夢のシネマパラダイス38番シアター:かぐや姫の物語
かぐや姫の物語
声の出演:朝倉あき、高良健吾、地井武男、宮本信子、高畑淳子、田畑智子、立川志の輔、上川隆也、伊集院光、宇崎竜童、中村七之助、橋爪功、仲代達矢
監督・脚本:高畑勲
(2013年・東宝・137分)盛岡フォーラム
内容:今は昔、竹林にやって来た翁は、そこで一本の光る竹を見つける。すると竹の根元から小さな小さな女の子が現われた。翁は大切に連れ帰り、媼とともに育てることを決心する。そして捨丸ら村の童たちから「竹の子」と呼ばれるようになった女の子はみるみるうちに大きく育っていく。やがて、翁は娘を高貴な姫君にするために都へ移り住み、美しく成長した娘はかぐや姫と名付けられる・・・。
評価★★★★/85点
アニメは子供心を楽しませるエンターテイメントであるべきだと思っている自分にとって、説教くさいイデオロギーや堅苦しい芸術志向が立ち入ってくると少なからず拒否反応を引き起こしてしまうのだけど、エンタメ寄りが宮崎駿ならアート寄りが高畑勲だったわけで、当然のごとく前者の方が好みだった。
しかし、自分の中で相いれないはずだったエンタメと芸術性をギリギリのところで見事に拮抗させた今回の作品は、文字通り今まで見たことのないような感動的な映画体験を味わわせてくれた。
竹取物語のオリジナルをおぼろげにしか覚えていなかったので、単純に物語が新鮮に映ったこともあるけど、月の都が極楽浄土の来世で、かぐや姫が降ろされた地上の世界が穢れ多き現世という構図は面白かったし、その中で、巡りめぐる春夏秋冬に彩られた自然の恵みと、喜び、悲しみ、人の情けに揺れ動く心のざわめきに満ちあふれたこの世こそが美しく、そこで生きることこそ何ものにも代えがたい幸せなのだとするメッセージはストンと胸に落ちてきた。
それゆえ、かぐや姫の生き生きとした情緒が月の羽衣をまとった瞬間に地上での記憶がチャラになり能面になってしまうシーンには涙を禁じえなかった。まるで「フランダースの犬」に通底するくらい胸を締めつけられるラストシーンだったように思う。
しかし、今までは高畑勲の思想的説教くささに邪魔されることが多かったのに、今回これほど純粋に映画の物語世界に入り込むことができるとは思わなかった。
これは、絵の力はもちろんだけど、それ以上に声優がめちゃくちゃ良くて、特にかぐや姫=朝倉あきと思えるほどかぐや姫の声が良かったことが大きかったのかなと。先に声を録ってからそれに合わせて絵を描くプレスコという手法が大吉と出たかんじだろうか。翁役の地井武男も印象深かったし。
生きることの素晴らしさを喜びや楽しさのベクトルではなく哀しみやせつなさといった悲劇性でもってより強く表現した作劇も素晴らしく、製作に8年かけただけのことはある傑作だったように思う。
“生きている手応えさえあれば幸せになれる”かぁ、、生きている手応え、あるかなぁ自分
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平成狸合戦ぽんぽこ
監督・脚本:高畑勲
(1994年・東宝・119分)
評価★★★/65点
内容:東京・多摩丘陵、のんびりとひそかに暮らしていたタヌキたちは、人間たちによる宅地造成が進んできたことから存亡の危機に瀕していた。開発阻止をもくろんだタヌキたちは、先祖伝来の化け学を復興させて人間に対抗しようとする。
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