夢のシネマパラダイス364番シアター:犯人は、まだそこにいる。
64-ロクヨン-前編/後編
出演:佐藤浩市、綾野剛、榮倉奈々、夏川結衣、窪田正孝、鶴田真由、芳根京子、瑛太、椎名桔平、滝藤賢一、奥田瑛二、仲村トオル、吉岡秀隆、緒形直人、永瀬正敏、三浦友和
監督・脚本:瀬々敬久
(前編2016年・東宝・121分/後編2016年・東宝・119分)WOWOW
内容:昭和64年1月3日に発生した少女誘拐殺人事件。三上刑事(佐藤浩市)らが捜査にあたる中、1月7日に昭和が幕を閉じる。そしてロクヨンと隠語で呼ばれるその事件も未解決のまま時が経った平成14年。刑事部から警務部広報官に異動になった三上は、ある交通事故の報道方針をめぐる記者クラブとの対応で県警との板挟みにあい、神経をすり減らしていく。そんな中、ロクヨンの時効を1年後に控え、警察庁長官が被害者家族の雨宮(永瀬正敏)と面会する話が持ち上がる。三上は14年ぶりに雨宮のもとを訪ねるが・・・。
評価★★★★/80点
原作未読。NHKドラマ視聴済。
「八日目の蝉」といい「紙の月」といいNHKドラマが映画をしのぐハイクオリティだったため、今回もどうなんだろうと思ったら、やっぱりTVドラマの方が見応えがあった。
もちろん尺の違いはあるんだけど、地方の閉塞感の中で蠢く様々な感情や葛藤が澱のように沈み溜まっていく陰うつな質感や、ノイズの気色悪い響きが重苦しさを喚起する劇伴などTVドラマの方が印象的だったし、主人公三上も受け身な中間管理職オジさんの悲哀をよく表していたという点でドラマ版のピエール瀧の方がハマっていたと思う。佐藤浩市はやっぱカッコ良すぎなんだよねw
でもまぁ、映画の方も豪華すぎるオールスターキャストの演技合戦は十分見応えがあったし、前後編に分けてボリューム感を出した気概は買いたい。
ただ、唯一どっちらけだったのが、ヘリウムガスが切れてなんとか地声を隠そうと頑張る吉岡秀隆の声つぶし演技。もうコントでしょあれ・・
あと、ひとつ消化不良だったのが、後編で雨宮(永瀬正敏)が目崎(緒形直人)の次女を車に乗せて家まで送る時に雨宮が号泣するシーンが唐突に出てくるんだけど、常識的に考えて小さい女の子がそんな簡単に知らない男の車に乗るかなぁ(雨宮翔子ちゃんは目崎の車に乗っちゃったわけだけど・・)という疑問があって、もしかして当初雨宮は誘拐しようとしたのか!?とも勘繰りたくなったけど、何の状況描写もなかったので、そこは見終わった後も引っかかった。
あと、TVドラマでは目崎の逮捕を匂わせるところで終わるものの、映画の方は目崎逮捕のために三上がとんでもない行動に打って出て目的を果たすものの警察を追われることを匂わせるところで終わるという違いがあって、随分と突っ走ったものだなぁと驚いたけど、これはこれで悪くない着地点だなとは思った。
結局最後に言いたいこと。今後はNHKドラマより映画の方を先に見ることにします(笑)。
----------------------
予告犯
出演:生田斗真、戸田恵梨香、鈴木亮平、濱田岳、窪田正孝、小松菜奈、小日向文世、滝藤賢一、荒川良々
監督:中村義洋
(2015年・東宝・119分)WOWOW
内容:ある日、新聞紙製の頭巾をかぶった男が、集団食中毒を起こした食品加工会社に制裁を加えるとする予告動画がネットに投稿され、翌日実際に会社の工場が放火された。その後も、“シンブンシ”と名付けられた男は、世の中の不正義に対してネットで私刑を予告し次々に実行していく。一方、警視庁サイバー犯罪対策課の捜査官・吉野絵里香は、男の正体を探ろうと捜査を続けるが・・・。
評価★★★/65点
日本文化礼賛番組が幅を利かせる一方、「腎臓を売ってまで来たかった国がこんなザマでごめん」というセリフを真と受け取らざるを得ない現実、そして自分の境遇を社会のせいにするなんて卑怯だという詰問に対し「あなたには分からない」と言い放つ格差社会の諦念が胸に迫る。
この頑張っても報われない時代が生み出した勝ち組と負け組の断絶はよく描けていたと思うし、予告犯と警察との攻防戦も見ごたえがある。
ただ一方、どこかでこの映画に一抹の違和感を拭えなかったのもたしかで、それはネットの動画配信で法で裁けない悪をさらし者にして成敗するシンブンシの行為に、痛快さよりもイスラム国の残虐動画を連想させる怖さを感じ取ったからだ。
しかもこれを正当化するのに情緒話に落として風呂敷を畳もうとするのも少し気持ち悪くて興ざめしたし、犯人目線で描いているだけに死をもって解決するというのがなおさら後味が悪くてすっきりしなかったなと。
まぁ、共感できそうでできないというか、共感したくない自分がいるというか・・。そういう意味では戸田恵梨香の女刑事の方に6:4で肩入れしたいんだけどねw
現代版「天国と地獄」にはなりえなかったな・・・。
----------------------
犯人に告ぐ
出演:豊川悦司、石橋凌、小澤征悦、笹野高史、片岡礼子、井川遥
監督:瀧本智行
(2007年・日本・117分)WOWOW
評価★★★/65点
内容:6年前、自ら指揮を執っていた誘拐事件でミスを犯し、人質の少年を殺された責任を取らされ左遷された神奈川県警警視・巻島は、川崎市内で起きた連続児童殺人事件の捜査責任者として本部に呼び戻された。そして生放送のニュース番組に出演した巻島は、BADMANと名乗る犯人に直接語り始め、犯人を挑発。ここに劇場型捜査の幕が切って落とされた・・・。
“今夜は震えて眠れ!”
かっちょええーー!!スィ、スィびれますた。。
このセリフ聞いただけでも、これ見た甲斐はあったかんじだけど、映画としてはバカ正直なまでにご丁寧なつくりで、映画的な躍動に乏しい面はあったかな、と。
また、プロローグの6年前の誘拐事件の捜査でナンパ男を犯人と間違えてしまうところで、あんなオバハンをナンパする奴なんているのか?という点・・。
過去に会見で逆ギレした巻島(トヨエツ)が、左遷された足柄署から、テレビ慣れしているという理由で呼び戻されるというのもフツーありえるのか?という点・・。
また、同級生のニュースキャスター杉村(片岡礼子)の胸元を見てとち狂った植草(小澤征悦)の暴走ぶりや、ラスト近くでトヨエツが刺されちゃうのも「踊る大捜査線」をもじったようで間が抜けるし、全体的にもうちょっと精査してもらいたいような出来ではあった。
ただその中で、トヨエツの刑事っぷりは見応えがあったし、あとは笹野高史が要所要所でイイ味出してるんだよねぇ。
そんなこんなでなんとか最後まで見れてしまったけど。まぁ、テレビで見る分にはちょうどいいかなというかんじかな。
----------------------
大誘拐 Rainbow Kids(1991年・東宝・120分)NHK-BS
監督・脚本:岡本喜八
出演:北林谷栄、緒形拳、風間トオル、西川弘志、樹木希林、嶋田久作
内容:紀州一の大富豪・柳川とし子刀自がド素人3人組に誘拐された。ところが、刀自は犯人たちから自分の身代金が5千万円と聞くや、自分のプライドが許さないとブチギレ、身代金を100億と勝手に決めてしまう。てんやわんやの犯人たちに毅然とした態度で指図をしていく刀自。一方、和歌山県警本部長の井狩は、捜査に全力を注ぐが・・・。
評価★★★☆/70点
風間&内田&西川の大根役者っぷりが際立つ冒頭15分を見て思わず心が折れそうになったけど(笑)。。
しかし、彼ら誘拐犯のトーシロ同然のお粗末ぶりも、彼らを取り巻く緒形拳や樹木希林、天本英世、竜雷太といったプロの名役者たちで固めた脇役陣との対比が物語上うまくリンクしていて、そういう点では適材の配役だったのかも。
そしてそして忘れてはならない北林谷栄の素晴らしさ。
微笑ましく見ていられる可愛いお婆ちゃんの裏の顔にプロを手玉にとるしたたかさと、ダテに資産家やってるんじゃないのヨ!というプライド、そして子供たちをお国に持っていかれた戦禍を乗り越えてきた経験値を36キロの小さな身体に沸々とわき立たせるその姿はなんとも凛々しく、痛快なオチもあいまって印象的だった。
しかし、、場になじまない音楽だけはダサくて気になったなw。
----------------------
模倣犯(2002年・東宝・123分)日劇2
監督:森田芳光
出演:中居正広、藤井隆、津田寛治、木村佳乃、山崎努、伊東美咲
内容:東京の下町で豆腐屋を営む有馬義男。20歳になる孫娘・古川鞠子が失踪してから10ヶ月、事件は何の進展も見せていなかった。が、そんなある日、下町の公園のゴミ箱から女性の右腕とショルダーバッグが発見される。そして、それを報じるワイドショーの生放送中に犯人からの電話が入り、一連の女性誘拐殺人の犯行声明を告げるのだった・・・。
評価★★/40点
山崎努以外オーバーアクションにしか見えない役者陣にはなんら落ち度はない。脚本もつとめた監督にこそ難があるのは一目瞭然。
特に犯人が説明セリフで逐次報告してくれる映画ほどツマラナイものはないわけで、小説と映画は別物とはいうけど、登場人物の心の機微を子細に描いていく宮部原作をここまでシュールに換骨奪胎してしまう森田演出が自分には全く合わなかった・・・。
だって犯人が遺体を埋めるために闇夜に山中で土を掘っているところをわざわざ下から見上げるアングルで撮って、その上空の星空にこれ見よがしに流れ星がいくつも流れていくなんて、もうドン引きするしかないでしょ(笑)。
食べ物が全然美味しそうに見えない食事風景も含め、何かしらの演出意図があったのだろうけど、それを知ったとしてもダメだなこれは。。
映画化するのが10年早かった気がする・・w
----------------------
レディ・ジョーカー(2004年・東映・121分)DVD
監督:平山秀幸
出演:渡哲也、徳重聡、吉川晃司、國村隼、大杉漣
内容:新製品発売を1週間後に控えたビール業界最大手の日之出ビール社長・城山恭介が“レディ・ジョーカー”と名乗る5人の犯行グループによって誘拐された。その5人とは、小さな町薬局の老店主、元自衛官のトラック運転手、信用金庫の職員、町工場の若い旋盤工、ノンキャリア刑事。彼らは競馬場で知り合い、それぞれ異なった理由で犯行に至った。しかし、誘拐の2日後、捜査陣が事件解決へ動き出す中、犯人側が突然城山を解放する・・・。
評価★★/40点
NHKの土曜ドラマでじっくり見たいなぁ、、ってかんじ。。
« 夢のシネマパラダイス68番シアター:“グローリー・トゥー・ザ・フィルムメーカー”北野武vol.1 | トップページ | 夢のシネマパラダイス263番シアター:アベンジャーズ »
コメント
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 夢のシネマパラダイス364番シアター:犯人は、まだそこにいる。:
» ゲラルディーニの最新情報! [ゲラルディーニの最新情報!]
ゲラルディーニのバッグを始めとするアイテムの最新情報が満載です! [続きを読む]
« 夢のシネマパラダイス68番シアター:“グローリー・トゥー・ザ・フィルムメーカー”北野武vol.1 | トップページ | 夢のシネマパラダイス263番シアター:アベンジャーズ »
初めまして、さゆりと申します。
20世紀少年の結末の話が知りたくて、先月あなた様のこのブログを見つけて以来、お気に入りに登録し、ほぼ毎日覗いています。自分と好きなものが一緒で(サッカー・漫画・温泉・ドライブ・映画)大変興味深く、読ませて楽しませて頂いております。^^
なので是非ともまた、更新して下さい!待っています!!お願いします!!!(ちなみに私は、チェルシ~ファンですが・・・)
笑笑~~長々と失礼しました。
投稿: さゆり | 2009年2月14日 (土) 17時25分
さゆり様。
初めまして。コメント大変ありがとうございます。
拙ブログをお気に入りに登録していただくなんて、感謝感激で感極まっちゃいました
さゆりさんはチェルシーファンなんですね。出張から帰ってきたら、スコラーリが解任されててビツクリしちゃいました。といっても我が愛しのレアル・マドリーも毎度のごとく監督解任劇があったわけですけど。しかも会長まで辞任しちゃって。ガクッ・・。
ブログ更新がんばっていきますので、どうぞよろしく!
投稿: スィーず | 2009年2月15日 (日) 14時33分
☆今晩はです☆
凄い沢山の映画を観られてて、その映画の感想が
どれも読み応えのあるもので、脱帽しています。
素晴らしいです。読んでいて、ホント楽しいです!^^
(お世辞じゃないよ笑ほんとだよ)
個人的に、タイタニックの感想が一番好きですよ~
先日、ムービープラスでブラピのミスター&ミセススミスを観たんです。
ブラピのマジ蹴りの後、お互い銃を突きつけ合って
アンジーが「撃ちなさいよ!」って涙声で言う・・その後、二人がキッチンで怒涛のように抱き合う・・・
あのシーン、一番好きです!
もう やっぱり そうでなきゃ!!って感じでね。
あなた様(なんとお呼びしたらいいですかねぇ笑すいません)の感想に書かれてあった、異常性欲の発露とは、思えなかったんですよねぇ・・・笑笑笑~
ブラピの相手役が、アンジーでなく、ニコールキッドマンだったら・・ もっと全裸で濃厚な描写になってたかもしれない?・・けれど・・・笑^^
長文失礼しましたです。
投稿: さゆり | 2009年2月15日 (日) 19時51分
またまたコメントありがとうございます!
10年くらい前から映画の感想を書き溜めるようになったんですが、それを載せようと思い、このブログを開設した次第です。
とにかく、映画レビューの更新を終わらせることが当面の目標なのですが、それが終わった後はマッタリとやっていきますんで(笑)。
ミスター&ミセススミスは、ブラピとアンジーの運命の出会いをもたらした映画という意味でも印象的な映画ですよね。
ブラピとアンジーといえば今度のアカデミー賞も楽しみですね。
わたくしの呼び方は、スィーずさんでも、しんちゃんでも何でもいいですw。名前がシンイチなので。。
投稿: スィーず | 2009年2月16日 (月) 21時10分