夢のシネマパラダイス574番シアター:ショービズ界の光と闇
アーティスト
出演:ジャン・デュジャルダン、ベレニス・べジョ、ジョン・グッドマン、ジェームズ・クロムウェル
監督・脚本:ミシェル・アザナヴィシウス
(2011年・フランス・101分)WOWOW
内容:1927年ハリウッド。人気絶頂の大スター、ジョージ・ヴァレンティンは女優の卵ペピーと出会い、自身の新作でエキストラの役を手にした彼女に優しくアドバイスを送る。やがて時代はサイレントからトーキー映画へ。ジョージはサイレントにこだわり続けるが、映画は大コケし、瞬く間にスターの座を滑り落ちていく。一方、ジョージとは対照的に、ぺピーは時代の波に乗ってスターの階段を駆け上っていく・・・。
評価★★★★★/100点
文句の付けようがない映画だ。
特上A5ランクの神戸牛に誰もケチをつけられないのと同じくらい文句の付けようがない(笑)。
もちろんそこには用意周到な計算づくの演出があるわけだけど、サイレント&モノクロであることも含めて、それが嫌らしさやあざとさとして感じさせないだけの魅力と求心力がこの映画にはある。
スター男優がプレミアショーで出会った新人女優と恋に落ちるものの、成功への階段を登っていく彼女を尻目に下り坂のスター男優は酒に溺れる日々を過ごし、彼女の愛も空しく彼は自らの命を絶とうとする、、というプロットはジュディ・ガーランドの「スタア誕生」そのまんまだし、サイレント映画の時代が終わりを告げ、ミュージカル映画が産声を上げた瞬間であるトーキー初期のハリウッドのドタバタを描いているという点では、ジーン・ケリーの「雨に唄えば」を髣髴とさせる。
また、忘れられたスターの悲劇を描いた作品としてはチャップリンの「ライムライト」とかグロリア・スワンソンの「サンセット大通り」があり、今回のフランス映画は少なくとも一介の映画ファンにとっては至極スタンダードな筋立てになっている。
しかし、これらの名作と今回の作品が決定的に違うのはそのラストだ。
一連の作品は破滅的なスターの末路を描いているのに対し、今回はトーキーの象徴ミュージカル映画によって見事に復活をとげる。
また、「雨に唄えば」でサイレント映画のスター女優が聞くに堪えない甲高い声の持ち主だったためトーキーの流れに取り残される顛末が描かれるけど、今回ジョージがラストに発する声は、ダミ声かと思いきや実にシブい声。トーキーに移行しても絶対に生き残っていける声だろっていう(笑)。
で、終わってみると、憎まれ役もいなければ悲劇もないという実にハッピーな映画に仕上がっていて清々しい気持ちにさせてくれるし、メガネの上から3Dメガネをかけなければ映画を見られない時代にあって、役者の表情やしぐさ、カメラの動き、映画の映像だけを頼りに想像力を働かせながら感情、台詞、文脈を読み取るという、よりシンプルに映画を見る面白さを味わわせてくれた。
また、要所要所でジョージの焦燥や悪夢、喜びといった心象を表すものとしてコップを置く音やヒラヒラと舞い上がった羽毛が地面に落ちた時につんざく爆発音、そしてラストのタップダンスで軽快に鳴り響く靴の音など効果音が文字通り効果的に使われているし、スクリーンに映った自分の影がスクリーンから退場していったり、飲んだくれになったジョージをミニチュアサイズの自分がはやし立てるシーンなど現代技術も印象的に使われていて、単なる懐古趣味なサイレント映画にはなっていないところも良い。
難クセのつけられない映画だ。
アカデミー賞を獲ったのも納得である。ブラボー!!
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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
出演:レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピット、マーゴット・ロビー、エミール・ハーシュ、マーガレット・クアリー、カート・ラッセル、ゾーイ・ベル
監督・脚本:クエンティン・タランティーノ
(2019年・アメリカ・161分)TOHOシネマズ日本橋
内容:1969年のハリウッド。50年代にテレビ西部劇シリーズで人気を博したリック・ダルトンは、映画俳優への転身を目指すも完全に落ち目。そんなリックを専属スタントマンのクリフ・ブースは公私ともにサポートしていた。そんなある日、高級住宅地にあるリックの豪邸の隣に、今をときめくロマン・ポランスキー監督と妻で新進女優のシャロン・テートが引っ越してくる。ショービズ界の光の輝きにあふれた夫妻との差を痛感したリックは、わずかな光明を求めてイタリアでマカロニウエスタン映画に出ることにするが・・・。
評価★★★★/80点
自分が映画をこよなく愛するようになった中学~大学時代の90年代。
ハリソン・フォード、シュワちゃん、スタローン、ジャッキーは気付いた時にはすでに横綱級の大スターだった。
そんな中、1作ごとに十両→幕内→小結→関脇→大関→横綱へとステップアップしていく過程をリアルタイムで見れたのはブラピとディカプリオが最初であり、今に至るまでそういうスターが現れていないという点では最後でもあるかもしれない。
ブラピは、「リバーランズスルーイット」1992→「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」&「レジェンド・オブ・フォール」1994→「セブン」1995→「ジョー・ブラックをよろしく」1998→「ファイト・クラブ」1999→「ザ・メキシカン」&「オーシャンズ11」2001
ディカプリオは、「ギルバート・グレイプ」1993→「バスケットボール・ダイアリーズ」&「太陽と月に背いて」&「クイック&デッド」1995→「ロミオ&ジュリエット」1996→「タイタニック」1997→「仮面の男」1998→「ギャングオブニューヨーク」&「キャッチ・ミー・イフ・ユーキャン」2002
スクリーンやロードショーといった映画雑誌で見ないことはないくらい表紙を飾っていた時期だ。
同時代に同じような曲線を描いたスター街道を歩んできた2人にようやく訪れた共演は、まるで永遠のライバルであるメッシとロナウドが同じチームでプレーするかのようなワクワク感にあふれている。黄色いキャデラックに2人が同乗してるのを見るだけですでに満足みたいな(笑)。
しかも、2人の役柄の兄弟以上夫婦未満という関係性が絶妙に良くて、2人を引き立たせるように半歩下がっているタランティーノの指揮も見事。
その中でも虚々実々の作劇の上手さ、そしてしっかり劇中映画でオタク悪趣味を炸裂させているのはさすがだったし、シャロン・テート事件の予定調和をぶち壊す火炎放射器に喝采w!
個人的にドツボだったのは、ブラピに投げ飛ばされるくらいに実は弱かったブルース・リーと、ディカプリオ宅の駐車場にある看板がジャック・ニコルソンに見えて仕方なかった件ww
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サンセット大通り(1950年・アメリカ・110分)NHK-BS
監督・脚本:ビリー・ワイルダー
出演:グロリア・スワンソン、ウィリアム・ホールデン、エリッヒ・フォン・シュトロハイム
内容:B級映画の脚本家ジョーは、借金取りから逃れようと荒れ果てた邸宅に逃げ込んだ。そこには、かつての大女優ノーマ・デズモンドが、過去の栄光にすがりつきながら暮らしていた。ジョーの仕事を知ったノーマは、再起を図るために自ら書いた脚本「サロメ」の手直しを頼み、邸宅に住まわせる・・。
評価★★★★/75点
ノーマの目線ジャブ攻撃に身震いした後、クローズアップで12回KO負け!
夢に出るぞこれww
トーキーの波に乗り一世を風靡したグレタ・ガルボ、トーキーの波に飲み込まれたノーマ。
グリフィス、デミルそしてマックス。
容赦のない光と影。
エリッヒ・フォン・シュトロハイム、バスター・キートンの痛烈な起用。
ワイルダー、あんたって人は、見事だ。。
また、「アパートの鍵貸します」の原案がすでにこの映画で語られていることも非常に興味深い。
さらにこの映画、グロリア・スワンソンの実人生ともダブって見えて興味深かったが、実際の撮影現場はワイルダーと意見交換しながらアイデアを出し合い、ユーモアあふれる和気あいあいとしたものだったと聞いてちょっと安心した。
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8 1/2(1963年・イタリア・140分)NHK-BS
監督・脚本:フェデリコ・フェリーニ
出演:マルチェロ・マストロヤンニ、アヌーク・エーメ、クラウディア・カルディナーレ、サンドラ・ミーロ
内容:一流映画監督のグイドは、周囲の次回作への期待がプレッシャーになって心身ともに疲れ切っていた。そこで医者の勧めで温泉保養地に行き新作映画を撮ろうとする。が、そこでもアイデアは浮かばず、絶えず現実とも虚構ともつかない幻想に悩まされていく・・・。
評価★★★/65点
映画製作の裏側を描いた映画はロバート・アルトマンの「ザ・プレイヤー」(1992)とかあるけど、映画監督という個人の内面にのみ焦点をしぼった作品はあまりないと思う。
主人公が監督であれプロデューサーであれ、周りから恨みつらみを抱かれて製作がうまく回らないというのがよくあるパターンで、そういう因果関係の明瞭としたプロットの枠の中に主人公の主観含めて収められるのが、まぁハリウッド映画特有の分かりやすさなんだよね。
ところが、これはそういう文法どころか時間や空間的な垣根さえすっ飛ばして、さらに夢や無意識下の幻想までもが入り乱れて既成概念の全く通用しない構成に・・。
何を撮りたいのかすらもはや分かってないけど、自分のぼんやりした悩みをとりあえず即興で撮ってみました、、ってこの企画が通っちゃうこと自体フツーじゃないってばww
“映画の魔術師”フェリーニの異名の何たるか、、まだまだ自分は映画の勉強が足りない小僧っ子です・・w
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