夢のシネマパラダイス372番シアター:となりのトトロ
となりのトトロ
声の出演:日高のり子、坂本千夏、糸井重里、島本須美、北林谷栄、高木均、丸山裕子
監督・脚本:宮崎駿
(1988年・東宝・88分)
評価★★★★/80点
内容:舞台は昭和30年ごろの日本。母親の長期療養のため、父親とともに病院に近い田舎の家へ越してきた4歳のメイは、ある日、庭で2匹の不思議な生き物を見かける。後をつけて行くと、森の中で昼寝している巨大なトトロを目撃した。姉のサツキも雨降りのバス停でトトロと出くわす。姿は奇妙だが心は優しい変な生き物トトロと姉妹の交流が始まる。
“自分だけだろうか。子供の時分にこの映画を見た印象がどこか陰鬱で物悲しいのは、”
小学3年生の時に劇場で見たのが最初で、たしか「火垂るの墓」と同時上映だったんだよね。
この同時上映というのが実はクセモノだったわけで、同時上映で見たが上での弊害、火垂るの墓のイメージや心象風景といったものがトトロと結びついてしまい、後に見るたびに1つの独立した映画としてまっとうに見れないという時期があった、ということは「火垂るの墓」のレビューで述べた通り。
しかし、実はその点を除いたとしてもトトロを見る上でその当時の自分には重大な弱点があったのだった。
それは、死とオバケ。
死んだらどうなるんだろうという得体の知れない恐怖に駆られていた時期がちょうどこの頃で、そのためか親が仕事から帰ってくるまでの夕方から夜にかけての時間が本当に心細かったことを今でも鮮明に憶えていたりする。
このまま親は帰って来ないんじゃないかとか、外はもう真っ暗なのに。すぐ外を走る国道の車やトラックの音だけが妙に大きく聞こえてきたりしていっそう心細くなってきて・・。
そして玄関のドアが開く音がすると、スーッと胸の不安が取り除かれ幸せな安堵感でいっぱいになったものだ。今日も一緒に普通に夕飯を食べられるって。
だから、サツキとメイが稲荷さまの社の前でお父さんの乗ったバスを待つ場面は、なんというか今見ても寂寥感に駆られてしまうんだよね。
今のバスに乗ってくるはずなのに、乗ってない。
このときのなんとも言葉で言い表せないような悲しさと寂しさと不安といったら、だからこの映画で1番印象に残っているシーンは、このお父さんをバス停で待つシーンなのだ。
まぁ今見返してみるとこのシーンでの静寂な間の取り方なんかホント上手いんだけどね。
あとはお母さんの病気。
電報が届いてもしかして容態が悪くなって夏休みに帰ってこれないかもしれない、あるいは死んでしまうのかということが、ものの見事に当時の自分の抱えていた言い知れぬ不安と恐怖とダブってしまうわけで。
オバケに関しては、もうホントあの頃は信じてたし、怖くて怖くて仕方なかった怖がり屋のガキんちょ(笑)。
だから、サツキが夜、薪を拾いに行くシーンで突風が吹いてきて周りの木々がざわめいたり、バケツがガラガラと転げたり、ガラス戸がガタガタ震えるところなんかはやっぱ怖いんだよねぇ(笑)。
そっか、そういう時はでっかい声を上げればいいんだな、とこの映画から教わったのだった。
ネコバスがニターッと笑ったときの顔や目つきもイヤだったからなぁ・・・。
まぁ今となればどうってことない笑えちゃう話だし、あれから年月が経って見てみるとこの映画からいろいろ再発見することもあったりして。
夢だけど夢じゃなかったという、ファンタジーとリアリティの高質なバランス。
考古学の論文書いてるお父さん、、っておいおい、この映画のせいで自分も大学で考古学専攻しちゃったじゃないかよ(笑)。いや、映画のせいじゃないよw
しかし、そうこう言ってもやはり子供の時分に初めて見たときの記憶と印象というものはこれから先も消えないでずっと残っていくんだろうな。
自分にとって、となりのトトロとは、親を喪失してしまうことへの不安と恐れを喚起させた宮崎アニメ唯一の作品となったのだ。
ところで、考えてみると、宮崎アニメの主役キャラっていつも親がいない。
片親だったり、親元から離れたり。
でもトトロの前に見たラピュタ、またトトロの後に見た魔女宅をリアルタイムで劇場で見たときはそういう不安や恐れは微塵も感じなかったわけで。。
やっぱり見た時期や年齢と映画のもつリアリティさが関係してるのかな。
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モンスターズ・インク
声の出演:ジョン・グッドマン、ビリー・クリスタル、ジェームズ・コバーン、スティーヴ・ブシェーミ
監督:ピート・ドクター
(2001年・アメリカ・92分)MOVIX仙台
内容:子供部屋のクローゼットの向こう側に広がるモンスターたちの世界。彼らは夜な夜なドアを開けては子供たちを怖がらせているのだが、実は彼らは“モンスターズ株式会社”のれっきとした社員なのだった。しかもこの会社は、モンスターシティの貴重なエネルギー源である子供たちの悲鳴を集めるのがその仕事。そんなある日、モンスターたちが実は最も怖れる人間の女の子がモンスターシティに紛れ込むという大事件が発生した。
評価★★★★☆/85点
“よーし、雪男とかビッグフットにばったり出くわしたら、こっちから脅かしてやる!”
返り討ちにあうことは必至!?
ま、皆さん難しく考えないで大いに泣いて笑ってあちら側に貢献しちゃいましょう。
ウチの者みたいに、子供部屋の隣には親の寝室があるんでしょ?などという合理的解釈はこの映画には必要ありません(笑)。
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モンスターズ・ユニバーシティ(2013年・アメリカ・103分)WOWOW
監督:ダン・スカンロン
声の出演:ビリー・クリスタル、ジョン・グッドマン、スティーヴ・ブシェーミ、ヘレン・ミレン、アルフレッド・モリーナ
内容:最恐のモンスターを目指しているマイクは、身体が小さく見た目が可愛いという悩みがあった。それでもポジティブなマイクは、超難関大学モンスターズ・ユニバーシティの“怖がらせ学部”へ進学する。そこでマイクは、エリート学生が多く通う中でも一二を争う名門一家に生まれたサリーと出会う・・・。「モンスターズ・インク」の前日譚を描く物語。
評価★★★/60点
シニカルでひねりの利いたエスプリの香り漂うピクサーで正直学園ものを見せられるとは思いもしなかったけど、しかも12年越しの続編でこれは、というイマイチ感は拭えず・・。
マイクのサリーに対する劣等感と対抗意識の他にもう一本軸がほしかった気もするね。その点では、前作でイヤミな悪役となったカメレオントカゲのランドールの方が当初はマイクと仲が良かったというのはもっと引っ張ってもよかったような。。
怖がらせ大会のシークエンスもちょっと盛り上がらなかったしなぁ・・・。
しかし、モンスターズインク社の稼ぎ頭であるマイク&サリーが大学を1年で中退してたとはねぇ(笑)。
自分にしかできない強みや個性を見つけてそれを生かせば新たな価値観を見出すことができ、なおかつまた別なアングルから夢に近づくことができるという至極真っ当なメッセージは良い。考えてみれば大学ってそういうとこだからね。
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ミニオンズ
声の出演:天海祐希、設楽統、日村勇紀、宮野真守、藤田彩華、LiSA
監督:ピエール・コフィン、カイル・バルダ
(2015年・アメリカ・91分)WOWOW
内容:バナナが好きな謎の生物ミニオンは、人類以前の太古の昔から存在していた。彼らの生きがいは、最凶悪なボスに仕えること。が、ナポレオン以降仕えるボスがいなくなり、氷の洞窟に長く閉じこもっていた。そんな中、ケビンは新たなボスを探すことを決意。仲間のスチュアートとボブを引き連れ旅に出る。そして着いた所は1968年のNY・・。
評価★★★/65点
怪盗グルーのスピンオフというよりメインストリームに乗るべくして乗ったと言った方がいいミニオン主演作だが、これがまぁまぁツマラない・・。
個人的にミニオンを最初に見た時に思い浮かべたのがウォレスとグルミットの犬キャラであるグルミットだった。
でも、言葉を話さず目と眉だけで感情を雄弁に物語るグルミットに比べると、ミニオンの場合は一見すると意味不明なミニオン語を話すことが逆に感情表現に制約の枷をはめてしまっていてスゴイもったいないなぁと。
分からない外国語でも声のトーンなどで喜怒哀楽くらいは推測できるように、結局言葉が感情表現の一部になっていて、しかもミニオン語ってけっこう単語が多くて、いっぱしの外国語になっちゃってるんだよね。
例えばロシアのカルトSF「不思議惑星キンザザ」みたいに“クー”“キュー”しか話せないとか、語彙を極端に少なくすればよかったのに。。
そう考えるとピクサーの「ウォーリー」はやっぱ凄かったんだなぁと再確認w
P.S.マシュマロマンは自分でも分かったけど、ラストは鉄腕アトムからと考えていいのかな!?
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ももへの手紙(2012年・日本・120分)NHK-BS
監督・脚本:沖浦啓之
声の出演:美山加恋、優香、坂口芳貞、谷育子、チョー、山寺宏一、西田敏行
内容:小学6年生の女の子ももは、父親の死をきっかけに母親と瀬戸内の島に移り住む。彼女は、亡くなる日の朝に父とケンカしたこと、そして父が自分に残した書きかけの手紙のことが頭から離れず、ひとり悩みを抱えていた。そんなある日、彼女は不思議な妖怪たちと出会う・・・。
評価★★★/65点
作画の質、背景の緻密さ、キャラクターの動線などアニメーションとしてのレベルは格段に高いし、親の喪失からの回復という真っ当なドラマはリアルな現実感を醸し出す。
舞台が瀬戸内だけに大林宣彦に監督させて実写でやってもいいくらいだ。
しかし、これはアニメ。
リアルな現実感にファンタジーがブレンドされるわけだけど、このブレンドの仕方が個人的にはイマイチで中途半端な印象を抱いた。
要はもののけ3人組のキャラが弱すぎると思う。西田敏行や山寺宏一の声に助けられているとはいっても、正直あまり妖怪である意味がないというか、ファンタジーとしてのデフォルメが足りてないと思う。
これはおそらく現実と非現実の住み分けというよりは現実の地続きのものとしてファンタジーを位置づけている意図があるのだろうけど、自分としてはちょっとそこに違和感を感じちゃったのかも。
とはいっても、昨今のアニメ映画の中では全然悪くない出来なのはたしかで、普通におススメできる映画だとは思う。
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