パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち
出演:ジョニー・デップ、オーランド・ブルーム、ジェフリー・ラッシュ、キーラ・ナイトレイ
監督:ゴア・ヴァービンスキー
(2003年・アメリカ・143分)2003/08/28・仙台第1東宝
評価★★★★/80点
内容:17世紀。海賊バルボッサ率いるブラック・パール号がカリブ海の港町を襲撃、総督の娘エリザベスを誘拐した。彼女に恋心を抱く刀鍛冶のウィルは、バルボッサと因縁のある伝説の海賊ジャック・スパロウと手を組み、彼女を救出するため船に乗り込む。しかし、バルボッサたちは、呪いにより不死の身体となっていた・・・。ディズニーランドの人気アトラクション「カリブの海賊」の映画化。
“この映画に呪いをかけられた自分が思わずとってしまった行動・・・”
そしてそれは我が映画人生において最も恥ずかしい思い出のひとつとなってしまった。
キャプテン・ジャック・スパロウに呪いをかけられた。これは嘘ではない。正真正銘真実である。
この映画をバカにしていた自分は間違いなく呪いにかけられた。そしてスクリーンから跳ね返ってくる夜光に照らされた自分はすっかり骨抜きにされた姿をさらけ出していたのだ。
シートの背もたれに寄りかかることもせず、連れが隣に座っていることも忘れるほど胸は高鳴り、目は童心に返ったように光り輝き、口元は終始ユルみっぱなし・・。
そう、自分はこの映画をバカにしていた。というかそもそも眼中にさえなかった。劇場で「HERO/英雄」を見たときに予告編が流れたのだが、この映画を見たいという気にさえならなかった。ゼロ。
ここで言い訳がましいことを言わさせてもらえば、劇場で流れた予告編を見て真っ先に思い出したのが「カット・スロート・アイランド」だったのだ・・・。中途半端に面白く、しかし心には全く残らないレニー・ハーリン&ジーナ・デイビスの映画が頭の中に浮かんできて、悲しいかな今回の映画を見たいという気持ちを完全に縛り付けてしまったのだ。
こうして、自分の中でパイレーツ・オブ・カリビアンは封印されてしまった・・・。
が、しかし、これで終わりではなかった。
封印された後から自分の周りで呪いの前兆ともいえる現象が相次いだのである。
会う友人が「パイレーツ・オブ・カリビアンおもろかったー!」「良かったよ。」「もう笑った笑った。」などと口をそろえて言ってくるのである。中には非常に興奮した乱調ぶりでメールを送ってくる友達さえいたのだ。
そしてついにジャック・スパロウの魔の手は彼女にも及び、自分は懸命に北野武の「座頭市」を見たいと言い張ったのだがあえなく却下・・。
こうして全く自分の眼中になかったブラック・パール号は面舵いっぱいの急旋回でいきなり眼前に迫ってきたのである。
そして、、、自分はこの映画の虜になり、すっかり骨抜きにされてしまったのですた。
が、が、しかし、これで話は終わりではない。本当の呪いはこれからなのだ。
映画の中盤で尿意をもよおしてしまったのだが、映画に引きずり込まれ、結局トイレに行くこともないまま映画を見終わった。そして、あっ、そういえばトイレ行きたかったんだと思い出し、エンドクレジットが流れ始める中、席を立って先頭を切ってドアまで向かった。
しかし、この時あろうことか、自分は完全にジャック・スパロウ気取りになっていたのである。。エンディング曲に合わせて歩き方が、、彼女を笑わせようとしたこともあるが、おすぎとピーコをデフォルメしたようなジャック・スパロウの歩き方になっていたのだ、というかマネしてみたのだ。そしてドアを豪快に開け、腕をフリフリ目はすまして脚はちょいヒョコヒョコ走りで出ていった、、と、もの凄い数の視線が自分にふりそそぎました、ハイ。
なにせ日曜の1番混む時間帯。次の上映を待ってる奴らがわんさかいたのだーーッ
!
あちこちで抑えた笑いが・・・。固まる自分、マジで恥ずかしかったっス。
これは絶対呪いだ!
さて、ちょっと気を取り直して映画について。
なんか正真正銘の海賊映画と呼べるものを初めて見た、そんな気がする。
子供の頃に見た「グーニーズ」のラスト、海賊ウィリーの海賊船が船出するシーンで終わるあのラストに子供心にものすごいロマンを感じ興奮したのを覚えているんだけど、まさにあの気持ち、あの感情の高ぶりを見事に甦らせてくれました。感謝です
。
ところでちょっと気になったのがラスト。
ウィルとジャックがノリントンたちに囲まれて、そこにエリザベスが割り込んでくるシーンについてなんだけど、あそこで簡単にノリントンが折れちゃって、ウィルとエリザベスがほとんど無血入城状態で結婚を許されるというのがどうもなんかなぁ。
自分が考える理想のラストは、エリザベスが割り込んできた時にウィルがエリザベスを人質にとってそのままジャックともども下の海に飛び降りてブラック・パール号に乗り込むってのがイイなと。
エリザベスを人質にとるというのは前半のシーンでジャックがやってることだし(正確には倒れちゃう)、下の海に飛び込むというのも冒頭でエリザベスがやってるし。だからそれらが伏線としてしっかり生きてくるし、人質になるエリザベスとしても分かってるわけだし。
まぁ、「ルパン3世カリオストロの城」でクラリスは私を泥棒にして下さいとルパンに頼むんだけど、それは叶わぬ願いだった。しかし、このパイレーツ・オブ・カリビアンでは叶っちゃった!どんなもんでしょ。
ただネックとなるのが、あのラストシーンでエリザベスの親父がちゃんと出てくる点と、海賊船に女が乗るとロクなことがないという掟なんだよなぁ。ま、掟は破るためにあるんだからな。ま、いっか(笑)。
(初記)2003/09/01
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パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト
出演:ジョニー・デップ、オーランド・ブルーム、キーラ・ナイトレイ、ビル・ナイ、ステラン・スカルスガルド
監督:ゴア・ヴァービンスキー
(2006年・アメリカ・151分)2006/08/03・盛岡フォーラム
評価★★★★/75点
内容:バルボッサとの闘いを乗り越え、再びブラック・パール号の船長となったジャック・スパロウ。しかし、彼にさらなる苦悩が押し寄せようとしていた。それは13年前にブラック・パール号を手に入れるために幽霊船フライング・ダッチマン号の船長デイヴィ・ジョーンズと交わした血の契約の刻限が迫っていることだった。一方、結婚式を挙げようとしていたウィルとエリザベスは、ジャックを逃がした罪で投獄されるハメに・・・。
“スターウォーズ・オブ・カリビアン/帝国の逆襲”
子供ココロと遊びココロと悪戯ココロと冒険心、好奇心、そして豊かな想像力であふれかえった完璧かつ強固な魅力的な世界観が確立されていた前作。その続編とあって、よほどの悪ノリをしたとしても前作で敷かれたレールを脱線することはないという余裕があった中で、“北を指さないコンパス”を片手に快調にそのレールの上をブッ飛ばしてくれたなという安定感は見て取れた。
逆にいえば、それは映画の作り手側の自信であり、楽しんで作っている証拠であるわけで、それが直に見ている側にちゃんと伝わってきたのはさすが。
どちらかといえばインディーズ系俳優だったジョニー・デップを一気にメガトンメジャー級スターへと変貌させてしまった前作に引き続き、嬉々として丸焼き寸前のジャック・スパロウを演じているジョニデを見てもそれはよく伝わってくる。
だからアトラクション的な1つの確立されたエンタメ空間を今回も安心して楽しむことができたと思う。特にクラーケンが船を真っ二つにブッ潰しちゃうところなんかはシビレまくり。
強いていえば、2時間半というボリュームの中でもっと悪ノリしちゃってもよかったかな、とは感じたけど。なんか前作から裾野が広がっていかないというか、全体的に狭い視野しか提示されなかった気も・・・。
ま、それは3作目を見てから総合的に判断しなければならないのだろうけどね。
とにかく、楽しくて面白いアトラクションは何回乗っても飽きないもの。このシネマアトラクション、パイレーツ・オブ・カリビアンも全くそう。
さらなる魅力と楽しさ満載の宝箱を携えてリニューアルされる3rdバージョンにも決して乗り損ねることは許されない!
余談
「スターウォーズ」との類似点が指摘されている本シリーズだけど、今回出てきたブードゥー教の魔女でジャック・スパロウの元カノであるティア・ダルマの住処が、ヨーダの住む沼地で覆われた惑星ダゴバに酷似しているのにはビツクリ。
さらに、ジャック・スパロウが今回迎えた壮絶な最期も、2作目「帝国の逆襲」でジャバ・ザ・ハットに捕まって冷凍保存されたハン・ソロの境遇に似すぎるほど似すぎる展開で、、こうなると3作目は「ジェダイの復讐」を下敷きにしてると考えていいのか!?
となると、何?ウィルとエリザベスは兄妹だったとか、っておいおい一体どうなっちゃうんだ(笑)。。
(初記)2006/08/05
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パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド(2007年・アメリカ・170分)2007/06/05・盛岡フォーラム
監督:ゴア・ヴァービンスキー
出演:ジョニー・デップ、オーランド・ブルーム、キーラ・ナイトレイ、ジェフリー・ラッシュ、ジョナサン・プライス、チョウ・ユンファ
内容:デイヴィ・ジョーンズを配下に従えた東インド貿易会社のベケット卿は、世界制覇を目論み次々と海賊たちを撃破。ついに海賊の時代は終焉の時を迎えようとしていた。そこで海賊たちは最後の手段として、伝説の海賊9人を招集し全面対決に持ち込むことにするが、その9人のうちのひとりが生死不明のジャック・スパロウであることが判明。ウィルやエリザベスたちは、船乗りの墓場デイヴィ・ジョーンズ・ロッカーに囚われたジャックの救出に向かうが・・・。
評価★★★/65点
“「オレがちょっと目を離すとこうだ。何もかもメチャクチャだ!」byジャック・スパロウ”
まさにこのジャック・スパロウのセリフそのものを地で行くような映画だった。
2作目からちょっと目を離してみたら、なんじゃこのグダグダのメチャクチャさは(笑)。
幕開けでいきなり変な歌を歌い出して、えっ何?ミュージカル?と思いきや、べトコンの村に忍び込む米兵が水の中からヌゥッと顔を出す「地獄の黙示録」の様相を呈し、そこに現れたのはマーロン・ブランドならぬチョウ・ユンファ。
前作で最強の船フライング・ダッチマンを操る深海の悪霊デイヴィ・ジョーンズがあっさりとベケット卿の軍門に下っているあっけなさ。
チャーリー・カウフマンもビックリのシュールすぎるジャック・スパロウの一人芝居。そのジャックを絞めたはずの怪物クラーケンが死骸になって浜に打ち上げられている取って付けたような再登場。
理解に苦しむカリプソカニミソなんじゃこりゃ。。
とにもかくにも脈絡もヘッタクレもない行き当たりばったりのシナリオの中で、自分のためなら平気で人を裏切る芯の通っていない行き当たりばったりキャラたちがすったもんだのドタバタ騒ぎをするという、はっきりいって映画としては最悪の部類に入る出来だと思うんだけど(笑)。。
かといいつつ、1作目に出てきたノリントン配下の衛兵2人組が今作の最後で海賊にくら替えする場面をちゃっかり入れちゃうなどサービス精神も満載。
ホント詰め込めるだけ詰め込んだ3時間。ゲップが出るくらいグダグダです・・・。
ただ実はコレ、2回見に行く機会があって。そしたっけ2回目はそこそこ面白かったんだよね。ストーリー展開も頭の中で整理できて見られたし。ていうかストーリーを追えたというただそれだけなんだけど。。
デッドマンズ・チェストの3作目へTo be Continueという締め方は最高に期待をそそるものだっただけに残念な出来だったというのが正直なところ。まぁ、1作目から楽しく見てきたという点を考慮して★3っつかな。
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パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉
出演:ジョニー・デップ、ペネロペ・クルス、ジェフリー・ラッシュ、イアン・マクシェーン、サム・クラフリン、キース・リチャーズ
監督:ロブ・マーシャル
(2011年・アメリカ・141分)WOWOW
内容:永遠の生命をもたらすという“生命の泉”。その泉の場所をただ一人知る海賊ジャック・スパロウは、ロンドンで元カノの女海賊アンジェリカと再会する。が、彼女の父親である最恐の海賊・黒ひげも生命の泉を求めており、ジャックは黒ひげの泉探しの旅に無理やり協力させられるハメに。一方、過去に黒ひげと遺恨があるバルボッサも英国海軍将校として泉を探す航海に出る・・・。
評価★★☆/50点
ジャック・スパロウとバルボッサ以外の主要キャラをバッサリ切り捨て新シリーズの幕開けを銘打ったわけだけど、恐ろしくグダグダな映画になってしまった・・・。
見せ場はそこそこあるんだけど、たいして面白くないのはやはりキャラ立ちの弱さにあるのは明白で、特にワンピースでおなじみの黒ひげの存在感の薄さは敵役としては致命的。
船を意のままに操れたり、ゾンビを作ったり禍々しい黒魔術を持っているにもかかわらず、その恐さが前面に出てこないし、魔剣についても掘り下げがほとんどなく・・。
また、黒ひげとアンジェリカの父娘関係が中途半端にしか描かれていないため、最終的に黒ひげが自分の目的のために実の娘さえ利用しようとするに至る必然性が感じられないのは痛すぎる。
また、ウィル・ターナーの代わりともみれる宣教師フィリップも影が薄く軸になりきれていないし、結局一貫した行動原理をみせていたのはバルボッサだけだった
あと、話の軸という点では、スペインの描き方がおざなりなのも問題で、オープニングがスペインから始まったわりには添え物的な描かれ方しかされておらず、スペイン無敵艦隊vsイギリス海軍バルボッサvs海賊黒ひげの三つ巴の戦いに本来なるべきなのにそうなっていないのは見る方としてはさっぱり面白くない。
このように話のスジとしても登場人物にしても軸となるものがない中、ならばジャック・スパロウを軸にしろ!と更なる愚行を犯してしまったのだから、もはや目も当てられない状況とはこのことだ。
そもそものところで、のらりくらりと相手をいなしながらコロコロと態度を変えるジャックはそれこそ軸のないゴム人間のようなシロモノなわけで、ここに軸を通してしまったらジャック・スパロウの魅力は半減してしまう。
元カノという枷をかけられたことによりシャキッとしてしまった感もあるけど、ならば今カノを出して三角関係にしちゃうとかww、そういう工夫があってもいいんじゃないのか。
そうでなくともやはりジャックと対を成すような強力にまともな人間を配置しないとダメだってことは今回見て確実に分かった。
しかし、、強力にまともなはずの宣教師にも務まらないとなると、、もう子供しかいなくね(笑)!?
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パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊
出演:ジョニー・デップ、ハビエム・バルデム、ブレントン・スウェイツ、カヤ・スコデラーリオ、ジェフリー・ラッシュ、オーランド・ブルーム、キーラ・ナイトレイ
監督:ヨアヒム・ローニング、エスペン・サンドベリ
(2017年・アメリカ・129分)TOHOシネマズ日本橋
内容:10年に1度しか陸に上がれない呪いを受けた父親ウィル・ターナーの呪いを解くために息子ヘンリーは船乗りになり、どんな呪いも解くことができるポセイドンの槍を探していた。一方、かつてジャック・スパロウに倒され亡霊となった海賊処刑人サラザールが“魔の三角海域”から解き放たれ、ジャックへの復讐に動き出す。しかし、当のジャックはカリブの島で銀行強盗に失敗し、仲間に見放されるほどの落ちぶれよう。と、その島には、ポセイドンの槍の謎を解くカギを示すガリレオ・ガリレイの日記を持つ女性天文学者カリーナがいた・・・。
評価★★★★/80点
前作「生命の泉」をなかったことにして3作目ワールドエンドのラストから直結した筋立てにしたのは大正解。
ワールドエンドでフライングダッチマン号の船長になり10年に1度しか陸に上がれなくなってしまったウィル・ターナーの呪いを、ワールドエンドからちょうど10年後に息子が解き放つというのも感慨深いものがある。
また、前作のレビューで指摘したように、このシリーズの肝は主人公ジャック・スパロウの立ち位置にあり、主役として文字通りグイグイと前面に出るのではなく、周りを引き立てるような道化役つまり狂言回しの役割を担わせないと物語の体を成さないということがある。
その点で、前作は完全な失敗作だった。しかし、今回は父親を救い出すためにあらゆる呪いを解くことができるポセイドンの槍を探し求める息子ヘンリーと、生き別れの父の忘れ形見(ガリレオガリレイの日記)を手がかりに槍の謎を解こうとしている若き天文学者カリーナを話の核に据えたことが吉と出た。
プロットが格段に整理され求心力が増したのに加えて、バルボッサの空気より軽い裏切りも親子愛へつながっていったように、シリーズの代名詞ともいえる裏切りが裏切りを呼ぶカオスなぐちゃぐちゃ感も解消されて見やすくなった。
また、死神サラザールの悪役造型や、骨組みだけの幽霊船がガッパーと覆いかぶさって船を喰い破るシーンなど映像面でも飽きが来なかったし、1作目以来シンプルに楽しめる原点回帰作になっていたと思う。
次作もやる気マンマンみたいだけど、エンドロール後の布石は何?デイヴィ・ジョーンズ復活ですかw!?
ただ、次作はさらなる悪役としてメリル・ストリープとかシガニー・ウィーバーあたりの大女優を抜擢してほしい気も。
あと、しれっとした顔で出てくるんだろね、あの御方(笑)。
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