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2019年9月29日 (日)

夢のシネマパラダイス252番シアター:冬山に行く人の気が知れない・・

劔岳 点の記

S1292802861 出演:浅野忠信、香川照之、松田龍平、仲村トオル、宮崎あおい、笹野高史、夏八木勲、役所広司

監督:木村大作

(2008年・東映・139分)WOWOW

内容:明治39年、国防のため日本地図の完成を急ぐ陸軍参謀本部は、唯一の空白地である前人未到の劔岳の測量を測量官の柴崎芳太郎(浅野忠信)に命じる。欧州の最新機材を持ち込み初登頂を目指す日本山岳会というライバルが現れる中、柴崎ら測量隊は、案内人・宇治長次郎(香川照之)のもと劔岳山頂へ向かう・・・。

評価★★★☆/70点

登頂するのがこれほど難しい山が日本にもあったなんて東北人の自分は全く知るよしもなく、、剣岳自体知らなかったもんなぁ。日本にもヤバイ山ってあるんだねww

というのはさておき、肝心の映画の方だけど、正直なところ、映画のメイキングドキュメンタリー見てた方が数倍面白いのではなかろうかと思ってしまった、かも。。

いや、素晴らしい映画であることに何ら異論があるわけではなく、「天の視点から人間のやっていることを俯瞰の目で見て描きたい」と語った黒澤明の言葉に仮託してみるならば、今回の映画は剣岳の視点から人間のやっていることを俯瞰の目で見て描いた映画であるといえ、峻険な山岳風景の中にポツポツと黒い点描のように埋没して見える人間たちを捉えた映像はまさに圧巻きわまりないものがある。

また、登山というと己を見つめ己を知る孤高の闘いというイメージがあるけど、この映画では尊重と献身の心を持ち合わせた人とのつながりや仲間たちの絆というものを描き出しており、壮大な力強さの中にも控えめな品の良さがうかがい知れる良作になっているのはたしかだ。

近年稀にみる真摯で実直なつくりの映画といえよう。

しかし、それでもあえていうならば、「剣岳の視点」の中に人間ドラマが埋没している感も拭えず、男ばかりの映画にしては男臭さやその息遣いがあまり伝わって来ないのもちょっと気持ち悪いというか、人間ドラマがスマートすぎて緊迫感に欠けるきらいはあったかなと。

また、一面の雲海に沈む夕陽をバックにしたシーンなど、一体この景色を撮るためにどのくらい撮影スタッフは待ったんだろうとか凄く気になっちゃって(笑)、それこそ監督の怒号が常に聞こえてきそうな映画のメイキングを見た方がパッションや緊迫感を断然感じられるのではないかと思っちゃったww

しかしまぁ、作り手の映画に対する信念と、私利私欲にとらわれない測量官や案内人、登山家たちの信念がオーバーラップし、強い想いとなって伝わってくるという点において、この映画を自分の心に留め置いておきたいとは思う。

それにしても、紅一点の宮崎あおいタンみたいな嫁さん欲しいなぁ~~

夢のまた夢・・・。

(追記)

後日、WOWOWで「劔岳撮影の記、標高3000メートル、激闘の873日」というメイキングドキュメンタリーをやってて興味深く見たけど、「撮影じゃなくて苦行だと思わなきゃやってられない」という監督の言葉通りのあまりにもタフすぎる映画撮影に絶句しながら見てしまった。

登山して天気悪くて下山して翌日また登って、しかも撮影機材を背負って、、これを何週間も山にこもってやるっつーんだから、さらには冬山にまで・・。まさに苦行だわ。

ただ、、山でプカプカ煙草吸うのだけはいかがなものかと思うぞ。ぶっちゃけ山で煙草吸う人って初めて見たもん。

剣岳を見て涙する野郎がそこで平気で煙草吸うって、、恐ろしいくらいに敬意に欠けてるような気がするんだけどw

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エヴェレスト 神々の山嶺

Everestmovie1

出演:岡田准一、阿部寛、尾野真千子、ピエール瀧、甲本雅裕、風間俊介、佐々木蔵之介

監督:平山秀幸

(2016年・日本・122分)WOWOW

内容:1993年、ネパールの首都カトマンドゥ。日本のエヴェレスト遠征隊が2人の犠牲者を出し登頂を断念した。随行していた山岳カメラマンの深町(岡田准一)は、失意の中でふと立ち寄った骨董屋で古いカメラを見つける。それが1924年に初登頂に挑んで消息を絶ったイギリス人登山家ジョージ・マロリーのものかもしれないと感じた深町だったが、突如現れた大男がこれは自分が盗まれたものだと言って持ち去ってしまう。深町は、その男が数年前に消息を絶った天才クライマーの羽生(阿部寛)であることに気づくが・・・。

評価★★★/65点

夢枕獏の原作は未読のせいか、思ったほど悪くはなかったw

特に「山に登るのは俺がここにいるからだ」と豪語し、山に取り憑かれた鬼気迫る執念を見せる羽生を演じた阿部寛の存在感は強烈だったし、生への信念を見せる岡田准一も良かった。

エヴェレストのド迫力映像や登はんシーンも力の入れ具合がしっかり伝わってきたし、ヴィジュアルエフェクトも織り交ぜていたのだろうけど、邦画でここまでのスケール感を描けたのは素直に拍手。

ジョージ・マロリーのカメラをマクガフィンとするドラマの展開に角川映画特有のチープさはかなり残るものの、全体的に見応えのある作品になっていたとは思う。

ただ、登山好きじゃないと分からないような心理描写をスルーしちゃってて、素人にはえっ?と感じるところも多々あったのと、羽生の恋人(尾野真千子)の中途半端な扱いなど掘り下げが足りなかったのはマイナス。。

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アイガー北壁(2008年・ドイツ/オーストリア/スイス・127分)

 監督:フィリップ・シュテルツェル

 出演:ベンノ・フユルマン、ヨハンナ・ヴォカレク、フロリアン・ルーカス、ウルリッヒ・トゥクール、ジーモン・シュヴァルツ

 内容:ベルリンオリンピックを目前に控えた1936年夏。ナチス政府は、登頂不可能といわれたアイガー北壁を登頂したドイツ人に金メダルを与えると発表。アイガーの頂を目指し多くの登山家が集結する中、若きドイツ人登山家トニーとアンディもやって来る。麓の高級ホテルには、ワインを片手にマスコミや野次馬が陣取り、その中には2人の幼なじみで駆け出し記者のルイーゼの姿もあった。そして2人は登攀を開始するが・・・。

評価★★★/65点

栄光か悲劇しか記事にならないというセリフがあったけど、それはそのまま映画に当てはめることもできるだろう。

とはいえ、まさか悲劇で終わるとは思いもよらず、絶望的な展開にしばし呆気に取られてしまった。

見終わっても、なぜに初登頂の栄光ではなくこの悲劇を映画化したのかイマイチ分かりかねたけど、ちょっとノリきれなかったかなぁ・・。

リアルな山岳シーンを凡庸な人間ドラマが引っ張っちゃってるというか、盛り上がりに欠けるんだよね。特にヒロインの駆け出し新聞記者の扱いがおざなりで、変に女っ気を入れない方が良かったのではないかなとさえ思ってしまった。

あとは、うーん、登頂の様子をネット中継することで有名になった栗城史多のドキュメンタリーと見比べちゃってる部分が確実にあって。。彼の挑戦を追ったドキュメンタリーを何本か見てるけど、その臨場感たるや圧倒的で、言葉が出ないほどスゴイ。本映画の中でアタックを下界から眺めている記者が、真実のドラマは現場にしかなく我々はそれを永遠に知り得ないと言ってたのが印象的だったけど、それを見れて体感できてしまうのだから、ただただ息を飲むばかり。なので、それと比べちゃうと・・。

ヒロインの目の前でぶら下がったまま恋人が凍死してしまう凄絶さはたしかにスゴイのだけども、やっぱ弛緩してしまう下界の人間ドラマがはっきりいって邪魔なんだよね・・。

うーん、、ドイツ映画、肌に合わないかもw

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ミッドナイト・イーグル(2007年・松竹・131分)WOWOW

 監督:成島出

 出演:大沢たかお、竹内結子、玉木宏、吉田栄作、袴田吉彦、石黒賢、藤竜也

 内容:かつて戦場カメラマンとして世界を駆け巡っていた西崎は、戦場でのトラウマから一線を退き、今では山岳カメラマンとして星空を撮り続ける日々を送っていた。そんな彼はある日、山中で赤い閃光を目撃する。やがて、米軍の戦略爆撃機ミッドナイトイーグルが北アルプス上空で消息を絶ったとの極秘情報が入り、政府は自衛隊を現場へ向かわせる。一方、西崎も、後輩の新聞記者・落合とともに厳戒の現場へ向かうが・・・。

評価★★☆/50点

猛烈な吹雪が吹き荒れる真冬の北アルプスを舞台にした視界のきかない山岳アクション、東京で事件の真相を追う週刊誌記者の私怨の入り混じったサスペンス、米軍ステルス機が墜落したにもかかわらず、全く蚊帳の外の米軍を差し置いて指令を下しつづけるリアリティのない国家安全保障会議室。

この3つが並行して描かれるのだが、しかしてこの欠点ありまくりの3つが足を引っ張り合って全くもって弛緩しまくった映画になってしまっている。

ラストの快晴の北アルプスの空撮シーンを見せたかったのはミエミエだけど、そこに至るまでの過程がいろんな意味で視界ゼロじゃあ全く体を成さない。

邦画版クリフ・ハンガーの道はまだまだ遠い、、らしい。。

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バーティカル・リミット

Image2171 出演:クリス・オドネル、ビル・パクストン、ロビン・タニー、スコット・グレン

監督:マーティン・キャンベル

(2000年・アメリカ・124分)MOVIX仙台

評価★★★/65点

 

内容:世界最高峰のひとつ“K2”を目指すアタック隊が遭難。女性クライマー、アニーら3人が取り残されてしまう。そしてアニーの兄ピーターら6人のレスキュー隊が氷壁爆破用のニトロを背負って救出に向う。肺気腫の危険が迫り、残された時間は22時間。想像を絶する決死の救出作戦が始まった。

“見てるこっちまで息苦しくなってくる。。”

肺水腫になってるわけじゃないのになぜかこっちまで呼吸が息苦しくなってくる。

自爆と窒息の恐怖感、切迫感は並々ならぬものがあり、クレバスの密閉空間も心理的に良くないw

そういう息苦しさはよく出来てるのだけど、、うーんなんだろう、余計な要素が多すぎるんだよねぇ。神聖なK2もそりゃ吹き荒れるわな。

特に人間関係が変に入り乱れているというのは余計だと思う。一応山岳レスキューアクションという触れ込みなのは分かるけど、ボーンのような憎まれ役は必要なのだろうか。。

ホントに憎むべきは自然の偉大なまでの力であって、それに比べたら人間関係のしがらみなんて小っぽけなもんでしょ。そんな小っぽけな要素がこの映画では大々的に描かれ吹き荒れるわけで、なんかねぇ。。ボーンへの復讐を見事に完遂してしまうウィックのラストや、ボーンがトムを殺す場面だとかホント安っぽく見えてしまうわけ。

こんなん描いてるヒマあったらもっとアニーのキャラを掘り下げてもらいたかった。どうもアニーの気持ちとか掴めなかったし、ボーンに1人が死ぬか3人全員死ぬかと言われて苦しむトムに、結局薬を打たないアニーの行動。明らかにそれまでの彼女の言動からすると矛盾してるわけでしょあれって。なんかアニーってよく分からない女だったんだよね。。

だからこの映画はアニーとピーターに的を絞ってやってもらいたかったなと思う。

それができないというのは、はっきりいえば作り手に自信がなかったということでしょ。いろいろ飾りつけてそれらしく見せるというやり方はあまり好きじゃない。

しかもK2という荘厳さに何を飾り付ける必要があるのか、もう少しよく考えてもらいたい。

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ホワイトアウト(2000年・東宝・129分)日劇東宝

 監督:若松節朗

 出演:織田裕二、松嶋菜々子、佐藤浩市、石黒賢

 内容:辺り一面、雪に覆われた12月。日本最大の貯水量を誇る新潟県奥遠和ダムの作業員・富樫は、遭難者の救出の途中、猛烈な吹雪による“ホワイトアウト”に遭遇し、共に救出に向かっていた同僚を亡くしてしまう。それから2ヵ月後、富樫は、ダムの爆破をネタに政府に50億円の要求を突きつけるテロリストグループによるダムジャック事件に巻き込まれてしまう・・・。

評価★★☆/50点

“これってあれでしょ、吹雪はハリウッド並みだってことをやりたかったんでしょ?”

まぁ頑張ったとは思うんだけど、いかんせん雪と吹雪にアクションを含めた映画そのものがうまくカモフラージュされてるなというかんじが強いんだよね。。なんかまん丸太っている羊の毛を剃ったら、めちゃか細い羊だったみたいな。

アクションなんかあまりどうってことない出来だったし。

だからってインパクト出すために平田満や河原崎建三をあっけなく殺しちゃう使い方っていうのもなんだかなぁ。しまいには松嶋菜々子の足を容赦なく撃っちゃうてのもなんだかなぁ。あげくのはてに、その松嶋菜々子を酷寒の中に置き去りにして行っちゃう織田裕二もなんだかなぁ。

それより何より、ダムの放流で流された織田裕二の服が速攻で乾いちゃうのもなんだかなぁ。

粗を探せばキリがないけど、これだけは言いたい。

寒い中ホントご苦労さん(笑)。

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八甲田山(1977年・東宝・169分)DVD

 監督:森谷司郎

 出演:高倉健、北大路欣也、栗原小巻、三國連太郎、秋吉久美子、緒形拳

 内容:明治35年、日露戦争に備えた耐寒訓練と国威発揚のために、真冬の八甲田山越えに挑むことになった徳島大尉率いる少数精鋭の弘前第31連隊27名は、綿密な計画のもとに十和田湖を迂回して八甲田を踏破する11日間の日程で弘前を出発。一方、3日遅れで青森を発った神田大尉率いる青森第5連隊は、大隊長の指示により210名という大編成になったばかりか、案内人もいない状態だった。かくして自然を力でねじ伏せようとした神田隊は寒波の中で立ち往生してしまう・・・。

評価★★★☆/70点

“ラストでガックリ・・・”

結局、死の行軍を生き残った連中も日露戦争で全員戦死かよっ!

今まで3時間ぶっ通しで見続けてきたのはいったい何だったんだ・・・。ものスゴッ虚しくなったんですけど。。

2019年9月22日 (日)

夢のシネマパラダイス596番シアター:あなたは昨日食べた夕食を思い出せますか?

秘密 THE TOP SECRET

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出演:生田斗真、岡田将生、吉川晃司、松坂桃李、栗山千明、リリー・フランキー、椎名桔平、大森南朋

監督:大友啓史

(2016年・松竹・149分)WOWOW

内容:死者の脳にアクセスし、その人物が見た映像を再生するMRIという捜査手法で事件解決を目指す特別捜査機関“第九”。ある時、一家惨殺事件を起こし死刑が執行された露口(椎名桔平)のMRI捜査が行われることに。それは今も行方不明となっている一家の長女・絹子の手がかりを探るためだった。第九の室長・薪(生田斗真)にスカウトされた新人捜査官・青木(岡田将生)は露口の脳内に潜入。が、そこに映っていたのは思わぬものだった・・・。

評価★★☆/50点

死者の脳内に残った視覚情報を映像化し、それをもとに犯罪捜査を行うというアイデアは、死者の脳に眠る記憶にダイブし秘密を探るプロットが出てくる海外ドラマ「フリンジ」を想起させ、いまいち消化不良だった同監督作「プラチナデータ」を超えるような本格SFサスペンスを基調とするのかと期待したのだが・・。

フタを開けてみたら「ハンニバル」以来の脳みそ観賞付き&近親相姦まであるグログロな猟奇殺人もののサイコホラーで気分が萎えた。

また、例えば28人殺しの凶悪犯・貝沼(吉川晃司)の脳内映像を見て、多くの捜査官があっちの世界に引きずり込まれておかしくなったとは具体的にどういうことなの?とか、絹子と貝沼、薪と貝沼、薪と鈴木(松坂桃李)の関係性など全ての要素が説明不足でストンと腑に落ちてこない。

要はあれやこれやと詰め込みすぎなのかもね。

そういう点では、少女でありながら稀代のサイコパスという露口絹子のキャラ設定が今まで誰も手を出そうとしてこなかったタブーな領域ゆえに、映画として絹子の一点突破で突き進んだ方がまだマシだったのではないかと思ってしまう。まぁ、だからといってそれを見たいかといわれたら勘弁して下さいってなるけども(笑)。。

映像は毎度のことながらエッジが効いているだけに、脚本頑張れとしか言いようがないね・・。

P.S.「客観的に見ないとダメだ。主観的に見てしまうとあちら側に持っていかれるぞ!」ってセリフがあったけど、映画がそうなっちゃってどうするww

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ゲノムハザード ある天才科学者の5日間

Poster2出演:西島秀俊、キム・ヒョジン、真木よう子、浜田学、中村ゆり、伊武雅刀

監督・脚本:キム・ソンス

(2013年・日/韓・120分)WOWOW

内容:ある日、仕事から帰宅した石神武人は妻の死体を発見する。間髪入れずに電話が鳴り出てみると、目の前で死んでいるはずの妻の声で、実家に行くので帰れないという。混乱する中、石神は警察を名乗る2人組に拉致されかけるが間一髪で逃走し、通りかかった韓国人女性記者のカン・ジウォンに助けられるが・・・。

評価★★☆/50点

失われたアイデンティティを奪還するための謎解きサスペンスとアクション満載の決死の逃走劇という点ではボーン・アイデンティティ、またDNAがミステリーの重要なファクターになっているという点ではプラチナデータを想起してしまうけど、そのどちらにも遠く及ばなかったかんじ・・・。

自分の中に別人の記憶が上書きされて頭の中はその人になってしまったものの、現実ではそれぞれに妻がいて2人分の人生が混在してしまうので記憶喪失よりもややこしくてタチが悪いw

しかも見てるこっちが全く先が読めないのはまだしも、主人公までずっと右往左往状態なので、なんか途中からついて行くのがイヤになってくる(笑)。予定調和が全くないのも問題なんだなと。かといって、真実が明らかになっていく後半もでっかく膨らませた風船が一気にしぼんでしまうような失速感に満ちていてイマイチだったし。。

あとアクションに関しても、ジェイソン・ボーンを引き合いに出してしまった時点で分が悪い面があるとはいえ、例えば主人公が追っ手から逃げる時に片側3車線の道路を車にひかれそうになりながら横断するシーンがあるけど、見てて全然ヒヤヒヤしないのw

全体的にチープで子供だましな撮り方で、体張ってますという触れ込みと実際どう撮ってどのように見せるかという違いを分かっていない。

原作の方が何十倍も面白いんだろうなぁってのがありありと伝わってくるような映画だった(笑)ってそれじゃダメじゃん!

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プラチナデータ

O0800113512401227792出演:二宮和也、豊川悦司、鈴木保奈美、生瀬勝久、杏、水原希子、遠藤要、和田聰宏、中村育ニ、萩原聖人

監督:大友啓史

(2012年・東宝・134分)WOWOW

内容:近未来の日本。警視庁の科学捜査機関である特殊解析研究所は全国民のDNAデータを収集登録する“プラチナデータ”を実現。それを活用した捜査システムを使えば一挙に犯罪撲滅を図れる期待がもてるため、政府もDNA法案成立を急いでいた。しかしそんな中、法案反対者やシステム開発の関係者が立て続けに殺害される事件が起きる。そして、犯人の残したDNAから捜査システムが導き出した犯人はシステム開発の責任者である天才科学者・神楽龍平だった。まさかの事態に逃亡を余儀なくされた神楽を、叩き上げの浅間刑事が追い詰めていくが・・・。

評価★★★/65点

原作既読。

全能の捜査システムを操る側にいた人間が一転して犯人として追われる立場になってしまう「マイノリティ・リポート」。

逃亡しながら真犯人を探し出し自らの容疑を晴らそうとする「逃亡者」。

国家によるハイテク監視システムの脅威を描く「エネミー・オブ・アメリカ」。

と、SF・サスペンス・ミステリーの3大要素を日本を舞台にしていながら程よく詰め込んでいる面白さと、近い将来ありえるかもしれないアナザーワールドとしてみれる面白さがあり、映像化には向いてるなと思いながら読破したのだけれど、映画化するにあたって主人公が二重人格という反則スレスレの荒技をうまく落とし込めるのかという不安は少なからずあった。

つまり、事件の時は別人格で、犯人はもしかして自分なのか?というサスペンスと、プラチナデータとは何なのかというミステリーを両立させることができるのかという不安だが、やはり予想通りこの設定が足を引っ張ってしまった感は否めず。

映像面に関しては小説を読んでこちらが思い浮かべていた脳内映像をはるかに凌ぐレベルで上々だったのだけど、話がやっぱ大味になっちゃったよねぇっていう・・・。

神楽はシロであるということに映画自体がはなっから確信をもって描いているし、肝心かなめのスズランが出てこないため二重人格設定が宝の持ち腐れになっていると思うし、そのネタバレに時間を割かなければならないため逆に犯人の動機の描き方やサスペンス要素が未消化になってしまったかんじがする。

まぁ、原作ものの映画化はえてして難しいものだけど、今回は特に難しいものだったように思う。

そういう意味では2時間スイスイと見れるエンタメとして手堅く作られているだけでも良しとしなければならないのかも。。

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ペイチェック 消された記憶(2003年・アメリカ・118分)MOVIX仙台

 監督:ジョン・ウー

 出演:ベン・アフレック、アーロン・エッカート、ユマ・サーマン、コルム・フィオール

 内容:仕事を終えると機密漏えいを防ぐために記憶を消されるという契約で、オールコム社の新システムの極秘開発を行っているSEのジェニングス。大仕事を終えた彼は、記憶消去後に報酬ではなく19個のガラクタを渡され、しかも謎の組織とFBIに追われるハメに。自分はなぜ追われているのか、その謎解きを始めるのだが・・・。

評価★★★★/75点

この頃のベン・アフレックは「パールハーバー」「デアデビル」「ジーリ」など駄作街道驀進中だったので、今作も右から左へ受け流すかのごとく記憶の断片にも残らない作品になっているのかなと勝手に思い込んでいた。

が、ふたを開けてみたら、あらビックリ。ベン・アフレック臭が消えているだけでなく、ヒッチコックを5倍くらい消臭剤で薄めて現代版にアレンジしたかんじで、ホントだったらそんなの評価低くするんだけど、もともと低かった期待値を大きく上回る出来だったということでww

ただ終盤も終盤になって白いハトが出てきてやっとで、あ、監督ジョン・ウーだったんだっけと思い出したくらいジョン・ウー節というか匂いが消されててこれまたビックリ。なにせジョン・ウー必須アイテムの銃が脇に追いやられてしまってるのだから無理もないか。

本当に開発されてたのは、超強力消臭剤だったのか!?

マジメなところジョン・ウー映画の辞書に“逃げる”という言葉が今までなかったように思われるのだけど、今回はそれを上手く採用したことがイイ方向に出たのでは。独特の匂いがしないという副作用もあったけどね。

夢のシネマパラダイス254番シアター:新世紀エヴァンゲリオン

新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH(TRUE)2/Air/まごころを、君に

Eva28 声の出演:緒方恵美、三石琴乃、山口由里子、林原めぐみ、宮村優子

総監督・原作・脚本:庵野秀明

監督:摩砂雪、鶴巻和哉

(1998年・東映・160分)DVD

評価★★/45点

内容:21世紀の第3新東京市を舞台に、人類と謎の生命体“使徒”との壮絶な戦いと、使徒を倒すべく造られた汎用人型決戦兵器エヴァンゲリオンを操る少年少女の苦悩を描いた長編アニメーション。1995年からテレビ放映されて話題を呼んだ連続アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の劇場版で、全26話のうち第24話までの総集編に新作カットを加えた「DEATH」編と、第25話と最終話を新たにリメイクした「REBIRTH」編の2部から成る『シト新生』が1997年に製作されたが、製作作業の遅れから「REBIRTH」編は未完成のまま公開された。そこで4ヵ月後にその完全版として、「第25話・Air」「最終話・まごころを、君に」で構成された劇場版のパート2となる『Air/まごころを、君に』が公開。さらに、1998年に『シト新生』の「DEATH」編を修正した「DEATH(TRUE)2」と、「Air/まごころを、君に」を併せた劇場版の本来の形というべき作品が公開されるに至った。

“タイタニックにはフィーバーしたが、エヴァにはフィーバーしなかった。そういうごくごくフツーの日本人です自分は(笑)。”

エヴァのアニメ放送の時は盛岡で高校生をやっており、エヴァブームなど露知らず。やっとのことでエヴァブームが飛び火してきたのが97年、大学2年のことだ。

レンタル屋でビデオを借りまくって見たのだが、最初の頃はイジイジしてヘタレな主人公シンジのキャラが逆に新鮮だったのと、“死海文書”“ロンギヌスの槍”“使徒”といった聖書に関連させた謎めいた用語の氾濫に象徴される壮大に広げた大風呂敷の魅力にひきこまれて見入ってしまっていた。

特に、シンジがエヴァ乗務を放棄し家出をして電車にあてもなく乗り続けるエピソード(第四話「雨、逃げ出した後」)など、全く正義のヒーロー然としていないばかりか、世界を救うエヴァに乗ることで逆に悩み苦しむ姿をさらけ出してしまう悲劇のヒーロー像というのは目から鱗ものだった。またそんな中で、突発的にキレてしまうような過激で残酷な暴力性があらわになる戦闘シーンもまた非常に印象的だった。

が、しかしである・・・。

だんだん回が進むにつれて、一向に成長していかずに幼児的ともいえる内的引きこもりに陥っていくシンジにイラッとしてきて、あげくの果てに風呂敷たたむ前に逃亡してしまうような収め方に愕然。

、、、と、ここで自分の中のエヴァブームは一気に冷めて、エヴァ劇場版には目もくれず長蛇の列に恋人と並んで「タイタニック」を2回も見てしまったのだった。

あれから10年、完全に忘却の彼方へ消えてしまっていたエヴァだったが、突如降って湧いたように「ヱヴァンゲリオン新劇場版」が公開されると聞いて10年ぶりにレンタルして再見してみることにした。

さて、10年ぶりに見た感想は、学生気分のぬるま湯にドップリ浸かっていた10年前と、社会に出て幾度となく挫折を経験するうちに下流層の最果ての地でジタバタしている今とでは、、、大した違いはなかった(笑)。。。

“気だるい平和”“途方もない日常”といった、モノがあふれかえり豊かすぎる社会が陥る目的意識を失った閉塞感が自らの実感としてなんとなく分かるようになってきた今日この頃だけど、そういう社会的バックボーンの時代的要請とエヴァがシンクロしているとまでは理解できず・・・。

ようするに今見てもよう分からんってこと。

“世界の命運”をたった14歳の肩に託し背負わせるにはあまりにもその肩はか弱すぎるという視点は面白いのだが、守らなければならない肝心の“世界”が描かれていない、またそこから派生する社会や大人の内面に対する想像力が決定的に欠如していると言わざるを得ないってことは今回見てより強く再確認したというかんじ。

その点で好対照をなすといえるのが、全然さえない高校生ピーター・パーカーが主人公のハリウッド映画「スパイダーマン」シリーズだと思うんだけど、これほど人間臭い主人公キャラもいないというくらい等身大のヒーロー像を提示してくれた。

一方、エヴァはサブキャラに至るまで全員何らかのトラウマやコンプレックスを抱え、三人称の世界とつながろうとせずに自己の存在理由をただただ自問自答しつづけ、決定的に自分自身が嫌いという病的なまでのナルシスティックなヒーロー像を描いてしまった。

しかも、ピーター・パーカーが苦悩と葛藤を経てヒーローとしての孤独を受け入れそこから自立・解放へと向かっていくのに対し、シンジの方は逆に苦悩から絶望へと足を踏み入れてしまい、あげくの果てにTVアニメ版では自閉症の極致で終わるという空しさだけが残る結末となってしまった。

一方、劇場版ではラストで、「やっぱり自分の殻に閉じこもって逃げていてはダメで他者としっかりと向き合うしかない」と、アスカの首を絞めながらとってつけたように言う。

それ自体、薄気味の悪いものだったが、そこに至るTVアニメ前半のあっけらかんとしたスタイルから監督の青くさいマスターベーションへと変容していくプロセスもまさに「気持ち悪い!」としか言いようのないものだった。

終わってみれば、生理的にダメの一言。。。

なんだろ、美味そうなお菓子だなと思って口に入れたら、ミルクリキュールの洋酒が入っていてお口に合わないといったかんじだろうか。

とかなんとかいって「ヱヴァンゲリオン新劇場版」も怖いもの見たさで見ちゃうんだろうけど・・・。

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ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序

Gam0810060714000p1 声の出演:緒方恵美、三石琴乃、山口由里子、林原めぐみ、立木文彦

総監督・脚本:庵野秀明

監督:摩砂雪、鶴巻和哉

(2007年・日本・98分)CS

 

内容:2015年、第3新東京市。内向的な14歳の少年・碇シンジは、3年ぶりに父・碇ゲンドウと再会する。彼はそこで、極秘裏に開発された汎用人型決戦兵器“人造人間ヱヴァンゲリオン”初号機を見せられ、謎の敵“使徒”との戦いを強要される。最初は反発するシンジだったが、代わりに乗務することになった少女・綾波レイの重傷を目の当たりにして、自ら出撃を決意する・・・。

評価★★★/65点

エヴァにそんな思い入れもない自分からすると、これで何回目の劇場版やねん!よう飽きないなぁ、というかキモイよこのオッサンww、、と思っちゃって、またREBUILDだとかわけの分からん看板をつけやがって、、、、

、、と見る前からバカにしてた本作だったけど、いざフタを開けてみたら、キモイ臭は消えてて、あれっ?意外にイケちゃうくち?と感じてしまうほど見やすいというか、とっつきやすい作品になっていて個人的には好印象。

まぁ、TV版の一話~六話までを誰が見ても分かるようにスタンダードに手堅くまとめたといえばそれまでだけど、TV版の映像を丹念に精査修正し、強化したというだけあって、かなりクオリティの高い映像になっていて、いやでも見入ってしまうほどの見応え感はあったように思う。

人物については、TV版でキモチ悪いくらいの内面描写をさんざん見せつけられてきたので、はっきりいってどうでもいいんだけど(笑)、古臭さや懐かしさよりも全体的に新鮮なかんじで見れたのは、これもまた意外だったかも。

ここらへんは、やはりエヴァや使徒のデザインなど細かな部分がリファインされ、メカ重視というロボットアニメ本来の立ち位置に戻って足を着いているのが大きいのだと思うけど、これが中編“破”、後編“急”“?”でどうブレブレに揺れて壊されていくのか気がかりではあるわな。

怖いもの見たさで行くっきゃない!?ゲロ吐くかもしれないけど・・・(笑)。。

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ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破

Img_0声の出演:緒方恵美、林原めぐみ、宮村優子、坂本真綾、三石琴乃、山寺宏一

総監督・脚本:庵野秀明

監督:摩砂雪、鶴巻和哉

(2009年・日本・108分)DVD

 

内容:第3使徒が北極に出現。海外のパイロット、マリ・イラストリアスのエヴァ5号機が迎え撃つ。一方、日本では第7使徒が出現するも、ヨーロッパから帰還したアスカのエヴァ2号機が鮮やかに殲滅。そしてアスカはシンジの中学校に転入し、ミサトのマンションの新たな同居人になる。その後何かとギクシャクするシンジ、レイ、アスカだったが、第8使徒との戦いや学園生活を通して打ち解けていき、チームワーク育成のために骨を折っていたミサトも安堵するのだが・・・。

評価★★★★/75点

前作「序」が旧テレビアニメシリーズをほぼ踏襲した総集編みたいな作りになっていたので、今作もそのように見始めたらオープニングから新キャラが出てきて目が点。その後も旧シリーズとは真逆のベクトルのほとんど別物といっていい内容になっていて嬉しい驚きだった。

その真逆のベクトルとは、鬱々な旧シリーズとは正反対のポカポカ陽気な良い意味でポジティブな手触りのする作品になっていたことで、嫌悪感のない垢抜けた作風がかなり新鮮に目に映った。

つまり“拒絶”と“孤独”が新機軸だった旧シリーズと比べると、今作は“肯定”と“絆”というベクトルになっていて、まぁごくごく普通のアニメになったがゆえの見やすさということもできるけど、ナヨナヨしていない能動的で健康的なシンジも、シンジの差し出した味噌汁を飲むほど社交的になった綾波レイも、色気づくアスカも、旧シリーズの病的な気持ち悪さが印象にある自分としては、あ~なんだか君たち仲良く元気になって良かったねぇと嬉しくなってしまったし。

それゆえ、旧シリーズで使徒に侵食され暴走するエヴァ3号機をパイロットの鈴原トウジもろともシンジの初号機が打ち砕くプロットで、3号機パイロットがアスカに変更されているのも感情移入度が強い分かなり衝撃的で、そこらへんも上手く作ってるなぁと感心した。

あとは、使徒やメカの造形、エヴァの機動性など絵のクオリティがとにかく高くて、2号機の登場シーンなんて垂涎ものだったし、総じて全面的にアグリー(肯定)できる作品になっていたと思う。

ま、旧シリーズあってこその今作という点はかなり大きいと思うけども。良い意味で裏切られたな。やれば出来るんじゃん庵野さんww

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ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q(2012年・日本・95分)DVD

 総監督・脚本:庵野秀明

 監督:摩砂雪、前田真宏、鶴巻和哉

 声の出演:緒方恵美、林原めぐみ、宮村優子、坂本真綾、三石琴乃、石田彰

 内容:第10使徒に取り込まれた綾波レイを初号機で救出してから14年後。ミサトらが結成した反ネルフ組織“ヴィレ”の艦艇で目覚めたシンジだったが、ニア・サードインパクトを引き起こした張本人として危険人物扱いされ、エヴァに乗ることも禁止される。そんな中、ネルフのエヴァMark09がシンジを連れ戻そうと急襲。シンジはそのエヴァに導かれるようにネルフ本部へ向かう。そして父ゲンドウの紹介で出会った謎の少年・渚カヲルと親しくなるが・・・。

評価★★☆/50点

「序」でヌクヌクし「破」でポカポカし「Q」でグツグツしと思いきや、カッチコチってなんでやねん!

どこまでいっても分かり合えない、やっぱりエヴァはエヴァだった(笑)。

生きてるアスカ?葛城艦長?あれから14年?反ネルフ組織ヴィレ?シンジの母親の名前が碇ユイじゃなくて綾波ユイ?カシウスの槍?ニアサードインパクト?アダムス?L結界密度?

一切説明無し!

なんだろ、ニンゲン観察モニタリングで全く想定していない別ものバージョンを見せて、お口ポカンな観客をあざ笑う企画みたいな、、って誰が得するんだコレ。。見る側をほったらかして突っ走る。こんな映画見たことないという意味では金字塔だわ。

庵野にこそ暴走しないように首輪爆弾着けるべきじゃないのかw

P.S.「巨神兵東京に現る」は良かった。CG無しであそこまで細密かつド迫力の映像を見せられてかなりテンション上がった。それゆえに本編のQには文字通りお口ポカン状態になってしまったが・・。

2019年9月16日 (月)

夢のシネマパラダイス574番シアター:ショービズ界の光と闇

アーティスト

Artist2 出演:ジャン・デュジャルダン、ベレニス・べジョ、ジョン・グッドマン、ジェームズ・クロムウェル

監督・脚本:ミシェル・アザナヴィシウス

(2011年・フランス・101分)WOWOW

内容:1927年ハリウッド。人気絶頂の大スター、ジョージ・ヴァレンティンは女優の卵ペピーと出会い、自身の新作でエキストラの役を手にした彼女に優しくアドバイスを送る。やがて時代はサイレントからトーキー映画へ。ジョージはサイレントにこだわり続けるが、映画は大コケし、瞬く間にスターの座を滑り落ちていく。一方、ジョージとは対照的に、ぺピーは時代の波に乗ってスターの階段を駆け上っていく・・・。

評価★★★★★/100点

文句の付けようがない映画だ。

特上A5ランクの神戸牛に誰もケチをつけられないのと同じくらい文句の付けようがない(笑)。

もちろんそこには用意周到な計算づくの演出があるわけだけど、サイレント&モノクロであることも含めて、それが嫌らしさやあざとさとして感じさせないだけの魅力と求心力がこの映画にはある。

スター男優がプレミアショーで出会った新人女優と恋に落ちるものの、成功への階段を登っていく彼女を尻目に下り坂のスター男優は酒に溺れる日々を過ごし、彼女の愛も空しく彼は自らの命を絶とうとする、、というプロットはジュディ・ガーランドの「スタア誕生」そのまんまだし、サイレント映画の時代が終わりを告げ、ミュージカル映画が産声を上げた瞬間であるトーキー初期のハリウッドのドタバタを描いているという点では、ジーン・ケリーの「雨に唄えば」を髣髴とさせる。

また、忘れられたスターの悲劇を描いた作品としてはチャップリンの「ライムライト」とかグロリア・スワンソンの「サンセット大通り」があり、今回のフランス映画は少なくとも一介の映画ファンにとっては至極スタンダードな筋立てになっている。

しかし、これらの名作と今回の作品が決定的に違うのはそのラストだ。

一連の作品は破滅的なスターの末路を描いているのに対し、今回はトーキーの象徴ミュージカル映画によって見事に復活をとげる。

また、「雨に唄えば」でサイレント映画のスター女優が聞くに堪えない甲高い声の持ち主だったためトーキーの流れに取り残される顛末が描かれるけど、今回ジョージがラストに発する声は、ダミ声かと思いきや実にシブい声。トーキーに移行しても絶対に生き残っていける声だろっていう(笑)。

で、終わってみると、憎まれ役もいなければ悲劇もないという実にハッピーな映画に仕上がっていて清々しい気持ちにさせてくれるし、メガネの上から3Dメガネをかけなければ映画を見られない時代にあって、役者の表情やしぐさ、カメラの動き、映画の映像だけを頼りに想像力を働かせながら感情、台詞、文脈を読み取るという、よりシンプルに映画を見る面白さを味わわせてくれた。

また、要所要所でジョージの焦燥や悪夢、喜びといった心象を表すものとしてコップを置く音やヒラヒラと舞い上がった羽毛が地面に落ちた時につんざく爆発音、そしてラストのタップダンスで軽快に鳴り響く靴の音など効果音が文字通り効果的に使われているし、スクリーンに映った自分の影がスクリーンから退場していったり、飲んだくれになったジョージをミニチュアサイズの自分がはやし立てるシーンなど現代技術も印象的に使われていて、単なる懐古趣味なサイレント映画にはなっていないところも良い。

難クセのつけられない映画だ。

アカデミー賞を獲ったのも納得である。ブラボー!!

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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

Small 出演:レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピット、マーゴット・ロビー、エミール・ハーシュ、マーガレット・クアリー、カート・ラッセル、ゾーイ・ベル

監督・脚本:クエンティン・タランティーノ

(2019年・アメリカ・161分)TOHOシネマズ日本橋

内容:1969年のハリウッド。50年代にテレビ西部劇シリーズで人気を博したリック・ダルトンは、映画俳優への転身を目指すも完全に落ち目。そんなリックを専属スタントマンのクリフ・ブースは公私ともにサポートしていた。そんなある日、高級住宅地にあるリックの豪邸の隣に、今をときめくロマン・ポランスキー監督と妻で新進女優のシャロン・テートが引っ越してくる。ショービズ界の光の輝きにあふれた夫妻との差を痛感したリックは、わずかな光明を求めてイタリアでマカロニウエスタン映画に出ることにするが・・・。 

評価★★★★/80点

自分が映画をこよなく愛するようになった中学~大学時代の90年代。

ハリソン・フォード、シュワちゃん、スタローン、ジャッキーは気付いた時にはすでに横綱級の大スターだった。

そんな中、1作ごとに十両→幕内→小結→関脇→大関→横綱へとステップアップしていく過程をリアルタイムで見れたのはブラピとディカプリオが最初であり、今に至るまでそういうスターが現れていないという点では最後でもあるかもしれない。

ブラピは、「リバーランズスルーイット」1992→「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」&「レジェンド・オブ・フォール」1994→「セブン」1995→「ジョー・ブラックをよろしく」1998→「ファイト・クラブ」1999→「ザ・メキシカン」&「オーシャンズ11」2001

ディカプリオは、「ギルバート・グレイプ」1993→「バスケットボール・ダイアリーズ」&「太陽と月に背いて」&「クイック&デッド」1995→「ロミオ&ジュリエット」1996→「タイタニック」1997→「仮面の男」1998→「ギャングオブニューヨーク」&「キャッチ・ミー・イフ・ユーキャン」2002

スクリーンやロードショーといった映画雑誌で見ないことはないくらい表紙を飾っていた時期だ。

同時代に同じような曲線を描いたスター街道を歩んできた2人にようやく訪れた共演は、まるで永遠のライバルであるメッシとロナウドが同じチームでプレーするかのようなワクワク感にあふれている。黄色いキャデラックに2人が同乗してるのを見るだけですでに満足みたいな(笑)。

しかも、2人の役柄の兄弟以上夫婦未満という関係性が絶妙に良くて、2人を引き立たせるように半歩下がっているタランティーノの指揮も見事。

その中でも虚々実々の作劇の上手さ、そしてしっかり劇中映画でオタク悪趣味を炸裂させているのはさすがだったし、シャロン・テート事件の予定調和をぶち壊す火炎放射器に喝采w!

個人的にドツボだったのは、ブラピに投げ飛ばされるくらいに実は弱かったブルース・リーと、ディカプリオ宅の駐車場にある看板がジャック・ニコルソンに見えて仕方なかった件ww

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サンセット大通り(1950年・アメリカ・110分)NHK-BS

 監督・脚本:ビリー・ワイルダー

 出演:グロリア・スワンソン、ウィリアム・ホールデン、エリッヒ・フォン・シュトロハイム

 内容:B級映画の脚本家ジョーは、借金取りから逃れようと荒れ果てた邸宅に逃げ込んだ。そこには、かつての大女優ノーマ・デズモンドが、過去の栄光にすがりつきながら暮らしていた。ジョーの仕事を知ったノーマは、再起を図るために自ら書いた脚本「サロメ」の手直しを頼み、邸宅に住まわせる・・。

 評価★★★★/75点

ノーマの目線ジャブ攻撃に身震いした後、クローズアップで12回KO負け!

夢に出るぞこれww

トーキーの波に乗り一世を風靡したグレタ・ガルボ、トーキーの波に飲み込まれたノーマ。

グリフィス、デミルそしてマックス。

容赦のない光と影。

エリッヒ・フォン・シュトロハイム、バスター・キートンの痛烈な起用。

ワイルダー、あんたって人は、見事だ。。

また、「アパートの鍵貸します」の原案がすでにこの映画で語られていることも非常に興味深い。

さらにこの映画、グロリア・スワンソンの実人生ともダブって見えて興味深かったが、実際の撮影現場はワイルダーと意見交換しながらアイデアを出し合い、ユーモアあふれる和気あいあいとしたものだったと聞いてちょっと安心した。

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8 1/2(1963年・イタリア・140分)NHK-BS

 監督・脚本:フェデリコ・フェリーニ

 出演:マルチェロ・マストロヤンニ、アヌーク・エーメ、クラウディア・カルディナーレ、サンドラ・ミーロ

 内容:一流映画監督のグイドは、周囲の次回作への期待がプレッシャーになって心身ともに疲れ切っていた。そこで医者の勧めで温泉保養地に行き新作映画を撮ろうとする。が、そこでもアイデアは浮かばず、絶えず現実とも虚構ともつかない幻想に悩まされていく・・・。

評価★★★/65点

映画製作の裏側を描いた映画はロバート・アルトマンの「ザ・プレイヤー」(1992)とかあるけど、映画監督という個人の内面にのみ焦点をしぼった作品はあまりないと思う。

主人公が監督であれプロデューサーであれ、周りから恨みつらみを抱かれて製作がうまく回らないというのがよくあるパターンで、そういう因果関係の明瞭としたプロットの枠の中に主人公の主観含めて収められるのが、まぁハリウッド映画特有の分かりやすさなんだよね。

ところが、これはそういう文法どころか時間や空間的な垣根さえすっ飛ばして、さらに夢や無意識下の幻想までもが入り乱れて既成概念の全く通用しない構成に・・。

何を撮りたいのかすらもはや分かってないけど、自分のぼんやりした悩みをとりあえず即興で撮ってみました、、ってこの企画が通っちゃうこと自体フツーじゃないってばww

“映画の魔術師”フェリーニの異名の何たるか、、まだまだ自分は映画の勉強が足りない小僧っ子です・・w

2019年9月15日 (日)

夢のシネマパラダイス20番シアター:ディズニーアニメ第2倉庫

ズートピア

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声の出演(吹き替え版):上戸彩、三宅健太、高橋茂雄、玄田哲章、竹内順子、Dream Ami

監督:バイロン・ハワード、リッチ・ムーア

(2016年・アメリカ・108分)WOWOW

内容:肉食動物も草食動物も関係なく共生している動物たちの楽園ズートピアで史上初のウサギの警察官となったジュディ。しかし、周りからは半人前扱いされ、任されるのは駐車違反の取り締まりばかり。そんな中、巷では連続行方不明事件が多発し、ジュディにも捜査へ参加するチャンスが巡ってくる。そして偶然知り合った詐欺師のキツネ・ニックとともに捜査をするのだが・・・。

評価★★★★/75点

アニメが本来持つ伝える力の純度の高さというものをこれほど感じられる作品はないのではなかろうか。

様々な個性を持ったアニマルキャラが共存する自由の地ズートピアをユーモアたっぷりに描きながらも現実の人間社会とリンクさせ、肉食動物と草食動物、大型動物と小型動物、オスとメス、マジョリティとマイノリティなど様々な要素にメタファーを織り込み、見ているこちら側にまで先入観や偏見をさりげなく植え付ける仕掛けになっているところがこの映画のミソ。

また、アイスショップでキツネにはアイスは売らないと言われてすったもんだするシーンなんかも、キツネは少々差別を受けても仕方ないよなとスルーしちゃったし、事件のキーワードとなる“夜の遠吠え”=オオカミの仕業と推理するくだりもオオカミが犯人ならとどこかで納得してしまうし、正義感が強く警察学校を首席で卒業した優秀なジュディなら間違うはずがないと思ってしまう。

ここら辺の先入観を逆手に取ったミスリードの仕方が実に上手くて、お手柄を立てたジュディが「狂暴化したのは肉食動物だけだから、生来持つDNAのせいなのかも」「けどニック、もちろんあなたは別よ」と発言してしまうところで、理性がもたらす“悪意なき差別”に我々もハッと気付かされることになる。

その気付きを学んで、ジュディとニックは悪意ある差別をまき散らそうとする真の黒幕を一刀両断するわけで、一筋縄ではいかない差別・偏見のはびこる人間社会を分かりやすい縮図として表し、お互いの違いを認め合うことの大切さという子供から大人まで理解できるメッセージ性を有した作品に仕上げてしまうのだから恐れ入る。

そして、ここまで高いクオリティを保った作品を提示できるのは、たぶん今ディズニーしかないということも実感してしまうジブリファンなのだったw

P.S. 日本アニメは宮崎駿、押井守、大友克洋、新海誠など作家性が前面に出るのが常なので、今作みたいにディズニー印のもとに共同監督+脚本家7人なんていうアベンジャーズばりのチーム体制で作り上げていく手法は日本ではあまり出来ないのかもね。。

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ベイマックス

45110声の出演(吹き替え版):川島得愛、本城雄太郎、菅野美穂、小泉孝太郎

監督:ドン・ホール、クリス・ウィリアムズ

(2014年・アメリカ・102分)WOWOW

内容:近未来の最先端都市サンフランソウキョウ。幼い頃に両親を亡くした14歳の少年ヒロは、兄のタダシとともに叔母キャスのもとで暮らしていた。飛び級で高校を卒業してしまった天才のヒロは、タダシが通う大学に入ることを夢見ていた。そして入試を兼ねた研究発表も無事終わるが、その会場で爆発事故が起こってタダシが命を落とし、ヒロはメンタルをすっかりやられてしまう。そんな彼の前に現われたのは、タダシが残した形見のケアロボット“ベイマックス”だった・・・。

評価★★★/60点

主人公の少年がトトロとゴーストバスターズのマシュマロマンを掛け合わせたようなツルツルロボのベイマックスに包み込まれるように抱き寄せられる予告編のワンシーンくらいしか予備知識がない中で見たんだけど、予告編のイメージとしてはピクサーのウォーリーと未来少年ヒロの友情癒やし系物語かと思っていた。

しかし、見始めていくと次第にMr.インクレディブル的ヒーローアクションものの様相を呈してきて、最後はマーベルのロゴがでん!と出た後にスタン・リーまで出てきて。

そっか、、原題のビッグヒーロー6ってそういうことだったのか・・・。

うまいこと予告編に刷り込まれたかんじだけど、マーベルヒーローという前情報だけでも知ってればもっと面白く見れたはず、と思ったのは自分だけw?

でも、そうはいっても今回の作品はウォーリーの擬人化されたキャラの豊かな感情表現にも、Mr.インクレディブルの魅力的なキャラクター造形のアンサンブルにも遠く及ばないけどね

やっぱりピクサーに比べるとディズニーはひとかけの隠し味の工夫と、もうひとかけの毒気が足りないんだよなぁ。。

せめてビッグヒーロー6のチームメンバーになるヒロのオタク同級生たちをもっと前面に出してほしかったな。

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アナと雪の女王

T0018069p声の出演(吹き替え版):神田沙也加、松たか子、原慎一郎、ピエール瀧、津田英佑、多田野曜平

監督:クリス・バック、ジェニファー・リー

(2013年・アメリカ・102分)WOWOW

内容:アレンデール王国の幼いプリンセス姉妹エルサとアナ。姉エルサには触れたものを凍らせてしまう魔法の能力があったが、ある時、不注意で妹アナに怪我を負わせてしまう。それ以来、責任を感じたエルサは部屋に引きこもってしまう。それから時は流れ、国王夫妻が事故で亡くなり、エルサは王位を継ぐことに。しかし、戴冠式の最中に力を制御できなくなり、真夏の王国を厳冬に変えてしまったエルサは、王宮から逃亡し、今度は雪山に築いた氷の城に引きこもってしまう。アナは、なんとか姉と王国の危機を救おうと雪山へ向かうのだが・・・。

評価★★★★/75点

2014年記録づくめの特大ヒットとなった今作をリアルタイムで見ていない自分は世の中のフィーバーをいくぶん冷めた視線というか半信半疑で見ていたところがあった。

それはディズニーアニメは大人の鑑賞に耐えうるものではないという先入観がいまだに拭いきれていなかったからだ。いまだにというのは「塔の上のラプンツェル」(2010)が目を見張るような良作だったのに対し、その流れがアナ雪にも受け継がれているのかまだ十分信用できなかったということで

しかし、満を持して見てみたら、その流れはちゃんと踏襲されていて水準以上の作品になっていたと思う。

その流れとは具体的には3DCGの作画技術が生み出す魅力的なキャラクタリゼーションにあるといっていいと思うけど、特に顔の造形力と表情筋の豊かさは特筆もので、実写の質感に寄せていくリアル志向なベクトルではなく、あくまでアニメーションであることを意識したデフォルメとクレイアニメに近い柔らかく暖かみのある質感が親近感のわくキャラクターにつながっていて、そのポイントがアナ雪ではより強調されて描かれていたと思う。

それにより複雑な感情表現も登場人物に違和感なく反映されていて、それが自然と個性に昇華されているのが最大の強みだと思う。

これはジョン・ラセターをはじめとするピクサーの血が入り込んでいることが大きいと思うけど、反面ストーリーラインの方がオーソドックスで平板にすぎて、歴史的なメガヒットに足る魅力があったかといえばやや疑問。

姉妹に愛憎劇が絡むと「何がジェーンに起ったか」(1962)のようなおぞましいほどのスリラーに変貌を遂げちゃうけど、ディズニーの王道プリンセス物語に沿った予定調和なソフトタッチがやや物足りなかったかな。

さっき複雑な感情表現と書いたけど、その点ではまだまだ足りなかったし、例えばエルサの苦悩はもっと掘り下げてもよかった。エルサの感情が爆発するレット・イット・ゴーもう歌っちゃうの!?と正直意表をつかれちゃったし。エルサにしろアナにしろ、あるいは両親の死など、それぞれの要素がこちらの感情を強く喚起するまでの奥行きと広がりに乏しかったのはかなり惜しかった。

しかし、それを補ってあまりあるミュージカルの魅力は満載で、さすがミュージカルの本場アメリカだと思わせてくれる素晴らしさだった♪

考えてみればディズニーアニメで1番の傑作「美女と野獣」も音楽と作劇が見事に融合していたけど、それを彷彿とさせるかんじだったし。

で、結局メガヒットの最大の功労者は、音楽の力、そして神田沙也加と松たか子の吹き替えに尽きるってことなのかなと(笑)。

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プレーンズ

Poster2声の出演(吹き替え版):瑛太、石田太郎、井上芳雄、山口智充、小林沙苗、天田益男

監督:クレイ・ホール

(2013年・アメリカ・92分)WOWOW

内容:田舎の農場で働く農薬散布機のダスティは、世界一周レースに出てチャンピオンになることを夢見ていた。レース用飛行機ではない彼の夢を誰もまともに取り合ってくれない中、親友の燃料トラック・チャグとフォークリフト・ドッティだけは応援していた。その甲斐もあり、ダスティは奇跡的に本選出場を決めるが、高所恐怖症という最大の弱点をどうにも克服できずにいた・・・。

評価★★★/60点

ピクサー製作「カーズ」のスピンオフ企画だけど、ピクサーではなくディズニーが製作している変わり種。

話の構成や画作りも「カーズ」をほぼ踏襲しているんだけど、なぜいまいち面白くないんだろう・・

なんかピクサーとディズニーのレベルの差が如実に表れちゃったかんじだけど、その差はシナリオの精度といってよく、絵は同じでもシナリオに魅力がないと全体として歴然としたレベルの差になってしまうという、これほど分かりやすい対照実験もないよな

特に挫折と成長というキーワードを欠いた主人公のキャラクターが映画を一本調子なものにして奥行きを狭めてしまっているんだよね。

その点ピクサーはそこに時間と手間ひまをかけて上手く作っているわけで。

まぁ、正直今回のはテレビ映画向きのレベルだよね。と思ったらもともとそういう企画だったのかい。納得。。

P.S. 2作目も似たようなもんでした・・・w

2019年9月 1日 (日)

夢のシネマパラダイス164番シアター:パニック・ルーム

ルーム

O0480091513629160745 出演:ブリー・ラーソン、ジェイコブ・トレンブレイ、ジョーン・アレン、ショーン・ブリジャース、ウィリアム・H・メイシー

監督・レニー・アブラハムソン

(2015年・アイルランド/カナダ・118分)WOWOW

内容:5歳の誕生日を迎えたジャックは、天窓から空しか見えない狭い部屋に母親ジョイと2人で暮らしていた。外には何もないと教えられ、部屋の中が世界の全てだと信じていたジャック。しかしその日、ジョイから自分たちはある男に拉致監禁された身であることを告げられる。そして脱出するために、ジョイは綿密な計画を立てて行動を開始するのだが・・・。

 

評価★★★★/80点

アカデミー主演女優賞目当てで見たけど、本当の見所は子役にあった!というオチ。

高校生の時に拉致監禁レイプされ、犯人との間に子供までもうけてしまい、7年経過したというあまりにも衝撃的な題材ながら、生まれた時からルームの中の世界しか知らない子供の無垢な空想視点を主軸に据えたことでルーム脱出前の嫌悪感すれすれのシリアスな要素を中和しているのがこの映画のキモ。

さらに、映画のメインとなるルームからの解放後も、好奇の目から気を病んでいく母親に対し、あっという間に新たな環境に適応していく子供のまっさらな感性が優しく包み込み母親をつなぎ止める。

子供の力がこの映画の何よりの生命線だったのだとすれば、子役の演技は文句なしの120点満点!

どのようにこんな難しい役柄を子供ながらに咀嚼して演技に持ち込んだのか考えただけで凄いなぁと感心しちゃうけど、お願いだからマコーレー・カルキンとかブラッド・レンフロのような悲劇的な道は歩まないでねw

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パニック・ルーム

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出演:ジョディ・フォスター、フォレスト・ウィテカー、ドワイト・ヨーカム、ジャレッド・レト

監督:デビッド・フィンチャー

(2002年・アメリカ・112分)MOVIX仙台

評価★★★/65点

 

内容:マンハッタンの高級住宅地。離婚したメグは11歳の娘サラを連れて、4階建てのエレベーター付き、かつ頑丈な“パニック・ルーム”付きの一軒家に引っ越した。しかし、その夜、何者かが家に侵入し・・・。

“自分だったら失禁しちゃうけどね・・・”

母娘たった2人で4階建てに住んじゃう神経も一般庶民の自分にとっては尋常ではないけど、それはともかくとしてあのメンツが実際ウチに入り込んできたら失禁しちゃうと思うマジでww冗談じゃなく、ウン。。

なのに、なにを呑気にトイレでオシッコしてるんだよジョディおばさんったら。眠いのは分かるし、水洗の音が犯人たちをビクリとさせたのも分かるけどさ。

なんだかユルいんだよね全体的に。

感覚的なものもあるけど、具体的にはパニック・ルームに備え付けられているモニターがご親切にもやけに多いことと、鍵穴まで通り抜けてしまうまるでネズミのようにチョロチョロと動き回るように見せかけて実は計算されつくした精密機械じかけのカメラワークが悪い意味で一役買っちゃってるかなと。

サスペンス・スリラーなはずなのに、安心・安全・安定の3大保険に加入しちゃってるんだよね・・。

一生懸命外で大雨降らせて不安感煽っても、この3大保険の効力の前にはなすすべなく、緊迫緊張などどこ吹く風。

緊張感がないから、パニック・ルームの鉄扉に手をはさんじゃうんだよ覆面レスラー、、ちゃう覆面ドロボーさんよ(笑)。

フォレスト・ウィテカー演じる犯人が、オレがこの頑丈な部屋を造ったんだと何度も豪語してらしたが、オレがこの一見何の穴もない流麗かつ完璧な映画を作ったんだと雄弁に語るデビッド・フィンチャーの神の手が垣間見えて余計に“つくりもの”世界という感が否めなくて、母娘の命をかけた攻防戦にイチイチ入り込むことができず、フツーにボーッと見てしまった。TV向きだねこれは。。

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