタリ出くわしてしまい・・・。

評価★★★/60点

う~ん、宮川大助・花子のドツキ漫才の方が面白い。そんなレベル。。

最強サド・マゾ夫婦の幸せ家族計画、もとい異常性欲の発露を徹底的に暴いた真実の映画、とも言えなくもない・・。良い子のみなさんは決してマネしないように

でもジョン(ブラピ)とジェーン(アンジー)の大格闘シーンでやけになったブラピのマジ蹴り連発にはさすがに吹いちゃったけどね(笑)

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幻の光(1995年・日本・110分)NHK-BS

 監督:是枝裕和

 出演:江角マキコ、内藤剛志、浅野忠信、柄本明、柏山剛毅

 内容:12歳の時、祖母が失踪してしまったゆみ子は、その事件以来、祖母を引き留められなかったことを深く悔やんでいる。やがて25歳で郁夫と結婚し、息子も生まれ幸せな日々を送っていたが、ある日、郁夫は自転車の鍵だけを残して列車に飛び込み命を絶ってしまった。5年後、ゆみ子は民雄と再婚して奥能登の小さな村に移り住む・・・。生と死、喪失と再生をテーマに、宮本輝の同名小説を映画化したヒューマン・ドラマ。

評価★★★☆/70点

“宮崎駿は、すべては闇から生まれ闇に帰るとナウシカに言わせしめたが、もしかしたら幻の光とは生命も清浄も汚濁も苦悩も善も悪もすべてが溶け合った原初の源から生まれた最初の光だったのかもしれない。”

永遠に打ち寄せる波のごとく繰り返される彼女の喪失への問いに対する答えを彼女は永遠に知ることはできないだろう。

しかし永遠に鳴り止まない波の音色がいつしか日常に溶け合っていくように、彼女の決して癒されない悲しみは、能登の厳しい自然にゆっくりと吸い込まれ取り込まれ溶け合っていく。

宮崎駿が言うように、命は闇の中のまたたく光なのだとしたら、漆黒の闇をまとっていた彼女の中にうっすらと光が差し込み、闇を背負ってなおそれがまぶしく光り輝き、いつしか色鮮やかな衣を身にまとうことができる日がやって来るような気がする。

そうほのかに感じさせる静かだが確かなラストだったように思う。

P.S.黒い服は死者に祈る時にだけ着るの~~♪っていう宇多田ヒカルの歌が頭の中で鳴り響いてしまった。。

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楢山節考

Balladofnarayama2783us 出演:坂本スミ子、緒形拳、あき竹城、倍賞美津子、左とん平、清川虹子

監督・脚本:今村昌平

(1983年・東映・131分)WOWOW

評価★★★★/75点

 

内容:ある山奥の寒村では、食料不足のために70歳を過ぎた老人は子供に背負われて近くの楢山の頂に捨てられるという掟があった。“楢山さま”と呼ばれる神様を信じている老女おりんは、捨てられに行くことを神のもとに召されることだと信じ、その日を待っていた・・・。カンヌ国際映画祭作品賞。

“蛾と蛇と蛙と蝙蝠と、清川虹子。。人間が蟲になる夜、蟲祭りの夜、、”

こいつらを土鍋に放り込み今村風ゴッタ煮でグツグツ煮込む。

すると今まで見たことも感じたこともないような強烈な色とにおいのするアクがゴボコポと吹き出してくるのだ。

それは日本人の生と性の営みの根源的な部分が土気色の泡状となったものであり、取れども取れどもそのアクは吹き出してくる。

しかも今村風ゴッタ煮は、煮汁が煮詰まりアクが壁面にこびり付くまで煮詰めるしつこさが売りで、その熱と執着は見ている者の芯深くに眠っている影を呼び覚まし恐怖さえ抱かせる。

人間を動物でも獣でもなく、虫のように描いてしまう今村昌平のどぎつい眼力に、見てはいけないものを見ているような、蛇ににらまれた蛙状態になってしまった・・。

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生きたい(1999年・日本・119分)NHK-BS

 監督・脚本:新藤兼人

 出演:三國連太郎、大竹しのぶ、吉田日出子、塩野谷正幸

 内容:姥捨て山伝説と現代の高齢化社会における老人の置かれた現状を交錯させ、ユーモラスなタッチで描いた社会派人間ドラマ。

評価★★★/65点

弟の苦悩を描いた方が面白い映画になりそうだけど・・。

それはともかく、さんまが怖れる女優、大竹しのぶ。

普段のキャラがこの作品にちょっとでも含まれているのだろうか。彼女の映画を見るたびにどんどん分からなくなる。

これを天才と呼ばずして何と呼ぼう。

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ホワイト・オランダー(2002年・アメリカ・109分)NHK-BS

 監督:ピーター・コズミンスキー

 出演:ミシェル・ファイファー、レニー・ゼルウィガー、アリソン・ローマン、ロビン・ライト=ペン

 内容:15歳のアストリッドは、才能豊かな芸術家の母と2人暮らし。恋人殺しの罪で服役する母は、娘に手紙で「私だけを信じて」と訴え続ける。しかしそれは、才能、美貌などすべてを手にした母親の独善的な愛だった。。。

評価★★★/65点

“石の上にも三年を、文字通り悩み苦しみながら、しかし凛々しさとたくましさをもって見事に体現しきったアリソン・ローマンに魅入られた男ここにあり”

ミシェル・ファイファーも適役で見事にハマっていたと思う。

くもりのないクリーンな白みを湛え、華奢でどこか可憐ではかなげでありながら、蒼い瞳と額に浮かぶ青スジで冷徹な面を醸し出す。

なんかジョジョの奇妙な冒険に出てくる、ブチ切れてスイッチが入ると豹変するアブない香りのする女キャラに似てたな・・。

2017年8月26日 (土)

夢のシネマパラダイス8番シアター:TAXi→→ベイビードライバー

ベイビードライバー

Artis_p2892_1出演:アンセル・エルゴート、ケヴィン・スペイシー、リリー・ジェームズ、エイサ・ゴンサレス、ジョン・ハム、ジェイミー・フォックス

監督・脚本:エドガー・ライト

(2017年・アメリカ・113分)東宝シネマズ日比谷

内容:天才的なドライビングテクニックを買われ、ギャングの“逃がし屋”として働く青年ベイビー。幼い頃の事故で両親を亡くし、激しい耳鳴りに悩まされる後遺症が残ったが、iPodでお気に入り音楽を聴くと耳鳴りは消えてクレイジードライバーへ覚醒する。そんなある日、ウェイトレスのデボラと出会った彼は恋に落ちる。そして彼女のために、この世界から足を洗う決意をするが・・・。

評価★★★★/80点

ワイパーの動きまでもが曲のテンポとシンクロするという、カーアクションに音楽を合わせるのではなく、音楽にカーアクションの方を合わせる誰も思いつかなかった“異色ミュージカル”🎵

選曲も60~70年代のソウル/R&B、ロック、ジャズに至るまでかなりマニアックなのだけど、監督の趣味のゴリ押しではなく実にオシャレかつクレバーに使っていて、音楽によって映画が快感的に昇華されている好例といえる。

しかし一方で、おそらくキラーチューンありきで構成されているせいかシナリオはやや雑。。各キャラクターの行動原理に何かしらの違和感があってビミョーに引っかかりが・・。

そして、まさかしっかりと刑期をつとめてハッピーエンドというオチには少し拍子抜け(笑)。まぁ、狂気から程遠いベイビーからするとこれはこれで有りなのかもしれないけど、落とし前の付け方としては生真面目すぎw

テルマ&ルイーズみたいにグランドキャニオンから車ごとダイブするくらいのインパクトがあった方が余韻が残ったような。。そういう意味ではバディ&ダーリンのラブラブカップルが1番印象的だったかもね。

とりあえず、サントラ聴いてみよっ♪

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TAXi

Taxi 出演:サミー・ナセリ、フレデリック・ディーファンタル、マリオン・コティヤール

監督:ジェラール・ピレス

(1997年・フランス・93分)DVD

内容:マルセイユでタクシー運転手を始めた若者ダニエルは、改造プジョー406で無免許営業、しかも無類のスピード狂で警察にマークされていた。偶然、そのタクシーに乗った刑事エミリアンが彼の運転の腕を見込み、ドイツ人銀行強盗団“メルセデス”の逮捕に協力させようとするが・・・。プジョーvsメルセデス!

評価★★★☆/70点

“男はF1バトル、女はFカップバトル。甲乙つけがたし。。”

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TAXi2(2000年・フランス・88分)DVD

 監督:ジェラール・クラウジック

 出演:サミー・ナセリ、フレデリック・ディーファンタル、マリオン・コティヤール、エマ・シェーベルイ、ベルナール・ファルシー

 内容:日本の防衛庁長官を乗せる警護車の運転手に任命されたスピード狂のタクシー運転手ダニエルが、長官を拉致した謎の忍者軍団を大追跡。今回のプジョーの敵は三菱ランサー!

評価★★★☆/70点

褒めたくもないけど、けなしたくもない。そんな憎めない映画なのでありまっス。

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TAXi3(2002年・フランス・87分)DVD

 監督:ジェラール・クラウジック

 出演:サミー・ナセリ、フレデリック・ディーファンタル、ベルナール・ファルシー

 内容:久々に再会した刑事のエミリアンとダニエルが、“サンタ強盗団”の一味らしき人物に遭遇。2人は後を追い、敵のアジトをつきとめるが・・・。今回はプジョーvs雪山

評価★★★/60点

オイラのスキー技術でも十分勝てそうだな・・。

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TAXi NY(2004年・米/仏・98分)WOWOW

 監督:ティム・ストーリー

 出演:クイーン・ラティファ、ジミー・ファロン、ジゼル・ブンチェン、ジェニファー・エスポジート

 内容:舞台をニューヨークに移し、ひょんなことで出会った女タクシー運転手ベルと落ちこぼれ刑事ウォッシュバーンがコンビを組み、女強盗団とカーチェイスを繰り広げる。

評価★★★/60点

“イエローキャブはイエローキャブでも野田社長のイエローキャブちゃうやろなっつうくらいの美女軍団にメッロメロ

オリジナル作が完全無欠のお馬鹿映画だったのに比べると、ハリウッド版はきらびやかにまとまっちゃったかんじ・・・。

タクシーの本場イエローキャブinNYだけあって、それなりに楽しめはしたのだけど、なにより姐御クイーン・ラティファのクールかつカッコいい風格のある存在感がドツボにハマっているのはいいとしても、そのかわりにおバカ度やスピード感を食っちゃっているというのはちょっと痛かったかも。

また、強盗団の美女軍団といい、最近この人に惚れてますのジェニファー・エスポジートといい、画のつくりといい、なにか「ワイルドスピード」的なセクシー要素が付加されてて、なんか変に垢抜けちゃったなという印象はどうしても持ってしまった。

やっぱりオリジナルのやりたい放題っぷりにはかなわないな。。

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TAXi4(2007年・フランス・91分)WOWOW

 監督:ジェラール・クラウジック

 出演:サミー・ナセリ、フレデリック・ディーファンタル、ベルナール・ファルシー、エマ・シェーベルイ

 内容:17カ国から指名手配されている凶悪犯を護送する任務に就いた刑事エミリアンは、無事に署まで連行したものの不注意から逃亡されてしまう。そこでエミリアンはダニエルの協力を得て逃走先であるモナコへ急行するが・・・。

評価★★★/60点

“ジベール署長のピンク・パンサーシリーズが見たい!”

主役はもう完全に釣りバカ署長になっちゃってるじゃん(笑)。

マルセイユの問題児ジブリル・シセに悪態をつくわ、マシンガン撃ちまくるわ、数々の目に余る冒涜を働き、ピッチの上で豪快なゴールを見せるラストの見せ場まで持ってっちゃって、もはや独壇場!1番逮捕しなきゃならないのは犯人じゃなくてコイツだろ。署長主役で1本作った方がええんちゃうか。。

ていうか、完全に“タクシー”じゃなくなってるような・・。

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