夢のシネマパラダイス589番シアター:ラ・ラ・ランド
ラ・ラ・ランド
出演:ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、ジョン・レジェンド、ローズマリー・デウィット、J・K・シモンズ
監督・脚本:デイミアン・チャゼル
(2016年・アメリカ・128分)東宝シネマズ日本橋
内容:ロサンゼルス。女優を目指すミアは、映画スタジオのカフェで働きながらオーディションを受けるも、なかなか役にありつけない。そんなある日、彼女は場末のバーでピアノを弾いているセバスチャンと出会う。彼も自分の店を持ってジャズを演奏するという夢を持っていた。そして2人はいつしか恋に落ち、互いに夢に向かって奮闘していくのだが・・・。
評価★★★★★/90点
取っつきにくいジャズよりもケニーGやそれこそザ・メッセンジャーズの音の方を大いに好む自分にとって、あんなのニセモノだし不本意だというセブのディスりは耳が痛くなった。。
いや、待て。じゃあアンタはホンモノを聴かせてくれるのか!?80年代ポップスまで揶揄しやがってー!
で、肝心のセブが言うところの本物のジャズが流れるのは、意外にもセブがミアを連れて訪れるジャズバーで演奏されている“ハーマンズ・ハビット”くらいなもので、ジャズピアニストとしてのセブの本気というか本領発揮はついぞ見ることができなかったというオチ(笑)
本物のジャズというのはセブがミアに力説したところから推測するに、個人技のぶつかり合いによる即興性のあるジャムセッション的なものだと思ったんだけど、ライアン・ゴズリングにそこまでの演技パフォを課すのは酷だったのか、そういうシーンがこれっぽちも出てこないんだよね。逆に嫌々やってるバンドシーンの方が記憶に残るというw
さらに、ミュージカルシーン含めた音楽もジャズを基調としながらもかなりマイルドテイストにアレンジされていて、もはやイージーリスニングの域。
でも、その裾野の広さがミーハー初心者な自分の琴線にものの見事に響いて虜になってしまうという逆説は、もうこれは監督の確信犯なのだろう。
「セッション」(2014)の時は思わなかったけど、今回は「ラ・ラ・ランド」を入口にジャズをもっと聴いてみたいと思わせられたし。なにせサントラまで買っちゃったんだから。。
あと感じたのは、ミュージカルシーンが意外に少ないなという印象。
大渋滞のLAの高速道路上で繰り広げられるオープニングのモブシーンミュージカルでガツンとインパクトを与えた後は、オーケストラから徐々にシンプルなピアノ演奏に変わっていく。そして最後はミアの力強いボーカルを主旋律とする“オーディション”(レミゼで5分に満たないパフォーマンスだけでアカデミー助演女優賞をかっさらったアン・ハサウェイのようにエマ・ストーンの受賞を決めた1曲)で締めるという、よりパーソナルなものに落とし込んでいく意図が感じられる。
なんだけど、モブシーンしかり幻想的なマジックアワーのハリウッドヒルズでミアとセブが文字通り心を弾ませる“ア・ラヴリー・ナイト”のアステア&ロジャースを彷彿とさせるダンスシーンしかり、それぞれ1曲かぎりで打ち止めなんだよね。
欲張りな自分はもう数シーン加えてもよかったのではという気持ちになったけど、捨て曲一切なしのクオリティと、四季ごとに章立ててミアとセブのドラマとシンクロさせる構成が間延び感をなくしたことで、終わってみれば腹八分目の非常にバランスの取れた作品になっていたと思う。
考えてみればミュージカル映画って、ミュージカルシーンが多いと満腹すぎて胸焼け起こすんだよねwそれ思うと少々物足りないくらいがちょうどいいのかも。
ラストに関しても、ミアのバイト先のカフェの前が「カサブランカ」に使われた建物という印象的なセリフがあったり、ミアの部屋にイングリッド・バーグマンのポスターが貼られていたり、あからさまなカサブランカ推しがあったので、ラスト見て完全にこれはカサブランカのオマージュなんだなと思って納得。
とにもかくにも映画見てこんな幸せな気分に浸れたのは久しぶりだ。
ヤバイ、、ほんとにジャズバー行ってみたくなってきた・・w
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レ・ミゼラブル
出演:ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ、アン・ハサウェイ、アマンダ・セイフライド、エディ・レッドメイン、ヘレナ・ボナム=カーター、サシャ・バロン・コーエン
監督:トム・フーパー
(2012年・イギリス・158分)DVD
内容:19世紀フランス。妹の子供のためにひと切れのパンを盗んだ罪で19年獄中生活を送ったジャン・バルジャン。出獄した彼は施しを与えてくれた村の司教から銀の燭台を盗んでしまうが、司教がかばってくれたことで良心を取り戻し、真人間になることを誓う。そしてマドレーヌと名前を変えながらも市長にまで上りつめる。しかし、法に忠誠を誓うジャベール警部の執拗な追跡に逃亡を余儀なくされ、パリで身を隠しながら養女コゼットと暮らし始める。その一方、パリでは学生運動の嵐が吹き荒れていた・・・。
評価★★★/60点
今までめぼしいミュージカル映画は見てきたつもりだけど、全てのセリフをミュージカルで通すオペラ調の映画は初めて見た気がする。
で、これが自分にはちょっと合わなかったなと。
登場人物の感情の高ぶりや物語の重要な場面展開などポイント×2で歌いだすことに見慣れていた自分にとっては、ドラマと歌が常に一体となった今回のつくりは抑揚がなくてイマイチ乗り切れなかったし、妙に疲れた
まるで役者たちの生歌のど自慢大会を見に行った趣だったけど、物語の方もすごい駆け足で、なんか底が浅いというか。。非ミュージカルだった98年公開のレミゼの方がじっくり見れる余裕があったと思う。
で、レミゼは何度も映画化されているほど誰もが知っている古典中の古典なのだから、物語構成の焦点を大胆に絞ってもよかった気がする。
具体的にはコゼット、マリウス、エポニーヌを主体とする市民革命の盛り上がりを軸にして、ジャン・バルジャンの過去やジャベールとの確執を回想シーンなどを使って複合的に組み合わせていく方が、全編歌づくしには合っていたと思う。
でも、唯一この映画を見た価値があったのが、ファンテーヌ役のアン・ハサウェイだ。登場シーンは15分にも満たないものだったけど、幼い娘を育てるため髪を切って売り、歯を抜いて売り、娼婦にまで身をやつす結核に冒された極貧のシングルマザーを鬼気迫る演技で体現。絶望に打ちひしがれながら歌う“夢やぶれて”には思わず涙
この1曲だけでアカデミー賞獲ったようなものだけど、大納得した。
あと、ラストのジャン・バルジャンの死の間際に彼を神のみもとに誘う聖女として出てきた時の穢れのない神々しさにも息を飲んだ。
この映画は、アン・ハサウェイの一点押し!というのが自分の偽らざる感想だ。
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