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2023年1月 2日 (月)

夢のシネマパラダイス560番シアター:1917命をかけた伝令

1917 命をかけた伝令

O0707100014801650490出演:ジョージ・マッケイ、ディーン=チャールズ・チャップマン、マーク・ストロング、コリン・ファース、ベネディクト・カンバーバッチ

監督・脚本:サム・メンデス

(2019年・英/米・119分)東宝シネマズ日本橋

内容:1917年、第一次世界大戦の西部戦線。ドイツ軍の後退を好機と捉えたイギリス軍は追撃作戦を開始するが、それはドイツ軍の罠であることが判明する。そこで若きイギリス兵スコフィールドとブレイクに、作戦中止の命令を最前線の部隊まで届けるよう指令が下る。ブレイクの兄を含む兵士1600人の命がかかる中、2人は塹壕を抜け出し、敵の陣地へ歩を進めていく・・・。

評価★★★★/85点

歴史好きの自分にとって欠かせなかったテレビ番組にNHKスペシャル「映像の世紀」がある。その第2集だったか、大量殺りくの完成という副題で第一次世界大戦を扱った回があった。

愛国心というロマンにあふれた若者たちが、「クリスマスまでには帰れる」と無邪気に戦場に向かったものの、その先に待っていたのはクリスマスどころか何年にも渡る果てなき消耗戦の地獄、、そして爆撃で吹き飛ばされた顔の右半分を型取ったマスクを装着した若者がカメラに向ける眼差し、、こんなはずではなかった、と。。

今回の映画では人類が初めて経験した近代戦の惨状を、ジグザグに延々掘られた塹壕、その中で泥まみれになってうずくまる兵士たち、張り巡らされた鉄条網、砲弾でできた無数の穴ぼこの大地に放置される軍馬の死骸、腐乱していく兵士の屍に群がるハエとネズミ、大量に散らばっている高射砲の薬きょう、崩れ落ちた橋、もはや更地寸前の廃墟と化した街、、そういったリアルなプロダクトデザインや美術セットにより大々的かつ直接的な戦闘をほぼ描かずに表現しているのが特筆もの。

中でも印象的だったのが桜の花で、撤退したドイツ軍が道を塞ぐために桜の木々を伐採していったことによる戦争の酷さ悲しさだったり、主人公が川に流されている時に流れてくる桜の花びらは「西部戦線異状なし」のオマージュとも思ったけど、ものすごく心に残った。

話題となったワンカット風撮影については、没入感はハンパない一方、各ステージのイベント・ミッションをこなして進んでいくかんじが、まるでLOTRのフロド&サムの冒険譚のように見えてきてしまうドラマ性の乏しさや、映画好きにとってはどうやってワンカットのように見える映像を繋いでいるのか技術面ばかりに気が向いてしまうといった一長一短はあったものの、今まで見たことのない“戦場”映画だったのは疑いようがない。

ただ、水面上を滑空しているような切れ目ないカメラワークとか本当にどうやって撮っているんだろうという興味は尽きなくて、全編メイキング見てみたいw

P.S.ロシアの侵略によるウクライナ戦争の最中に再見した。破壊のかぎりをつくされたマリウポリと映画に出てくるエクーストの街がだぶって見えて暫し言葉を失う・・・。

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戦場のアリア

Iimg900x12001551535926ztmm0n1093390 出演:ダイアン・クルーガー、ベンノ・フユルマン、ギョーム・カネ、ゲイリー・ルイス、ダニー・ブーン

監督・脚本:クリスチャン・カリオン

(2005年・仏/英/独/ベルギー/ルーマニア・117分)盛岡フォーラム

評価★★★★/80点

 

内容:1914年、第一次世界大戦下のフランス北部デルソー。ドイツ軍とフランス・スコットランド連合軍の戦いは熾烈を極め、戦況はますます悪化の一途をたどっていく。そんな両軍とも譲らぬまま迎えた雪のクリスマス、花形テノール歌手だったドイツ軍のニコラウスは素晴らしいテノールを塹壕から響かせる。すると、スコットランド軍はバグパイプの伴奏を奏で始め、一夜限りの休戦が実現、いつしか3カ国の兵士たちによる「聖しこの夜」の合唱がこだまする、、、というウソのようなホントの話。。

“やや一本調子な旋律で、思ってたより盛り上がりに欠けるが、戦争の愚かさがこれほど素直に伝わってくる映画も珍しい。戦場における人間讃歌に心打たれる。”

凍てつく大地に野ざらしになった死体がゴロゴロしている中で、敵味方が共にシャンパンを酌み交わし、語り合い、共に歌い、共にサッカーをし、トランプまでして、そして共に祈る、、そんな世にも奇妙な風景のどこまでが真実なのか知るよしもないが、戦争のバカバカしさ、愚かさが実に端的に伝わってくる光景ではある。

以前、NHKスペシャルで太平洋戦争の激戦である硫黄島玉砕戦を特集していて、生き残った元兵士の凄絶な証言の中で、あの生き地獄という名の戦場を一言で言い表すならばそれは“畜生の世界”だと言っていたのが印象に残っている。

人間性を破壊し消失させてしまう、人ではないものが巣食う世界、それが戦場なのだとしたら、その中でかろうじて人間たらんとすることはそれこそ神のおぼし召しにすがるより他にないのかもしれない。

クリスマス聖夜、賛美歌の合唱とバグ・パイプの音色によって引き起こされた奇跡。

戦場の最前線で人間性を取り戻したかけがえのない喜びが暖かく描かれる一方で、その取り戻した人間性が自国の正義という名の下に徹底的に排除されていく絶望と悲しみも冷徹に描かれ、なんともやるせなくなってくる。

また、戦場で敵味方も国境も人種も越えたクリスマスミサの祈りによって心を通わせることに貢献した神父がいる一方で、聖戦と称して若者を戦場に駆り出していくのも同じ宗教者の司教であることに空しさを感じずにはいられない。

「ドイツ兵を殺せ!皆殺しにしろ!と命令するお偉方よりもドイツ兵の方がよっぽど人間的だった。」というセリフが心に残る。

現代、相も変わらず宗教は権力と戦争の道具として使い回されているが、音楽はいまや数百万曲が世界中のネットを飛び交う時代だ。

奇跡を起こすのは神でも宗教でもない。

音楽なのかもしれない。

そういえば「ビルマの竪琴」でも日本軍と英軍が水島上等兵の奏でる竪琴に合わせて合唱するシーンがあったっけ。

歌ってやっぱりスゴイ

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バルトの楽園(2006年・東映・134分)WOWOW

 監督:出目昌伸

 出演:松平健、ブルーノ・ガンツ、高島礼子、阿部寛、國村隼、大後寿々花、平田満、市原悦子

 内容:第一次世界大戦中の1914年、日本軍はドイツの極東根拠地である中国の青島を攻略し、ドイツ兵4700人を捕虜として日本全国に12ヶ所ある俘虜収容所へ送還する。1917年、収容所を6ヶ所に統合するため、劣悪な久留米収容所で2年を過ごした捕虜たちは徳島の板東収容所に移送された。同収容所の松江豊寿所長は、彼らに対して寛容な待遇で接するのだが・・・。日本で初めてベートーベンの「交響曲第九番:歓喜の歌」が演奏されたという実話をもとに描いたドラマ。

評価★★★/60点

“安倍晋三がこれ見たらもろ手を挙げて喜びそう・・・。”

なんていうのかなぁ、言葉は悪いけど、まるで北朝鮮の将軍様の国策映画を見せられているかのような気持ちの悪さを感じてしまった。

いや、ものすごく真摯で感動的なストーリーなんだけど、そこにこれでもかというくらいに輪をかけて乗っかってくる何のひねくれもない平々凡々な演出に、逆にうすら寒さを感じてしまったというか。。

自分の映画の見方がひねくれちゃってるだけかもしれないけど、この映画ははっきりいってヌルすぎる。

なぜ収容所が牧歌的な理想郷のように描かれなければならないのか、あまりにも出来すぎていやしないだろうか。

まだ日本がイカれる前の貧しくも古き良き時代にあった奇蹟といえば聞こえはいいけど、ちょっと誇張しすぎの感も・・・。

唯一、大後寿々花の演技力と存在感には今回も脱帽したけども。

2021年1月23日 (土)

夢のシネマパラダイス122番シアター:統計では1番安全だけど、気持ち的に1番不安な飛行機という乗り物

ハドソン川の奇跡

E3838fe38389e382bde383b3e5b79de381aee5a5出演:トム・ハンクス、アーロン・エッカート、ローラ・リニー、アンナ・ガン、オータム・リーサー

監督:クリント・イーストウッド

(2016年・アメリカ・96分)WOWOW

内容:2009年1月ニューヨーク。155人を乗せた旅客機が、離陸直後にバードストライクに遭いエンジン故障に見舞われてしまう。しかし、チェズレイ・“サリー”・サレンバーガー機長の見事な判断と操縦によりハドソン川へ不時着水し、全員生還する。この偉業は“ハドソン川の奇跡”と讃えられ、サリーは副操縦士のジェフとともに英雄として称賛される。ところがその後、事故調査委員会が、サリーの決断に疑義を呈して追及を始める・・・。

評価★★★★/75点

当初はなぜイーストウッドが、まだ記憶に新しいこんな美談を題材にしたのか腑に落ちなかったんだけど、映画を見たら納得。

役者として単純な勧善懲悪ものではないアンチヒーローを演じ続け、監督としてヒーローの虚像に葛藤し苦しむ者を描き続けてきたイーストウッドのフィルモグラフィーを思い起こせば、今回の映画もその範疇にすんなり入ることが分かる。

40年以上パイロットを続けてきたプロフェッショナルとして仕事の流儀を貫き、当然のこととしてするべき事をした機長が、自分の意図しないところでヒーローに祭り上げられていく一方、経験値より法とマニュアルを重視する官僚組織と対峙させられるというのは、なるほどまさにイーストウッド印の映画だ。

ヒーローから一転してペテン師呼ばわりするマスコミの手のひら返しにさらされ精神をすり減らしていく中でも毅然さを失わず立ち向かっていく機長の姿は、アメリカの良心を体現してきたトム・ハンクスの白髪姿と合わせて非常に印象的だった。

まぁ、事故調査委員会も真相究明という点で正しいことをしているわけで、どちらもやるべきことをやったってことではあるんだよね。

さらに、そこにNYの人々の温かさも加わって、着地点としては文句のつけようがないし、なによりこれを90分弱に収めてしまうイーストウッドの熟練技にも感服!

星条旗の裏に潜む醜悪さの入り込む余地のないアメリカの良心がストレートに伝わってくる清々しい小品。

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フライト

Poster出演:デンゼル・ワシントン、ドン・チードル、ケリー・ライリー、ジョン・グッドマン、ブルース・グリーンウッド、メリッサ・レオ

監督:ロバート・ゼメキス

(2012年・アメリカ・138分)WOWOW

 

内容:乗員102名を乗せたフロリダ州オーランド発アトランタ行きの国内線旅客機が突如制御を失って急降下し、墜落の危機に陥る。しかし、ベテラン機長ウィトカーの操縦術により野原に不時着し、犠牲者は6人出たものの多くの命を救うことに成功。マスコミはじめ誰もがウィトカーを称賛し、一夜にしてヒーローとなるが、彼の血中から高濃度のアルコールが検出されたことで事態は一変。事が明るみに出れば重過失で終身刑の可能性もある中、ウィトカーは弁護士のラングとともに事実の隠蔽に動き出す・・・。

評価★★★/60点

アル中であることを頑なに拒否りつづけた男がそれをようやく認めるってだけのお話ww

ほぼデンゼルの独演会ともいえる映画だけど、アル中克服ものの前段階なので話自体が地味目だし、家族の支えとかも皆無なので話が広がっていかないのね・・。

また、ヤク中気味の女性との関わり合いも焦点がぼやけてしまってイマイチだったし、現実から逃げ回るだけの主人公をさんざん描いておきながらラストで改心してめでたしというのも腑に落ちないし、全体的に中途半端な印象をもった。

自分がこの映画に期待していたことって何だろうと思った時、真っ先にアル中男のグダグダ話は別に見たくないってことに行きついてしまった時点で自分の趣向とはちょっと合わない映画だったということなんだろうけど。

まぁ、あと自分が下戸なので酒飲みの話が性に合わないってのも大きいけど・・

ただ、デンゼルはよくやっていると思う。どんなに卑しい俗人を演じても高潔な善心を常に身にまとっている彼の稀有なパーソナリティは、単純すぎる映画を一筋縄ではいかないものにまで押し上げている。良くも悪くもデンゼルに頼りきりな映画だったといえるだろう。

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ハッピーフライト

20081117_458070 出演:田辺誠一、時任三郎、綾瀬はるか、吹石一恵、田畑智子、寺島しのぶ、笹野高史、小日向文世、柄本明、岸辺一徳

監督・脚本:矢口史靖

(2008年・東宝・103分)CS

内容:全日空ホノルル行き1980便。機長昇格を目指す鈴木副操縦士(田辺誠一)は、厳格な原田機長(時任三郎)のもと、この機での最終テストに臨もうとしていた。一方、同じ便にはこれが国際線デビューとなる新人CAの斉藤(綾瀬はるか)の姿も。そして、グランドスタッフ、整備士、管制官らに見送られ、台風が接近しつつある羽田空港を無事に飛び立ったのだが・・・。

評価★★★★/80点

飛行機をパニックに陥らせるのは、ハイジャック犯!?テロリスト!?殺人犯!?心臓発作を起こしたパイロット!?死のウイルス!?時限爆弾!?大量の毒ヘビ!?ゾンビ!?

いやいや今回は違います。

大量の正露丸ですっ!!!なんじゃそりゃ

いや、あの臭いといったらもう、という話は置いといて、大量の正露丸が機内を転がる今回の映画、めっちゃヨカッタです!だから、なんじゃそりゃ

一機のジャンボジェット機が羽田から無事に飛び立つまで、そして2時間後、機内トラブルのため引き返して台風吹き荒れる羽田に無事着陸するという、話だけ聞けばなんてことはないいたってシンプルな筋立てなのだけど、これがまぁよく出来てて面白いんだわ。

コックピット、機内、空港カウンター、管制塔、オペレーションセンター、格納庫、様々な部署と場所で飛行機の安全なフライトに携わっている数多くのスタッフたち。

彼ら一人一人にスポットライトを当てたシナリオは、各々の視点が干渉・交錯し合い一つの必然に収束していく群像劇の持つダイナミズムには程遠く、各々の視点は交錯することなく最初から一つの必然に向かっていくという、人間関係の横のつながりには乏しいといわざるを得ないものになっている。

そういう面では、かなり閉鎖的なのだけど、しかしそれがマイナスに働くのではなく、プロフェッショナリズムが生み出すカタルシスをユーモアも交えて小気味よく強調していくことで十二分に元が取れるつくりになっている。

窓際族のさえないオッサンが一転して本領発揮して見せ場を作ったり、夢の職業パイロットが素っ頓狂な声を挙げたり、空の花形キャビンアテンダントが速攻立ち食いしながら青竹踏みしてたりと、それぞれ表と裏の顔を見せてくれるのも面白く、その中で専門職としての自負心や厳しさ、また仕事への向き合い方をしっかり描いているのは秀逸。

さらにそこにANAの大看板とボーイング747がで~んと横たわるわけだから、リアリティとスペクタクルも注入満タン!で、文句なしのハッピー・ヒコーキ・ムービーになっていたと思う。

また、ヘェ~そうだったんだぁというトリビア&ハウツウものとしても楽しめたし、CG臭さを感じさせないのも好感が持てた。

特に、強烈な横風を受けながら羽田に着陸するところで斜めってる機体を上から捉えたシーンなんかはかなりゾクゾクきたな。

飛行機が飛び立つのにこれほどワクワクし、飛行機が着陸するのにこれほどドキドキした映画もない。

細部にいたるまで作り込まれたディテールの裏には、かなりのリサーチがあったであろうことが実感できるし、その付箋つきのレポート用紙の積み重ねがヒコーキにはド素人の自分にもめちゃくちゃ楽しめてしまう要因になっていたのだと思う。

飛行機には1回しか乗ったことないけど、次に乗る機会があったらこの映画を思い出しながら乗ろっと。

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エグゼクティブ・デシジョン

Hs14211_l出演:カート・ラッセル、スティーブン・セガール、ジョン・レグイザモ

監督:スチュアート・ベア-ド

(1996年・アメリカ・132分)仙台セントラル劇場

評価★★★★★/90点

 

内容:最新毒ガス弾を持つテロ軍団にハイジャックされたジャンボジェット機に、特殊部隊と情報部顧問の博士が潜入することになるのだが・・・。

“すべてにおいて高度で、アクション映画としては珍しく偏差値高し”

非常に良くできている映画だ。行き当たりばったりで銃をぶっ放す映画とは一線を画している。

また、頭ひとつ抜きん出た無敵のヒーローがいないことは、航空機ものとしてもアクションものとしても非常に珍しく新鮮。

いわばチーム戦術で攻略していくという設定(しかも密閉空間)が、今までとは次元の異なるアクション映画だといえるのでは。

だが、この設定、実はリスクが高い。キャスティングをひとつ間違えるとバランスが崩れてしまい、ありきたりの映画になってしまう。

しかし、その点でこの映画は成功している。

カート・ラッセル、ジョン・レグイザモ、オリバー・プラット、そして今ではアカデミー女優になってしまったハル・ベリーといった巧いキャスティングに、しっかりとキャラも立っている。

俺が俺がといった前面に押し出される利己的な独走演技もなく、とても良いバランスを保っている。

そしてこの設定を逆手にとったS・セガールの起用法はまさに拍手もの。巧いです。

また、今までとは次元の異なるアクションものとして特筆ものといえるのが、敵のボスキャラ。

死を厭わず任務を遂行する、まさに自爆テロほど対処のしようがないものはない。

9.11アメリカ同時多発テロで事実が映画をも超えてしまったわけだが、リアリティのあるアクション映画としても一見の価値はある。

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靴をなくした天使(1992年・アメリカ・118分)NHK-BS

 監督:スティーブン・フリアーズ

 出演:ダスティン・ホフマン、ジーナ・デイビス、アンディ・ガルシア、ジョーン・キューザック

 内容:ある日、飛行機事故に遭い、座席に挟まれて身動きがとれなくなったテレビリポーターのゲイル。しかし、その燃える機内から彼女と他の乗客たちを助け出したある男がいた。だが、その男は、泥だらけの顔のまま名前も告げずに立ち去ってしまう。そしてそのヒーロー話にメディアが群がってきて、虚像としてのヒーローを作り出していくのだが・・・。

評価★★★★/80点

アメリカ人なんだから御託を並べてないで、1番言いたいこと・結論をズバッと言い切っていればこんな話にはならなかっただろうにと、NOと言えない日本人の自分でさえ思ってしまった。けどイイお話でしたわ。

ベトナム戦争のことを「ナム」と略すラプラントに1票!

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乱気流/タービュランス(1997年・アメリカ・101分)WOWOW

 監督:ロバート・バトラー

 出演:ローレン・ホリー、レイ・リオッタ、ベン・クロス

 内容:護送中の凶悪殺人犯にハイジャックされたジャンボ旅客機で、死を逃れたスチュワーデスが機体奪回を目指し、犯人と闘いを繰り広げる。。

評価★★★/60点

見てると胸くそ悪くなってくるレイ・リオッタの異常演技に、飛行機の中という閉鎖性や乱気流ネタといったスペクタクルが殺されてしまっている。

とにかく狂気に憑かれたようなレイ・リオッタは必見。

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コン・エアー(1997年・アメリカ・114分)仙台日之出劇場

 監督:サイモン・ウェスト

 出演:ニコラス・ケイジ、ジョン・マルコヴィッチ、スティーブ・ブシェーミ

 内容:8年前、身重の妻を守るために殺人を犯してしまい、服役していたポーは模範囚とじて仮釈放される。妻が待つ故郷へ戻るために護送機へと乗り込むが、護送機は離陸直後、世にも稀にみる凶悪犯罪者集団によってハイジャックされてしまう・・・。

評価★★★/65点

“カツ丼の上に、エビ天乗せて、ハンバーグ乗せて、スパゲッティ乗せて、さらにその上にカレーをぶっかけたような映画。”

「七人の侍」(1954)のことを、監督した黒澤明自身が形容した言葉だが、この映画にこそ当てはまるのではなかろうか。このコテコテ食感はそうざらには味わえないw

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フライトプラン

Flightplanposter0出演:ジョディ・フォスター、ピーター・サースガード、ショーン・ビーン、マーリーン・ローストン

監督:ロベルト・シュヴェンケ

(2005年・アメリカ・98分)盛岡ピカデリー

内容:愛する夫を事故で亡くし、深い悲しみに暮れる航空機設計士のカイル。彼女は夫の遺体を引き取り、6歳の娘ジュリアとともにベルリンからNYへ最新型ジャンボジェット機で帰国の途上にあった。ところが、飛行中の機内でジュリアが忽然と姿を消してしまう。しかし、乗客はおろか乗務員の誰一人としてジュリアを見た者はいなかった。さらに搭乗記録すらも存在せず・・・。

評価★★☆/50点

見終わってなお、あのヒステリックな暴走ハエ女をハエ叩きでバチコンッとはたきたい気分にかられる(笑)。。

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スネーク・フライト(2006年・アメリカ・107分)WOWOW

 監督:デヴィッド・R・エリス

 出演:サミュエル・L・ジャクソン、ネイサン・フィリップス、ジュリアナ・マーグリーズ、ボビー・カナヴェイル

 内容:ハワイを旅行中の青年ショーンは、大物ギャングのキムが検事を殺害する現場を目撃。FBIエージェントのフリンが、裁判の証人としてショーンをロスに護送することになった。しかし、キムはショーンの口を封じるため、乗り込んだ飛行機に数千匹の毒ヘビを積荷として忍び込ませていた・・・。

評価★★★★/75点

“オッパイにしゃぶりつき、アソコにかぶりつき、服の中に潜り込み、舌にまとわりつき、うなじを舐めくり回し、熱くほてる身体に喰らいつく!ブチ抜く!飛ぶ!逝く!さぁ皆さんも昇天してみませんか!”

えっ?何の話かって?

ヘビに咬まれた人の話です。ハイ。

いやはや、時限式の爆弾ではなく時限式のヘビという時点で自分のおバカB級魂に火がついたね。完敗っす。

お次は大量のゴキブリでお願いいたしますw!

2021年1月 3日 (日)

夢のシネマパラダイス383番シアター:ザッツ超能力!

X-MEN:アポカリプス

O0314046813888471784出演:ジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー、ジェニファー・ローレンス、オスカー・アイザック、ニコラス・ホルト、ローズ・バーン、ヒュー・ジャックマン

監督:ブライアン・シンガー

(2016年・アメリカ・144分)WOWOW

内容:紀元前3600年、エジプト。最古のミュータントである“アポカリプス”は、4人の騎士を従え神として世界に君臨していた。しかし、新しい肉体へ魂を移す儀式の最中に反乱が起こり、崩壊したピラミッドとともに地中深くに封印された。そして1983年。プロフェッサーX・チャールズは若きミュータントの教育に努め、人間との共存を図っていた。一方、マグニートー・エリックは身を隠して妻子とともにひっそりと暮らしていた。そんな中、アポカリプスが長き眠りから復活する・・・。

評価★★★/65点

自分の1番好きな漫画はワンピースなのだけど、周りでは連載20年の間に卒業していった人もいる。

その理由で多いのが、キャラクターが多すぎてわけが分からなくなったというのがあって、一度離れてたけどまた読もうかなという人でも途中下車しちゃうとやっぱもう無理ってなるんだよね。

で、そういう奴にかぎってストーリーもグダグダしてきてツマンナイよねとか平気で言う。なので、こっちとしては一生懸命キャラの相関関係とか説明してワンピースの面白さを力説するんだけど、その努力が実ったことは一度もない。そのたびに、グダグダどころか20年経っても面白さが上げ潮状態の漫画なんて他にはないですからー!と自分に言い聞かせるのだった。。

がしかし、同じく約20年に渡って続くX-MENシリーズにおいて、自分は彼らと全く同じことをやってしまっていることに気づいた(笑)。キャラクター多すぎてわけ分かんねーよ!って。

ていうかこのシリーズに関しては毎回同じ感想しか抱いていないw

特に今回はプロフェッサーXが半分くらい拘束状態、マグニートーも棒立ち状態で、その他大勢の方が前面に出てくるので、それぞれのキャラクターが過去作にどう繋がっていくのか、また前作で歴史改変されたことでキャラクターにどのような変化があったのかが、正直言ってコアなファンじゃないと分からないのはツライところ。。

漫画でいえば2~3年周期で連載再開ってことと同じだから、ハンター×ハンターみたいなもんでしょ。だとすると、やっぱ記憶の糸をたどるのが難しい、って言い訳してみる。。

いやでも今回はホント、ストーリーをただ追いするだけで、何の旨味もなく終わっちゃったかんじ。真剣に1作目から見直してみるか、ってこれも毎回言ってるなww

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X-MEN:フューチャー&パスト

20140602214353出演:ヒュー・ジャックマン、ジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー、ジェニファー・ローレンス、ハル・ベリー、ニコラス・ホルト、エレン・ペイジ、イアン・マッケラン、パトリック・スチュワート

監督:ブライアン・シンガー

(2014年・アメリカ・132分)WOWOW

内容:2023年、対ミュータント兵器“センチネル”の暴走によってミュータントばかりか人類も滅亡の危機に瀕していた。そこでプロフェッサーXは宿敵マグニートーと手を組み、兵器が開発された50年前の1973年にウルヴァリンの意識を送り込むことにするが・・・。

評価★★★★/80点

2000年公開の1作目から足掛け15年、ウルヴァリンを主役としたスピンオフを含めて7作目となった今作だけど、いまだに全てのキャラクターをつかみきれていない自分にとっては、このシリーズを見るのはどうしても腰が重くなってしまって・・

しかし今回は、人間とミュータントは共存できるとするプロフェッサーXと、ミュータントは人間を支配するべきだとするマグニートー、またミュータント全滅の危機の発端となったトラスク博士暗殺犯ミスティーク、そしてその暗殺を阻止するため過去に送り込まれるウルヴァリンさえ押さえておけば大丈夫なので、頭の中が整理できて見られて、今までの作品の中では1番面白かった。レベル低っww

でも要はなんでこのシリーズが食わず嫌いかというと、様々なミュータントが敵味方入り乱れてワチャワチャなってキャラクターがつかみづらいからで

その点、今回は先の4人にスポットが絞られているので分かりやすくなっているし、あとはやはりタイムトラベルものの醍醐味であるスリルとサスペンスが上手くブレンドされていて自分好みの作りになっていたのが大きいかな。

巷ではプロフェッサーXがなんで生きているのかとか矛盾点がいくつか挙げられてたみたいだけど、前作で死んだんだっけ!?ということすら記憶に乏しい自分にとってはそんなの関係なく、ほぼ単発ものとして楽しめてしまったかんじだしw

正直、これだけ楽しめちゃうと、1作目からもう1回見てみようかなという気にもさせられたけど、、それでも腰は重いままなのだった(爆)。。

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ウルヴァリン:SAMURAI(2013年・アメリカ・125分)WOWOW

 監督:ジェームズ・マンゴールド

 出演:ヒュー・ジャックマン、真田広之、TAO、福島リラ、ハル・ヤマノウチ、ウィル・ユン・リー、ファムケ・ヤンセン

 内容:第二次大戦中の長崎で日本軍の捕虜となっていたローガンは、原爆に遭うが日本兵のヤシダに救われる。それから数十年後、カナダのロッキー山脈で暮らしていたローガンのもとにヤシダの使者が現われる。余命わずかのヤシダがローガンに一目会いたいというのだ。そして日本を訪れたローガンだったが・・・。

評価★★☆/50点

原作コミックにこのエピソードがあるのかは知らないけど、前作ウルヴァリン・ゼロからのつながりはなく、完全なスピンオフというかんじ。最後とってつけたようにマグニートーと死んだはずのプロフェッサーXが出てきて次作へつながりをもたせたけどw

しかし、単発でこういうの持ってくるんだったらもうちょっとマシなの見せてほしいよ(笑)。これじゃただのヘンテコなニッポン映画じゃん。

B-29が飛来してきただけで切腹する日本兵から始まり、真田広之の初登場シーンのアクロバティックな剣道の稽古や、芝の増上寺の正門に立つマシンガン持った警備とか、もうツッコミどころ満載。。

あと、長崎の原爆を生き残った元日本兵があんなクソジジイになるかっつーの。日本人なめんときやーww

しかし、ニンジャやサムライを出してくるなら、いっそのこと戦国時代を舞台にした方がよっぽど面白かったと思うんだけどな。

でも、あのラブホだけは興味津々

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X-MEN:ファースト・ジェネレーション

Bdql9rgtze_movieposter出演:ジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー、ケヴィン・ベーコン、ローズ・バーン、ジャニュアリー・ジョーンズ、ジェニファー・ローレンス

監督:マシュー・ヴォーン

(2011年・アメリカ・131分)WOWOW

内容:1962年、アメリカ。プロフェッサーXとして後にX-MENを設立することになる遺伝子学の若き専門家チャールズ・エグゼビアは、CIAから捜査協力を依頼される。それは核戦争寸前まで突き進んでいた米ソ冷戦の中、超能力を駆使して暗躍するミュータント集団“ヘルファイヤークラブ”を調査するというものだった。そしてチャールズは、第二次大戦中にナチスの科学者ショウに母親を殺されたエリック・レーンシャーと出会うのだが・・・。

評価★★★★/75点

映画を見終わったあとの1作目のX-MENを見直したいと思った時点で今回の映画は上出来だったというべきだろう。

チャールズ(ジェームズ・マカヴォイ)とエリック(マイケル・ファスベンダー)の決別が最初から分かっている中で、そこに着地させるまでの構成力はこのジャンルの中でもズバ抜けているといっていいと思う。

理想論の前者と現実論の後者のバックボーンや、そのどちらに共感してついて行くかという各キャラクターの内面描写をしっかり描き、さらに荒唐無稽が前提のSF設定にホロコーストや米ソ冷戦という史実を絡ませることでフィクションに重みと説得力をもたせるシナリオの巧さが、この作品をより生き生きとしたものにしていたと思う。

今をときめくジェニファー・ローレンスの艶めかしいボディラインを拝めるのもイイし、それまでの3作に大した思い入れもなかったので(笑)、思わぬ拾い物だった。

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ウルヴァリン:X-MEN ZERO(2009年・アメリカ・108分)WOWOW

 監督:ギャヴィン・フッド

 出演:ヒュー・ジャックマン、リーヴ・シュレイバー、リン・コリンズ、ダニー・ヒューストン、テイラー・キッチュ、ライアン・レイノルズ

 内容:19世紀半ば。ミュータント能力を持つ少年ローガンは、ある悲劇から能力を覚醒させ、同じく能力を持った兄ビクターと2人で生きていくことに。以来、不死身の再生能力と戦闘能力を持つ2人は、俗世から距離を置き、150年以上に渡り幾多の戦場に身を投じてきた。しかし、そんな暮らしに嫌気が差したローガンは、軍を抜けてカナダの山奥で恋人と静かに暮らすことを選ぶ。一方、ビクターは戦争がもたらす狂気に魅せられ殺人鬼と化してしまい、その矛先はローガンにも向けられるのだった・・・。

評価★★★/65点

X-MENシリーズにそれほど傾倒しているわけではない者からすると、その中のいちキャラクターのみに焦点をしぼったスピンオフにはなかなか興味を抱けるものではない

また、ウルヴァリンの隠された謎が解き明かされるといっても、その謎が何だったのかさえ思い出せない者からすると、、ってそれは自分が悪いんだけどw、まぁしかし、アクション部分は見応えがあるし、歌わなくても存在感を知らしめるには十分の熱演を見せるヒュー・ジャックマンの魅力もあってSFアクションとしてフツーに楽しめるのはたしか。

しかし、勉強不足な自分が失礼を承知で言わさせてもらえば、もうちょっとシンプルなストーリー展開でもよかったんじゃないかな。ぶっちゃけ兄ビクターとの確執一点張りの方が逆にローガンにより感情移入できた気がする。

つまりビクター=セイバートゥースをもっとしっかり描くべきだったのではないかということに尽きるけど。だって、このセイバートゥースって1作目X-MENでマグニートー側についてた奴でしょ。この後どうつながっていくんだろっていう・・。

ま、、別にいっか(笑)。。

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X-MEN:ファイナル・ディシジョン

20070422_281624 出演:ヒュー・ジャックマン、ハル・ベリー、パトリック・スチュワート、ファムケ・ヤンセン、アンナ・パキン、イアン・マッケラン

監督:ブレット・ラトナー

(2006年・アメリカ・105分)WOWOW

評価★★★/65点

 

内容:プロフェッサーXの右腕だったジーン・グレイの死により、いまだその動揺から立ち直れずにいるX-MEN。そんな中、ミュータントの能力を治療して消去し普通の人間に戻すことのできる新薬“キュア”が天才科学者によって開発される。ミュータントのまま生きるか、それとも人間になるかという究極の選択に大きく揺れるミュータント社会。マグニートー率いる強硬派ブラザーフッドは、キュアの根絶を狙い、キュア開発のカギを握る少年の強奪に動き出す。一方、放浪中のサイクロプスはジーンが生きていることを知り、感動の再会を果たすのだが・・・。

“X-MENオールスター感謝祭蔵出し祭り!?”

ミュータントを人間に変える新薬「キュア」を人間側が開発し、もしかしてそれがミュータントを絶滅に追い込むかもしれないというのに、当のミュータント同士が殺り合うというのはどうしても腑に落ちないものがある。

ミュータントは病気であるという人間の主張のもとで薬は作られたわけだから、病ではなく個性・アイデンティティであるとするミュータント側からすればそう簡単に受け入れられるものとは思えず、両者の間にある狭間の中で苦悩し葛藤する視点をもっと突っ込んで取り入れるべきではなかったか。

そういう点でいえば、ウルヴァリンと二重人格の最恐女ファムケ・ヤンセンのラブロマンス(?)を軸に据えたのは完全なミステークであり、視点がズレてしまっている。

本来ならローグ(アンナ・パキン)をこそ前面に押し出さなければならないはずなのに。。

とはいえ、登場キャラの多さに名前と顔が一致しなかった1作目から6年経ってしっかりした予備知識もついてきたせいか、なんだかんだいって3作品の中では1番面白かったかも。

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X-MEN2(2003年・アメリカ・134分)DVD

 監督:ブライアン・シンガー

 出演:ヒュー・ジャックマン、ハル・ベリー、パトリック・スチュワート、イアン・マッケラン、ファムケ・ヤンセン

 内容:政府高官のストライカーがミュータント狩りを開始し、プロフェッサーXを捕らえてしまう。X-MENのメンバーは、宿敵マグニートーと手を組み、プロフェッサーXを救出すべくストライカーに立ち向かう。

評価★★★/60点

“早押し並べ替えクイズ!!同一人物に並べ替えよ。”

Aグループ

 エグゼビア、ファムケ・ヤンセン、マリー、カート・ワグナー

 ボビー・ドレイク、ローガン、エリック・レーンシャー

 スコット、ハル・ベリー、レイベン、キティ・プライド

 タイラー・メイン

Bグループ

 サイクロプス、ストーム、デスストライク、シャドウキャット

 ミスティーク、ジーン・グレイ、プロフェッサーX

 セイバートゥース、ウルヴァリン、ローグ

 ナイトクロウラー、アイスマン、マグニートー

問題出した当の本人が1番分かってねぇっ・・。しかもBグループ1人多いっ!

なんでっ?

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X-MEN(2000年・アメリカ・105分)WOWOW

 監督:ブライアン・シンガー

 出演:ヒュー・ジャックマン、パトリック・スチュワート、イアン・マッケラン、ファムケ・ヤンセン、ハル・ベリー

 内容:DNAの突然変異によって特殊能力を生まれ持った超人類“ミュータント”。人類を抹殺しようとするマグニートーに、人類とミュータントとの共存を目指すプロフェッサーXとX-MENが立ち向かう!

評価★★★/60点

なんか久しぶりにジョジョの奇妙な冒険に出てくるスタンド能力を思い出した。

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ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち

E3839fe382b9e3839ae383ace382b0e383aae383出演:エヴァ・グリーン、エイサ・バターフィールド、クリス・オダウド、ルパート・エヴェレット、テレンス・スタンプ、ジュディ・デンチ、サミュエル・L・ジャクソン

監督:ティム・バートン

(2016年・アメリカ・127分)WOWOW

内容:フロリダに暮らす孤独な高校生ジェイク。祖父エイブだけが唯一の理解者で、祖父の語る冒険譚を聞くのが大好きだったのだが、ある日、祖父が謎の死を遂げてしまう。そしてジェイクは祖父の最期のメッセージに導かれ、ウェールズの小さな孤島へ向かい、古めかしい屋敷にたどり着く。そこでは女主人ミス・ペレグリンと、奇妙な能力を持った子供たちがひっそりと暮らしていたのだが・・・。 

評価★★★☆/70点

一言でいえばティム・バートン版X-MEN。

しかし、マッチョイムズを信奉するアメコミに対し、ティム・バートンの視点はあくまでダークファンタジー。

幼気な少年少女たちの内なる異形性の持つグロテスクさやフリークス感が際立っていて、一見してティム・バートン印になっているのはやはり流石。

特に“奇妙なこどもたち”の奇妙さはX-MENとは比べ物にならないくらい図抜けて魅力的だったと思う。

その反面、同じ1日をずっと繰り返すタイムループという不条理ナンセンスな設定がいまいち機能しているとはいえず(だってループの外の本当の現実世界での暮らしに憧れる悪役サミュエル・L・ジャクソンの方がある意味健全ではないかともいえるわけで)、ティム・バートン印のもう一本の柱である切なさや哀しさといったネガティブでシニカルな情緒面が相殺されているのは惜しい気も。。

まぁ、全体的な世界観とモンスターも含めたキャラクター造型が自分好みだったので映画としては及第点。

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ファンタスティック・フォー〔超能力ユニット〕

200fullfantasticfour 出演:ヨアン・グリフィス、ジェシカ・アルバ、クリス・エヴァンス、マイケル・チクリス

監督:ティム・ストーリー

(2005年・アメリカ・106分)MOVIX仙台

内容:人類の進化と宇宙嵐の関係を研究している若き天才科学者リード。彼はある日、その謎を解明するため、親友のベン、元恋人で女性科学者のスー、彼女の弟ジョニーとともに、実業家でスーの今の恋人でもあるビクターの援助を受けて宇宙実験を実施することに。だがその最中、5人は予想外に早くやって来た宇宙嵐の放射線を浴びてしまった。それは彼らのDNAに変化をもたらし、皆それぞれに違った力が表れていく・・・。

評価★★★/60点

レイザーラモンHGが宣伝隊長になっただけのことはあるいい加減なお話。。

いや、だって超能力を手に入れたのに、みんながみんなあっちこっちの方向を向いていて全然まとまりがないんだもん。話に求心力が・・・。

悪役も悪役っぽくなかったし、いまいち燃えなかったな。

それとも素人が超能力を手に入れたらこんなんなっちゃうのよ、てなことなのか。

見所はジェシカ・アルバの胸元のみ、、ま、いっか(笑)。

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ファンタスティック・フォー:銀河の危機(2007年・アメリカ・92分)WOWOW

 監督:ティム・ストーリー

 出演:ヨアン・グリフィス、ジェシカ・アルバ、クリス・エヴァンス、マイケル・チクリス、ダグ・ジョーンズ

 内容:巷では国民的ヒーローとなったファンタスティック・フォーのリードとスーが結婚するという話題で持ちきり。が、世界各地では謎の閃光の飛来により異常現象が発生していた。そして、2人の結婚式当日、閃光がニューヨークにも出現する。その正体は、銀色のボードを駆る生命体“シルバーサーファー”。さらに、このシルバーサーファーが現れた星は、8日以内に滅びていることが判明し・・・。

評価★★★/60点

ゴムゴム人間ルフィが大活躍する「ワンピース」の実写化は十分できる!ということだけは、リードの伸縮自在アクションを見てよぉく分かった(笑)。

「Mr.インクレディブル」から「ファンタスティック・フォー」ときて、ついに満を持してワンピース!、、ってそれくらいしか見所がないんだよねこれ。。

この軽さと中身の無さには脱帽するしかない。

銀河の危機というより、ハリウッドの危機だろ

2018年5月 3日 (木)

夢のシネマパラダイス179番シアター:スーサイド・スクワッド

スーサイド・スクワッド

001出演:ウィル・スミス、ジャレッド・レト、マーゴット・ロビー、ジョエル・キナマン、ヴィオラ・デイヴィス、ジェイ・コートニー

監督・脚本:デヴィッド・エアー

(2016年・アメリカ・123分)WOWOW

内容:「バットマンvsスーパーマン」の後、スーパーマンがいなくなった世界は悪党が跋扈し危機的状況にあった。そこで政府は悪には悪をの最終手段をとることに。さっそく、百発百中の凄腕スナイパー・デッドショットや、ジョーカーに恋するクレイジー・ガールのハーレイ・クインら刑務所に服役している犯罪者が減刑と引き換えに集められた。逃亡したらすぐに首が爆発するスーサイド・スクワッド(極悪特攻隊)として・・・。

評価★★★/65点

「マン・オブ・スティール」で正義を完遂したスーパーマン。しかしその代償として破壊のかぎりを尽くしてしまったことに対する責任論とともに、国家権力のあずかり知らぬところで好き勝手に行動して結果損害を与えるスーパーマンこそ危険な存在なのではないかという脅威論が持ち上がる。

そんな中、「バットマンvsスーパーマン」でスーパーマンのような超人=メタヒューマンが他にも存在することが判明、悪魔のようなメタヒューマンに攻撃でもされたら大変だということで、収監されている極悪人どもを秘密裏に集めて特殊部隊を結成する。

「ダークナイト」(2008)から正義と悪は表裏一体というテーマがトレンドとなった中で、10年後に悪には悪をもって制すという発想に行き着いたのは自然な流れだとは思う。

ただ、逃げたり逆らったりしないようにどころか隊長が死んでも爆発する爆弾を首に埋め込まれた悪党たちのミッション・インポッシブル感はあるんだけど、こちら側が飛べない生身の人間主体なのに、向かい合う敵が6千年以上生きている古代の魔女なので、やはり戦闘値・能力の歴然とした差が映像面にも表れていてさほどの面白さは感じられなかった。

で、この差を埋めるには悪党キャラとしてのブッ飛び感しかなかったと思うんだけど、意外にみんなジョークも通じないような真面目キャラばかりで、その点をクリアしていたのはハーレイ・クインだけだったかな。

まぁ、チームの一体感や協調性はほぼ無しだったので、逆に今後の展開は気になるかも。

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ハンコック

B0041576_23375359 出演:ウィル・スミス、シャーリーズ・セロン、ジェイソン・ベイトマン、エディ・マーサン、ジェイ・ヘッド

監督:ピーター・バーグ

(2008年・アメリカ・92分)WOWOW

評価★★★☆/70点

 

内容:ロスに暮らす酒びたりの男ハンコックは、実は不死身のスーパーヒーロー。しかし、事件解決のたびに周囲へ大損害を与えたり粗野な言動がもとで市民からは反感を買いまくっていた。そんなある日、PR会社に勤めるレイは踏切内で車が立ち往生していたところをハンコックに助けられる。彼はハンコックに正義のヒーローとしてのイメージアップ戦略を提案するが・・・。

“ダメ超人ハンコック”

市民にうとまれ、バカにされ、ホームレス同然の生活をする飲んだくれハンコック、、これって公園で寂しく暮らしていた牛丼漬けの初期の頃のキン肉マンそのものじゃんww

しかも最大の敵はケツの穴に頭を突っ込まれたバカ囚人2人組というなんともチンケなレベルのもので、これって完全にキン骨マン&イワオじゃんww、、毛色としては完全にシュールなコメディ。

しかし不死身の超人=社会不適合者の社会復帰プロジェクトというネタはディスコミュニケーション時代の今のご時世に合っていて、深刻なウィル・スミスの表情もあいまって感情移入できて意外に楽しめてしまった。

が、これではヒーローものとしてあまりにも華も見せ場もないと思ったのか、ハンコックとメアリー(シャーリーズ・セロン)は実は夫婦でお互い近づくとパワーを失ってしまうという突拍子もない設定を何の前触れもなく繰り出してきて、映画の毛色が一気に様変わりしてしまった。

まるで前後半で2人の監督を使ってるような脈絡の無さなのだけど、シャーリーズ・セロンほどのスター女優が脇役の奥さんに収まるはずないよな、とは感じてたのよね。でも、もうちょっとあからさまな伏線があっても良かったんじゃないかと思うんだけど・・。

シリーズ化するという前提でいうならば、今回の映画はプロローグというかんじなのかな。

ていうかこの地味さを続編でうさ晴らししてもらわないと許さへんよ

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スーパーマン リターンズ

20060827_240267 出演:ブランドン・ラウス、ケヴィン・スペイシー、ケイト・ボスワース、ジェームズ・マースデン、フランク・ランジェラ、マーロン・ブランド

監督:ブライアン・シンガー

(2006年・アメリカ・154分)盛岡フォーラム

評価★★★☆/70点

内容:スーパーマンが謎の失踪を遂げてから5年。スーパーマン不在となったメトロポリスでは犯罪が急増、加えて宿敵レックス・ルーサーも出所してしまう。そんな中、地球に戻ってきたスーパーマン。しかし、久々に再会したかつての恋人ロイス・レインは、彼との思い出を振り切り、スーパーマン不要論の記事でピュリツァー賞を受賞するまでに至っていた・・・。前シリーズの2作目「スーパーマン2冒険編」の後を引き継ぎ、5年ぶりに地球に戻ってきたスーパーマンの活躍を描く。

“意外にもダサくなかった掛け値なしの王道路線”

スーパーマンと聞くと自分なんかはオンタイムで見れてない世代なので、ダサいユーモアとショボイSFXの映画という印象がけっこうあったりなんかして、やっぱアメコミ系といえばオンタイムで最初に見たバットマンでしょ、となるわけで。。

だから今回の約20年ぶりの復活劇にはさほどの期待をかけていたわけではなかったのだけど、フタを開けてみたら意外にも楽しめてしまった。

まぁ、昨今のアメコミ系ヒーローが判で押したように苦悩と葛藤を最大の敵とし、正義とは何かという疑問をつきつけられる悩めるヒーロー(=地に足のついた人間)ばかりだったので、アメリカンソウルにあふれた保守的ともいえる王道路線のヒーロー像(=天空から見下ろす神)が逆に新鮮に映ったかんじ。

最新の映像技術も決して大仰にではなく、ほどよいサジ加減でドラマと絡んでいてよかったし。

また、分かりやすい勧善懲悪もののバリバリ王道路線だと、下手すると単調になりがちなんだけども、そこを2時間半の長尺にわたってダレることなく見せ切ったブライアン・シンガーはやっぱスゴイと思う。普通だったら100分くらいにまとめられそうなところを。

X-MENファイナルディシジョンを蹴ってまで本作を監督しただけのことはあると思った。ほんとにスーパーマンにゾッコンなんだろうね(笑)。

ロイス・レインのピュリツァー賞をとった記事“なぜ世界はスーパーマンを必要としないのか”というスーパーマン不要論をもっと掘り下げるのかと思いきや、結局ただ単にヤリ逃げされた鋼鉄の男に対するうっぷん晴らしにしかすぎなかったところとか、ロイス&ジュニアとスーパーマンとの関係の中途半端さなど気になるツッコミどころもあったのだけど、それらは次回作の伏線とみればいいのかな。

でも、あと15年後くらいに子供がこれ見たらダッセェとかって言うのかも(笑)。。

いろんな映画にいえることだけど、次の世代に引き継がれていくような映画を作ってもらいたいもんだと切に願います。

2018年5月 2日 (水)

夢のシネマパラダイス128番シアター:ホロコーストの悲劇

シンドラーのリスト

135740_01出演:リーアム・ニーソン、ベン・キングスレー、レイフ・ファインズ、キャロライン・グッドオール、ジョナサン・サガール

監督:スティーブン・スピルバーグ

(1993年・アメリカ・195分)盛岡フォーラム

評価★★★★★/100点

内容:第二次世界大戦下、1200人のユダヤ人の命をナチス・ドイツの虐殺から救った実在のドイツ人実業家オスカー・シンドラーの生涯を描いたヒューマンドラマ。トーマス・キニーリーが実際にシンドラーに助けられた人々の証言をもとに構成したノンフィクション小説をもとにしている。

“人が撃たれて棒切れのごとく倒れるシーンや、しおれた死体が焼かれるシーンより何よりも絶句してしまったラスト。”

シンドラーに命を救われた人々が、演じた役者たちとともに彼のお墓参りをするラストのエピローグ。

もう言葉にならなかった。

映画といういわば創作の中に実体としての存在が姿を現す。

ホロコーストという事実を伝えていかなければならない、語り継がなければならない、風化させてはいけないというスピルバーグの並々ならぬ強い意志を感じ取ることができる。

広義としての娯楽という枠を超えたこの映画のパワーに敬意を表して★5つにします。本当は序列などこの映画には必要ないし、あまりつけたくもないのだけど、原作、脚色がある以上やはり評価しなければならないかなと考えました。

しっかし、あのゲート所長も実在の人物ってとこが恐ろしいよなあ。架空の創作人物だとばっかり思っていたので。。

でも、1番見ていて言い知れぬ怖さに震えたというか引っかかったのは、ゲート所長の無差別射撃でもなければ赤い服の少女の遺体でもない。それは、貨車に詰め込まれたユダヤ人たちにシンドラーが水をかけてやるシーンで、それを見てヘラヘラ笑っているドイツ軍人たちの姿を見たときだった。

なんとも言い知れぬ嫌悪感と恐怖感に襲われた。

人が簡単に無意味に撃ち殺されるシーンなどは、あまりにも自分の住む現実世界からは程遠い出来事なので、主観の入り込む余裕さえない、いわばあくまでも客観的に距離を置いて見るしかなかったのだが、あのシーンだけは違ったのだ。自分の住む現実の日常にも潜んでいる差別、イジメみたいなものの本質が1番端的に現れていると感じたのだ。なにか自分にも身に覚えがある、、みたいな。

卑劣な行為を繰り返すドイツ軍と自分との間に接点みたいなものを感じてしまい急に恐ろしくなった。もし、あの時代あの場所で自分がドイツ軍人だったら同じことをしてしまうのではないか、と。

シンドラーの言葉が忘れられない。

「ゲート所長も戦争がなければ普通の良い男だ。日常の世界では良い部分しか表に出ない。戦争は人間の最も悪い部分を引き出す・・・。本当のパワーとは人を殺す正当な理由がある時に殺さないことだ。」

そう、それは許すこと。

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サウルの息子

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出演:ルーリグ・ゲーザ、モルナール・レヴェンテ、ユルス・レチン、トッド・シャルモン

監督・脚本:ネメシュ・ラースロー

(2015年・ハンガリー・107分)WOWOW

内容:1944年10月、ナチスのアウシュヴィッツ収容所。ここに収容されているユダヤ人のサウルは、ガス室へ送り込まれた同胞の死体処理を務めるユダヤ人特殊部隊“ゾンダーコマンド”のひとりだった。ある日、彼は自分の息子と思われる少年がガス室で虫の息になっているのを発見する。結局軍医に殺されてしまった少年をユダヤ教によって正式に埋葬してもらうために、サウルはナチスの監視の目を盗みながら奔走する・・・。

評価★★★★/80点

ホロコーストを題材にした映画といえば、「シンドラーのリスト」「戦場のピアニスト」「ライフイズビューティフル」「アンネの日記」などがあり、それぞれ違う角度から切り取った作品になっているけど、今作は今までにもまして異なる切り口の見せ方になっていて、映画の持つ奥深さを今更ながらに痛感させられた。

まずもってゾンダーコマンドという存在や役割自体初めて知って驚くばかりで、ナチスの民族絶滅政策の狂気と、人間はここまでおぞましくなれるのかという恐ろしさにただただ言葉を失った。

また、今までにない切り口の見せ方という点では、カメラが主人公サウルの上半身肩越しのクローズアップのみを常に捉えつづけ、彼の周りで繰り広げられる地獄絵図は常にピンボケしているという普通の映画ではタブーといっていい手法に驚かされた。

例えば、一人称のPOV視点であれば周りの状況にこそクリアにピントが合わされるのが常識のはず。しかし今作はその全く逆の手法で表現していて、彼の見聞きしたいものにはピントが合い、したくないものにはピントが合わないというふうになっている。

ただ、ぼやけた背景でも、異様に混ざり合う音と感情のない機械的なサウルの動きと断片的に映り込むモノとして扱われる人々のシルエットから、そこで一体何が起きているのかをかえって鮮明に想像させる画作りになっていて、まさに今まで見たことのない映画体験だった。

映画の教科書にはまず載っていないであろう映像表現に徹した奇抜さを、監督は「鍵穴から覗いているイメージ」で撮ったと語っていてストンと腑に落ちたのと同時に、この作品を感動ものにも英雄ものにもしたくない、ホロコーストはそんなものではないという強い意志を感じられた気がした。

見るよりも感じる映画。

とりあえず心の中で静かに拍手を送りたい。

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杉原千畝 スギハラチウネ(2015年・東宝・139分)WOWOW

 監督:チェリン・グラック

 出演:唐沢寿明、小雪、ボリス・シッツ、ミハウ・ジュラフスキ、塚本高史、濱田岳、小日向文世

 内容:1934年。満州国外交部で働く杉原千畝は、北満鉄道譲渡に関わる日ソ交渉に携わり日本有利に事を進めることに貢献する。その後、外務省のモスクワ大使館への赴任が決まるが、先の活躍に神経を尖らせるソ連から入国を拒否されてしまう。結局1939年、彼はリトアニアの日本領事館に赴任する。そんな中、第二次世界大戦が勃発、ナチスの迫害を逃れた多くのユダヤ人が領事館に押し寄せてくるが・・・。

評価★★★/65点

上司から君の推測はいつも正しいと評価される良識と先見の明を兼ね備えたスーパー外交官・杉原千畝。

その感性は、今を生きる現代日本人と何ら変わりがなく、イケイケどんどんで暴走していく当時の日本人とは真反対のヒューマニスト・善人観には逆にある種の違和感を覚えなくもない。

それは「太平洋戦争を回避しようとした外交官の物語」とわざわざ強調する冒頭のテロップを見た時から感じていたことだったけど、歴史を知っている現代人の美化のバイアスがかかった筆加減はやはり気になるところで、しかもそれが演出の掘り下げをかなり平板なものにしているので、どこか薄っぺらく見えてしまうところもあり・・。

外交官・杉原千畝のインテリジェンスは世界情勢を間近に見る最前線に立つ者だからこそ得られるものなのかもしれないけど、人間・杉原千畝の思いや内面といったものがイマイチ伝わってこず、言い方は悪いけど全体的に退屈な映画だった。

本家本元の「シンドラーのリスト」と比べるのは酷とはいえ、もうちょっと焦点をしぼって描いてもよかった気がする。

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ヒトラーの贋札

Nise_2 出演:カール・マルコヴィクス、アウグスト・ディール、デーヴィト・シュトリーゾフ

監督・脚本:ステファン・ルツォヴィツキー

(2007年・独/オーストリア・96分)WOWOW

内容:第二次世界大戦の最中、ナチスは米英の経済崩壊を狙うため贋ポンド札を製造するベルンハルト作戦を計画。世界的贋作師サリーや印刷技師ブルガーなどザクセンハウゼン強制収用所にはユダヤ系専門家たち数十人が集められた。収容所内で破格の待遇を受け、贋ポンド作りに従事するサリーたちだったが、自分の延命と引替えに同胞を苦しめるナチスに荷担するジレンマに次第に葛藤と苦悩を深めていく・・・。

評価★★★★/75点

贋札というと、真っ先に「ルパン3世カリオストロの城」に出てくるゴート札を思い出しちゃうんだけど、実際に国家ぐるみの贋札製造作戦があったなんて初めて知ったな。

と同時に、戦争ってのは手段を選ばない何でもありのものなんだなということも実感。

その最たるものがホロコーストなわけだけど、命の灯を簡単に握りつぶされてしまうような苛酷な状況の中で、その殺戮者たちの悪事に手を貸さなければならないなんて・・・。しかもその悪事が成功すれば、ますますもって家族や同胞を苦しめることにつながってしまう。が、逆に失敗すれば、即ガス室送り・・・。

自分の命と正義感を天秤にかけられるという究極の選択、その苦悩と葛藤の中で描き出される生への執着と一縷の信念。

こんなことを言ってはあれだけど、一級の娯楽作として申し分ない要素を兼ね備えた作品に仕上がっていたと思う。

まるで収容所というよりは刑務所を舞台にしたスリリングな犯罪劇でも見ているようなかんじで、ホロコーストを扱った今までの作品群とは趣を異にする視点だったけど、薄っぺらい壁一枚隔てた向こう側に横たわる累々たる死がホロコーストの恐怖をいやが上にも実感させて緊張感は途切れることがない。

また、主人公サリーの人物像も、転んでもただでは起きないような狡猾でズル賢いキャラクターで、そういう視点でも面白い作品だったと思う。

ホロコーストについて毎度のごとく考えさせられるとともに、究極の人間ドラマとスリリングなサスペンスの娯楽作としても楽しめてしまうトンでも映画。

それが「ヒトラーの贋札」なのです。。

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夜と霧(1955年・フランス・32分)NHK-BS

 監督:アラン・レネ

 内容:ポーランドのアウシュビッツ強制収容所に関する短編記録映画。第二次大戦中のナチスによる残虐行為の数々を、カラーでとらえた廃墟のアウシュビッツと、モノクロの当時の再現場面とのモンタージュ構成によって描き出す。

評価:点数付けたくありません。。

見る前の30分。「おおし、これ見たらプレステやっぞー!」

見ている30分。胃がキリキリと痛む悪夢。

見た後の30分。・・・・・・・・・。

しかし、1時間後にはゲームという仮想世界に逃げ込んでしまうのだった・・。

ただ、自分にできること。この映画を見た記憶を忘れない。この映画を忘れない。

2018年1月 3日 (水)

夢のシネマパラダイス474番シアター:妄想をアニメで表現する天才!?新海誠

雲のむこう、約束の場所

00000577472l 声の出演:吉岡秀隆、萩原聖人、南里侑香

監督・脚本:新海誠

(2004年・日本・91分)スカパー

評価★★★/65点

内容:大国に分断統治されている、もうひとつの日本。青森に暮らす二人の少年は、津軽海峡の向こうに見える北海道の“塔”に憧れとも畏怖ともしれない思いを抱く。彼らは、その塔へ行くために軍の廃品で小型飛行機を作り始めるが・・・。架空の戦後史を辿る日本を舞台に、ふたりの少年とひとりの少女のある“約束”を主軸に、心の触れ合いを描く。

“世界の片隅で、渇をさけぶ”

まさかこれが新海誠の全てじゃないだろうな、と切に信じたい。

この人の作品はこれが初めてなので、あまり突っ込んだことは言えないけど、おそらく「物語る」人というよりは「イメージと情景をふくらませる」人というかんじがする。物語のサンプルは乏しいが、イメージのサンプルは彼の頭の引き出しに余すところなくインプットされているのではなかろうか。

そういう点においては、大友克洋と同じベクトルにいる人だと思うのだけども、大友は驚異的なデッサン力でイメージに息を吹き込むのに対し、新海誠はデジタル技術で息を吹き込むという違いがあるのは一目瞭然。

そこに何ら問題はないし、映像も意外に柔らかくて印象的なのだが、この両者の最大の違いは、イメージの質ではないかと思う。

大友克洋のもつイメージというのは、古典的な既成のイメージを軽く飛び越えてしまう、あるいは壊してしまうような異質で斬新なイメージであり、これをアニメとして具現化するのは漫画コミックのように大友一人で出来るものでは決してない。まず不可能といっていい。大友を中心とした組織体制を作っていかなければ成し得ないものだ。

対して、新海誠のもつイメージというのは、誰もが持ちえる既成ド真ん中のものであり、誰もが共通に持つ記憶の引き出しをスーと開けてくれるようなイメージなのだ。

ただそのイメージの質は、良くいえば繊細、悪くいえばやや庵野秀明を表面的になぞった程度ということができ、新海誠はそのイメージをデジタルカメラで一瞬一瞬おさめてインプットしていき、作品をつくる際にパソコンにしまわれた写真アルバムの中から一枚一枚イメージを取り出すような形で絵にしていく。

これははっきり言えば一人でできる類のものなのである。しかも現在はデジタルという便利な道具を使える時代。

新海誠は今の時代に出るべくして出てきた才能の人なのだろうか。

しかし、その彼の、イメージを絵に落とす段階での作画技術における才能とその手法を認めた上で、やはりイメージから物語を生成するという才能の方ははっきりいって断然に乏しいと言わざるをえない。

世界観を作り出すところまではいけても、その先を作り出すことができていない。

宮崎駿や大友のような相手をねじ伏せてしまうような豪腕も持っていない。その腕はか細くて投げられた球筋はあまりにも単調で弱々しい。それを孤独なデジタルでなんとか補っているといったかんじで、これはピュアなどという評価で解決処理していいような問題ではない。

だから、冒頭で述べたように、これが新海誠のすべてなのだとしたらあまりにもガッカリというか、これから先、大丈夫なのかなと不安になるし、まだまだ進化・深化していくものだと信じたい。

どこかで必ず1回脱皮しないと、一人のアニメ作家としてリアルな存在を確立するのは難しいと思う。ましてやポスト宮崎駿などというのはあまりにあまりにもな飛躍ではなかろうか。

期待をこめた上でやや厳しい視点で評価させてもらいました。。いや、嫌いじゃないのよ全然。好きな方なんだけども、なんかね・・。

Posted at 2006/02/09

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ほしのこえ(2002年・日本・25分)NHK-BS

 監督・脚本:新海誠

 声の出演:篠原美香、新海誠

 内容:美加子と昇は仲の良い同級生。中3の夏、美加子は国連宇宙軍の選抜に選ばれたことを昇に告げる。翌年、美加子は地球を後にし、昇は高校へ進学。地球と宇宙という超長距離恋愛を続ける2人は、メールで連絡を取り続ける。が、メールの往復にかかる時間は次第に何年も開いていくのだった・・・。新海誠が7ヶ月をかけ、ひとりで制作したフルCGアニメーション。

評価★★★/65点

“ロボットと石炭ストーブが共存できる世界観の作り方は純粋に巧いしスゴイと思う。”

分業体制で制作することが当たり前のアニメ制作を、パソコンの前でたった一人で作っちゃうということがどれほど凄いことなのか、素人の自分には分かりかねるけど、一個の作品としてちゃんと見られるものになっているのは確かだ。

絵的には人物画がやや稚拙だし、止め絵がやけに多いのは気になるけど、それを補って余りあるフルデジタル背景画は、パソコンの壁紙にマッチするほど一枚絵としてのクオリティが高い。

非常に内向的かつ思索的、悪くいえば閉鎖的きわまりない作品にあって、どこまでも無限に広がるかのような壮大かつ美しく果てしない空間(空や雲、宇宙そして地上)が提示されているのは救いだし、バランスをとるのにも大きな働きを成している。

新海誠の武器はこの背景画にあるのかもしれない。

特に、宇宙戦艦に女子中学生が乗っちゃうような西暦2046年という時代を舞台にしているのに、なぜに学校の教室に石炭ストーブなの(笑)!?というミスマッチな設定というか明らかに意図的なノスタルジーの記号なんだけど、そこらへんの世界観の作り方があざとくなくてすんなり自分の中に入ってきちゃうのも新海ワールドの巧さなのかも。

ただ強いていえば、やはり物語が主人公とヒロインの中に埋没しちゃって、30分くらいの短編だから見れるものの長編でこれやられたら相当キツイと思う。

ノボルくん、君も待つだけじゃなく何か行動しろよ、、と思うのは自分だけだろうか。。

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秒速5センチメートル

Comix1 声の出演:水橋研二、近藤好美、花村怜美、尾上綾華

監督・脚本:新海誠

(2007年・日本・60分)2007/06/13・盛岡フォーラム

評価★★★★/75点

内容:小学校の卒業と同時に東京と栃木に離ればなれになった貴樹と明里。2人は文通を続けていたが、貴樹が鹿児島に引っ越すことになってしまう。大雪の降る中、貴樹は電車に乗って明里に会いに行くのだが・・・。貴樹と明里の再会の日を描いた「桜花抄」、高校生の貴樹に想いを寄せる同級生の花苗の視点から描いた「コスモナウト」、そして最終話「秒速5センチメートル」の3編を収録した連作短編アニメーション。ちなみに秒速5センチメートルとは、桜の花びらが落ちる速度。

“自分の長所と短所を十分自覚した上で勝負できる土俵に持ち込んだ新海誠の作戦勝ち”

「雲のむこう、約束の場所」を見たときに、新海誠という作り手は“物語る人”ではなく、“イメージと情景をふくらませる人”だと感じたが、今回、3つの短編からなる構成方法をとったことで、よりそれが明確化されたと思う。

物語を形づくっていく才能に絶対的に乏しいが、イメージをふくらませる、、、いや、もとい、妄想を具現化していくことにかけては天下一品の才を持つ中では、非常に的を射た作り方だったと思う。

これは別に新海誠は作り手として劣っているとかいうことでは全然なくて、ピッチャーにも球種に得手不得手があるように、それを自覚した上で自分のペースに持ち込んでいく組み立てをしていくのは当たり前だし、そういう意味ではこれ以上合理的な手法はない。

例えば、物語を形づくることができないというのは、人物の成長過程を描けないということでもあるが、それも時系列を断片的に区切って一足飛びにすることでカバーできてしまうわけで。

まぁ、とはいってもただ年食ってるだけという見方もできるけど・・・。

さらに、その手法が完全に裏目に出ているところもあり、1番顕著なのは第2話でのタカキの無表情というか、あれはもう完全にノッペラボウと言っていいと思うんだけど、カナエに呼びかけられて振り返る時の顔といったら恐い怖い。

なんかタカキという容れ物だけで、魂どこに置き忘れてきたんだよお前は、みたいな。蟲師に出てくる蟲にとり憑かれた人みたいな、絶対バケモノだよあれ(笑)。

ま、言い換えれば“記号”でしかないってことなんだけど。

1話目はもう完全に「北の国から」だから(笑)、すんなり見れたからよかったけど、2話目のタカキには違和感感じまくりだったな。

3話目は完全に山崎まさよしのPVと化してたけど、断片化されたイメージを繋ぎ合わせてファイナライズして1つの作品にしていくという新海誠の特徴が実に端的に表れていたという点では見所はあったかな、と。

ただ、決定的な欠落やボロも平気で出しているんだけど、今回★4っつ付けているように、それ以上に見る者の過去の記憶のひとかけらひとかけらを一気に増幅させてしまうほどのイメージ力の洪水の連鎖にはあきれるを通り越して感服してしまうんだよね。

どうすればこんな青臭くて気持ち悪いくらいの自意識を持てるんだろう・・・(笑)。いや、これは決してけなしているわけじゃなくて、スゴイって思うんだよねホントに。

また、そうじゃなきゃ映画なんて作れるはずもないとは思うんだけど、そういうのを全部突き抜けて見る側に伝わってくるものを作れるというのはやはりスゴイなと。

個人的にはカナエの姉ちゃんが車のBGMでリンドバーグの“君のいちばんに・・♪”をかけてるところでビンゴきたぁーーッ!ってかんじだったけど(笑)。

新海誠が自分の得意とする本領が発揮できる土俵に持ち込んで勝負できたのが今回は結果的には良かったのだろうと思う。

少なくとも自分は、この5センチメンタルな情景にシビレまくりますた。。

Posted at 2007/06/14

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星を追う子ども

E6989fe38292e8bfbde38186e5ad90e381a 声の出演:金元寿子、入野自由、井上和彦、島本須美、折笠富美子

監督・脚本:新海誠

(2011年・日本・116分)DVD

内容:父の形見のラジオから流れてきた不思議な唄が忘れられない少女アスナ。ある日彼女は、地下世界アガルタから来たという少年シュンと出会うものの、少年は突然姿を消してしまう。シュンとの再会を願うアスナは、新任教師のモリサキからアガルタにまつわる不思議な神話を聞かされるのだった。そして、そんなアスナの前に、シュンと瓜二つの少年シンが現われる・・・。

評価★☆/30点

SONYじゃなくてSOMY、iPadじゃなくてiPed、東芝じゃなくてトーチファ、任天堂じゃなくてニンテンドゥー、、ジブリじゃなくて痔デス。。

パクリ王国の中国で今度はジブリがヤラレたーっ(笑)!

ハウルにもののけ姫にキツネザル、飛行石、コナン、ゲド戦記、親不在、、よくぞここまであからさまに繰り出してきたもんだと開いた口がふさがらなくなっちゃったけど、これは重症だよホントw

「秒速5センチメートル」で妄想を具現化するのは上手いが物語を形づくる才能はないと指摘したけど、それがそっくりそのまま表れちゃったかんじ・・。

何もかもが唐突すぎて、ここまで物語れないとはちょっと想定外だったな。

人物の内面と行動が乖離しっぱなしで、要は出てくる人物全員が自分の妄想から抜け出せないアフォどもばかりで見てて気持ち悪くなってくるばかりだし、伏線を書けないのねこの人って。小学生じゃないんだからさwこの脚本持ってこい!オレが直してやるからww

描きたい絵、描きたいキャラを数珠つなぎに繋げただけ、、ってただの妄想だろこれ・・。

で、ファンタジー世界でアスナに成長の跡が見られるかっていうと、ただ銃の撃ち方を覚えただけじゃないかっていう

女子中学生に銃の引き鉄を引かせるってのは最っ低な映画だよホント。

フォローのしようがないよ・・。マジでこの脚本持ってこいって話(笑)。

まずさ、アスナだけど、学級委員長の優等生が異世界アガルタをいとも簡単に受け入れ足を踏み入れていくためには相当な覚悟と動機が必要なわけで、そのためには“良い子を演じる孤独な少女像”を明確に印象づけなければならない。つまり現実では居場所がないということを納得させなければならない。最後の最後で「アタシ、、寂しかったんだ・・」とポツリと言われてももはや遅いのだ。

ここをしっかり描けていれば、アガルタに自分の居場所などもとよりないと吐き捨てるシンの心情とリンクしてくるわけで、話の幅は格段に広がる。

あるいはもう一度シュンと会えるかもしれないという思いを抱えてアガルタへ旅立つという見方もできなくはないけど、アスナにとっての喪失はシュンではなく父親の死の方がはるかにデカイはず。シュンなどはっきりいってどうでもいいのだw

その証拠に、地上の星を見たいがためにわざわざやって来て、その代償として命を亡くすシュンの死が、身投げのような絵と身元不明の少年の遺体が発見されたという電話だけで描かれるという味気なさでスルーされているではないか。

例えばそのときにアスナの目の前で世界に溶けて消えていくくらいの描写はあってよかったし、父親の形見である鉱石ラジオにクラヴィスのかけらが使われていたわけだから、それを見たシュンにクラヴィスとアガルタを結びつける説明をさせれば父親とアガルタに何らかの関係があったのかもしれない、つまりアガルタに行けばなにか父親について分かることがあるかもしれないとアスナに思わせる方が自然だろう。ただなんとなくモリサキに引っ付いていくのとはわけが違うのだ。

他にもいろいろツッコミどころはあるけど、推敲は大事なんだよ。だろ?新海。

分かったら次の脚本まずオレんとこに持ってこい(笑)!

Posted at 2012/01/10

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君の名は。

T0020640p1声の出演:神木隆之介、上白石萌音、長澤まさみ、市原悦子、成田凌、谷花音

監督・脚本:新海誠

(2016年・東宝・107分)盛岡フォーラム

内容:1000年ぶりにティアマト彗星が地球に接近する1か月前。岐阜県飛騨地方の糸守町に暮らす女子高生の三葉は、最近同級生から身に覚えのないオカシな言動を指摘されるが、そういう日は決まって東京の男子高校生になる夢を見ていた。一方、東京の男子高校生・瀧も、山奥の田舎町で女子高生になっている夢に悩まされていた。やがて2人は自分たちが実際入れ替わっていることに気付くのだが・・・。

評価★★★★★/100点

新海誠に長編は向かないし描けない。これは今までの5作品の拙レビュー(「言の葉の庭」は14番シアターでレビュー)で出した結論だった。

妄想力は図抜けてあるのに肝心の物語を生み出す力が図抜けて低い。

個人のモノローグだけで完結してしまうちっぽけな物語(いわゆるセカイ系)と、その閉鎖性を凌駕してしまうほどの圧倒的にリアルな背景画が描き出す厳然とある巨大な現実世界との不均衡を、シンガーソングライターのPVショーでフェティッシュな世界観に生まれ変わらせる。

これはどう考えても長編では心もとないレベルなのである。

しかし今回、その殻をものの見事に突き破った。

いや、そもそもジブリの妄想だけで映画を1本作れてしまう才の持ち主である。物語性の基本である起承転結とキャラクター造型に社交性を持たせれば大化けするのは必然だったともいえるわけで(笑)。

特に、今まで内にこもる根暗なこじらせ優等生を主要キャラに据えることが多かっただけに、今回の瀧と三葉のハジけたキャラ造型が果たした役割は非常に大きかったと思う。

ちょっと短気で三葉から目立つことはしないでと注意されるくらい行動派キャラな瀧のオッパイ揉み×2シーンだけ取ってみても今までの新海からは考えられない健全な進化だしw、閉鎖的な田舎町の暮らしに嫌気がさしている三葉が「こんな町イヤやー!早よ東京行きたーい!」と声に出して叫ぶのも今まではありえないことだった。

そしてこの感情の発露が共感にしろ反感にしろ他者とのつながりを生み出していく、その関係性の究極形が入れ替わりだと思うんだけど、まさに“結び”=“絆”というテーマを描き出すのに十分な説得力を有していたと思う。

まぁ、普通のことを普通の文法で語れるようになっただけともいえるけど、コメディタッチや物語のアップテンポな疾走感など、今まで新海が持ち合わせていなかった要素を組み込んだことで、恋しさと切なさだけが十八番だった新海節に心強さが加わって、こりゃ完全に篠原涼子の歌になっちゃった(笑)。

それは半分冗談としても確実な進化を遂げた作品になっていたと断言していいと思う。RADの曲も良かった♪

P.S. 映画公開半年後、事情があって岩手から東京に引っ越した。で、実際住んでみて、この映画で描かれている東京は、東京は東京でもド真ん中の東京のアイコン的風景なのだということがよく分かったwwあんな家賃の高い四谷なんて住めねーよ

そんな自分は隅田川沿いで質素に暮らしております。。

2017年12月31日 (日)

夢のシネマパラダイス161番シアター:才能vs狂気

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

A0212807_10131724出演:マイケル・キートン、ザック・ガリフィナーキス、エドワード・ノートン、エマ・ストーン、ナオミ・ワッツ

監督・脚本:アレハンドロ・G・イニャリトゥ

(2014年・アメリカ・120分)盛岡フォーラム

内容:かつて大ヒットしたヒーロー映画「バードマン」で主演したリーガンは、そのイメージを払拭できず、その後は鳴かず飛ばずの俳優人生を送っていた。そこで再起を期して、アカデミックな演劇でブロードウェイに打って出ようとするが、男優のひとりが事故に遭ってしまう。舞台に危機が迫る中、出演女優レスリーが代役として使えそうな俳優マイクを連れてくるが、そいつはトンだセクハラ男だった。さらにアシスタントに付けた娘サムも麻薬に溺れる始末で、いよいよリーガンは追い詰められていく・・・。

評価★★★★/80点

落ちぶれた大スターが過去の名声の幻影に憑りつかれて悲劇的な末路をたどるというのは「サンセット大通り」だし、そこにバックステージものを絡めるのは「スタア誕生」ということで、題材としては特に真新しいものではない。

また、役者の実キャリアに重ね合わせる皮肉ともいえる配役も前者におけるグロリア・スワンソンを想起させるんだけど、今作はバードマン=バットマンというこれ見よがしなセルフパロディにまで昇華したダブらせ方が強烈で、さらにレッテル貼りの批評家はたまたハリウッド流見せかけの血とアクション好きの観客である我々をもブラックにあざけり嗤う痛烈な脚本の引きつけ方はハンパない。

特に現実世界と劇中世界が行きつ戻りつし混濁していくプロットは大胆そのもの。しかも時間軸の超越を疑似ワンカット長回しで描いていくので、見ている方は混乱するばかりなんだけど、役者としての怨念や狂気のオーラさえ持ち合わせない主人公リーガンのただただ空回りしジタバタするだけで報われない虚しい内面に実にうまくフォーカスした表現方法だったと思う。

まぁ、リーガンが脚本・演出・主演を務めるだけあってレイモンド・カーヴァーの劇中劇にほとんど魅力が感じられないのが映画的には玉にキズな気がしたけど、これも計算の内だったらマジで恐い(笑)。

しかし、ファラ・フォーセットはマイケル・ジャクソンと同じ日に死んだためニュースにもならず運が悪かったとかシニカルを通り越してもはや猛毒だろww

ネットの日常化で消費サイクルが目まぐるしく変わっていく中で有名人がどんどん“あの人は今”にふるい落とされていく時代、パンツ一丁で街中を歩かなければダメなんて可哀想すぎるよね

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セッション

86dfce36cc2497990be7dc7b35aec976出演:マイルズ・テラー、J・K・シモンズ、ポール・ライザー、メリッサ・ブノワ、オースティン・ストウェル

監督・脚本:デイミアン・チャゼル

(2014年・アメリカ・107分)盛岡フォーラム

内容:名門のシェイファー音楽院に入学したニーマン。ある日、鬼のような練習で知られるフレッチャーの目に止まり、彼のバンドにスカウトされる。そこで成功すれば将来は約束されたも同然。偉大なドラマーになるという夢を持つニーマンは、血のにじむ練習に励む日々を送るが、フレッチャーの理不尽すぎる仕打ちにより精神的に追い詰められていく・・・。

評価★★★★☆/85点

自分が社会人1年目で入社した会社にフレッチャー(J・K・シモンズ)みたいな上司がいて、数年で耐えられずに辞めた。

仕事外の休憩時間などでは何の変哲もないミーハーな50代のオッサンにしか見えないのだがw、いざ仕事が始まるとスパルタな鬼畜に変ぼうを遂げる。まぁ職人気質といえばそれまでなんだけど、毎朝浴びせられる罵詈雑言の嵐にアンドリューのようにブチ切れることなく逃げ出して挫折の道を選んでしまった。

あれから10年以上経ったけど、今回この映画を見てその当時を思い出して息苦しくなってしまった

特に、アンドリューが交通事故に遭って血まみれのままステージに立った時に、一瞬動揺するそぶりを見せながらも気遣うことなく指揮を始めるところとかそういうかんじがめちゃめちゃ似てて、もうダメ・・

ただ先述したように、自分はその上司の前では何ら自己主張も口答えすることもなく、ただただ閉口して言われるがままになっていた。まさにヘビににらまれたカエル状態ww

しかし考えてみれば、自分にはアンドリューのような将来への野心もなければ理想も特にない学生気分の抜けないなんとなく生きている人間だったことは否定のしようがなく・・

それを思えば、どんなにフレッチャーから理不尽なしごきを受けても途中で投げ出さずにへこたれることなく、逆に破滅して早死にしたとしても世に名前を残したいという大いなる夢と、フレッチャーにつかみかかるまでの気概をみせるアンドリューの姿勢はスゴイとしかいいようがないし、そこまで打ち込めるものがあるというのも羨ましくさえ感じた。

天才は血のにじむような努力と多くのことを犠牲にする節制により生まれるというのはまさしく真なのだなと思い知らされたかんじ。

でも、恩師の導きがこんな憎悪むき出しの生き地獄なんて、そんな導き自分はいらない(笑)。

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ブラック・スワン

Black_swan_pos01 出演:ナタリー・ポートマン、ヴァンサン・カッセル、ミラ・クニス、バーバラ・ハーシー、ウィノナ・ライダー

監督:ダーレン・アロノフスキー

(2010年・アメリカ・108分)WOWOW

内容:NYのバレエ・カンパニーに所属するニナは、看板プリマだったべスの引退を受けて、新たに企画された「白鳥の湖」の新プリマに抜擢される。しかし、白鳥の湖では純真な白鳥役と同時に、官能的な魔性の黒鳥役も演じなければならず、優等生タイプのニナは、黒鳥をなかなか表現できないことに苦しむ。さらに、大胆不敵な踊りで監督のトーマスに理想的な黒鳥と言わしめたライバルダンサーのリリーの台頭により、二ナの歯車は狂い始めていく・・・。

評価★★★★/80点

真に圧倒される映画というのはそうそう巡り会えるものではない。だから映画を見つづけるのだともいえるけど、驚異的な映像美、斬新なシナリオ、胸に迫り来る音楽、監督の演出力など様々な要素がある中、役者の演技力に圧倒されるというのはさらに稀だ。

「復讐するは我にあり」の緒形拳、「明日の記憶」の渡辺謙、「ダークナイト」のヒース・レジャー、「フェイス・オフ」のニコラス・ケイジ&ジョン・トラボルタ、「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」のダニエル・デイ・ルイス、「ディア・ハンター」のクリストファー・ウォーケン、「パピヨン」のスティーブ・マックイーン、「レオン」のゲイリー・オールドマン、いろんな映画でのラッセル・クロウ、、、

また女優でいえば「疑惑」の桃井かおりや「ミザリー」のキャシー・ベイツ、いろんな映画での大竹しのぶなどが思い浮かぶけど、絞りにしぼり出してもこれしか出てこない(笑)。

が、今回ここに「ブラック・スワン」のナタリー・ポートマンが新たに加わった。

純潔を守るお行儀の良い少女と性に目覚めた自由奔放な女、その純真無垢な白と小悪魔的な黒のシンメトリーの境界をアザだらけの繊細な足先で右往左往し混乱していく様をものの見事に演じきった。

見る人によって様々な解釈ができようが、自分の中で抑えこんできた自我の覚醒と過保護な母親からの自立、すなわち少女から大人への脱皮と巣立ちの物語と自分は見たけど、白鳥から黒鳥へ変貌し悠々と羽ばたくクライマックスはまさに鳥肌もの。

狂気のダークサイドに完璧に堕ちてみせたナタリー・ポートマンに往年のベティ・デイビスはたまたグロリア・スワンソンのような誰にも真似のできないペルソナを見たといっても言いすぎではなかろう。

また、子役は脱皮できずに消えていくことがほとんどの生き馬の目を抜くハリウッドで、子役から生き残ってきたナタリーの女優人生と物語がシンクロしているのもポイントで、ナタリーの演技が真に迫ってくるゆえんになっている。

そういう意味ではこの役はナタリー以外にはありえなかったともいえるけど、例えばウィノナ・ライダーの使い方を見ても、かなり嗜虐的かつ絶妙なキャスティングになっている。そこにいるだけでなんだか恐いバーバラ・ハーシー、挑発的な色気を醸し出すミラ・クニスしかりだ。

そのようにみれば、これは監督と女優のエネルギーがぶつかり合って奇跡的なカタルシスを生み出した稀有な映画である。

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へルタースケルター

5484a78f1b39c293fcf7a87f4056055d 出演:沢尻エリカ、大森南朋、寺島しのぶ、綾野剛、水原希子、新井浩文、鈴木杏、寺島進、哀川翔、窪塚洋介、原田美枝子、桃井かおり

監督:蜷川実花

(2012年・日本・127分)WOWOW

内容:人気絶頂のトップ・モデル、りりこ。が、実は彼女には絶対に知られてはならない秘密があった。彼女の美しさは、事務所の社長とともに全身整形で作り上げたものだったのだ。しかし、手術の後遺症は確実にりりこの身体を蝕むとともに、芸能界のプレッシャーや若い後輩モデルの突き上げにより、次第にりりこは精神的にも追い詰められていく・・・。

評価★★/40点

もう長らくリアルタイムで新作を追うヒマがなくなり、WOWOWで話題作を見るのが精一杯な自分は自ずと見る映画をしぼってしまわざるをえない。

それゆえハズレ率はかぎりなくゼロにしたいわけだけど、どうしても年に2,3本は大ハズレにぶち当たってしまう。

そう、これである(笑)。

序盤から脱いじゃってる映画にロクなものはないというのは鉄則だけどw、いの一番に脱いじゃってるんだから、そりゃあハズレからハズレるわけないよなっていう・・・。

それはさておき、美を売る仕事のトップの座に登りつめたカリスマモデルが全身整形の後遺症と移り気の激しい世間の目から“見られなくなっていく”恐怖におびえ悩まされ精神を病んでいくというのは、スターの転落劇としては鉄板ものだろう。

しかし、繊細な内面のもろさや危うさがどこまでも虚無的にしか描かれないので、飾り立てられた外面に中身はカラッポな映画としか見れないのがイタい。

それが意図した演出なのかどうかは別として、写真家としてモデルとフォトセッションする機会も多いであろう蜷川実花がこんな程度でしか撮れない&語れないのだとしたら、映画監督としてのセンスはダサいとしか言いようがない。

唯一、りりこの後継の座に据わることになる後輩モデルに水原希子をもってきたことだけは見事だったけど・・。

沢尻エリカについては、りりこが彼女自身のキャラクターとシンクロするところもあり、実にタイムリーな企画だったとは思うけど、その熱演むなしく単なるさらし者にしか見えないのはなんとも皮肉だ。

この映画が復帰作として歩くスキャンダルという称号を払拭するどころか、ますます彼女を使いづらくしてしまった感がしてしまうのは自分だけだろうか。。女優としての資質はピカイチだし、役者根性は見上げたものだけど。

一本調子な演出しかできなかった監督のやらかしてしまった責任は、思っている以上に大きいと思う・・・。

2017年12月20日 (水)

夢のシネマパラダイス479番シアター:ハードボイルドは男の美学

アウトロー

Poster出演:トム・クルーズ、ロザムンド・パイク、リチャード・ジェンキンス、デヴィッド・オイェロウォ、ヴェルナー・ヘルツォーク、ロバート・デュバル

監督・脚本:クリストファー・マッカリー

(2012年・アメリカ・130分)WOWOW

内容:ピッツバーグで5人の男女が狙撃銃で殺害される無差別殺人事件が発生。現場に残された遺留品から、イラクに従軍していた陸軍狙撃兵ジェームズ・バーが容疑者として逮捕された。警察の取り調べに黙秘を続けるジェームズは、元米軍の秘密捜査官ジャック・リーチャーへの連絡を要求する。ところがその直後、ジェームズは護送中に他の囚人に襲われ意識不明の重体に。そんな中、ジャック・リーチャーがどこからともなく現われる・・・。

評価★★★☆/70点

顔と名前だけで客が呼べるハリウッドのドル箱スターシステムは00年代以降完全に廃れてしまったといっていい中で、いまだにミスターハリウッドであり続けるトム・クルーズは稀少な絶滅危惧種である王道スターだ。

それは言いかえれば演技力よりスターオーラの方が勝ってしまうタイプということができるけど、例えばキムタクがどんな役を演じようともキムタクにしかならないように、トムもどんな映画をやろうがトム・クルーズ映画にしかならない。

キューブリック、オリバー・ストーン、レッドフォード、スピルバーグ、ロン・ハワード、デパルマ、マイケル・マン、キャメロン・クロウ、JJエイブラムズetc..とこれだけ名の知れた大物作家や新進気鋭の監督と組んでもトム・クルーズというブランドイメージが消えないというのはある意味別格に凄いことだと思う。

しかも、そのブランドイメージはカジュアルでクリーンなものなので、ことさらスター気取りというクドさが感じられないのもトム・クルーズ特有の強みで、自己プロデュース能力に関しては天賦の才を持っているといっていい。それが長くハリウッドの顔であり続けられる理由なのだろう。見る側としてもトム・クルーズというキャラクターを承知の上でとりあえず見てみようという気になってしまうのだからw

しかし、そんな王道の中の王道スターがアウトロー役というのは本来なら相容れないキャラクターのはずで、例えばミッション・インポッシブルシリーズのイーサン・ハントのようなヒーローアクションのひな形とは真逆のアプローチがうまくフィットするのだろうかというイメージのしづらさはあった。

また、初の悪役を演じた「コラテラル」が映画としていまいちスッキリしなかったことも頭にあって、ハードボイルドはトム・クルーズにはどうなんだろうという不安もあった。

しかし、フタを開けてみれば一匹狼の元軍人という役柄は思った以上にフィットしていてよく出来ていたと思う。

これにはトムの魅力の他に話の作り方も大きく関与したといっていい。

アウトローというと、えてして復讐譚を軸とし、たった一人で法で裁かれない巨悪に立ち向かうのが定石なのだけど、この映画は“復讐”ではなく“正義”を軸とすることで、アウトローでありながらヒーローというありそうでなかったキャラクターを作り上げた。これだとトムの魅力を削がずにうまく合わせられることができるだろうし、ヒールに徹した「コラテラル」ほどの無理さもない。

実はこれは「シェーン」などの西部劇の作劇とほぼ同じだと思うのだけど、これを現代劇として当てはめたことが新鮮で面白かったと思う。大団円の採石場での決闘なんてイーストウッド西部劇に出てきそうなシチュエーションで面白かったし。

シリーズ化するにはやや地味めな気がするけど、もしその企画を通すのであれば、ジャック・リーチャーとは何者なのか、彼を真にアウトローたらしめている奥底にあるべき“喪失”を描かなければ意味がないと思う。そういう点で、それこそイーストウッドに監督させたら絶対に見たいと思わせる魅力はあるんだけどねw

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ジャック・リーチャー NEVER GO BACK

O0480064113796584990出演:トム・クルーズ、コビー・スマルダーズ、オルディス・ホッジ、ダニカ・ヤロシュ

監督:エドワード・ズウィック

(2016年・アメリカ・118分)WOWOW

内容:元陸軍内部調査部のエリート軍人で除隊後は流浪の旅を続けるジャック・リーチャー。ある日、かつての同僚スーザン・ターナー少佐を訪ねるが、彼女がスパイ容疑で逮捕されたことを知る。陰謀の可能性を察知したリーチャーは、陸軍基地から少佐の拘束を解き2人で逃亡するが・・。

評価★★★☆/70点

フォーマットとしてはリーアム・ニーソンの「96時間」。

さすらいの一匹狼的なハードボイルド感は薄まり、子連れ狼のファミリー感丸出しで前作の趣旨とはかけ離れてしまったかんじ。

が、従来から他を寄せ付けないオーラで単独で何でもやり遂げてきたオールマイティのトムに非力な女性を庇護するという足かせをつけたことで、相対的に不死身感が減殺されたのは格闘乱戦アクション主体の作品にあっては完全にプラス。

そっか、これは「96時間」というより「ターミネーター2」だということに気づいたw

しかも、15歳の思春期娘がトムの言うことを聞かなくて手を焼かせるものだからさぁ大変!って、これでホントに良かったのかトムさんw!?

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ダーティハリー

00000436165l 出演:クリント・イーストウッド、ハリー・ガーディノ、アンディ・ロビンソン

監督:ドン・シーゲル

(1971年・アメリカ・103分)NHK-BS

評価★★★/65点

内容:性格異常の殺人狂を追う刑事の冷酷非情な執念を描いた犯罪アクション。サンフランシスコのビルの屋上から一般市民が銃撃される事件が起きた。犯人は10万ドルを要求し、支払わなければ次の犠牲者を狙うと警察に通告する。殺人課の敏腕刑事ハリーは犯人を待ち伏せするが、激しい銃撃戦の末に犯人を取り逃がしてしまった。その後、犯人は14歳の少女を誘拐して20万ドルの身代金を要求。ハリーは20万ドルを手に、犯人の指定したマリーナへと向かった・・。

“44マグナムよりも女の素っ裸の方が多く出てきたと思ったのは、気のせいか・・・。”

なんか1870年代の西部劇を100年後のサンフランシスコにそのまま移し変えただけのようなかんじ。

1870年代だったら“ヒーロー”ハリーになっただろうが、100年経った現代アメリカ社会では“ダーティ”ハリーになっちゃうってことなのかな。

しかし、趣味で人殺しをする殺人鬼はハリー以上に法の限度を超越しとるやろ。法の掟などなんのそののハリーじゃないとどうにもならないのではないかな、とも思ってしまったのもたしかだ。。

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ブリット(1968年・アメリカ・114分)NHK-BS

 監督:ピーター・イェーツ

 出演:スティーヴ・マックイーン、ジャクリーン・ビセット、ロバート・ヴォーン、ロバート・デュバル

 内容:サンフランシスコの街に、仲間を裏切って200万ドルの金を持ち逃げしたシカゴのギャングが潜入した。ある裁判の証人としてこの男の証言を必要としている政治家チャルマースは、男の護衛を一匹狼の刑事ブリットに命じる。ところが、ブリットの油断から男が何者かに射殺されてしまった。ブリットは、男が生きているように見せかけて敵をおびき出そうとするが・・・。

評価★★★/65点

マックイーンといえば「大脱走」「パピヨン」「ゲッタウェイ」において逃走の美学を自由気ままに体現したイメージが強いけど、今作における追走の美学を体現した硬派なマックイーンもめちゃくちゃ良い。

タートルネックをあんなにカッコ良く着こなす男をマックイーン以外に自分は知らない。

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夜の大捜査線(1967年・アメリカ・109分)NHK-BS

 監督:ノーマン・ジュイソン

 出演:シドニー・ポワチエ、ロッド・スタイガー、ウォーレン・オーツ

 内容:ミシシッピーの田舎町。パトロールの警官が路上に殺人死体を発見。捜査が開始され、駅で張り込み中の警官が列車を待っていた黒人を容疑者として連行してくる。ところが、その黒人はフィラデルフィア警察殺人課の敏腕刑事ティッブスで、故郷の母を訪ねた帰途であった。殺人事件を扱ったことのない署長のギレスビーは、ベテランのティッブスに協力を求めたいと思ったが、人種偏見の強い土地柄、彼自身も黒人に頭を下げる気にはなれずにいた・・。

評価★★★★/75点

道なき道を切り拓いてきたポワチエその人から発せられるオーラと佇まいがそのままティッブスにのり移っているのも凄みがあるが、ガムを噛みながらコーラを飲むロッド・スタイガーの田舎の頑固なオッサン臭にも凄いものがある。

好対照な2人の見事なブレンド!

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刑事ジョン・ブック/目撃者(1985年・アメリカ・113分)NHK-BS

 監督:ピーター・ウィアー

 出演:ハリソン・フォード、ケリー・マクギリス、ルーカス・ハース、ダニー・グローバー

 内容:独自のコミュニティを作り、信仰のもと簡素な生活を送るアーミッシュの少年サミュエルは、殺人事件を目撃してしまう。刑事ジョン・ブックは捜査への協力を依頼するが、サミュエルの母親は他者との関わりを恐れて協力を拒もうとする。ところが、ようやくサミュエルが明かした犯人は警察の麻薬課長で、真相を知ったブックは母子とともに命を狙われてしまう・・・。

評価★★★★/75点

本当の題名は「刑事ジョン・ブック/のぞき見男」だと思うんだけど・・(笑)。

それはさておき、M・ナイト・シャマランの「ヴィレッジ」(2004)に出てきそうなアーミッシュの人々。黒服を着た彼らは、まるで西部開拓時代の「大草原の小さな家」に出てきそうな人々なんだけど、現代文明の中では奇異に映るその姿からは変な新興宗教をも想起させる。

しかし、その創始は17世紀のスイスにあるんだそうで。その後、弾圧を受けた彼らはアメリカに移住し、そこで自給自足の生活を営み、アメリカに入植した18世紀そのままの生活様式を守っているという。

しかも厳格な聖書解釈に基づき、あらゆる文明機器を使用せず、投票や徴兵などアメリカ国民の権利や義務さえ拒否しているというんだから徹底してるわな。

しかし、そんな禁欲社会にカッコいいバリバリの白人男がやって来たら、という異文化コミュニケーションがこのての刑事ドラマにしてはかなりしっかり描かれていて好印象だし、ちとエロイのも良いww

見てはいけないものを見てしまった、知ってはいけないことを知ってしまったという人間心理をくすぐる構成が大人の恋愛劇と絡めて上手くまとめられていてなかなかに偏差値は高い映画だと思うな。

ケリー・マクギリス、、イイです

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ヒート(1995年・アメリカ・171分)仙台第1東宝

 監督・脚本:マイケル・マン

 出演:アル・パチーノ、ロバート・デ・ニーロ、バル・キルマー、ジョン・ボイト、トム・サイズモア

 内容:ロサンゼルスの犯罪組織のボス、ニール・マッコーリー(デ・ニーロ)は、クリス(バル・キルマー)、チェリト(サイズモア)らと現金輸送車を襲い有価証券を強奪。捜査にあたるロス市警の敏腕刑事ヴィンセント(パチーノ)は、少ない手がかりから次第にマッコーリーたちへ近づいていく・・・。12分間に及ぶ市街での銃撃戦は映画史に残るド迫力。

評価★★★☆/70点

“敵”と書いて“とも”と呼ぶ。そんな漢(おとこ)映画!

まぁ、古臭いっちゃあ古臭いんだけど・・。しかも下手するとただの傷の舐め合い、いや馴れ合いでっせ。

しかし、そこはさすがのロバート・デニパチーノ。なんとか見れたけど。

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フレンチ・コネクション

Lbfawpzu出演:ジーン・ハックマン、フェルナンド・レイ、ロイ・シャイダー

監督:ウィリアム・フリードキン

(1971年・アメリカ・105分)NHK-BS

内容:NY市警の実在の2人の刑事の活躍を描いたノンフィクションをもとにしたポリスアクション。NYのブルックリンでジミー・ドイルとバディ・ロッソの2人の刑事は、麻薬の密輸ルートを追求していたが、ドイルはこの仕事に深く関与するにつれて命を狙われるようになる。やがて2人は張り込み中のチンピラが事業家を装ってマルセイユからやって来た中年紳士シェルニエと接触するところを突き止め、尾行を開始。そしてフレンチ・コネクションと呼ばれる大犯罪組織の解明に乗り出していくのだが・・・。アカデミー賞で作品・監督賞など5部門で受賞した。

評価★★★★/75点

“地獄の果てまで追いかける!!”

たとえ世の子供たちに夢を与えるサンタクロースになろうとも、その足で、その執念で、その野蛮な目つきで、その獰猛な嗅覚で、とにかく走って走って走りまくって犯人たちを執拗に追いつめていく。

ポパイことジミー・ドイルに追っかけられたらもう最後。車に乗ろうが電車に乗ろうが金をいくら積もうが逃げつく先に待つのは地獄の門番ジミー・ドイルその人なのだから。

問答無用の存在にしばし言葉も出ず・・。

2017年10月17日 (火)

夢のシネマパラダイス528番シアター:ダンケルク~戦争がもたらす運命~

ダンケルク

Dunkirk_visual出演:フィオン・ホワイトヘッド、トム・グリーン=カーニー、ハリー・スタイルズ、ケネス・ブラナー、キリアン・マーフィ、マーク・ライランス、トム・ハーディ

監督・脚本:クリストファー・ノーラン

(2017年・英/米/仏・106分)東宝シネマズ日本橋

内容:第二次世界大戦が激化する1940年、フランス北端の港町ダンケルク。ドイツ軍に圧倒された英仏連合軍40万の兵士たちは、ドーバー海峡を望むこの地に追い詰められた。逃げ場のない状況下、対岸のイギリスでは軍艦だけでなく民間船まで動員する救出作戦を決行する・・・。

評価★★★☆/70点 

つくづくこの人は一筋縄ではいかない監督さんなんだなぁと痛感。。

そのフィルモグラフィーにおいて、時間軸の解体と再構成を生業とし、「インセプション」や「インターステラー」に至っては空間軸をも自由自在に操ることで時空超越映画を極めたといっても過言ではないクリストファー・ノーラン。

その中で、次なるステージに選んだのが古典的な戦争映画というのは意外だったけど、まさかここでも飽きもせずに時制トリックを使ってくるとは予想外だった。

しかして、物語性を徹底的に排除し匿名性を強調することで、あるのは生か死かという究極の運命しかない戦争の過酷さを捉えることには成功しているものの、今までの作品のような時制の交錯が生み出すカタルシスがほとんどないという点で今回の話法は正直イマイチだったかな・・。

まぁ、CGデジタル全力拒否の本物にこだわった映像力と相殺してこの点数なので、見応えは十二分にあったことは確かだけど。

ただ、これも「プライベート・ライアン」冒頭20分の衝撃を超えるには及ばず・・。

究極の映像体験という宣伝文句ほどの新味は感じられなかったし、それ以前に40万もの兵士を助けるのに救出に向かう船がチラホラとしか見えなかったり、海岸線に埋めつくされてる兵士たちが次のシーンではチラホラとしか見えなかったり、まるでフィラデルフィアエクスペリメントな神隠し状態に少し冷めちゃったところもw

ただ、どんな形であれ生を肯定するラストは良かった。

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男たちの大和 YAMATO(2005年・東映・145分)2005/12/29・MOVIX仙台

 監督:佐藤純彌

 出演:反町隆史、中村獅童、鈴木京香、松山ケンイチ、仲代達矢

 内容:昭和20年4月、乗組員3千余名を乗せた世界最大級を誇る戦艦大和は沖縄へと向かう途中、米軍による集中爆撃により東シナ海の深海へと沈んでいった・・・。2005年4月、鹿児島県枕崎の漁港。老漁師の神尾のもとを内田真貴子と名乗る女性が訪ね、60年前に沈んだ戦艦大和が眠る場所まで船を出してほしいと懇願する。彼女が大和の乗組員・内田二兵曹の娘と知った神尾は、漁船を目的の場所へと走らせるのだった。。

評価★★/40点

“良くも悪くも角川映画の悪癖から抜け出せず・・・。”

唯一、戦艦大和を派手にブッ壊したいという意気込みだけは伝わってきたが、大雑把にすぎるツギハギな物語を安っぽい人情でなんとかくっつけるさまは、もはや過去の遺物としかみれない。

戦争でもまるで意味のない特攻のごとく捨てられ、映画でも捨て駒のように捨てられ、、二重の意味で大和が捨てられてしまった気がしてあまり良い気分になれない。

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戦場のメリークリスマス

075202 出演:デイヴィッド・ボウイ、坂本龍一、トム・コンティ、ビートたけし、ジョニー大倉

監督・脚本:大島渚

(1983年・日/英・123分)NHK-BS

評価★★/45点

 

内容:1942年、ジャワ島の日本軍捕虜収容所の所長ヨノイ大尉は、バタビアの軍法会議にかけられていた英国陸軍少佐セリアズになぜか心惹かれるものを感じ、自分の収容所へ連れてくる。セリアズを特別扱いするヨノイのことを、軍曹のハラはいぶかしがるが、そういうハラも日本語を流暢に操る英軍中佐ローレンスと親しくしていた。しかし、セリアズは捕虜たちの待遇改善を訴えて、ヨノイに反抗を始める。。

“黒澤明が言うところの、映画が映画でしか表現できない一瞬を獲得したときに「映画になる」という言い方がその通りであるならば、この作品はれっきとした「映画」だろう。だが、しかし・・・”

だが、しかし、、その一瞬一瞬が、狂気や殺気や色気がとめどなく錯綜する物語の中で、また日本人の西欧に対する倒錯した感情がえぐり出されるこの作品の大きな流れの中で見る者にしっかりと語りかけてこなければ何も意味がないと思う。

この作品は、この点において絶対的に弱い。はっきりいって映画としてのレベルは相当に低いと言わざるをえないと思う。

「映画になった」瞬間は数多くあれど、それらはまるでまばらに明滅する蛍の光のようにはかなく消え入ってしまう。

たしかにそれはそれで美しいのだが、しかし後に残るのは不毛な青白き闇の空虚と坂本龍一の音楽のみ。

はたしてその空虚は、日本人と西欧との間に横たわる観念や思想の違いからくる決定的なディスコミュニケーションの空虚なのか、それともこの作品の力量不足なのか・・・。

いずれにしろ、自分はその空虚に耐え切ることができるだけの魅力をとうとうこの映画から感じ取ることができなかったようだ。

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フルメタル・ジャケット

Fullmetaljacket 出演:マシュー・モディン、アダム・ボールドウィン、ヴィンセント・ドノフリオ

監督:スタンリー・キューブリック

(1987年・アメリカ・116分)NHK-BS

評価★★★★/80点

 

内容:サウスカロライナの海兵隊新兵訓練基地では、ベトナムの前線に向けて、8週間に及ぶ地獄の特訓が始まっていた。鬼教官ハートマンのしごきにより、精神に異常を来たしたパイルは、ハートマンを射殺して自殺する。1968年、報道隊員となったジョーカーは、ベトナム最前線のフエ市で訓練仲間と再会し、百戦錬磨の兵士たちと銃火の真っ只中で行動を共にするが・・・。

“悲しみが皆無な戦争映画というのは後にも先にもおそらくこれ1本きりだろう。見ている最中ノドがカラカラになってくる・・・。”

今までこの手の戦争映画には、小さじ1杯ほどでも道徳や正義や倫理が少なからず織り込まれていたし、それらが麻痺し喪失していくのは戦争の狂気がそうさせるのだという言説が常に描かれてきた。

そしてそこに通底するものは、悲劇であり悲しみであった。

しかし、キューブリックによる本作は、それらの要素や言説をことごとく徹底的に排除し、戦争の狂気を作り出す張本人は人間なのだというごくごく当たり前のことを胸くそが悪くなるくらいまで徹底的にえぐり出していく。

特に若者たちを虫ケラのごとき殺人兵器に変えていく新兵訓練基地での非情な地獄の日々を描いた前半部分は強烈だ。

発狂して自殺する新兵パイル(ヴィンセント・ドノフリオ)の狂った目が脳裏に焼きついて離れない・・。

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グローリー(1989年・アメリカ・122分)WOWOW

 監督:エドワード・ズウィック

 出演:マシュー・ブロデリック、デンゼル・ワシントン、モーガン・フリーマン

 内容:南北戦争期、アメリカ史上初めて組織された北軍黒人部隊。彼らは南部からの脱走奴隷だったが、指揮官に着任した若き白人大佐ショーは彼らの誇りと熱気を感じる。そして、雌雄を決するフォートワグナーの戦いに臨むのだった・・・。

評価★★★/65点

D・ワシントン&モーガン・フリーマンの魂を震わす熱演がなかったら、若きマシューが人間を撃ち殺したくてウズウズしまくっている若い衆をなんとかなだめすかすただのナヨナヨ優男にしか見えないところだった。

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ジョニーは戦場へ行った(1971年・アメリカ・112分)NHK-BS

 監督・脚本:ダルトン・トランボ

 出演:ティモシー・ボトムズ、キャシー・フィールズ、ドナルド・サザーランド

 内容:青年兵士のジョーは、耳も目もあごも失い、手足ももがれて野戦病院のベッドに横たわっていた。すでに彼の肉体はただの物体の塊と化していたが、ジョーの意識は少しずつ自分の今の有り様を知覚していく。やがてモールス信号を思い出したジョーは、首を振ることで軍医や看護婦たちに死なせてくれと訴えるのだった・・・。第一次世界大戦を題材にした反戦的な内容で、1938年の発表当時、発禁処分となったダルトン・トランボの小説を、赤狩りによるハリウッド追放を乗り越えて自らが監督した反戦映画。

評価★★★☆/70点

“戦慄のホラー無間地獄体験”

自ら祖国のために勇んで戦争へ志願していった代償。

顔中が吹き飛ばされ、耳も聞こえず口もきけず目も見えず、両手両足、視覚・触覚すべての感覚を失ってしまった、胸と下腹部と陥没した頭だけの生ける肉の塊。

江戸川乱歩の「芋虫」と似たようなかんじなのだが、おどろおどろしさに包まれた怪奇に満ちたホラーに、まるで悪夢の中で彷徨うような得体の知れない胸クソ悪さに支配されてしまう。

反戦とか戦争批判うんぬんというよりも、はっきりいってホラーとしか見れないよねこれは。。

戦争による祖国のための名誉で甘美な死なんてものはないんだ、そんなのはまやかしなんだ!ということは十二分に伝わってくることは確かだけど、それ以上に生々しさとかおどろおどろしさ、まがまがしさの方が先に立って読後感は非常に悪いし、なんか吐きそう・・・

ホント、S...O...S...Help..me..

地獄です、これが本当の・・。

戦争やってイイことなんてひとっつもないんだ。得するのはお偉方だけなのさ。

そういえば、9.11テロを題材に11人の監督がそれぞれの視点で撮ったオムニバス映画「セプテンバー11」で今村昌平は、人間であることをやめて“ヘビ”になってしまった復員兵の姿を映し出したのが思い出される。

戦争の後遺症は人間を人間たらしめる要素さえ殺してしまう、、なんと恐ろしいことなのだろうか。

ジョニーは想像力まで封印されてしまった、その無間地獄に背筋が思わず震えてしまう・・。

2017年9月 3日 (日)

夢のシネマパラダイス107番シアター:グランド・イリュージョン

グランド・イリュージョン

137147623826513231593出演:ジェシー・アイゼンバーグ、マーク・ラファロ、ウディ・ハレルソン、メラニー・ロラン、マイケル・ケイン、モーガン・フリーマン

監督:ルイ・ルテリエ

(2013年・仏/米・116分)WOWOW

 

内容:ラスベガスのマジックショーで、“フォー・ホースメン”を名乗る4人組のスーパー・イリュージョニスト・チームが、一瞬にして遠く離れたパリの銀行から320万ユーロを奪って客席にばら撒くというド派手なイリュージョンを披露する。その直後、FBIとインターポールは強盗容疑で取り調べるが、証拠不十分のまま釈放となる。そこで捜査チームは、マジックの種明かしで大金を稼いでいる元マジシャンのサディアスに協力を要請するが・・・。

評価★★★/60点

分かりやすい邦題の付け方といい、オープニングのカードマジックといい、つかみは完璧だったのだけど、前のめりになって見れたのは冒頭の銀行襲撃マジックまでだけで、中盤以降は尻すぼみ。それこそ「ユージュアル・サスぺクツ」みたいなアッと驚くどんでん返しや仕掛けを見たかったんだけど、そこまでは及ばなかったなぁ。。

そもそも映画それ自体の醍醐味に映像マジックを駆使したイリュージョン的要素があるのだから、ストーリーの面でもっと伏線を効果的に使ったトリックを見せてもらいたかった。

まぁ普通にクライムサスペンスとして見れば楽しめるのだけど、マジックを扱った映画としての爽快感はほとんど得られなかったかんじ・・・。

マジックのネタばらしをいちいち懇切丁寧に示さない方が興味が持続してよかった気もするけど、それは反則かw

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グランド・イリュージョン 見破られたトリック(2016年・アメリカ・129分)WOWOW 

 監督:ジョン・M・チュウ

 出演:ジェシー・アイゼンバーグ、マーク・ラファロ、ウディ・ハレルソン、ダニエル・ラドクリフ、マイケル・ケイン、モーガン・フリーマン

 内容:前回のミッションから1年後のニューヨーク。大手IT企業オクタ社が発売する携帯電話に個人情報を抜き取る仕組みが施されている不正を暴露するために、“フォー・ホースメン”が再集結することに。ところが、新たなショーを仕掛けたホースメンの作戦はすでに何者かに見破られていて、彼らは逃亡を余儀なくされてしまう。しかも会場から逃走用トラックに繋がるはずの脱出用シューターに飛び込んで出た先は中国のマカオだった・・・。

評価★★☆/50点

豪華キャストでキャラ立ちも良くてトントン拍子に話も進んで、、なのになんで眠くなっちゃうんだろう。。

あっ、困った時の催眠術ネタが多すぎるせいだ。しかも強力ww

うーん、ミッションインポッシブル感と誰も殺さない作劇は魅力的なはずなんだけど、1作目にあったハッタリをかます大風呂敷感がなくてイマイチ乗り切れないんだよね。

マジックもCG映像が強すぎて面白くないし、裏の裏をかいていくオチのつけ方も後付け感が強くて表面的だし。まぁ、結局頭の固いオッサンはアナログなカードマジックが1番心躍ったってことなんだけど、、それじゃダメじゃん。

各要素だけみれば面白くならないはずはないのに、飽きずに見れるってだけではあまりにも勿体ないので評価厳しめ。。

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プレステージ

P0001690 出演:ヒュー・ジャックマン、クリスチャン・ベール、マイケル・ケイン、スカーレット・ヨハンソン、デヴィッド・ボウイ

監督:クリストファー・ノーラン

(2006年・アメリカ・130分)DVD

評価★★★★/75点

 

内容:19世紀末のロンドン。マジシャンとして華麗かつ洗練されたパフォーマンスを見せる“グレート・ダントン”ことロバート・アンジャーと、天才的なトリックメイカー、“ザ・プロフェッサー”ことアルフレッド・ボーデン。良きライバル関係にあった2人は、アンジャーの妻が脱出マジックに失敗して命を落とした事件をきっかけに、激しい確執の渦に取りつかれていく・・・。

“Mr.マリックの超魔術を見ていたら、途中からマギー司郎のマジックに変わってしまったトンでも作w!しかもオチはSFかよっ。”

本来マジックでは「タネも仕掛けもございません」とアピールするのが普通だけど、この映画はマギー司郎が開口一番「ここに手品用のハンカチがあります」とタネをあえて強調して進行するのと同様の展開に急旋回していく。

まぁ、そういう点では、映画の中で何度も強調された1.PLEDGE(プレッジ・確認)、2.TURN(ターン・回転)、3.PRESTIGE(プレステージ・偉業)という3つのステップはしっかり踏襲しているとはいえるんだけど。

ただそのタネが“双子”と“クローン人間製造機”って、、人を小バカにするのもいい加減にせえやっ(笑)!とも言いたくもなるわなぁ。。

ただ、素人でもタネが予想できるような伏線をこれでもかと強調して繰り出してくる中で、いや、でも待てよ、そんな人を喰ったようなオチであるはずがないという疑念も湧いてきたりしてw、実はもっと凄いオチが待ち受けてるのかと、なにげに緊張感ありまくりで見れてしまったし。

まぁ結局はそのまんまのオチだったわけだけど、監督が「メメント」(2000)のクリストファー・ノーランということもあって、人を小バカにしたようなダマシのテクニックに対する耐性があったのと、人間としての倫理を超越するまでにエスカレートしていくアンジャー(ヒュー・。ジャックマン)とボーデン(クリスチャン・ベール)の意地の張り合い合戦、そしてそれを演じた2人の印象的な演技に引き込まれ、予想通りのラストにもかえって爽快感を満喫できてしまった。

まぁ、マジックそのもののタネはフザケてるけど、映画としてはまぁまぁよく出来た作品だったんじゃないかな。

ただ、他人に薦められるかというと、かなり勇気がいるかもww

自分は、胸の内にとどめておくだけにしときます・・・。

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姑獲烏の夏

Ubumenonatsu 出演:堤真一、永瀬正敏、阿部寛、宮迫博之、原田知世、田中麗奈

監督:実相寺昭雄

(2005年・日本・123分)2005/07/09・九段会館

内容:昭和27年夏、東京の鬼子母神。巷では産婦人科、久遠寺医院にまつわる不気味な噂が広まっていた。それは、院長の娘が20ヶ月間も身ごもったままで、彼女の夫も1年半前から失踪したというもの。この事件を取材することになった小説家の関口は、憑き物落としの顔を持つ古書店主・京極堂こと中禅寺秋彦に相談をもちかける。やがて、事件は私立探偵・榎木津やその幼なじみの刑事・木場らをも巻き込んでいき・・・。

評価★☆/30点

上田ァ、お前一体何やってるんだ、エッ?榎木津?

お前、憑き物スジに、、バカ!上田っ、戻って来い。

え?貧乳だからもうイヤだって?そういうお前は巨根だろうが・・。

うぅ、、オイラの脳が勝手に作り出したバーチャルな世界で山田奈緒子が暴れ回っている。。

1人2役で墓穴を掘っている原田知世を見て、「トリック」の仲間由紀恵が恋しくてたまらなくなってしまったのですた・・・。

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魍魎の匣(2007年・日本・133分)WOWOW

 監督・脚本:原田眞人

 出演:堤真一、阿部寛、椎名桔平、宮迫博之、田中麗奈、黒木瞳

 内容:1952年東京。少女バラバラ連続殺人事件が世間を騒がせる中、探偵・榎木津は、元映画女優の柚木陽子から失踪した娘の捜索を依頼される。一方、作家の関口と若手記者・中禅寺敦子は、不幸をハコに封じ込めるという宗教教団を追っていた。さらに、刑事・木場は巨大なハコ型の医学研究所の謎に迫っていて・・・。やがて難解な3つの事件は、敦子の兄である京極堂のもとへと持ち込まれることになる。

評価★★☆/45点

原作を読んだことがない自分にとってはチンプンカンプンで、あげくの果てには大友克洋の「スチームボーイ」になっちゃうSFチックな展開にもはやついて行くことができず・・・。

江戸川乱歩のような、なまめかしくも生々しいエログロのアブナイ世界がお目見えするかと思いきや、ただグロイだけだったし。

一筋縄ではいかないキャラクターの人物造型や、戦後間もない東京の舞台装置など、細部にいたるこだわりはみっしり詰まっている映画ではあるのだけども。。個人的にはどうもダメだった。

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TRICK トリック劇場版(2002年・東宝・119分)品川プリンス

 監督:堤幸彦

 出演:仲間由紀恵、阿部寛、生瀬勝久、野際陽子、伊武雅刀、竹中直人、ベンガル、石橋蓮司

 内容:自称売れっ子天才奇術師・奈緒子は、300年に一度、大きな災いが襲うといわれている糸節村の村人から、不安を取り除くため神を演じてほしいとの依頼を受ける。彼女が村を訪れてみると、そこには3人の自称神さまがいた。そして不可思議な現象も次々と起こり、奈緒子と物理学者・上田は翻弄されていく・・・。

評価★★★/60点

どおきマ うによツ かづくチ んかとし がちえて えひいい てろがな ものがい。くわっぱ!

映画に出てきた暗号文で感想を書いてみますた。。ヒマなヤツ・・

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TRICK トリック劇場版2

Mo4096_f1 出演:仲間由紀恵、阿部寛、生瀬勝久、野際陽子、片平なぎさ、堀北真希、平岡祐太

監督:堤幸彦

(2006年・東宝・111分)盛岡東宝

内容:関東沖合に浮かぶ小さな島、筐神島。山の頂上には巨大な岩がチョコンと乗っている。それはこの島を支配する霊能力者・筐神佐和子がたった一人で一晩のうちに持ち上げたものだという。そんなある日、上田のもとに青沼という青年がやって来て、10年前に佐和子に連れ去られた幼なじみの美沙子を連れ戻してほしいと依頼する。上田はいつものように奈緒子を巻き込み、2人はゴムボートで島へと乗り込むのだったが・・・。

評価★★★/60点

終始ニヤニヤしながら見てしまったが、見終わって出た連れの最初の言葉は、「こんなんTVでやれ!」だった・・。たしかに。

そもそもTVドラマよりもかえってスケールダウンしていかねないものをわざわざ金払って見に行くというのは、TVシリーズから熱心に見続けてきたコアな視聴者か、堀北真希ファンクラブの会員くらいなもので、そういうコアなファンに送られた小ネタ満載のファン感謝祭。それが今回の作品だと思うんだよね。

「幸福の黄色いハンカチ」(1977)からONE PIECEに至るまで小ネタとノリツッコミだけでストーリーを展開させているんだから恐れ入る。

ミステリー?んなもんどうでもええのよ(笑)。飾りつけ程度で。おいおい。。

でもまさかジャック・マイヨールまで出してくるとは思わなかったけど。

片平なぎさの白手袋ネタはベタとしても、完全にこれは自己満足を満たすためだけの映画です。恐れ入りますた。

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