夢のシネマパラダイス348番シアター:偏執狂の詩
ゲーム
出演:マイケル・ダグラス、ショーン・ペン、デボラ・カーラ・アンガー
監督:デヴィッド・フィンチャー
(1997年・アメリカ・128分)1998/02/13・仙台第1東宝
評価★★★★★/95点
内容:「人生が一変するような素晴らしい体験ができる」。大富豪ニコラスが48歳の誕生日に1枚のカードを弟のコンラッドから受け取ったことから、さまざまな事件に見舞われるミステリー。現実とゲームの境界線があやふやなままに展開するストーリーに純粋に引き込まれるか引き込まれないかで、このD・フィンチャーが構築した新たな恐怖世界に対する評価はかなり変わる。試される映画です・・・。
“まやかしの★5つ!いや、永遠の★5っつ!?”
普通自分の中では★5つを付けた作品はいつ見ても飽きないし、いつ見ても★5つ。そんな自分にとって真にかけがえのない数少ない映画たちに★5つを付けてきた。
しかし、、である。この映画はそれらの映画とは一線を画する。
いつ見ても★5つではない。1998年2月13日に劇場で見たそのたった1回そのときだけのものである。
そして見終わってすぐ思ったのは、もう二度とこの映画は見ない、そう決心したのを今でもはっきりと憶えている。
そしてこの映画はその後自分の中で永遠に封印したはずだった。
はずだった、というのはつい先日不覚にもその封印を解いてしまったからなのだが・・・。
そして後悔。
見るんじゃなかった。やっぱり見るんじゃなかった。
劇場で体験した唯一無二の衝撃と笑撃、あの強烈な体験をそのまま追体験できるはずもなく。。
唯一無二の衝撃と笑撃、それはいわずもがな映画のラストに集約されるわけだが、と同時にこの映画を二度と見ることはないだろうと思わせしめたのもこの映画のラストに集約される。
個人的にいえばラストを知ってしまった以上は、この映画を再び見ることはほとんど何の意味もなさないと思う。
これは例えば自分が同じく★5つを付けた「スティング」や「ユージュアル・サスペクツ」、はたまた★5つは付けていないが同じ監督作の「セブン」などとは道理がちがう。
道理がちがうとは、つまり前記3作品にあって「ゲーム」にはないもの。それはズバリ伏線の有無である。
はっきりいって「ゲーム」には必要最低限の伏線、ニコラスの親父が家の屋根から飛び降りる場面、しか張られていない。
しかもこの伏線はアッといわせるラストでしか活きてこないわけで、中盤は全くのガラ空きといってもよいつくりになっている。
前記3作品を例にとると、大親分から50万ドルだまし取れるか、カイザー・ソゼとはいったい何者なのか、犯人は誰なのかという明快なコンセプトのもとで伏線をうまく絡ませることによってストーリーに厚みと深みをもたせることができ、ひいては登場人物それぞれの存在をも際立たせていくことにもつながっていく。
つまり、伏線というのは、ストーリーに幅をもたせることのみならず、ストーリーを安定させるという重要な役割も担うものだということ。
さて、、「ゲーム」である。
たしかに伏線が始めに張られ、それがラストで効いてくる必要最低限のことはやっている。しかし問題はその中身なのだ。
この映画でいう明快なコンセプトとは、“ゲーム”とはいったい何なのか、そして誰が黒幕なのかということだと思うが、それに対する中盤における伏線は一切無いといってもよい。
それゆえ非常に不安定な中でストーリーは進んでいき、見る側としても次第に不安を覚えていく。
ここでいう不安とは、先の見えないストーリーに対する足場のない怖さからくるサスペンス映画が本来もっている不安要素と、こちらの方が大きいのだがこの映画は果たして納得のいく着地をしてくれるのだろうかという映画そのものに対する不安である。
ともかく「ゲーム」という映画は、伏線がないことによって始めとラストをつなぐプロセスがほとんど欠けてしまい、ともすればこの映画本来のコンセプトさえぼやけて見失ってしまいかねない。映画を見るという我々の目的意識さえも麻痺させ停止させてしまうくらいに・・。
だが、それでも思わず★5つをつけてしまうのは、ラストの大どんでん返しによるところがやはり大きいわけで。しかもそのやり方が実に憎々しく、やられたというよりもこちらの戦意を喪失させるだけのパワープレイでぶん殴られたといったところか・・・。
そもそも力づくで映画のコンセプトを解決してしまうというのはこの上なく最低レベルのやり方なのだが、憎たらしいことにこの映画は始めの伏線によって一応納得させる形で解決させているし、“死”という人間の存在証明にとって究極のアイテムを持ち出してきて、しかもそれを逆転させてしまう。
この点については文句の言いようがないし、もうホント参りましたという他にない。
が、しかしそれが通用するのもたった1回だけ。2回目以降ではこの映画のパワープレイはもはや通用いたしません。
中盤プロセスが欠如している中で始めと終わりだけが糸一本だけでつながっている。
こんな映画、何回も見るだけ無駄っちゅうことですわな。
今度こそ封印は完了しました。★5っつとともに・・・。
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セブン
出演:ブラッド・ピット、モーガン・フリーマン、グィネス・パルトロウ、ケビン・スペイシー
監督:デヴィッド・フィンチャー
(1995年・アメリカ・126分)1996/02/03・仙台第1東宝
評価★★★★/75点
内容:退職を1週間後に控えたサマセットと新人刑事ミルズのコンビは、被害者がキリスト教の七つの大罪に見立てられ殺害されるという連続殺人事件に直面していた。3人が殺されたところで、ジョン・ドゥという容疑者が捜査線上に浮かび、サマセットとミルズは男の部屋に踏み込む。しかしその時、帰ってきた男は2人にいきなり発砲して逃走するのだった・・・。
“大学受験で訪れた仙台の映画館で、よりによって試験前日にこの映画を見てしまったオレ・・・”
この映画を見たことによってある意味変な緊張感もどこかへブッ飛び、なぜか平常心で試験に臨むことができた・・。ミルズの境遇を思えば自分が今直面していることなんてちっぽけなもんさ、と。
そしてめでたくそこの大学を卒業してしまった次第です(笑)。
映画を見終わって泊まってたホテルまで歩いていったんだけど、仙台の街を歩いてみてこの町は好きだなぁ、肌に合うなと直感したくらいなんか分かんないんだけども温かかったことを覚えています。トレーシーが「この町は嫌い!」と泣きながら言ってたのとは違うぞ、と。
実際仙台はホント住みやすい良いところなんです。
と、仙台の宣伝はこのくらいにして、この映画で1番印象に残ったのは、なんといっても“雨”だよね。
ブラック・レインもおったまげなくらいの雨、雨、雨。
なんであっちの人って傘をささないのと思ったのはまず置いといて、この雨、明らかに計算された仕掛けとして映画の中で機能している。
というのもこの映画における“雨”というのは、ケビン・スペイシー演じる犯人の内面を表しているのではないか。
始めから終盤までずっと雨が降っているのだけど、ある時点で雨は完全に止み、そして完全に晴れる。
それは犯人が警察に出頭した時点を境にしているわけで、ようするに彼が言うところの努力と忍耐と観察力によって自分の果たすべき使命を全うしたことによる達成と成就と解放を暗示しているのだろう。
よって車の後部座席でみせる彼の笑顔がマジで怖いわけ。本当に晴れ晴れとしているわけだから。なんかオウム事件を思い出してイヤだったな。
ところで、この映画は現代社会における人々の無関心という側面を異様な形で切り取った映画だともいえるけど、そこでクローズアップされてくるのがミルズと妻トレーシーの関係。
夫婦関係という固い絆で結ばれているはずの2人が名もなき大都会という街のフィルターを通してみると実はそれぞれが無関心だったのではないか、少なくとも出世に躍起になっていたミルズは、ということが浮き彫りになっていく。
でも、それが罪になるかというと、しかもあんな仕打ち、、ってありなん?なんかデヴィッド・フィンチャーってものすごいドライで性悪なヤツだと思うわw
だってこんな世界に生を受けた子供は幸せなのか、こんな世の中で子供を育てられるのか怖いと思った、とサマセットに言わせしめるわけだけど、何なのこのネガティブマインドは。芥川龍之介じゃあるまいし(笑)
映画の中でずっと雨が降ってたのに、見終わって感じたのはものすごっドライな映画だったなぁということ。
だから逆に仙台の街が温かく感じられたのかもね。
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ミュージアム
出演:小栗旬、尾野真千子、野村周平、丸山智己、田畑智子、大森南朋、伊武雅刀、松重豊、妻夫木聡
監督:大友啓史
(2016年・日本・132分)WOWOW
内容:ある雨の日。犬に食い殺された惨殺死体が発見され、現場にはドッグフードの刑と書かれた謎のメモが。それが自らをアーティストと呼ぶ“カエル男”による連続猟奇殺人事件の始まりだった。捜査を担当する沢村と西野は、残されたメッセージの解読に奔走。やがて、事件被害者たちがある事件の裁判員をつとめていた共通点に突き当たる・・・。
評価★★★☆/70点
全編雨降りの陰鬱な雰囲気、ジョン・ミルトン「失楽園」の七つの大罪ならぬ平安時代の僧・源信「往生要集」の八大地獄を想起させる際立ったグロ死体の数々。
これってどう見てもデヴィッド・フィンチャーの「セブン」なんだけど、カエル男のバックグラウンドに「砂の器」的な日本人独特の情念や悲哀を全く付け足さず、どこまでもドライで猟奇的なサイコ野郎に徹しさせたのは良い。
眉毛まで剃ったスキンヘッドの妻夫木も意外で面白かったし。
そのカエル男が引きこもり男の部屋に侵入してくる際に、ドアの向こう側からバンバンと叩く音がした後に鍵がガチャリと静かに開くシーンが、一人暮らしの自分には1番のホラーだった😵
けど、なんでこれがR指定にならないんだw!?
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コレクター(1997年・アメリカ・116分)DVD
監督:ゲイリー・フレダー
出演:モーガン・フリーマン、アシュレイ・ジャッド、ケリー・エルウェス
内容:ノースカロライナ州ダーハムで8人が失踪し3人が惨殺されるという連続女子大生誘拐事件が発生。ワシントンDC署の刑事クロスは、自分の姪が被害者になったことを知り、現地に向かう。が、そんな中、女性を監禁して飼育する異常犯人“コレクター”の魔の手が女医ケイトに忍び寄っていた・・・。
評価★★/40点
“犯人に2,3発銃を直にブッ放したい気分。”
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スパイダー(2001年・アメリカ・103分)WOWOW
監督:リー・タマホリ
出演:モーガン・フリーマン、モニカ・ポッター、マイケル・ウィンコット
内容:政財界の重要人物の娘が誘拐される。犯人は、経歴を詐称して教師になりすましていた男。彼は、事件担当者にアレックス捜査官を名指しし、巧妙な犯罪ゲームを楽しみ始める。「コレクター」のJ・パターソンの原作を映画化。
評価★★★/60点
こっちの“模倣犯”の方が面白かったということだけはいえる。
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スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする(2002年・仏/加/英・98分)WOWOW
監督:デイヴィッド・クローネンバーグ
出演:レイフ・ファインズ、ミランダ・リチャードソン、ガブリエル・バーン
内容:統合失調症の治療を終えて精神病院を退院した男デニス。彼は20年ぶりに故郷の町に戻り、ウィルキンソン夫人の家で同じような人々と共同生活を送ることになった。デニスはノートに少年時代の記憶をパズルを組み合わせるように書きつけていく。そして現実と妄想が混在する彼の記憶から血なまぐさい記憶が甦ってくるのだった・・・。
評価★★/45点
レイフ・ファインズの額に浮き出る血管がなんともイヤ。
てことは演技が上手いってことなんだけどもさ。。生理的にダメ。
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