夢のシネマパラダイス347番シアター:世紀の大泥棒
ルパン三世 カリオストロの城
声の出演:山田康雄、島本須美、増山江威子、小林清志、井上真樹夫、納谷悟朗
監督・脚本:宮崎駿
(1979年・東宝・100分)DVD
評価★★★★★/100点
内容:人気テレビアニメの劇場版第2作。宮崎駿が初めて手掛けた劇場用長編アニメとしても知られている。カジノから盗んだ札束が精巧なニセ札であることに気付いたルパンは、ニセ札の出所と思われるヨーロッパの小国・カリオストロ公国に相棒の次元とともに潜入する。カリオストロでは大公家の孫娘クラリスが、権力を独占しようと画策する摂政のカリオストロ伯爵から結婚を迫られていた。。
“ウソは泥棒の始まり!ならぬウソは宮崎アニメの真骨頂!”
宮崎アニメの真骨頂。
それはアニメの作劇術におけるウソのつき方だと思う。
例えば、ルパンと次元がローマ水道を泳いでカリオストロ城内に侵入しようとする場面で、急流の滝にルパンが押し流されながらも必死こいて泳ぎ登ろうとするシーンがある。
このシーンだけを取り上げると、どう考えても現実的にはありえないシーンなのだが、しかし見ている最中はありえなくもないと思わせてしまう。
それはつまり滝を泳いで上れるなんて実際不可能でリアリティがないということと、滝の流れに逆らおうとする必死さと意志は可能でリアリティがあるということ、すなわち不可能と可能のバランス感覚とそれをアニメで表すという宮崎駿の演出力が図抜けているということだ。
特に、なさそうでありそうだという表現がピッタリのバランス感覚はもの凄いと思う。
簡単そうで実は難しい、マネできそうでマネできない、これは天性のものなのかもしれない。
それが宮崎アニメを他のアニメと隔絶させている1つの大きな要因だと思う。
そしてTVアニメ「未来少年コナン」と、それから遅れること約1年で公開されたカリオストロの城にこそ宮崎アニメの真骨頂が原液そのままで表されているわけで、それはもう★5つ以外に評価のしようがないわけでっす。
カリオストロでいうと、他に分かりやすいシーンは、冒頭のカーチェイスでのフィアットの崖登りシーン「まくるゼーー!」
同じくルパンとクラリスが乗った車が崖から落っこちるシーンで、ルパンがワイヤーを木に投げてぶら下がるシーン。どう考えても人間2人を支えきれるわけがないのだが、ここでルパンのバックルに小道具的な装置を付け、さらにハンドルをキコキコ回して上に昇るのかと思いきや下へ降りていくという心憎い演出を見せてしまう、、さっすが宮崎駿。
そしていわずもがなの全速直滑降ダッシュ&ジャンプでベタッと塔の壁面にへばりつく有名なシーン。あと、重傷を負ったルパンの食い意地も付け加えときましょうかね。
そうそう、宮崎アニメに出てくる食べ物って美味しそうだよねぇホント。
分厚い肉にぶっ太いソーセージ、ボリュームたっぷりスパゲティにフルーツ盛り合わせ、、ありゃ傷も癒えるわ。銭形が食ってるカップラーメンまで美味しそうなんだもん。
また、ストーリーテリングについては、未来少年コナンの設定と話のつくりをそっくりそのまま持ってきてるよね。
ルパンと銭形という追う者と追われる者というルパン三世を成立させている大前提を逆転させることさえ意に介していないという点では、これはルパン映画ではなく完全に宮崎アニメの文法そのもの。
まぁこの点については全然OKなんだけども。
面白いからといえばそれまでだけど、そもそもルパン三世というアニメは、TVシリーズなり劇場版なりでやることはやってしまったという感もあるからね。それでもさらにルパン映画を作っていくという時にそれまでと同じことをまたやっていくのか。。。
なんかそれだと作り手としても見る方としてもモチベーションみたいなものがなかなか上がっていかないんじゃないかな。
ドラえもんの劇場作品でのび太とジャイアンが手を取り合うような、TVシリーズとは違う劇場版ならではの特別な気風が感じられた方が心にも残りやすいと思う。
その点でもこのカリオストロは出色の出来。
P.S. 宮崎アニメは緑も豊か。宮崎アニメの真骨頂その2。
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怪盗グルーの月泥棒
声の出演:笑福亭鶴瓶、山寺宏一、伊井篤史、京田尚子、須藤祐実、矢島晶子、芦田愛菜
監督:クリス・ルノー、ピエール・コフィン
(2010年・アメリカ・95分)WOWOW
内容:ある日、ピラミッドが盗まれた。盗んだのは、悪党銀行の御曹司ベクター。それに対し、大泥棒を自負するグルーは負けてなるものかと月を盗むことを決意する。武器作りの天才科学者ネファリオ博士と手下のミニオンたちを従え準備万端かと思いきや、月を盗むのに使う秘密兵器をベクターに盗まれてしまう。そこで、ベクターの大邸宅に出入りしている養護施設の三姉妹を利用することにして養女として引き取ることにするが・・・。
評価★★★/65点
悪党グルーを見て真っ先に思い浮かべたのが、「レミーのおいしいレストラン」に出てくる辛口料理評論家アントン・イーゴだった。
偏屈で嫌みったらしくて、あえて誰にも心を開かないような高慢ちきなキャラクターだと先入観をもって見てしまったから、さぁ大変(笑)!
大の子供嫌いなはずなのに、三姉妹の可愛さに即陥落して良い人になってしまうなど、想定していたキャラとはブレブレでいまいち乗り切れず。。
自分勝手が招いた自業自得といえばそれまでだけどw、グルー以外の取り巻きはキャラが確立していただけに、もう少しビターテイストが欲しかった気が。
まぁ、鶴瓶の声がグルーの風貌とえらくマッチングしていて小物感がありありと出ていたので、これはこれで良かったのかな。
ミニオンは、まっくろくろすけのような愛嬌と、ウォレスとグルミットのような所作の充実があいまって見事な造形。それこそミニオンで映画作った方が・・w
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ルパン三世 ルパンvs複製人間(1978年・東宝・102分)金曜ロードショー
監督:吉川惣司
声の出演:山田康雄、小林清志、増山江威子、井上真樹夫、納谷悟郎、西村晃
内容:峰不二子におねだりされ、エジプトのピラミッドから“賢者の石”を盗み出したルパンだったが、何者かに命を狙われるようになる。実は不二子の裏で謎の大富豪マモーが糸を操っていたのだ。そしてマモーに捕らえられ、賢者の石が不老不死の力を得るために必要な秘宝だと知ったルパンは、なんとか脱出して逃亡するが、次元、五右衛門とケンカ別れしてしまう・・・。
評価★★★/60点
カーチェイスひとつとっても宮崎駿お子様ランチには到底かなわないのが正直なところ。
しかしまぁ、2001年宇宙の旅でラストかと思ったら三波春夫へバトンタッチという荒技には一気に気抜けというかなんというか・・w
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ルパン三世
出演:小栗旬、玉山鉄二、綾野剛、黒木メイサ、浅野忠信、ジェリー・イェン、キム・ジュン、ニック・テイト
監督:北村龍平
(2014年・東宝・133分)WOWOW
内容:古代ローマで「その所有者は世界を統べる」といわれた幻の秘宝“クリムゾン・ハート”が、アジアの闇社会を牛耳るプラムックの手に渡った。そして世界最強の鉄壁セキュリティに覆われた要塞に封印してしまう。それに対し、ルパン一味は秘宝奪還に乗り出すが・・・。
評価★★/40点
まったくもってツマラなかった。
それ以上でも以下でもないんだけど、ものの開始5分でこれはダメだなと思った(笑)。安っぽい香港映画じゃんこれ。。
なんだろなぁ、、アジアの力を結集して面白いアクション映画を作ろうっていうヤル気は買うけど、ルパンでやる企画じゃないんだよなぁ
ルパン三世と香港映画はイメージ的にもつながらないし。。
あと、なんか中身の方もアジア版ミッション・インポッシブルな趣だったけど、アップを多用し無用なカメラワークで騙しだまし繰り出されるアクションシーンのちゃちさが本家との比較でさらに際立って、目に余ってどーしょーもないw
まぁ、そもそもルパン三世にとってアクションの質はそんなに重要ではないとはいえ、例えばカーチェイスでふた回り以上もデカい敵のハマーに体当たりを受けてボッコボコになっているはずなのに、フィアットの車体に傷ひとつ付いていないとか思わず目を疑ってしまうようなガサツなディテールが随所にあって、映画のレベルを著しく下げている。
あとはなんといってもキャスティングw
ここにケチをつけたらキリがないんだけど、やっぱりルパン三世で最も重要なのはコミカルな作風とそれに合うキャラクターなんだよね。そこもこの映画は圧倒的に弱い・・・。
で、ルパン三世ってコミカルでちょっとエッチで肝心なところはハードボイルドで締めるという大人テイストな作品なわけで、やっぱりコメディ感覚を持った監督と演者じゃないとそのルパン三世の色って出ないと思うわけで。
それを考えると、ルパンは大泉洋が適役なんじゃないかな。
峰不二子は米倉涼子、次元が阿部寛、五右衛門が江口洋介、銭形が佐藤浩市、役所広司、生瀬勝久あたり。で、監督・脚本は三谷幸喜。これぞ最強w
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