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2017年1月 3日 (火)

夢のシネマパラダイス330番シアター:インターステラー

インターステラー

Poster2_2出演:マシュー・マコノヒー、アン・ハサウェイ、ジェシカ・チャステイン、エレン・バースティン、マイケル・ケイン、ジョン・リスゴー、ケイシー・アフレック、マット・デイモン

監督・脚本:クリストファー・ノーラン

(2014年・アメリカ・169分)盛岡フォーラム

内容:近未来。地球環境の加速度的悪化による食糧難で人類は滅亡の時を迎えようとしていた。そんな中、最悪の事態を回避するための重大ミッションクルーのひとりにシングルファーザーで元エンジニアのクーパーが抜擢される。そのミッションとは、未開の惑星に行き人類が居住可能かどうか調査するというものだった。地球に家族を残して行かなければならない不安と葛藤するクーパーだったが、泣きじゃくる幼い娘に帰還を約束し、宇宙へと旅立つ・・・。

評価★★★★★/100点

「メメント」「インセプション」と趣向を凝らした作劇で時間軸のズレを印象的に描いたクリストファー・ノーランは、同じく「インセプション」で虚無(夢)の世界で50年間たった2人だけで過ごす夫婦の純粋すぎて怖いくらいの愛の深さを描いた。

ちなみにあの映画では夢の階層によって時間の流れにズレが生じるという設定があり、夢の階層を下るごとに現実世界の時間より12倍引き延ばされていく。つまり現実世界で1時間夢を見ると、夢の第1階層では12時間、第2階層では144時間=6日間、第3階層では72日間、そして第4階層=虚無では2年4カ月の時が流れる。だから第4層で50年だと現実世界では大体20時間しか経っていないことになる。

そう考えると、宇宙で主人公クーパーが体験した2~3年の異次元旅行の間に地球では約80年経っていたという今回の映画は、人間の内へ内へ潜っていく「インセプション」と地球の外へ外へ飛び出していく本作の対照的な違いはあるにせよ、時間軸のズレがもたらすウラシマ効果と、愛は時空を超えるという壮大かつ純粋な愛の物語のモチーフは共通している。

そういう意味で今作はノーランの集大成といっていい作品だったと思う。

なにより実質数年しか年を取っていない父親が90歳くらいの寝たきりのおばあちゃんになった娘を看取るというSF映画史上でも屈指の名シーンにお目にかかれたのは涙が出そうなほどに感動した。

お涙頂戴の“愛は地球を救う”安っぽい映画wは数多くあれど、論理とか説得力を超越した愛の力に打ちのめされたのはこれが初めてだったかもしれない。

あとは何といってもクーパーがブラックホールに吸い込まれた後の4次元立方体の驚愕映像に尽きるだろう。これはつまり、点を動かすと線分ができる(1次元)→線分を動かすと平面ができる(2次元)→平面を動かすと立方体ができる(3次元空間)→立方体を動かすと超立方体ができる(4次元空間)ってことなんだけど、映画では幼少の頃のマーフの部屋がアーカイブのように幾層にも積み重なっていて、まるで複数のwebサイトをひとつのウィンドウ内に開くことができるタブ機能のごとくあらゆる時間のマーフの部屋につながることができるようだ。

さらにこれを作ったのは5次元の存在だと言及している。要は、3次元空間に時間軸の1次元を付け加えた4次元時空の住人である我々を超えた存在で、5次元では空間も時間も自在に操ることができる。そしてここがキーポイントなのだけど、本棚から本が落ちてきたり床に砂が流れ落ちてきたりと別次元のマーフには重力を介してメッセージを伝えることができる。

つまり、重力だけが別次元同士に干渉することができるということで、その根拠となっている仮説が、我々の住む3次元空間を1つのブレーン(膜)とみなし、その上でブレーンの外には行き来することのできない第5の次元が広がっているとするブレーンワールド仮説だ。

そしてその中では重力子だけがブレーンを離れて第5の次元を移動できるとする。これにより物理学における大きな謎である重力が極端に弱すぎる問題(例えば膨大な質量をもつ地球に比べて磁石の質量は無視できるほど小さいにもかかわらず、地球の作る重力は磁石の作る磁力に打ち負かされてしまう。電磁気力の強さを1とすると、重力は10のマイナス40乗しかない謎)が解決できる。

つまり、重力が他の力に比べて弱いのは、重力が異なる次元に漏れ出ている=重力は時間を含む次元を超えることができるからと説明できるのだ。

そういう最新の宇宙論に裏打ちされた映像の数々は、門外漢の自分の肌感覚にまで迫り来るような、ただの絵空事とは異なる説得力をもったリアリティがあったと思う。

とはいえ、理解度50%で見た気120%になっているというのが実際のところ(笑)。

でも、これだと普通だったら見た気にならないはずなのに、見た気満々にさせるのがこの映画のスゴイところなんだよね。「インセプション」もそんなかんじだったし、クリストファー・ノーランの醍醐味ってそこにあるのかも。

音楽も印象的だったし、自分の人生観をもビリビリ震わせるような大傑作だった。

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惑星ソラリス

Flyersolaris 出演:ドナータス・バニオーニス、ナターリヤ・ボンダルチュク、ユーリー・ヤルヴェト

監督:アンドレイ・タルコフスキー

(1972年・ソ連・165分)DVD

内容:21世紀、世界の科学者たちは表面をプラズマ状の海に覆われた惑星ソラリスに注目していた。心理学者のクリスは、原因不明の混乱状態に陥ったソラリスの軌道ステーションに真相究明のため派遣される。ステーションの混乱を目の当たりにしたクリスもまた不安にかられるようになり、さらに自殺したはずの妻ハリーが目の前に現れ・・・。

評価★★★☆/70点

キューブリックの「2001年宇宙の旅」(1968)と並び称されるSF映画の金字塔と聞かされ続けて十数年、レンタル屋にも置いておらず、BSでも放送してくれず、なかなか見る機会を得られなかったのだけど、ついにその時が来た!

とはいっても、難解な映画とも聞いていたので、かっなり身構えて見たのだけども、フタを開けてみれば、未来都市に見立てられて映し出される東京の首都高が千駄ヶ谷から赤坂見附あたりだとはっきり認識できるくらいの理解の範疇を超えないレベルで見られたのはちょっと拍子抜けだったかんじ。

といっても、外ヅラを理解できた程度だけど、まぁダレることなく見れたからよかったかな。

あ、そっか、、ソダーバーグの「ソラリス」(2002)を以前見てたのがよかったのかw。つってもあれ半分くらい寝てたけど・・・

それはさておき、キューブリックの「2001年宇宙の旅」における人工知能をもったコンピュータHAL9000を、ソラリスという惑星自体に置き換えたような中、そこに行った人間の心が抱えている罪の意識や後悔といった悩みを読み取り、それを実物大にして作り出してしまうというトンでもな海を持つ惑星ソラリスと人間との遭遇を描いたこの映画。

ソラリスによって送り込まれた“客”によって物理学者ギバリャンは自殺し、電子工学のスナウト博士は怯え、生物学者サルトリウスは部屋に閉じこもったまま出てこない。

そして、心理学者クリスの前に現れたのは、毒を打って自殺したはずの妻ハリー。

クリスが抱える最も忌まわしい記憶が、どんなに消そうともがいても再生して甦ってくるハリーによって眼前に突きつけられるさまは、血にまみれながらドアをブチ破るハリーの姿を見てもかなり怖い。

しかし、その“客”は、自分自身の良心の呵責によって生み出されたものだった。

そして、良心の呵責に逆らっても研究対象としてソラリスの真実を追い求めようとする科学者魂にあふれたサルトリウス、一方ギバリャンは良心に耐え切れず自殺するわけだけど、「ヒロシマのように不道徳でも目的が達せられてしまう」科学の恐さ、そして恥も外聞もかなぐり捨てて風車に突撃するドン・キホーテのごとく外へ外へ文明を突き進んできた現代において人類愛なんてものは存在しないんだというメッセージはかなり痛烈だ。

それをこの映画は、時間と空間を超越し、宇宙には他にも生命体がいるんだという夢と希望あふれるSF世界において、そのSFが本来持つ外へ外へではなく、人間の内面世界という内へ内へと向かっていくことで露わにしていくのだから恐れ入る。

時間と空間を超えることができる夢を具現化したのがSFなわけだけど、同じ夢は夢でも人間の潜在意識の奥に眠る内省と願望=夢として、それを具現化するソラリスというのがなんとも面白い。

そういう点では「2001年宇宙の旅」とは全く逆の構図ともいえると思う。

そんな中クリスは、一度は妻ハリーをロケットで放逐したものの、その後は自分の良心と真摯に向き合うことで妻との愛を取り戻していくわけだが、ここにクリスと母親との間にあるビミョーな関係が影を落としているらしいことが差し挟まれることで、なかなか小難しい内容になっているのはたしかだし、ラストのオチも思わずビックリ。。

でも、難しくてダラダラしてるからもう見たくないという気にはならず、もう1回じっくり見たいなという気に駆られたのは自分でも意外だった。

クリスの故郷である水と緑にあふれる自然風景と、一面灰色に覆われた東京の首都高の対照的な風景なども印象的だったし、「2001年宇宙の旅」を初めて見たときは、もう二度と見たくないと思ったものだが(笑)、今回はその点でも対照的だった。

ラスト、茫洋たるソラリスの海に囲まれた島として漂うクリスの緑の故郷、それはクリスの思考の範囲の限界―科学の発達とともにある種の免罪符として唱えられる人類皆兄弟という人類愛の限界―を示しているともいえ、どんなに科学が発達しようとも人間はどこまでも私的な苦悩に苛まれる存在なのだということを表わしているといえる。

「人間の内なるものを省みずして、すなわち恥を知ることなくして人類は救われない」、、、思わず考える人のポーズになってしまう自分(笑)。

この映画が作られた70年代前半は東西冷戦が厳然としてあったわけだけど、あれから約40年、ITの発達で情報は瞬時に世界を駆け巡り、ヨーロッパはEUのもと統合の深化が図られ、オバマ大統領就任に世界が熱狂し、、、しかし世界の人々の距離が縮まったかといえばそういうわけでもなく・・・。便利な世の中にはなったが、人々は孤独の中を彷徨いつづけているように思える。

ソラリスの海から脱却できる日がいつか訪れるのだろうか。

なんかこの映画を5年ごとに見続けていったら、その時々で感じることが違ってくるのかもしれないななんてことを思ったけど、5年後、自分はこれ見てどう感じるのだろう。。

Posted at 2009.09.10

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ソラリス(2002年・アメリカ・99分)MOVIX仙台

 監督・脚本:スティーブン・ソダーバーグ

 出演:ジョージ・クルーニー、ナターシャ・マケルホーン、ジェレミー・デイヴィス

 内容:「惑星ソラリス」(1972)を生んだスタニスワス・レムの名作小説をS・ソダーバーグが新たな解釈で映画化。惑星ソラリスを探査中の宇宙ステーションで異変が発生し、心理学者が調査に向かうが・・・。未知の知的生命体と出会った人間が自己の内面と対峙させられるという深遠な物語を、今回は主人公と彼の妻の夫婦愛に焦点を絞って描いている。

評価★/15点

“見ている途中で不覚にも眠ってしまったからといって、この映画にかぎっては他人にとやかく言われる筋合いはないw!”

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