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2017年10月17日 (火)

夢のシネマパラダイス528番シアター:ダンケルク~戦争がもたらす運命~

ダンケルク

Dunkirk_visual出演:フィオン・ホワイトヘッド、トム・グリーン=カーニー、ハリー・スタイルズ、ケネス・ブラナー、キリアン・マーフィ、マーク・ライランス、トム・ハーディ

監督・脚本:クリストファー・ノーラン

(2017年・英/米/仏・106分)東宝シネマズ日本橋

内容:第二次世界大戦が激化する1940年、フランス北端の港町ダンケルク。ドイツ軍に圧倒された英仏連合軍40万の兵士たちは、ドーバー海峡を望むこの地に追い詰められた。逃げ場のない状況下、対岸のイギリスでは軍艦だけでなく民間船まで動員する救出作戦を決行する・・・。

評価★★★☆/70点 

つくづくこの人は一筋縄ではいかない監督さんなんだなぁと痛感。。

そのフィルモグラフィーにおいて、時間軸の解体と再構成を生業とし、「インセプション」や「インターステラー」に至っては空間軸をも自由自在に操ることで時空超越映画を極めたといっても過言ではないクリストファー・ノーラン。

その中で、次なるステージに選んだのが古典的な戦争映画というのは意外だったけど、まさかここでも飽きもせずに時制トリックを使ってくるとは予想外だった。

しかして、物語性を徹底的に排除し匿名性を強調することで、あるのは生か死かという究極の運命しかない戦争の過酷さを捉えることには成功しているものの、今までの作品のような時制の交錯が生み出すカタルシスがほとんどないという点で今回の話法は正直イマイチだったかな・・。

まぁ、CGデジタル全力拒否の本物にこだわった映像力と相殺してこの点数なので、見応えは十二分にあったことは確かだけど。

ただ、これも「プライベート・ライアン」冒頭20分の衝撃を超えるには及ばず・・。

究極の映像体験という宣伝文句ほどの新味は感じられなかったし、それ以前に40万もの兵士を助けるのに救出に向かう船がチラホラとしか見えなかったり、海岸線に埋めつくされてる兵士たちが次のシーンではチラホラとしか見えなかったり、まるでフィラデルフィアエクスペリメントな神隠し状態に少し冷めちゃったところもw

ただ、どんな形であれ生を肯定するラストは良かった。

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男たちの大和 YAMATO(2005年・東映・145分)2005/12/29・MOVIX仙台

 監督:佐藤純彌

 出演:反町隆史、中村獅童、鈴木京香、松山ケンイチ、仲代達矢

 内容:昭和20年4月、乗組員3千余名を乗せた世界最大級を誇る戦艦大和は沖縄へと向かう途中、米軍による集中爆撃により東シナ海の深海へと沈んでいった・・・。2005年4月、鹿児島県枕崎の漁港。老漁師の神尾のもとを内田真貴子と名乗る女性が訪ね、60年前に沈んだ戦艦大和が眠る場所まで船を出してほしいと懇願する。彼女が大和の乗組員・内田二兵曹の娘と知った神尾は、漁船を目的の場所へと走らせるのだった。。

評価★★/40点

“良くも悪くも角川映画の悪癖から抜け出せず・・・。”

唯一、戦艦大和を派手にブッ壊したいという意気込みだけは伝わってきたが、大雑把にすぎるツギハギな物語を安っぽい人情でなんとかくっつけるさまは、もはや過去の遺物としかみれない。

戦争でもまるで意味のない特攻のごとく捨てられ、映画でも捨て駒のように捨てられ、、二重の意味で大和が捨てられてしまった気がしてあまり良い気分になれない。

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戦場のメリークリスマス

075202 出演:デイヴィッド・ボウイ、坂本龍一、トム・コンティ、ビートたけし、ジョニー大倉

監督・脚本:大島渚

(1983年・日/英・123分)NHK-BS

評価★★/45点

 

内容:1942年、ジャワ島の日本軍捕虜収容所の所長ヨノイ大尉は、バタビアの軍法会議にかけられていた英国陸軍少佐セリアズになぜか心惹かれるものを感じ、自分の収容所へ連れてくる。セリアズを特別扱いするヨノイのことを、軍曹のハラはいぶかしがるが、そういうハラも日本語を流暢に操る英軍中佐ローレンスと親しくしていた。しかし、セリアズは捕虜たちの待遇改善を訴えて、ヨノイに反抗を始める。。

“黒澤明が言うところの、映画が映画でしか表現できない一瞬を獲得したときに「映画になる」という言い方がその通りであるならば、この作品はれっきとした「映画」だろう。だが、しかし・・・”

だが、しかし、、その一瞬一瞬が、狂気や殺気や色気がとめどなく錯綜する物語の中で、また日本人の西欧に対する倒錯した感情がえぐり出されるこの作品の大きな流れの中で見る者にしっかりと語りかけてこなければ何も意味がないと思う。

この作品は、この点において絶対的に弱い。はっきりいって映画としてのレベルは相当に低いと言わざるをえないと思う。

「映画になった」瞬間は数多くあれど、それらはまるでまばらに明滅する蛍の光のようにはかなく消え入ってしまう。

たしかにそれはそれで美しいのだが、しかし後に残るのは不毛な青白き闇の空虚と坂本龍一の音楽のみ。

はたしてその空虚は、日本人と西欧との間に横たわる観念や思想の違いからくる決定的なディスコミュニケーションの空虚なのか、それともこの作品の力量不足なのか・・・。

いずれにしろ、自分はその空虚に耐え切ることができるだけの魅力をとうとうこの映画から感じ取ることができなかったようだ。

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フルメタル・ジャケット

Fullmetaljacket 出演:マシュー・モディン、アダム・ボールドウィン、ヴィンセント・ドノフリオ

監督:スタンリー・キューブリック

(1987年・アメリカ・116分)NHK-BS

評価★★★★/80点

 

内容:サウスカロライナの海兵隊新兵訓練基地では、ベトナムの前線に向けて、8週間に及ぶ地獄の特訓が始まっていた。鬼教官ハートマンのしごきにより、精神に異常を来たしたパイルは、ハートマンを射殺して自殺する。1968年、報道隊員となったジョーカーは、ベトナム最前線のフエ市で訓練仲間と再会し、百戦錬磨の兵士たちと銃火の真っ只中で行動を共にするが・・・。

“悲しみが皆無な戦争映画というのは後にも先にもおそらくこれ1本きりだろう。見ている最中ノドがカラカラになってくる・・・。”

今までこの手の戦争映画には、小さじ1杯ほどでも道徳や正義や倫理が少なからず織り込まれていたし、それらが麻痺し喪失していくのは戦争の狂気がそうさせるのだという言説が常に描かれてきた。

そしてそこに通底するものは、悲劇であり悲しみであった。

しかし、キューブリックによる本作は、それらの要素や言説をことごとく徹底的に排除し、戦争の狂気を作り出す張本人は人間なのだというごくごく当たり前のことを胸くそが悪くなるくらいまで徹底的にえぐり出していく。

特に若者たちを虫ケラのごとき殺人兵器に変えていく新兵訓練基地での非情な地獄の日々を描いた前半部分は強烈だ。

発狂して自殺する新兵パイル(ヴィンセント・ドノフリオ)の狂った目が脳裏に焼きついて離れない・・。

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グローリー(1989年・アメリカ・122分)WOWOW

 監督:エドワード・ズウィック

 出演:マシュー・ブロデリック、デンゼル・ワシントン、モーガン・フリーマン

 内容:南北戦争期、アメリカ史上初めて組織された北軍黒人部隊。彼らは南部からの脱走奴隷だったが、指揮官に着任した若き白人大佐ショーは彼らの誇りと熱気を感じる。そして、雌雄を決するフォートワグナーの戦いに臨むのだった・・・。

評価★★★/65点

D・ワシントン&モーガン・フリーマンの魂を震わす熱演がなかったら、若きマシューが人間を撃ち殺したくてウズウズしまくっている若い衆をなんとかなだめすかすただのナヨナヨ優男にしか見えないところだった。

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ジョニーは戦場へ行った(1971年・アメリカ・112分)NHK-BS

 監督・脚本:ダルトン・トランボ

 出演:ティモシー・ボトムズ、キャシー・フィールズ、ドナルド・サザーランド

 内容:青年兵士のジョーは、耳も目もあごも失い、手足ももがれて野戦病院のベッドに横たわっていた。すでに彼の肉体はただの物体の塊と化していたが、ジョーの意識は少しずつ自分の今の有り様を知覚していく。やがてモールス信号を思い出したジョーは、首を振ることで軍医や看護婦たちに死なせてくれと訴えるのだった・・・。第一次世界大戦を題材にした反戦的な内容で、1938年の発表当時、発禁処分となったダルトン・トランボの小説を、赤狩りによるハリウッド追放を乗り越えて自らが監督した反戦映画。

評価★★★☆/70点

“戦慄のホラー無間地獄体験”

自ら祖国のために勇んで戦争へ志願していった代償。

顔中が吹き飛ばされ、耳も聞こえず口もきけず目も見えず、両手両足、視覚・触覚すべての感覚を失ってしまった、胸と下腹部と陥没した頭だけの生ける肉の塊。

江戸川乱歩の「芋虫」と似たようなかんじなのだが、おどろおどろしさに包まれた怪奇に満ちたホラーに、まるで悪夢の中で彷徨うような得体の知れない胸クソ悪さに支配されてしまう。

反戦とか戦争批判うんぬんというよりも、はっきりいってホラーとしか見れないよねこれは。。

戦争による祖国のための名誉で甘美な死なんてものはないんだ、そんなのはまやかしなんだ!ということは十二分に伝わってくることは確かだけど、それ以上に生々しさとかおどろおどろしさ、まがまがしさの方が先に立って読後感は非常に悪いし、なんか吐きそう・・・

ホント、S...O...S...Help..me..

地獄です、これが本当の・・。

戦争やってイイことなんてひとっつもないんだ。得するのはお偉方だけなのさ。

そういえば、9.11テロを題材に11人の監督がそれぞれの視点で撮ったオムニバス映画「セプテンバー11」で今村昌平は、人間であることをやめて“ヘビ”になってしまった復員兵の姿を映し出したのが思い出される。

戦争の後遺症は人間を人間たらしめる要素さえ殺してしまう、、なんと恐ろしいことなのだろうか。

ジョニーは想像力まで封印されてしまった、その無間地獄に背筋が思わず震えてしまう・・。

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