夢のシネマパラダイス600番シアター:寄生獣
寄生獣/寄生獣完結編
出演:染谷将太、深津絵里、阿部サダヲ、橋本愛、東出昌大、池内万作、新井浩文、ピエール瀧、大森南朋、余貴美子、豊原功補、北村一輝、國村隼、浅野忠信
監督・脚本:山崎貴
(2014年・東宝・109分/2014年・東宝・118分)盛岡フォーラム
内容:ある日、地球に謎の寄生生物“パラサイト”が出現し、ひそかに人々に寄生し始めた。擬態能力を持つ彼らは、人間の脳を食べて身体を乗っ取り、他の人間を次々と捕食していく。そんな中、高校生の泉新一もパラサイトに寄生されてしまうが、奇跡的に脳への侵入を阻止する。しかし、右手を乗っ取ったパラサイトは自らを“ミギー”と名乗り、新一とミギーの奇妙な共生生活が始まるが・・・。
評価★★★★/75点
原作マンガは高校生の時にクラスで回し読みするくらい流行っていて大好きなマンガ。
読み物としては全10巻と手頃な長さなので前後編に分けるならば、映像面さえクリアできれば映画化はしやすいだろうなとは予想していたけど、ほぼ原作通りのシナリオ展開、寄生獣の世界観やヴィジュアルイメージを損なわない映像、ドンピシャのキャスティングと、原作のエッセンスを忠実になぞるという点では及第点以上の出来だったと思う。
特に冒頭のプロローグで、寄生された中年男が洗面台で鏡を見ていると左右の目がギョロリと焦点が合わなくなって、その直後に何のケレン味もない顔がヒトデのような形に割れて、妻の首から上をバクンッと捕食するシーンだけでこの映画に合格点あげていいくらいのインパクト
他にも高架下の河川敷でのバトルシーンなど実写ならではのダイナミズムもよく表現されていたし、穴らしい穴はなかった。
ただ、人間欲張りなもので、腹八分目では満足できないというかw、あと二分目のプラスアルファが欲しかったという気も。。
例えば、この作品の重要なファクターである日常と非日常の落差について最大の肝となる新一の母親が寄生生物に乗っ取られてしまう恐怖がちょっとイマイチだったかなぁというのはあって、乗っ取られた母親が玄関から入ってくる姿を普通に映し出しちゃってるんだけど、あそこは「ただいま」とか声だけにして、ミシッミシッと新一の方にだんだん近づいてきて廊下の陰からヌッと姿を現すとかした方が絶対よかった。
あとは、我々(寄生生物)は何のために生まれてきたのかと疑問を感じ続け、最終的に我が身を犠牲にして他者を守るに至る田宮良子(深津絵里)の思索の旅は、“我思う故に我あり”という「ブレードランナー」のレプリカントに通じる根源的テーマだと思うんだけど、要はそこの掘り下げがプラスアルファの部分なのかなと。
例えばマンガの方で、なぜ寄生生物は人間を殺して食料にするのかという問いに、田宮良子は「ハエは教わりもしないのに飛び方を知っている。クモは教わりもしないのに巣の張り方を知っている。思うにハエもクモもただ“命令”に従っているだけにすぎない」と答える。
これはつまり一瞬たりとも自分の行動を省みることのない本能といえるけど、この思考を欠いた考えない知性が、寄生した人間の性格と知能を引き継ぐことで自己意識を獲得するという奇抜な設定だけに、田宮良子なりあるいは新たなキャラクターなり映画ならではの思いきった踏み込みがあってもよかったのかなと。
あるいは、あらゆる種を食べつくす人間はそもそも正しい存在といえるのかという視点も通底音としてあるんだけど、人間側の狭量さや攻撃性の深さを浮き彫りにすることで、恐ろしいのは外からの侵略者なのか、それとも疑心暗鬼に陥りやすい人間なのかという掘り下げ方も一方であってもよかったと思う。
まぁ、このての有名どころのマンガ原作の映画化って最近でも進撃の巨人しかりルパン三世しかり手応えなしだったので(笑)、それを考えれば健闘したってことでグッジョブにしときましょうかねw
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