夢のシネマパラダイス563番シアター:借りぐらしのアリエッティ
借りぐらしのアリエッティ
声の出演:志田未来、神木隆之介、大竹しのぶ、竹下景子、藤原竜也、三浦友和、樹木希林
監督:米林宏昌
(2010年・東宝・94分)盛岡フォーラム
内容:14歳の小人族の少女アリエッティはとある古い屋敷の床下で両親と3人で静かな暮らしを営んでいる。彼らには人間には見られてはいけないという掟があった。そんなある日、病気療養のため12歳の少年・翔がこの屋敷を訪れる。。
評価★★★★/75点
個人的にジブリアニメを純粋に楽しめたのは小6の時に見た「魔女の宅急便」までで、それ以降の作品はグダグダだと思っている。それどころか宮崎駿のお仕事は漫画版ナウシカの連載が終了した1994年でその役目は終えたと思っているくらいでw
破綻と混沌のインフレ三部作(もののけ、千と千尋、ハウル)を経てあっちの世界へ逝っちゃったポニョときて、、宮崎駿はもはや枯れ果てた。
一方ゲド戦記の惨敗をみるまでもなく後進はまるで育たず、このままではジブリは消滅への道をまっしぐら
とまぁ、はっきりいって宮崎御大は10年前に製作総指揮とかに退いてジブリの後進を育て上げることに心血を注ぐべきだったと思うのだけど、今回ようやっとジブリの次代を担うべき才能にバトンを渡したわけだ。
NHKで今回の映画製作に密着したドキュメンタリーをやってて、米林宏昌監督にいろいろ口を出したくてウズウズしている御大の姿からはストレス溜まってるのがありありと見てとれたんだけど(笑)。
と、そんなこんなで出来上がったアリエッティ。
天敵カマドウマがぴょんぴょん飛び跳ねてる冒頭からヒョエ~~ッとのけぞってしまったんだけど、全体としては久々に純粋な気持ちになって見られたジブリ映画になっていたと思う。
ジブリアニメの真髄である濃密で柔らかな絵のタッチと、ケルト音楽を思わせるセシル・コルベルの透明感あふれる音楽が、床下の小人の世界観と雰囲気をものの見事に醸成していてそれだけで十分楽しめてしまう。
いや、実際この雰囲気と世界観だけで8割方できている作品といっていいと思うんだけど、一粒の角砂糖、一滴の水、一枚の葉っぱ、一枚のティッシュetc.のリアルでカワイイ質量感、また洗濯バサミの髪留めや待ち針の剣、両面テープを手足に引っ付けてのクライミングなどの細かいディテールの描写力・発想力はハンパなく、小道具好きな自分の快感神経をビビビッと震わせてくれる。
個人的には台所が断崖絶壁のグランドキャニオンのように見えるシーンが好き。
ただ、さっき雰囲気と世界観だけで8割方できてる作品と言ったように、子供に読んで聞かせる絵本のような体裁をとっていて、それはそれでいいんだけど、シナリオにやや締まりがないのがひっかかる。
特に、少年・翔のすでに彼岸へ渡ってしまったかのような落ち着きぶりと、家政婦ハルの恐ろしいまでの小人への執着心は見ていて薄気味悪くなってくる。彼らの心理や行動原理がイマイチ伝わってこないのだ。
「君たちは滅び行く種族なんだ」とにべもなく言ってしまう翔の透き通るような目が怖くて怖くて・・
この言葉を相手に面と向かって言えちゃう残酷さ、、宮崎御大の悪い作家性が突拍子もなく出ちゃったかんじだね(笑)。
人間世界の日常の価値観を時には反転させ時には優しく見つめ直した細かなディテール描写が特筆ものだっただけに、人物描写の粗さが気になってしまいどうもスッキリしないというか・・・。
そいえば、子供が病持ちというのはジブリアニメではほとんど初めてといってもいいのではなかろうか。五体満足な少年少女の躍動がジブリアニメを引っ張ってきたとするならば、心臓を患い、ちょっと走っただけでへばってしまう少年はどうしても奇異に映ってしまう。
そうなんだよ、翔が悪い意味でこの映画を引っ張っちゃってるんだよ!ということを今ここで実感。。
でも、アリエッティ一家の微笑ましい日常とこの物語をずっと見ていたいという気持ちになったのが心の8割を占めたというのが本音であり、新監督の船出としては十分及第点を付けられるのではないかな。
Posted at 2010/07/30
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