夢のシネマパラダイス593番シアター:アップサイドダウン~重力の恋人~
アップサイドダウン 重力の恋人
出演:キルスティン・ダンスト、ジム・スタージェス、ティモシー・スポール、ジェームズ・キドニー、ジェイン・ハイトメイヤー
監督・脚本:フアン・ソラナス
(2012年・カナダ/仏・109分)WOWOW
内容:太陽系にある上下に向き合っている双子惑星。そこでは正反対の方向に重力が働き、上にある星には富裕層が住み、下の星には貧困層が住んでいて、互いの交流は固く禁じられていた。そんな中、下の世界の少年アダムは上の世界の少女エデンと出会って恋に落ち逢瀬を重ねていた。しかしある日、警備隊に見つかってしまい、逃げようとしたエデンが上の世界に落下していってしまう。それから10年後、アダムはエデンが生きていることを知る・・・。
評価★★★★/80点
映画をこよなく愛することに決めた10代の頃、つまり90年代に最も好きな女優はグウィネス・パルトロウだった。
ナチュラルでクラシカルでエレガントな気品ある美にゾッコンになったのだけど、00年代になると八重歯がキュートなキルスティン・ダンストを一途に想いつづけるようになったw
巷では不細工だとかスパイダーマンのヒロインには似つかわしくないとかゴチャゴチャ難癖をつける輩がいるようだけど、なんならこの映画を見ろっ!と言いたい。
彼女のフィルモグラフィーの中でも1番キュートで自然体な姿が写し出されていると思う。
また、それを抜きにしても今回の映画は二重引力という奇想天外なSF設定や幻想的なヴィジュアル含めて非常によく練り込まれている良作になっていたと思う。
ストーリーの基調にあるのはロミオとジュリエットのような悲恋ものにあるといえるけど、その障害となるのが重力というのが奇抜で、二重引力の3つの法則の2つ目と3つ目、物質の重さは反対側の物質で相殺できる(逆性物質)が逆性物質に接触している者は数時間で燃え始める、という制約が巧く効いている。つまり磁石のように惹きつけ合うアダムとエデンは長時間メイクラブしてると文字通り燃え尽きてしまうのだ
そんな誰も逆らえない万物の法則を愛で超えてみせるというアダムの恋の意志の強さにはグイグイ引っ張られてしまうんだけど、まぁそりゃ当然だよね。お相手が記憶を失くしてしまったキルスティン・ダンストなんだもの。こんな燃える状況はないよ♪
あとはなんといってもシンメトリーを意識した夢のような映像美の素晴らしさだろう。
エフェクトばりばりの映像はクリスチャン・ラッセンの絵のようで、そこに実写ならではの陰影とリアリティが加わって、このての表現が得意なアニメのお株を優に奪う絵面になっていたと思う。
特に2人が出会う上の世界と下の世界の近接点、らせんのごとく逆巻く大気を青白く染め上げる白夜のような天空にのびる山の頂をとらえた造形には心魅かれるものがあった。
おとぎのような独特な世界観を十分楽しませてもらいました
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サカサマのパテマ
声の出演:藤井ゆきよ、岡本信彦、大畑伸太郎、ふくまつ進紗、加藤将之
監督・脚本:吉浦康裕
(2013年・日本・99分)DVD
内容:アイガ国では、かつて空に多くの罪びとが落ちていったという謂われから空は不吉なものだとされていた。しかし、中学生エイジは大空に憧れを抱き、空を見上げることが大好きな少年。そんなある日エイジは、フェンスに必死にしがみついて今にも空に落下しそうな少女パテマと遭遇し、彼女を救出する。どうやらパテマは、重力が真逆の世界からやってきたサカサマ人らしいのだが・・・。
評価★★★☆/70点
このてのファンタジーアニメを見ると、どうしてもジブリ脳が働いて、ジブリをスタンダードとする土俵の上で見てしまうくせがある。ジブリとの相似点や影響度、ジブリレベルへの到達具合など粗探しをしてしまうわけだ
で、今回は完全にラピュタ。
親の不在、迫害された父、空から、、ではなく空に落ちていく少女、塔に幽閉された少女を助けに行く少年、ムスカ直系の悪役キャラ、そしてパズーとシータの逆さまドッキングwと、ラピュタのエッセンスを存分に拝借していて、ここまであからさまだと逆にあっぱれ(笑)。
さらに、サカサマ人間が地底世界に存在するパラレルワールド的世界観や、重力と反重力が引き合うことにより重さが相殺されて浮遊感が生み出されるアイデアなど、ジブリの二番煎じという揶揄をのど奥に引っ込めてしまわざるを得ないほどオリジナリティある発想力にあふれていて見入ってしまった。
惜しむらくはせっかくの魅力的なSF設定を説明なくほとんど放置したまま終わったことで、それは作劇として意図的なスルーをしたのだろうけど、尺を15分くらい延ばしてもいいからもう少し考証にベクトルを向けてもらいたかった気がする。
あとは典型的なボーイミーツガールの中で、パテマのキャラが萌え的な二次元女子の枠に収まってしまうのもイマイチだったかな。
もうこうなると、ジブリ脳じゃなくてジブリ病だなww
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エリジウム
出演:マット・デイモン、ジョディ・フォスター、シャールト・コプリー、アリシー・ブラガ、ディエゴ・ルナ
監督・脚本:ニール・ブロムカンプ
(2013年・アメリカ・109分)WOWOW
内容:2154年、人口増加と環境破壊で荒廃が進む地球。一握りの富裕層だけは、400キロ上空のスペースコロニー“エリジウム”に移住。そこは、どんな病気も瞬時に治す医療ポッドがある理想郷だった。そんな中、地上で暮らす貧困層のマックスは、勤務していたロボット製造工場で事故に遭い、余命5日と宣告されてしまう。エリジウムで治療する以外に生きる道はないと考えたマックスは、エリジウムへの不法侵入を図っているレジスタンス組織と接触し、決死の覚悟でエリジウムへ向かうが・・・。
評価★★★/60点
貧困層は荒廃した世界で、富裕層はクリーンでなおかつ最強最高の医療設備が整った楽園で暮らせるという、現実に今ある格差社会の極致を描いた世界観は面白いのだけど、このての二極化社会を描いた近未来映画って、ことに最近はお約束みたいになっているので、ちょっとやそっとじゃ新鮮味を感じなくなってるんだよねw
その点では比較対象も多くなってしまうんだけど、そうなると例えば「TIME/タイム」なんかの方がSFらしいアイロニカルな発想の飛躍があって印象的だったと思う。
でも、今回の方が絵面の汚さも含めて(笑)リアルではあるんだよね。外国だと金持ちが住んでる高級住宅街を壁で囲って安全を確保してる所もあるっていうし。
ただ、そういうリアルSFではあるんだけど、下界天界含めて登場人物の行動原理が私利私欲しかなくて、その欲望がなかなか献身や大義に昇華していかないため、物語の共感ポイントが見出せなかったのがイマイチだった。
もちろんマット・デイモンの場合は余命5日なので四の五の言ってられないってのはあるんだけど、なにせシャールト・コプリーが欲望の塊キャラとして突出しているので、ジョディ・フォスターも含めて霞んじゃってるんだよね。
パソコンの再起動で革命完遂という味気なさや、エリジウムに行きたいという憧憬がただ単に医療ポッドに入りたいという思惑に矮小化されてしまっているつまらなさなど、まぁ要するに話がツマラないんだわww
なんかエリジウムを天界、地球を下界と書いた時点で芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を想起したんだけど、そう見るとカンダタ=マット・デイモンをより極悪非道キャラにしなければならなかったのでは・・?
あるいはシャールト・コプリーを主人公にした方がうまくいったような気も。。う~ん・・・。
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