夢のシネマパラダイス393番シアター:“その日、すべてが始まる”
LIFE!/ライフ
出演:ベン・スティラー、クリステン・ウィグ、アダム・スコット、キャスリン・ハーン、シャーリー・マクレーン、ショーン・ペン
監督:ベン・スティラー
(2013年・アメリカ・114分)盛岡フォーラム
内容:「LIFE」誌の写真管理部で働く平凡な男ウォルターの唯一の趣味は空想すること。現実世界では想いを寄せる同僚のシェリルに話しかけることさえできない男だが、空想の世界ではどんな危険にも立ち向かう勇敢なヒーロー。そんな中、「LIFE」が休刊することになってしまい、最終号の表紙を飾る写真のネガが写真家のショーンから送られてきた。しかし、肝心の最後のネガがない。焦ったウォルターは、ネガのありかを直接聞き出すため、世界中を冒険している写真家ショーンを探しに旅に出るのだが・・・。
評価★★★/60点
予告編に本編が負ける映画というのはけっこうあるけど、今回はその中でも上位にくるであろう作品(笑)。
1947年作「虹を掴む男」のリメイクだと知っていればそれなりの覚悟はできていたのだけど(かの作品がそれほど面白いとは思えなかったのでw)、“知らない自分に会いに行こう、想像を超える旅に出よう、この映画の主人公はあなたです!”というキャッチフレーズと、矢継ぎ早に繰り出されるダイジェストにまんまと乗せられてしまったw
ヘリに飛び乗る、海にダイブ、雄大な雪原や滝の下をトレッキング、サイクリング、ビルの窓を突き破って落下、スケートボードで疾走、迫り来る火砕流、セスナ機の上に立って火山に突入と、予告編のわずかな時間に詰め込まれたアドベンチャー映像がどう繋がっていくのかと楽しみにしていたら、そのまんま繋がっていたというまさかのオチ(笑)。
人探しRPGとしては素人感が足りなくてややご都合主義が鼻についたし、アイスランド&グリーンランドもナショジオのような既視感ありありの絵面だったし、これに比べたらアドベンチャーレーサーの田中陽希さんのグレートトラバースの方が絵的にもよっぽどスゴイだろと思っちゃったわけで。。
自分もけっこう空想家だけどw、この映画の主人公はあなたです、というほどはリンクしてこなかったなぁ。。
ていうか、ひとっ飛びにグリーンランドに行けちゃう旅の資金を持ってる時点でダメ(笑)。
期待値を100とすると、実際は腹六分目ということで・・・。
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イキガミ
出演:松田翔太、塚本高史、成海璃子、山田孝之、柄本明、劇団ひとり、金井勇太、笹野高史、風吹ジュン
監督:瀧本智行
(2008年・東宝・133分)WOWOW
内容:生命の価値を国民に再認識させ、国家繁栄につなげることを目的に制定された“国家繁栄維持法”。これは全国民が小学校入学時に体内に特殊カプセルを摂取され、18歳から24歳の若者の1000人に1人の割合で逝紙(イキガミ)=死亡予告証を受け取った者は24時間後に死を迎えてしまうというもの。そして、逝紙を配達する厚生保健省の藤本賢吾は、ストリートミュージシャンの田辺翼、盲目の妹のために闇金で働く飯塚さとし、保守系議員を母にもつ引きこもり少年の滝沢直樹のもとへイキガミを配達するのだった・・・。
評価★★★★/80点
「バトル・ロワイアル」や「リアル鬼ごっこ」は、国家によって強制される死、「ファイナル・デスティネーション」「デスノート」「ソウ」などは決して逃れられない死、また迫りくる死に対して残りの人生をどのように全うするかという点では「生きる」や「最高の人生の見つけ方」といった映画があり、いつか誰にでも訪れる死というものをネタにした作品はジャンルを問わず数多くある。
しかし、その中でも24時間後にアータは死にますという今回の設定はかなりシビア。
なのだけど、この究極の設定が荒唐無稽に見えないほどディストピアものとしてのSF世界がしっかりと描かれており、極限の人間ドラマに真実味を持たせることに成功していて思わず見入ってしまうほどの出来だったと思う。
それは、現実世界と地続きであるかのような感覚でもってこの世界が描かれているのがポイントだと思うのだけど、イキガミを受け取った者は交通費や飲食代がタダになったり(レストランのウェイターがイキガミと知って態度を一変させるシーンは秀逸)、残された家族には遺族年金が支給されるといった設定など細かいところまでよく考えられているし、イキガミ自体が戦時中の赤紙を連想させるものになっているのも大きな要素になっているのだと思う。
ハリウッドだったらアクションにもっていきそうなところを、残り24時間という抗いようのない限られた時間の中で、どのように命の輝きときらめきを精一杯燃焼させるかという人間ドラマに特化させたのも良いと思ったし。
まぁ、国家繁栄維持法というものがこの映画の中で究極の人間ドラマを描くための単なる道具立てにしかなっていない面も見受けられ、安易なお涙頂だいもののつくりになっているのも否めないとも思うんだけど、何か観ている側に人生の応援歌とまで感じさせてくれたドラマは見応えがあり、ここまで描ければ御の字かなと。
なにより役者陣が素晴らしい。
特に「十五才・学校4」(2000)などで印象的な金井勇太、「手紙」(2006)で泣かせ演技はお手のものの山田孝之には自分の魂をしこたま持っていかれた。
唯一、松田翔太の仏頂面だけが浮いてたけどww。親父さんを超える道はまだまだ遠い!?。
それはさておき、自分がもしイキガミを受け取ったら、、、どうするんだろう。。
まず、風俗行ってー、、ってオイッ!
でも、これ例えば松田翔太演じるイキガミ配達人の愛する恋人にイキガミが渡ることになって、もともと自らの仕事に疑問を持っていた彼が反旗を翻して恋人を救うために奔走するというのを、「24」のジャック・バウアー風にTVドラマにしたら面白そうと思ったのは自分だけ!?
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ザ・エージェント
出演:トム・クルーズ、キューバ・グッティング・ジュニア、レニー・ゼルウィガー
監督・脚本:キャメロン・クロウ
(1996年・アメリカ・138分)劇場
内容:全米一のスポーツ・エージェント会社に勤めるジェリーは優秀なエージェントだったが、初心に戻って商売を度外視した理想あふれる提案書を提出し、それが原因で会社をクビになってしまった。独立したジェリーのクライアントは落ち目のアメフト選手ロッドたった1人、スタッフもシングルマザーの会計係ドロシーだけになってしまう・・・。理想主義のスポーツ・エージェントが、人生のどん底で愛する人に出会い、本当に大切なものに気付くまでを描くロマンティックなサクセスストーリー。アカデミー賞で助演男優賞を受賞。
評価★★★★/80点
他所さまのウチの居間にずかずかと入り込んで行ってその人と信頼を結ぶというのは並大抵のことではない。
しかし、それがエージェントというお仕事。そして恋する男の避けて通れない道。
この映画は三者三様の角度からその過程を描き込んでおり、ジェリーの単純なサクセスストーリーにはなっていないところに好印象を持てる。
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解夏(2003年・東宝・113分)WOWOW
監督:磯村一路
出演:大沢たかお、石田ゆり子、富司純子、林隆三、田辺誠一、古田新太
内容:東京で小学校教師をしている隆之は、ある日、体の不調から幼なじみの医者に診察を受ける。そして、徐々に視力を失っていくベーチェット病だと診断される。隆之は辞職し長崎へ帰郷、懐かしい故郷の光景を目に焼き付けていく。そんな彼のもとに、モンゴルに留学していた恋人の陽子がやって来る。隆之は彼女とは別れる決心をつけていた。しかし、2人で訪れた聖福寺で出会った老人は、失明した瞬間こそがあなたの解夏(修行の終わり)だと語りかけるのだった・・・。さだまさしの同名小説の映画化。
評価★★★☆/70点
絶対的な余韻は残らないが、気付くと良い意味で心が真っ白になっている映画。
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海辺の家
出演:ケビン・クライン、クリスティン・スコット=トーマス、ヘイデン・クリステンセン
監督:アーウィン・ウィンクラー
(2001年・アメリカ・125分)DVD
内容:20年間勤めた建築事務所を突然解雇されたうえ、余命3ヶ月と宣告されたジョージ。彼には10年前に別れた妻との間に、反抗期を迎えた16歳の息子・サムがいた。彼は家を壊し、息子と2人で海の見える丘の上に新しい家を建てようとするが・・・。
評価★★★☆/70点
男よりも女連中の方が発情しまくっちゃってるというのは個人的には大歓迎なのだけど、しかし、どうもこの映画にとっては蛇足でしかないというか、映画の足を引っ張ってるというか。。
海がすぐそこに見える家は身も心も開放的になるということか!?
、、と本当の蛇足はこれくらいにして。。
この映画で描かれたこととしては“変わる”ということがキーワードになっていたと思うのだけど、これ観てつくづく感じたのは“突然自分が変わる”というのは半ば強制されないとできないことで、ホントに難しいということ。
人間誰しもが自分を変えたいとか、こう変わりたいとか思ってると思うんだけど、かくいう自分もそう。だけど、1日じゃそこらじゃ変われないし、危機に直面しないとホントの意味で変われないのが人間の悪いところというか難しいところなんだよね。
でも、“知らないうちにだんだん変わっていく”ことはできるんだってことをこの映画を観て実感した。そしてたった1人だけでは変われない、周りのみんなとの触れ合いが必要だってことも。
病気という緊急的外圧から変わらざるを得なかった父ジョージと、その父やエロエロ娘、そして家造りによって知らないうちにしかし確実に変わっていくサム。
人間やはり1人で内にこもって生きていくことはできないってことなのだ。うん。
こういう映画、好き。
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レナードの朝
出演:ロバート・デ・ニーロ、ロビン・ウィリアムス、ジョン・ハート
監督:ペニー・マーシャル
(1990年・アメリカ・120分)NHK-BS
評価★★★★☆/85点
内容:1969年、ブルックリンの病院に赴任したセイヤーは、嗜眠性脳炎患者が運動能力や生命力を保っていることを発見し、新薬を投与することを思いついた。セイヤーは30年間もその病院で眠り続けていたレナードに新薬を投与。そしてある日、彼はよみがえった。レナードは生きる幸福を噛み締めていたが、やがて再び病状が悪化し始める・・・。
“「人の幸せは、命の長さではないのです。」と某TVドラマのフレーズにあったが、この映画のそれはあまりにも理不尽でツラすぎる。”
うちの祖父が先日他界した。
7年間の寝たきり生活。後半の何年かは自分で呼吸することもできず、喉から人工呼吸器を通すという状態だった。
祖父は筋萎縮性側索硬化症といういまだ原因が不明の難病と闘って帰らぬ人となってしまった。
言葉を話す筋力さえもなくなっていき、久々にお見舞いに行った時には呂律が回らなくなっていてうまく話せなくなっていた。
それでも一生懸命いっぱい話をしようとする祖父の笑った姿。そして、笑う筋力さえもなくなり、言葉のやり取りもできなくなり、しかしそれでもノートにふらふらとした筆記で一生懸命に言葉を書いて自分の気持ちを表そうとしたり伝えようとしていた祖父は、とにかく一生懸命だった。
最後はただ目が開いているだけの姿だったが、それでも祖父は一生懸命に生きた。
この映画に出てくる人たちも一部の先生を除いては皆一生懸命だった。
一生懸命話しかけ、恋をしようとし、看病し、闘い、生きようとした。
それで十分ではないか。
幸せを測る尺度は人それぞれ。
人はとかく自分の幸せと他人の幸せを比べたがるものだが、それって実はあまり意味がない。
それよりも一生懸命に生きる、生きようとすることの方が大事ではないか。
そんなことをふと考えた。
1番悔しくて苦しむのは他ならぬ病気になった本人なんだろうけどね。でも、その中でも何かささやかな幸せを与えたり与えられたりもしたはず。
冒頭の某TVドラマではこんなセリフもあった。
「人が一生で味わう喜びや幸せの量は皆同じなんだって。」と。
でも例えそうだとしても、、、やっぱりあまりにも理不尽でツライよ
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※管理人〔しーたろう〕から皆さまへのご連絡※12月15日の天皇陛下と中国副主席とのいわゆる「特例会見」の件、遠藤健太郎オフィシャルブログさま「外務省『抗議してほしい』」によりますと、なんと、外務省側があからさまに「抗議して下さい」とおっしゃっているというので、下の記事に文例と書簡・FAXの送付先をアップしております。よろしければご参照ください。 〔しーたろう〕... [続きを読む]
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