夢のシネマパラダイス498番シアター:女の中にいる他人・・・
小さいおうち
出演:松たか子、黒木華、片岡孝太郎、吉岡秀隆、妻夫木聡、倍賞千恵子、橋爪功、吉行和子、室井滋、中嶋朋子、小林稔侍、夏川結衣、笹野高史
監督・脚本:山田洋次
(2013年・松竹・136分)WOWOW
内容:生涯独身を通した布宮タキが亡くなった。晩年の話し相手だった甥っ子の健史は、タキが遺した自叙伝を託される。そのノートには、若かりしタキが女中として働いていた頃の出来事が綴られていた。昭和10年、山形から上京してきた18歳のタキは、東京郊外の赤い三角屋根が目を引く小さくもモダンな家で女中として働き始める。その家の主人の平井は玩具会社の重役で、若い奥様・時子と幼い一人息子・恭一の3人家族だった。タキはとりわけ美しくオシャレな時子に尽くすことに喜びを感じていくが、平井の部下の板倉の出現が平穏な暮らしにさざ波を起こしていく・・・。
評価★★★☆/70点
女中の視点とはいえ、山田洋次がブルジョワ家庭を描くというのはちょっとした事件ではある。
ところが、そこに何か特別な化学反応があるわけでもなく、文字通り小さいお話に縮こまっちゃってるのは、従来の山田節からすればやや歯切れの悪い印象を受ける。
ただ、戦争は金持ちだろうと貧乏だろうと関係なしに地獄を見せるという点で、丘の上に立つハイカラなおうちが焼夷弾に焼き尽くされる断末魔は心にトゲが突き刺さったような痛みを覚えた。
また、ぜいたくは敵だ!と叫ばれたあの時代を美化することは悪であると教えられてきた自虐史観の塊である現代っ子と、そういう時代でもぜいたくは素敵だったとしたたかに生きてきた実体験者の感覚の齟齬はとても面白かった。
その中でもラサール石井演じる社長さんたち男性陣の戦争に対する高揚感と楽観論、そして真珠湾攻撃の日に「風と共に去りぬ」を読んでいるような時子たち女性陣ののんびり感は興味深く、市民感情が戦争やむなしに流れていく様はよく描かれていたと思う。
しかし、戦争が長引くにつれて、いい加減な人間が生きづらい世の中になってきて、こんなはずじゃなかったのにと嘆くも時すでに遅し。景気が良くなるどころか物資不足で会社は立ち行かなくなったり、好きな人に赤紙が来たり、あるいは空襲で殺されるに至るまで戦争の本当の恐ろしさを肌身に分かっていなかった、、、そんな政治意識の低さと甘さが戦争を呼び込んでしまった一面もあるのだということがよく分かった。
戦争に巻き込まれるのではなく、戦争を呼び込んでしまうのだということを。
今の日本がそうならないことを願うばかりだけど、少なくとも戦争に対する嫌悪感だけは持ち続けていなければならないのだと思う。
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女の中にいる他人(1966年・東宝・102分)NHK-BS
監督:成瀬巳喜男
出演:小林圭樹、新珠三千代、草笛光子、三橋達也、若林映子、長岡輝子
内容:エドワード・アタイアの推理小説を翻案した、成瀬監督には珍しい心理ミステリー。平凡な中産階級の夫が情事の末に殺人を犯し、良心の呵責に悩んで妻にすべてを話して自首しようとするが、妻は子供の将来を重んじてそれを許さずに・・・。
評価★★★/60点
“今村昌平の重喜劇でもって見たかった気も・・。”
ううむ、、なんだろう、今村昌平を洗濯機に入れてアブラ分をきれいさっぱり落としちゃったような、そんな物足りなさを少し感じてしまった。
人間のダークサイドに踏み込んでいこうにも登場人物が揃いにそろって絵に描いた優等生タイプの良い人なので、例えば新珠三千代の豹変ぶりもなにか底が浅く見えてしまった。
まぁ、ミステリーという題材を丁寧にすくい上げ咀嚼したマジメな演出には好感がもてるのだが、裏を返せば単なるクソ真面目にしか見えてしまいかねない・・・。そして、案の定そういう面ばかりが気になってしまったといったところか。
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木曜組曲
出演:鈴木京香、原田美枝子、富田靖子、西田尚美、竹中直人、加藤登紀子、浅丘ルリ子
監督:篠原哲雄
(2001年・日本・113分)DVD
評価★★★★/80点
内容:大女流作家・重松時子は、4年前ミステリアスな薬物死を遂げた。それから毎年、時子をしのび、彼女の邸宅に集う5人の女たち。今年も例年にならい、木曜日をはさんで3日間集まることになったが、彼女たちのもとに花束が届いた。そこに添えられていたカードには、「皆さまの罪を忘れないために、今日この場所に死者のための花を捧げます」というメッセージが・・・。
“五角形の食卓が5人の女たちのよどみない交錯によって黄金比で象られた五芒星へと変貌を遂げるさまに思わず舌鼓を打つ。”
その五芒星の中心にいたのはまぎれもない永遠の巨匠となった時子であった。
女の食い意地と食欲は何ものにも勝るといった風でもあったが、これ見て食欲が湧かなかったのはある意味不思議。
あっ、そっか、、毒ね
ちなみに自分は金曜日がお好き♪
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8人の女たち(2002年・フランス・111分)DVD
監督・脚本:フランソワ・オゾン
出演:カトリーヌ・ドヌーブ、エマニュエル・ベアール、イザベル・ユペール、ファニー・アルダン
内容:1950年代のフランス。クリスマスイブの夜、大邸宅の主が殺された。外から何者かが侵入した形跡はなく、集まっていた8人の女たちは疑心暗鬼を募らせ、やがて互いを詮索するようになる・・・。フランスを代表する大女優8人が歌って踊る夢の競演!
評価★★★/65点
8人の女たちの陳腐で見えすいた会話劇に全く魅力も救いようも感じられず、まるで騒々しい井戸端会議でも見せられているような気分になってくるのだが、それでもサラッと見れてしまうのがなんとも不思議な味わい・・。
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モンスター
出演:シャーリズ・セロン、クリスティーナ・リッチ、ブルース・ダーン、スコット・ウィルソン
監督・脚本:パティ・ジェンキンス
(2003年・米/独・109分)2004/10/02・仙台フォーラム
評価★★★/60点
内容:娼婦の生活に疲れ果て、自殺を考えていたアイリーンは、ひとりの少女と出会う。彼女との新しい生活に希望を見出そうとするのだったが・・・。モンスターと恐れられたアメリカ初の女性連続殺人犯の哀しい人生を、シャーリズ・セロンが13キロ体重を増やして演じ抜き、アカデミー賞主演女優賞を受賞。
“酷い話ではあるが、可哀想だと同情できるような話ではない。”
性的虐待や父親の自殺、そして家族から捨てられた凄絶な子供時代。また娼婦として街に立って生きる自殺を考えてしまうような身の上はたしかに悲劇ではあるし、この映画の目線がアイリーンを「モンスター」としてではなく「人間」として捉えていこうとする点は評価できる。
、、のだが、しかし圧倒的社会の現実の前で、映画が彼女を掬い上げていこうとするのとは裏腹に、当のアイリーン自身の方が「勝手にほざけよ!」と我々を突き放し続けていくわけで、どうも救いようがないというか。同情の余地がないので、感情移入なんてなおさらできるはずがない。
しかし、救い上げるための社会がすでに救いようのない「モンスター」になっているということも反面この映画からは伝わってくるわけで、「モンスター」はアイリーンのことではなく、この今の社会のことを指しているのかもしれない。
美しい夢を見続けたダイヤの原石。
何ものにも押しつぶされない硬質なダイヤのごとく、アイリーンは「人生で大事なのは人と自分を信じること」という堅い意思のもとで、セルビーへの愛を貫き通し、生き抜いたといえるのかもしれない。
これが西部劇とかだったら、童貞は始末しない心優しき変態征伐隊として断然ヒーローになるのだけどもww
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ディスクロージャー(1994年・アメリカ・129分)WOWOW
監督:バリー・レビンソン
出演:マイケル・ダグラス、デミ・ムーア、ドナルド・サザーランド
内容:ハイテク企業に勤務するトムは、昔の恋人メレディスに総括部長の座を奪われる。さらに彼女の誘惑を拒否したことでセクハラと訴えられ、窮地に追い込まれてしまい・・・。
評価★★☆/45点
これって49対51で理性がなんとか上回ったってだけの話やろ。勃起したお前も悪いんだよダグラスさん(笑)。
しかしこんな映画でも強引に家族愛という着地点にもっていくのはある意味さすが。。
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冷たい月を抱く女(1993年・アメリカ・107分)NHK-BS
監督:ハロルド・ベッカー
出演:ニコール・キッドマン、アレック・ボールドウィン、ビル・プルマン、アン・バンクロフト
内容:大学の学長補佐を務めるアンディの学校では生徒の連続殺人が起こっていた。そこに現れたのは旧友の外科医ジェット。彼がアンディの妻トレイシーの手術で医療ミスを犯したことから裏に仕組まれていた陰謀に気付くのだが・・・。
評価★★★/60点
ヒッチコックに代表される古典的スリラーを現代風にアレンジした見事な創作料理といきたいところだが、フタを開けてみたら、なにやら欲張りすぎてわけの分からない一歩手前でなんとか形をとどめているにすぎないものが出てきてしまった。
ただ、ニコール・キッドマンは、ブロンド美女をこよなく愛するヒッチコック好みの女優さんだと思うのだけど、あの独特な彼女の眼力がヒッチコックスリラーと現代風スリラーの橋渡し役として見事に機能していることだけは買いたい。
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悪魔のような女(1955年・フランス・107分)NHK-BS
監督:アンリ=ジョルジュ・クルーゾー
出演:シモーヌ・シニョレ、ヴェラ・クルーゾー、ポール・ムーリス、シャルル・ヴァネル
内容:妻クリスティナの財力でパリ郊外の小学校の校長に納まっているミシェルは、妻に教鞭をとらせ、もう1人の女教師ニコールと公然と通じていた。しかし、乱暴で利己的な彼に対してついにガマン出来なくなった2人の女は、共謀してミシェル殺害の計画を立てる。そして、怖気づくクリスティナと気の強いニコールは、浴槽でミシェルを窒息死させるのだが・・・。
評価★★★★/80点
世にも奇妙な物語のテーマ音楽が地の底から響き渡ってくるような映画。タモリが出てきたら完璧でっせコレw
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