夢のシネマパラダイス115番シアター:アメリカン・ビューティー
葛城事件
監督・脚本:赤堀雅秋
(2016年・日本・120分)WOWOW
内容:家業の金物店を切り盛りし、東京郊外に念願のマイホームを建て、妻・伸子と2人の息子と理想の家庭を作り上げてきたと思っていた葛城清。しかし我が強く高圧的な性格が、徐々に家族を抑圧的に支配するようになっていた。長男・保は会社をリストラされたことを言い出せず、次男・稔はバイトも長続きせず、引きこもり同然の生活を送っていた。そんな中、稔が無差別殺人事件を起こして死刑囚になってしまう・・・。
評価★★★★/80点
葛城家の次男が無差別通り魔を凶行するシーンがあまりにもリアルで呆然と見入ってしまったけど、こういう事件を起こす輩を見ると、他人を巻き添えにしないで勝手に一人で死ね!とかいつも思っていた。
しかし、どこにでもあるような幸せな家庭像が次第に歪んでいき、結果的に鬼畜を生み出してしまう様が、見ているうちになんだか他人事のように思えなくなってきて、どこかで自分の家族と重なる部分があるような紙一重の怖さを感じてしまった。
かくいう自分の弟は高校生の時に不登校になり、5年くらい引きこもり生活をしたことがあるし、自分も同時期に正社員の仕事を辞めプータローになっていたことがある。
あれから時が経った今では共に自立して社会の荒波の中を懸命に生きている自負があるけど、あの頃なんでヤケクソにならなかったのかといえば、やっぱり親が温かく見守ってくれたことが大きい。
それはつまり帰る居場所があったということ、逃げ場所が家であり家族であるという安心感が精神的不安を和らげてくれたのだと思う。
その点で、自分の父親が子供がやらかした仕打ちを母親のせいにして子供の前で平手打ちするような俺様なクソ親父じゃなくて良かったと今回の映画見て実感した。中華料理屋で味付けがなってないということで難クセつけるクレーマーっぷりなんて、息子の気持ちを考えるともう見てられなかったな。
世間体と劣等感がうず高く積もり積もってプライドの壁を築き上げていく、その呪縛にとらわれていることに無自覚なのがまたぞろタチの悪いところで・・。
まぁしかし、男の自分が言うのもなんだけど、男ってのはつくづくプライドの高い生き物なんだな。。
けど、それ以上に死刑制度に反対する活動家(田中麗奈)の立ち位置がよく理解できなくて気持ち悪かったw
で、結局行き着くところは、人間って面白い!
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アメリカン・ビューティー
出演:ケビン・スペイシー、アネット・ベニング、ソーラ・バーチ、クリス・クーパー、ミーナ・スバーリ
監督:サム・メンデス
(1999年・アメリカ・117分)MOVIX仙台
評価★★★★★/90点
内容:リストラされた中年サラリーマンが、何を血迷ったか娘と同じ学校に通う美少女に入れ込んで肉体改造!そんな夫を尻目に妻は浮気。娘は隣人のビデオマニアと駆け落ちを画策。そしていつしか男の家族は崩壊への道をたどり始める。。現代社会の家庭のあり方と、崩壊していく様をシニカルに描き、アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演男優賞など5部門を受賞したブラック・コメディ。
“完全な美などあるわけがなく、秘密や欠点を内に秘めてることくらい言われるまでもなく分かってる。それを覗き見感覚で見せるこの映画の嫌らしさよ。だから最後まで見入ってしまったじゃないか。。”
オナ○ーシーン2回(しかも見ったくねえ42歳の中年オヤジ)、妻の絶叫エビ反りファック、娘ッコ2人のヌード、盗撮にゲイネタと挙げたらきりがない程のいやらしさ。さらに、映画自体の心憎いまでのあざとい見せ方といういやらしさ。
なぜこれが★5つなのか、自分でも不思議なくらいだ。いやらしさというマイナス要素も2乗するとプラスになるってか。。
マジメな話、それぞれのキャラがちゃんと立っている、しかも次元を超えた異常ともいえるレべルで屹立している他に類を見ない映画だといえるのではないかなと。さらに主要な登場人物6人(隣のゲイカップル以外)がそのような異常レベルに達しているという恐ろしさ。
この映画は十分すぎるほど恐ろしい。このことは真摯に受け止めなければ。
そう、恐れを受け止めてこそ事の本質は見えてくる。
この映画の伝えたかったことの1つなのではなかろうか。
かくいう6人のうちジェーン以外は、彼ら自身が隠し持つ秘密、悩みからくる恐れを受け止めることができない。
そういう意味ではジェーンは、この映画の中で最も正常な位置にいるといえる。
他の5人は恐れを隠すために自分自身にカモフラージュを施す。
・何も失うものはないから何も恐れることはない byレスター
こりゃ完全な開き直りだな。。
・SEXと銃をブッ放して自分のパワーを感じれば何も恐れることはない byキャサリン(不動産王バディの伝授)
はたして仕事という美を追求できるのか・・。
・定まった運命の流れにのっているのだから何も恐れることはない byアンジェラ
ラストで飛び出すブッ飛びネタにこの映画の真意をみた!
・すべてのものの背後には、生命と慈愛の力があるから何も恐れることはない byリッキー
宙を舞う白い袋のビデオ映像を見ながら彼は言うが、これはカメラで撮ること、あるいは映像で見ることによる錯覚と虚構ともいうことができ、現実では親父との確執という関係が厳然としてある。 ビデオカメラをまわすという行為は明らかに逃避だと思う。しかし、ジェーンとの出会いが救いとなっていく。
・自己構築と規律の世界を重んじれば何も恐れることはない byフランク
自分で自分を縛りつけてたわけだ・・。この映画の助演男優賞は間違いなく彼です。
繰り返し出てくる「何も恐れることはない」というキーワード。
これは明らかに彼らのカモフラージュであり、逆にいえば恐れにがんじがらめになってしまっているともいえる。
そしてこのがんじがらめになっている鎖をこの映画は終盤の大団円で一挙にはずしてしまうのだ。
これはもう凄いとしか言いようのない芸当ぶりである。
これだから映画を見ずにはいられない。
素ん晴らしい!
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