夢のシネマパラダイス568番シアター:天下分け目の決戦!
レッドクリフPartⅠ
出演:トニー・レオン、金城武、チャン・フォンイー、チャン・チェン、ヴィッキー・チャオ、中村獅童、リン・チーリン
監督:ジョン・ウー
(2008年・中/日/台/韓・145分)盛岡フォーラム
内容:西暦208年。魏の曹操は呉蜀の制圧に向け80万の大軍を率いて南下を開始した。最初の標的となった僅か2万の劉備軍は、関羽・張飛・趙雲らの猛将を擁しながらも敗走を重ねる。そして、天才軍師の諸葛孔明は、江東の孫権との同盟を結ぶ以外に道はないと進言し、自ら呉の地へと赴く。そこで孔明は、呉の司令官・周瑜と出会う。。
評価★★★★/75点
人形劇、漫画、TVゲームと子供の頃から連綿と付き合ってきた三国志が満を持して実写映画として登場!ということだけでも血湧き肉躍る心持ちにさせられるのだけど、と同時に横山光輝が60巻かけて描いた大長編を2部作とはいえ描ききるのは到底無理という中で、三国志最大の見せ場である赤壁の戦いに的を絞ったのは賢いやり方だったとは思う。
その中で、人物紹介もそこそこに観客をいきなり渦中に巻き込む演出は三国志初心者の目にどう映るかは疑問だけど、織田信長や徳川家康、武田信玄にいちいちキャラクター説明が不用なように、三国志の登場人物も同じである自分からするとかなり満足のいく出来。
唯一、劉備だけは覇気のないオッサン風のバカ殿っぽく描かれていて意外だったけど、孔明や関羽を引き立たせるための設定だったのかも。そういう点では孫権もやや頼りなさげで、これも周瑜を引き立たせるためだったのだろう。
まぁ、演出といったって、ぶっちゃけオールスターキャスト時代劇の忠臣蔵を見るようなものだから、大ボケかまさないかぎりは面白くならないはずがないフォーマットだからね。
その中で、全体としては、人海戦術とCGを駆使したド派手な戦闘アクションを基本とした構成の中で、関羽・張飛・趙雲といったおなじみの英雄の大見得を切る見せ場もたっぷりあってファンとしては嬉しいかぎりのシーンの連続だったし、周瑜と孔明のカリスマ博識バトルはゾクゾクもの、絶世の美女・小喬(リン・チーリン)には目を奪われっぱなし、さらに三国志の様々なTVゲームで大変お世話になった最強布陣・八卦の陣を壮大な実写で見れたとくれば、あれよあれよという間の2時間半で、赤壁の戦いに向けてオイラのテンションはMAX状態!
まだ、大本番前の第一幕でしかないので評価しづらいところだけど、まずはこの壮大な歴史スペクタクルの夢の映像化に祝福を送りたい。
約15年ぶりにアジア圏に凱旋してきたジョン・ウーの並々ならぬ意気込みがスクリーンからも伝わってきたし、久々にこれが娯楽映画だ!と思える映画を見れた気がする。
第二幕に期待っス。
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レッドクリフPartⅡ-未来への最終決戦-(2009年・中/日/台/韓/米・144分)盛岡フォーラム
監督:ジョン・ウー
出演:トニー・レオン、金城武、チャン・フォンイー、チャン・チェン、ヴィッキー・チャオ、中村獅童、リン・チーリン
内容:80万の曹操軍を5万の軍勢で撃退した孫権・劉備連合軍だったが、依然として強い勢力を誇る曹操は、2千隻の軍船を率いて長江の赤壁へと進軍する。慣れない土地で疫病が蔓延するものの、曹操の非情な決断が功を奏し対岸の連合軍にも疫病が飛び火、劉備軍が撤退するハメに陥ってしまう。ひとり孫権軍に残った孔明と周瑜が策を練る中、周瑜の妹・尚香が曹操軍に潜入する・・・。
評価★★★/65点
PartⅠが145分だったからPartⅡもそのくらいじゃないとダメやろっちゅうことで作ったのかもしれないけど、完全に冗長な作品に堕してしまい、MAX状態だった自分のテンションは尻つぼみに・・・。
1作目は個々のキャラクターの見せ場を存分に引き出すことで娯楽大作として見所満載の作品に仕上がっていたけど、今回の第二幕の見せ場はスクリーンを焼き尽くさんばかりの爆薬たっぷりの炎と赤壁の海上戦のスペクタクルのみ。
たしかにそれで十分元は取れるのだけど、そこに介在する人間の魅力が決定的に乏しいのがなんともイタイ。
早々に劉備軍が撤退してしまうため、関羽・張飛・趙雲といった勇猛果敢な闘将の出番がほとんどなくなってしまったことがかなり影響していて、知将の周瑜と孔明の泰然自若の面構えだけが強調されすぎてしまい、さらに孫権も1作目同様パッとしなかったし、どうも人間味が足りず・・・。
さらに、蜀の将軍たちに代わって前線に出て行く周瑜の妹・尚香と敵のおデブ隊長とのロマンスも蛇足に過ぎて面白くないし、周瑜の妻・小喬の命を賭した決断と行動もイマイチ燃えず。
唯一、善悪二面性を強烈に持ち合わせた曹操だけが人間臭かったのはなんとも皮肉だ。
史実はどうあれ、人物がある程度ステレオタイプに描かれるのは致し方ないとしても、もうちょっと造型深く描いてほしかったかなと。
どうせだったら、関羽や張飛の出番が少ないぶん、他のキャラにもっとスポットを当てた方が良かったのかも。
例えば、赤壁の戦いにおいて重要な役割を担った呉の老将・黄蓋なんて絶対に面白いと思うんだけどなぁ。演じてる役者さんが北大路欣也に似てたしww
わざと周瑜と対立し、その不満を理由に曹操に投降した黄蓋。しかしそれは曹操を油断させるための偽りの投降で、戦いの火蓋が切って落とされると、自軍の軍船に火を放って曹操軍に突入。その最中、流れ矢に当たったものの九死に一生を得て火攻めの最大の功労者となった。わざと自身を苦しませて敵を欺いたこの黄蓋の行為は「苦肉の策」という名言の語源となったことでも有名だ。
ところがだ、映画ではこの苦肉の計は周瑜にあっさり却下されちゃって(笑)、かわりに小喬が曹操陣営に赴く話にすり替わってしまった。。
分かりやすすぎるくらい分かりやすいお話ゆえ、いろいろ脚色しやすかったのだろうけど、手を加えすぎて逆に「危急存亡の秋」(これも三国志からの語源)になってしまったら元も子もない。
とにもかくにも、第二幕はな~んか物足りなかったなぁ・・。
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関ヶ原
出演:岡田准一、有村架純、平岳大、東出昌大、北村有起哉、音尾琢真、滝藤賢一、西岡徳馬、松山ケンイチ、役所広司
監督・脚本:原田眞人
(2017年・東宝・149分)WOWOW
内容:1598年、豊臣秀吉が息を引き取った。幼い頃より秀吉に仕えてきた石田三成は、虎視眈々と次の天下の座を狙う徳川家康と対立していく。三成を筆頭にした文治派に不満を抱いていた福島正則・加藤清正をはじめとする武断派に甘言を説いて豊臣家臣団の分断を図るなど権謀術数を仕掛けてくる家康。それに対し三成は、天下を二つに割って家康と対峙し討つための準備を進めていく。そして1600年9月15日、三成率いる西軍優勢と思われる中で天下分け目の関ヶ原の戦いが幕を開けるが・・・。
評価★★★/65点
司馬遼太郎の原作は未読。
てっきり関ヶ原の戦場での状況を克明に描いていく作品なのかと思いきや、関ヶ原に至るまでの両陣営の経緯の方にかなりの時間を割いていて、見ている途中で関ヶ原に布陣したところでラストだったりして、とヤキモキしてしまった。
しかしまぁ、2時間半によくまとめて描ききったなぁと原田眞人監督の豪腕ぶりには感心してしまうけど、どうせだったら前後編に分ければよかったのに(笑)。
滑舌無視の早口言葉や方言丸出しでセリフが聞き取れない問題は置いとくとしても、関ヶ原への経緯を描いた再現ドラマを1.5倍速で見せられているような置いてけぼり感は少なからずあって、見る側にかなりのレベルを要求される映画なのはたしか。
完全に蛇足だった伊賀忍者とのエピソード含めて、面白さより中途半端なイマイチ感の方が勝っちゃったかなぁ・・。
例えば、敗軍の将として打ち首を待つ三成と天下取りの家康との対面シーンも「対面は無言で終わった」というナレーション付きのワンカットだけでスルーしてしまうツマラなさがあって、余韻も何もあったもんじゃないw
聞くところによると、当初は小早川秀秋を主人公にして描くプランもあったということで、映画の尺の制限を考慮すればそっちの方が分かりやすかったんじゃないかなぁ。あるいは、関ヶ原の前日にあった前哨戦・杭瀬川の戦いなどを織り交ぜた数日間の水面下の攻防とかけ引きに的を絞った方が、、というかそれが見たかった。。
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