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2016年10月30日 (日)

夢のシネマパラダイス265番シアター:世界の片隅で脱原発を叫ぶ

希望の国

T0012498p 出演:夏八木勲、大谷直子、村上淳、神楽坂恵、清水優、梶原ひかり、河原崎建三、筒井真理子、でんでん

監督・脚本:園子温

(2012年・日/英/台・133分)WOWOW

内容:東日本大震災から数年後。長島県沖で巨大地震が発生、福島につづいて今度は長島原発が事故を起こしてしまう。そんな中、長島県大原で酪農を営む小野家の庭先に、原発から半径20キロ圏内の警戒区域の境界線が引かれる。向かいの鈴木家は強制退避を命じられる一方、ギリギリで圏外となった小野一家は町に残ることにするが・・・。

評価★★★★☆/85点

昔、黒沢明監督の「夢」(1990)で原発事故で放出された放射能から逃げ惑うエピソードがあって、霧のように迫ってくる赤黄色に着色された放射能が印象的だった。

しかし、あの悪夢が正夢となってしまった今、圧倒的な現実感を伴なって描き出される家族の悲しい悲しい物語は言葉に出来ないほどの重みと鋭さをもって胸に迫ってきた。

被災地の生々しい惨状を写し取ったロケーション、そして福島の魂の叫びを仮託した行き場のない怒りと悲しみに満ちあふれた言葉のひとつひとつが胸に突き刺さってきた。

そして、かつての在りし幸せな日々の夢の中で生きているお母さん(大谷直子)が一心不乱に盆踊りの炭坑節を踊るシーンには涙を堪えることができなかった。

久々にこんな情念の込められた映画を見た思いがする。

しかし、原発事故がなければ作られることはなかったであろうこの映画が、震災の悲劇からわずか1年半で公開されたというのも凄いことだと思う。

宮崎駿監督が「風立ちぬ」のインタビューで、「製作途中に震災が起きて時代に追いつかれ追い抜かれたかんじがした」と言ったことが心に残っているのだけど、今回の映画でまさにそこに必死にしがみついてメッセージを発信しようとする園子温の強い覚悟に感服した。

あと同じインタビューで、「福島の原発が爆発した後、風が轟々と吹いたんです。上の部屋で寝転がっていると、その後ろの木が本当にうわーっと鳴りながら震えていました。爽やかな風ではない、おそろしく轟々と吹き抜ける風です。死をはらみ毒を含む風です。風立ちぬとはこういう風なんだと思った」という言葉も非常に印象的だったけど、今回の映画でゴウゴウと異様な音を立てる風の唸りがその言葉を想起させて、時代を吹き抜けていく風を敏感に感じ取る表現者としてのたしかな眼力を見た気がした。

国も東電もいまだに原発事故を収束させる道筋を示せないどころか、原発再稼動に躍起になっている中、この原発問題を風化させないためにも、一人でも多くの人にこの映画を見てもらいたいと思う。

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天空の蜂

20151013193952出演:江口洋介、仲間由紀恵、綾野剛、光石研、向井理、柄本明、國村隼、竹中直人、石橋蓮司、本木雅弘

監督:堤幸彦

(2015年・松竹・139分)WOWOW

内容:1995年、愛知県の錦重工業小牧工場。その日、完成した最新鋭軍用巨大ヘリ“ビッグB”のお披露目式典に出席するため、開発責任者の湯原は妻子とともに赴いていた。しかし、息子の高彦が格納庫に忍び込み遊んでいる最中、突然ビッグBが何者かの遠隔操作で動き出し、高彦を乗せたまま離陸してしまう。そのまま機体は福井県にある高速増殖炉“新陽”の真上でホバリングを始めた。そして、犯人は政府に対し、日本全土の原発即時停止を要求し、従わなければビッグBを原子炉に墜落させると宣言する・・・。

評価★★★☆/70点

2011年3月11日から5年、日本人の心のどこかに小骨のように突き刺さっている原発問題。

しかしながら見て見ないフリをする“沈黙する群衆”でいることの心地良さにすでに安住してしまってもいる中で、原発テロというセンセーショナルなテーマは、それだけでかなりの求心力を映画にもたらしていたと思うし、ツッコミどころ満載のライトな娯楽作(つまりはアメリカ的なポップコーンムービー)に落とし込んだ作劇も個人的には買いではあった。

しかし、時代設定を原作通り1995年に据え置いてまで東日本大震災をラストのエピローグに持ってくるのだったら、福島に全く触れないのが腑に落ちない。

「本当に狂っているのは誰なのか、いつかお前たちは知ることになる」という犯人の予言、さらには原作者東野圭吾の先見性のインパクトまで薄くなってしまうと思ったのは自分だけだろうか。あるいは原子力ムラの圧力がかかったのかとも邪推したくなってしまうが、このラストだけがお茶を濁したようなかんじで消化不良・・・。

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K-19

K19regular 出演:ハリソン・フォード、リーアム・ニーソン、ピーター・サースガード、クリスチャン・カマルゴ

監督:キャスリン・ビグロー

(2002年・アメリカ・138分)MOVIX仙台

評価★★★★/80点

内容:米ソ冷戦下の1961年。大西洋を航行中のソ連の潜水艦K-19で原子炉の冷却装置が故障。必死の修理の甲斐なく、乗組員は次々と被爆し倒れていく。部下の安全を優先させたい副艦長と国家に忠誠を誓う艦長の対立もエスカレートしていき・・・。ちなみにこの監督、、女性です。。

“ふと頭をよぎった。。”

日本には原子炉が52基ある、、、しかも至る所で原子炉事故の隠蔽が明るみに出ている今日この頃。

原発列島日本、、、末恐ろしいところに住んでるのかもしれないなオイラ(笑)。

ホントこの映画見て恐くなっちゃった。

放射能を浴びて皮膚が真っ赤に焼けただれ、激しい嘔吐と呼吸困難に襲われる姿には思わず戦慄を覚えてしまう。

ドンパチの一切ない潜水艦映画というのは非常に珍しいが、どんな部品を使っているかも分からないような不良潜水艦の極限状況の中で巻き起こる緊迫した人間模様と放射能事故の恐怖に一気に見入ってしまった。

ていうか、この監督さんって女性なのね。。それにもある意味戦慄を覚えるな(笑)。

Posted at 2002.12.21

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東京原発

Gen出演:役所広司、段田安則、平田満、田山涼成、岸辺一徳、吉田日出子

監督:山川元

(2002年・日本・110分)シネマ・ソサエティ

評価★★★/65点

内容:東京都民からカリスマ的な人気を集める天馬都知事は、ある日緊急会議を招集し、その席上で、悪化する財政立て直しの切り札として「ここ東京に原子力発電所を誘致する!」と前代未聞の爆弾宣言をする。会議は文字通りの紛糾状態に。。一方その頃、お台場にはフランスから船で極秘裏に運ばれてきた大量のプルトニウム燃料が陸揚げされていた。政府は、反対派の抗議運動を避けるため、そのプルトニウムを一般道路で福井の原発まで輸送する計画を進めるのだったが・・・。

“ラストだけが映画映画してる、、そんな映画でございました。。”

今現在住んでいるオラが街が北からは六ヶ所村、南からは福島と挟み撃ちにあってる自分にしてみれば憂うべきことなのだろうけど、ま、、この狭い日本列島どこに住もうが同じか。。

ていうか現実問題、今の自分にとっちゃ放射能やらチェレンコフの光がどうこうよりも、仕事場の休憩室でみんなが吸ってるタバコの煙の方が大問題だよ(笑)。

だって休憩室のドア開けると、一瞬部屋の中が白いんだもん。助けてー。。

ま、ためにはなったけどねこの映画。

、、と簡単に考えていた中で現実に起きてしまった福島の事故。コメディになりえない恐ろしい現実にただただ打ちひしがれるばかりだ。

そういう意味で今となっては逆にトンデモ作になってしまった貴重な映画といえるのかもしれない。。

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チャイナ・シンドローム

200501_img_10出演:ジェーン・フォンダ、マイケル・ダグラス、ジャック・レモン

監督・脚本:ジェームズ・ブリッジス

(1979年・アメリカ・122分)NHK-BS

評価★★★★/80点

内容:ロサンゼルスのテレビ局の女性ニュースキャスター、キンバリーはカメラマンのリチャードとともに最新の原子力発電所の取材に出かけるが、突然、所内に震動が起こり、制御室が大騒ぎになる。キンバリーは、放射能漏れが発覚し原子炉の運転が停止される一部始終をフィルムに収めたが、様々な妨害が加わり、結局局の上司に押さえられ放送はできずに終わる。不満なリチャードはそのフィルムを物理学者に見せる。一方、安全性を主張する発電所側だったが、ただ一人初老の技術者だけがその事故の危険性を訴えようとするのだった・・・。この技術者ジャック・ゴーデルを演じたジャック・レモンがカンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞。

この映画が公開された年に映画を地で行くような重大な放射能漏れ事故がペンシルベニア州のスリーマイル島の原子力発電所で起こり、あまりに現実そのものの映画内容に、映画が大ヒットを記録したことは有名。

ちなみに題名の「チャイナ・シンドローム」とは、メルトダウン(炉心融解)を起こした場合、融解した炉心が地中を溶かし、アメリカの反対側の中国までたどり着いてしまうという“最悪の事故”を示す言葉。

“核の恐怖より恐ろしい人災という名の恐怖”

世界でも稀にみる地震大国に原発を乱立させてきたニッポン。

しかし、1番恐ろしいのは天災ではなく、人災だということがこの映画を見ると如実に分かる。

核が生み出す放射能の恐怖という点では映像的にも例えば「K-19」(2002)なんかの方が圧倒的なリアリティを有しているとは思うが、人災の恐怖をこれほど深刻かつエキサイティングに描いた映画はざらにはない。

しかも、映画が公開された年には奇しくもスリーマイル島原発事故が起きているし、1986年にはあのチェルノブイリ(ウクライナ)で史上最悪の事故が、新しいところでは1999年に茨城の東海村で日本最悪の原子力事故が起き、被爆した作業員2名が死亡している。

そしてつい最近雨後のタケノコのごとく明るみに出てきた原発事故の隠蔽や虚偽報告の数々。

いくら設備がピッカピカでもそれを管理する人間組織が芯から腐っていたら何の意味もない・・・。

この恐るべき人災映画で描かれていたのは決してフィクションなどではないということが深刻なリアリティを与えているのだ。

、、、が、現実はもっとヤバイ状況にあるのかもしれない。最近の様々な企業の不祥事のニュースを見せられるとそう思わざるをえない。

Posted at 2007.06.23

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9デイズ(2002年・アメリカ・117分)WOWOW

 監督:ジョエル・シュマッチャー

 出演:アンソニー・ホプキンス、クリス・ロック、ピーター・ストーメア

 内容:チェコの首都プラハ。人類滅亡を招くP.N.B(ポータブル核爆弾)の解除を実施するため、CIAのゲイロードは相棒とともに武器商人と交渉していたが、相棒が殺されてしまう。そこで、9日後の交渉のために、相棒の双子の弟でダフ屋のジェイクを代わりに立てて決死のおとり作戦を決行するが・・・。

評価★★★/55点

核爆弾が入ったスーツケースが車から落ちる!階段を転がる!あげくの果てに投げるっ!

だ、大丈夫なのか・・!?

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