夢のシネマパラダイス422番シアター:必ず訪れる“死”を見つめて・・・
世界から猫が消えたなら
出演:佐藤健、宮崎あおい、濱田岳、奥野瑛太、奥田瑛二、原田美枝子
監督:永井聡
(2016年・東宝・103分)WOWOW
内容:飼い猫のキャベツと暮している30歳の郵便配達員は、ある日、医者から脳腫瘍で余命わずかだと告げられる。そんな彼の前に自分と同じ姿をした悪魔が現れ、世界から何か1つモノを消すごとに寿命が1日延びると伝える。そうして彼は身の回りにあるモノを一つずつ消していくのだが・・・。
評価★★☆/50点
「素晴らしき哉、人生」の体をとった「素晴らしき哉、世界」。
何気ない物の存在を通して、かけがえのない人と人の繋がりや大切な出会いを語ろうという発想は今までありそうでなかったもの。
が、この映画を見て、なぜ今までそれが形にならなかったのか分かった。
話が陳腐すぎる(笑)。
世界から電話が消えたら恋人と出会っていなかった、、世界から映画が消えたら親友と出会っていなかった、、世界から時計が消えたら、、とモノがなくなることで大切な思い出が一つまた一つと消えていき、猫が消えたらそれこそ永遠の孤独に苛まれてしまうと感じた主人公はここまでして生きたくねー!とサジを投げるというお話w
って、捻りがなさすぎるわりに筋立てが大仰というか、そりゃ世界から電話や映画がなくなったら恋人どころか五万とある思い出がごっそり抜け落ちるだろ。。さらに電話のない世界って、おそらくインターネットすら生まれえないはずで、インフラ含めて現実からは想像できない激変世界になってるはずなのに、現実とそう変わらない風景だし。
なんか劣化したセカイ系を見せられたかんじで、ちょっとこの世界観や設定に入っていけなかった・・。
レタスとキャベツの猫エピソードは良かっただけに、題名通り猫一本に絞るか、あるいは恋人が映画館に住み込みで働いていて、友人もツタヤもどきで働いているんだから、世界からなくなるのは映画だけにしてエピソードを掘り下げていけば表面的にならずにすんだのに、とも思ってしまった。
だって電話越しにフリッツ・ラングの「メトロポリス」(1927)の劇伴聴き当てるって、いくら大好きな宮崎あおいでも三歩くらい引いちゃうよww
あとは、佐藤健が余命わずかに見えないってのがあって、正直言って濱田岳と入れ替えた方が良かったのでは・・。
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岸辺の旅
出演:深津絵里、浅野忠信、小松政夫、村岡希美、奥貫薫、蒼井優、柄本明
監督・脚本:黒沢清
(2015年・日/仏・128分)WOWOW
内容:夫の優介が失踪して3年、瑞希はピアノ教師をしながら孤独な日々を送っていた。そんなある日、優介が突然帰ってくるが、自分はすでに死んでいるという。そして3年の間を過ごした思い出の地をめぐる旅に瑞希を誘うのだった・・・。
評価★★★☆/70点
魂の抜け殻のような表情で知覚麻痺した生者と何食わぬ顔で現実世界の日常に違和感なく溶け込む死者の対比が、此岸と彼岸の境界をあいまいにしていて少々面食らってしまったけど、死者が生者を引きずり込むのではなく生者の方が死者を引き留めるという逆転の視点はなかなか面白い。
随所で宇宙物理学を引き合いに出して黒沢ワールドのあり得ない設定に理論武装を加えているけど、正直そんなのはどうでもよくてw、人が死を受け止めるまでの喪失感と後悔の念、その想いの深さや重さに共感できただけで十分だったように思う。
自分にも必ず訪れる最愛の人の死、そして自分の死。かけがえのない日々を一日一日かみしめて生きていこうと思った。
お盆に見るといいかもね。
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銀河鉄道の夜
声の出演:田中真弓、坂本千夏、堀絢子、一城みゆ希、常田富士男
監督:杉井ギサブロー
(1985年・日本・107分)NHK-BS
評価★★★★/75点
内容:宮沢賢治の名作童話を登場人物を猫に置き換えて映画化した、幻想的な長編アニメーション。父親が北洋漁業へ出たまま帰らない少年・ジョバンニは、病気の母を抱えて、放課後は文選工として働いていた。学校では級友達からいじめられ、親友のカンパネルラだけが彼をかばってくれる。ある時、丘の上で星空を見上げていたジョバンニの前に、不思議な汽車が出現した。彼が乗り込むと、車内にはカンパネルラがいて、2人は銀河への旅へと出掛けていく・・・。
“ハリポタに出てくる「闇の魔術に対する防衛術」を習得したいくらい、この作品で描かれる「闇」は深遠かつ幻想的、そしてなにより絶望的だ。”
幼稚園のときに劇場で見たのだが、その時にはっきりとこれは他のアニメ(例えば東映アニメ祭りとか)とは違うという違和感と言い知れぬ不安と恐怖を抱いたのを覚えている。
今見返してみてもあの時の感覚は如実によみがえってくるし、印象もさほど変わらない。
変わったといえば、“闇”というものが宮沢賢治の作品世界で重要なファクターを占めているということが、彼の様々な物語に触れてきたことによって今では理解できる、そのことを念頭に置いて今はこの映画を見られるということくらいか。
その観点でいえば、この映画は宮沢賢治の作品世界を非常に上手く表現してくれたと思う。
特に闇。
題名に夜とあるので当然といえば当然なのだけど、夜の暗闇、夕方から夜にかけて薄暗くなっていく森を覆っていく暗闇、銀河の星々を巡る漆黒の銀河鉄道、その宇宙空間の暗黒、そして人物の心に巣食う孤独の闇。
それが絶望的な“闇”として当時幼稚園児だった自分に落ちてきたのだ。
そう、草むらで星空を見つめていたジョバンニに天が降ってきたように。
その不安な“闇”は、例えば固く閉ざされたドアの向こう側から声だけを発し姿を現さないジョバンニの病気の母親であったり、活版所で鳴り響く不穏な電話の音であったり、蛾が電球の光に吸い寄せられて鱗粉をふり撒きながら羽をバタつかせる最後の飛行音であったり、、、
はたまた静寂の冬の森の奥深くから聞こえてくる凍裂のようにドコンドコンという音を立てながら走り抜ける銀河鉄道であったり、道すがらパッパッと点滅していた電灯がプツッと消える瞬間であったり、時計の音や雫がポタリポタリと滴る音、森をつんざくような鳴き声と林を滑空する鳥の不気味な影、そしてジョバンニとカンパネルラの会話における異様に長い間と静寂、、、
そして極めつけは猫人間!
それらが積み重なり増幅されて“闇”の空間を創り出し、宮沢賢治の作品世界を映像と音で表わしてくれた。
これは見事という他ない。
が、あまりにも見事すぎたため、当時幼稚園児だった自分には、“闇”のもつ言い知れぬ恐怖の方が少々過ぎてしまったようだ。しかも、その時の感覚が今に至っても消えない。
一人では見れない映画です(笑)。。
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私の中のあなた
出演:キャメロン・ディアス、アビゲイル・プレスリン、アレック・ボールドウィン、ジェイソン・パトリック、ソフィア・ヴァジリーヴァ、ジョーン・キューザック
監督:ニック・カサベテス
(2009年・アメリカ・110分)WOWOW
内容:フィッツジェラルド家の11歳の次女アナはある日、両親を相手に訴訟を起こした。白血病にかかった長女ケイトを救うために遺伝子操作によってドナーにぴったりの身体に生み出された現実と、ケイトの治療のために何度も手術台に上がることに耐えられなくなったのだ。このまさかの行動を発端に家族のバランスは崩れていくのだが・・。
評価★★★★/75点
子供が親を告訴するという強烈ネタを引っさげたパンチの効いた問題作かと思いきや、かなり散文的かつ叙情的な趣のあるつくりになっていて意外だった。
登場人物には誰ひとり悪人はおらず、しかも各々に視点とテーマが与えられているのがこの映画のミソだろう。
周りが見えなくなろうとも人生の全てを白血病の娘のためにフォーカスする母親(キャメロン・ディアス)や、事故死した娘の死を仕事にまで引きずってしまい涙する女性判事(ジョーン・キューザック)をみれば分かるように、決して正解の出ない生と死の問題、そして家族の問題においては論理ではなく感情で突き動かされるのが人間なのだということ。そしてその感情によって絆が生まれ深まるのだということがよく伝わってきて、温かみのある愛にあふれた作品になっていて良かった。
感情は時にエスカレートして人を傷つけることがあるけど、その一歩手前で相手を思いやる気持ちが垣間見えて胸を打たれた。優しい穏やかな気持ちになれるんだよね
まぁ、法廷からして論理を捨てていて、神の視点を取っ払っているので、やや視点のボヤけた曖昧さは残るものの、涙よりも笑顔を忘れない演出は買い!
なんか音楽の使い方とか「アイ・アム・サム」(2001)と似たような作風だったのが気になったけど、監督は違うのね。。
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ワンダフルライフ(1999年・日本・118分)シネマライズ
監督・脚本:是枝裕和
出演:ARATA、小田エリカ、寺島進、谷啓、内藤剛志、伊勢谷友介
内容:「あなたは昨日お亡くなりになりました。」と言われ、天国の入口にある施設にやって来た22人の老若男女。彼らはこれから7日間の間に大切な思い出をひとつだけ選ばなければならず、その思い出だけを持って天国に向かうのだという。しかも、その思い出は施設職員の手により撮影され、最終日に上映されることになっているという・・・。天国への入口で、人生を思い起こし大切な記憶を選ぶ死者たちを即興的に撮るという設定で、人間存在の本質に迫った作品。数々の国際映画祭で受賞し、1999年の単館系邦画興行成績で1位になった。
評価★★★★/80点
死者という最大の弱者に視点を当てるという毒気とユーモアの中で、さまざまな家族の肖像や人間の肖像を切り取っていく手法はさすがの一言。上手すぎる。
自分だったら何を選ぶだろうな、とついつい考え込んでしまったけど、でもよくよく考えてみたら、人生でたったひとつの最高の思い出の中で永遠に生き続けることができるのが天国って、、それもちょっと怖いよなぁ
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みなさん、さようなら
出演:レミ・ジラール、ステファン・ルソー、マリー=ジョゼ・クローズ
監督・脚本:ドゥニ・アルカン
(2003年・カナダ/フランス・99分)仙台フォーラム
内容:末期ガンに冒された大学教授レミ。息子は放蕩者の父を嫌っていたが、最期だけはと、父の望むにぎやかな病室を演出しようとする・・・。生と死、父子の確執と和解を、シニカルなユーモアと政治的メッセージを交えて描く。アカデミー賞外国語映画賞やカンヌ国際映画祭の主演女優賞などを受賞。
評価★★★/65点
“回りまわって、、、やっぱり金だなおい(笑)”
この映画で学んだこと。お金ですよお金。やっぱお金が1番!。おいおい・・。
あとはあれだな。映画見終わった後ウチ帰ってすぐにしたことが、秘儀“北京の花”と奥義“四川の竜”をネットでググッたことだからね(笑)。
あのエロジジイに負けず劣らずのエロジジイになってみせます。どうもボクですww
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息子の部屋(2001年・イタリア・99分)NHK-BS
監督:ナンニ・モレッティ
出演:ナンニ・モレッティ、ラウラ・モランテ、ジャスミン・トリンカ
内容:イタリアの港町に住む精神科医のジョバンニは、妻パオラ、娘のイレーネ、息子のアンドレアと幸せに暮らしていた。が、ある日、アンドレアがダイビング事故で死んでしまう。事故前、アンドレアが学校の教材を盗んだ疑いをかけられていたことから心に微かなわだかまりを抱え、さらに事故当日、アンドレアとのジョギングの約束を破ってしまったことから自分を責めるジョバンニ。そんなある日、息子宛に1通の手紙が届く。それは息子のガールフレンドからのものだった・・・。カンヌ国際映画祭でパルムドール受賞。
評価★★★★/80点
非常に地味でオーソドックスかつありきたりな語り口、息子との関係を描いたエピソード等も含めて底が浅い。
が、見終わった後の余韻は、なぜか青々とした海のごとくとてつもなく底が深い。
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