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2015年11月24日 (火)

夢のシネマパラダイス599番シアター:日本任侠映画列伝

緋牡丹博徒

Img_8出演:藤純子、高倉健、若山富三郎、待田京介、大木実、山本麟一、清川虹子、山城新伍、金子信雄

監督:山下耕作

(1968年・東映・98分)WOWOW

内容:九州矢野組の一人娘、竜子は父を闇討ちで殺され、決まっていた縁談も破談。竜子は一家を解散し犯人捜しの旅に出る。5年後、緋牡丹のお竜の異名を取っていた彼女は、岩国の賭場でイカサマを見破って争いになり、博徒の片桐に助けられる。そして竜子は片桐に身の上を打ち明けるが、なぜか片桐は無言で立ち去っていくのだった。一方、竜子の子分のフグ新が道後で熊虎一家とひと悶着起こすが、単身乗り込んだ竜子を大阪堂万一家の女親分おたかが気に入り喧嘩は収まる。その後、おたかの勧めで大阪に出た竜子は、千成一家2代目の加倉井の卑劣な手にかかるが、そこにまたもや片桐が現れるのだった・・・。

評価★★★★/80点

昭和の映画、特に昭和30~40年代の映画を見ると登場人物がことごとく濃ゆくてアクの強いキャラクターであることに驚いてしまうのだけど、今回の映画はその中でも典型的なキャラクター祭りで、それだけでも十分面白い。

特にコメディリリーフ役の熊虎親分(若山富三郎)の出で立ちは爆笑もので、妹とのコンビはまるでジャイアンとジャイ子の実写版(笑)。

他にも敵役、脇役含めて印象的で、その中で寡黙な高倉健だけが浮いちゃってる気もするけど、主人公の藤純子をさしおいて結局最大の見せ場をかっさらっていくのは高倉健なんだよね

でもやっぱりこの映画は、生き生きとした脇役陣あっての映画だと思う。

そしてこの時代のキャラクターの濃さは、ようするにアクティブな生命力の強さなんだなと実感。おそらくそれは戦中をしたたかに生き抜いた人々の持ちうる闊達さなのかもしれない。

しっかし、お竜さんカッコイイなぁ。自分なら嬉々として子分になっちゃうなw

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緋牡丹博徒 花札勝負(1969年・日本・98分)WOWOW

 監督:加藤泰

 出演:藤純子、若山富三郎、待田京介、清川虹子、小池朝雄、嵐寛寿郎、藤山寛美、高倉健

 内容:明治中頃。緋牡丹のお竜は、旅の途中で名古屋の老舗やくざ西之丸一家に立ち寄るが、そこで自分の名を名乗る女博徒・お時を捕える。お時は盲目の娘を治したい一心で西之丸一家と対立する新興やくざの金原一家の命でイカサマをしていたという。お竜はそれを聞いてお時を許す。しかし、さらに西之丸一家の息子次郎と金原一家の娘八重子が恋仲であることを利用した金原一家は次郎を監禁、お竜が救出に向かう。一方、金原一家には一匹狼の渡世人・花岡が一宿一飯の恩義に預かっていた…。シリーズ第3作。

評価★★★★/80点

こんなに面白い映画だとは思いもよらなかった。

今まで東映任侠映画というのは一度も見たことがなく、しかも見てないくせしてそれをバカにして見下していた(笑)。斜陽となっていた昔の映画界は、ヤクザ同士の抗争なんてレベルの低い映画ばっかり作っていたのかよと。。

しかし、いざ見てみたら全くの思い違いだったことを思い知らされたw

ヤクザ稼業を描いてはいるものの、任侠=ヤクザというよりは、弱きを助け強きをくじく人格者としての意味合いの方が強いこと、また義理とか人情といった古い日本的な情緒の中にある高い美意識を描いているという点で武士道精神にもつながる片鱗が垣間見え、その後の「仁義なき戦い」などの実録ヤクザ映画とは趣が違うのだということを初めてうかがい知ることができた。

そして、その美学から外れた悪漢どもを渡世の義理に生きる正義感が成敗するという痛快さも娯楽要素として十分魅力的で、はっきりいって面白かった。

つまり、任侠映画というのはイコール任侠時代劇だったのだということが自分の中でストンと納得できた気がする。

あと、「男はつらいよ」の寅さんおなじみの歯切れの良い口上とは異なる一言一句懇切丁寧な仁義の切り方や和装美人の艶やかな殺陣など、お竜さんの凛とした佇まいもすこぶる印象的で、型にはまった様式美の中にある奥ゆかしさに完璧にハマってしまった。

単なるヤクザ映画とバカにしていた自分の先入観を180度変えてしまう、これを名画といわずしてなんと言おうw

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昭和残侠伝 死んで貰います

142458022022933930180_sindemoraimas出演:高倉健、加藤嘉、荒木道子、永原和子、松原光二、下沢広之、長門裕之、藤純子、池部良

監督:マキノ雅弘

(1970年・日本・92分)NHK-BS

内容:時は大正。ヤクザ稼業をしている花田秀次郎はイカサマ賭場で袋叩きに遭ったところを芸者の幾江に救われる。3年後、秀次郎はイカサマ師を殺害し刑に服するが、服役中に実家の老舗料亭「喜楽」を営んでいた父親が亡くなり、さらに関東大震災で妹まで亡くしてしまう。数年後、刑期を終えた彼は足を洗ってカタギの板前として窮地に立たされていた「喜楽」の再興に立ち上がるのだが・・・。「昭和残侠伝」シリーズの第7作目。

評価★★★★/80点

「緋牡丹博徒 花札勝負」を見た後だったから、富司純子のカッコいいお竜さんから愛嬌のある芸者さんへのイメチェンぶりには面食らったけど、何に驚いたって上戸彩にめっちゃ似てるじゃん

ソフトバンクCMに出てくる白戸家のおばあちゃんは若尾文子じゃなくて富司純子の方がよかったんじゃないw

あと驚いたのが池部良の渋すぎる二枚目っぷり。恥ずかしながらこの役者さんは名前は知ってる程度でしかなかったけど、健さんより板前として命を張り男気映える池部良の方に自然と目が向いてしまった。聞くところによると、当初はヤクザ映画に出演することに難色を示していたらしく、出演の条件は最後に必ず死ぬことだったそうだけど(笑)、その末路がかえってカタルシスを高めている。

カッコいいとはこういうことさ。久々にそんな映画を見れた気がする。

2015年11月19日 (木)

夢のシネマパラダイス541番シアター:武士はつらいよ

蜩の記(ひぐらしのき)

C6de8e2929f948796a3b332ecf3a4042出演:役所広司、岡田准一、堀北真希、原田美枝子、青木崇高、寺島しのぶ、三船史郎、井川比佐志

監督・脚本:小泉堯史

(2013年・東宝・129分)WOWOW

内容:郡奉行の戸田秋谷(役所広司)は、藩主側室との不義密通および小姓を切り捨てたことにより、10年後の切腹とその10年で藩の歴史書を編纂せよと命じられる。それから7年後。城内で刃傷沙汰を起こしたものの切腹を免れた檀野庄三郎(岡田准一)は、幽閉中の秋谷の監視役を命じられた。秋谷が7年前の事件について家譜に変なことを書いたり、逃亡のそぶりを見せれば妻子ともども始末せよということだったが、戸田家で暮らし始めた庄三郎は秋谷の人間性に感銘を受けていく・・・。

評価★★★☆/70点

10年後に切腹して果てる運命を粛々と受け入れ、切腹を厳命した藩のお勤めとして歴史書を丹念にまとめ上げる男の生きざまは、地上で1週間しか生きられないヒグラシのごとき切なさと清廉潔白さに染め上げられ胸を打たれるのだけど、しかしここでふと思う。

主君への忠義を全うするため、お家存続のため、そして武士の名に恥じない生き方を貫くためにはどんな理不尽で不条理な運命にも、たとえそれが命であったとしても身を差し出さなければならない、そんな話を美談として捉えるのは日本人だけではないのか!?と。

それは開花してからわずか2週間ほどで散ってしまう桜をこよなく愛する日本人の心にも通じるところだけど、ハリウッド映画とか他の国の映画なら10年後の死を淡々と受け入れるキャラクターなんてありえないだろう。なんとかそれを回避し生き抜くためにあらゆる方策を立ててあがき続けるはずだ。

やはりこれは礼節や作法含めて日本人特有の感性なのだと思う。

現代日本人は普段は忘れてしまっているけど、DNAの奥深くに自己犠牲を美徳とする精神性が刻みつけられていて、こういう凛とした時代劇を見るとそれを思い起こすのかもしれない。

良作である。

、、とはいっても、しゃにむに生きようともがく人間を描いた映画の方が個人的には好みなんだけどね

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一命

43ac4ea3 出演:市川海老蔵、瑛太、満島ひかり、竹中直人、青木崇高、新井浩文、波岡一喜、中村梅雀、役所広司

監督:三池崇史

(2011年・松竹・126分)WOWOW

内容:寛永7年(1630年)、戦もすっかりなくなった天下太平の世。しかし一方では幕府による大名のお家取り潰しが相次ぎ、職にあぶれた浪人が巷にあふれていた。そして、困窮した浪人たちの間では、裕福な大名屋敷に押しかけ切腹を申し出て金銭を巻き上げる“狂言切腹”が横行していた。そんなある日、井伊家江戸屋敷に切腹を願い出る浪人・津雲半四郎(市川海老蔵)が訪れるのだが・・・。小林正樹監督の62年作品「切腹」の原作である滝口康彦の『異聞浪人記』の再映画化。

評価★★★/60点

そこまでする必要があるのかとドン引きしてしまうくらい凄惨な千々岩求女(瑛太)の竹光での切腹シーンが最後まで尾を引いてしまったけど、終わってみればそこしか印象に残らないほど映画としてのインパクトには欠ける。

自己犠牲精神、礼節、忠義、、日本の心-日本人の美徳として昨今もてはやされている武士道。その裏側に潜む武家社会の非人間性と不条理、そして滅私奉公の対象である権力者の体面を取り繕う偽善を暴き出そうという試みにおいて、あの場面はたしかに必要だったのだろう。

竹光がなかなか腹を貫通しない痛々しさ、その肉体性をことさらに強調することで、大団円の津雲の大立ち回りで厳かに飾られ崇拝の対象になっている中身は空っぽな赤備えの甲冑がいとも簡単に崩れ去る、その形骸化した武士道の脆さが暴き出されるという意図があったのだと思う。

そしてそんなつまらない作り物めいたものにがんじがらめになっている武士の生きざまとやらの馬鹿らしさが、狂言を実行に移したがために文字通り作り物の竹光で切腹するハメになってしまった求女、同じく竹光でもって立ち回ることで身をもって問いただす津雲、さらにはバラバラになった甲冑を元通りに飾り立て何事もなかったかのように取り繕い、建前であってもそれを守っていこうとする家老(役所広司)の“武士に二言はある”体現によってあからさまにされる。

しかし、その言わんとするところは伝わってはくるのだけれど、いかんせん津雲一家の困窮生活を描く中盤があまりにも感傷的であざとくダレダレで、しかもそこに鬱積していく怨念が前フリとなって後半爆発するのかと思いきや、最後まで屁理屈問答で終わってしまい、どうしてもモヤモヤ感が残ってしまう。

これを単純な復讐劇にしないのは、津雲もまた窮屈な規範の枠の中でしか生きていけないことを表しているともいえるのだけど、もうちょっと見る側のパッションを揺り動かしてもらいたかったかなと。

しかしまぁ、市川海老蔵はさすがの存在感を出していたとは思う。03年に大河ドラマで宮本武蔵を演じた時は役に風格がイマイチ追いついていっていなかったけど、あれから8年、歌舞伎役者としてのオーラが存分に増してきた今回は、静かなる憤怒の佇まいと眼力に吸い寄せられるように見入ってしまった。

凛然としたホンモノを前にしてはさすがの竹中直人もおフザケを封印せざるをえなかったようだ(笑)。

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切腹(1962年・松竹・108分)NHK-BS

 監督:小林正樹

 出演:仲代達矢、岩下志麻、石浜朗、稲葉義男、三國連太郎、丹波哲郎

 内容:寛永7年。幕府が諸藩の改易を進めた結果、世の中には大量の浪人があふれていた。ある日、津雲半四郎と名乗る浪人が井伊家の屋敷を訪れ、庭先で切腹させてほしいと申し出る。巷では、切腹する気など毛頭ない食い詰め浪人が迷惑事を嫌う諸藩から金品を受け取ってその場を引き取るという狂言切腹が横行していた。なので対応した家老の斎藤勘解由は、どうせまた今流行りのゆすり行為だろうと考え、先日やって来た若い浪人を見せしめのために実際に切腹させたことを告げる。それを聞いた津雲は自分の身の上話を始めるのだが・・・。

評価★★★/65点

2011年公開の三池崇史版の方はすでに観賞済。

三池版での千々岩求女(瑛太)の竹光でのリアリスティックな切腹シーンのインパクトがあまりにも強烈すぎて、今となってはそれしか頭に残っていない・・・(笑)。でもってあの凄絶シーンゆえに津雲半四郎の復讐譚に肩入れして見ていたわけだけど、今回そういう誇張のぜい肉を削ぎ落としてみると、例えば忠臣蔵のような勧善懲悪としては見られないところも正直あって、なんか求女の自業自得感というのを少なからず感じてしまった。

要するに井伊家側の視点で見てみると、非道ではあれど筋は通っているわけだし、せっかくの仕官の道をむげに断る津雲の頑固爺っぷりも今の感覚でいえば自業自得だし。

もちろんこの映画のテーマとして体制側をもひっくるめた封建的武家社会の理不尽なシステムを糾弾しているわけだけど、ちょっと描写が紋切り型すぎてイマイチ上辺だけしか伝わってくるものがなかったかなぁ。。役者は言うまでもなく完璧だったけどね。

でも、仲代達矢の手をクロスさせる必殺剣の構えだけは失笑ものだったなww

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武士の献立

Poster2_2出演:上戸彩、高良健吾、余貴美子、成海璃子、柄本佑、夏川結衣、緒形直人、鹿賀丈史、西田敏行

監督:朝原雄三

(2013年・松竹・121分)WOWOW

内容:江戸時代の加賀藩。プロ級の料理の腕を持ちながら、気の強さから1年で離縁された春(上戸彩)は、加賀藩藩主側室・お貞の方(夏川結衣)に女中として仕えていた。そんなある日、料理方である舟木伝内(西田敏行)にその才を買われ、息子の嫁にと懇願された春は二度目の結婚を決意する。ところが、舟木家の跡取りで夫となる安信(高良健吾)は料理が大の苦手だった。4つ年上の春は夫に料理指南を始めるのだが・・・。

評価★★★★/75点

EXILEのHIROが羨ましい(爆)。

その一語に尽きるというのが真っ正直な感想だけど、それくらい上戸彩が、イイ

料理が抜群にうまく、キレイな着物姿で三つ指をついてかしずく姉さん女房って、男の夢だろww

なのにそんな健気な嫁さんを「覚悟はできてるな」と恫喝して刀を振り上げるなんて安信テメェー、俺が後ろからたたっ斬ってやる!

ていうか、めちゃくちゃ衝撃的なシーンなんですけど、あれって。どんだけ男尊女卑が酷かったんだよっていう・・・。

そんな仕打ちをされても安信を想い続ける春さん、って現代なら完全な仮面夫婦だろうから、今ではこんな日本女性はいないけどね

でも、血生臭い加賀騒動を後半前面に出しておきながら、安信と親友・定之進の木刀での腕比べ以外に殺陣や切腹シーンなどの殺生を意図的に排除している中で(なにせニワトリさえ殺せないんだからw)、あのシーンだけが突出して強烈なインパクトを放ったかんじ。

しかも定之進も大槻(緒形直人)もお貞の方も悲惨な末路をたどったのに、その黒幕・土佐守(鹿賀丈史)が料理の鉄人の美食アカデミーの主宰になって「私の記憶がたしかならば、この夕日が血に見えるようなことはもうやめなければならない!」とかのたまって一件落着ってのも、安信の心の許嫁・佐代(成海璃子)が夫と子供を亡くしてどこぞの養女となったのもさらりと受け流されて、どこか小骨がのどに引っかかったような印象も受ける。

のだけれども、おしんのように健気な春さんに全部持ってかれた。その一点買いでこの評価ww

言っとくけどオレ全然甘くないからね(笑)。

いやいや、おもてなしは争い事を収めるんですから。

しかし、饗応の宴の冒頭に安信が片手に刀のような長っい包丁、もう片手に長っい菜箸を持って舞を踊るかのように魚をさばく儀式は目が点になったな。

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武士の家計簿

153136_1 出演:堺雅人、仲間由紀恵、松坂慶子、西村雅彦、草笛光子、中村雅俊

監督:森田芳光

(2010年・松竹・129分)CS

内容:幕末の加賀藩。御算用者(経理係)として代々仕えてきた猪山家。父親の信之(中村雅俊)の跡を継いだ直之(堺雅人)は、そろばんバカと呼ばれるほど算術一筋の男。やがて、妻・お駒(仲間由紀恵)をめとり、めでたく出世も果たす。が、昇進に伴う祝い事や散財がたたって借金が年収の2倍にまで膨れ上がってしまう。そこで直之は、克明に家計簿をつけ、借金返済計画を実行に移していくのだが・・・。

評価★★★/60点

時代劇という体裁をとったホームドラマだけど、あまりにも生真面目すぎて味気なさすぎる感が。。

下級武士の生きざまは山田洋次にさんざん見せられてきたので、そろばんバカという一風変わったユニークな視点で語られる武士の暮らしについて目からウロコがボロボロ落ちてくるのかと思いきや、かわりにあくびを連発してしまうことになろうとは・・。

ありそうでなかった時代劇を期待していたんだけど、新鮮味のない手垢のついた時代劇だったというオチ。

なんか何もかもがすんなり収まってしまって生々しさが感じられないんだよね。

森田芳光の主眼が家族愛にあることは明白だけど、猪山家の人々が相次いで亡くなっていくシーンに何の感慨も抱かなかったところにこの映画の掘り下げの浅さと物足りなさがあるように思う。

これはユーモアたっぷりの喜劇にアレンジするべき作品だったな。

2015年11月15日 (日)

夢のシネマパラダイス393番シアター:“その日、すべてが始まる”

LIFE!/ライフ

Poster2出演:ベン・スティラー、クリステン・ウィグ、アダム・スコット、キャスリン・ハーン、シャーリー・マクレーン、ショーン・ペン

監督:ベン・スティラー

(2013年・アメリカ・114分)盛岡フォーラム

内容:「LIFE」誌の写真管理部で働く平凡な男ウォルターの唯一の趣味は空想すること。現実世界では想いを寄せる同僚のシェリルに話しかけることさえできない男だが、空想の世界ではどんな危険にも立ち向かう勇敢なヒーロー。そんな中、「LIFE」が休刊することになってしまい、最終号の表紙を飾る写真のネガが写真家のショーンから送られてきた。しかし、肝心の最後のネガがない。焦ったウォルターは、ネガのありかを直接聞き出すため、世界中を冒険している写真家ショーンを探しに旅に出るのだが・・・。

評価★★★/60点

予告編に本編が負ける映画というのはけっこうあるけど、今回はその中でも上位にくるであろう作品(笑)。

1947年作「虹を掴む男」のリメイクだと知っていればそれなりの覚悟はできていたのだけど(かの作品がそれほど面白いとは思えなかったのでw)、“知らない自分に会いに行こう、想像を超える旅に出よう、この映画の主人公はあなたです!”というキャッチフレーズと、矢継ぎ早に繰り出されるダイジェストにまんまと乗せられてしまったw

ヘリに飛び乗る、海にダイブ、雄大な雪原や滝の下をトレッキング、サイクリング、ビルの窓を突き破って落下、スケートボードで疾走、迫り来る火砕流、セスナ機の上に立って火山に突入と、予告編のわずかな時間に詰め込まれたアドベンチャー映像がどう繋がっていくのかと楽しみにしていたら、そのまんま繋がっていたというまさかのオチ(笑)。

人探しRPGとしては素人感が足りなくてややご都合主義が鼻についたし、アイスランド&グリーンランドもナショジオのような既視感ありありの絵面だったし、これに比べたらアドベンチャーレーサーの田中陽希さんのグレートトラバースの方が絵的にもよっぽどスゴイだろと思っちゃったわけで。。

自分もけっこう空想家だけどw、この映画の主人公はあなたです、というほどはリンクしてこなかったなぁ。。

ていうか、ひとっ飛びにグリーンランドに行けちゃう旅の資金を持ってる時点でダメ(笑)。

期待値を100とすると、実際は腹六分目ということで・・・。

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イキガミ

20081029_538942 出演:松田翔太、塚本高史、成海璃子、山田孝之、柄本明、劇団ひとり、金井勇太、笹野高史、風吹ジュン

監督:瀧本智行

(2008年・東宝・133分)WOWOW

内容:生命の価値を国民に再認識させ、国家繁栄につなげることを目的に制定された“国家繁栄維持法”。これは全国民が小学校入学時に体内に特殊カプセルを摂取され、18歳から24歳の若者の1000人に1人の割合で逝紙(イキガミ)=死亡予告証を受け取った者は24時間後に死を迎えてしまうというもの。そして、逝紙を配達する厚生保健省の藤本賢吾は、ストリートミュージシャンの田辺翼、盲目の妹のために闇金で働く飯塚さとし、保守系議員を母にもつ引きこもり少年の滝沢直樹のもとへイキガミを配達するのだった・・・。

評価★★★★/80点

「バトル・ロワイアル」や「リアル鬼ごっこ」は、国家によって強制される死、「ファイナル・デスティネーション」「デスノート」「ソウ」などは決して逃れられない死、また迫りくる死に対して残りの人生をどのように全うするかという点では「生きる」や「最高の人生の見つけ方」といった映画があり、いつか誰にでも訪れる死というものをネタにした作品はジャンルを問わず数多くある。

しかし、その中でも24時間後にアータは死にますという今回の設定はかなりシビア。

なのだけど、この究極の設定が荒唐無稽に見えないほどディストピアものとしてのSF世界がしっかりと描かれており、極限の人間ドラマに真実味を持たせることに成功していて思わず見入ってしまうほどの出来だったと思う。

それは、現実世界と地続きであるかのような感覚でもってこの世界が描かれているのがポイントだと思うのだけど、イキガミを受け取った者は交通費や飲食代がタダになったり(レストランのウェイターがイキガミと知って態度を一変させるシーンは秀逸)、残された家族には遺族年金が支給されるといった設定など細かいところまでよく考えられているし、イキガミ自体が戦時中の赤紙を連想させるものになっているのも大きな要素になっているのだと思う。

ハリウッドだったらアクションにもっていきそうなところを、残り24時間という抗いようのない限られた時間の中で、どのように命の輝きときらめきを精一杯燃焼させるかという人間ドラマに特化させたのも良いと思ったし。

まぁ、国家繁栄維持法というものがこの映画の中で究極の人間ドラマを描くための単なる道具立てにしかなっていない面も見受けられ、安易なお涙頂だいもののつくりになっているのも否めないとも思うんだけど、何か観ている側に人生の応援歌とまで感じさせてくれたドラマは見応えがあり、ここまで描ければ御の字かなと。

なにより役者陣が素晴らしい。

特に「十五才・学校4」(2000)などで印象的な金井勇太、「手紙」(2006)で泣かせ演技はお手のものの山田孝之には自分の魂をしこたま持っていかれた。

唯一、松田翔太の仏頂面だけが浮いてたけどww。親父さんを超える道はまだまだ遠い!?。

それはさておき、自分がもしイキガミを受け取ったら、、、どうするんだろう。。

まず、風俗行ってー、、ってオイッ

でも、これ例えば松田翔太演じるイキガミ配達人の愛する恋人にイキガミが渡ることになって、もともと自らの仕事に疑問を持っていた彼が反旗を翻して恋人を救うために奔走するというのを、「24」のジャック・バウアー風にTVドラマにしたら面白そうと思ったのは自分だけ!?

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ザ・エージェント

Jer 出演:トム・クルーズ、キューバ・グッティング・ジュニア、レニー・ゼルウィガー

監督・脚本:キャメロン・クロウ

(1996年・アメリカ・138分)劇場

内容:全米一のスポーツ・エージェント会社に勤めるジェリーは優秀なエージェントだったが、初心に戻って商売を度外視した理想あふれる提案書を提出し、それが原因で会社をクビになってしまった。独立したジェリーのクライアントは落ち目のアメフト選手ロッドたった1人、スタッフもシングルマザーの会計係ドロシーだけになってしまう・・・。理想主義のスポーツ・エージェントが、人生のどん底で愛する人に出会い、本当に大切なものに気付くまでを描くロマンティックなサクセスストーリー。アカデミー賞で助演男優賞を受賞。

評価★★★★/80点

他所さまのウチの居間にずかずかと入り込んで行ってその人と信頼を結ぶというのは並大抵のことではない。

しかし、それがエージェントというお仕事。そして恋する男の避けて通れない道。

この映画は三者三様の角度からその過程を描き込んでおり、ジェリーの単純なサクセスストーリーにはなっていないところに好印象を持てる。

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解夏(2003年・東宝・113分)WOWOW

 監督:磯村一路

 出演:大沢たかお、石田ゆり子、富司純子、林隆三、田辺誠一、古田新太

 内容:東京で小学校教師をしている隆之は、ある日、体の不調から幼なじみの医者に診察を受ける。そして、徐々に視力を失っていくベーチェット病だと診断される。隆之は辞職し長崎へ帰郷、懐かしい故郷の光景を目に焼き付けていく。そんな彼のもとに、モンゴルに留学していた恋人の陽子がやって来る。隆之は彼女とは別れる決心をつけていた。しかし、2人で訪れた聖福寺で出会った老人は、失明した瞬間こそがあなたの解夏(修行の終わり)だと語りかけるのだった・・・。さだまさしの同名小説の映画化。

評価★★★☆/70点

絶対的な余韻は残らないが、気付くと良い意味で心が真っ白になっている映画。

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海辺の家

Epxbepyl 出演:ケビン・クライン、クリスティン・スコット=トーマス、ヘイデン・クリステンセン

監督:アーウィン・ウィンクラー

(2001年・アメリカ・125分)DVD

内容:20年間勤めた建築事務所を突然解雇されたうえ、余命3ヶ月と宣告されたジョージ。彼には10年前に別れた妻との間に、反抗期を迎えた16歳の息子・サムがいた。彼は家を壊し、息子と2人で海の見える丘の上に新しい家を建てようとするが・・・。

評価★★★☆/70点

男よりも女連中の方が発情しまくっちゃってるというのは個人的には大歓迎なのだけど、しかし、どうもこの映画にとっては蛇足でしかないというか、映画の足を引っ張ってるというか。。

海がすぐそこに見える家は身も心も開放的になるということか!?

、、と本当の蛇足はこれくらいにして。。

この映画で描かれたこととしては“変わる”ということがキーワードになっていたと思うのだけど、これ観てつくづく感じたのは“突然自分が変わる”というのは半ば強制されないとできないことで、ホントに難しいということ。

人間誰しもが自分を変えたいとか、こう変わりたいとか思ってると思うんだけど、かくいう自分もそう。だけど、1日じゃそこらじゃ変われないし、危機に直面しないとホントの意味で変われないのが人間の悪いところというか難しいところなんだよね。

でも、“知らないうちにだんだん変わっていく”ことはできるんだってことをこの映画を観て実感した。そしてたった1人だけでは変われない、周りのみんなとの触れ合いが必要だってことも。

病気という緊急的外圧から変わらざるを得なかった父ジョージと、その父やエロエロ娘、そして家造りによって知らないうちにしかし確実に変わっていくサム。

人間やはり1人で内にこもって生きていくことはできないってことなのだ。うん。

こういう映画、好き。

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レナードの朝

Awakenings 出演:ロバート・デ・ニーロ、ロビン・ウィリアムス、ジョン・ハート

監督:ペニー・マーシャル

(1990年・アメリカ・120分)NHK-BS

評価★★★★☆/85点

内容:1969年、ブルックリンの病院に赴任したセイヤーは、嗜眠性脳炎患者が運動能力や生命力を保っていることを発見し、新薬を投与することを思いついた。セイヤーは30年間もその病院で眠り続けていたレナードに新薬を投与。そしてある日、彼はよみがえった。レナードは生きる幸福を噛み締めていたが、やがて再び病状が悪化し始める・・・。

“「人の幸せは、命の長さではないのです。」と某TVドラマのフレーズにあったが、この映画のそれはあまりにも理不尽でツラすぎる。”

うちの祖父が先日他界した。

7年間の寝たきり生活。後半の何年かは自分で呼吸することもできず、喉から人工呼吸器を通すという状態だった。

祖父は筋萎縮性側索硬化症といういまだ原因が不明の難病と闘って帰らぬ人となってしまった。

言葉を話す筋力さえもなくなっていき、久々にお見舞いに行った時には呂律が回らなくなっていてうまく話せなくなっていた。

それでも一生懸命いっぱい話をしようとする祖父の笑った姿。そして、笑う筋力さえもなくなり、言葉のやり取りもできなくなり、しかしそれでもノートにふらふらとした筆記で一生懸命に言葉を書いて自分の気持ちを表そうとしたり伝えようとしていた祖父は、とにかく一生懸命だった。

最後はただ目が開いているだけの姿だったが、それでも祖父は一生懸命に生きた。

この映画に出てくる人たちも一部の先生を除いては皆一生懸命だった。

一生懸命話しかけ、恋をしようとし、看病し、闘い、生きようとした。

それで十分ではないか。

幸せを測る尺度は人それぞれ。

人はとかく自分の幸せと他人の幸せを比べたがるものだが、それって実はあまり意味がない。

それよりも一生懸命に生きる、生きようとすることの方が大事ではないか。

そんなことをふと考えた。

1番悔しくて苦しむのは他ならぬ病気になった本人なんだろうけどね。でも、その中でも何かささやかな幸せを与えたり与えられたりもしたはず。

冒頭の某TVドラマではこんなセリフもあった。

「人が一生で味わう喜びや幸せの量は皆同じなんだって。」と。

でも例えそうだとしても、、、やっぱりあまりにも理不尽でツライよ

2015年11月10日 (火)

夢のシネマパラダイス133番シアター:“Take Me Out to the Ball Game♪”

KANO~1931 海の向こうの甲子園~

Kano出演:永瀬正敏、坂井真紀、ツァオ・ヨウニン、大沢たかお、チャン・ホンイー

監督:マー・ジーシアン

(2014年・台湾・185分)WOWOW

内容:1931年、日本統治下の台湾。連戦連敗、明るさだけが取り柄の嘉義農林学校野球部は、日本人・台湾人(漢人)・台湾原住民の混成チーム。そんな弱小チームに、かつて名門・松山商を率いていた近藤兵太郎が監督に就任した。そして甲子園出場を目標に掲げたチームは、選手と民族性それぞれの個性を活かした近藤の指導のもと、ついには台湾代表として甲子園の切符を手にする・・・。

評価★★★/65点

日本統治下の台湾を舞台に、日本人、漢人、台湾原住民の混成チームが甲子園目指して奮闘する姿を映し出していくのだけど、植民地統治に対する抗日運動や独立闘争、あるいは人種差別や皇民化の抑圧など同化政策のネガティブな暗い側面がきれいさっぱり消臭されているのは意外だった。

創氏改名された日本名で名前を呼び合い、日本語で会話する台湾の人々に日本を嫌悪する姿はなく、ナチュラルな日常風景のひとコマまで日本化が浸透していたことに驚いた。

以前、テレビ番組で評論家の金美齢さんが、生まれた時から日本語を教わり、日本の童謡を歌い、日本人として育ったと日本統治時代を懐かしそうに話していて、子供の頃に台湾人としてのアイデンティティを覚えたことはなかったと言ったのに対し、逆に日本の評論家がそれはどうなんだと批判するくらいだったけど、考えてみれば50年間も日本統治時代があったわけで。

50年って、自分いま35だよ。生まれて35年、それだけでも長く感じるけど、その間ずっーと外国に統治されていたとしたらよほどの圧政でないかぎり、それが普通だと思うようになっちゃっても致し方ないのかも。。

ただ、今回の映画のように、純朴この上ない美談として語られるのは、まぁ台湾の人が作ったんだからあれだけど、ちょっと違和感めいたものも感じちゃったかな。

甲子園での決勝進出の快挙と、台湾人ピッチャーの初恋相手の出産シーンをかぶせてくるといったクサい演出のオンパレードもあいまって間延びしまくりのノスタルジー調に背中がむずがゆくなることしきりで

韓国映画だったらこうはいかないよなぁ・・w

まぁでも台湾のこと好きになっちゃうよね、こういう映画見ると。

でも、なにより驚いたのが、甲子園の外野フェンスに打球を直撃させるとそこにサインするっていうやつ。そんな時代もあったんだね。

あと、台湾に灌漑水路を作った八田先生と呼ばれていた日本人(大沢たかお)のことももっと知りたいなぁと思った。

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42~世界を変えた男~

04a9df95fc59cc09a04f8c62a9626620出演:チャドウィック・ボーズマン、ハリソン・フォード、ニコール・ベハーリー、クリストファー・メローニ、ルーカス・ブラック

監督・脚本:ブライアン・ヘルゲランド

(2013年・アメリカ・128分)WOWOW

内容:黒人に対する人種隔離政策が公然と行われていた1945年、大リーグのメジャーリーガーは全員白人だった。そんな中、ドジャースのGMリッキーが、黒人リーグで活躍していたジャッキー・ロビンソンと契約を交わした。すぐさま世間の非難の的となったが、ジャッキーは3Aで抜群の成績を残す。そしてついに1947年、ジャッキーはメジャーの舞台に立つが・・・。背番号42が大リーグ全球団の永久欠番となっている史上初の黒人メジャーリーガー、ジャッキー・ロビンソンの不屈の人生を描く伝記ドラマ。

評価★★★☆/70点

「ミシシッピー・バーニング」や「ロング・ウォーク・ホーム」など公民権運動の草創期である60年代を舞台にした映画と比べると、人種差別の描写がそれほどどぎつくなく表面的な印象を受ける。公民権運動より20年前はもっと苛烈であったはずなのにだ。

それはあらゆるスポーツ映画の中でベースボールほどノスタルジーを喚起するものはないことが大きいだろうし、なにより40年代のアメリカはまだ穢れのない清廉潔白な古き良き時代という、ここでもノスタルジーと切っても切れない関係にあり、要は40年代とベースボールがくっつくと最強のノスタルジー映画になってしまわざるをえないのだ。

それが描写をソフトにしている大きな要因なのだと思う。

思えばこの時代に黒人の人種差別に取り組んだ映画は皆無に近い(直接的な映画は「手錠のままの脱獄」58年や「アラバマ物語」62年あたりまで待たなければならない)。それ以前に黒人に役がつくこと自体まれだったと聞くけど、あの往年の名作「風と共に去りぬ」に出てくるスカーレット一家に尽くす黒人メイドのように、黒人は白人に対し従順で献身的であることが空気のように当然なこととしてまかり通っていたのだろう。

それを鑑みても、そういう古き良きアメリカの裏の顔が厳然としてあったのだということをもっと突っ込んで描いた方がよかった気もする。

もちろん、差別にスポーツマンシップで立ち向かうジャッキー・ロビンソンの不屈の芯の強さは十分伝わってきたけど。。

しかし、その点でいうと、黒人選手を受け入れようと思い立ったドジャースのオーナー、ブランチ・リッキー(ハリソン・フォード)の人物像の方により興味を抱いてしまうな。

ちなみに、風と共に去りぬの黒人メイド役でハティ・マクダニエルが黒人初のアカデミー助演女優賞を獲ったのだけど、賞会場では白人とは別の席に座らされたという。

そういう時代だったのである・・・。

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バンクーバーの朝日

928366b88bb8d5fdb499548e16817877出演:妻夫木聡、亀梨和也、勝地涼、上地雄輔、池松壮亮、高畑充希、鶴見辰吾、光石研、石田えり、佐藤浩市

監督:石井裕也

(2014年・東宝・133分)WOWOW

内容:太平洋戦争前の1930年代。カナダに渡った日系移民は人種差別と貧困にあえぐ日々を送っていた。そんな彼らのささやかな心の拠り所になっていたのはカナダのアマチュアリーグに所属するバンクーバー朝日という日本人野球チームだった。しかし、肝心の戦績の方は大柄な白人チームに全く歯が立たない弱小チームで・・・。

評価★★★/60点

朝日という単語からイメージされるような清々しい気持ち良さからはかけ離れたどんよりとした曇り空に終始覆われていて、ついぞそこから晴れ間がのぞくことはなかった・・・。

野球の本場で日本人がスモールベースボールで鼻を明かす爽快感よりも、差別や迫害など日系移民が苦汁をなめた悲愴感の方により力点が置かれている、そんなこの映画の作風をどう捉えるかが評価の分かれ目だと思うけど、少なくともスポーツ映画を見ていて体温が一向に上昇しなかったのはこれが初めてかもしれない

なにせ1時間経たないと本格的な野球シーンが出てこないし、肝心の試合の方も途中経過をすっ飛ばして3-2で初勝利とか5-4で優勝とか一気に片付けちゃってカタルシスのかけらもなく・・・。

まぁ、決勝打が3塁の頭を抜けるボテボテヒットというのは絵になりづらいってのはあるんだけどw、それにしたってスルーしすぎだろ・・。

結局野球は二の次だったというオチだけど、このてのハリウッド映画の山場をふんだんに盛り込む定型に慣れきっている自分にとってはトンだ肩透かしを食らったかんじ。

もちろん背景に横たわる苦難の歴史の重みは描かなければならないけど、バランスの取り方をもっと考えてもらいたかった。例えば登場人物のキャラクターひとつとっても、野球をやるぞっていうメンタルがみんな一様に低くてパッションが全然伝わってこなかったので、誰か一人でも常に上を向いているようなムードメーカーを加えればかなり色合いが違ったと思うなぁ。

だってみんな下を向いてるんだもん・・。ツマンナイよ、そんなの。。

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瀬戸内少年野球団(1984年・日本・143分)WOWOW

 監督:篠田正浩

 出演:夏目雅子、郷ひろみ、佐倉しおり、大森嘉之、岩下志麻、伊丹十三、渡辺謙、大滝秀治

 内容:敗戦直後の淡路島、江坂国民学校5年生の竜太とバラケツらは、新学期になって転校してきた都会風のマドンナ少女に心ときめかせる。一方、彼らの担任の駒子先生は、戦死したと思っていた夫・正夫が実は生還していたことを知るが、正夫の弟との過ちから再会を思いとどまっていた。そんな中、子供たちの野球チームを結成することになるが・・・。

評価★★★☆/70点

野球という題を付けてるのに、まったく野球が描けていないのは小学生の時に少年野球団に入っていた自分としては受け入れがたいものがあるし、それぞれのエピソードもユルユルのペラペラで、それを中継ぎ投手を矢継ぎ早に投入してくるかのごとく詰め込むのも映画としては拙いものがある。

、、のだが、時代の変化にもブレない駒子先生(夏目雅子)の清廉な芯の強さと、それとは逆に時代の変化の波に呑まれていく理髪店主トメ(岩下志麻)のイイ加減っぷりをはじめとする人物像はなかなかに魅力的で、楽天的な程良いお味の映画であったこともたしかだ。

山下敦弘の「天然コケッコー」(2007)や、それこそ篠田監督の「少年時代」(1990)もそうだけど、大人の視点を捨てて完全に子供視点で描いて一本化した方がよりまとまった作品に仕上がったのではないかとも思うけど、まぁこれはこれとしてありなのかな。

こういうのこそ連続ドラマでやってもらいたいんだけどねぇ。。

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フィールド・オブ・ドリームス

Ewanridnn出演:ケビン・コスナー、エイミー・マディガン、レイ・リオッタ、バート・ランカスター、ジェームズ・アール・ジョーンズ

監督・脚本:フィル・アルデン・ロビンソン

(1989年・アメリカ・106分)NHK-BS

内容:アイオワ州に住むレイ・キンセラは、小さなトウモロコシ畑と農場を持ち、妻と娘の3人で暮らしていた。ある日、彼は「農場を野球場にすれば、彼がやって来る」という声を聞き、何かに取りつかれたようにトウモロコシ畑をつぶして野球場を完成させる。そんなレイの前に現れたのは、亡き父がよく話してくれた、1952年に死んだはずの伝説の大リーガー、“シューレス”ジョー・ジャクソンだった・・・。野球を通じて、失われた人々の夢や想い、父子の絆を確認する男の姿をノスタルジックに描いたファンタジー。

評価★★★★/80点

少年野球をやっていた頃、小学校の校庭で練習したり試合するのが常だった自分にとって、県営球場のようなちゃんとした野球場でプレーするのは数えるほどもなかったけど、ベンチからファールゾーンの白線を超えてグラウンドに足を踏み入れる時にめちゃくちゃ緊張して気が引き締まったのを今でも覚えている。

そんな特別な感情を抱かせる土と緑の芝生のピッチ、選ばれし者しか降り立つことができない特別な場所、それは甲子園球場を見ても分かる通り、野球で育った者にとっては夢のつまった聖地である。

ご都合主義と野球好きの夢とノスタルジーだけで出来上がったようなファンタジー映画にあって、唯一無二のリアリティがグラウンド内は神聖な場所であるという不文律なのだと思う。

実際、主人公の奥さんと娘は白線をまたいでピッチには入っていない。あるいは、往年のレジェンド選手たちが人数が足りない中でプレーしていても、主人公は人数合わせでピッチに乱入して加わることをしない。

その一線を超えない、聖地を信じぬく態度がこの映画を土台から支えていて、心を打つのだ。

農園球場に向かう数珠つなぎの車のライトの列を空撮で撮ったラストシーンは、間違いなく映画史に残る名シーンだったと思う。

P.S.

“「それを作れば彼はやって来る」「それを作れば彼はやって来る」「それを作れば彼はやって来る」”

という声が頭の中に幾度となく響いたので、ゴキブリホイホイを作ったら、、、

ゴキブリが4匹やって来た。

「彼の苦痛を癒やせ」、、、「彼の苦痛を癒やせ」「彼の苦痛をやわらげろ」

ゴキブリホイホイの中でジタバタしているゴキブリがいたので、強力殺虫剤アースジェットを激噴射してあげたらピクリとも動かなくなって、苦痛が和らぎ楽になったのは、、、

オレの方だった。。

「最後までやり遂げろ」、、、「最後までやり遂げろ」「最後までやり遂げろ」

そのゴキブリホイホイを手でつかむのが嫌で嫌でしかたなかったのだが、ずっと置いたままにしておくこともできないので、我が命を賭けて手でつかみゴミ袋に入れ、猛烈ダッシュでゴミ収集所に投げ入れてきた。

オレは、最後までやり遂げた!!

が、奴らはトウモロコシ畑の奥に、もといキッチンの物陰に今も潜んでいる・・・。

ノスタルジーもヘッタクレもない、大人のメルヘンたりえないマイルーム・オブ・ドリームスはゴキブリじゃなくて彼女と過ごせる部屋じゃー!

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陽だまりのグラウンド

Hidamari01出演:キアヌ・リーヴス、ダイアン・レイン、ジョン・ホークス、D・B・スウィーニー、マイク・マッグローン

監督:ブライアン・ロビンス

(2001年・アメリカ・106分)DVD

評価★★★☆/70点

内容:ギャンブルの借金を返済するために、シカゴの少年野球チームのコーチを引き受けたコナー。選手たちは低所得者地区に住んでいたが、野球を愛する心は誰にも負けていなかった。

“この映画はベースボール映画と思わないで見た方がよい。だって陽だまりでっせアータ。自分が少年野球やってた頃は暖かな陽気さなんて欠片もない。直射日光がギラギラ照りつける熱風グラウンド!水、、水を下さい、、、水くれー!”

今の練習では違うのだろうけど、自分が少年野球やってた1990年代ちょっと前までは練習中水飲み禁止だったからね。今から思えば小学生なのだから水くらい飲ませろよって思うくらい厳しかった。。もち練習も。何度ケツバットをくらったことか

そこまでのスポ根はこの映画には必要ないけど、しかし野球とベースボールという違いはあるにせよ、あまりにもリアリティがなさすぎる。

いつのまにかものスゴッ高レベルの試合をやってるし、いつのまにか選手権へ行くための決勝戦??プ、プロセスが全くない!?

さらに出生証明だとかステレオ持ち込みだとかは厳しいくせに、ピッチャーに向けてのヤジが半端なく凄すぎるぞ。応援してる親たちまでもが「ヘボピッチャー」の大合唱。考えられん・・wそれともアメリカのリトルリーグではもうすでにプロ根性の免疫を叩き込む教育をしてるのか?

いずれにせよベースボールとしてのリアリティははっきり言ってないと思う。あるとすれば子供たちのベースボールに対する強いメンタリティそれだけ。

そして一方、やけに際立つのがベースボール以外のサイドストーリーのリアリティ。

低所得者層の実態から賭けに至るまで妙に真実味がある。実際めっぽう弱いチームに成り下がってしまったブルズだけに賭けにも力が入るってか?

ベースボール描く方に力を入れてくださいよ、まったく・・・。

そんなだから抑えの切り札としてG・ベイビーをあんなふうにせざるを得なくなったんでしょ。この映画がG・ベイビーを殺したんじゃい

ただ、子供たちのベースボールに対する前向きな心というのはやはりグッとくるものがあるわけで。おそらく野球やったことがない人にも十分伝わってくるはず。

要は何事にも前向きな心を持とうという普遍的な感情を抱かせるという点では別に野球じゃなくてもいいわけで、スポーツだったら何でもよかった、みたいな。

この映画観て真っ先に思い出した「ミュージック・オブ・ハート」みたいに音楽でもよかったみたいな。ようするに何でもよかったんじゃないかなと

この映画はベースボールを描こうとしてるのでは決してなく、ベクトルは全然別の方向に向いてたわけだ。

まずは低所得者層というのが先にあって、そこから映画作りも始まったってわけでしょ。

、、と思ったらやはり脚本はそうだったんですね。納得納得。

野球をちょっとかじっていたがために気になってしまったところもあったけど、そう考えるとまあまあ良い映画かな。

ま、なんだかんだ言って1年に1本は心がポッとする“陽だまり映画”を作ってもらいたいけどね。

2015年11月 9日 (月)

夢のシネマパラダイス598番シアター:ぺコロスの母に会いに行く

ぺコロスの母に会いに行く

Img_0出演:岩松了、赤木春恵、原田貴和子、加瀬亮、竹中直人、大和田健介、原田知世、宇崎竜童

監督:森崎東

(2013年・日本・113分)

内容:ぺコロス(小玉ねぎ)のようなハゲ頭が特徴の売れないバツイチ漫画家・岡野ゆういちは、地元長崎で母みつえと息子まさきと気ままに暮らしている。ところが夫に先立たれて以来、みつえの認知症が進行していた。そのため、ゆういちは悩んだ末にみつえを介護施設へ預けることにするが・・・。

評価★★★★/80点

認知症が原因による徘徊などで行方不明になった老人が年間1万人(うち死亡350人、未発見200人)を超える中で、「ボケるのも悪いことばかりじゃない」とはそう簡単に言えることではないと思うけど、温かな親子の絆と幸せな介護のひとつの理想型を見せてもらった気はする。

特に親を施設に預けることがどこかで親を置き去りにして逃げていくという罪悪感を感じさせるところは、後々訪れるであろう親の介護なんて普段頭の中にない自分にとっては思ってもみないことだったし、心がキュッとせつなくなってしまった。

最初はコミカルなユーモア描写のぬるさに軽いかんじで見始めたけど、ぺコロスが母親を介護施設に預けるシーンから俄然この映画は重みを増したと思う。

しかし、認知症を扱ったTVドキュメンタリーなどを見ると、介護する側にとって1番ツライのは、症状を発症した肉親の変貌だという。

そのドキュメンタリーでは、認知症の母親を30歳になる娘が自宅介護していて、娘のことを思い出せない母親から時ならず向けられる暴力や罵詈雑言に憔悴しきっているのを見て逆にこちらの心が折れそうになったけど、しかしその中でも笑顔が1番の良薬だと信じて母親に付き添い続ける娘の姿には、もし自分だったらあんなに激しい言葉と抵抗を見せる母親の変貌ぶりを前にありのままの自分でいられるだろうかとかなり不安になってしまった。

ツラくて苦しいことの方が多く忍耐が必要であろう介護において、ありのままの自分でいることと笑顔がなによりも大事なのだろうと思う。

その点で今回の映画は、“ありのままの自分”と“笑顔”というキーポイントを余すことなく取り入れて描き出してくれたと思う。母親に自分のことを思い出してもらうためにハゲ頭を差し出すぺコロスと、カツラを付けているため母親に他人と思われてわめき散らされる竹中直人は好対照だったし、至るところにユーモアが散りばめられていて、辛い現実を受け入れた上で笑い飛ばそうという心の強さをしっかり描けていたと思う。

一青窈のエンディング曲も良かった。

で、最後に行き着くのは、ボケるなら笑顔でボケようww!

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0.5ミリ

20141018011946出演:安藤サクラ、柄本明、坂田利夫、草笛光子、津川雅彦、織本順吉、木内みどり、東出昌大、ベンガル、浅田美代子

監督・脚本:安藤桃子

(2013年・日本・196分)WOWOW

内容:介護ヘルパーの山岸サワは、派遣先の家で不祥事を起こしてしまい解雇されてしまう。住む所も失い、一文無しで途方に暮れるサワは、カラオケ店の受付でまごつく老人に便乗し、強引に同室となって楽しく一夜を過ごす。味をしめた彼女は、その後も駐輪場の自転車を次々とパンクさせている老人や、本屋でエロ本を万引きしようとしていた老人など、行く先々で孤独そうな老人の弱みを握っては、一方的に押しかけて住み込みで身の回りの世話をしていくのだったが・・・。

評価★★★/65点

200分休憩なしで映画を見るというのはかなりの体力を有するのだけど、それに見合った対価をこの映画から得られたかといえばちょっとビミョー

最後まで飽きずに見れはしたけど、頭に残ったのは戦争はいけないっ!ていう説教のみ

ただ、ボケ老人になっても悲惨な戦争体験だけは忘れることはできないという主張は、くどさはあるけど今のご時世において心に響いてくることではある。

あとは、何といっても安藤サクラ。

基本狂言回しとしての役回りなんだけど、赤の他人のプライベート空間に土足で上がりこみ食い物にしながらも、孤独な老人たちの凝り固まった心のすき間、その0.5ミリの鍵穴に入り込み頑なに閉じられた心の扉を開け放っていく。介護を偽善でも善意でもなく特別視せずに家事のひとつとして扱う彼女の姿が怖いくらいに自然体で、それが映画にとてつもない説得力を生み出していたと思う。

結果的に、安藤サクラの怪女優ぶりを堪能する200分はそんなに悪くなかったw

2015年11月 8日 (日)

夢のシネマパラダイス259番シアター:ここに集いし働きマン!

プラダを着た悪魔

Prada 出演:メリル・ストリープ、アン・ハサウェイ、エミリー・ブラント、スタンリー・トゥッチ

監督:デヴィッド・フランケル

(2006年・アメリカ・110分)WOWOW

評価★★★☆/70点

内容:一流大学を卒業し、ジャーナリストを目指してNYにやって来たアンドレア。ジャーナリストへのステップアップのためという程度の思いで、一流ファッション誌“RUNWAY”のカリスマ編集長ミランダのアシスタントになったが、オシャレにとことん疎いのが玉にキズ。しかもミランダの次々に繰り出される理不尽な命令に、いつしか彼女の私生活までめちゃくちゃに・・・。

“ネチッこさではメリル・ストリープの上をいくグレン・クロースがミランダだったら、アンディ(アン・ハサウェイ)の人間臭さがもっとほじくり返されたかも!?”

余計なことを考えずにサクサクと進んでいく軽快なテンポと、プラダ・シャネル・ドルチェ&ガッパーナなどのブランドものに彩られた目もくらむような華やかな世界をフツーに楽しめてしまうオシャレ映画。

でありながら、仕事や愛、人生に対する教訓がチクリと差し込まれている健全極まりない映画。でありながらユーモアもたっぷり盛り込まれた、要するに誰が見ても満足できる映画。

それが「プラダを着た悪魔」なのです。

まるで少女マンガに出てくるようなギョロ目のアン・ハサウェイ=アンディの底抜けポジティブシンキングに、なんか自分もガンバってみよう♪と思わされてしまうタメになる映画、、、と持ち上げるのはここまでにしとくか。。

あまりにも喉に引っかからないサクセスストーリーなので、そういう意味では低カロリーな映画なのだけど、そこにちょっと物足りなさを感じちゃったかも。。

特にファッションに全く興味のないダサダサ女だったアンディの変身ぶりは、まんま魔法をかけられたシンデレラそのもの。

酒をあおって悩み泣く人間臭さの塊のようなブリジット・ジョーンズとは対極にあるような女のコ。それでいて可愛い顔の下には要領よく立ち回る術を体得している実にしたたかな女性の面を隠し持っていたりする。

ギョロ目はすべてをお見通しよ!てか。。

天賦の才能ポジティブシンキングを武器に、計算マコちゃんである同僚エミリーを爽やかに蹴落としていくシンデレラの姿はビミョーに怖い。

一方のミランダは、さしずめシンデレラをいじめ抜く継母といったところだが、ミランダの方がよっぽど人間臭さを感じさせる。

特に後半、眼鏡を外した疲れきった表情でアンディに離婚の弱音を吐くシーンは出色で、それまでの強面一辺倒のミランダ女王も一介の家庭持ちの母親にすぎなかったのだとふと思わせてしまう。

十二分に押しつけがましいキャラの中でサラリと現実味を表現できるのはやはりスゴイ。

さすが“美”を追求した「永遠に美しく・・・」(1992)で首を回転させ散弾銃をブッ放したメリル・ストリープだけのことはあるな。“美”に関することになると悪魔になっちゃう性分らしいが・・・。

とはいえこんな人が上司というのは自分だったら絶対キレちゃうけどね。

ハリポタ最終巻の出版前の原稿を持って来いだとか、子供の科学の宿題までやらなきゃならないなんて(笑)。

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ジャッジ!(2013年・松竹・105分)WOWOW

 監督:永井聡

 出演:妻夫木聡、北川景子、リリー・フランキー、鈴木京香、豊川悦司、荒川良々、玉山鉄二、風間杜夫、竹中直人

 内容:ある日、大手広告代理店で働く落ちこぼれ社員の太田喜一郎は、上司の大滝から彼になりすまして世界一のテレビCMを決めるサンタモニカ広告祭に審査員として参加するよう命じられる。さらに、大手スポンサーのバカ息子が作ったちくわのCMを入賞させろという無茶ぶりな指示まで加わり、泣く泣く了解する。しかし、参加するにはパートナーの同伴が必要だったため、太田は優秀な同僚のひかりと偽夫婦になりすまして広告祭に乗り込むが・・・。

評価★★★/65点

CMがウザくていちいち興が削がれるから民放でやる映画を見なくなった自分は、CMなんてこの世からなくなればいいのにとさえ思っているw

そんなCM嫌いにとって、CMフェスティバルなんてほとんど興味を引くことはないネタなのだけど、案の定主人公がサンタモニカ入りし、いざ審査が始まってからのトーンダウンは尋常ではなかった

賞を獲るための裏工作や取引きなど何でもござれの伏魔殿に闖入した丸出だめ男が、バカ正直とペン回しを武器に周囲を変えていくのだけど、「良いものは良い!悪いものは悪い!」という正論だけで最後まで押し切ってしまう青臭さは、コメディとして見ていた自分にとっては全くもってツマラナイばかり。

それこそ賞には絶対入らない“ちくわCM”を妻夫木たちが新たに撮り直すくらいのハッタリが欲しかった。

あと、ツンデレ北川景子がなぜにホクロから毛が生えている男に惹かれていくのか意味不明だったし、舞台を海外にしたのも結果イマイチだったね。海外のCMが断片的に流れてもよく分からないし、せっかくトヨタやエースコックなど実名企業を出してるんだから、ACCとかの国内のCMフェスにすればよかったのに。。

ただ、トヨタウンの実写版ドラえもんCMで妻夫木をのび太に起用したトヨタの眼力はさすがだったことは今回の映画見ると一目瞭然(笑)。これほど純粋なダメっぷりがハマる役者もそうはいないよw

男はつらいよの渥美清、釣りバカの西田敏行に続く松竹喜劇ができるとしたら、その時はぜひ妻夫木で一本!

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摩天楼はバラ色に(1986年・アメリカ・110分)NHK-BS

 監督:ハーバート・ロス

 出演:マイケル・J・フォックス、ヘレン・スレイター、リチャード・ジョーダン

 内容:カンサスからNYへ就職にやって来た青年。だがどこの会社も未経験者を雇ってくれない。そこで遠い親戚が社長をしている大会社に、メール・ボーイとして潜り込むが・・・。

評価★★★★/75点

笑えちゃってしかも憎めない、かぐわしき80年代の香りを、デビッド・フォスターの音楽が心地良く彩ってくれる。これぞ80’s!

当時小学生だった自分でさえも体感ベースとして残っているくらい、なんかイイんだよねぇ。

ときどき80年代の映画を見ると懐かしくそして羨ましくも思ってしまう自分なのでした。今こんな映画作れないっしょ。

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ワーキング・ガール

Plans34419 出演:メラニー・グリフィス、シガニー・ウィーバー、ハリソン・フォード

監督:マイク・ニコルズ

(1988年・アメリカ・114分)NHK-BS

評価★★★★/75点

内容:一介のOLが上司になりすまして、アメリカ証券業界を舞台に大奮闘するサクセスストーリー。

“下着姿がやけに多いというのはともかくとして、1番イイ思いしたのはハリソンだな。。”

ギスギス女キャサリンと寝取り横取り女テスをうまく操り利用して自分の体裁をとかく保ちつつ商談交渉を成立させるジャック。

そして1番手柄はテスにやりつつ、自分もしっかり分け前にあずかる実質的に1番得した人間。しかもギスギス女から寝取り横取り女に乗り換えることにも成功。

でもね、、おそらくこのジャックという男、他にも女いるで。そういう男じゃコイツは。オイラの経験がそう言っているww

まぁ社会的にも1人立ちしたテスにとっては例えジャックとの恋が途中で破談したとしても何ら害にはならないとは思うけども。

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アンカー・ウーマン

Anchor 出演:ミシェル・ファイファー、ロバート・レッドフォード、ストッカード・チャニング

監督:ジョン・アブネット

(1996年・アメリカ・125分)NHK-BS

評価★★★/55点

内容:テレビの人気キャスターになるのが夢だったタリーは念願かなって地方局へ入社。敏腕プロデューサーに認められて出世の階段を駆け上がっていくが・・・。

“エッ?これって実話なの?だとすると二重に救いようがないな”

そうかぁ。たしかに実話ものによくある詰め込みすぎ感による安っぽさと重心の無さからくる散漫さがこの映画にもあることを考えると、実話というのも頷けはする。

だけど、このリアリティの無さはなんだ?

お天気お姉さんにしては年増のM・ファイファーはまだいいとして、問題はレッドフォード。彼が出てくるだけでリアリティが薄まってしまうというのは致命的じゃないか。

だって「俺は何度か部下と関係をもったことがある。」ってサラッとカッコ良く言っちゃうんだもんなぁ。石田純一レベルじゃないもんな(笑)。

そりゃ言われた女も逆燃えするわな。。

とにかくレッドフォードにはスターのオーラがありすぎてレッドフォードそのものにしか見えず、実話に見えないってとこが痛いね。

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チャンス!(1996年・アメリカ・113分)NHK-BS

 監督:ドナルド・ペトリ

 出演:ウーピー・ゴールドバーグ、ダイアン・ウィースト、ティム・デイリー、イーライ・ウォラック

 内容:ローレルは業界トップクラスのやり手のキャリアウーマン。ある日、後輩のゴマスリ男に昇進を奪われてしまった彼女は、会社を辞めて自分で会社を起こして独立。しかし、男社会のウォール街では女というだけで相手にされずじまい。。そこでローレルは男性パートナーとして架空の人物を作り出すことにするのだが・・・。

評価★★★☆/70点

東の横綱ダスティン・ホフマン、西の横綱ロビン・ウィリアムス。ウーピーは東の関脇ってとこだな。

ハリウッド版扮装番付でした。

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陽はまた昇る(2002年・東映・108分)DVD

 監督:佐々部清

 出演:西田敏行、緒形直人、篠原涼子、真野響子、渡辺謙

 内容:リストラを迫られながら一人の首切りもすることなく、家庭用VTRの分野で当時優位に立っていたSONYのベータマックスを一発逆転で打ち負かし、ついには世界標準にまで上りつめた日本ビクタービデオ事業部の伝説の成功譚。

評価★★★☆/70点

純粋に良かったとはいえるが、あまりにも濁りがない描き方で逆に心に残らないかも。。

夢のシネマパラダイス597番シアター:ウルフ・オブ・ウォールストリート

ウルフ・オブ・ウォールストリート

20150926122046出演:レオナルド・ディカプリオ、ジョナ・ヒル、マーゴット・ロビー、マシュー・マコノヒー、ジョン・ファヴロ―、カイル・チャンドラー、ロブ・ライナー

監督:マーティン・スコセッシ

(2013年・アメリカ・179分)WOWOW

内容:1980年代後半のウォール街。22歳でウォール街に飛び込んだジョーダン・ベルフォートは、学歴・経験・貯金はともに0だったがレベル100の話術を駆使して成り上がっていく。そして26歳で証券会社を設立し、年収50億を稼ぐまでになる。さらに常識外れの豪遊ライフで世間を驚かせ、いつしか“ウォール街の狼”と呼ばれて時代の寵児になるのだが・・・。

評価★★★/65点

スゴイ映画である。

何がスゴイって、酒とクスリとSEXと乱痴気騒ぎだけで3時間もの長尺を撮りきってしまったことだ。もっといえば、3時間見続けて何も得られるものがない映画というのもある意味スゴイことである。

それは主人公ジョーダンが最初から最後まで最低のクズ男であることに尽きる(笑)。

アラン・ドロンのような儚く危険な甘美も、チャーリー・シーンのような駆け出しの青さも、マルコム・マクダウェルのようなグロテスクな狂気のまなざしも、あるいはねずみ小僧のような粋でいなせな義賊精神も持ちえない、ただ単に年収50億もの大金を湯水のように使ってウハウハするギャンブル男にすぎない。

パチンコが株取引に変わっただけの話だ。

そこには資本主義の醜悪さを暴き立ててやろうといった道徳的観念は一切ない。例えそれが資本主義の本質を突いていたとしても。

なので、ジョーダンが違法行為に手を染めて逮捕されようがドラッグで目を回そうが、これを目にする自分にとっては空疎感しか生み出さないのだ。

いってみれば無害なことこの上ないのである。

ある意味、ジョーダンという男は、映画史に残るキャラクターともいえる。おそらく記憶に残ることは一切ないだろうが・・(笑)。

破滅しても後悔も懺悔も警鐘もない、ラストに至ってもまだセールストークをこれ見よがしに披露しようとするジョーダンの変化のなさと金儲けに対する飽くなき執着心にはほとほと脱帽してしまったけど、それを入れ食い状態で見つめて聞き入るオーディエンスの顔もまた印象深い。

あの素朴を絵に描いたような顔たち(それはつまりこの映画を見る自分たちでもある)が、欲望に忠実なジョーダンに比べて逆にまるで偽善者であるかのように見えてくるのが何とも言えない余韻を残したとはいえる。ま、自分みたいな貧乏人にはおよびでない映画だけどねw

賞を狙いにいったディカプリオについては、ラリってスプレーを浴びたゴキブリ状態の表現力は強烈だったけど、成長度ゼロの役だっただけに賞に値するかどうかはちょっと微妙だったね。

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ウォール街(1987年・アメリカ・124分)NHK-BS

 監督:オリヴァー・ストーン

 出演:チャーリー・シーン、マイケル・ダグラス、ダリル・ハンナ、マーティン・シーン

 内容:世界経済の中心地NYウォール街を舞台に、証券マンの夢と野望を描いた人間ドラマ。若く野心に満ちた証券マンのバドは、優れた頭脳と度胸で巨万の富を築いたゲッコーに憧れ、自らも一攫千金を夢見ていた。ゲッコーに取り入って着々と実績を上げていったバドは、莫大な報酬と美女ダリアンも手に入れる。しかし、父親の会社がゲッコーの傘下に入り、その結果、ゲッコーの汚いやり口が次第に露わになっていき・・・。マイケル・ダグラスがアカデミー主演男優賞を受賞。

評価★★★★/80点

“わたくしは自由資本主義社会の底辺でのんびり生きていくことに決めました。。はい。”

それが自分が自分であり続ける生き方だと思うから。なーんてね。。

恋なんて人間がでっち上げたおとぎ話だ!と抜かしやがるゲッコー。けっこうけっこうコケコッコー言ってくれるじゃないのクソゲッコー。あんたみたいな人間とはゼッコーですww

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ウォール・ストリート(2010年・アメリカ・133分)WOWOW

 監督:オリヴァー・ストーン

 出演:マイケル・ダグラス、シャイア・ラブーフ、ジョシュ・ブローリン、キャリー・マリガン、スーザン・サランドン、フランク・ランジェラ

 内容:ニューヨークの若き金融マン、ジェイコブ。恋人ウィニーとの交際も順調で公私共に順風満帆の人生を送っていたが、突然会社が破綻。心の師である社長は自殺し、ジェイコブ自身も財産を失ってしまう。それが金融界の黒幕ブレトンの仕業だと知ったジェイコブは、ウィニーの父親で、インサイダー取引の罪で服役していたこともある大物投資家ゴードン・ゲッコーに復讐話を持ちかけるが・・・。

評価★★☆/50点

オリヴァー・ストーンを一言で表せば映画に対するギラギラした情熱とどんな料理でも娯楽作にまとめ上げてしまうド根性といえるけど、その面でこの映画を見ると、ずいぶん丸くなっちゃったなぁと悪い意味での感慨を抱かずにはいられない。

丸くなったというのはまだ柔らかい言い回しで、衰えたといった方が正しいか・・・w

それはそのままゴードン・ゲッコー(マイケル・ダグラス)の姿にも重なるわけで、その穴埋めとしてまさか中途半端なメロドラマを見せられるとは思いもよらなかったけど、全体的に何を描きたいんだか焦点の定まらない凡作だった。。

2015年11月 5日 (木)

夢のシネマパラダイス220番シアター:ローン・レンジャー

ローン・レンジャー

O065009201029152_650出演:ジョニー・デップ、アーミー・ハマー、トム・ウィルキンソン、ウィリアム・フィクトナー、バリー・ペッパー、ヘレナ・ボナム=カーター

監督:ゴア・ヴァ―ビンスキー

(2013年・アメリカ・149分)盛岡フォーラム

内容:西部開拓時代のアメリカ。検事のジョンは、テキサスレンジャーの兄を無法者一味に殺され、自らも撃たれて瀕死の重傷を負う。しかしそんな彼を悪霊ハンターのトントが救い出した。こうして犯人たちを探すジョンと、少年時代の忌まわしい事件のために復讐に燃えていたトントは手を組むことになるのだが・・・。

評価★★★★☆/85点

パイレーツオブカリビアンの製作陣&主演コンビが再結成して西部劇を撮るということで、見る前から二番煎じの匂いがプンプンしていたのだけど、フタを開けてみたら三番煎じだったというオチw

しかし、普通ならばそうならないようにならないようにと作っていくはずなのだけど、この映画はそうなるようになるように作っていて(笑)、それがヘンな爽快感を生んでいて個人的にはドツボにハマってしまった。

もはやフルメイクでなければ映画に出れないのではないかとさえ思えるジョニデのトント役なんて、デッドマンズ・チェストでの人食い族のいる島で族長に祭り上げられたジャック・スパロウそのものだし、要は船長が陸に上がったらこうなりますってだけの映画なのだw

しかし、パイカリがシリーズを追うごとにグッダグダのごった煮になっていったのに対し、今回はそれがリセットされ新たな世界観でシンプルな王道活劇として生まれ変わっていて見やすくなっているのが良し。

また、ジョニデとコンビを組むアーミー・ハマーが白塗りトントの無表情なシュールさに食われることなくのびのびとタイトルロールを演じているのも大きい。

「Jエドガー」でディカプリオと男と男のラブゲームを繊細に演じきり、線の細い性格俳優然とした印象が強かっただけに、ヘンなマスクを付けて白馬にまたがりオー!イェイ!って180度違う今回の役どころは、根が真面目そうに見える分かえってユーモアセンスが強調されていて新鮮味があって面白かった。

そして、そのローン・レンジャーが屋根の上を白馬とともに疾走するのを合図に始まる大団円の大列車活劇は珠玉の一言。ハイテンションなウィリアム・テル序曲をバックに繰り広げられるコミカルアクションは抱腹絶倒もので、ここでのジョニデはもはやバスター・キートンそのものではないか!そしてアーミー・ハマーはダグラス・フェアバンクスといったところか。

これはもう是非とも続編を作ってもらいたいところだけど、余分なぜい肉がどんどん付いていっちゃうんだろうなぁ

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三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船

T0010239p 出演:ローガン・ラーマン、ミラ・ジョヴォヴィッチ、オーランド・ブルーム、クリストフ・ヴァルツ、マシュー・マクファデン、レイ・スティーヴンソン

監督:ポール・W・S・アンダーソン

(2011年・仏/米/英/独・111分)

内容:17世紀のフランス。若くして王位を継いだルイ13世は、王妃アンヌに夢中で政治には無頓着。その隙に実権を握ろうと画策するリシュリュー枢機卿は、邪魔な存在の王妃を失脚させるため、王妃と敵国の英国宰相バッキンガム公が通じていると見せかけるべく謎の美女ミレディに命じて陰謀を張り巡らせる。王妃の侍女コンスタンスから助けを求められた王直属の三銃士と銃士を目指すダルタニアンは陰謀を阻止するべく立ち上がる・・・。

評価★★★/60点

相変わらずバイオハザードぶったスローモーションの多用はしゃくに障ったけどw、総じて見ていて楽しめる娯楽作に仕上がっていたとは思う。

なんかパイレーツオブカリビアンの空中版といった趣で、飛行船同士のバトルはラピュタのゴリアテvsタイガーモス号をほうふつとさせ見応えがあった。空賊映画も有りだなってかんじ。

ただ、パイレーツシリーズを降板してまでこの映画に出たオーランド・ブルームをはじめ豪華脇役陣がイマイチ活きていない印象で、オーランドもせっかく悪役に挑戦したのに、いうほど悪役になりきれておらず・・・。

その一方、ミラジョヴォは髪形もコスチュームも果ては胸までもがwボリュームアップして見せ場もたっぷりなんだけど、なんか一人だけ浮いてるかんじ・・。

監督の嫁さんだから仕方ないのかもしれないけど、力の入れ具合間違ってません!?三銃士の顔がなかなか思い出せないのははたして自分だけのせいなのだろうか

その中で唯一目を引いたのが侍女役だったガブリエラ・ワイルド。ミラジョヴォよりもこっちだろー

まぁ、続編作る気マンマンな終わり方も気になるところだけど、もうこれ以上話をふくらませるのは無理だろw

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マスク・オブ・ゾロ

22 出演:アントニオ・バンデラス、アンソニー・ホプキンス、キャサリン・ゼタ・ジョーンズ

監督:マーティン・キャンベル

(1998年・アメリカ・137分)DVD

評価★★★★/75点

内容:メキシコがスペイン領にあった頃。20年の獄中生活を終えたかつての“ゾロ”=ドン・ディエゴ。彼から正義の意思とマスクを受け継いで新たなヒーローとなった“ゾロ”=アレハンドロの活躍を描くアドベンチャー・アクション。

“「グリーン・デスティニー」の殺陣を見た後にこれを観たが、この映画の剣戟が「グリーン・デスティニー」である必要は全くない。これでいいのだ!”

ダグラス・フェアバンクスが演じたサイレント映画時代から連綿と続くクラシックなチャンバラヒーロー“ゾロ”を20世紀末に甦らせたこの映画が、変に欲張らずにオーソドックスな古典活劇に徹した作劇術を用いたのは純粋に素晴らしかったし、欲張って変にCGとか使ってたら“ゾロ”そのものの形が崩れてしまっていただろう。

アクションの原点に立ち帰り、歯切れ良く展開されるチャンバラ活劇。

それが“ゾロ”なのだから。

また、そのようなオーソドックスさが一見すれば古臭さとなってマイナスに働く可能性もあったが、血気盛んなバンデラス“ゾロ”、老いてなお強しアンソニー・ホプキンス“ゾロ”、そしてオリエンタルなセクシーさを併せ持つキャサリン・ゼタ・ジョーンズのキャラクターがものの見事にハマっていて、非常にバランスの取れた痛快作に仕上がっていたと思う。

製作に回ったスピルバーグの巧さが光る一品となった。

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レジェンド・オブ・ゾロ

Main_2 出演:アントニオ・バンデラス、キャサリン・ゼタ・ジョーンズ、ルーファス・シーウェル

監督:マーティン・キャンベル

(2005年・アメリカ・126分)DVD

評価★★★/60点

内容:1850年のカリフォルニア。各地でアメリカの第31番目の州に加わるかどうかを決める住民投票が行われていた。サンマテオの街でも圧倒的支持を得ていたが、悪党マクギブンス一味がそれを阻止しようと投票妨害を企てる。しかし怪傑ゾロが颯爽と現れ、一味を一網打尽に付し、無事事は解決した、、、、はずだったのだが、これでゾロを引退して家族サービスに徹してくれると思っていたのに、正式に米国への加盟が決定されるまであと3ヶ月“ゾロ”を続けると言う夫アレハンドロに業を煮やした妻のエレナが家を出てしまい、遂には離婚騒動にまで発展してしまう・・・。

“ファミリー・オブ・ゾロの間違いじゃないのか・・・?”

なんというか「Mr.インクレティブル」の実写版でも観ているような気分になってしまったが、庶民のヒーローから家族のヒーローという視点に変わったのはいいとしても、“ゾロ”である必要があるのか、このストーリーは??と根本的なところで思ってしまったのだけど・・・。

だって明らかに今回はバンデラスとゼタ・ジョーンズの2枚看板じゃん。

それがかえってゾロの見せ場を減退させているような感は否めず。。

それよりは息子のホアキンをもっと出せばよかったんじゃないかなあと思っちゃったな。

ま、飲んだくれヘビースモーカー馬トルネードに免じて今回は★3っつあげちゃるわ。

2015年11月 2日 (月)

夢のシネマパラダイス595番シアター:映画通が必ず通る道ウォン・カーワイ

2046

2046small出演:トニー・レオン、木村拓哉、コン・リー、フェイ・ウォン、チャン・ツィイー、カリーナ・ラウ

監督・脚本:ウォン・カーワイ

(2004年・香港・130分)仙台コロナ

評価★★★/65点

内容:1967年の香港。記者あがりの作家チャウは、とある古びたホテルの2046号室に泊まることに。彼は、ホテルのオーナーの娘ジンウェンが日本人のビジネスマンと恋に落ちていることに触発され、近未来SF小説「2046」を書き進める。それは、2046年が舞台で、失われた愛を取り戻すことができるという“2046”へ向かう、美しいアンドロイドたちが客室乗務員を務める謎の列車の物語だった・・・。

“ウォン・カーワイ映画写真展を美術館でやったら絶対見に行くのに。。”

しかもその写真は自分に選ばせて欲しい。自分が編纂してやるから、ていうかオレにやらせろ(笑)。

タバコは吸えないのだけど、「カイロの紫のバラ」みたいにこの映画の中に入っていってタバコをくゆらせてみたいと真剣に妄想してみた・・・。

ただ、物語の中に入って身を委ねたいということでは決してないということは付け加えておかなければなるまい。

あくまでもウォン・カーワイの映像世界の中、しかも時の静止したひとつの画像のワンフレーム内に入って最高のパフォーマンスを焼き付けてみたい、ただそれだけだ。

はっきりいってこの映像世界の中を歩いてみたいとも思わない。

ウォン・カーワイの映像世界その一瞬のきらめきの中に吸い込まれてみたい、ただそれだけなのだ。

なぜなら彼の映像世界の全てに没入したくないから、その全てをくまなく知りたいとは思わないから。

知った途端につまらなくなりそうで恐い・・・。

それだけ自分の世界とは全く異なる言語しか使ってこないウォン・カーワイという男。

しかも、その言語で語られる物語は、時折眠気をもよおす

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欲望の翼(1990年・香港・97分)DVD

 監督・脚本:ウォン・カーワイ

 出演:レスリー・チャン、アンディ・ラウ、マギー・チャン、ジャッキー・チュン、カリーナ・ラウ、トニー・レオン

 内容:サッカースタジアムの売店で売り子をしているスーは、お客のヨディから交際を迫られ最初は断っていたものの、やがてゾッコンに。しかし、気ままな遊び人のヨディはクラブダンサーのミミと関係を持ってしまう。そして傷心で夜の街をさまようスーは巡回中の若い警官から声をかけられる。一方、ヨディの親友サブはミミに思いを寄せていて…。

評価★★★☆/70点

雨に打たれて歩きたい。

この映画を見た後、無性にそう思った。

もはやあるはずのない昔懐かしの電話ボックスを求めて雨に打たれて彷徨いたいとさえ思ったw

それくらい映像に酔いしれてしまったのだ。

あんな湿気ったヨディ(レスリー・チャン)のアパートに住みたいとはこれっぽっちも思わなかったけど、映像からそこはかとなく漂ってくる色気は一体全体何なんだろう。映画を見て数日経つのにあの異空間の残り香はかえって強まるばかりだ。

ストーリーははっきりいってもうどうでもいい(笑)。

レスリー・チャンの妖しい色香とマギー・チャンの昭和の薫りだけでご飯3杯!

1998年7月14日午後6時11分、オレはたしかにそう思った。

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恋する惑星

10004出演:トニー・レオン、ブリジット・リン、フェイ・ウォン、金城武、チャウ・カーリン

監督・脚本:ウォン・カーワイ

(1994年・香港・101分)NHK-BS

内容:香港の重慶マンションとその周辺を舞台に、2組の男女の出会いとすれ違いを描くウォン・カーワイの新感覚ラブストーリー。ドラッグの売人をしている金髪の女に恋をした刑事223号を主人公とする「重慶マンション」と、刑事633号の部屋の合鍵を手に入れたウェイトレスのフェイが、彼の部屋に忍び込んで次々と模様替えしていく「ミッドナイト・エキスプレス」の2編から成る。

評価★★★/65点

“金城武編は猛烈な睡魔との真っ向勝負、フェイ・ウォン編は猛烈な高揚感との真っ向勝負、まるでドラッグでもやったかのようなハイ&ロー状態にもうグッタリ・・・。”

この映画のほとんどは“夢のカリフォルニア”と“夢中人”で出来上がっているといっても過言ではないほど音楽ありきの映画なのだけど、この2曲とも後半で流れるように、金城武&ブリジット・リンの前半とフェイ・ウォン&トニー・レオンの後半とでは、圧倒的に後半の印象しか残らない。

その点からみても作劇としてなぜ前後半を絡ませなかったのか解せないところだけど、まとまった脚本を書かないことで知られているウォン・カーワイだけに即興性の方が重視されたということなのか。。

けど、好きな男の部屋に忍び込んでベッドで虫眼鏡を頼りに男の彼女の髪の毛を見つけて狂喜乱舞するストーカーってどうあったって怖いはずなのに、なんでこんなシーンを微笑ましく見てられるんだろう自分

西洋と東洋の混じり合うヴィヴィッドな香港の街並みと、ジュークボックスの中で煌めくレコード盤が印象的なポップな世界観、その中で踊りまくるキュートなフェイ・ウォンが中性的なことが大きかったのかもしれない。

ま、いうほど悪くない100分間だったw

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天使の涙(1995年・香港・96分)盛岡フォーラム

 監督・脚本:ウォン・カーワイ

 出演:レオン・ライ、ミシェル・リー、金城武、チャーリー・ヤン、カレン・モク

 内容:そろそろ足を洗おうと思っている殺し屋と、彼のパートナーである美貌のエージェントは、仕事に私情を持ち込まないのが流儀で、めったに会うこともなかった。エージェントが根城としている重慶マンションの管理人の息子モウは、5歳のときに期限切れのパイナップル缶を食べ過ぎて以来、口がきけなくなっている。ある日、彼は失恋したばかりの女の子に会って初めての恋をした。一方、殺し屋は街で出会った金髪の女と互いのぬくもりを求め合うようになる・・・。香港の光と闇の中で生きる5人の若者たちの青春群像劇。

評価★★☆/50点

殺し屋レオン・ライに仕事を卸している女エージェントのミシェル・リーは、仕事のパートナーでありながらFAXのやり取りしかしたことがなく会ったことがない。妄想力たくましい彼女は殺し屋にひそかな想いを抱き、彼の部屋に忍び込み、ゴミを漁ったり勝手に模様替えしたり、果てはベッドの上で自慰行為にふけったりしている。一方、殺し屋の方は行きずりの金髪女カレン・モクと再会し、ここに奇妙な三角関係が生まれる。

しかし、殺し屋は二人との関係を断ち切り、稼業から足を洗おうとするが、パートナーの解消と捨てられることを受け入れられない妄想女は、彼を永遠に葬ることを決断する・・・。

というあまりにも魅力的なプロットにもかかわらず、なんであんなしっちゃかめっちゃかな映画になっちゃうのかなぁ

で、やっぱこれはどう見たって、頭のネジが吹っ飛んでいる金城武のパートがかなり余計なんだと思うw豚の屍の上でいくらアドリブをかまそうがそんなの関係ねえ

まぁ、演劇性を排した即興とセンスだけで撮るカーワイスタイルを存分に味わえるという点ではこれ以上ない作品なんだろうけどね・・。

こりゃあれだな。同じプロットでリュック・ベッソン版とかマイケル・ベイ版とかいろんな監督で撮ったの見てみたいなw

ちなみに題名は原題通り「堕落天使」の方がいい。「天使の涙」だとますますもって上っ面なかんじがしてよう好かん。。

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楽園の瑕(1994年・香港・100分)NHK-BS

 監督・脚本:ウォン・カーワイ

 出演:レスリー・チャン、レオン・カーフェイ、ブリジット・リン、トニー・レオン、マギー・チャン

 内容:砂漠で旅籠を営む“西毒”こと陽峰は、殺し屋の元締めもしている。陽峰は高名な剣士となる野望のために恋人を捨て、残された彼女は彼の兄と結婚した。そんな中、毎年3月6日になると訪ねて来る親友の“東邪”薬師が今年も現れ、酔いつぶれたあげく翌日旅立っていった。しかしその後、容燕という謎の剣士がやって来て、陽峰に薬師の殺しを依頼する・・・。

評価★★☆/50点

飲み会の席で片思いの人から君に妹がいたらその妹と付き合ってあげると言われ、真に受けた女は双子の妹になりすまして会う約束を取りつけるも、酔っ払った勢いで言った男はそのことをすっかり忘れている。そして約束をすっぽかされた女は捨てられたと先走り、アイツ殺したるわーと逆上、、ってこんな話コメディでしか通用しないはずなのに

正面切って不毛な愛の相克として描こうとしているから全くもって笑えないことに・・・。

ゆらめく陰影を夢幻的に描き出す映像美だけが見所といえなくもないけど、陶酔感さえ漂う静を捉えた素晴らしさと殺陣シーンをはじめとする動を捉えたツマラなさに圧倒的な落差があって、どうしてもなじめない。

チャンバラ活劇としての武侠映画を期待していただけに、かなり残念

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ブエノスアイレス(1997年・香港/日本・98分)WOWOW

 監督・脚本:ウォン・カーワイ

 出演:レスリー・チャン、トニー・レオン、チャン・チェン

 内容:南米アルゼンチン。香港からやって来たゲイのカップル、ウィンとファイは、関係修復のためにイグアスの滝へ向かって車を走らせていたが、道に迷って言い争い、それが原因で別れることに。その後しばらくして2人は、ブエノスアイレスのタンゴバーで再会し、ドアマンをしていたファイの部屋にウィンが居候することになるが・・・。

評価★★☆/50点

白いタンクトップとブリーフ一丁で時にはいちゃつき時には痴話ゲンカに明け暮れる男と男。

こんなもん、見ったくねぇーww

それを延々2時間繰り返したあげく、「気ままに旅できるのは帰る場所があるからだ。会いたいとさえ思えばいつでもどこでも会えることを確信した」と主人公ファイ(トニー・レオン)の独白で締められても正直困ってしまう(笑)。

全くもって届いてこないし、むなしく響いてくるだけだからだ。

それは故郷から地球の裏側までたどり着くも、“幸福”にも“一緒”にもなれない耐えがたい孤独とすれ違いを描いたウォン・カーワイのテーマをちゃんと受け取れているともいえるのだけど。って単なる屁理屈か・・

結局、あのイグアスの滝の幻想的な空撮も何だったんだかw

どうあっても満たされない男の心象風景を写し取ったかのような寒々しいモノクロ映像だけは買う。

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花様年華

Kayou2出演:トニー・レオン、マギー・チャン、スー・ピンラン、レベッカ・パン

監督・脚本:ウォン・カーワイ

(2000年・香港・98分)MOVIX仙台

内容:1962年香港。新聞社の編集者であるチャウ夫妻がアパートに引っ越してきた日、隣の部屋にも商社で秘書として働いているチャンが夫と引っ越してきた。2人とも忙しく夫や妻とはすれ違いが続く。やがて、チャウは妻がチャンの夫と不倫していることに気づく。怒るチャウは、復讐心からチャンに接近するのだが、やがて2人は密会を重ねることになっていく・・・。

評価★★★/60点

チャイナドレス、マギー・チャンのすらりとした肢体、煙草、長雨、アンコールワット、狭い路地、ポマード、鈍く光る街灯、スローモーション、朱色、ゆらりとした音楽。

見終わったあと、ほとんど時を経ずして話の筋立てを忘れてしまう。まるで夢でも見ていたかのように。

しかし、その夢の残り香はいつまでも消えることがない。

エロスは耽美な夢の中にある。ウォン・カーワイの真骨頂を垣間見た気がした。

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