夢のシネマパラダイス162番シアター:地獄でなぜ悪い
地獄でなぜ悪い
監督・脚本:園子温
(2013年・日本・129分)WOWOW
内容:一世一代の傑作映画を撮ることを夢見る30手前のフリーター・平田のもとについに映画製作の話が舞い込んだ。依頼者は獄中にいる妻のために、かつて子役として活躍した娘のミツコを主演に映画を作ろうとしていたヤクザの組長・武藤。当初、監督はミツコに無理やり頼まれたド素人の橋本だったが、映画を完成させないと殺されることに肝を冷やした橋本が奇跡的に出会ったのが平田だったのだ。こうしてスタッフ&キャストは手下の組員、しかもテーマは現実に敵対する池上組への殴り込みという前代未聞の映画撮影が幕を開ける・・・。
評価★★★☆/70点
映画バカにささげるオマージュを散りばめた映画愛をうたった映画って古今東西あるけど、そのてのものって甘酸っぱいノスタルジー色に彩られたものが多い。ニューシネマパラダイスはもとより三谷幸喜の「ザ・マジックアワー」しかりJ.Jの「スーパーエイト」しかり「桐島、部活やめるってよ」しかりだ。
しかし、これはどうだ!
露悪的で破壊的で不健全でアンバランスでとにかく滅茶苦茶w、狂気の沙汰に針が振り切れた全力歯ぎしりレッツゴー!な超激辛ムービーを見せられてしまうとは。
甘酸っぱさとは真逆の唯一無二の悪趣味全開バカ映画!
それ以上でも以下でもない(笑)。
しかし、途中で息切れすることなく130分ハイテンションで突っ切る力技はスゴイの一言。これが撮れたら死んでもいいというほどの一生に一度の名作がヤクザのガチの殺し合いというハリボテ感をなんなく突き破っていく阿鼻叫喚のカタルシスが、映画にかける情熱をブラックなユーモアに昇華させている。過剰すぎる表現方法の好き嫌いは別にしてそこだけは認めざるをえない。
役者陣もこんな血みどろ大宴会によく付き合ったと思うよww
でも、なんというか、こんな雑極まりない映画を認めたくない自分もいたりして・・
映画愛を露骨にセリフで何遍も語らせるのもなんか違うし、結局映画はハリボテでしかないんだよと予定調和な落としどころをさらに突き破る「はい、カット~!」の掛け声で締めるラストも、ここまできて監督の照れ隠しかよっと引いちゃったしw
まぁでも、今回は園子温の映画バカっぷりの軍門に潔く降るよ。あー負けだ負けだ。こっちももうヤケッパチだww
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蒲田行進曲
出演:松坂慶子、平田満、風間杜夫、清川虹子、蟹江敬三、原田大二郎、萩原流行
監督:深作欣二
(1982年・松竹・109分)WOWOW
評価★★★☆/70点
内容:『新撰組』を撮影中の花形スター銀四郎は、お嬢様との見合い話が進み、妊娠してしまった恋人の女優・小夏が邪魔になり、取り巻きの大部屋俳優の一人ヤスに彼女を押し付ける。彼女の大ファンだったヤスは、小夏と結婚し、生まれてくる子供も我が子として育てることを承知するが・・・。
“戸籍は屁よりも劣るのかぁーッ!”
テンション5割増の超ハイテンションで繰り広げられる失笑もんの青くさいドタバタ劇に最初は付いていけなかったんだけど・・。
しかし、大見得を切りながら二枚目の大根役者・銀ちゃんを演じきった風間杜夫。その銀ちゃんにドツかれまくりながらも、「これがこれなもんで~」という名ゼリフとともに大部屋俳優としてのプライドと意地を見せていくヤスに扮した平田満。そして銀ちゃんの子をはらませた落ち目の女優とヤスとの結婚生活に本当の幸せを見出していく良き妻との間で揺れ動く女心を泣きじゃくりオッパイまでさらけ出しながら熱演した松坂慶子。
彼らの体当たり演技に裏打ちされたアツい空気とテンションに力づくで映画の中に引きずり込まれてしまった・・・。
永遠に続くかと思われるハイテンションを、これは劇中劇でっせというラストのオチで綴じたのも巧かったし、全てが納得できたかんじ。
しっかし、10メートルの高さの大階段は見てるこっちが足すくむわな(笑)。
人間が1番恐いと実感する高さは10メートルなんだそうな。くわばらくわばら・・・。
でも、タイトルに蒲田って付いてるから、松竹を思い浮かべちゃうけど、映画の舞台はどう見ても東映京都撮影所なんだよね(笑)。あてつけか何かなのかしらw?
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キネマの天地(1986年・松竹・135分)NHK-BS
監督:山田洋次
出演:中井貴一、有森也実、渥美清、松坂慶子、倍賞千恵子、すまけい、笠智衆、岸部一徳、田中健、松本幸四郎、柄本明、ハナ肇
内容:昭和初期。浅草の活動写真小屋で売り子をしていた小春は、松竹の映画監督に見出されて蒲田撮影所の大部屋女優となる。彼女はすぐに演技の難しさに直面するが、周りの人々の励ましもあって少しずつ女優として成長していく。やがて、大作の主演に決まっていた大スター川島澄江が愛人と失踪し、小春に代役が回ってくるが・・・。
評価★★★/60点
山田洋次に井上ひさしに山田太一という個性の強すぎる巨匠がトリオで脚本に参加しているけど、えてしてそういうコラボってお互いの良さを消し合って逆効果になっちゃうんだよね。で、これもご多聞にもれず、あまり統一感のない作品に仕上がってしまった・・・。
ただ、松竹大船50周年企画のお祭り映画という意味では日本映画草創期の映画ネタと楽屋オチが楽しめるのもたしかで、個人的に1番面白かったのはアカ狩りで思想犯の部屋に踏み込んできた特高警察がマルクスの本を見つけるんだけど、その本がハリウッドのナンセンスギャグマイスターのマルクス兄弟の本だったというシーンw
他にも宮崎駿の「風立ちぬ」でドイツ人スパイのカストルプがピアノの弾き語りをしていた曲“ただ一度だけ♪”を木の実ナナがビアホールで歌ってたり、、って30年を経ての邂逅ってスゴッ。
あとは何といっても渥美清の名人芸にこの映画が救われていることは口を強くして言っておかなければならない。寅さんの父親役というのも珍しくて見どころだったけど、味わいがあって良いんだよね。特に渥美清と笹野高史のかけ合いは絶品だった。
まぁ、全体的にいえば駄作だけどw、見て損はしないso-so映画といえるだろう。
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イン・ザ・ヒーロー(2014年・東映・124分)WOWOW
監督:武正晴
出演:唐沢寿明、福士蒼汰、黒谷友香、寺島進、小出恵介、及川光博、加藤雅也、松方弘樹、和久井映見
内容:戦隊ヒーローショーや特撮ドラマなどで着ぐるみをかぶるスーツアクターを25年やっている本城渉。いつか“顔出し”で映画出演するという夢を追い続けているが、妻子には逃げられ、訪れたチャンスも売り出し中の新人・一ノ瀬リョウに奪われてしまう。ところが、そんな本城のもとに、ハリウッドから忍者アクション大作への出演オファーが舞い込んできた。が、その内容は命がけのあまりにも無謀なスタントだった・・・。
評価★★★☆/70点
映画を見た後日に、日本のアクションスターのパイオニアである千葉真一がたまたまバラエティ番組に出ていて面白いエピソードを話していた。
自分が主演したアクション映画のアクションシーンで、相手役のアクションも自分が吹き替えでやらなければならないほどアクションスタントをこなせる人材がいなくて、これではいかんということで人材育成のために1970年にジャパンアクションクラブ(真田広之、伊原剛志、堤真一などを輩出)を立ち上げたというのだ。
ハリウッド映画で好きなアクション映画は?とか香港映画で好きなアクション映画は?という問いには真っ先に答えられるのに、日本映画で好きなアクション映画は?となると答えに窮してしまう理由が分かった気がしたけど、作り手の裾野の狭さがいまひとつクオリティが上がってこなかった要因なんだなぁと。。
まぁ、七人の侍やるろうに剣心、十三人の刺客といったチャンバラ活劇は世界水準を凌駕しているけど、それくらいだよね。
でも、普段何気なく楽しんで見ているアクション映画の裏には映画バカたちの夢と裏方スタッフの頑張りがたくさん詰まっているんだなぁと思えたし、アクションはリアクションがあって初めて成立するチームプレーという言葉が心に染みた。
大団円のアクションシーンも気合の入った仕上がりで説得力があったし、今回の映画は全体的にみても印象深い作品になっていたと思う。
しかし、戦隊ヒーローの中に入っているのがブラジャー付けたオッサンって、、この映画は子供には見せられないな(笑)。
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