夢のシネマパラダイス122番シアター:統計では1番安全だけど、気持ち的に1番不安な飛行機という乗り物
ハドソン川の奇跡
出演:トム・ハンクス、アーロン・エッカート、ローラ・リニー、アンナ・ガン、オータム・リーサー
監督:クリント・イーストウッド
(2016年・アメリカ・96分)WOWOW
内容:2009年1月ニューヨーク。155人を乗せた旅客機が、離陸直後にバードストライクに遭いエンジン故障に見舞われてしまう。しかし、チェズレイ・“サリー”・サレンバーガー機長の見事な判断と操縦によりハドソン川へ不時着水し、全員生還する。この偉業は“ハドソン川の奇跡”と讃えられ、サリーは副操縦士のジェフとともに英雄として称賛される。ところがその後、事故調査委員会が、サリーの決断に疑義を呈して追及を始める・・・。
評価★★★★/75点
当初はなぜイーストウッドが、まだ記憶に新しいこんな美談を題材にしたのか腑に落ちなかったんだけど、映画を見たら納得。
役者として単純な勧善懲悪ものではないアンチヒーローを演じ続け、監督としてヒーローの虚像に葛藤し苦しむ者を描き続けてきたイーストウッドのフィルモグラフィーを思い起こせば、今回の映画もその範疇にすんなり入ることが分かる。
40年以上パイロットを続けてきたプロフェッショナルとして仕事の流儀を貫き、当然のこととしてするべき事をした機長が、自分の意図しないところでヒーローに祭り上げられていく一方、経験値より法とマニュアルを重視する官僚組織と対峙させられるというのは、なるほどまさにイーストウッド印の映画だ。
ヒーローから一転してペテン師呼ばわりするマスコミの手のひら返しにさらされ精神をすり減らしていく中でも毅然さを失わず立ち向かっていく機長の姿は、アメリカの良心を体現してきたトム・ハンクスの白髪姿と合わせて非常に印象的だった。
まぁ、事故調査委員会も真相究明という点で正しいことをしているわけで、どちらもやるべきことをやったってことではあるんだよね。
さらに、そこにNYの人々の温かさも加わって、着地点としては文句のつけようがないし、なによりこれを90分弱に収めてしまうイーストウッドの熟練技にも感服!
星条旗の裏に潜む醜悪さの入り込む余地のないアメリカの良心がストレートに伝わってくる清々しい小品。
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フライト
出演:デンゼル・ワシントン、ドン・チードル、ケリー・ライリー、ジョン・グッドマン、ブルース・グリーンウッド、メリッサ・レオ
監督:ロバート・ゼメキス
(2012年・アメリカ・138分)WOWOW
内容:乗員102名を乗せたフロリダ州オーランド発アトランタ行きの国内線旅客機が突如制御を失って急降下し、墜落の危機に陥る。しかし、ベテラン機長ウィトカーの操縦術により野原に不時着し、犠牲者は6人出たものの多くの命を救うことに成功。マスコミはじめ誰もがウィトカーを称賛し、一夜にしてヒーローとなるが、彼の血中から高濃度のアルコールが検出されたことで事態は一変。事が明るみに出れば重過失で終身刑の可能性もある中、ウィトカーは弁護士のラングとともに事実の隠蔽に動き出す・・・。
評価★★★/60点
アル中であることを頑なに拒否りつづけた男がそれをようやく認めるってだけのお話ww
ほぼデンゼルの独演会ともいえる映画だけど、アル中克服ものの前段階なので話自体が地味目だし、家族の支えとかも皆無なので話が広がっていかないのね・・。
また、ヤク中気味の女性との関わり合いも焦点がぼやけてしまってイマイチだったし、現実から逃げ回るだけの主人公をさんざん描いておきながらラストで改心してめでたしというのも腑に落ちないし、全体的に中途半端な印象をもった。
自分がこの映画に期待していたことって何だろうと思った時、真っ先にアル中男のグダグダ話は別に見たくないってことに行きついてしまった時点で自分の趣向とはちょっと合わない映画だったということなんだろうけど。
まぁ、あと自分が下戸なので酒飲みの話が性に合わないってのも大きいけど・・
ただ、デンゼルはよくやっていると思う。どんなに卑しい俗人を演じても高潔な善心を常に身にまとっている彼の稀有なパーソナリティは、単純すぎる映画を一筋縄ではいかないものにまで押し上げている。良くも悪くもデンゼルに頼りきりな映画だったといえるだろう。
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ハッピーフライト
出演:田辺誠一、時任三郎、綾瀬はるか、吹石一恵、田畑智子、寺島しのぶ、笹野高史、小日向文世、柄本明、岸辺一徳
監督・脚本:矢口史靖
(2008年・東宝・103分)CS
内容:全日空ホノルル行き1980便。機長昇格を目指す鈴木副操縦士(田辺誠一)は、厳格な原田機長(時任三郎)のもと、この機での最終テストに臨もうとしていた。一方、同じ便にはこれが国際線デビューとなる新人CAの斉藤(綾瀬はるか)の姿も。そして、グランドスタッフ、整備士、管制官らに見送られ、台風が接近しつつある羽田空港を無事に飛び立ったのだが・・・。
評価★★★★/80点
飛行機をパニックに陥らせるのは、ハイジャック犯!?テロリスト!?殺人犯!?心臓発作を起こしたパイロット!?死のウイルス!?時限爆弾!?大量の毒ヘビ!?ゾンビ!?
いやいや今回は違います。
大量の正露丸ですっ!!!なんじゃそりゃ
いや、あの臭いといったらもう、という話は置いといて、大量の正露丸が機内を転がる今回の映画、めっちゃヨカッタです!だから、なんじゃそりゃ
一機のジャンボジェット機が羽田から無事に飛び立つまで、そして2時間後、機内トラブルのため引き返して台風吹き荒れる羽田に無事着陸するという、話だけ聞けばなんてことはないいたってシンプルな筋立てなのだけど、これがまぁよく出来てて面白いんだわ。
コックピット、機内、空港カウンター、管制塔、オペレーションセンター、格納庫、様々な部署と場所で飛行機の安全なフライトに携わっている数多くのスタッフたち。
彼ら一人一人にスポットライトを当てたシナリオは、各々の視点が干渉・交錯し合い一つの必然に収束していく群像劇の持つダイナミズムには程遠く、各々の視点は交錯することなく最初から一つの必然に向かっていくという、人間関係の横のつながりには乏しいといわざるを得ないものになっている。
そういう面では、かなり閉鎖的なのだけど、しかしそれがマイナスに働くのではなく、プロフェッショナリズムが生み出すカタルシスをユーモアも交えて小気味よく強調していくことで十二分に元が取れるつくりになっている。
窓際族のさえないオッサンが一転して本領発揮して見せ場を作ったり、夢の職業パイロットが素っ頓狂な声を挙げたり、空の花形キャビンアテンダントが速攻立ち食いしながら青竹踏みしてたりと、それぞれ表と裏の顔を見せてくれるのも面白く、その中で専門職としての自負心や厳しさ、また仕事への向き合い方をしっかり描いているのは秀逸。
さらにそこにANAの大看板とボーイング747がで~んと横たわるわけだから、リアリティとスペクタクルも注入満タン!で、文句なしのハッピー・ヒコーキ・ムービーになっていたと思う。
また、ヘェ~そうだったんだぁというトリビア&ハウツウものとしても楽しめたし、CG臭さを感じさせないのも好感が持てた。
特に、強烈な横風を受けながら羽田に着陸するところで斜めってる機体を上から捉えたシーンなんかはかなりゾクゾクきたな。
飛行機が飛び立つのにこれほどワクワクし、飛行機が着陸するのにこれほどドキドキした映画もない。
細部にいたるまで作り込まれたディテールの裏には、かなりのリサーチがあったであろうことが実感できるし、その付箋つきのレポート用紙の積み重ねがヒコーキにはド素人の自分にもめちゃくちゃ楽しめてしまう要因になっていたのだと思う。
飛行機には1回しか乗ったことないけど、次に乗る機会があったらこの映画を思い出しながら乗ろっと。
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エグゼクティブ・デシジョン
出演:カート・ラッセル、スティーブン・セガール、ジョン・レグイザモ
監督:スチュアート・ベア-ド
(1996年・アメリカ・132分)仙台セントラル劇場
評価★★★★★/90点
内容:最新毒ガス弾を持つテロ軍団にハイジャックされたジャンボジェット機に、特殊部隊と情報部顧問の博士が潜入することになるのだが・・・。
“すべてにおいて高度で、アクション映画としては珍しく偏差値高し”
非常に良くできている映画だ。行き当たりばったりで銃をぶっ放す映画とは一線を画している。
また、頭ひとつ抜きん出た無敵のヒーローがいないことは、航空機ものとしてもアクションものとしても非常に珍しく新鮮。
いわばチーム戦術で攻略していくという設定(しかも密閉空間)が、今までとは次元の異なるアクション映画だといえるのでは。
だが、この設定、実はリスクが高い。キャスティングをひとつ間違えるとバランスが崩れてしまい、ありきたりの映画になってしまう。
しかし、その点でこの映画は成功している。
カート・ラッセル、ジョン・レグイザモ、オリバー・プラット、そして今ではアカデミー女優になってしまったハル・ベリーといった巧いキャスティングに、しっかりとキャラも立っている。
俺が俺がといった前面に押し出される利己的な独走演技もなく、とても良いバランスを保っている。
そしてこの設定を逆手にとったS・セガールの起用法はまさに拍手もの。巧いです。
また、今までとは次元の異なるアクションものとして特筆ものといえるのが、敵のボスキャラ。
死を厭わず任務を遂行する、まさに自爆テロほど対処のしようがないものはない。
9.11アメリカ同時多発テロで事実が映画をも超えてしまったわけだが、リアリティのあるアクション映画としても一見の価値はある。
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靴をなくした天使(1992年・アメリカ・118分)NHK-BS
監督:スティーブン・フリアーズ
出演:ダスティン・ホフマン、ジーナ・デイビス、アンディ・ガルシア、ジョーン・キューザック
内容:ある日、飛行機事故に遭い、座席に挟まれて身動きがとれなくなったテレビリポーターのゲイル。しかし、その燃える機内から彼女と他の乗客たちを助け出したある男がいた。だが、その男は、泥だらけの顔のまま名前も告げずに立ち去ってしまう。そしてそのヒーロー話にメディアが群がってきて、虚像としてのヒーローを作り出していくのだが・・・。
評価★★★★/80点
アメリカ人なんだから御託を並べてないで、1番言いたいこと・結論をズバッと言い切っていればこんな話にはならなかっただろうにと、NOと言えない日本人の自分でさえ思ってしまった。けどイイお話でしたわ。
ベトナム戦争のことを「ナム」と略すラプラントに1票!
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乱気流/タービュランス(1997年・アメリカ・101分)WOWOW
監督:ロバート・バトラー
出演:ローレン・ホリー、レイ・リオッタ、ベン・クロス
内容:護送中の凶悪殺人犯にハイジャックされたジャンボ旅客機で、死を逃れたスチュワーデスが機体奪回を目指し、犯人と闘いを繰り広げる。。
評価★★★/60点
見てると胸くそ悪くなってくるレイ・リオッタの異常演技に、飛行機の中という閉鎖性や乱気流ネタといったスペクタクルが殺されてしまっている。
とにかく狂気に憑かれたようなレイ・リオッタは必見。
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コン・エアー(1997年・アメリカ・114分)仙台日之出劇場
監督:サイモン・ウェスト
出演:ニコラス・ケイジ、ジョン・マルコヴィッチ、スティーブ・ブシェーミ
内容:8年前、身重の妻を守るために殺人を犯してしまい、服役していたポーは模範囚とじて仮釈放される。妻が待つ故郷へ戻るために護送機へと乗り込むが、護送機は離陸直後、世にも稀にみる凶悪犯罪者集団によってハイジャックされてしまう・・・。
評価★★★/65点
“カツ丼の上に、エビ天乗せて、ハンバーグ乗せて、スパゲッティ乗せて、さらにその上にカレーをぶっかけたような映画。”
「七人の侍」(1954)のことを、監督した黒澤明自身が形容した言葉だが、この映画にこそ当てはまるのではなかろうか。このコテコテ食感はそうざらには味わえないw
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フライトプラン
出演:ジョディ・フォスター、ピーター・サースガード、ショーン・ビーン、マーリーン・ローストン
監督:ロベルト・シュヴェンケ
(2005年・アメリカ・98分)盛岡ピカデリー
内容:愛する夫を事故で亡くし、深い悲しみに暮れる航空機設計士のカイル。彼女は夫の遺体を引き取り、6歳の娘ジュリアとともにベルリンからNYへ最新型ジャンボジェット機で帰国の途上にあった。ところが、飛行中の機内でジュリアが忽然と姿を消してしまう。しかし、乗客はおろか乗務員の誰一人としてジュリアを見た者はいなかった。さらに搭乗記録すらも存在せず・・・。
評価★★☆/50点
見終わってなお、あのヒステリックな暴走ハエ女をハエ叩きでバチコンッとはたきたい気分にかられる(笑)。。
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スネーク・フライト(2006年・アメリカ・107分)WOWOW
監督:デヴィッド・R・エリス
出演:サミュエル・L・ジャクソン、ネイサン・フィリップス、ジュリアナ・マーグリーズ、ボビー・カナヴェイル
内容:ハワイを旅行中の青年ショーンは、大物ギャングのキムが検事を殺害する現場を目撃。FBIエージェントのフリンが、裁判の証人としてショーンをロスに護送することになった。しかし、キムはショーンの口を封じるため、乗り込んだ飛行機に数千匹の毒ヘビを積荷として忍び込ませていた・・・。
評価★★★★/75点
“オッパイにしゃぶりつき、アソコにかぶりつき、服の中に潜り込み、舌にまとわりつき、うなじを舐めくり回し、熱くほてる身体に喰らいつく!ブチ抜く!飛ぶ!逝く!さぁ皆さんも昇天してみませんか!”
えっ?何の話かって?
ヘビに咬まれた人の話です。ハイ。
いやはや、時限式の爆弾ではなく時限式のヘビという時点で自分のおバカB級魂に火がついたね。完敗っす。
お次は大量のゴキブリでお願いいたしますw!
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