夢のシネマパラダイス419番シアター:舟を編む
舟を編む
出演:松田龍平、宮崎あおい、オダギリジョー、黒木華、池脇千鶴、伊佐山ひろ子、八千草薫、小林薫、加藤剛
監督:石井裕也
(2013年・日本・133分)WOWOW
内容:1995年。玄武書房営業部に勤める馬締光也(松田龍平)は、真面目だけが取り柄の落ちこぼれ社員。そんなある日、彼は大学で言語学を専攻していたことを買われて辞書編集部に異動することに。そこでは松本教授(加藤剛)のもとで見出し語が24万語という辞書『大渡海』の編纂が進められていた。しかし、ベテラン編集者・荒木(小林薫)はもうすぐ定年で、あとはお調子者の西岡(オダギリジョー)と契約社員のおばさん(伊佐山ひろ子)だけという苦境にあった。そんな中で馬締は辞書作りに没頭していくのだった・・・。
評価★★★★/75点
あまりにも誠実で優しく、あまりにも素直で生真面目な原作をそのまま映画にしたらひたすら地味な作品になっちゃうのではないかと思ってたけど、まさにそのまんまだった(笑)。
ただ、地味で舌足らずな中にも、1冊の辞書を作るために費やされる15年という時の流れを実感させるだけの人々の思いや成長の軌跡というのはしっかり描けていたし、性的な匂いが全くしない聖母マリア化した宮崎あおいwが映画に華を添えていて清々しいピュアな作品に仕上がっていたと思う。
でも、かぐやちゃんがどうやってマジメ君を好きになったのかがこの描写だと永遠の謎で(笑)、なんかホント空から天使が舞い降りてきたみたいなかんじで、マジメ君のような根暗でモテない自分は激しく嫉妬してしまった
しかし、辞書作りがこれほどまでの時間と労力を使うものだったとは思わなかったけど、しかもあんな少人数しか携わらないというのも驚きで、そりゃ15年かかるだろっていうww
なんかトヨタ方式のカイゼンを取り入れたくなってくるようなかんじだけど、効率とスピードばかり重視される今の世の中において忘れられがちな大切なものを思い出させてくれるという意味でも心に残る映画ではあったかな。
よーし、オレはあんな達筆な恋文じゃなくて、ちゃんと言葉で愛を伝えられる相手をまずは見つけるところから始めるぞーそこからかよっ!
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の・ようなもの のようなもの(2015年・松竹・95分)WOWOW
監督:杉山泰一
出演:松山ケンイチ、北川景子、伊藤克信、尾藤イサオ、でんでん、野村宏伸、内海桂子、三田佳子
内容:30歳で脱サラして落語家になった出船亭志ん田は、師匠・志ん米の自宅に住み込み修行中。真面目すぎるのが災いして芸はなかなか上達せず、思いを寄せる師匠の娘・夕美からもけちょんけちょんに言われる始末。そんなある日、先代師匠の十三回忌追善公演が迫る中で後援会長が、落語家を辞めたあと行方知れずの志ん魚(しんとと)の噺が聞きたいと言い出したからさぁ大変!志ん田お前探しに行ってこーい!となるのだが・・・。
評価★★★/65点
下っ腹が出て無精ヒゲを生やしたうだつの上がらない中年親父になった志ん魚(伊藤克信)の変わりっぷりに35年の時の流れを否が応にも感じざるを得ないけど、映画を流れる温かく優しい眼差しは変わることなく、人情味あふれる作品になっていたと思う。
特に、新味がないことが味わいを深める逆説的要素を持つ今作において、志ん田役の松山ケンイチが森田ワールドの遺伝子のバトンを器用に引き継いでおり、あざとさを感じさせないのが良かった。
また、秋吉久美子が出ていないことだけは合点がいかなかったけど、前作のキャスト陣や森田作品ゆかりの面々が顔見世興行的に出てきて、ほぼスジなしの同窓会映画にもなってて見ていてほっこりできる。
しかし考えてみれば、いち監督に対するオマージュ作ってなかなか無いから、よっぽど慕われてた監督さんだったんだね。
これぞ映画愛!
ただ、これだけは言っとく。ホントに新味はないし、中身もない(笑)。。
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の・ようなもの(1981年・日本・103分)WOWOW
監督・脚本:森田芳光
出演:伊藤克信、尾藤イサオ、秋吉久美子、麻生えりか、でんでん、加藤治子
内容:東京の下町。駆け出しの若手落語家・志ん魚は、23歳の誕生日に風俗へ行き、そこで相手をしてくれたエリザベス嬢と友達以上恋人未満のような関係になる。さらに、講師として出向いた女子高の落研で出会った由美のことを好きになり、付き合うことに。が、デートの帰りにお邪魔した彼女の家で披露した落語は相手の親からダメ出しを食らってしまう始末・・・。
評価★★★/60点
これが80年代のセンスなのかといえばそれまでだけど、78年生まれの自分には感覚だけで撮られたような森田演出はシュールすぎてなかなかに付いて行きづらいw
ていうかこれってデビュー作なのか!と考えれば、まだ洗練されていない恥ずかしいくらいの森田監督独特な感性の原液をポタポタと垂らしているようなかんじで見る価値はあるかな。
まだ暗い明け方の東京をトボトボと歩き続ける主人公の姿を見て、青春のあてのなさは伝わってくるしね。
でも結局そんなことよりも頭に残るのは、おすぎとピーコ調の小堺一機&関根勤コンビと、大事なとこが見えそで見えない秋吉久美子の肢体なのだった
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しゃべれども しゃべれども
出演:国分太一、香里奈、森永悠希、松重豊、八千草薫、伊東四朗
監督:平山秀幸
(2007年・日本・109分)シネマズグランベリーモール
評価★★★/65点
内容:東京の下町。二つ目の落語家・今昔亭三つ葉は、若手のくせして頑なに古典落語に情熱を注ぎ込み、普段から着物を羽織っている珍しいタイプの噺家さんだったが、真打ちになれずに今ひとつ伸び悩んでいた。そんな三つ葉は、ひょんなことから落語を使った話し方教室を始めるハメになってしまう。そこに集まってきたのは、美人だがめちゃくちゃ無愛想な女性・十河五月、関西弁を笑われていじめられている大阪から引っ越してきた転校少年・村林優、コワモテでアガリ症というプロ野球解説者・湯河原太一。集まるたびに言い争いが絶えない彼らだったが・・・。
“人情と温かさが肝心の可笑しみにつながっていかないもどかしさにイマイチはじけず・・・。”
かれこれ15年くらい前、高校生の時に学校で文化芸術鑑賞会というのがあり、春風亭柳昇の落語を生で聞いたことがある。
軽妙でトボケたような語り口に、体育館に集まった全校生徒が爆笑の渦に巻き込まれるほど面白かったことを覚えているのだが、しかし悲しいことに落語で笑ったのはこれ以降一度もない・・・。
そういう意味では、今回この映画を観るにあたっては落語の面白さを再確認したいなという期待感を強くして観たのだけども。
しかし、フタを開けてみたら、映画自体がうだつの上がらない二つ目といった趣だったような・・・。
いや、良作には違いないんだ。でもなんだろ、クソ真面目に実直すぎる語り口が、いや、もうちょっと笑わせてくれよみたいな。。
なんか古典芸能たる落語を扱った映画としては敷居の下げ方を間違えてるような、そんな違和感を抱いちゃったな。
現代の特に若者に共通してみられるディスコミュニケーションの問題を、ことばを操るプロである噺家の落語とリンクさせて描こうという切り口はすごく面白いのだけど、この映画観ると落語である必要があまり感じられないというか・・・。
それこそ同じ香里奈が出てた「深呼吸の必要」のさとうきび畑の収穫作業の方がよっぽどうまく描けてると思う。
特に刺すような鋭い目つきが印象的だった無愛想の塊みたいな十河五月(香里奈)のラストの笑顔に変わっていく過程が、唐突な飛躍で分かりづらかったし説得力に欠けるというか。なんかね・・・。
実直で優しい映画にイチャモンつけるのはあまり本意ではないけど、もうちょっと可笑しみを期待していただけに自分としてはややギャップがあったかな、と。。
国分くんをはじめ役者さんたちも脇役を含めて皆がんばっていて良かったのだけど、例えば三つ葉の一世一代の見せ場である「火焔太鼓」も、国分くん落語がんばっててスゴイなぁ、、、止まりとしか感じられないのが、この映画の限界を如実に示しているのかもしれない。
ただ、佐藤多佳子の原作はものすごく読んでみたい気にはなった。
“ことば”がテーマなだけに彼女自身の言の葉で綴られた作品で、直に感じてこの映画の穴埋めをしたいと思います。
あと、「まんじゅうこわい」「火焔太鼓」を通しで見てみたいな。
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深呼吸の必要(2004年・松竹・123分)NHK-BS
監督:篠原哲雄
出演:香里奈、谷原章介、成宮寛貴、金子さやか、久遠さやか、長澤まさみ、大森南朋
内容:沖縄のとある離島。本土とは比べものにならない陽射しが降り注ぐ2月下旬、さときび畑の収穫期恒例のアルバイト“キビ刈り隊”の募集に集まった5人の若者たち。彼らは農家で寝食を共にして35日間で約7万本のさとうきびを刈り取らなければならない。しかし、全くの初心者である5人は慣れない仕事にもたつくばかり。さらに、キビ刈り隊の常連の男の偉そうな振る舞いに5人は苛立ちを募らせていき・・・。
評価★★★★/80点
「言いたくないことは言わなくてもいい」と言うおじいの家のルールに、映画自体までもが素直なほどに従順なのは玉にキズだが、日頃ため息ばかりが先につく自分にとっては一服の清涼剤になったのも確か。
要するにめちゃくちゃイイ映画なんです
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