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2021年1月10日 (日)

夢のシネマパラダイス390番シアター:ピクサーアニメ第2倉庫

WALL・E ウォーリー

2682405328_6d3e9a8dce 声の出演(日本語吹き替え):横堀悦夫、園崎未恵、草刈正雄、小川真司、小山茉美

監督・脚本:アンドリュー・スタントン

(2008年・アメリカ・103分)WOWOW

評価★★★★/75点

 

内容:人類に見捨てられ、ゴミに埋めつくされた29世紀の地球。そこで700年もの間、黙々とゴミ処理に励んでいるロボットのウォーリー。天涯孤独の彼は、ミュージカル映画「ハロー・ドーリー」の中の登場人物みたいに自分もいつか誰かと手をつなぎたいという夢を抱いていた。そんなある日、突如着陸してきた探査船から一体のロボット・イヴが降り立った。ウォーリーはたちまちイヴに心惹かれていくが・・・。

“目は口ほどに物を言う”

人間ではないものを擬人化することにかけては右に出るものがないピクサーがたどり着いた擬人化の最終進化形。それは鼻もなければ口もない、セリフもなければ足までないツンツルテンのデジタルロボットと、汚染物質とサビがビッシリくっついたアナログロボットだった!

喜び、泣き、笑い、怒りといった感情を“目”と“手”だけで表現する。それは例えば手をつなぎたいのに言い出せないで相手の手をもどかしそうに見つめる、その仕草だけで十分に映画たりえるのはチャップリンの「街の灯」(1931)なんかにも通じるところなんだけど、映画・アニメーションの原初的な動きが普遍的な愛―愛おしさや優しさ、つまりは人の温もり―をダイレクトに伝達してくれる、そのオーソドックスな素晴らしさを再確認させてくれただけでもこの映画を見た甲斐はあったというもの。

しかも、それを無機質なロボットで表現したのだからスゴイの一言だわ。

絵柄とか世界観が自分の大好きなTVゲーム「ラチェット&クランク」シリーズに似ていて馴染みやすかったし、あとはやはり人間以上にピュアで感情豊かなウォーリーにイチコロでやられたかんじ。

足のないイヴや歩くことをやめた人間とは対照的にキャタピラをカタカタ震わせながら地に足を着けて駆け回る姿、そしてイヴを一途に想いつづけるけなげな姿に思わずホロリとさせられてしまった。

まぁ、無人と化した地球で黙々と働きつづけるウォーリーの日常を追ったシュールな前半部分にもうちょっと捻りをきかせたエピソードを持ってきて、“700年間ひとりぼっち”というウォーリーの境遇にもっとスポットライトを当ててほしかった気もするけど。イヴの登場が早すぎたような・・。

でも、こういう映画を作れてしまうピクサーはやっぱりスゴイと思う。

宮崎アニメ以外で、見終わった後もう一度見たいと思わせる作品を作ってくれるピクサー、ずっとついて行きまっせ!

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カールじいさんの空飛ぶ家

O0264039110307093801 声の出演:飯塚昭三、大木民夫、立川大樹、松本保典、松元環季

監督:ピート・ドクター

(2009年・アメリカ・103分)WOWOW

内容:古い一軒家に住むカールじいさんは、最愛の妻エリーに先立たれてからひとり孤独に暮らしていた。しかし、家が地上げにあい、立ち退かなければならなくなる。そして迎えた立ち退きの日の朝、カールはエリーと約束した伝説の場所パラダイス・フォールへ旅立つことを決意する。。

評価★★★★/75点

個人的映画会社格付けにおいて文句なしのAAAを付けられる唯一の会社、ピクサー!

今回もまた期待を裏切ることのない出来で、その信頼は揺るぎのないものに!

まず、カールとエリーのなれ初めから始まるオープニング、そして2人の幸せな夫婦生活をサイレント風につづった5分にも満たないモンタージュシーンに一気にゾッコンになってしまった。

カールじいさんが冒険ブックにあったエリーの写真を見て在りし日の思い出にふける終盤のシーンもそうだけど、絵だけで見せきる力というのはズバ抜けていて、愛らしさ、温かさ、優しさ、哀しさといった要素が全て織り込まれているその映像からは説得力と感動が喚起される。

さらにそれを強化・増幅させているのが音楽で、ここまで映像とうまく融合した珠玉の音楽というのは久方ぶりで、必要最低限のセリフしかない今回の作品において、音楽の果たした役割は非常に大きいといえよう。

そしたっけば、音楽を担当したマイケル・ジアッチーノって自分の大好きなLOSTシリーズの音楽もやってたと知ってビックリ。他にも「Mr.インクレディブル」「レミーのおいしいレストラン」なんかもやってて、なるほどそれぞれの作品の世界観を十二分に引き立てる術を心得た作曲家なんだなと。今後要注目

テーブルマウンテンに下りたあとに、いかにもディズニーらしい動物キャラが出てきた時は色合いがガラリと変わって不安になったけど、ピクサーらしい独創的な味付けが加えられていてさすがだなと思わせられたし、ひとひねり利かせたユーモアのセンスや絶妙な間の取り方など随所に巧さを感じさせるかなり完成度の高い作品なんだけども、唯一意外にあっけなく家が飛んだのにはあれっ!?てかんじだったかもw

ただ、体にホースをくくりつけて家を運ぶくだりが長かったように、飛ぶこと自体にはそこまで執着していない印象で、飛ぶというよりは浮いているといった方が的確なような気もする。

そこらへんはどうしてもジブリと比較しちゃうんだけど、チャールズ・マンツの飛行船とカールじいさんの家の空中戦はラピュタのゴリアテとタイガーモス号を思い起こさせたな。

そして最後に思うのは、自分もああいう幸せな結婚してみたいなぁ、ってこと

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トイ・ストーリー3(2010年・アメリカ・103分)WOWOW

T0008404p 声の出演:唐沢寿明、所ジョージ、日下由美、辻萬長、松金よね子、大塚周夫、永井一郎、三ツ矢雄二

監督:リー・アンクリッチ

内容:前作から12年後。アンディは17歳になり、大学進学のため寮に引っ越すことに。すでにオモチャで遊ぶこともなくなっていたアンディはウッディだけを寮に持っていくことにし、それ以外のオモチャは屋根裏にしまうことにするのだが、母親の手違いで危うくゴミに出されそうになってしまう。アンディに見捨てられたと憤慨する彼らは保育園行きを決断するのだが・・・。

評価★★★★★/100点

シリーズものの3作目はえてして方向性を間違えた凡作が多い。それはアニメ映画もまたしかり、シュレックシリーズの体たらくを見れば分かる通り、ネタ切れとマンネリによる失速から逃れるのは至難の業としかいいようがない。

そんな壁に絶対にハズレのないピクサーが挑む!というか手を出しちゃったかとゲンナリしちゃったのだけど、、フタを開けてみたらその不安は一気に雲散霧消、3作目にして最高傑作という離れ技を前にしてピクサーやっぱスゲェーッ!と拍手喝采してしまった。

なにより、めくるめくキャラクターのアンサンブルには脱帽するしかない。

10以上のキャラクターに躍動する個性を吹き込むだけでも目を見張るのに、スリンキーのバネ胴体やミセス・ポテトヘッドの右目など小道具としての特性を駆使した見せ場も工夫されていて十二分に楽しめてしまうし、ウッディがトイレの便座によじ登るときにトイレットペーパーを敷いたり細かなところまで気が利いていてつい目を細めてしまう

あとは泣かせどころ満載のストーリー!

かくいう自分は4回泣かされてしまいますた。。

冒頭からしてすでに涙腺をつかまれてしまい・・。自分たちの存在を思い出してもらおうと、オモチャ箱の中でアンディの携帯を鳴らす精一杯の努力がなんともせつなくて

いつしか忘却の彼方へ追いやられてしまうオモチャの背負う宿命に立ち向かっていくウッディたちの生き生きとした姿には胸躍らされるとともに身につまされっぱなしだったのだけど、溶鉱炉で皆で手をつないで最期を悟るところはついにこらえきれず・・

で、ラスト、アンディとの別れでさらなる追い打ちをかけられ・・w

別れが印象的な映画は、カリオストロ、ラピュタ、ローマの休日、ゴースト~ニューヨークの幻~、リトル・ダンサーなど心に焼き付いて離れない映画ばかりなのだけど、今回は最も幸せな気分に浸れる別れの映画になっていたと思う。

しかし、これで終わりかと思いきや、エンドロールでチャックルズの笑顔にとどめを刺されてジ・エンド。

世の中だけでなく様々な映画作品でもディスコミュニケーションが蔓延する中、何があってもみんな一緒!とチームプレイと絆と思いやりを前面に押し出した作風にはなんとも清々しい気持ちにさせられた。

自分の心の中に間違いなく宝物として残る映画だったと思う。

P.S. しかし、セピア調で語られるロッツォの過去のなんとせつないことよ・・。かと思えばケン&バービーのおバカコントに爆笑したり。涙あり、笑いあり、活劇あり、ドラマあり、傑作です!

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カーズ2

Cars2_03 声の出演:山口智充、土田大、大塚芳忠、朴路美、パンツェッタ・ジローラモ、福澤朗、戸田恵子

監督:ジョン・ラセター

(2011年・アメリカ・113分)WOWOW

内容:天才レーサー、ライトニング・マックイーンは、久々に故郷ラジエーター・スプリングスに帰ってきて羽根を伸ばしていたが、ひょんなことからワールド・グランプリに出場することに。そこでマックイーンは、大親友のおんぼろレッカー車、メーターをピット・クルーのメンバーとして帯同させることにする。一方、英国のスパイ、マックミサイルはある事件を追っていて・・・。

評価★★★/60点

今まで一度もハズレがなかった鉄板ピクサー、初めてハズしたかも

今回の映画を一言でいえば、めまぐるしくてせわしなくてドタバタしているといえばいいだろうか。

前作にあったノスタルジックな味わいから一転してアクション満載のカーレース映画へ変貌をとげた今作は、さらにマックイーンからメーターに視点を移してかなりのシフトチェンジを果たしているのだけれど、ただのドタバタカーレースだけをピクサーに求めるものではない自分にとってはやや消化不良。。

キャラクターの成長の深度がピクサーの真骨頂だとするならば、苦悩や葛藤からは最も程遠いムードメーカーのメーターを主軸に据えた時点で作品の風合いはガラリと変わらざるをえないわけで、そこを穴埋めするのにスパイアクションを取り入れたのは理にかなってはいるのだけど、イマイチそこに見る方としては乗り切れなかったかなと。

まぁ、アニメ映画としてのエンタメ水準をゆうに超えているのは言うまでもない出来だけど、どうしてもピクサーの場合はハードル一気に上げて見ちゃうからなぁ・・w

驚異のCG映像もまるでプレステ3でも見ているかのようだったけど、3Dを意識しすぎたあざといカットもあってちょっと気に障ったし(笑)。。

結果、今回の映画はクルマじゃなくてもよかった気が・・

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メリダとおそろしの森

O04500636org_20120418000601声の出演:大島優子、山路和弘、塩田朋子、木村有里、内田直哉

監督:マーク・アンドリュース、ブレンダ・チャップマン

(2012年・アメリカ・94分)WOWOW

内容:中世スコットランドのダンブロッホ王国。王女メリダは弓を手に野山を駆け回るのが大好きなお転婆少女で、立派な王女に育てたい母親のエリノア王妃とは衝突してばかり。そんなある日、メリダの夫選びが元で親子げんかしたメリダは家出ならぬ城出してしまう。そして森で不思議な鬼火に導かれた先で魔女と出会ったメリダは、自分の運命を変えてほしいと願うが・・・。

評価★★★☆/70点

メリダとおそろしの魔女となぜか頭にインプットされていたので、ハンガーゲームのジェニファー・ローレンスばりの弓矢の名手がカーリーヘアをなびかせながら魔女と対決するのかと思いきや、まさかくまモンと大島優子の痛快ドタバタコント劇になっているとは露知らず。

結果、爆笑させてもらったのでこの点数だけど、全体的にはピクサーらしからぬ大雑把な仕上がり。

そもそも、この映画の主人公ってメリダじゃなくて、くまモン王妃じゃんw

おてんばで勝気なメリダの成長よりもガミガミ王妃の改心の方がほろっとしたし、生シャケにむしゃぶりついたり、女性としての恥じらいを見せたりといったくまモンの演出は非常によく練られていて楽しく見られた。

あと何よりCGが凄すぎで、毛並みとか表情とかビジュアル面はさすがピクサーだけに一歩図抜けている。

まぁ、ピクサーの場合どうしても期待のハードル値を上げて見てしまうので、今回のようなお子ちゃまレベルだとガクンと評価が下がっちゃうけどw、それでも他の凡百のアニメ映画よりは断然見れてしまうのだから相変わらずピクサーには恐れ入る。

ディズニーは余計な口出しすんじゃないぞー(笑)。

といいつつ、ディズニーの「塔の上のラプンツェル」の方が出来としては上だったのはどーゆーこと!?

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ファインディング・ドリー

168779_02声の出演:室井滋、木梨憲武、上川隆也、中村アン、田中雅美、八代亜紀

監督・脚本:アンドリュー・スタントン

(2016年・アメリカ・96分)WOWOW

内容:1年前にニモ捜索の旅に同行したドリーは、相変わらず物忘れがひどいものの楽しい毎日を送っていた。しかしそんなある日、ひょんなことから幼い頃に離ればなれになってしまった家族との記憶を取り戻す。居ても立っても居られなくなったドリーは、わずかな手がかりをもとにカリフォルニアの海を目指す。そして、そんなドリーを放っておけず、ニモと父親マーリンも一緒について行くのだが・・・。

評価★★★★/75点

前作から13年経っても変わらない作風だったのは嬉しいけど、良くいえば欲を出さずに手堅く道を踏み外さなかったかんじ。悪くいえば、チャレンジ精神に乏しくボールを置きに行ったかんじ。

前作以上に人工物主体の閉鎖空間における箱庭アドベンチャーに舵を切ったつくりは、アクションが映えるとはいえトイストーリー的で新味はない。

しかし、ニワトリ並みの記憶力しかない健忘症のドリーをはじめサブキャラに至るまで、障害をキャラクター造型に意図的に取り入れているんだけど、それらはハンデではなく豊かな個性として描いているところにオーソドックスなストーリーを感じさせない面白さがあって、プラスマイナスでいえば完全にプラス。

ルイ・アームストロングの「素晴らしき世界」の使い方など音楽のセンスも良かったし、やはりさすがピクサー印の映画だったなという感想に落ち着く。

ただ、なぜ八代亜紀なんだ?てところだけは腑に落ちないw

2021年1月 4日 (月)

夢のシネマパラダイス557番シアター:嫌われ松子の一生

リップヴァンウィンクルの花嫁

20160407075011出演:黒木華、Cocco、地曳豪、和田聡宏、原日出子、毬谷友子、金田明夫、りりぃ、綾野剛

監督・脚本:岩井俊二

(2016年・東映・180分)盛岡フォーラム

内容:内気な性格の派遣教師・皆川七海は、ネットで出会った鶴岡鉄也とトントン拍子で結婚することになった。さらに、親族友人が少ないので、結婚式の出席者をこれまたネットで見つけた便利屋の安室に依頼して済ませる。ところが、新婚早々に旦那の浮気が発覚。義母ともめた末に七海の方が家を追い出されてしまう。途方に暮れた彼女は、安室に頼って住み込みのバイトを斡旋してもらうのだが・・・。

評価★★★★/80点

黒木華はまことに稀有な女優さんだ。

21世紀の世にあって誰もが持ちえない昭和の銀幕女優のような古風でおっとりしたオーラをまとっているからだ。

昭和の銀幕女優というのは、切符の買い方さえ知らないような浮世離れした部分があるんだけど、黒木華は池脇千鶴や蒼井優、満島ひかりのような現実社会に真正面からぶつかり合っていく本格派女優の系譜に連なりながら、と同時に世渡りしていくには純粋に過ぎるのではないかというような破格の品の良さも持ち合わせている。

地に足が着いていなさそうに見えて実は肝の据わった芯の強さを持っている、その真逆のベクトルが相殺し合うことなく同居しているところが唯一無二の女優たる所以なのだといえる。それゆえ彼女のキャラクターが映画の格を一段上げているというか、この人が出ていれば大丈夫という安心感を与えてくれる。

その点で今回の映画は主演ということもあって、黒木華の女優としての両面が余すところなく映し出されている。

特段主体性もなくなんとなく生きてきた岩手出身の主人公(自分も岩手出身なので通じるところがあるw)が人生のレールから脱線し、流されるように転落していくんだけど、そこに悲壮感が感じられないのが黒木華らしくて面白いんだよね。

そしてこの黒木華にこれまた特異体質のCoccoを組み合わせたのが白眉で、後半は現実感のない完全なおとぎ話に昇華されている。

スマホでしか繋がれない希薄な現代の虚構世界をたゆたうお嬢さんのメルヘンチックな冒険譚は、まるでスーパーマリオで上に乗った途端に下へ落ちていくブロックをふわりふわりと飛び跳ねていくピーチ姫を想起させる。

しかし、Coccoは何なんだあれは(笑)。素なのか演技なのか、もう完全に何かが憑依しているかんじで、非日常にグイッと持っていかれて少し怖くなっちゃうくらいだった。

P.S.結婚するアテなんて当にあきらめているけど、万に一つ結婚式なんてのがあったら、自分も呼ぶ知り合いがいないことに気づいた・・w

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嫌われ松子の一生

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出演:中谷美紀、瑛太、伊勢谷友介、香川照之、市川実日子、柄本明、木村カエラ、宮藤官九郎、柴咲コウ、片平なぎさ、ゴリ、谷原章介、劇団ひとり、BONNIE PINK、土屋アンナ

監督・脚本:中島哲也

(2006年・東宝・130分)仙台フォーラム

評価★★★★/80点

内容:昭和22年、福岡県に生まれた川尻松子。お姫様のような人生を夢見る明るい少女だった松子だったが、愛情の唯一の対象だった父親は、病弱の妹ばかりを可愛がっていた。やがて20代になって中学校の教師になった松子だったが、万引きをした教え子の罪をかぶりクビに。その後、愛を求めて男性遍歴を重ねるたびにますます不幸になっていくのだった。そしていつしかソープ嬢に身を落とし、果ては同棲中のヒモを殺害するまでに至ってしまう・・・。

“いとしいシト、、そしていとしいエイガ”

川尻松子、享年53歳。

家族からは絶縁をつきつけられ、中学教師をクビになるわ、ソープ嬢になるわ、ヒモを殺害して刑務所に入っちゃうわ、挙句のはてに中学生にバットでボコられて野っ原でおっ死んじゃうわと、傍から見れば悲惨な人生を送った女。

そして彼女の人生についてまわる最悪の男運。

病弱な妹にばかり向けられる父親の愛を大人になってからも追い求め続けた松子の周りに引き寄せられてくる男どもは、暴力男やヤクザ男ばかり。しかし、殴られ蹴飛ばされ裏切られ捨てられても、一人ぼっちになるよりはマシだからと男を追っかけ続ける悲しい性を背負った女。

そして片平なぎさが出てくる火スペの断崖絶壁をエイヤーッと一気に飛び降りるかのごとき後先考えない類まれな決断力(!?)がことごとく裏目に出てしまう哀しい運命を背負った女。

そう、彼女は人生の岐路でことごとく昇りのエスカレーターに乗ることができない、そういうタチらしいのだ。

ある意味確信犯的にいつも下りのエスカレーターに飛び乗ってしまう運命の松子は、しかし下りのエスカレーターに抗うように懸命に駆け上がろうと上を向いてひたすら走りつづける。下を向いて後ろを振り返ったら流されるまま絶望という名のドン底に転落していくだけという中で、松子はスクワットを欠かさない見上げたド根性と決して後ろを振り返らないひたむきさと一途さで突き進む。

しかし、その甲斐もむなしくズッコケてしまう松子は失意のドン底にうつぶせのままズルズルと落ちていき、「これで人生が終わったと思いました。」とあきらめかけ最悪自殺まで考えたりもするのだが、しかし次なる夢を見つけると、スックと立ち上がり、また下りのエスカレーターを必死こいて駆け上がろうとするのだ。

その懸命な姿にはある種のもの悲しさと哀愁だけではない滑稽さと可笑しみが漂っている。

それが人間的な魅力に包まれた松子として見る者を魅了し、挙句のはてには感動すら覚えさせてしまったりするのだ・・・。

しかし、そんな必死こいて走りつづけてきた松子もついに走ることをハタと止め後ろを振り向き、下りのエスカレーターに下を向きながら従順に流されていく時を迎える。

中学校のときの元教え子と同棲していた松子が、4年間服役した彼の出所の日に堀の外に迎えに行くと、なななんとブン殴られてKOを喫し、逃げられてしまった、その時だ。文字通りドン底に落ちた松子は駆け上がることをやめ、ゴミ溜めのようなボロ部屋で食いものをむさぼり食い、酒をあおり、寝て起きるだけのなすがままの生活を始める。

そして、十数年にわたる引きこもりは松子を野ブタのような姿形に変えてしまう。。

ここで唐突に出てくる光ゲンジの内海くんとやらの追っかけにはつい爆笑してしまうが、それはさておき七転び八起きの松子は長い雌伏のときを経てもう一度美容師になる夢を見つけ、さあ、また下りのエスカレーターを駆け上がるゾーーッ(あのブヨブヨの体で・・)と決意を新たにし、2階のアパートの部屋を出て階段を降り公園に捨ててしまった名刺を拾いに行く、、そして前のめりにブッ倒れてそのまま起き上がることはなかった松子・・・。

いつもならそこでスックと立ち上がって夢に向かって走り出す松子は、夢の切符をしっかり握りしめたまま長い眠りにつくのだった。

はたから見れば、悲惨な転落人生には違いない。

しかし、そこには愛の血潮に染まって幸せをつかむために駆け上がっていこうとする人間臭さにまみれた女の、懸命に必死こいて生きる剥き出しの姿があった。

だが、なんといってもこの物語をミュージカル調で描いてしまおうという中島哲也監督のイマジネーションにも度肝を抜かれてしまう。おそらく松子と同じくエイヤーーッと一気に飛び降りるかのごとき後先考えない類まれな決断力と見上げたド根性を持っているんだろうね。

正直自分の頭の引き出しの中にはミュージカルという道具立ては全くなかったからなぁ・・。

普通この手の人間ドラマを描くなら、例えば荒戸源次郎の「赤目四十八瀧心中未遂」(2003)のような幻想とエロの世界に彼岸(あの世)の入口がポッカリと穴を開けている異界ワールド(そこに堕ちていく男女)だとか、例えミュージカル調でいくにしても、この悲惨さと暗さはラース・フォン・トリアーの「ダンサー・イン・ザ・ダーク」(2000)だろう。

しかし、この中島哲也という男は「アメリ」(2001)のファンタジー調で描いちゃうんだよなぁ。。

はっきりいって好きです(笑)。こういう人間を肯定的に見ることができる人って好き。ラース・フォン・トリアーとは真逆なんだねたぶん。

そしてミュージカルも、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」におけるミュージカルが主人公セルマの現実逃避の道具にしかすぎなかったのに対し、本作では映画のテンポとリズムを高める変速ギアのような役割も果たしていて良かったし、何より松子がコミカルに歌い踊る姿は最高に楽しかった。BONNIE PINKの“LOVE IS BUBBLE”とかAIの“What Is A Life”も最高だったし。

下りのエスカレーターを必死こいて駆け上がる姿の滑稽さと可笑しみを音楽と歌で花いっぱい幸せいっぱいに歌い踊って表現する。

なんて愛おしいんだ。

川尻松子は自分にとっての“いとしいシト”(byゴラム)になっちゃったかも・・・。そしてこの映画が自分にとって愛しいエイガになっちゃったかもしれないぞ。

さてさて、最後はこの言葉で締めくくろう。

1986年アパルトヘイト吹き荒れる南アフリカの黒人居住区で起こった学生運動を女子高生の視点で描いたミュージカル映画「サラフィナ」(1992)のマイレビューから。

人は泣き、笑い、叫び、そして歌うんだ!!ジャーーン♪

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鬼龍院花子の生涯(1982年・東映・146分)CS

 監督:五社英雄

 出演:仲代達矢、夏目雅子、高杉かほり、岩下志麻、夏木マリ、仙道敦子、山本圭、丹波哲郎、夏八木勲

 内容:土佐の侠客・鬼政こと鬼龍院政五郎の奔放な半生を、養女・松恵の目を通して描いた任侠ロマン。闘犬場でのいざこざから宿敵・末長の娘つるを強奪した鬼政は、彼女が産んだ花子を溺愛するようになる。一方、養女・松恵は女学校を出て小学校教師となり、労働争議を支援する高校教師・田辺と結婚、高知を出て大阪で暮らし始めるが・・・。

評価★★★/60点

“なめられたいぜよっ!”

いろんな意味でww

しかし、花子のブスっぷりは度を越しすぎ!あれはヒドイだろ(笑)。

仙道敦子-夏目雅子の松恵役は良かったし、ふくよかなオッパイには目を奪われっぱなしだったし(まさか湯婆婆のを見せられるとは・・)、それらを全て呑みこむほどの圧巻の演技を見せた仲代達矢もスゴかったけど、花子の捨て駒っぷりだけはいかんともしがたかったな。

まぁ、哀れさを出すには格好のキャスティングだったのかもしれないけど・・。

まぁでも、五社映画って濃ゆすぎてあまり好きじゃないんだけど、薄幸の夏目雅子のおかげもあってこれは最後まで見れますた。。

2020年12月30日 (水)

夢のシネマパラダイス151番シアター:新聞記者

新聞記者

20190214shimbunkisha_full出演:シム・ウンギョン、松坂桃李、本田翼、岡山天音、西田尚美、高橋和也、北村有起哉、田中哲司

監督:藤井道人

(2019年・日本・113分)WOWOW

内容:日本人の父と韓国人の母のもとアメリカで育った東都新聞の社会部記者・吉岡(シム・ウンギョン)。ある日、社会部に医療系大学新設計画に関する匿名のFAXが届き、吉岡は上司の陣野(北村有起哉)からその極秘文書の裏を取るよう指示される。そして彼女は内閣府の神崎(高橋和也)という人物にたどり着く。一方、外務省から内閣情報調査室へ出向している杉原(松坂桃李)は、政権を維持するために情報操作する仕事に悩みながら日々を送っていた。そんな中、外務省時代の上司だった神崎が自殺してしまう・・・。

評価★★★★★/90点

ウォーターゲート事件を題材にした「大統領の陰謀」とその前日譚でベトナム戦争の愚行に迫る「ペンタゴンペーパーズ」、イラク戦争の大義の欺まんを暴く「記者たち衝撃と畏怖の真実」、原発問題に切り込む「チャイナシンドローム」、巨大宗教権力の闇に挑む「スポットライト世紀のスクープ」、政治権力に対するジャーナリズムの矜持を描いた「グッドナイト&グッドラック」etc..

“ペンは剣よりも強し”な実録社会派ドラマを量産してきたアメリカ映画の懐の深さに羨ましさを感じてきた中、まさか令和の時代に攻めに攻めたポリティカルサスペンスを日本映画で見ることができるとは思いもよらなかった。

しかも、憲政史上最長政権が健在だった中でガッツリ批判的な内容を一目でそれと分かるように描いてしまうのだから、その映画人としての勇気は大いに買いたいところ。

ただ、その気概が強すぎて娯楽作品としての遊びがないのと、総理に直結しながら霞が関の中でも実態がよく分からないとされる内閣情報調査室と田中哲司の仏頂面を権力体制の象徴として描き、政治家を一切出さないのも映画の奥行きを狭めたきらいはある。

まぁ、映画原案の東京新聞・望月衣塑子記者や元文部官僚が劇中のTV座談会に実際に登場するくらいだから、政権批判のベクトルに前のめりになる作りになるのは当初の狙いだったのだろうけど。

あと、キャラ設定にやや難ありだったとはいえ、主演女優のシム・ウンギョンの頑張りは大いに認めたいところ。

聞くところによると日本人女優がことごとくオファーを蹴ったということで白羽の矢が立ったらしいけど、望月記者に密着した森達也監督のドキュメンタリー映画の中で、彼女に対して朝鮮人呼ばわりする脅迫クレーマーが出てきたので、それに対する強烈な意趣返しだとしたら面白かったのに。

ちなみに、望月記者当人は感情の湿りが強い映画のシム・ウンギョンとは真逆の佐藤仁美みたいな男勝りキャラだったw

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スポットライト 世紀のスクープ

Spotlight560x840出演:マーク・ラファロ、マイケル・キートン、レイチェル・マクアダムス、リーヴ・シュレイバー、ビリー・クラダップ、スタンリー・トゥッチ

監督:トム・マッカーシー

(2015年・アメリカ・128分)WOWOW

内容:2001年、ボストン。地元のボストン・グローブ新聞社に編集局長として赴任したマーティ・バロンは、ゲーガン事件-神父による80人にものぼる子供への性的虐待事件-の見直しを命じる。しかし読者の多くをカトリック信者が占める中ではタブーとされる醜聞であり、幹部は難色を示す。そんな中でウォルター・ロビンソンら4人の記者たち“スポットライト”チームに事件の調査取材が任された・・・。

評価★★★/65点

いくら世界で最も宗教に疎い日本人のひとりとはいえ、ひとつの街で250人もの神父が児童の性的虐待に関わっていた事実、そしてこれは世界的にみれば氷山の一角にすぎないという事実には驚きを通り越してドン引きするしかない。

なんだけど、あまりにも実話としての重みがセンセーショナルすぎて各方面への配慮と慎重さが求められたのか、映画のプロット構築が真面目すぎて、角の立たない無難な作りに終始してる感が強かったかなぁ。

スポットライトのチームスタッフにあっても主人公を置かず、被害者は不特定多数、加害者は教会組織という中で個人の顔がなかなか見えてこなくて、そこが物足りない部分だったのかなという気はする。

まぁ、意図した作りだったんだろうし、その土地と教会が密接に結びついているアメリカ社会においてタブーに切り込んだだけでも評価すべきことなのかもしれないけど、これでアカデミー賞てのは正直意外。。

ただ、声なき声にスポットライトを当てるジャーナリズムの使命を疎かにしてしまった自省という面を重くとらえている向きもあって、ジャーナリズム=正義として必ずしも描こうとしていないところが、この映画の誠実さを如実に示しているところではあるんだよね。

しかしまぁ、事実は小説より奇なりとはいうけど、ここまでおぞましい事実を突きつけられるとなんだかねぇ・・。

教会は万能で何でもできるというセリフがあったけど、キリスト教に全くの門外漢な自分としては、教会が地域で果たす役割やその聖域性を肌で知っていれば、この映画に対する見方もかなり違ってくるんだろうなぁとは思った。だって警察や弁護士はじめ地域も薄々感づいていたわけでしょ。けど子供を守るべき大人が声を上げられない動けないってどんだけ硬直した社会なんだよ・・・。

日本でも教師のわいせつ事件とかビックリするくらい多いらしいけど、学校も閉鎖空間だし、もう第3者のカウンセラーとか学校に常設してオープンにするとか、あるいはそういう輩にはGPS付けるしか防ぎようがないと思うな。

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消されたヘッドライン

1 出演:ラッセル・クロウ、ベン・アフレック、レイチェル・マクアダムス、ヘレン・ミレン、ジェイソン・ベイトマン、ロビン・ライト・ペン

監督:ケヴィン・マクドナルド

(2009年・米・127分)WOWOW

 

内容:ワシントンDC。ある夜、ヤク中の黒人少年が何者かに射殺され、地元紙ワシントン・グローブの記者カル・マカフリーが取材を開始する。その翌朝、コリンズ下院議員の秘書ソニアが地下鉄で不審な死を遂げる。マスコミがコリンズとソニアの不倫疑惑を一斉に報じる中、コリンズは旧知の間柄であるカルにソニアの死は自殺ではないと主張する。カルは女性新米記者デラとともに取材を進めていくが・・・。

評価★★★☆/70点

真実を追い求めようとする者の姿ほどアツい人間力が発揮されるものはない。

銃という飛び道具を持つ刑事よりも、ペンと足と信用で勝負する新聞記者の方がより人間力が試されるという点で、個人的には新聞記者を描いた映画はかなり好みの部類。

骨太な社会派「紳士協定」(1947)やラブロマンス「ローマの休日」(1953)、戦場の真実を追った「キリング・フィールド」(1984)など古今を問わず様々なジャンルに及んでいるけど、やはり「クライマーズ・ハイ」(2008)のような新聞社を舞台にした作品や、権力を監視することが本来の職務であるジャーナリスト魂を感じさせる「大統領の陰謀」(1976)のような作品が好きかな。

その点でいえば、今回の映画はドンピシャのネタだと思うんだけども、軍産複合体の実態にジワリジワリと迫っていくプロセスはスリリングで面白かったものの、結局最後に個人の問題に帰結してしまったどんでん返しにはいささか辟易してしまった。

巨悪の闇を隠そうと事件を矮小化しようとする権力側とそれに対抗するジャーナリズムという「大統領の陰謀」的構図を踏襲しつつ、その裏側に売れることありきで針小棒大にネタを書き立てようとするメディアの危うさを盛り込んだのは買いなのだけど、さらにそこにひとひねり付け加えたことで、実は事実そのものが矮小なものだったのだというオチは、まるでピンと張り詰めた風船が一気にしぼんでしまったような呆気なさを感じて思わずガクッときてしまう。

誰よりも速く情報を知りたい、何よりもスキャンダラスなニュースを知りたいというWEB&メディア社会に生きる我々に対する皮肉とメディアへの警鐘が裏テーマとしてあったということなのだろうけど、ちょっと消化不良だったかな。

まぁ、とはいえ、ラッセル・クロウの一癖ある人物像や、脇に配された女性陣の印象深い存在感など役者陣はおおむね良かったし、二転三転する展開も面白く、見て損はない作品だとは思った。

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大統領の陰謀

Image848 出演:ロバート・レッドフォード、ダスティン・ホフマン、ジェイソン・ロバーズ

監督:アラン・J・パクラ

(1976年・アメリカ・132分)NHK-BS

評価★★★★/80点

 

内容:1972年6月17日、ワシントンのウォーターゲートビルにある民主党全国委員会本部に5人の男たちが侵入し逮捕された。男たちは盗聴器を仕掛けるために入り込んだが、共和党の狂信者による単独犯行として片付けられる。「ワシントン・ポスト」の若い記者バーンスタインとウッドワードは、事件の背後に何者かの陰謀を感じ取り、追跡調査に乗り出した。ウォーターゲート事件の真相究明に奔走した「ワシントン・ポスト」紙記者の実話の映画化。

“ディープ・スロートが始めからしゃべっとれば済む話ちゃうの?とついつい思ってしまう。。”

事件から30数年経った2005年に、ディープ・スロートの正体が元FBI副長官だったことが判明して一躍話題になっちゃったけど。

でも、この映画見ると、ラストでしゃべるくらいなら最初からしゃべっとけば逆に自分の身も安全だろうにと思っちゃった。。実際はどうだったのか分からんが。

そいえばX-ファイルにもディープ・スロートって出てきたっけ。この映画からきているのだろうか。

でもまぁ、この映画で気になったのはディープ・スロートくらいなもんで、他は全体を通していえばほぼ完璧ともいえる映画だったと思う。

幾層にも重なった断片的な情報の積み重ねを玉ネギの表皮を1枚1枚剥がしていくようにしっかりと描き出していく。

例えば、2万5千ドルの小切手にケネス・ダールバーグという名前を見つけるくだりでも、事務所になんとか入り込むために受付の女性との口八丁手八丁のやりとりをするところを手抜きをせずにちゃんと描く。

それによって、断片的な情報がより実体をもったものとして生きてくる。

そして、その積み重ねによって、最初は得体の知れない何かとしか分からなかったものの正体が徐々に明らかになっていく。

真実に辿り着くまでの過程の描き方が非常に緻密で素晴らしく、見ごたえのある作品になっていると思う。

ただ難点、アメリカ人にとっては難点じゃないだろうけど、特に初めてこの映画を見る日本人には見てるうちに何がナンだか分からなくなってくるのではないかなと。アメリカの選挙方式も含めて。。

恥ずかしながら自分も途中からわけが分からなくなったくちで・・。2回見てやっと理解。。

というのも関係者の人物名が多すぎて、人物関係がつかめなくなっちゃうんだよね。

ケネス・ダールバーグあたりまでは追えるけど、その後ずらりと次から次へとスタンズやらスローンやらポーター、、え?何者?カーンバック??カムバックじゃなくて?チェーピン???ホールドマンって誰?って黒幕かよ!

もうお手上げ~~。

結局2回目はメモしながら見たけど、これがけっこう凄い人物相関図になるのね。。

ハワード・ハントからチャールズ・コルソンとマレン社に枝分かれした後、ホールドマンに至るまでの流れがけっこうどころじゃなく凄い。

この映画に出てくるウォーターゲート事件に関連した人物名、ワシントンポスト勤務者以外でなんと25人くらいになります。これにウッドワード、バーンスタイン、ディープ・スロートなどを含めるとざっと30人にはなるんだよね。

脳の処理能力超えてるだろww

まあ逆にいえば2時間ちょいによく収めたなあってことなんだけど。

でもディープ・スロートが最初にしゃべっとけば、とやっぱり思っちゃうよねこれ・・。

2019年10月10日 (木)

夢のシネマパラダイス6番シアター:青春ガチンコグラフィティ

ちはやふる-上の句-/-下の句-

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出演:広瀬すず、野村周平、新田真剣佑、上白石萌音、矢本悠馬、森永悠希、清水尋也、松岡茉優、松田美由紀、國村隼

監督・脚本:小泉徳宏

(2016年・東宝・上111分/下102分)WOWOW

内容:小学生の時に転校生の新&幼なじみの太一と競技かるたにのめり込んだ千早。卒業とともに3人はバラバラになったものの、かるたを続けていれば再会できると信じる千早は、高校でかるた部の創設に乗り出す。そこで同じ高校に進学していた太一と再会し、2人で部員集めに奔走。やがて古典オタクの女子・かなちゃん、小学生かるた全国準優勝の肉まんくん、秀才の机くんの勧誘に成功し、晴れてかるた部が誕生する。そして千早は全国大会優勝という新たな決意に燃えるのだった。

評価★★★☆/70点

上の句★4つ、下の句★3つ。

花びらがひらひらと舞い散る桜並木から始まる映画に悪い映画なんてあるわけがない(笑)。

今作も爽やかな青春映画として魅力ある作品になっていて、運動部のようなむさ苦しさのない和物の文化部を舞台にしながら、ベタなスポ根要素の熱さも加味したバランスの良さはかなり新鮮。

さらに、主人公が競技かるたの試合後に白目をむいて爆睡するというようなチープな漫画的要素も、登場人物の巧みなキャラクター造形とそれを演じる若手俳優陣の魅力も相まって上手く処理されているのも良い。

特に広瀬すずの素晴らしさは今更ながらに実感したかんじ。中でも対戦中の眼光の鋭さは印象的で、それがあっての白目落ちがちゃんとボケとして成立しているので面白く見られるんだよね。

けれど、上の句は団体戦、下の句は個人戦と色分けされてはいるものの、どう考えても1作にまとめられただろうとは思った(笑)。

特に上の句のラストで、かるたはもうやらない!と宣言した新が下の句のメインになるのかと思いきや、あくまでも勝負の土俵に上がろうとしない新がやっとで重い腰を上げるのがエンドロールって、、正直ガックリ。。孤高のクイーンしのぶ(松岡茉優)のキャラが良かっただけにちょっと消化不良・・。まぁ、上の句で描くことはやりきった感がやっぱりあるんだよね。。

でも、かるた部5人のキャラはこの映画最大の“ラッキーボーイ”机くんをはじめ各々個性が立ってて面白かったので、年を経ての続編はあっていいかも。

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おっぱいバレー

Main_large 出演:綾瀬はるか、青木崇高、仲村トオル、石田卓也、大後寿々花、福士誠治、光石研、市毛良枝

監督:羽住英一郎

(2008年・日本・102分)WOWOW

内容:1979年の北九州。中学校の新任国語教師・美香子は、男子バレー部の顧問を任される。が、キモ部と評される通り、部員たちはバレーボールすらまともに触ったことがなく、エッチなことしか興味がない脳タリンばかり。そんな彼らのやる気を出そうとした美香子だったが、ひょんなことから「試合に勝ったら、おっぱいを見せる」というとんでもない約束をするハメになってしまう。そしたっけ単純バカ部員たちは別人のようにやる気を見せ始め・・・。

評価★★★★/80点

実に清々しい作品だ。

おっぱいを連呼連発しておきながら実に爽やか。しかも「ウォーターボーイズ」や「スウィングガールズ」をも凌ぐレベルで。。

それはつまるところ第三者(物語の登場人物しかり監督をはじめとする作り手しかり)の悪意がこの映画にはないことに尽きると思うのだけど、とにかくおっぱいを見たいという動機付けオンリーで映画を引っ張っていくバカさ加減は逆にあっぱれ。キモ部とバカにされる落ちこぼれ童貞男子の脳内レベルから逸脱することがない愛すべきおバカ映画である。

しかし、童貞くんでもインターネットでポチッとクリックすればおっぱいを見られる今の世の中ではおっぱいは希望のかたまりにはなりえない。。

その点で橋の下に落ちているしなびたエロ本と11PMしかなかった昭和54年を舞台設定にしたのは大正解!昭和53年生まれの自分は珠玉の名曲をバックグラウンドに懐かしい香りに包まれながら見ることができて幸せですた。

ちなみに自分のノスタルジー心を最も刺激したのは、雨が降ったせいで女子の体操着が濡れてブラがスケスケになっている場面だったことを記しておこう・・。

オトコって単純。ハイ、そうですww

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ガチ☆ボーイ

Img080306 出演:佐藤隆太、サエコ、向井理、仲里依紗、宮川大輔、泉谷しげる

監督:小泉徳宏

(2007年・東宝・120分)CS

内容:とある大学。安全第一を是とするプロレス研究会に五十嵐良一という学内屈指の優等生が入門してきた。せわしなくメモを取りながら練習に励む五十嵐だったが、肝心の段取りがまるで覚えられない。そんな中、商店街でのデビュー戦で案の定段取りを忘れた五十嵐は掟破りのガチンコファイトをしてしまい、一躍人気レスラーに。しかし、そんな五十嵐には深刻な秘密があった・・・。

評価★★★★/80点

K-1やボクシングは好きで見るけど、出来合いのストーリー性の中で繰り広げられる筋肉ムキムキのエンタメお遊戯ショーにしか見えないプロレスは面白くなくて燃えないから見ない。

そんな自分が初めてプロレスの試合に燃えた。熱く燃えまくった

司法試験に受かったくせにプロレスの段取りは覚えられなくてカンニングしてしまうというガリガリの五十嵐(佐藤隆太)のキャラがそれ自体コメディとして面白かっただけに、まさかその裏に、眠るとその日のことを全て忘れてしまう高次脳機能障害というシリアスな記憶障害ネタが隠れていたとは思いもよらず・・・。

プロレスのみならず朝起きてからの一分一秒を否が応にもガチンコ勝負せざるを得ない五十嵐の奮闘に、日々のんべんたらりんと生きてる自分が喝を入れられたような、そんな感動を味わうことができた作品だった。

また、記憶障害を単なるあざといダシネタに終わらせずに、真摯かつ妥協なく描いているという点でも、「タイヨウのうた」(2006)で難病ネタを扱いながら丁寧な筆致が印象的だった小泉徳宏監督の演出は今回も健在で好印象。

あとは、やっぱなんといっても佐藤隆太だな。深刻な秘密を覆い隠さんばかりの満面の笑顔は見ていてツラクなってくるほどだったけど、佐藤隆太の長所がうまくハマッたかんじで、ガチの熱演を見せてくれていたと思う。

頭ではなく、身体で覚えた記憶で生きる実感を取り戻そうとする五十嵐のガチンコの生きざま。

はたして自分は生きる実感をしっかり持っているのだろうか。それすらビミョーだ・・

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ウォーターボーイズ

Image01 出演:妻夫木聡、玉木宏、平山綾、眞鍋かをり、竹中直人、杉本哲太、谷啓、柄本明

監督:矢口史靖

(2001・東宝・91分)仙台第一東宝

内容:部員が男ひとりという唯野高校水泳部に突如やって来た美人女性教師佐久間先生。すると彼女目当てに男どもがこぞって入部してくるが、佐久間先生は満面の笑みで「シンクロやって文化祭で発表しまーす!」と言い出してしまう。結局それを聞いた男どもはこぞって退部していく。残ったのはたったの5人、、、はてさて。。

評価★★★☆/70点

理屈抜きで面白いです。てか理屈で見たらダメなんですね。

眞鍋かをり先生が「有象無象が寄り集まってるだけじゃない」とおっしゃってたように、こういうのは頭ん中カラッポにして見ないと。どっかのお笑い番組でも見てるかんじで見るのが正解。

要は映画じゃない。記号でしょこれって。さらに言えば、マンガでしょ。この映画でリアリティといったら柄本明くらいなもんだし(笑)。だって竹中直人が出てるっつうだけで予想はつくw

ただ、唯一許せないのは、妻夫木が最後躊躇すること。

お笑い番組で芸人さんが躊躇することなんて普通ないだろー。なのに何で恥ずかしがるんだよ。その後のシンクロ演技で綾ちゃんに堂々と迫ってるくせに。あそこでフツーの心理描写を持ってくるなっつーの。

けどなんだかんだ言ってこういう映画もたまにはイイよね。

2019年8月 3日 (土)

夢のシネマパラダイス530番シアター:原爆が残したもの・・・

母と暮せば

D0_hzneucaicqbd出演:吉永小百合、二宮和也、黒木華、浅野忠信、小林稔侍、橋爪功

監督・脚本:山田洋次

(2015年・松竹・130分)WOWOW

内容:長崎に原爆が投下された昭和20年8月9日、医大生の浩二は一瞬にしてこの世からいなくなった。夫を病気で、長男を南方戦線で亡くしている母親の伸子は、次男坊はどこかで生きていると思いながら助産婦の仕事をしながら一人で暮らしていた。浩二の婚約者だった町子はそんな伸子のことを気にかけ、足繁く訪ねてくれていた。そして3年目の8月9日、伸子の前にひょっこり浩二の幽霊が現われる。そして2人は思い出話に花を咲かせるのだった・・・。

評価★★★☆/70点

終戦から70年経ち、今や戦地に行った兵士たちは年齢的に考えてもほとんどいない世の中になってしまった。13歳の時に終戦を迎えたという山田洋次もすでに85歳。

銃後の世代でさえもはや危うい。自分が思っている以上にあの戦争は風化してしまっているのだと思う。そして高齢になっても精力的に映画を撮り続ける山田洋次にとって最近のきな臭い世の中の風潮もあいまって撮らずにはいられなかったのだろう。

昭和15年の東京を舞台にした「母べえ」(2007)で市井の人々のささやかな幸せを喰いつぶしていく不気味な戦時の空気を描いていたけど、今回は数多の生命を一瞬で消し去った原爆投下から3年後の長崎を舞台に、いまだ消えることなく日常に刻まれた傷跡を描き出した。

広島が舞台の「父と暮せば」と対になった作りになっていて、生き残った者の負い目というテーマは同じなのだけど、生き残った自分は幸せになってはいけないんだと自問自答する娘の痛々しさが心に刺さった「父と暮せば」と比べると、今回は母と息子というマザコンすれすれの親子愛とキリスト教の死生観が根本にあるために若干メッセージ性が甘めの方向に出てしまった感はあるかなとは思う。

けど、原爆を語り継ぐことをライフワークとしてきた吉永小百合の演技は心に響くものがあったし、菩薩のような彼女でさえも「どうしてあの娘だけが幸せになるの?」と呪詛の言葉を吐かざるを得ないところに、戦争・原爆のもたらした虚しさとおぞましさが胸をついた。

あとは何といってもたった2カットで表現した原爆投下直後の惨劇シーンだろう。

医科大の教室内がビカッと真っ白に光った後に万年筆のインク瓶がトロトロと溶けていき、ガラス片の粉塵が猛烈な爆風で吹きすさび真っ暗闇に覆われていく、、、そのあまりの衝撃に何も言葉が出てこなかった。

山田洋次渾身の一作になったといっていいだろう。

ただ、映像から色や温度は伝わってきても匂いまではあまり伝わってこなくて、戦争を知る最後の世代の山田洋次でさえも描き切れないところに風化の恐ろしさを感じてしまったことも付け加えておきたい。

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父と暮せば

Kura 出演:宮沢りえ、原田芳雄、浅野忠信

監督・脚本:黒木和雄

(2004年・日本・99分)NHK-BS

評価★★★★/80点

 

内容:広島に原爆が投下されてから3年。図書館に勤める美津江は、愛する人たちを原爆で失い、自分だけが生き残ったことに負い目を感じながらひっそりと暮していた。そんな彼女はある日、図書館で大学助手の木下という青年と出会い、互いに惹かれあっていったが、「うちは幸せになってはいけんのじゃ」と恋心を押さえ込んでしまう。それを見かねた彼女の父・竹造は亡霊となって姿を現し、“恋の応援団長”として娘の心を開かせようとするのだが・・・。

“広島の原爆慰霊碑に記銘されている「安らかに眠って下さい。過ちは二度と繰り返しませんから。」という言葉を忘れずに受け継いでいくためには、とにかく語り継いでいくことしか道はない。”

戦争・被爆体験の記憶を風化させてはならないという声は、戦後70年が経ち、TVゲームばりのシミュレーション感覚で戦争がTV画面から流れてくることにどこか感覚が麻痺しかけている現在、特に声高に叫ばれていることだが、風化を防ぐためにはとにかく戦争体験者の悲惨な記憶を世代を越えて語り継いでいかなければならない。

風化させてはならないのならば語り継いでいかなければならない。~しなければならない、それは義務であり責任であり使命である。戦争を体験した者としての。

と、疑問のはさみ込む余地などないような当然なこととして自分なんかは考えてきたのだが、この映画を見てハッと気付かされたことがある。

それは、語り継ぐ者の苦悩とツラさだ。

思い出したくもない、他人に話したくもない悲惨な体験の記憶を吐露すること。そのエネルギーと勇気はそれを受け取る側からは計り知れないほどのものがあるのだろう。

原爆投下から3年後の広島で生きる美津江の苦悩、未来を断絶させてしまうほどの人間そのものを深くえぐる傷。

「あんときの広島では死ぬるんが自然で、生き残るんが不自然なことじゃったんじゃ。」という言葉にしばし絶句してしまう。

生き残った者としての苦しみを切々と表現した宮沢りえと、その何十倍もの苦しみを背負いながら美津江を大らかに包んでいく「恋の応援団長」原田芳雄の存在感にただただ脱帽するばかりだ。

次の世代に継いで行く、それにはもちろん受け取る次の世代の側にも義務と責任と使命が課されるわけだが、はたして語り継ぐ側とどれだけ価値観を共有できるのか、どれだけ彼らのつらく苦しい記憶を実体と重さのあるものとして受け止められるのかという問題も最近は出てきたように感じられる。

先の戦争では日本軍兵士の多くが実は餓死で亡くなっているというのは事実だが、この飽食の時代に、はたして飢餓を想像できるだろうか。以前TVで、あまりにも空腹で、炭をガリガリかじって食べたんです、という元兵士の話を聞いたが正直自分はわけが分からなかった。だって、炭って・・・。

また、例えば、ひめゆり部隊の沖縄戦に関する語り部の証言が「退屈で飽きてしまった」などということが高校の入試問題に平気で出てしまう、今はそんな時代になってしまったのだ。

風化は日々進んでいる。

とにかくもう時間がない。次の世代に継いでいかなければならない時間が・・・。

戦後70年経って、涙を流しながらやっとで重い口を開く方もいる。戦後70年経っても、いまだに戦争の悪夢にうなされる方々がいる。

自分の祖父はシベリア抑留を経験していたが、中学生の時に交通事故であっけなく逝ってしまった。

祖父には右手の親指がなかったが、戦争で銃弾を受けたせいだと言っていた。

結局、祖父からは戦争体験らしいものを聞くことなく別れてしまったのだが、今となっては少し心残りな気もする。

シベリア抑留、ほとんど分からないし知らない。

これは、問題だ。。

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黒い雨

Bnashzxau 出演:北村和夫、田中好子、市原悦子、小沢昭一、三木のり平、沢たまき

監督・脚本:今村昌平

(1989年・東映・123分)NHK-BS

評価★★★★★/90点

 

内容:1945年8月6日、高丸矢須子は瀬戸内海の小船の上で強烈な閃光を見た。その直後、空は見る見る暗くなり、矢須子は黒い雨を浴びてしまう。5年後、福山市に移り住んだ矢須子は、原爆症の疑いをかけられて縁談がなかなかまとまらず、彼女の面倒を見る叔父は気をもんでいた。やがて、矢須子は発病し、被爆の後遺症に悩まされる・・・。

“「正義の戦争より不正義の平和の方がマシ」という印象的なセリフがあったけど、昭和20年の日本より平成20年の日本の方がマシ、、、と今の後期高齢者の方々は本当に思えるんだろうか、、というのもなんだか怪しい世の中になってきちゃってるような気がしてならない。。”

自分にとってトラウマになっている映画というのは何本かあって、それは例えば「ターミネーター」だとか「オーメン」「バタリアン」など小学校低学年で見た映画が多いのだけど、その中で最強のトラウマ映画といえるのが、小1で見せられたアニメ版「はだしのゲン」。

ヤッター!アニメ見れるぜー!と意気込んで見に行ったが最後、劇場の座席が電気イスに感じられてしまうほどの苦痛を味わってしまったわけで。それはまさに永遠に続くかと思われるほどの醒めない悪夢だった・・・。

ただ小さい頃、親にこの手の反戦映画を網羅させられたのは今となっては良い経験になったと思うし、戦争という悲劇のトラウマを小学生くらいで植え付けるというのは教育上大変によろしいことだと思うので、親には感謝しております(笑)。。

んで「火垂るの墓」をはさんで「黒い雨」を見たのが小5くらいだったと思うんだけど、これがまたエライ思い出があって。

母親に連れられて自分と弟、妹の4人で見に行ったのだけど、劇場窓口でチケットを買って劇場に入っていったら、職員のオバちゃんが風船だとかキャラクターもののお面だとかの特典グッズをくれるわけ。

お、ラッキーと思いながら「黒い雨」が上映される2階に上がっていこうとしたっけ、そのオバちゃんが「東映アニメ祭りはそっちじゃなくて1階ですよ!」と教えてくれる(笑)。ようするにそのオバちゃんは自分らが東映アニメ祭りを見に来たんだろうと早合点してそのグッズをくれたのだ。そりゃそうだよなぁ妹なんてまだ幼稚園かそこらだったんだから、まっさか今村昌平のゲテモノ作品を見に来たなんて露ほども思わないだろうよ。

しかし母親が「いいえ、黒い雨を見に来たのでこっちでいいんです!」とキッパリ。ポカーンとしてるオバちゃんの顔が今でも忘れられない・・。

とともに田中好子のオッパイを見てしまったという記憶もしっかり残ってるんだけど(笑)。

いやぁ、、、自分が親になったら絶対に東映アニメ祭りの方を見せるよ、ウン。

ただ、ガキの時点でこの映画、半分分かって半分分からないような映画だったんだけど、胃の中を何かドス黒く熱いものがうごめき、這いずり回っているような息苦しさと圧迫感を終始感じたのはたしかだ。

電車の中で叔父さん(北村和夫)が被爆するシーンの衝撃、そして死屍累々の廃墟と化し、焼けただれた皮膚がズルリと剥け落ちてくるゾンビと化した人間たちが呻き声を上げながら方々をさまよう広島の街を、叔父さん、叔母さん(市原悦子)、矢須子(田中好子)の3人が必死で逃げ回る情景はあまりにも強烈で、川を流れてくる死体とか、道ばたに転がっている黒コゲになった死体だとか、おそらくこういう衝撃は自分の中の記憶としてずっと残っていくんだろうと思う。

つい先日、二次被爆の悲劇を描いた「夕凪の街、桜の国」の原作マンガを読んだときに、髪の毛が抜け落ちるシーンを見て、この「黒い雨」を見たときの圧迫感と同じものを感じて何とも言い表すことのできない重苦しさにとらわれてしまった。

遠い国で起きている戦争が、夕飯時のTVから流れてくるヴァーチャルなものとしか感じられない今の時代にあって、いかに戦争の悲惨さを子供たちに実感できるものとして伝えていくかというのは、戦後から3世代経った自分たちに課された大きな宿題なのかもしれない。

そういう意味では映画の果たす役割って大きいんだよなぁ。

人間、こういうことはすぐ忘れていっちゃう生き物だから・・・。

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夕凪の街 桜の国

Ph1_yugagi20comic 出演:田中麗奈、麻生久美子、吉沢悠、伊崎充則、藤村志保、堺正章

監督:佐々部清

(2007年・日本・118分)2007/08/07・盛岡フォーラム

評価★★★/65点

 

内容:原爆投下から13年後の広島。母(藤村志保)と2人で暮らす平野皆実(麻生久美子)は、会社の同僚・打越(吉沢悠)から告られるが、原爆で死んでいった多くの人々を前にして自分だけ幸せになっていいのだろうかとためらってしまう。やがて、そんな彼女を原爆症の恐怖が襲う・・・。所かわって現在の東京。定年退職した父・旭(堺正章)と暮らしている娘の七波(田中麗奈)。ある日、父の行動を不審に思った七波は、親友の東子(中越典子)と父の後をつけるが、乗り込んだバスがたどり着いたのは広島だった・・・。

“いい映画だったな止まり。根本的に何かが足りない。。”

佐々部清という監督は、一貫して理想的な人間関係のもとにある心優しき人間ドラマを描きつづけていて、その作風はどこまでも爽やかかつ良心的、なおかつ昭和の良き時代の家族観と温かさ、懐かしさを共有しているという点では山田洋次の系譜に連なる作り手さんだと思う。

しかし、今回はその持てる特徴がアダになってしまった感が強いのではないかと思う。

こうの史代の原作を素直なほど忠実に映像化しているのは認めるが、翻っていえば100P足らずの物語をトレースすることは誰にでもできることだ。

問題は、原作でこうの史代が描く温かく優しい街並みや笑顔の絶えない人々、その表面と上っ面だけをバカ正直にトレースしてしまったことであり、その裏にある決して癒されない悲しみ、決して終わることのない憎しみと怒り、決して消えることのない記憶、つまりは広島が「ヒロシマ」になってしまった原爆という毒がすっぽり抜け落ちているのだ。

たった1発の爆弾、たった一瞬の閃光が60年間3世代にわたり刻みつける負の遺産、その重みと痛みがこの映画からは伝わってきにくい・・・。

原作を読み終わったときの読後感は、かなり精神的にズシリとくるものがあり、なんて哀しいマンガなんだと思ったものだが、この映画を見終わると、いい映画だったな止まりで終わっちゃうんだよね。

そういう意味ではかなりガッカリしたかも。。。

マンガと映画、どっちを薦めるかといったら、100%マンガの方をすすめるな。

記憶が歴史というものを形づくるとするならば、この記憶を決して風化させてはならない、決して忘れてはならない。

今も続く物語・・・。

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ひろしま(1953年・日本・104分)WOWOW

 監督:関川秀雄

 出演:岡田英次、原保美、加藤嘉、山田五十鈴、月丘夢路

 内容:昭和28年夏の広島。高校教師北川が受け持つクラスで、授業中に女子生徒が鼻血を出して倒れた。それは原爆の放射能による白血病が原因で、このクラスでは生徒の3分の1が被爆者だった。8年前のあの日、彼らが見たもの体験したこととは・・・。8万人を超す広島市民がエキストラとして参加し、原爆投下直後の広島を再現。ベルリン国際映画祭で長編劇映画賞を受賞。しかし、大手配給元がGHQに忖度して反米的な描写シーンのカットを製作側に要求するも折り合わず、一般公開が中止になったことで、長らく日の目をみることがなかった幻の作品。

評価★★★★☆/85点

原爆を扱った映画というと真っ先に思い浮かぶのが今村昌平監督の「黒い雨」とアニメ映画「はだしのゲン」で、小学生時分に見たこともあってトラウマともいうべき強烈な映画体験として記憶に刻まれている。

あれから約30年、最近ではヒロシマ・ナガサキの映画をとんと見なくなってしまったのだけど、まさか60年以上前に製作され、一般公開されることなくお蔵入りになっていた原爆の映画があったとは驚きだったし、なにより今回初めて見て、その凄絶すぎる映像に衝撃を受けた。

特に原爆投下直後の広島の惨状を映し出した30分以上のシーンは今まで見た原爆映画の中で最も生々しく直視に堪えないものだった。

3ヘクタールのオープンセットを作り80棟に及ぶ家屋や電車を燃やし、黒焦げに焼き尽くされガレキに埋まる街の様子を映像化したそうで、使われたガレキは原爆で生じた実物だったそうだ。

しかし、なによりこの地獄絵図が真に迫り心に突き刺さるのは、阿鼻叫喚の修羅場を彷徨する群衆を演じているのが一般市民のエキストラで、その中には実際の被爆者も多くいたということで、原爆の恐ろしさや被爆の苦しみ、その一人一人の思いや声が画面から圧倒されんばかりに伝わってくることにある。

しかもこれが原爆投下からたった8年後に地元で作られたというのが凄いところで、それこそ戦争と天災の違いはあれど東日本大震災での惨状をここまで克明に描けるかと考えると、今回の映画のもの凄さはある意味常軌を逸しているとまで言えると思う。

しかし、それが政治的圧力で未公開になってしまったというのは本当に悲劇としか言いようがないけど、記憶をつなぎ語り継ぐという意味で全ての日本人そして世界中の人々に目をそらすことなく見てもらいたい映画だ。そういう普遍性を持ったかけがえのない作品だと思う。

P.S. 宮島のおみやげ屋さんでピカドン土産として原爆で亡くなった人々の頭蓋骨(一応セリフではレプリカに決まってるだろうと言っていたが・・)が売られていたり、その後のシーンで戦災孤児が掘り出した本物の頭蓋骨を米兵に売ろうとするシーンがあったけど、これって実話だそう・・。

他にも墨汁のような黒い雨や、被爆直後の灼熱地獄から逃れるために飛び込んだ川で女学生たちが「君が代」を歌うところなど本当に脳裏に焼き付くようなシーンの連続する映画だった。

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鏡の女たち(2002年・日本・129分)NHK-BS

 監督・脚本:吉田喜重

 出演:岡田茉莉子、田中好子、一色紗英、山本未來、室田日出男

 内容:東京郊外に住む川瀬愛(岡田茉莉子)。以前は亡き夫と娘・美和の3人で暮らしていたが、美和は娘の夏来を産むと、母子手帳だけを持って失踪した。それから24年後、その母子手帳を持った女性が見つかるが、その女性は尾上正子と名乗る記憶喪失者(田中好子)だった。実の娘か確信を持てない愛は、アメリカに住む夏来(一色紗英)を呼び寄せる。やがて、正子の記憶の断片は、3人を愛が美和を産んだ地、広島へと向かわせる・・・。

評価★★☆/50点

割れた鏡、抑揚のない語り口、泳がない視線、微動だにしないカメラ・・・。

様々なメタファーが込められているとは思いつつ、まるで能でも見せられているかのような様式美に彩られたつくりは、はっきりいって不気味以外の何ものでもない。

能面の下に覆い隠された、一瞬の閃光で焼きつくされたヒロシマの亡霊。

かがみ合わせのように表裏一体となったあの世とこの世、その死の世界に向かって開かれた窓である鏡が割れているというのは、両者の間に決定的な欠落があるということだろうか。

すなわち、生者は死者について語ることはできない、ヒロシマの真実を語ることはできないのだと。それをアイデンティティを喪失した女性たちを通して描き出そうとしたのかもしれない。

しかし、逆説的にいうならば、この映画には決定的にヒロシマというものが欠落しているともいえ、個人的には理解に苦しむ難しい映画だったというのが正直なところ・・・。

でも、語りつくせないからこそ、我々は絶えず原爆について語り継ぎ語りつくそうと努力しなければならないのかもしれない。

忘却の彼方に決して置き忘れてはならないために・・・。

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TOMORROW 明日(1988年・日本・105分)NHK-BS

 監督・脚本:黒木和雄

 出演:桃井かおり、南果歩、仙道敦子、黒田アーサー、佐野史郎、原田芳雄

 内容:昭和20年8月8日の長崎。結婚式が執り行われていたある家では、肺病で兵役を免除された花婿と看護婦の花嫁を、両家の家族が祝福していた。花嫁の姉は臨月のお腹を抱え、花婿の友人は戦場で捕虜を見殺しにしたことを悔やみ、花嫁の妹は召集令状を手にうろたえる恋人を慰める。やがて姉が産気づき、難産の末、明け方に小さな命が誕生した。そして8月9日・・・。

評価★★★☆/70点

「どうやって子供はできるの?」という少年の問いかけに対し、「こうやってできるんだよ」というのを丹念に綴った夏の一日、、、1945年8月8日。

少年は性に目覚め、乙女は恋に恋焦がれ、花嫁は花婿と結婚式をあげ、女は男と結ばれ、子供を出産し、女は母になり男は父になる。

「アメリ」(2001)で、アメリが「今この瞬間に愛を交わし合い絶頂を迎えているカップルはどのくらいいるんだろう・・」と想像するシーンがあるけど、そうやって日々生命は紡がれ、次の世代につながっていく。

そうやって家族というものはできていくのだ。

「どうやって子供はできるの?」「こうやってできるんだよ」

その日常が、一瞬で霧のごとく消されてしまうラストの衝撃はあまりにも重い。

連綿とつながれてきた彼らの生の営みがブツリと断絶されてしまうことが最初から予定調和として分かっている映画、、、それをはたして映画と呼んでいいのだろうか。

いや、そんな映画があっていいはずがない。こんな恐ろしい映画があっていいはずがない。

彼らに明日が来ないことをはじめから知っている映画なんて・・・。

と同時に核兵器の恐ろしさをこれほど如実に描き出した映画もないこともまたたしかなのだ。

閃光が走る直前に映し出される路地裏で遊ぶ子供たちの楽しそうな姿が目に焼きついて離れない。

2018年11月 3日 (土)

夢のシネマパラダイス32番シアター:コイツだけには出会いたくないグランプリ

IT/イット“それ”が見えたら、終わり。

1000770958_j1出演:ジェイデン・リーバハー、ビル・スカルスガルド、ジェレミー・レイ・テイラー、ソフィア・リリス

監督:アンディ・ムスキエティ

(2017年・アメリカ・135分)WOWOW

内容:1988年、アメリカの田舎町デリー。子供の失踪事件が相次ぐ中、内気で病弱な少年ビルの弟も大雨の日に消息を絶ってしまう。以来、悲しみに暮れながら自分を責めていたビルは、ある時、見えるはずのない“それ”を目撃し恐怖に震える。その後、いじめられっ子の仲間たちも同じ体験をしていたと知り、彼らと協力して事件の真相に迫ろうとするが・・・。

評価★★★/65点

スタンドバイミーのような甘酸っぱいジュブナイルにR15の過激な血まみれスプラッタを掛け合わせたノリについて行けるかがこの映画の肝。

その点で、オープニング早々から幼児の腕が引きちぎられてしまうシーンを提示する意気込みと覚悟は買いたいところだけど、全編通して怖さのピークがここ止まりだったというオチ・・。

ホラー描写のレパートリーが画一的で飽きてくる一方、イジメや家庭問題の現実の方が余程えげつないので、ペニーワイズが箸休めになっちゃってる感もw

ただ、少年のひとりが喘息の吸入器を持っているとこなんかはグーニーズそのもので、スタンドバイミー含めて80年代ひと夏の冒険映画の味を堪能できるのは確かで、子供たちのキャラ立ちも良い。正直もっとスクールデイズなベクトルで見たかったような。。

って、これって90年に製作されたTV映画のリブートなのか。

ま、、そっちは見なくていいかww

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帰ってきたヒトラー

169463_03出演:オリヴァー・マスッチ、ファビアン・ブッシュ、クリストフ・マリア・ヘルプスト、カッチャ・リーマン

監督・脚本:ダ―ヴィト・ヴネント

(2015年・ドイツ・116分)WOWOW

内容:1945年に自殺したはずのアドルフ・ヒトラーが、なぜか2014年のベルリンにタイムスリップしてきた!テレビ局をリストラされ新ネタを探していたディレクターのザヴァツキは、ヒトラーをモノマネ芸人だと思ってスカウトし、テレビ番組に出演することに。すると、物言いから仕草まで瓜二つの演説芸が大ブレイクし、一躍有名人になってしまう・・・。

評価★★★☆/70点

ヒトラーのモノマネといえば「チャップリンの独裁者」(1940)を真っ先に思い浮かべる。

ナチスドイツがヨーロッパを蹂躙し始めたまさにその時に公開され、ヒトラーに対しチャップリンが映画を武器に挑戦状を叩きつけた大傑作である。

しかし、あれから75年。バックトゥザフューチャーしちゃいました!ヒトラー本人が😵

戦後ずっと国民総出でヒトラーを断罪し過去の歴史の清算をし続けてきたドイツだからこそヒトラーをカリカチュアして描けちゃうんだろうけど、それが許容されていることに軽くショック。

だって日本で帰ってきた東条英機をやったら、靖国神社で右翼と天皇陛下バンザイした後に官邸前でつまみ出されて、皇居前でオイオイ泣き崩れる東条さんを見て、、ってなんか面白そう(笑)。

いやマジメな話、東条英機をジーパン姿でモノマネする芸人が世に出れるかっていうと、あの戦争を総括しないまま今まできた日本ではやっぱり難しいと思うんだよね。まぁそれ以前に鬼畜米英を唱える東条がジーパン着るわけないかw

けど、そう考えると、今回の映画はベストセラー小説の映画化とはいえ企画としてすでにスゴイと思う。

そして、第三帝国再建に向けいたって真面目なヒトラーを尻目に周りが勝手に盛り上がっていく、ヒトラーを選んだのは他でもない国民自身なのだという事実が、成熟した民主主義の看板を掲げる現代社会に鋭くツッコミを入れる流れに持ってくるところがまたスゴイ。

考えてみれば、日本だってあの戦争は軍国主義がもたらしたものではあるけど、戦争をあおった新聞メディアとそれに熱狂した国民が一体となって推し進めていった一面もあるわけで。

建前の裏側に潜む本音の内実、そのマグマ溜まりを爆発させるスイッチをオンにしてしまうカリスマ政治家が現れたら民衆はいとも簡単にそれに乗っかってしまう・・・。アメリカはトランプ大統領の出現によってそうなっちゃったけど。。

低投票率、お友達内閣、政治のワイドショー化、政治家の失言&暴言、既存政治への不満、、と成熟どころか行きづまった民主主義といった方がいいのではないかと思える閉塞感漂う現状の中、日本も笑ってはいられない。

さあ、出番ですよ橋下さんw

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悪の教典

Poster5_2 出演:伊藤英明、二階堂ふみ、染谷将太、林遣都、浅香航大、山田孝之、平岳大、水野恵理奈、吹越満

監督・脚本:三池崇史

(2012年・東宝・129分)

内容:私立晨光学院町田高校2年4組担任のハスミンこと蓮実聖司。彼は明朗快活かつ爽やかなルックスで生徒受けはもちろん、同僚やPTAからも信頼を得ていた。しかし変態数学教師・釣井だけは蓮実に違和感を抱いていた。そんな中、驚異的直感力を有する怜花とその友人・早水により蓮実の正体が露わになっていく・・・。

評価★★★/60点

自分は大島優子の感性を全面的に支持する(笑)!

映画の上映会でこの映画は嫌い!とぶち上げた彼女の感想ほど真っ当なものはないだろう。当然だ。

学校の銃乱射事件をエンタメとして嬉々として描く映画なんてフツーありえないし見たくもない。

そこに面白さを見出すとすれば、学校という密閉空間の中でジュラシックパークの肉食恐竜かエイリアンかはたまたジェイソンが襲ってくるみたいなモンスターホラー映画として見るしかない。

ところが生徒からの信頼もあつい教師の鑑として主人公の肩書きまで手に入れているこのハスミンという男は、ハーバード大出身というだけにズバ抜けた心理分析力や緻密な計算能力を有していて、とてもじゃないが闇雲に人を殺すようなバカ頭には見えない。特に「序章」の方を先に見たので知的な狡猾さを兼ね備えた完璧主義者というのはハスミンのキャラクターの最も大きなポイントになっていたと思う。

なので、邪魔者を消していくにしても、「序章」のように自らは手をかけず精神的にジワジワと追いつめていったり、殺すにしても頭脳明晰を駆使した完全犯罪でクールな残忍性を描き出した方がキャラ的にしっくりくるしサイコパスとしての凄みや恐怖感が増したと思うんだけど、それだけに行き当たりばったりでもうめんどくせーからみんな殺っちゃえという後半のスプラッターな展開は途端につまらなく感じてしまった。

また、なぜこういう人間になってしまったのかという過去語りは、それをすればするほどスリラーとしての純度は下がっていくと思うのだけど、例えば少年時代の親殺しエピソードもハスミンは生まれながらのサイコパスなんですよということを強調したいがための言い訳がましい演出にしか見えず、個人的にはそれさえも不用な描写だったように思う。

そういうのはTo be continuedでやってくれって話だ。

、、別段見たくもないけど(笑)。

まぁ、なんというか残虐性とは別な観点からみても、大人の観賞に堪えうる作品ではなかったかな。中高生がギャーギャー騒いで楽しむ類の映画だね。。

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脳男

20130206000123 出演:生田斗真、松雪泰子、江口洋介、二階堂ふみ、染谷将太、甲本雅裕、光石研、小澤征悦、石橋蓮司、夏八木勲

監督:瀧本智行

(2013年・東宝・125分)WOWOW

内容:都内近郊で猟奇的な連続爆破事件が発生。わずかな手がかりをもとに爆弾魔のアジトをつきとめた茶屋刑事は、犯人を捕り逃すも、現場に佇んでいた鈴木一郎と名乗る男を重要参考人として逮捕する。取り調べでも何も話さないため、精神科医・鷲谷真梨子による精神鑑定が行われるが・・・。

評価★★★★/75点

舌を引き裂いたり目ん玉引っこ抜いたりグロシーン連発の映画なのだけど、生田斗真の静寂を呼ぶ異様な美しさと、松雪泰子の冷静と情熱、理性と感情の狭間で押しつぶされていくきわどさ、そして二階堂ふみの狂気じみた存在感に魅せられて見入ってしまった。

特に生田は二重丸。無感情&無表情という難役を見事にこなしてしまった。なんか手塚治虫の漫画に出てきそうな美青年ってかんじw

あとはなんといっても画作りの素晴らしさだろう。

爆発の火薬量のハンパなさやアクションのキレ味だけに頼らない緩急つけたカット割りはハリウッドばりで緊張感も持続している。

この監督ってこんなハイクオリティな画を撮る人だっけ!?と驚いてしまったのだけど。なんか今までの作風は地味な印象だったので、こういうアバンギャルドっぽい映画撮るとはかなり意外だった。

続編もあっていいかも。

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苦役列車

120802l 出演:森山未來、高良健吾、前田敦子、マキタスポーツ、田口トモロヲ

監督:山下敦弘

(2012年・東映・114分)WOWOW

内容:1986年。日雇い労働と風俗通いに明け暮れる19歳の北町貫多。父親が性犯罪を犯したため一家離散の憂き目をみた彼は中卒でその日暮らしの生活を送るようになっていた。そんなある日、職場で専門学校生の日下部と知り合い意気投合、初めて友達と呼べる付き合いをするようになる。さらに古本屋でバイトする女子大生・桜井康子に恋したりと思いがけず人並みの青春を謳歌し始める貫多だったが・・・。

評価★★★☆/70点

今まで見てきた映画の中でごまんとヤな奴・変な奴は見てきたけど、大体が映画用にカリカチュアされた人物設定であることが多かった。

しかし、この北町貫多のひたすらリアルな鬱陶しさはどうだろう。

コンプレックスの塊で社会性ゼロ、ムダにプライド意識を持っている自己チュー人間である貫多とは絶対に友達になりたくないけど、こういう屈折した性格で口を開けばグチと下ネタばかりが出てくる扱いにくいタイプって程度の差はあれ周りに必ずいるよなぁと異常な既視感を抱いて見てしまった。。

貫多はその中でも最凶レベルの人間だろうけどw、ゲロとか痰吐きとか汚ったねぇご飯の食べ方とか家賃払わず風俗通いとか、自堕落な生態が生々しくて、この何をしでかすか分からないロクデナシから片時も目を離すことができずに見入ってしまった。

なにより森山未來が凄すぎる。

顔がホントに卑屈で意地汚くなっていて、最低のクズっぷりを気持ち悪いくらい完璧に演じてみせた。ブリーフ姿がお笑い芸人よりも似合ってるなんて、森山未來の今後が逆に心配ww

あとは、貫多とは好対照な高良健吾の爽やかさも印象的だったし、無防備な前田敦子が思った以上に良くて、この映画にプラスに働いていたと思う。

次の映画では脱いでね、、ってオレこそ最低ーッ

いやはや、いろんな意味で感動的な映画ですた。。

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闇金ウシジマくん(2012年・日本・129分)WOWOW

 監督:山口雅俊

 出演:山田孝之、大島優子、林遣都、崎本大海、やべきょうすけ、片瀬那奈、市原隼人、黒沢あすか、新井浩文

 内容:ウシジマは10日で5割(トゴ)、1日3割(ヒサン)という法外な金利をつける闇金業者。情け容赦ない取り立てを行うウシジマが今回目を付けたのは、パチンコ狂いの母親の借金の肩代わりをするハメになったフリーターのミコと、イベントサークルの代表を務める成り上がり男ジュンだった・・・。

評価★★/45点

アイドル大島優子よりも女優大島優子の方が断然好きだった自分は、大島優子がどういう脱ぎっぷりを見せてくれるのか、、ってんなわけあるかw!もといアイドルという表看板を背負って女優としてどこまでアブナイ橋を渡れるのか興味津々で見たのだけど、ノースリーブ&ショートパンツ姿に目がクラッとしつつ、もうちょいキワどいとこ見せてくんないかなぁ、、っておいっ!もとい必要最低限のところでよく頑張っていたと思いますww

なにせ母親役の黒沢あすかの豪胆ぶりの方が凄すぎて、大島優子のギリギリ勝負が完全にかすんじゃってるんだけど、ある意味それに助けられてるかんじも。。

ただ、風呂に沈められるとこまでいくくらい堕ちちゃう姿を見たかったなぁというのが正直なところ。エロ目線とかじゃなく女優としてね(笑)。

さて、エロ目線はそれくらいにしといて、、もとい、貧弱なチャラ男が転落していく話の本筋の方だけど、イベントサークル成功させてビッグになりたいから金借りるって、あまりにも話が小っちゃすぎて面白くない。

チャライし、チャチイし、ツマラナイし、だから大島優子にやっぱアレしてもらわないと、、ってハイ、もうやめます

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黒い家(1999年・松竹・118分)NHK-BS

 監督:森田芳光

 出演:内野聖陽、大竹しのぶ、西村雅彦、小林薫、田中美里、町田康、鷲尾真知子、石橋蓮司

 内容:生命保険会社に勤める若槻慎二は、クレーマー対処で菰田重徳という男の家を訪ねるが、そこで菰田の息子の首吊り死体を発見する。警察は自殺と判断し、それに基づいて保険金も支払われることになったが、保険金請求に幾度となく来ていた菰田とその妻の異様な態度に不審なものを感じた若槻は自殺に疑念を抱く・・・。

評価★★★★/75点

「乳しゃぶれー!ヘタクソー!」でフルボッコな展開などはもはやトラウマものだったけどw、まるで胃の中をドス黒いボウリングの玉がゴロンゴロンと転がっているような、ズシンと重くて息がつまってくる映画だった。

お化けよりなにより人間が1番恐いんだということが、もしかして自分のすぐお隣にあるかもしれない身近な恐怖として肌感覚に伝わってきて、生理的に受け付けたくないんだけど目が離せないみたいな、これってまさに覚めない悪夢

耳障りな効果音、不自然なカメラの動き、チープな音楽、どぎつい原色の多用といったセンスのなさが映画の居心地の悪さに直結していて、監督の演出プランにも説得力があった。

ただ、エンディングの主題歌がm-floというセンスの無さだけは映画自体を古臭くさせるには十分なセンスの無さで余計だった

2018年5月 3日 (木)

夢のシネマパラダイス302番シアター:お上に盾突くとは身の程知らずも大概にせい特集w

殿、利息でござる!

20160407103806出演:阿部サダヲ、瑛太、寺脇康文、きたろう、千葉雄大、西村雅彦、中本賢、妻夫木聡、竹内結子、羽生結弦、松田龍平、草笛光子、山崎努

監督・脚本:中村義洋

(2016年・松竹・129分)WOWOW

内容:江戸時代中期の仙台藩吉岡宿。藩から課される重税のため、百姓や町人の中には破産し夜逃げする者が後を絶たなかった。町の行く末を案じる造り酒屋の十三郎(阿部サダヲ)は、知恵者の篤平治(瑛太)からあるアイデアを打ち明けられる。それは、藩に大金を貸し付け、その利息で町の使役をまかなうというトンでもない奇策だった。必要な資金は千両(3億円)。話に乗った十三郎は出資者を集め始めるが・・・。

評価★★★/65点

物語の舞台となる吉岡宿、実は母親の実家の近所にありまして、えっ!?特に何もないあんな田舎の地区wが歴史ものの映画の舞台になるの!?とにわかには信じがたい目で見たんだけど、掘り起こせばあるんだねぇ色々な歴史が。

まさか百姓がお殿様に3億貸し付けるなんてことが本当にあったなんて。しかも1人3千万って豪農クラスになるとそこまでの大金持ってたのかと思うとビックリ

でも、この映画で描かれる“無私の日本人”っていかにも東北人らしいというか、岩手出身者としてなんか分かるなぁと思いつつ見てしまった。

地域のコミュニティを守るために見返りを求めない無私の精神-つつしみの心-で行動する。

個人の即物的な欲求ばかりがまかり通り、地域のつながりが低くなってきた今の日本ではあまり考えられないことだけど、東北人の中にはそういう公共に対する責任感とか共助の美徳がまだ根付いている部分があって、それこそ東日本大震災を見ても分かるように、お互い様の精神性がまだまだ残っているのだと思う。

まぁ、裏を返せば日本人独特の恥の文化が東北では色濃くあるということなのかもしれないけども。

しかし、そのためか登場人物が全員善人すぎてあまりにもつっかえる所がなくて逆に物足りなさも・・・。この生真面目さも東北人らしいとこだけど、もうちょいコメディ寄りでもよかったかも。

よしっ、今度吉岡通ったら今もあるという酒屋さんのぞいてみよっと♪

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県庁の星

Kencyo 出演:織田裕二、柴咲コウ、佐々木蔵之介、和田聰宏、紺野まひる、益岡徹

監督:西谷弘

(2006年・東宝・131分)盛岡フォーラム

評価★★★★/75点

内容:K県庁の35歳のエリート公務員、野村聡。ある時彼は、県政の目玉プログラムである民間企業との人事交流研修のメンバーに選ばれる。ところが、派遣されたのは田舎の三流スーパー「満天堂」。しかも、野村のお目付け役は、24歳のパート女性店員だった。プライドが高く、書類とマニュアル優先の仕事しか知らない野村はことあるごとに彼女と衝突してしまう・・・。

“県庁の何十階という高さから町を見下ろすことに慣れきった男が、3階建てスーパーから見るものとは!?”

民間の三流スーパーに派遣された“県庁の星”と期待されていたエリート公務員が、三流スーパーをどう改革するのか、というところからお話的に「スーパーの女」のようなハウツーものに流れていくのかと思っていたのだけど。。

しかし、あくまでも視点は織田裕二扮する野村聡の意識や心といった人間性に終始寄り添って、その変容の過程を主眼に描いていったのがなんとも秀逸だった。

形のみにこだわる公務員体質の野村が、“個人の顔”を直視し本当のマンパワーというものに気付いていくプロセスは見ていて面白かったし、妙に納得させられることしきりだった。

変革というのは制度や仕組み、システムを変えても、そこで働く人たちの意識が変わらなければただの形だけのものになり何の意味もないのだ、ということを身をもって経験した野村の晴れやかな表情が印象的だ。

やっぱ人間、一度奈落の底に落ちないと変わらないのかなぁ。自分みたいに奈落の底に落ちたまま這い上がれないカワイソス人間もいるけど・・

でも、一方では、なんかこの映画、出来レースぽいかんじもスゴイしたんだよね。

それは、要は野村という男の仕事に対する意識、ヤル気、スキルが半端ないくらい高いということに行き着くのだけども。

企画提案能力、情報処理能力、語学力(外国人従業員にそれぞれの言語でマニュアル本を作っちゃうんだから恐れ入る・・・)、書類作成能力、交渉力、計画力etc..ホンマにすきのないプロ中のプロやん。自分が持ち合わせてないものばかり・・

やっぱキャリア組って元から違うのね。。適当にやって半年ガマンすればいいんだ、と言いながらやってることはスゲェじゃねえか(笑)。生っ粋の目立ちたがり屋さんだし。

環境適応能力がちょっと不足していたのと過剰な自信の塊で覆われていたくらいなもので、マイナス要素と呼べるのは。逆にスーパー従業員の方がやる気あるの?みたいな。遅かれ早かれ改革されるだろこれは、と思っちゃう。とまぁ、そんな穿った見方もしちゃったんだけど。。

県庁の何十階という高さから町を見下ろすことに慣れきった男、その目線で民間へ行ってしまった男が、ほんのちょっと視線と目線を変えるだけで大事なコトに気付かされる。

それだけで意識は劇的に変わるのだということ、あとは彼の持ち合わせているプロなみの能力を適材適所で引き出していけば従業員の意識改革も含めて事はスムーズに運んでいくわけで、、改革順調!メデタシメデタシ。

ただ、大事なコトに気付かせてくれたのは、パート店員である二宮をはじめとするスーパーの皆だった。

官vs民バトルではなく官・民が相互に補い合って持ちつ持たれつガンバっていこーー♪で一件落着!

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金融腐蝕列島【呪縛】

Title1 出演:役所広司、椎名桔平、矢島健一、遠藤憲一、仲代達矢、根津甚八、風吹ジュン、若村麻由美

監督:原田眞人

(1999年・東映・115分)仙台フォーラム

内容:総会屋への多額の利益供与が発覚した朝日中央銀行に東京地検特捜部の捜査のメスが入る。経営陣はパニックに陥り、政財界の大物でもある黒幕、佐々木取締相談役の顔色ばかりをうかがう有り様。そんな上層部の態度に奮起した企画本部副部長で佐々木相談役の娘婿でもある北野をはじめとするミドル層と呼ばれる中堅行員たちは、銀行の悪しき因習を断ち切るべく再建のための改革を断行しようと立ち上がる。。

評価★★★★/80点

映画見てる最中、人物の立ち位置を異様なまでに意識させられたのはこれが初めてだ。なんか壮大な舞台劇を見たような気分。

改革を断行しようとする中堅組、自分たちの体裁を守ろうと組織のしがらみから抜け出せない上層部、皮肉たっぷりに描かれるマスコミ、この三者三様がめまぐるしく交錯してテンポも速く、アクション映画よりもアクション映画ぽかった。

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どら平太(2000年・日本・111分)NHK-BS

 監督:市川崑

 出演:役所広司、浅野ゆう子、宇崎竜童、片岡鶴太郎、石橋蓮司、石倉三郎、菅原文太

 内容:ある小藩の町奉行に着任した望月小平太は、その豪快ぶりから“どら平太”というあだ名までつく型破りな役人。彼はこの藩の壕外と呼ばれる売春や賭博が横行する藩の吹きだまり地区で権力を握る3人の親分の不正を正すべく動き出すが・・・。黒澤明、木下恵介、市川崑、小林正樹によって結成された「四騎の会」の第1回作品として共同執筆されながらもお蔵入りになっていた山本周五郎原作の時代劇を市川崑が映画化。

評価★★★/60点

“伏魔殿とやらはどこへやら。なぁんだ、実はみんないい奴じゃん・・・。”

この映画、現代の日本の政治と照らし合わせてみると意外に面白いかも。

ある小藩。ま、永田町のどこぞやの党ですか。改革を謳うどこぞやの首相が殿。

しかし改革をやるぞ!やります!やる!と言うだけで何ら行動しないお殿さま。一応、望月小平太を改革担当大臣に据える。んで改革実行は小平太に任せっきりでお殿様は最後まで姿を見せず。

そう、この映画、、お殿様が出てこない。。

一方、改革に乗り出した小平太のまわりには、いくつかの派閥に分かれてはいるが一応足並みが揃っている抵抗勢力の存在が。

上意!上意であるぞ!と叫びながら小平太は心血注いで改革に身を焦がす。

しかし殿は一向に姿を現さず。小平太は一人矢面に立って孤軍奮闘するのであった。ときにはバッサバッサと斬り捨てる痛みをともなう手段もとる小平太であったが、そこはさすがの小平太。刀の峰で討ったように命にかかわらない程度の最小限の痛みに抑えるのであった。

改革の本丸、壕外、それは悪の巣窟。汚辱と悪徳のゴミ溜め。財界、大企業、省庁、公団、社保庁、とまぁ次から次へと・・・。

しかし、一方では壕外から入ってくる献金、闇金が重要な財源となっているのもまた事実。

はたして小平太は癒着の毒の根を絶つことができるのでありましょうか。チャンチャン。

なんかこの映画の最後は内閣総辞職てなかんじで終わったけどね.とはいうものの冒頭に書いたように、なんかみんないい人になって終わるんだよね。

伏魔殿というよりは単なる馴れ合いだったか・・・。

2018年4月 6日 (金)

夢のシネマパラダイス2番シアター:スタンド・バイ・ミー

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?(1995年・日本・45分)WOWOW

 監督・脚本:岩井俊二

 出演:山崎裕太、奥菜恵、反田孝幸、小橋賢児、田口トモロヲ、麻木久仁子、光石研

 内容:小学生最後の夏休みの登校日。親友同士のノリミチとユウスケは2人とも同級生のナズナに想いを寄せていた。しかし、ナズナは両親の離婚により母親に引き取られて休み明けに転校することになってしまう。そんなこととは知らない2人は、プール掃除をさぼって50m競争をすることに。ノリミチがターンの時に足をぶつけたことでユウスケが先にゴールするのをプールサイドで見ていたナズナは、夜に行われる花火大会にユウスケを誘うのだが・・・。 

評価★★★☆/70点

20数年ぶりに見て、「花火大会行かないの?」「どうしよっかなぁ、今日ヴェルディとマリノス戦あるからなぁ」という会話に1番ノスタルジーを感じた(笑)。

それはともかく、今見返してみると子役を光り輝かせるという点で是枝演出と比較すると雲泥の差があるとはいえ、ミニマムな世界観しか持ち合わせていない男子が紅一点ミステリアスな存在感を醸し出すオトナ女子に振り回される構図は、どストライク。

あんな経験あるわけないんだけど、男子の妄想の共感ポイントを恐ろしいほど押さえていて、なんだか見ていて背中のあたりがこそばゆくなってしまったw

これ女性から見ても甘酸っぱいノスタルジーを抱くんだろうかというのは興味のあるところかも。。

まぁ、もともとがTVドラマ用ということで全体的な古臭さがどうしてもあるので、心の宝箱の中にそっと仕舞っておこうか。

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打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?

172123_02声の出演:広瀬すず、菅田将暉、浅沼晋太郎、宮野真守、梶裕貴、花澤香菜、松たか子

監督:新房昭之

(2017年・東宝・90分)WOWOW

内容:とある海辺の町。夏休みの登校日、典道たち中学1年の男子たちは、夜に開催される花火大会を前に「打ち上げ花火は横から見たら丸いのか? 平べったいのか?」という話で盛り上がっていた。そしてそれを確認するため、町の灯台から花火を見ようと約束する。一方、典道が想いを寄せるクラスのマドンナ・なずなは、母親の再婚が決まって転校することに。それに反発するなずなは典道を誘い、駆け落ちして町から逃げ出そうとするが・・・。

評価★★/45点

二者択一のパラレルワールドを描いた実写版からタイムリープの要素を取り入れ、物語に連続性をもたせたアニメ版の作劇は大いに納得するところ。

が、しかし、これが悲しいことにめっぽうツマラナイのである(笑)。

このての作品でここまで面白くないのも珍しい。

と考えると、過去に戻ってリセット&やり直しを繰り返すのはアニメ版の時をかける少女と同じ展開だけど、かの作品にあって今作にないものは、取り返しのつかない喪失とそれを受け入れる強さ。

せっかく小学生から中学生にキャラ年齢を上げた意味がないし、ここの重しがすっぽり抜け落ちているので締まりのない作品になってしまった。

さらにそれに加えて、今作のタイムリープがおそらく主人公の潜在意識が作り上げた仮想世界(クリストファー・ノーランのインセプションのような)という分かりづらい設定のため、より中途半端さが際立ってしまったかんじ。

「今度会えるのはどんな世界かな」というなずなのセリフがちゃんと響いてくるような作品になっていれば、、残念。

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SUPER8/スーパーエイト

Img_1531134_51886946_0 出演:ジョエル・コートニー、エル・ファニング、カイル・チャンドラー、ライリー・グリフィス、ライアン・リー

監督・脚本:J・J・エイブラムス

(2011年・アメリカ・111分)WOWOW

内容:1979年夏、オハイオの小さな田舎町。保安官の父ジャクソンと2人暮らしの少年ジョーは、チャールズら4人の友人と8ミリの自主映画作りに没頭する日々を送っていた。ある夜、恋心を抱いていたアリスをヒロイン役にスカウトすることに成功した彼らは町の駅で撮影を行っていたが、その最中、軍用列車の脱線事故に巻き込まれてしまう・・・。

評価★★★★☆/85点

映画開巻直後にアンブリンのタイトルロゴが出てくるとワクワクしていた少年時代、変な邪推や事前情報に触れすぎた上での杞憂など関係なしに純粋に映画を見られたあの頃の童心に帰れるという点で自分にとってはまさに奇跡のような映画だ。

バック・トゥ・ザ・フューチャーに出てくるようなアメリカ郊外の街並み、ガラクタやおもちゃで散らかっている少年の部屋、ひと夏の冒険、初恋、トランシーバー、風に流されていく白いスモーク、画面に射し込んでくる青白い光の帯、高速の列車にピックアップトラックで突っ込んでいった先生が生きているリアリティのなさに至るまで、デジタル化する一歩手前の80年代映画チックな要素に包まれた作風にドンピシャでハマッてしまった

6人の少年少女のキャラクターもデブに出っ歯にメガネにひ弱にハカセに大人びたヒロインと申し分ない造型で、グーニーズはもちろんのことズッコケ3人組まで思い起こしてしまったw

ジュブナイルものとして近年稀にみる最良の映画になっていたと思う。

列車転覆シーンのしつこいくらい大仰な力の入れ具合はちょっとこの映画にはミスマッチのような気がしたし、大団円で主人公とエイリアンが目と目で会話し心が通じてしまう印象的なシーンを撮っておきながら全くそのエイリアンに感情移入できないというのも問題があるけど、自分が子供の頃にワクワクドキドキしながら映画を見た思い出のかけらをひとつひとつ吸い寄せて珠玉の映画体験を提供してくれた製作陣に拍手(*^ー゚)bグッジョブ!!

マイケル・ジアッチーノの音楽も相変わらず鉄板ものだったし、なによりJJエイブラムスのあふれる映画愛に乾杯です!

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E.T.

Ettheextraterrestrialposter1 出演:ヘンリー・トーマス、ドリュー・バリモア、ディー・ウォーレス・ストーン

監督:スティーブン・スピルバーグ

(1982年・アメリカ・115分)NHK-BS

評価★★★★/80点

内容:アメリカの小さな町へ植物採集にやって来たUFOが、E.T.を一匹(?)置き去りにしたまま飛び立ってしまった。住宅の物置に隠れたE.T.の気配に気づいた10歳の少年エリオットは、初めはおっかなびっくりだったが次第に仲良くなり、兄妹とともに彼を星に帰すべく努力する。E.T.は故郷の星との交信を試みるが、その間にも異星人を追うNASAの手が迫ってきていた・・・。

“この映画は自分にとって、過去にタイムスリップさせてくれるデロリアンなのです。”

ひと昔前の映画を見ているときに、ふとその作品に触れていた当時の情景や記憶、想いがノスタルジックな甘みを伴なって甦ってくることがある。

それは自分の場合、小学生の頃に出会った映画が主なのだが、今作はその中でも自分にとって御三家の一本と呼ぶべき作品だ。

ちなみに他の2本は「グーニーズ」と「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で、3作ともだいたい80年代後半、小学生の時に金曜の夜や土日にテレビで出会った映画たちだ。

ポテチを口に頬張って目を輝かせながら映画という冒険旅行を楽しんでいたあの頃。

土曜日は学校でその映画の話でもちきりだったなぁ。

学校は午前中で終わり、午後から完全に自由にはばたけるため心もどこかテンションが上がってしまう、そんな高揚感と昨日見た面白い映画の話で盛り上がる楽しさ。

こんな幸せなことはないのではないかと、あれから年月が経って久しぶりに映画を見たときにまるで「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のタイムスリップのようにあの頃の幸せな記憶と情景が頭の中を駆け巡るのだ。

「E.T.」は自分にとって、まさしくそんな映画なのだ。

ところで、久しぶりに見て再発見。

この映画にちゃっかりスター・ウォーズのヨーダが出てきよるのね。ハロウィンでヨーダの着ぐるみを着た人とすれ違った時にETが「Home!」と指差すシーン。

ああそうか、ETは惑星ダゴバの近くから来たんだねと確信(笑)!

そういえばSWエピソード1の評議会のシーンにしっかりETも出席してたっけ♪

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奇跡

20111227105809fc5s 出演:前田航基、前田旺志郎、大塚寧々、オダギリジョー、夏川結衣、長澤まさみ、阿部寛、原田芳雄、樹木希林、橋爪功

監督・脚本:是枝裕和

(2011年・日本・128分)WOWOW

内容:小学6年生の航一と小学4年生の龍之介は仲の良い兄弟。しかし両親が離婚してしまい、航一は母親の実家の鹿児島で、龍之介は父親と福岡で暮らしていた。家族4人でまた一緒に暮らしたいと願う航一は、ある日、九州新幹線全線開通の日に上りと下りの一番列車がすれ違う瞬間を見れば願いが叶うという噂を耳にする。さっそく航一は龍之介と連絡を取り、それぞれの友だちと一緒にすれ違うはずの地、熊本へ向かうのだが・・・。

評価★★★/60点

中だるみこそが映画なのだといわんばかりの日常描写はプチドキュメンタリーぽい要素も織り込み是枝節らしい語り口なのだけど、今回にかぎってはそこに作為的ないやらしさを感じてしまいイマイチ映画に入り込むことができなかった。

それはつまるところ大人視点の鋭い毒や残酷さ=社会に対する批評性が驚くほど皆無で、ちょっと肩透かしというか面食らっちゃった部分が大きいんだけど、なにか子供の絵日記を見ているようなかんじで、ここまで純粋な子供の映画だとは思いもよらなかった。

豪華すぎる大人たちは店の軒先で、教室の教壇で、家の食卓で、子供たちのそばに佇んで見守っているだけ。

もっといえば映画の作り手、監督さえもカメラの横で佇んで見守っているだけで、何のハプニングも事件も、そして奇跡さえも起こりはしない。ちょっと良いことが起こるだけだ。

そこに物足りなさを感じてしまったというのが正直なところなのだけども、まえだまえだを始めとする子役たちの自然体な演技に引っ張られて最後まで映画を見守ることはできた。

奇跡らしい奇跡は何も起きないけど、奇跡を信じて自分たちで行動し、世界を垣間見て、現実を肯定し、新幹線より速いスピードで成長していく子供たちの姿そのもの=生きるということそれ自体が奇跡といえるのかもしれない。

でもまぁ、パンチのある濃ゆい味好きの自分は“かるかん”のようなうっすらぼんやり味の映画はあまり好みではないようだ・・w

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スタンド・バイ・ミー

Standbyme03 出演:ウィル・ウィートン、リバー・フェニックス、コリー・フェルドマン、ジェリー・オコンネル、キーファー・サザーランド、リチャード・ドレイファス

監督:ロブ・ライナー

(1986年・アメリカ)NHK-BS

評価★★★★★/100点

内容:オレゴンの片田舎。夏休み、4人の少年が行方不明になった男の子を捜しに線路伝いに森へ分け入っていくと、、、そこには男の子の死体が!ノスタルジックな物語にさわやかな映像美がマッチして胸を打つ。鉄橋を歩いている時に突然列車がやって来るシーンなど名場面も多し。原作はS・キングの小説「死体」。

“懐かしき我が思ひ出の地、宮古よ!

久々に見たけど、やっぱりイイものはイイってことですな、ハイ。

ただ、初めてこの映画を見た11歳の頃と比べるとインパクトは薄まってたし、もっと突っ込んで言えば、この映画に対する思い入れみたいなのも何か消え去ってたなぁ。。

なんか冷めて見てる自分がいて。

ゴーディやクリスの悩みなんて今の自分の悩みに比べたら小っぽけなもんじゃねえかよwっつーか問題にするまでもねえよみたいな。

あれっ、こんなことで悩んでたっけオレってかんじで。

でも、子供の頃ってそうなんだよね、考えてないようでちゃんと考えてるんだ。

幼稚園、いやもっと前からいろいろ考えてたもん。周りからはネズミみたいにちょこまか動き回るカワユイ男の子とかって可愛がられてたけど、もう既に悩んでたもんな。。大人からみれば取るに足らないもの凄く小っちゃいことであり、もの凄くカワイイことであり。

ゴーディとクリスの悩みだってそうじゃない?切実にボク生まれて来なけりゃよかったのかもとか、橋の下で拾われたのかもなんてこと誰だって1回は思ったことあるっしょ。ましてや親への反抗なんて誰にだってある。

クリスだってアル中親父とヤンキー兄貴というヤバそうな家庭環境の中で結局進学クラスに行ったんでしょ。

現に、ゴーディはクリスに対して、「進学クラスに行けるよ」とサラッと言い、クリスはゴーディに対して「親は君のことをちゃんと愛しているよ」とサラッと言い。でもお互いそのことで凄く悩み・・・。

あの11歳当時めちゃくちゃ感情移入してこの映画見てたボクと、あれから年月が経った今の自分。

やっぱちょっとは成長したってことなんでしょうか

でも、この映画から得られるノスタルジーは変わらない。

自分が今振り返ってみて1番輝いていたのは9~12歳くらいだと思うし。ホントの親友と呼べる友だちがわんさかいたのもあの頃。野を駆け、山を越え、沢を渡り、木に登り、ボールを追いかけ、秘密基地を作り、海で泳ぎ、知らない人の畑のブドウを貪り食い、チャリンコで冒険旅行と称して北にあてもなく向かい、、塾になんて行かなくていい、この大自然の中で大いに遊びなさい、と言ってくれたオトンとオカンに感謝!

今どうなってるんだろうなぁ。懐かしき宮古よ。考えてみたら4年間しかいなかったんだけども。良い思い出ばっかりだからかな。一生忘れることはないだろう。

って自分話に収束かよっ

2018年3月14日 (水)

夢のシネマパラダイス565番シアター:崖の上のポニョ

崖の上のポニョ

Img62011412zik8zj 声の出演:山口智子、長嶋一茂、天海祐希、所ジョージ、土井洋輝、吉行和子、奈良岡朋子

監督・脚本:宮崎駿

(2008年・東宝・101分)DVD

内容:海辺の小さな漁師町で崖の上の一軒家に暮らす宗介はある日、ジャムの瓶に頭を突っ込んだ金魚を見つける。宗介はポニョと名付けて連れ帰るが、実はポニョは海界の女王の娘だった。そしてポニョは、もともとは人間だった父フジモトによって海の中へ連れ戻されてしまうが・・・。

評価★★★/65点

小1でナウシカ、小3でラピュタ、小5でトトロ、小6で魔女宅という最も良い時期に宮崎アニメの最も輝いている作品をリアルタイムで見られたオイラはホンットに幸せ者ですっ!

という自分にとって宮崎アニメとは突きつめていえばこの4作品にカリオストロの城(1979)を加えた5作品といっても過言ではない。

勝手な解釈では前記作品が宮崎駿のスタンダード確立期、紅の豚(1992)が転換期、もののけ姫(1997)以降が宮崎駿の暴走期と決めつけてるんだけどw

その中で、えてしてスタンダードを確立した芸術家というのは映画作家でも音楽のアーティストでも往々にしてニーズに応えることを放棄して自己の内面世界へ没入していく傾向にあり、黒澤明など巨匠であればあるほどそれは明確になる。

その変容は構成力と調和の世界からイメージと幻想の世界へということになろうか。

その点でいえば宮崎駿もまさにそうで、もののけ姫以降、その変容の振り子の針の振れ幅は大きくなるばかりで、物語ることの放棄と物語りの破綻は目を覆うばかりだ。

宮崎アニメというのは大別すれば、未来少年コナンやナウシカなどのディストピア・ファンタジーと、トトロや魔女宅などの日常の中に潜むファンタジーとに分けられると思うんだけど、その中で、前者の破綻作がハウル(2004)であり、後者の破綻作が千と千尋(2001)ということになろうか。

しかし、宮崎駿の恐るべきは、この変容によって大多数の人はふるいにかけられコアなファンしか残らないのが普通なんだけど、なぜか宮崎駿の場合は客が減るどころか逆に客が右肩上がりで増えつづけるというありえない現象を巻き起こしているのだ。

これは宮崎駿の成し遂げたスタンダードの確立が、日本国民はすべからく宮崎アニメを見るべし、という宮崎アニメの義務教育化ともいうべき恐るべき成果によるところが大きいのと、構成と調和を度外視したイメージの洪水があまりにも凄すぎて見る側が中毒患者のように頭のどっかが麻痺してしまうからだろう(笑)。

おそらく、こういう監督、世界中を見渡してもそうはいない。

そして、今回である。

もうね、、イッちゃってます!逝っちゃってるんですww!

5歳向けの絵本のような作品世界ということで、そんなもんに大の大人が御託を並べてとやかく論評すること自体バカバカしいのは百も承知だけど、いや、しかし、少なくとも自分自身6歳でナウシカをスクリーンで見た者から言わさせていただきますれば、これはどうなんだろうと。。

昔っからそうなのかは知らないけど、創作過程において宮崎駿はシナリオからではなくイメージボード=絵から入り、そのイメージを広げて構想を広げていくというけど、これは常人にはかなり困難な作業なはずで、一歩間違えれば物語が容易く破綻してしまう危険性をはらんでいる。

千と千尋でイメージの洪水と物語を無理やり結合させた豪腕も寄る年波には勝てなかったのか、あるいは要らないものを削ぎ落としていった結果こうなったのかは知るよしもないが、今回の物語のいい加減さには思わず戦慄を覚えた。というか、気持ち悪いといった方が正確かもしれない。

では、この映画の何がそんなに気持ち悪いのか。

それは、日常を舞台にしているようにみえて、その実まったく日常に見えない不気味さ、日常という化けの皮をかぶった異様な非現実で覆われていることが大きい。

この映画にはたしかな日常の感触がないのだ。

それがトトロや魔女宅にあってポニョにないものであり、それがこの映画に対する気持ち悪さにつながっているのだと思う。

これはオープニングからしてすでに、恐るべき魔法力を持ったポニョがフジモトの結界を破って人間と接触したため、非現実が津波のように現実を侵食しているせいなのかもしれないし、その点でみれば、月の満ち欠けが女性のカラダに影響を与えているとするならば、月が地球に接近した影響で精神に変調をきたしたリサが子供そっちのけで暴走するのにも理由がつく、のかもしれないけど・・。

でも、手足を生やす変態したギョロ目のポニョなんてまるで千と千尋に出てきたカエル男にそっくりでキモイし。そういえばあのカエル男って欲望の亡者だったっけ。

ポニョも欲望の趣くままに波の上を疾駆し、5歳の少年の元をひたすら目指す。たとえ大津波を引き起こし、町を海中に没し、世界の均衡のバランスを崩壊させようとも。

これをカワイイとみるか、恐いとみるかは人それぞれだけど、自分はちょっと違和感が・・・。

しかし、すべてが手描きという絵柄は全く違和感なく見れたし、宮崎駿の持つ絵の力はまだまだ健在だなと。蛇口から出た水が飛びはねるラフな描線など面白かったし、ハム入りラーメンはめちゃ美味しそうだったし、幾通りもの波の描写も素晴らしかった。

やっぱシナリオやなぁ。。物語に調和と均衡を・・。

でも、宮崎駿にそれを求めるのはもうムリなのかもしれないな。後進に期待するしかないか。。

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夜明け告げるルーの歌

172384_01声の出演:谷花音、下田翔大、寿美菜子、斉藤壮馬、篠原信一、柄本明

監督・脚本:湯浅政明

(2017年・日本・113分)WOWOW

内容:さびれた港町の日無町。父と祖父と暮らしている中学生のカイは、親の離婚で東京から越してきたが、なかなか解けこめずに心を開けないでいた。そんな彼にとって唯一の楽しみは、自分で作曲した音楽をネットにアップすること。そんなある日、カイの音楽の才能に気づいたクラスメイトの国夫と遊歩に彼らが活動しているバンドに誘われる。カイは仕方なく練習場所の人魚島へ行くが、そこで3人の音楽に合わせて楽しそうにダンスする人魚の少女ルーと遭遇する・・・。 

評価★★★★/75点

宗介とポニョをプラス10歳設定にしたかんじで、どうしてもかの作品の幻影がオーバーラップしてしまったけど、二番煎じ感よりも独創性の方が100倍勝っていると感じられたのは素直に湯浅監督の力量を認めたいところ。

が、キャラ設定が決定的に弱いのが玉にキズで、デフォルメした絵の描線がフニャフニャなのは感性的で良いとしても、その割にどうも生命力に乏しくてキャラクターの躍動が結局理性的なところに落ち着いちゃうんだよね。そこの突き抜けなさが少しもったいなかったかなぁと。

音楽はポップな世界観とマッチしていて良かっただけに、まだまだ爆発力があってしかるべき作品だったように思う。

2018年1月 4日 (木)

夢のシネマパラダイス547番シアター:日本版あの頃にタイムスリップ!

だけがいない

Poster2出演:藤原竜也、有村架純、鈴木梨央、中川翼、林遣都、福士誠治、安藤玉恵、及川光博、杉本哲太、石田ゆり子

監督:平川雄一郎

(2016年・日本・120分)盛岡フォーラム

内容:売れない漫画家・藤沼悟は、事件や事故に遭遇すると、その原因が取り除かれるまで発生直前の時点に何度もタイムスリップする“再上映(リバイバル)”と呼ぶ能力を持っていた。しかし、それは自分ではコントロールできないのでほとほと嫌気が差していたが、リバイバルがきっかけでバイト仲間の愛梨と親しくなる。そんなある日、またもやリバイバルが発生。悟が違和感の正体をつかめない中、一緒にいた母親だけが何かに気づきリバイバルは解消された。しかしその直後、母親は何者かに殺害されてしまい、悟が犯人に仕立て上げられてしまう。そして母を助けようとする悟にリバイバルが再発動。今度は20年前の小学生時代にタイムスリップしてしまう・・・。

評価★★★/65点

総じて漫画原作の実写映画化は期待ハズレに終わることが多い。あるいは漫画と映画は全くの別物ということもできるけど、今回の原作は緻密に組み立てられた構成力とキャラクター造形、完璧な伏線回収など、漫画としてはもちろんそれだけで映像媒体としてもすでに完成されたハイクオリティ作品なので、映画化もよほどのヘマをしなければ失敗しないはず、だと思っていたw

そういう点で今回の映画を見ると、雛月加代を親の虐待から助け出すところまでは、ドンピシャのキャスティングしかり風景からプロダクトデザインに至るまでの映像しかり、ビックリするくらい忠実に原作をトレースし、正直マンガを知らないで映画見てたらより面白かったかもと思ってしまうくらいほぼ完璧な仕上がり。

が、しかし、この雛月救出までに1時間半を費やしてしまい、残り30分でまるで夏休み最後の日に徹夜で溜まりにたまった宿題を大慌てで取りかかる小学生のようにあたふたと風呂敷を畳むもあえなく轟沈

第4コーナー過ぎてからのまさかの失速にこちらも撃沈しちゃったんだけど、犯人が八代先生(及川光博)ということにたどり着くのも拙速すぎだし、何より1番分かりづらくて混乱するのが1988年の世界で悟が八代に橋から川に突き落とされた後、2006年の現在に戻ってからなんだよね。

2006年に愛梨(有村架純)と河川敷で会った悟が警察に逮捕された直後にリバイバルが起きたにもかかわらず、八代に突き落とされた悟が戻ったのはそこではなく、映画の冒頭でピザ屋の配達中に小学生を助けようとしてトラックにはねられた後の病室で、しかも病室にいるのは事故を目撃していた愛梨ではなく、妊娠している加代。さらになぜか愛梨とは面識がなくなっている、と矢継ぎ早に進むので見ているこちら側は混乱するばかり。。

さらにデパートの屋上で八代と格闘して悟が首を切られるも八代は逮捕されて一件落着、かと思いきやエピローグでいきなり2016年に飛んで、お墓参りの墓石に悟の名前が、、えっ?死んだの!?と呆然とする中でジ・エンド。

例えば、愛梨と面識がないことは原作通り悟がずっと植物状態になっていたということで済む話のはずなのに、、どうなっているんだこの脚本ww

半ば見切り発車としか言いようがないラスト30分の力技にある意味ド肝を抜かれたけどw、それまでの丁寧さとかけ離れた粗雑な出来とのあまりの落差に監督2人いるのか!?といぶかってしまうくらい目が点になってしまった・・・。

リバイバルというのが普通のタイムトラベルものと異なり、意識だけが当時の自分自身に飛ぶ(あるいは当時の自分の姿になる)ところが新機軸な設定だけに、うーん、、この出来というか納め方には残念至極としか言いようがない。

タイムトラベルものはお手の物のハリウッドで実写化求ム。

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青天の霹靂

P1399016757866出演:大泉洋、柴咲コウ、劇団ひとり、笹野高史、風間杜夫

監督・脚本:劇団ひとり

(2014年・東宝・96分)WOWOW

内容:39歳の売れない独り身マジシャンの晴夫は、幼い頃に母に捨てられ、父親ともいまや10年以上絶縁状態だった。そんなある日、警察からホームレス状態の父の死を知らされる。遺骨を抱え、やりきれない気持ちで父の住み家だった荒川の河川敷に佇む晴夫だったが、そんな彼を一閃の雷が直撃。そして気付くと、40年前の浅草にタイムスリップしていた。やがて演芸ホールでスプーン曲げを披露して人気マジシャンとなった晴夫は、同じくマジシャンをやっていた若き日の父とその助手を務める母と出会う。そして、父とコンビを組むことになるのだが・・・。

評価★★★☆/70点

手品とタイムスリップという映画のモチーフに鑑みていえば、プロットの運び方、伏線の張り方、心象風景の描き方、カットバックの使い方、スローモーションや省略などの時間軸の操作、巧みなカメラワークetc..要は映画とは嘘をついていいものだという心得をしっかりわきまえた手練れの演出に満ちている。

しかしその反面、冒頭の主人公のマジックを吹き替えなしのワンカット長回しで捉えるシーンなど、映画につかみとリアリティをもたせるツボもちゃんと押さえているのも強みだ。

多少その手法に酔いすぎてクドく見えるようなシーンもあるけど、およそこれが初監督作とは思えないほどエモーショナルにあふれた非常に見やすい作品に仕上がっていたと思う。

ただ、しいて希望を挙げれば、お腹いっぱいになる前に終わっちゃったてことかなw

でもこういうのってもっと盛っちゃいたいはずだし、見る方もそれを期待している所もあるんだけども、逆に編集でバッサバッサとカットして90分弱にまとめてしまう肝っ玉の強さは、やはり大いなるセンスといわなければならないだろう。

次回作が楽しみな監督のひとりになったな。

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この胸いっぱいの愛を

C_b0010500579_tl_2 出演:伊藤英明、ミムラ、勝地涼、宮藤官九郎、吉行和子、愛川欽也、倍賞千恵子

監督:塩田明彦

(2005年・東宝・130分)MOVIX仙台(試写会)

評価★★☆/45点

内容:百貨店に勤める比呂志は、出張で小学生時代を過ごした北九州・門司を訪れた。しかし、何か様子が違う。新聞見ると、、えっ?1986年?20年前じゃん!タ、タイムスリップ。。ていうか、少年時代の自分にも会っちゃった・・・。そんなこんなで比呂志は実家だった旅館に住みついてしまう。そんなある日、彼は憧れだった近所の和美姉ちゃんと再会する。彼女は難病のすえこの世を去ってしまう運命にあるのだが、今ならば救えるかもしれないと比呂志は考える・・・。

“タイムパラドックスの定石を捨ててまで描き出したのがこれなの・・・?思わず失笑。”

タイムスリップする1986年という時代設定がまずはビミョー・・・。

だって昭和61年やろ。

バブル景気がちょうど幕を開けた頃だと思うのだけど、なんかイメージとしてパッとしないというか、そんな昔でもなければつい最近でもないという時代背景の中途半端さが気になった。

しかもそれに輪をかけたように伊藤英明のメインストーリーがこれまたビミョーなんだよなぁ・・・。タイムパラドックスなど眼中にないくらいお構いなしで突き進むのは大目に見るとしても、肝心要のメインストーリーに力がなかったら、ただの独りよがりなだけの映画じゃないか。。

サブストーリーである若いヤクザ(勝地涼)、老婦人(倍賞千恵子)、クドカンのエピソードの方がフツーに感情移入できただけにメインの物足りなさが一層際立ってしまった。

これは多分に失われた命を取り戻そうという事の重みに対して、シナリオに力がないのか、伊藤英明に力がないのか、あまりにも人間ドラマの描写が軽すぎるというアンバランスさに起因するように思う。

そもそも「黄泉がえり」(2002)では現世で生きる人々のもとに亡くなった大切な人が舞い降りてくるという、あちらから会いたい人がやって来るという構図なのだけど、今作ではこちらから会いに行くという構図になっている。その点ですでに作為的要素が含まれているといってもいいのだけど、この映画のメインとなるのは結局この世を去った憧れの人を救おう、生き永らえさせようとする話なわけで、そこら辺はどうも自分は胡散臭さを感じてしまった。

だって要は積極的に未来を変えて死者を甦らせようとするわけで、そこに十分な説得力、つまり死んだ者は絶対に生き返らないという命題を覆す魔力を持たせるにはやはりタイムパラドックスの定石を使っていくしかないと思うのだけど。。

しかし、この映画はそれをあえて無視した上で完全に人間ドラマに徹した感がある、、、のだが、ものの見事に肩透かしをくらったような力の無さには目を覆うばかり。

作為に満ちた独りよがりな映画とはまさにこのことを言うのではなかろうか。

ただ、塩田監督もなにやら罪滅ぼしでもしたかったのか、それとも塩田監督なりのケジメの付け方なのか、ラストに出てきた生き永らえた和美(ミムラ)の姿にはなんとも厳しすぎる年輪が刻まれていて、それまでの演出とはかけ離れていたので驚いたというか、また別な意味で肩透かしをくらっちゃった・・(笑)。なんだかわけの分からん映画だったな。。

自分が思うに、生んだ直後に亡くなってしまった母親、今まで幻だった母親に会うことになる若いヤクザ(勝地涼)の話をメインにすればそれなりに見れたのではないかと思う。命のやり取りはこの映画には重すぎる・・・。

あるいは、どうせだったらどっかの老人ホームのバスが崖下に転落しちゃうとかさ(笑)、んでその拍子に1946年にタイムスリップしちゃうとか。だってジッちゃんバッちゃんの方が人生で本当にひとつだけやり直したいことの重みって説得力がありそうだし。

とにかく「黄泉がえり」の二匹目のドジョウとはなりえなかったな今回は。

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バブルへGO!!タイムマシンはドラム式(2006年・東宝・116分)WOWOW

 監督:馬場康夫

 出演:阿部寛、広末涼子、吹石一恵、伊藤裕子、劇団ひとり、薬師丸ひろ子

 内容:2007年の日本。国は800兆円の借金を抱え、日本経済は破綻寸前。そんな日本の危機を救うべく、財務省官僚の下小路(阿部寛)はある計画をぶち上げていた。それは、1990年にタイムスリップしてバブル崩壊をくい止めようというものだった。ところが、先にタイムスリップしていた開発者の田中真理子(薬師丸ひろ子)がそのまま行方不明になってしまう。そこで下小路は、真理子の娘で借金取りに追われているフリーターの真弓に目をつけ、真弓は母親を救うためにタイムマシンに乗り込むのだったが・・・。

評価★★★/60点

バブル全盛期に山ん中に秘密基地を作ったりして駆けずり遊んでいた小学生時代の自分にははっきりいってあまりピンとこなくて実感がわかない題材だし、しかしかといってバブル崩壊後の失われし10年の真っ只中で就職超氷河期にブチ当たってしまった自分からするとああいう軽いノリで描かれるとなんだかしゃくにさわるし・・・(笑)。なんだかなぁ。。

タイムマシーンを起動するのに洗剤を入れるというのは笑えたけどね。

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地下鉄<メトロ>に乗って(2006年・日本・121分)WOWOW

 監督:篠原哲雄

 出演:堤真一、岡本綾、常盤貴子、大沢たかお、笹野高史、吉行和子

 内容:43歳の営業マンである真次(堤真一)はある日、父が倒れたという連絡を受ける。が、真次は大財閥の総帥であった傲慢な父に反発し、高校卒業後に家を出たっきり一度も会っていなかった。そんな真次が地下鉄を出ると、、、昭和39年の東京にタイムスリップしていた!しかも真次の恋人であるみち子(岡本綾)もタイムスリップしてしまう。そして真次は、若き日の父(大沢たかお)に出くわすのだった・・・。

評価★★★/60点

とうとう解りあえなかった父親が戦前、戦中、戦後という激動の昭和をどのように生きてきたのか、その知られざる真実にスポットを当てることによって父親と息子がつながっていくという、いたってシンプルなお涙頂戴もののはずだったのに。

そこにいきなり80年代角川映画もビツクリの近親相姦ネタに、あげくの果てに妹が自殺(正確には存在自体を消してしまう)しちゃうって、、、こんなん2時間で消化しきれねぇよ。韓流ドラマみたいに全50話くらいでやってくれ(笑)。

しかも、階段から突き落とされたお時(常盤貴子)の人生はどうなっちゃうんだよ。全然消化不良じゃん。

ていうか肝心のテーマが一気にボヤけちゃったし・・・。

自分の祖父も小沼佐吉(大沢たかお)と同じように、戦時中に満州行って結局ソ連軍に連行されて、シベリア抑留を体験してなんとか生きて日本に帰ってくることができた人だったから、かなりリンクするところはあったと思うんだけど、ラストの仰天ネタに一気にガクッときてしまった・・・。

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