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2015年9月29日 (火)

夢のシネマパラダイス397番シアター:誰もが必死に生きたあの時

ジョバンニの島

138668403953140977225声の出演:市村正親、仲間由紀恵、柳原可奈子、ユースケ・サンタマリア、北島三郎、八千草薫、仲代達矢

監督:西久保瑞穂

(2014年・日本・102分)BS

内容:1945年。10歳と7歳の兄弟、純平と寛太は、北方四島のひとつである色丹島に父・辰夫と祖父・源三と元気に暮らしていた。しかし、終戦とともに穏やかな島は一変。ソ連軍が島を占拠し、島民の住居まで接収されてしまう。そんな混乱の中、兄弟は美しい少女ターニャと知り合い心を通わせていく。しかし、島の防衛隊長だった父がシベリアの収容所に送られてしまい・・・。

評価★★★★★/95点

杉田成道&さだまさしという「北の国から」の鉄板コンビに加え、オープニングでカンちゃんの赤いほっぺの顔立ちを見て「火垂るの墓」の節ちゃんを想起した時点で、泣かせを狙った見え透いた作戦にそう簡単には乗らないぞと一歩引いた目で見てたのだけど、ものの見事に泣かされたw

しかも「リトル・ダンサー」以来15年ぶりくらいの嗚咽

まずもって北方領土がどのようにロシアに乗っ取られたのかという歴史的実状を描いた物語って映画はもとよりテレビなどでも見たことがなかったので初めて知ることばかりだったし、例えば日本人とロシア人が一時期ともに島で暮らしていたとは全くの驚きだった。しかも島民が樺太の収容所へ送られたり、終戦後にも関わらずあんな過酷な体験にさらされていたとは想像を超えていた。

今は亡き自分の祖父もシベリア抑留体験者だったので、そういう話はほとんど聞くことがなかったけど、映画で描かれた極寒の収容所の情景には胸がしめつけられる思いがした。

そして訪れるカンちゃんの死にとうとうこらえきれなくなっちゃったんだけど、やはり子供の視点から捉えた戦争の悲惨さほど身にこたえるものはないなと今回つくづく思い知らされたね。

その上で重要なファクターになったのが宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」なんだけど、例えば「パンズ・ラビリンス」や「ナルニア国物語」がそうであるように、戦争からの現実逃避の手段として空想ファンタジーが用いられることはままあるけど、それを宮沢賢治の童話が担うというのが目から鱗だった。

しかもどこにでも行ける銀河鉄道の切符が強力な効力を発揮して幼き兄弟の心の拠り所になるとともに映画を一段高みに押し上げていたし、それを表現した映像も幻想的で心に残った。

不死身の叔父さん・英夫が、もともと銀河鉄道の夜は宮沢賢治が亡くなった妹への失意の思いをつづるために書いたんだと言っていたように、あの世との交信というファンタジー要素を存分に持っていた物語だったんだなぁと、ものすごく勉強になったな。宮沢賢治と同じ同郷人としてちょっと誇らしくなった

「死んだ人はみんな天に昇って夜空の星になる。星は無数に限りなく降るように光り、その光に照らされて僕たちは今こうして生きている。」

銀河鉄道の夜はどんなお話なのかと訊かれて、おじいさんになった純平が答える言葉が胸に深く染み渡った。

家族みんなで見てもらいたい映画だね。

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少年時代

8fad94n8e9e91e3 出演:岩下志麻、細川俊之、芦田伸介、大滝秀治、河原崎長一郎、藤田哲也、堀岡裕二

監督:篠田正浩

(1990年・東宝・117分)DVD

内容:第二次世界大戦中、東京から富山に疎開してきた少年と疎開先で出会った少年たちとの友情と別れを描いた物語。昭和19年夏、小学5年生の風間進二は富山に疎開することになった。富山で最初に仲良くなったのは地元の少年たちのリーダー・武だったが、武は学校の級友たちの前では進二に高圧的な態度をとる。しかし隣町で悪童たちに取り囲まれた進二は武に助けられ、2人の間の友情を改めて確認したのだったが・・・。

評価★★★★★/95点

小学校で3回、中学で1回転校を経験した自分にとって、進二の何も考えてなさそうで実は抜け目のない処世術は、分かるを通り越して自分の記憶神経を痛いほどビリビリ震わせる。

それでいて最も映画的な場面をラストにもってくることによって、井上陽水のいろいろ考えてそうで実際抜かりのない歌が、感動を通り越して自分の顔面神経をこれでもかというほど無茶苦茶に震わせる。

そんなズルイ戦法で攻められて、まんまとそれに引っ掛かっちゃった自分は、しかし全く悪い気はしないのだった

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少年H

T0013264p出演:水谷豊、伊藤蘭、吉岡竜輝、花田優里音、小栗旬、早乙女太一、原田泰造、佐々木蔵之介、國村隼、岸部一徳

監督:降旗康男

(2012年・東宝・122分)WOWOW

内容:昭和初期の神戸。洋服の仕立て屋の息子・肇は、胸に“H”のイニシャルが入ったセーターをいつも着ていて、両親と2歳下の妹と楽しく幸せな日々を送っていた。しかし、時代は急速に軍国化の道をたどり戦争へと向かっていき、次第に一家にも暗い影が忍び寄る・・・。

評価★★★☆/70点

原作既読でTVドラマ前後編も見た者からすると、各エピソードをスリムにして要領よくまとめたかんじは否めないのだけど、やはりもともとの原作オリジナルが良いのか、そのメッセージはよく伝わってくる良作に仕上がっていたとは思う。

ただ、各エピソードをスリムにしたといった通り、妹尾一家周辺の登場人物(小栗にしろ早乙女にしろ)や重要エピソードの掘り下げは相当に浅く、ストーリーの流れは散発的で、先にも挙げたフジテレビのスペシャルドラマの印象が頭に残っている者とすればやはり物足りないのはたしか。。

まぁ、降旗康男だけに説教臭いんじゃないかなと穿った見方もしてしまったけど、そこまでじゃなかったので良しとするか。

しかし、それもこれもやはりハジメ君の親父さんの人柄と信念のこもった言葉のなせる業なんだろうね。水谷豊も役柄にピッタリ合っていたと思うし。自分ももし父親になることがあったなら、こういう人になりたいな。

あと空襲シーンに関しては、TVドラマを完全に凌駕していて驚いた。いや、ホントに焼夷弾ってああいうふうに地面に突き刺さってポンッと爆発するんだってことを生まれて初めて目にしたので。それが雨のように降ってくるんだから・・・。

それを見れただけでもこの映画を見た価値はあったと思う。

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一枚のハガキ(2010年・日本・114分)NHK-BS

 監督・脚本:新藤兼人

 出演:豊川悦司、大竹しのぶ、六平直政、柄本明、倍賞美津子、大杉漣、川上麻衣子、津川雅彦

 内容:戦争末期に招集された100人の中年兵たち。誰がどの戦地に向かうかは、上官がクジを引いて決めていた。クジ引きが行われた夜、松山啓太(豊川悦司)は仲間の兵士・森川定造(六平直政)から妻・友子(大竹しのぶ)が送ってきた一枚のハガキを手渡される。フィリピンへの赴任が決まり、死を覚悟した定造は、宝塚への赴任が決まった啓太に、もし生き残ったら友子にハガキを読んだと伝えてくれと依頼したのだった。そして戦争が終わり、わずか6人の生き残りのうちのひとりとなった啓太は友子のもとを訪ねるが・・・。

評価★★★/65点

巨匠の遺作に名作なしとはよく聞くフレーズだけど、観る側としてはキャリアの全盛期の凄さを味わっているだけに、晩年にガクンと作品が尻すぼみになってしまう印象は往々にして拭いきれない。

が、100歳にして大往生をとげた新藤兼人監督の遺作はどうしたことか。

遺作とは思えないほどバイタリティーとパワーに満ちあふれていて、この人は最後の最後まで現役監督だったんだなぁと感慨深くなってしまった。

どんなにツラく苦しく惨いことが襲いかかり、たとえ生き恥をさらそうとも生きて生きて生き抜けというメッセージは深く心に染み渡ってきたし、人の織り成す悲しみを可笑しみの中に描き出し、生きる歓びを伝えようという姿勢にこの御大監督だからこそ語れる人生の含蓄を味わわせてもらった気がする。

人生とは“いとおかし”なものなのだね

しかし、どの映画を見ても同じことを言ってるけど、大竹しのぶはこの映画でも凄まじかった。大竹しのぶが画面に現れるたびに不穏な空気に包まれる凄みといったらハンパない。

戦争という最も悲惨な不条理を前にただ立ちすくんで生きるしかない女の魂の叫びにただただ圧倒されるばかり。

これはオーバーアクトではない。彼女にしかできない全力演技であるとともに女の逞しくしたたかな強さをも体現しているのだ。

なによりガタイのいいトヨエツを背負って歩いてしまうのが何よりの証拠ではないか(笑)。

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キャタピラー

11102001 出演:寺島しのぶ、大西信満、吉澤健、粕谷佳五、増田恵美、河原さぶ、ARATA

監督:若松孝二

(2010年・日本・84分)WOWOW

内容:中国戦線から生きて帰還した黒川久蔵(大西信満)。しかし、その姿は両手足をなくし、顔半分は焼けただれ、耳も聴こえず言葉も話せない、まるで芋虫のようなものだった。そんな久蔵を新聞や周りの村人たちは「生ける軍神」と祀り上げる。久蔵の妻・シゲ子(寺島しのぶ)は軍神に尽くすことはお国のためだと説かれ、献身的に世話をする日々を送るのだが・・・。

評価★★★/60点

戦地で中国人女性を強姦しまくっていた最中に家の下敷きになって四肢を失ってしまった自業自得の男、ところがお国のためによく頑張ったと称えられ3つも勲章をもらって故郷で軍神と崇められる名誉の男、が全く身動きがとれない中で寝床で食べて寝て排泄してセックスするだけの日々を送る無残な男、そしてかつてDVしまくっていた嫁はんに復讐される哀しい男・・・。

寺島しのぶの熱演もスゴかったが、久蔵を演じた大西信満のリアリズムあってこその映画だったように思う。

まぁ、作品全体としては、おそろしく重く、そしておそろしく倦怠感を覚えてしまう退屈な映画だったけど・・。

「実録・連合赤軍」(2007)はあと20分延ばしてもよかったけど、今回のはあと20分短くしてもよかったな。。

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美しい夏キリシマ

Kiri 出演:柄本佑、小田エリカ、石田エリ、香川照之、左時枝、牧瀬里穂

監督:黒木和雄

(2002年・日本・118分)岩波ホール

内容:1945年夏の霧島地方。15歳の中学生・日高康夫は、満州から霧島の祖父母の家に戻り、跡取りとして暮らしていた。村には本土決戦に備え日本軍が駐屯し、村の人々の生活にも戦争の影は忍び込んでいた。夫を亡くした日高家の小作人イネ(石田えり)は駐屯兵(香川照之)との情事に溺れ、一方、日高家の女中はる(中島ひろ子)は片足を失った帰還兵(寺島進)のもとに複雑な心境になりながらも嫁いでいく。また、康夫もかつて空襲で親友が爆死するのを目の当たりにし一人生き残ったことに罪悪感を抱いて苦悩し続け、すっかり心を閉ざしていたのだった・・・。

評価★★★★/80点

戦争というバカでっかい罪から雨後のタケノコのごとく生み落とされる罪過の数々は、ほんの小さな日常にまでも染み出してくる。

そして、それらを大きく包み込み静かに見定めるキリシマの自然と風景。

その対比が何よりも罪で残酷だ。

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カンゾー先生(1998年・東映・129分)NHK-BS

 監督:今村昌平

 出演:柄本明、麻生久美子、ジャック・ガンブラン、松坂慶子、世良公則、唐十郎、小沢昭一

 内容:昭和20年、瀬戸内の田舎町。開業医の赤城風雨は何でもかんでも肝臓炎だと診断するので「カンゾー先生」と揶揄されていたが、患者のために町を走り回り無償でも診療してくれる人望家でもあった。看護婦として雇うことにした娼婦のソノ子やモルヒネ中毒の医者、酔っ払い住職たちの協力を得て、赤城は肝臓炎撲滅のための研究に没頭していく・・・。

評価★★★/65点

太平洋戦争の敗戦直前とは思えないような大らかな生の営みが今村昌平お得意の重喜劇ならぬ軽喜劇調で描かれていてサクサク見られる。

なにより生命力あふれる明朗な女性像が印象的で良い。まぁ、銃後の若い女性の役割がタダマンていうのもすごい話だけどね

ただ、原爆のキノコ雲までコメディタッチの俎上に乗せる徹底ぶりには若干引き気味w

ゆで卵はさらに引き気味ww

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鬼が来た!

Oni 出演:チアン・ウェン、香川照之、チアン・ホンポー、ユエン・ティン、澤田謙也

監督・脚本:チアン・ウェン

(2000年・中国・140分)2002/05/07・イメージフォーラム

評価★★★★★/100点

内容:第2次世界大戦末期の中国のとある小村を舞台に、ひょんなことから日本兵を匿うことになってしまった村人の困惑と日本兵との奇妙な交流を、ときにユーモラスに、そして衝撃的に描いた問題作。1945年冬の旧正月直前、中国華北地方の寒村・掛甲台村。深夜、青年マーのもとに男が突然現れ、2つの麻袋を押し付け、大晦日までそれを預かるように脅して去って行った。そして、その麻袋の中に入っていたのは、日本兵・花屋小三郎と通訳の中国人・トンだった。マーはあわてて村の長老たちに相談し、結局約束の日まで2人をかくまうことになるが・・・。2000年カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞したが、中国では上映禁止処分になっており、チアン・ウェン監督も映画製作活動を数年間禁止されたが、07年に新作を発表し、ベネチア映画祭にも出品された。また、チアン・ウェンがこの映画を撮ろうと思い立ったのは、1997年に靖国神社の一角で花見をしていた旧日本軍の兵士と話をしたところ、彼らが中国での侵略行為に何の罪も感じていないことに驚愕したことがきっかけになっているという。

“初めて分かった。無条件降伏ってどういうことなのか。。”

自分は今まで一度も戦争映画に降伏したことがない。

涙を流して敗走したことはあっても、両手を挙げて降伏したことはなかった。

しかし、この映画で自分は初めて降伏した。

しかも両手を挙げる気も失せ投降することもできず、ただじっとその場にどっかと座り込むことしかできなかった。

人は完膚なきまでの完敗を喫したときに思わず笑みを浮かべるというが、まさにそんな余韻を味わわされたのだ。

話は脱線するが、映画公開当時に新聞でこの映画の紹介記事みたいなのを読んだことがあって、その中で日本、中国のスタッフの間で歴史観や映画の中の描写などで様々な衝突があり、撮影現場も大変だったという説明がされていたのを覚えている。

そしてつい先日、この映画に出演していた香川照之の「中国魅録/鬼が来た!撮影日記」という本を読んだのだが、これがまた映画に負けず劣らずもの凄いのである。

香川さんはこの中で、「この作品の狂気が100だとすれば、撮影現場の狂気は1000くらい凄いものだった」と述べている。

まさに撮影現場も文字通りの生の戦場だったのだ。

狂気から狂気は生まれる。狂気を生み出すには自分が狂気に染まるしかない。

その点で、監督・主演を務めたチアン・ウェンの狂気と闘気と意気と血気に勝るものはない。

スクリーン全体からもそれがよく伝わってくるのだが、ここでも面白いエピソードがあって、香川さんはチアン・ウェンのことを“天皇”と呼んでいたというのだ。別な映画(「ヘブン・アンド・アース」)では中井貴一がチアン・ウェンのことを“皇帝”と呼んでいたのも有名な話で、黒澤明が黒澤天皇と呼ばれていたのと同様な呼称であろう。

恐るべしチアン・ウェン。

しかしこの映画、あまりにも観ている人が少なすぎる。

この映画を周りに広めるくらいの闘気は自分も出そう。

2015年9月28日 (月)

夢のシネマパラダイス512番シアター:エキセントリックな恋がしたい♪

世界にひとつのプレイブック

Poster_2出演:ブラッドリー・クーパー、ジェニファー・ローレンス、ロバート・デ・ニーロ、ジャッキー・ウィ―ヴァ―、クリス・タッカー、ジュリア・スタイルズ

監督・脚本:デヴィッド・O・ラッセル

(2012年・アメリカ・122分)WOWOW

内容:妻の浮気現場を目撃して相手の男を病院送りにしたあげく、自分も精神病院入りを余儀なくされたパット。数か月後ようやく退院したものの、接近禁止令の出ている妻といまだにやり直せると思い込んでいるパットは、相変わらず突然キレては暴走しかけることもしばしば。そんなある日、友人の家に招かれたディナーの席でティファニーと出会う。彼女もまた、警官だった夫を事故で亡くして以来、心に問題を抱えていた・・・。

評価★★★☆/70点

高飛車でヒステリックで自己チューで男勝りな最恐肉食系女子ティファニーのキツい性格が元プロゴルファーの古閑美保と同じに見えた途端、あーこりゃ扱いにくくてダメなタイプだと思っちゃったんだけど

だって「アンタはヘタレの根性なしよー!」ってわめき散らす女はどう考えても無理っしょw

ところが驚いたことにこの古閑美保をジェニファー・ローレンスが演じると、とてつもなく魅力的に見えてしまうのだから恐れ入る。

ジョギングコースに横入りしてくるストーカーもどきといい、ダンスでの胸騒ぎの腰つき♪といい、ムチムチしたジェニファーのエロい、、もといジェニファーの吸い込まれそうな魅力にメロメロになってしまった

このジェニファーにだったら押し切られてもいい!って、パットも結局あのフェロモンに押し切られちゃったわけだし

でも、旦那を亡くしたショックから11人の男と寝てしまった武勇伝を持ちながら、おそらく初めて夜の誘いを断られたであろうショックと妻への一途すぎる想いにあふれたパットの純粋な魂に触れたことから逆にホの字になってしまったティファニーと、思ったことはすぐ口に出してしまう情緒不安定なパットが、ストレートに感情をぶつけ合い不器用ながらも向き合う様は、なんか見ていて清々しいというか羨ましくさえあった。

自己表現が下手くそな自分にとっては、なんかちょっと生きる勇気をもらえたような映画だったかな。

デ・ニーロも久々に良かったしね(笑)。

夜中に親の寝室でわめく息子と実は1番イカレているダメ親父のどうでもいい諍いは笑えて面白かった。

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娚の一生(2014年・日本・119分)WOWOW

 監督:廣木隆一

 出演:榮倉奈々、豊川悦司、安藤サクラ、前野朋哉、根岸季衣、濱田マリ、徳井優、向井理

 内容:都会で公私ともに疲れ果て、故郷の田舎で染色業を営む祖母の家に戻ってきた堂薗つぐみ。しかしほどなく祖母が病死、つぐみは残された家を一人で守っていこうと決意するが、突然見知らぬ男が家のはなれに住み始めた。50代の大学教授で海江田と名乗る彼は、祖母のかつての教え子で、勝手に住み始めたのも祖母の許可を得てのことだという。こうして奇妙な同居生活が始まるが・・・。

評価★★☆/50点

わざわざ女偏に男と付ける“娚”という字を見て、アブノーマルでいかがわしいイメージを抱いていたのだけど、いざ見てみたらいたってノーマルだったというオチ。

いや、ちょっと待てよ。家の離れとはいえ、20代の女のコが一人暮らししている同じ敷地内に見知らぬオッサンが勝手に住み始めたら周りの人々は、大丈夫なのか!?と心配するのがフツーの感覚じゃないのか?

にもかかわらず知人親戚はては彼女の母親に至るまでもが普通のことのように受け入れているではないか。

絶っっ対おかしいってコレw!というそもそもの設定自体に入っていけなかったなぁ。。

で、20以上も離れている年の差も禁断要素にはならないらしく、皆がさっさと結婚しぃーやと応援しまくって、それに流されちゃった女のコもいつの間にかオッサンにホの字に(笑)。なんだこの展開・・・。

日本の少子化問題と婚活問題は映画にも影響を及ぼしていたw!?

田舎のスローライフな雰囲気はキライじゃなかったけど、ありえない感&理解できない感の方が上回ってイマイチだった。って、これ少女漫画が原作なのか。。なんか納得w

唯一、自転車の使い方だけは良かった

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東京タワー(2004年・東宝・126分)仙台フォーラム

 監督:源孝志

 出演:黒木瞳、岡田准一、松本潤、寺島しのぶ、宮迫博之、岸谷五朗

 内容:売れっ子CMプランナーを夫(岸谷五朗)に持ち、自身も青山でセレクトショップを経営している詩史(黒木瞳)は、3年前、店を訪れた友人・陽子(余貴美子)が一緒に連れて来た息子の高校生・透(岡田)と一瞬で恋に落ちた。それから関係は続き、現在も東京タワーを見渡せる大学生になった透のマンションで熱く愛し合っている。一方、透の高校時代からの友人・耕二(松本潤)も、35歳の人妻・喜美子(寺島しのぶ)と関係を持っていた。。直木賞作家・江國香織の同名小説の映画化。

評価★★/40点

“ダサい臭を小洒落メイクで塗り消そうとするも、味わいまで消してしまったという恐るべき一品。”

まるでレストランの入口にあるロウでできた料理見本みたいなかんじ。

見た目はいいのに味が全っ然しないの、この映画。

いまどき昭和の代名詞とも言うべき東京タワーをおもいっきり出してきたのは、オバさま連中と活きのいいフレッシュボーイをつなぐための象徴とするためかどうかは分からんが、とにかく情念に駆られたかのようなこだわりで東京タワーを美しく撮りまくる。

たぶんこの監督、TVゲームのグランツーリスモ好きだと思うな(笑)。そんな映像。

でもって、街はキレイに撮れてても、肝心の女と男が描けていないという・・・。情念使うところが違うっての。甘っま~いセリフをただタレ流せばいいってもんじゃないっしょ。

ゲーム脳になってないと見られへんなこれは(笑)。

しかし、詩史さんよ。「東京の雪は嫌い。溶ける時つたなくて侘しいから。」だとコラ!おいおいおいおい、そしたら岩手さ来い!春まで雪が溶けなくてあきれて声も出ないから。。ガクッ・・。

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電車男

6a00d8341bfb8d53ef00e54f75493388338 出演:山田孝之、中谷美紀、国仲涼子、瑛太、佐々木蔵之介、西田尚美

監督:村上正典

(2005年・東宝・101分)DVD

内容:彼女いない歴22年のシステムエンジニアのその青年は、アキバでグッズを漁るのが趣味の筋金入りのオタク。そんなある日、彼は電車の中で中年のオヤジにからまれていた若い女性を助けた。そして、美人の彼女にすっかり心奪われた彼に、後日彼女からお礼にとエルメスのティーカップが贈られてきたからさあ大変!混乱した彼は、とりあえずインターネットの掲示板に“電車男”のハンドルネームで助けを求めるのだが・・・。

評価★★★/60点

1クールのTVドラマだと3ヶ月という長丁場が、電脳汁空間で生み出されたゴーストを現実世界に導いて共感させてくれるだけの時間的蓄積をもたらすが、2時間サクサク進んでいくおとぎ話を見せられると、アキバオタクの絶えなる妄想の単なる視覚化としか見えなくなってくる。。

特に中谷美紀=エルメスの“きれいなお姉さんは好きですか”最強バージョンっぷりには憧れを突き抜けてお笑い天然キャラに見えて笑うしかなかったかんじ。

そこまでして過剰ともいえる普遍性を与えなければならなかったのか少し疑問に思うところもあったけど、、true storyだからそんなの関係ないのか・・。ってあり得ねぇ~~!!

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最後の恋のはじめ方(2005年・アメリカ・118分)WOWOW

 監督:アンディ・テナント

 出演:ウィル・スミス、エバ・メンデス、ケビン・ジェームズ、アンバー・ヴァレッタ、ジュリー・アン・エメリー

 内容:デート・コンサルタントとして世の男性に恋の手ほどきをするヒッチ。しかし、サラと出会ったことから恋愛理論が狂いはじめ・・・。恋愛の達人が自分の恋愛に悪戦苦闘するさまを軽妙なタッチで綴ったロマコメ。

評価★★★★/80点

“恋ってのはどこか「狂う」ものなんだけど、この映画はその不器用な暴走っぷりとドジでお人好しな愛嬌っぷりでラブコメのバランスをうまく取った映画初出演ケビン・ジェームズのコメディセンスっぷりに尽きる。”

ウィル・スミスは映画のトリートメント的な働きをしていたかんじ。過去の恋で心に傷を負い、2度と女性を愛さないと誓っているわりにその影の部分が全く見えてこないのが玉にキズだけど、そういう映画としての負をほとんど感じさせない軽妙な演技でうまく進行してまとめてくれたと思う。

しかし、やはり何といってもアルバート役のケビン・ジェームズだね。

まぁ、とにもかくにも最初の恋だろうが最後の恋だろうが、アタックナンバーワンというルールだけは永久不変ってことなんだなぁ。。

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25年目のキス

78 出演:ドリュー・バリモア、デビッド・アークェット、ミシェル・ヴァルタン

監督:ラジャ・ゴズネル

(1999年・アメリカ・107分)仙台セントラル劇場

評価★★★☆/70点

 

内容:灰色の高校生活を送った新米新聞記者、ジョジーが高校生の実態をリポートするため高校に潜入。自分の高校生活を取り戻そうと悪戦苦闘し、優しい教師に惹かれていくが・・・。

“製作総指揮兼任という肩書きを肩書きで終わらせなかったドリューの心意気に思わず引きずりこまれてしまう”

25歳のジョジー(ドリュー・バリモア)が高校に潜入して女子高生になりきるのだけど、周りの17歳の女子高生たちと比べて確実に老けて見える&しかもハンパなく痛く見えてしまうところが、製作総指揮もつとめたドリューの心意気が感じられて面白い。

ボサボサ髪でめったに洗髪しないバイ菌ジョジーを嬉々として演じるドリューの女優魂にも感服。

10代でアル中とヤク中をダブルで経験し、それを乗り越えてきたドリューの過去を笑い飛ばせるほどの太っ腹精神?あるいはセルフパロディなのかしら?

しかし高校生活に慣れ、昔の自分から脱皮していくにつれてキュートで美人なお姉さまに見えてくるのだから大したもんだよ。

でも、もうちょっと痩せた方がよくないか(笑)?

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50回目のファースト・キス

50kiss 出演:アダム・サンドラー、ドリュー・バリモア、ロブ・シュナイダー、ショーン・アスティン、ダン・エイクロイド

監督:ピーター・シーガル

(2004年・アメリカ・99分)MOVIX仙台

評価★★★★/80点

 

内容:自動車事故に遭い、短期記憶喪失障害という1日分の記憶しか持てなくなった女性ルーシー。そんな彼女に、水族館で獣医をしている元プレイボーイのヘンリーは毎日恋に落ち、イチからアタックを始め、ハワイの明るい風景の中で毎日ファースト・キスを交わす。そんな2人を周りの人々は温かく見守りつづけるのだった・・・。精神障害という重いテーマを、少しの切なさをにじませながら、軽やかでハートフルに描いたロマンチック・コメディ。

“「メリーに首ったけ」と双璧を成すお下劣コメディなのに、こんなに純粋なラブロマンスは見たことがない。これぞ純度100%のラブコメ映画!”

アダム・サンドラーって「ウェディング・シンガー」以外はあまり印象に上ってこないというか、安っぽいコメディ俳優というかんじが強かったのだけど、これ見て完全に見識を改めたかも。

そしてドリュー・バリモア。バットを持たせたら豹変することだけは肝に銘じたけど、ハワイの陽気で開放的な風に包まれたドリューがこれまたイイ。。

もともとの舞台設定はシアトルだったらしいけど、ハワイにして大正解だったね。

それにしても1番ビツクリしたのが、「LOTR」の真の勇者、ショーン・アスティンがステロイド中毒のキン肉マンになってたこと。LOTRではドラクエのトルネコばりの体型だったのに・・。

2015年9月26日 (土)

夢のシネマパラダイス231番シアター:ジャンゴ繋がれざる者

ジャンゴ 繋がれざる者

T0014006q出演:ジェイミー・フォックス、クリストフ・ヴァルツ、レオナルド・ディカプリオ、ケリー・ワシントン、サミュエル・L・ジャクソン、ドン・ジョンソン

監督・脚本:クエンティン・タランティーノ

(2012年・アメリカ・165分)WOWOW

内容:1858年、アメリカ南部。賞金稼ぎのドイツ人歯科医キング・シュルツは、お尋ね者の賞金首の顔を知る黒人奴隷ジャンゴを買い取る。そしてその腕を見込んだシュルツは、ジャンゴの生き別れた妻ブルームヒルダを探すことを約束する。やがて、彼女が大農園を経営するカルビン・キャンディに売り飛ばされたことを突き止めるのだが・・・。たジャンゴとシュルツ。2人はキャンディに近づくため、ある周到な作戦を準備するのだが・・・。

評価★★★★★/90点

なんとタランティーノとはキル・ビル以来10年ぶりの邂逅である。

あれっそんなに見てなかったっけというかんじだけど、しかし今回久方ぶりに見て驚愕した。

タランティーノのまるで円熟を極めた噺家さんのような淀みのない語り口に大いにのめり込んでしまった。

見終わっても体内時計的には1時間45分しか経っていない印象で、本来ならそれくらいの尺が適当な作品なのだと思う。じゃあ、残りの1時間は何かといえば本筋にくっついてくるどうでもいいような枝葉末節であり、しかもこれがいちいち面白いのである。

単純明快な復讐劇を2時間45分もの大作に仕上げてしまうのも並々ならぬことだけど、今までならその脱線ぶりにはタランティーノ特有のくどさがあった。

しかし、今回はそういうしつこさも全くなく、ツルン!と心地よく完食できてしまう。濃密なトマトソースに生のバジルの葉とありったけの鷹の爪を加えたようなどぎつい見た目からは想像できないくらいの美味なるスパゲッティウエスタンに舌鼓を打った。

味を成す細かなディテールの計算しつくされたこだわりーアメリカの大自然を写し取ったロケーション、口八丁手八丁の会話劇、血湧き肉躍るガン・アクション、ハマりまくりの役者陣、キメの構図を熟知したカメラーは言わずもがな、なんといっても最強だったのが音楽♪

ヒップホップにブルースにクラシックにあらゆるジャンルの音楽が適材適所で流れるハイセンスな選曲にはただただ脱帽するばかり。サントラ買いに行こっと(^^♪

しかし、タランティーノを甘く見てたなぁ~、こんな強烈で完璧な映画を撮ってくれるなんて。10年も離れてしまって後悔(笑)。

あとは役者陣にも触れておきたい。

これまた恥ずかしながらクリストフ・ヴァルツをこの映画で初めて見たのだけど、ケレンとユーモアと胡散臭さが混然一体となった存在感は完全に主役を食っていて、いんぎんな物言いで口から出まかせを操り、とぼけた顔で物事の本質を語るシュルツに引き込まれてしまった。

このドイツ人が豪快に撃たれてブッ飛んだ時点で映画は幕を引いたようなものといってよく、その後の大銃撃戦は添え物みたいなもので、それくらい彼の魅力は際立っていたと思う。

もち気狂いディカプリオも腹黒サミュエル・L・ジャクソンもお茶目な(ラストだけw)ケリー・ワシントンも良かったよ。

あれっ、主役は、、えーと、、あっ!ジェイミー・フォックスね1番影が薄いw

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トゥルー・グリット

3121 出演:ジェフ・ブリッジス、マット・デイモン、ジョシュ・ブローリン、バリー・ペッパー、へイリー・スタインフェルド

監督・脚本:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン

(2010年・アメリカ・110分)WOWOW

内容:父親が雇い人のトム・チェイニーに殺されたとの報せを受けた14歳の少女マティ・ロス。彼女は自ら遺体を引き取りにオクラホマ・フォートスミスへ向かうが、犯人のチェイニーは法の及ばないインディアン領に逃げ込んだ後だった。そこでマティは、隻眼で酔いどれの連邦保安官コグバーンに犯人追跡を依頼。別の容疑でチェイニーを追っていた若きテキサス・レンジャーも加わり、チェイニー追跡の旅が始まる・・・。1969年のジョン・ウェイン主演作「勇気ある追跡」のリメイク。

評価★★★★/80点

コーエン兄弟の描く西部劇は一筋縄でいくシロモノではないだろうなと身構えてはいたけど、父を殺された娘が敵討ちをするという筋立ては意外に単純。

しかしだ。早撃ち対決、馬車を追っかける悪党一味、酒場と女、襲いかかってくるインディアン、お尋ね者と賞金稼ぎの因縁合戦など西部劇の定番シーンというべき見せ場をことごとくスルーしていくのがコーエン流。

荒野と馬と保安官とライフルという必要最低限のフォーマットがあればコーエン兄弟には十分なのだった。

ありていにいえば、西部劇の体をなしたロードムービーというかんじで、しかもその主体は延々とつづく会話劇なのだけど、これがすこぶる味があって引き込まれてしまうし、しかもその会話劇の7割方がただのムダ話というのがコーエン節炸裂というかんじで面白い。

これはつまるところ、それだけキャラ立ちがしっかりしているということでもあると思うのだけど、なにせ主人公は14歳の女のコ。

荒れ馬を乗りこなし死体安置所で平気で寝れてしまう強心臓の持ち主であることはもとより、黒柳徹子も真っ青のマシンガン口撃で西部の荒くれどもをねじ伏せるさまは痛快そのもの。

しかして、このかわいくない女のコに対する荒くれ男の武器がお尻ペンペンというのが大いに笑わせてくれる。

また、隻眼の保安官(ジェフ・ブリッジス)にしろテキサスレンジャー(マット・デイモン)にしろ表看板を張るようなキャラではない胡散臭さがまた可笑しげで、いい年こいたオッサンどもが14歳の少女の執念にズルズルと引っ張られていくのも滑稽だし、彼らが追っかけるチェイニーも悪役らしからぬ人物造型で、そういうところでもことごとくハズしてくるのだから恐れ入る。

しかし会話劇を表とするならば、一方で人の生き死にの生々しさを躊躇なく描いていく演出が裏の顔としてあり、それは皮膚感覚にまで届く凄みがある。

カタルシスも何もない結末とあわせて、なにか「ノーカントリー」(2007)に通じるところもあり、暴力の果ての虚しさがジワジワと尾を引いていく。

思えば「ノーカントリー」は80年代を舞台にした西部劇というべきテイストの作品だった。

オリジナル作はジョン・ウェインの「勇気ある追跡」(1969)だけど、「ノーカントリー」からつづくテーマ性という点では、西部劇の終焉を描いたイーストウッドの「許されざる者」(1992)のコーエン流焼き直しとみた方がいいのかもしれない。

なにはともあれ、噛めば噛むほど味の出る高品質な映画だった。

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シェーン

Shane 出演:アラン・ラッド、ジーン・アーサー、ヴァン・へフリン、ブランドン・デ・ワイルデ

監督:ジョージ・スティーブンス

(1953年・アメリカ・118分)NHK-BS

評価★★★★/80点

内容:1890年初夏。ワイオミングの開拓地の草原にふらりと1人の旅人シェーンがやって来る。開拓者のリーダー、スターレット家に立ち寄ったシェーンは、一家の少年ジョーイと仲良くなる。ジョーイの父ジョーは、土地をめぐって対立している牧畜業者ライカーの圧迫に悩まされていたので、冬までここで働いてくれないかとシェーンに依頼。シェーンはこれを聞き入れるが・・・。

“主題曲が流れる中、雄大な背景が映し出されるオープニングクレジットから一気に映画の世界に入っていける。「スター・ウォーズ」の冒頭に通じるものを感じた。とにかく最初のオープニングでこの作品はめちゃめちゃイケてるということを確信できる。”

オープニングがシェーンがやって来る大俯瞰シーンなら、ラストも同じく俯瞰によるシェーンが去っていく遠景ショットなんだよね。これは上手いと思う。

とにかくオープニングの最初のショットにもの凄く魅かれちゃう。だって次のショットが男の子ジョーイがシェーンを見つけて、家に走っていって、もう次のショットでシェーン到着っしょ。考えてみると、これってスゴイ早業でっせ。

普通ならスターレット家の暮らしぶりから入っていきそうなものを、ものの数分で人物配置をパッと提示して済ませちゃうんだから。なのに観てる方は何の違和感もなく映画に入っていける。

その理由として、オープニングの悠々たるショットの持つ意味合いというか効力は相当大きいものがあると思うわけで。オープニングシーンでこの映画の成功は決まったといっていいのではないかなと。

ところで、シェーンは死んだのかということについては、学生時代に授業で教授が言ってたところによると、うろ覚えだけど、この映画は傑作であるだけでなく神話的な映画なのだと言ってたっけ。

ようするにシェーンは神話における神々の側の存在で、それが下界に降りてきて人間の手助けをする。そして苦難に遭いながらもまた神々の世界へ戻っていくという図式。

そんな見方フツーしねえだろと思いつつw、今思い返してみるとナルホドなと思ったり。

要するに死んでないってことなのかな。。

まぁ人それぞれの見方があるのも一興があって良いと思います。

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マーヴェリック(1994年・アメリカ・127分)劇場

 監督:リチャード・ドナー

 出演:メル・ギブソン、ジョディ・フォスター、ジェームズ・ガーナー

 内容:1870年代、詐欺師のマーヴェリックと、美人詐欺師のアナベル、そして保安官のゼインは様々な妨害を経て、史上最大のポーカーゲーム大会へ出場するが・・・。1960年代の人気TVドラマを映画化したコメディ西部劇。

評価★★★/60点

ほとんど全てのキャラが浮かれすぎているというのはいかがなものか。それゆえ肝心のポーカー場面にも緊迫感など微塵もなく、魅力に欠ける。

「スティング」にはなれなかったな。

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ぺイルライダー(1985年・アメリカ・105分)NHK-BS

 監督:クリント・イーストウッド

 出演:クリント・イーストウッド、キャリー・スノッドグレス、マイケル・モリアーティ

 内容:ゴールドラッシュに沸くカリフォルニア。大鉱山主のラフッドは、手作業で砂金を掘っている開拓民たちを、金の豊かな谷から追い出そうと無法な圧迫を加えていた。そんな頃、開拓民の娘ミーガンの祈りに応えるかのように、牧師の格好をした流れ者が谷に現れる。開拓民たちは不思議な力を持ったこの男をプリーチャーと呼んで信頼を寄せる。そして、男はラフッドに戦いを挑む。。

評価★★★★/75点

“近すぎるっちゅうねん!”

ラストのプリーチャーとストックバーンの対決のシーンでプリーチャー近づきすぎ!

相手と2,3歩しか離れてないやん。

普通は砂塵巻き上がる中、画面の両端に2人が向かい合って緊迫感出すとかするのに、ズカズカ寄ってくんだもん。まあ、プリーチャーは銃をすでに手に持っていたからストックバーンが身動き取れなかったというのもあるけど。

しかしそこで銃をいったん腰に戻して決闘に臨もうってのがまたシブいというか超クールというか。とにかくあれだけの至近距離での早撃ち決闘は初めて見た。「椿三十郎」の洋画版ってか。。

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勇気ある追跡(1969年・アメリカ・129分)NHK-BS

 監督:ヘンリー・ハサウェイ

 出演:ジョン・ウェイン、キム・ダービー、グレン・キャンベル、ロバート・デュバル、デニス・ホッパー

 内容:父親を殺された少女マティは、凄腕の名保安官コグバーンを雇って犯人の追跡を始める。。。J.ウェインは本作で念願のアカデミー主演男優賞を受賞。

評価★★/40点

ジョン・ウェイン映画の既定の枠を超えるような映画としての勇気が皆無。

しかしその勇気が無かったからこそジョン・ウェインにアカデミー賞をもたらしたともいえる、、そんな映画です。

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クイック&デッド(1995年・アメリカ・105分)劇場

 監督:サム・ライミ

 出演:シャロン・ストーン、ジーン・ハックマン、ラッセル・クロウ、レオナルド・ディカプリオ

 内容:年に一度、12万3千ドルの賞金を賭けた早撃ちトーナメントを控えた西部の町に現れた女ガンマンのエレン。彼女の本当の目的は、トーナメントの開催者へロッドに殺された父親の仇を討つことだった。

評価★★★/65点

味も素っ気もないなんとも単純明快なストーリーになんとも贅沢なトッピング。

なんかアメリカの寿司バーに出てくるスシみたい。

そんでこれがまた何と言葉で形容すればいいのか分からん味なのよね・・

2015年9月24日 (木)

夢のシネマパラダイス223番シアター:私、ワイヤーに縛られるのが好きなんです・・!?

グランド・マスター

Poster出演:トニー・レオン、チャン・ツィイー、チャン・チェン、マックス・チャン、ワン・チンシアン

監督:ウォン・カーウァイ

(2013年・香港・123分)WOWOW

内容:1930年代の中国。北の八卦掌の宗師(グランド・マスター)・パオセンは北と南の流派統一を進めていたが引退を決意し後継者を探していた。そして、南の詠春拳の使い手・イップ・マンを宗師に指名した。しかし、パオセンの一番弟子・マーサンはこれに反発、さらにパオセンの娘で奥義六十四手を使えるルオメイも後継に名乗りを上げる・・・。ブルース・リーの師匠としても知られる伝説の武術家・イップ・マンの波瀾の人生を描く歴史カンフー・アクション。

評価★★☆/50点

ウォン・カーウァイ作を約10年ぶりに鑑賞。

で、10年ぶりに思い出した。

この監督の撮る映画の筋を追うのは野暮なことだと(笑)。

ため息の出るような映像世界に浸り、美しい女優に耽溺することこそがカーウァイ映画の醍醐味なのだと。

しかし物語がないと安心できない自分は、まったりとした淀みのある空間に身をゆだねればゆだねるほど行き場のない倦怠感に襲われていつもなにか乗り切れないのだ・・・。

で、今回もそう。。

絵面だけはホレボレするような品のある映像美で彩られているのだけど、寄りとスーパースローの多用だけで成り立つアクションシーンは重力もスピード感も全く感じられず、、こんな心躍らないカンフー映画見たのは初めてかも。

活劇としてのカンフーアクションを見たかった身としては正直ツマラなかった・・。うーん、、同じのをチャン・イーモウに撮らせてたらどうだったんだろうww

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グリーン・デスティニー

Image11 出演:チョウ・ユンファ、ミシェル・ヨー、チャン・ツィイー、チャン・チェン

監督:アン・リー

(2000年・米/中・119分)東京国際映画祭

評価★★★★★/100点

内容:剣の英雄たちが群雄割拠する時代、天下の名剣“グリーン・デスティニー”(碧名剣)の唯一の使い手としてその名を轟かせるリー・ムーバイ(チョウ・ユンファ)は、ムーダン山での瞑想修行を切り上げ、女弟子ユー・シューリン(ミシェル・ヨー)のもとへやって来る。ムーバイは、荷送の警護で北京に行くシューリンに、彼の分身であるグリーン・デスティニーをティエ氏に届けるように頼む。しかし、その途端に何者かの手によって盗まれてしまう。2人は謎めいた貴族の娘イェン(チャン・ツィイー)を疑うのだが・・・。19世紀の中国を舞台に、秘剣をめぐる戦いと2組の男女のロマンスとを絡めて描いたアクション史劇。「マトリックス」のアクション演出で一躍脚光を浴びたユエン・ウーピンがアクション監督を務めている。

“マトリックスの後にコイツ、マトリックス・リローデッドの後に「HERO」とまるで機を見計らったように本場ハリウッドに刺客を送り込む中国。なかでもこいつは最高の刺客!”

そしてコイツはこう豪語している、、、「こっちの方が本場なんじゃい!」と。

マトリックスももちろん面白かったし、ストーリーの発想力ではコイツよりも上なのだが、総合力ではコイツの方に軍配をあげたい。

香港映画が香港映画たるゆえんであるところのお得意のシンプルな筋立てをベースに、十八番の武侠世界を見事に描いてくれたと思う。

そしてアクションも見事というほかない。完全に気に入りますた。

娯楽から芸術(ここでいう芸術とは特に絵画としての空間芸術)に昇華する一歩手前の境界線上を、まるでしなった竹林の上を駆け抜けるごとくこの映画は疾駆している。

あくまでエンタメの領域にとどまっている所が個人的にはツボにハマッタかんじ。

この境界線を越えちゃったのが「HERO」だと思うのだけど、個人的にはダメなんだよね、ああいうのって。。

やはりシンプル・イズ・ザ・ベストかつ芸術に昇華してしまう直前にあるエンタメ映画ほど強力なものはないと思う。そこらへんの微妙なバランスがね、難しいんだけど、この映画はそこが絶妙だった。

ま、あくまで自分の好みってだけのことだけど。。

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HERO

S2038134_2 出演:ジェット・リー、トニー・レオン、マギー・チャン、チャン・ツィイー、ドニー・イェン

監督:チャン・イーモウ

(2002年・香港/中国・99分)MOVIX仙台

内容:統一前の戦乱の中国。後に始皇帝となる秦王のもとに、無名(ジェット・リー)と名乗る一人の男が現れた。秦王を狙う3人の刺客を倒した無名は謁見を許され、槍の達人・長空(ドニー・イェン)、愛し合う男女の刺客・残剣(トニー・レオン)と飛雪(マギー・チャン)、、、彼らの最期の姿とその経緯を話し始めた。しかし、そこに嘘があることを秦王に見抜かれた無名は、やがてまったく別の物語を語り始める。はたして無名が国王に謁見した真の目的とは!?チャン・イーモウ監督が、ジェット・リーらアジアのスターを集めて作り上げた壮大な歴史エンタテイメント。

評価★★☆/45点

正直がっくり。

そもそも1時間39分という尺に5人もの主要登場人物のエピソードが収まりきれるのかという疑問は持っていたのだけど、予想以上にハチャメチャでもう何と言えばよいのか・・・。

恋人同士の残剣と飛雪なんて意見が違っただけで斬り合いをしちゃうのかよっ!みたいな。。アメリカ映画でいったら恋人同士が銃で撃ち合いをするようなもんだろ。

もちろん残剣、飛雪それぞれのキャラの描き込みがもっと深ければ観てるこっち側としても楽に受け入れられると思うのだけども、なにしろ各キャラの描写が大甘でお話にならない。

ま、そもそも話の構成の仕方からして大失敗でしょこれ。

黒澤の「羅生門」のマネなんかしなくたっていいんだよ、いちいち。

中国とか香港映画、しかも武侠ものとくればもうシンプルでいいのよシンプルで!ある意味それが中国語圏映画の基本だし、強みじゃないスか。それをわざわざ背伸びしてごちゃごちゃかき混ぜるなんて愚の骨頂っしょ。

しかも色分けされた各エピソードがゲキ浅ゲキ薄で全然話の構成が生きてない。こんな浅っさーい映画観たのも久しぶり。

そう感じたのはアクションの動きも一役買っちゃってるんだよなあ・・・。

ほとんどスローモーションだもん。速さが全くなくて、それだけで鈍重になっちゃってるばかりか映画全体まで引きずられてそう見えちゃうんだよね。

雑誌やパンフレットで戦いのシーンが載ってるのを見ると、なんか凄そうだなと思っちゃったけど、何のことはない、単に一枚絵としては素晴らしいだけで、それが動き出すとどうってことはなかったというかんじ。

一枚絵として見るともの凄く美しく素晴らしい場面が多いのは確かなんだけども。

というわけで、もうホントがっくりきてたのだけど、チャン・イーモウ監督のインタビュー記事を目にしてまたさらにガックリ。。

監督がのたまうところによると、「興行的に当たる映画を最初から意図して作ったのだ。そのため上映時間は約1時間半にした。それは短いと1日1回多く上映できるからだ。でも、同時に芸術性も失いたくなかった。」

もうね、、「紅いコーリャン」や「秋菊の物語」はたまた「あの子を探して」を撮った監督の言葉とは到底思えない・・・。アータはバカかと。ほんとバカだろと叫びたい。

上映時間を短くしてまで当たる映画を作りたかった理由もよく分からんし、同時に芸術性も失いたくないってねアンタ、それができるったらホント黒澤明くらいしか思いつかないよ。

ここでオイラが大好きな「グリーン・デスティニー」との違いを指摘しておくと、「グリーン・デスティニー」はやはりいっぱしのエンタメ作品なんだよね。芸術性が強いとはいえない出来。しかし、芸術性の領域に一歩踏み込む手前の娯楽性の領域にあると思うわけで。そのバランス感覚がすごく好きなわけで。

一方、「HERO」はというと、当たる映画を狙っておきながら芸術性の領域に何の迷いもなく踏み込んじゃってる。しかも相当奥まで踏み込んじゃってるわけで。バランスなんてはなっから無いわけ。それが一枚絵として見ると凄いけど、動き出すとどうってことないという理由の1つだと思う。

〔追記〕

 最高の境地とか意識下における戦いを繰り広げていたとかって、まんまマトリックスの影響を受けてない?

でも、「グリーン・デスティニー」のReviewでも書いたけど、あの映画と今回の映画ってアジア・中国がハリウッドに送り込んだ刺客だと思ってるんです。相手はかのマトリックス軍団。

で、個人的には第1戦はアジア軍の勝利、2戦目はハリウッド軍に返り討ちにあった「HERO」ってことで1勝1敗。で、3戦目は、レボリューションの不戦敗ってことで。なんだ不戦敗って(笑)。

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女帝〔エンペラー〕(2006年・中/香・131分)DVD

 監督・脚本:フォン・シャオガン

 出演:チャン・ツィイー、ダニエル・ウー、グォ・ヨウ、ジョウ・シュン

 内容:五大十国時代の中国。皇帝の実弟リー(グォ・ヨウ)は、兄を殺し王位を簒奪、さらに兄の王妃ワン(チャン・ツィイー)をもものにしようとする。それに対し、ワンは義理の息子でありながら秘かに想いを寄せ合っていた皇太子ウールアン(ダニエル・ウー)を守るため結婚に同意する。一方、ワンを父に寝取られてしまったことに絶望して呉越に身を置いていたウールアンは、父の仇を討つ決意を固めるのだった・・・。シェイクスピアの「ハムレット」を下敷きにした歴史ドラマ。

評価★★/40点

まず、年に1回は必ず見られるこのテの壮麗なワイヤーアクションものは正直見飽きてきたというのがあるし、年に1回このテの作品に出ずっぱりのチャン・ツィイーもいい加減見飽きてきたし・・・。

「グリーン・デスティニー」「MUSA―武士―」「HERO」「LOVERS」ときて、間に狸御殿のお姫様とゲイシャをはさんで女帝やろ。

現代劇見たいんですけど・・(笑)。

今回のようなドラマが全くもって希薄だと、もう絵づらだけだもんなぁ。それだけを2時間以上見せられるのも正直萎えてくる。。

せっかくシェイクスピアを持ち出してきたのに、欲張って絵になるチャン・ツィイーを主軸にしちゃったもんだから、まるでボタンの掛け違いのように視点がどんどんズレていっちゃって、とてもじゃないがストーリーそのものに入り込んでいく気にもなれないし。ヒドイです、これ。

ただ、360度どっからどう見ても絵になるチャン・ツィイーにだったら毒盛られてもイイとは思った(笑)。。

2015年9月 9日 (水)

夢のシネマパラダイス494番シアター:しねまロボット大戦

リアル・スティール

Realsteel_101 出演:ヒュー・ジャックマン、ダコタ・ゴヨ、エヴァンジェリン・リリー、アンソニー・マッキー

監督:ショーン・レヴィ

(2011年・アメリカ・128分)WOWOW

内容:かつて将来を嘱望されていたボクサーだったチャーリー。しかし、時代は人間に代わって高性能のロボットたちによるロボット格闘技の時代に突入、戦う場所を奪われたチャーリーは人生のどん底にいた。そんな中、別れた妻が急死し、赤ん坊の時以来11年間会っていない息子マックスの面倒を見るハメになってしまう。当然2人の関係はギクシャクするのだったが、ある日、ゴミ置き場でスクラップ同然の旧式ロボット“ATOM”を発見し・・・。

評価★★★★/80点

昨今ガンダムがエライことになっている。

お台場に等身大立像がお目見えし、ガンダムのキャラをイメージした豆腐や車までできてしまった。

長く愛されすっかり社会になじんだ感のあるガンダムだけど、自分にとっては今に至るまでガンダムは縁遠い存在であり続けてきた。

それはある意味今までガンダムを敬遠しつづけてきたからといってもよく、つきつめていえばロボットの内部に人が乗り込んで操縦する形態に魅力を感じなかったというところに行き着くのかもしれない。

と、今回この映画を見てはじめて思った。

つまり、ロボット=兵器という扱いであり、そこに人格や個性は認められないというところ、強いていえば「エイリアン2」でシガニー・ウィーバーが乗り込むロボットや「アバター」で大佐が乗り込むパワードスーツ以上の役割を担っていないことに魅力を感じなかったのだと。

そして、やはりロボットであっても自立した自我=“心”を持ったロボットが好きなのだということに気付かされたわけで。

そう、まさに鉄腕アトムのような。

で、今回の映画のアトムである。

今回、映画に出てくるロボットたちはリモコンで動かす遠隔操作型で、アトムも最初はリモコンで動かしていたのだけど、途中でそれをやめ音声認識機能と人の動きを真似する形態模写機能(シャドウ)でやり、最終的にはシャドウだけで動かすことになる。

電子制御という束縛から解放され、よりスタイルフリーになっていくことで人間的に見えてくるところが巧いし、何度打たれても立ち上がる姿はもはやロッキーそのもの!また、マックスの真似をしてダンスを踊るシーンなんかを見ると無機質であるはずのアトムにも心があるようにすら感じてしまう。

あとはやはりボクシングに目をつけたのが白眉で、ボクシング映画十八番のアメリカンドリームで王道感を盛り立てるとともに、ロボットボクシングに取って代わられたためにボクサー廃業を余儀なくされたチャーリーとアトムが同化していくというのがなんとも上手い。

あと、父子愛という点で取りざたされる「チャンプ」のような悲壮感漂うお涙頂戴というより、茶目っ気たっぷりで陽気なスタイルだったのも見やすくて良かったかも。

まぁ、そんなつもりはなかったけど、いい映画の拾い物をさせていただきました♪

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パシフィック・リム

Poster出演:チャーリー・ハナム、イドリス・エルバ、菊地凛子、チャーリー・デイ、ロブ・カジンスキー、ロン・パールマン

監督:ギレルモ・デル・トロ

(2013年・アメリカ・131分)WOWOW

内容:太平洋の深海から突如現れた巨大生命体“KAIJU(怪獣)”により滅亡の危機に瀕していた人類は、イェーガーと呼ばれる2人で操縦する巨大ロボットを開発した。しかしそれでもなお劣勢が続く中、かつて怪獣との戦闘で操縦パートナーの兄を失いパイロットを引退していたローリーが最終決戦のために復帰を決意する。彼と新たに組むのは、幼い頃に家族を失った復讐に燃える日本人モリ・マコだった・・・。

評価★★★/65点

マジンガーZからエヴァンゲリオンに至るまで日本のロボットアニメのエッセンスをそのまま濃縮したようなクオリティで実写化してしまうハリウッドのクリエイティビティには今さらながら驚愕してしまう。

メカニックデザインはもとより最も驚かされたのはロボットの圧倒的な重量感で、例えばスケートのような滑らかな動きをするトランスフォーマーにはどこか二次元的な軽さがあったのに対し、今回のイェーガーには高さビル25階、重さ2千トンの巨大さを肌で感じられるような現実感があって見応えがあった。

が、、しかしである。

自分みたいにエヴァをちょいかじりした程度にしかロボットアニメに食指が動いてこなかったにわか者からすると、人物造形もそこそこに、のっけからロボットと怪獣のガチバトルに突き進んでいく作劇はイマイチ乗り切れず・・・。

また、視界不良の悪コンディションのオンパレードで目が疲れるのもマイナスだし、海上戦ばかりで地上戦が少ないのもダイナミズムが削がれて飽きてきたし・・。

まぁ結局、特撮が良くても肝心の人間ドラマがおざなりだとツマラないってことを肌で感じたな

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アイアン・ジャイアント

Bovnjdpie_2 声の出演:ジェニファー・アニストン、ハリー・コニックJr.、ヴィン・ディーゼル

監督:ブラッド・バード

(1999年・アメリカ・86分)DVD

評価★★★★/80点

内容:嵐の夜、小さな村に空から鉄でできた謎の巨人が落ちてくる。記憶も言葉も失くした鉄人はやがて1人の少年と出会い、あたたかい友情を育んでいく。しかし、その鉄人の正体は異星人が戦争のために作り出した戦闘ロボットだった・・・。

“ロボットの悲しみは、人間の悲しみ”

片田舎の少年と鉄の巨大兵器ロボットのかけがえのない友情をコミカルに描いているだけでも十分面白い。

しかし、この作品が本当に心に残るのは、彼らが心を通わせていく過程を縦軸に、戦闘を宿命づけられたロボットの深い悲しみと、それを乗り越えてなりたい自分になるんだ!という意志の強さと心の素晴らしさを真摯に描き出しているところにあるからだと思う。

そして、ロボットが破壊の道具として使われることへの悲しみが、いわば自分たちの意志で、命を奪うための戦いという暴力にいわば永遠に憑かれてきた人間の凶暴性や悲しみさえあぶり出していく。

子供はもちろん、大人にも十分すぎるくらい伝わってくるメッセージとテーマを持っている作品だ。

悲劇的な美しさをたたえたクライマックスでのミサイル体当たりシーンから、思わず泣き笑いへと変化してしまう真のラストオチに本当に心の中が温かくなりました。

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ヤッターマン

E38389e383ade383b3e3839ce383bc 出演:櫻井翔、福田沙紀、生瀬勝久、ケンドーコバヤシ、阿部サダヲ、深田恭子

監督:三池崇史

(2008年・松竹・111分)WOWOW

内容:4つ全部集めると願いが叶うという伝説のドクロストーンをめぐって繰り広げられるドロンジョ一味と、犬型の巨大ロボット・ヤッターワンを操るヤッターマン1号&2号の泥沼の争奪戦!

評価★★★/65点

最近カラオケのアフレコにハマッていて、その中にヤッターマンが入っているのだけど、そのシーンのほとんどはドロンジョ一味のもので、やっぱこのアニメの醍醐味はこの3人組がいかにいたぶられボロボロになるのかというサド的な快楽(?)にあるのだと実感したw

まぁ、このアニメは自分が生まれる1年前に放送されたので、リアルタイムでは見ていないのだけど、かなり小さい頃に再放送かなにかで見てはいて記憶の片隅にある程度。

でも、ドロンジョがやけにオッパイポロリしてたのは覚えてて・・

とまぁその話は置いといて、映画の方は、“ジャンボパチンコ”を“ジャンボ○チンコ”と読ませるような程度の低さで覆われているのだけど、ユルユルでナンでもありの作劇は決して間違ってはおらず、例えば福田沙紀のぞんざいな扱いなんかはよく分かっていらっしゃる。

映画のつくりとしては、それこそ「CASSHERN」とか「デビルマン」などとは一線を画するレベルにあるといっていいと思う。

その点では本気度の中に絶妙な遊び感覚を有する三池崇史の器用さとたしかな腕を感じさせるのだけど、それ以上に深キョン&生瀬&ケンコバ3人組のハマリっぷりが特筆もので、映画史に残る3バカトリオといってもよかったりしてw!?

それでもこの点数なのは、ぶっちゃけヤッターマンに思い入れがほとんどないっつーことで(笑)。

要はやはりこの映画はドロンジョ様に尽きるわけで、その中で乙女チックな深キョンも十分ハマッてるんだけど、見ていてイタくなってくる存在感てところまでは突き抜けていなくて、そういう意味では女性芸人で誰かおらんかったかなぁと思っちゃったんだけどw。。

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ロボッツ(2005年・アメリカ・90分)WOWOW

 監督:クリス・ウェッジ

 声の出演:ユアン・マクレガー、ハル・ベリー、ロビン・ウィリアムズ、メル・ブルックス

 内容:小さな田舎町の貧しい家で、中古部品で作られて生まれたロボット・ロドニーは、発明家ビッグウェルドの「外見が何で作られていても、誰もが輝ける」という言葉を信じながら発明家になることを夢見る。やがて青年へと成長したロドニーは、大都会ロボット・シティへと旅立つが・・・。

評価★★★★/75点

3DCGアニメから鼻につく鉄サビの匂いが漂ってきたことだけでもこの映画を観た甲斐はあったというものだ。

ニック・パークのウォレスとグルミットみたくクレイアニメーションだったら満点だったけども、それでもロボットのボディに映る背景だとか光沢、陰影などの質感には目を見張るものがある。

物語の平板さにも思わず目をつぶってしまうくらいだ。

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鉄人28号

07_06 出演:池松壮亮、蒼井優、薬師丸ひろ子、香川照之、阿部寛、柄本明、中村嘉葎雄

監督:冨樫森

(2004年・松竹・114分)MOVIX仙台

評価★★/40点

内容:横山光輝の名作マンガ「鉄人28号」を最新のCG技術で実写化。サイバーテロに始まり、巨大ロボット“ブラックオックス”が東京を破壊する。小学生の正太郎は父の遺志を受け継ぎ、鉄人28号を操り悪に立ち向かう。

“平成「鉄人28号」に対する違和感”

自分は横山光輝の「鉄人28号」を知らないし、見たこともない。テレビでやってる懐かし映像で見かけた程度だと思う。

しかし、昭和31年という戦後復興著しい時代に連載された昭和を代表する人気ロボット漫画ということで、今回の映画はてっきり「ALWAYS三丁目の夕日」テイストの昭和ノスタルジーを背景に、昭和という時代を背負った鉄人28号がウガーッと仁王立ちする絵を勝手に想像していたのだが・・・。

フタを開けてみたら、、、へっ?何?平成なの?げ、現代ですか!?

おもわず面食らっちゃったんだけど。

で、率直な感想といえば、平成の世に鉄人28号を降臨させる意味が全く分からなかったということ・・・。

だって、やっぱ現代を舞台にするならば徹底的にリアリティを追求してくれないと、とどうしても思っちゃうわけよ。在日米軍がミサイルぶっ放すとか(笑)。

あるいは、横山光輝の原作では金田正太郎くんは少年探偵なわけだから、それこそ「スパイキッズ」ばりに徹底的に荒唐無稽なキッズアドベンチャーとして描いてくれればストンと納得できたのかもしれないけど。

その方が、年端もいかない少年が日本転覆を企むテロリスト相手に担ぎ出されるという、およそ現実味のない展開も気にならないだろうし。

ところが、この映画ははっきりいってリアリティと荒唐無稽なファンタジーとの狭間であっち行ったりこっち行ったりしていかにも中途半端なんだよね。

1番リアリティがあったのは鉄人28号vsブラックオックスのロボット対決だったと思うけど、ぎこちなくてぎこちなくて皮肉にも絵としては1番ツマラなかった・・。

だから、要は時代設定からして間違ってると思うんだ。やっぱ昭和3,40年代を舞台にしてやった方が良かったのでは。。

リアリティとファンタジーの狭間における中途半端さも昭和ノスタルジーというフィルターを通すことによって逆に味が出るわけだし。

あとは、やっぱねぇ、、旧日本軍の秘密兵器として開発された巨大ロボット・鉄人28号を少年探偵・金田正太郎がリモコンを使って操作する、、っていくら任天堂のWiiが売れてるからって平成の世にこの設定は合わないと思うし、あとは何よりも鉄人28号のもつ時代性なんだよね。

その時代を背負った象徴的な漫画キャラクターやアニメキャラクターってあると思うのだけど、鉄人28号はやはり昭和のキャラクターだと思うんだよね。

そういう点でも今回の映画にはスゴイ違和感を感じてしまったな・・・。

例えば平成のキャラクターであるエヴァンゲリオンを現代を舞台に実写化するっつうなら分からんでもないけどさ。

平成の世で「鉄人28号」は何を背負うのか・・・。

それが全く見出せなかったのはあまりにも痛い。魂が入っていない人形を見せられても何も感じない。

残念な作品だ。

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スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー(2004年・米/英・107分)DVD

 監督・脚本:ケリー・コンラン

 出演:ジュード・ロウ、グィネス・パルトロウ、アンジェリーナ・ジョリー、ジョバンニ・リビジ

 内容:1939年のNY。科学者失踪事件を追っていたポリーの前に突然、巨大ロボット軍団が出現。彼女を救ったのは、元恋人で空軍のエースパイロット、ジョーだった・・・。世界征服の陰謀と闘う空軍パイロットの活躍を、CGのフル活用と多彩なキャストで、レトロ感たっぷりに描くSFアクション。

評価★★/40点

この映画から人物を全て取っ払ったCG全カットをオレにくれ(笑)!

イメージ先行型の映画だと思うけど、イメージにストーリーとキャラが埋没しちゃっている映画を見せられるのは、この上なくツマラナイし、不快で疲れる・・・

2015年9月 6日 (日)

夢のシネマパラダイス593番シアター:アップサイドダウン~重力の恋人~

アップサイドダウン 重力の恋人

O0293040012479263138出演:キルスティン・ダンスト、ジム・スタージェス、ティモシー・スポール、ジェームズ・キドニー、ジェイン・ハイトメイヤー

監督・脚本:フアン・ソラナス

(2012年・カナダ/仏・109分)WOWOW

内容:太陽系にある上下に向き合っている双子惑星。そこでは正反対の方向に重力が働き、上にある星には富裕層が住み、下の星には貧困層が住んでいて、互いの交流は固く禁じられていた。そんな中、下の世界の少年アダムは上の世界の少女エデンと出会って恋に落ち逢瀬を重ねていた。しかしある日、警備隊に見つかってしまい、逃げようとしたエデンが上の世界に落下していってしまう。それから10年後、アダムはエデンが生きていることを知る・・・。

評価★★★★/80点

映画をこよなく愛することに決めた10代の頃、つまり90年代に最も好きな女優はグウィネス・パルトロウだった。

ナチュラルでクラシカルでエレガントな気品ある美にゾッコンになったのだけど、00年代になると八重歯がキュートなキルスティン・ダンストを一途に想いつづけるようになったw

巷では不細工だとかスパイダーマンのヒロインには似つかわしくないとかゴチャゴチャ難癖をつける輩がいるようだけど、なんならこの映画を見ろっ!と言いたい。

彼女のフィルモグラフィーの中でも1番キュートで自然体な姿が写し出されていると思う。

また、それを抜きにしても今回の映画は二重引力という奇想天外なSF設定や幻想的なヴィジュアル含めて非常によく練り込まれている良作になっていたと思う。

ストーリーの基調にあるのはロミオとジュリエットのような悲恋ものにあるといえるけど、その障害となるのが重力というのが奇抜で、二重引力の3つの法則の2つ目と3つ目、物質の重さは反対側の物質で相殺できる(逆性物質)が逆性物質に接触している者は数時間で燃え始める、という制約が巧く効いている。つまり磁石のように惹きつけ合うアダムとエデンは長時間メイクラブしてると文字通り燃え尽きてしまうのだ

そんな誰も逆らえない万物の法則を愛で超えてみせるというアダムの恋の意志の強さにはグイグイ引っ張られてしまうんだけど、まぁそりゃ当然だよね。お相手が記憶を失くしてしまったキルスティン・ダンストなんだもの。こんな燃える状況はないよ♪

あとはなんといってもシンメトリーを意識した夢のような映像美の素晴らしさだろう。

エフェクトばりばりの映像はクリスチャン・ラッセンの絵のようで、そこに実写ならではの陰影とリアリティが加わって、このての表現が得意なアニメのお株を優に奪う絵面になっていたと思う。

特に2人が出会う上の世界と下の世界の近接点、らせんのごとく逆巻く大気を青白く染め上げる白夜のような天空にのびる山の頂をとらえた造形には心魅かれるものがあった。

おとぎのような独特な世界観を十分楽しませてもらいました

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サカサマのパテマ

243395_400声の出演:藤井ゆきよ、岡本信彦、大畑伸太郎、ふくまつ進紗、加藤将之

監督・脚本:吉浦康裕

(2013年・日本・99分)DVD

内容:アイガ国では、かつて空に多くの罪びとが落ちていったという謂われから空は不吉なものだとされていた。しかし、中学生エイジは大空に憧れを抱き、空を見上げることが大好きな少年。そんなある日エイジは、フェンスに必死にしがみついて今にも空に落下しそうな少女パテマと遭遇し、彼女を救出する。どうやらパテマは、重力が真逆の世界からやってきたサカサマ人らしいのだが・・・。

評価★★★☆/70点

このてのファンタジーアニメを見ると、どうしてもジブリ脳が働いて、ジブリをスタンダードとする土俵の上で見てしまうくせがある。ジブリとの相似点や影響度、ジブリレベルへの到達具合など粗探しをしてしまうわけだ

で、今回は完全にラピュタ。

親の不在、迫害された父、空から、、ではなく空に落ちていく少女、塔に幽閉された少女を助けに行く少年、ムスカ直系の悪役キャラ、そしてパズーとシータの逆さまドッキングwと、ラピュタのエッセンスを存分に拝借していて、ここまであからさまだと逆にあっぱれ(笑)。

さらに、サカサマ人間が地底世界に存在するパラレルワールド的世界観や、重力と反重力が引き合うことにより重さが相殺されて浮遊感が生み出されるアイデアなど、ジブリの二番煎じという揶揄をのど奥に引っ込めてしまわざるを得ないほどオリジナリティある発想力にあふれていて見入ってしまった。

惜しむらくはせっかくの魅力的なSF設定を説明なくほとんど放置したまま終わったことで、それは作劇として意図的なスルーをしたのだろうけど、尺を15分くらい延ばしてもいいからもう少し考証にベクトルを向けてもらいたかった気がする。

あとは典型的なボーイミーツガールの中で、パテマのキャラが萌え的な二次元女子の枠に収まってしまうのもイマイチだったかな。

もうこうなると、ジブリ脳じゃなくてジブリ病だなww

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エリジウム

4547462087355出演:マット・デイモン、ジョディ・フォスター、シャールト・コプリー、アリシー・ブラガ、ディエゴ・ルナ

監督・脚本:ニール・ブロムカンプ

(2013年・アメリカ・109分)WOWOW

内容:2154年、人口増加と環境破壊で荒廃が進む地球。一握りの富裕層だけは、400キロ上空のスペースコロニー“エリジウム”に移住。そこは、どんな病気も瞬時に治す医療ポッドがある理想郷だった。そんな中、地上で暮らす貧困層のマックスは、勤務していたロボット製造工場で事故に遭い、余命5日と宣告されてしまう。エリジウムで治療する以外に生きる道はないと考えたマックスは、エリジウムへの不法侵入を図っているレジスタンス組織と接触し、決死の覚悟でエリジウムへ向かうが・・・。

評価★★★/60点

貧困層は荒廃した世界で、富裕層はクリーンでなおかつ最強最高の医療設備が整った楽園で暮らせるという、現実に今ある格差社会の極致を描いた世界観は面白いのだけど、このての二極化社会を描いた近未来映画って、ことに最近はお約束みたいになっているので、ちょっとやそっとじゃ新鮮味を感じなくなってるんだよねw

その点では比較対象も多くなってしまうんだけど、そうなると例えば「TIME/タイム」なんかの方がSFらしいアイロニカルな発想の飛躍があって印象的だったと思う。

でも、今回の方が絵面の汚さも含めて(笑)リアルではあるんだよね。外国だと金持ちが住んでる高級住宅街を壁で囲って安全を確保してる所もあるっていうし。

ただ、そういうリアルSFではあるんだけど、下界天界含めて登場人物の行動原理が私利私欲しかなくて、その欲望がなかなか献身や大義に昇華していかないため、物語の共感ポイントが見出せなかったのがイマイチだった。

もちろんマット・デイモンの場合は余命5日なので四の五の言ってられないってのはあるんだけど、なにせシャールト・コプリーが欲望の塊キャラとして突出しているので、ジョディ・フォスターも含めて霞んじゃってるんだよね。

パソコンの再起動で革命完遂という味気なさや、エリジウムに行きたいという憧憬がただ単に医療ポッドに入りたいという思惑に矮小化されてしまっているつまらなさなど、まぁ要するに話がツマラないんだわww

なんかエリジウムを天界、地球を下界と書いた時点で芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を想起したんだけど、そう見るとカンダタ=マット・デイモンをより極悪非道キャラにしなければならなかったのでは・・?

あるいはシャールト・コプリーを主人公にした方がうまくいったような気も。。う~ん・・・。

2015年9月 3日 (木)

夢のシネマパラダイス419番シアター:舟を編む

舟を編む

Poster出演:松田龍平、宮崎あおい、オダギリジョー、黒木華、池脇千鶴、伊佐山ひろ子、八千草薫、小林薫、加藤剛

監督:石井裕也

(2013年・日本・133分)WOWOW

内容:1995年。玄武書房営業部に勤める馬締光也(松田龍平)は、真面目だけが取り柄の落ちこぼれ社員。そんなある日、彼は大学で言語学を専攻していたことを買われて辞書編集部に異動することに。そこでは松本教授(加藤剛)のもとで見出し語が24万語という辞書『大渡海』の編纂が進められていた。しかし、ベテラン編集者・荒木(小林薫)はもうすぐ定年で、あとはお調子者の西岡(オダギリジョー)と契約社員のおばさん(伊佐山ひろ子)だけという苦境にあった。そんな中で馬締は辞書作りに没頭していくのだった・・・。

評価★★★★/75点

あまりにも誠実で優しく、あまりにも素直で生真面目な原作をそのまま映画にしたらひたすら地味な作品になっちゃうのではないかと思ってたけど、まさにそのまんまだった(笑)。

ただ、地味で舌足らずな中にも、1冊の辞書を作るために費やされる15年という時の流れを実感させるだけの人々の思いや成長の軌跡というのはしっかり描けていたし、性的な匂いが全くしない聖母マリア化した宮崎あおいwが映画に華を添えていて清々しいピュアな作品に仕上がっていたと思う。

でも、かぐやちゃんがどうやってマジメ君を好きになったのかがこの描写だと永遠の謎で(笑)、なんかホント空から天使が舞い降りてきたみたいなかんじで、マジメ君のような根暗でモテない自分は激しく嫉妬してしまった

しかし、辞書作りがこれほどまでの時間と労力を使うものだったとは思わなかったけど、しかもあんな少人数しか携わらないというのも驚きで、そりゃ15年かかるだろっていうww

なんかトヨタ方式のカイゼンを取り入れたくなってくるようなかんじだけど、効率とスピードばかり重視される今の世の中において忘れられがちな大切なものを思い出させてくれるという意味でも心に残る映画ではあったかな。

よーし、オレはあんな達筆な恋文じゃなくて、ちゃんと言葉で愛を伝えられる相手をまずは見つけるところから始めるぞーそこからかよっ!

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の・ようなもの のようなもの(2015年・松竹・95分)WOWOW

 監督:杉山泰一

 出演:松山ケンイチ、北川景子、伊藤克信、尾藤イサオ、でんでん、野村宏伸、内海桂子、三田佳子

 内容:30歳で脱サラして落語家になった出船亭志ん田は、師匠・志ん米の自宅に住み込み修行中。真面目すぎるのが災いして芸はなかなか上達せず、思いを寄せる師匠の娘・夕美からもけちょんけちょんに言われる始末。そんなある日、先代師匠の十三回忌追善公演が迫る中で後援会長が、落語家を辞めたあと行方知れずの志ん魚(しんとと)の噺が聞きたいと言い出したからさぁ大変!志ん田お前探しに行ってこーい!となるのだが・・・。

評価★★★/65点

下っ腹が出て無精ヒゲを生やしたうだつの上がらない中年親父になった志ん魚(伊藤克信)の変わりっぷりに35年の時の流れを否が応にも感じざるを得ないけど、映画を流れる温かく優しい眼差しは変わることなく、人情味あふれる作品になっていたと思う。

特に、新味がないことが味わいを深める逆説的要素を持つ今作において、志ん田役の松山ケンイチが森田ワールドの遺伝子のバトンを器用に引き継いでおり、あざとさを感じさせないのが良かった。

また、秋吉久美子が出ていないことだけは合点がいかなかったけど、前作のキャスト陣や森田作品ゆかりの面々が顔見世興行的に出てきて、ほぼスジなしの同窓会映画にもなってて見ていてほっこりできる。

しかし考えてみれば、いち監督に対するオマージュ作ってなかなか無いから、よっぽど慕われてた監督さんだったんだね。

これぞ映画愛!

ただ、これだけは言っとく。ホントに新味はないし、中身もない(笑)。。

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の・ようなもの(1981年・日本・103分)WOWOW

 監督・脚本:森田芳光

 出演:伊藤克信、尾藤イサオ、秋吉久美子、麻生えりか、でんでん、加藤治子

 内容:東京の下町。駆け出しの若手落語家・志ん魚は、23歳の誕生日に風俗へ行き、そこで相手をしてくれたエリザベス嬢と友達以上恋人未満のような関係になる。さらに、講師として出向いた女子高の落研で出会った由美のことを好きになり、付き合うことに。が、デートの帰りにお邪魔した彼女の家で披露した落語は相手の親からダメ出しを食らってしまう始末・・・。

評価★★★/60点

これが80年代のセンスなのかといえばそれまでだけど、78年生まれの自分には感覚だけで撮られたような森田演出はシュールすぎてなかなかに付いて行きづらいw

ていうかこれってデビュー作なのか!と考えれば、まだ洗練されていない恥ずかしいくらいの森田監督独特な感性の原液をポタポタと垂らしているようなかんじで見る価値はあるかな。

まだ暗い明け方の東京をトボトボと歩き続ける主人公の姿を見て、青春のあてのなさは伝わってくるしね。

でも結局そんなことよりも頭に残るのは、おすぎとピーコ調の小堺一機&関根勤コンビと、大事なとこが見えそで見えない秋吉久美子の肢体なのだった

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しゃべれども しゃべれども

Photo_top出演:国分太一、香里奈、森永悠希、松重豊、八千草薫、伊東四朗

監督:平山秀幸

(2007年・日本・109分)シネマズグランベリーモール

評価★★★/65点

内容:東京の下町。二つ目の落語家・今昔亭三つ葉は、若手のくせして頑なに古典落語に情熱を注ぎ込み、普段から着物を羽織っている珍しいタイプの噺家さんだったが、真打ちになれずに今ひとつ伸び悩んでいた。そんな三つ葉は、ひょんなことから落語を使った話し方教室を始めるハメになってしまう。そこに集まってきたのは、美人だがめちゃくちゃ無愛想な女性・十河五月、関西弁を笑われていじめられている大阪から引っ越してきた転校少年・村林優、コワモテでアガリ症というプロ野球解説者・湯河原太一。集まるたびに言い争いが絶えない彼らだったが・・・。

“人情と温かさが肝心の可笑しみにつながっていかないもどかしさにイマイチはじけず・・・。”

かれこれ15年くらい前、高校生の時に学校で文化芸術鑑賞会というのがあり、春風亭柳昇の落語を生で聞いたことがある。

軽妙でトボケたような語り口に、体育館に集まった全校生徒が爆笑の渦に巻き込まれるほど面白かったことを覚えているのだが、しかし悲しいことに落語で笑ったのはこれ以降一度もない・・・。

そういう意味では、今回この映画を観るにあたっては落語の面白さを再確認したいなという期待感を強くして観たのだけども。

しかし、フタを開けてみたら、映画自体がうだつの上がらない二つ目といった趣だったような・・・。

いや、良作には違いないんだ。でもなんだろ、クソ真面目に実直すぎる語り口が、いや、もうちょっと笑わせてくれよみたいな。。

なんか古典芸能たる落語を扱った映画としては敷居の下げ方を間違えてるような、そんな違和感を抱いちゃったな。

現代の特に若者に共通してみられるディスコミュニケーションの問題を、ことばを操るプロである噺家の落語とリンクさせて描こうという切り口はすごく面白いのだけど、この映画観ると落語である必要があまり感じられないというか・・・。

それこそ同じ香里奈が出てた「深呼吸の必要」のさとうきび畑の収穫作業の方がよっぽどうまく描けてると思う。

特に刺すような鋭い目つきが印象的だった無愛想の塊みたいな十河五月(香里奈)のラストの笑顔に変わっていく過程が、唐突な飛躍で分かりづらかったし説得力に欠けるというか。なんかね・・・。

実直で優しい映画にイチャモンつけるのはあまり本意ではないけど、もうちょっと可笑しみを期待していただけに自分としてはややギャップがあったかな、と。。

国分くんをはじめ役者さんたちも脇役を含めて皆がんばっていて良かったのだけど、例えば三つ葉の一世一代の見せ場である「火焔太鼓」も、国分くん落語がんばっててスゴイなぁ、、、止まりとしか感じられないのが、この映画の限界を如実に示しているのかもしれない。

ただ、佐藤多佳子の原作はものすごく読んでみたい気にはなった。

“ことば”がテーマなだけに彼女自身の言の葉で綴られた作品で、直に感じてこの映画の穴埋めをしたいと思います。

あと、「まんじゅうこわい」「火焔太鼓」を通しで見てみたいな。

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深呼吸の必要(2004年・松竹・123分)NHK-BS

 監督:篠原哲雄

 出演:香里奈、谷原章介、成宮寛貴、金子さやか、久遠さやか、長澤まさみ、大森南朋

 内容:沖縄のとある離島。本土とは比べものにならない陽射しが降り注ぐ2月下旬、さときび畑の収穫期恒例のアルバイト“キビ刈り隊”の募集に集まった5人の若者たち。彼らは農家で寝食を共にして35日間で約7万本のさとうきびを刈り取らなければならない。しかし、全くの初心者である5人は慣れない仕事にもたつくばかり。さらに、キビ刈り隊の常連の男の偉そうな振る舞いに5人は苛立ちを募らせていき・・・。

評価★★★★/80点

「言いたくないことは言わなくてもいい」と言うおじいの家のルールに、映画自体までもが素直なほどに従順なのは玉にキズだが、日頃ため息ばかりが先につく自分にとっては一服の清涼剤になったのも確か。

要するにめちゃくちゃイイ映画なんです

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