夢のシネマパラダイス598番シアター:ぺコロスの母に会いに行く
ぺコロスの母に会いに行く
出演:岩松了、赤木春恵、原田貴和子、加瀬亮、竹中直人、大和田健介、原田知世、宇崎竜童
監督:森崎東
(2013年・日本・113分)
内容:ぺコロス(小玉ねぎ)のようなハゲ頭が特徴の売れないバツイチ漫画家・岡野ゆういちは、地元長崎で母みつえと息子まさきと気ままに暮らしている。ところが夫に先立たれて以来、みつえの認知症が進行していた。そのため、ゆういちは悩んだ末にみつえを介護施設へ預けることにするが・・・。
評価★★★★/80点
認知症が原因による徘徊などで行方不明になった老人が年間1万人(うち死亡350人、未発見200人)を超える中で、「ボケるのも悪いことばかりじゃない」とはそう簡単に言えることではないと思うけど、温かな親子の絆と幸せな介護のひとつの理想型を見せてもらった気はする。
特に親を施設に預けることがどこかで親を置き去りにして逃げていくという罪悪感を感じさせるところは、後々訪れるであろう親の介護なんて普段頭の中にない自分にとっては思ってもみないことだったし、心がキュッとせつなくなってしまった。
最初はコミカルなユーモア描写のぬるさに軽いかんじで見始めたけど、ぺコロスが母親を介護施設に預けるシーンから俄然この映画は重みを増したと思う。
しかし、認知症を扱ったTVドキュメンタリーなどを見ると、介護する側にとって1番ツライのは、症状を発症した肉親の変貌だという。
そのドキュメンタリーでは、認知症の母親を30歳になる娘が自宅介護していて、娘のことを思い出せない母親から時ならず向けられる暴力や罵詈雑言に憔悴しきっているのを見て逆にこちらの心が折れそうになったけど、しかしその中でも笑顔が1番の良薬だと信じて母親に付き添い続ける娘の姿には、もし自分だったらあんなに激しい言葉と抵抗を見せる母親の変貌ぶりを前にありのままの自分でいられるだろうかとかなり不安になってしまった。
ツラくて苦しいことの方が多く忍耐が必要であろう介護において、ありのままの自分でいることと笑顔がなによりも大事なのだろうと思う。
その点で今回の映画は、“ありのままの自分”と“笑顔”というキーポイントを余すことなく取り入れて描き出してくれたと思う。母親に自分のことを思い出してもらうためにハゲ頭を差し出すぺコロスと、カツラを付けているため母親に他人と思われてわめき散らされる竹中直人は好対照だったし、至るところにユーモアが散りばめられていて、辛い現実を受け入れた上で笑い飛ばそうという心の強さをしっかり描けていたと思う。
一青窈のエンディング曲も良かった。
で、最後に行き着くのは、ボケるなら笑顔でボケようww!
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0.5ミリ
出演:安藤サクラ、柄本明、坂田利夫、草笛光子、津川雅彦、織本順吉、木内みどり、東出昌大、ベンガル、浅田美代子
監督・脚本:安藤桃子
(2013年・日本・196分)WOWOW
内容:介護ヘルパーの山岸サワは、派遣先の家で不祥事を起こしてしまい解雇されてしまう。住む所も失い、一文無しで途方に暮れるサワは、カラオケ店の受付でまごつく老人に便乗し、強引に同室となって楽しく一夜を過ごす。味をしめた彼女は、その後も駐輪場の自転車を次々とパンクさせている老人や、本屋でエロ本を万引きしようとしていた老人など、行く先々で孤独そうな老人の弱みを握っては、一方的に押しかけて住み込みで身の回りの世話をしていくのだったが・・・。
評価★★★/65点
200分休憩なしで映画を見るというのはかなりの体力を有するのだけど、それに見合った対価をこの映画から得られたかといえばちょっとビミョー
最後まで飽きずに見れはしたけど、頭に残ったのは戦争はいけないっ!ていう説教のみ
ただ、ボケ老人になっても悲惨な戦争体験だけは忘れることはできないという主張は、くどさはあるけど今のご時世において心に響いてくることではある。
あとは、何といっても安藤サクラ。
基本狂言回しとしての役回りなんだけど、赤の他人のプライベート空間に土足で上がりこみ食い物にしながらも、孤独な老人たちの凝り固まった心のすき間、その0.5ミリの鍵穴に入り込み頑なに閉じられた心の扉を開け放っていく。介護を偽善でも善意でもなく特別視せずに家事のひとつとして扱う彼女の姿が怖いくらいに自然体で、それが映画にとてつもない説得力を生み出していたと思う。
結果的に、安藤サクラの怪女優ぶりを堪能する200分はそんなに悪くなかったw
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