夢のシネマパラダイス590番シアター:仁義なき戦い
仁義なき戦い
出演:菅原文太、松方弘樹、田中邦衛、渡瀬恒彦、伊吹吾郎、金子信雄、川地民夫、梅宮辰夫
監督:深作欣二
(1973年・東映・99分)WOWOW
内容:敗戦直後の広島・呉。戦争から復員し、遊び人に身をやつしていた広能昌三は、ヤクザのけんかに手を貸し相手を射殺してしまう。それがきっかけで広能は、出所後に世話になった山守組の組員になる。その頃、山守組は勢力を拡大していた土居組と対立していたが、とうとう全面抗争が勃発するのだった・・・。
評価★★★/65点
生涯広島カープファンである自分にとって、毎年フリーエージェントで選手を引っこ抜かれてしまう現状には悲哀を感じてきたのだけども、2000年に主砲だった江藤が巨人に移籍した時に、その理由として東京生まれの自分には広島弁が怖くて肌に合わなかったからという噂がささやかれた。
それを聞いた時は単なる言い訳だろと思ったものだけど、これ見て納得した(笑)。
岩手育ちの自分には決して真似のできない絡みついてくるような広島弁のインパクトが血みどろの抗争劇の凄まじさをより際立たせていた。
東北のズーズー弁ではこうはいかないww
しかし、なんといってもこの映画はインパクトの映画だ。
広島に落とされた原爆のキノコ雲を背景に浮かび上がる赤いタイトル文字と鳴り響くテーマ曲が開巻を告げるオープニングは、今まで見てきた映画の中で1番インパクトがあった。
そして腕斬り、指詰め、蜂の巣何でもござれの殺戮祭りと恫喝だけで成り立っているような中身は支離滅裂で、イデオロギーの衝突も葛藤もそこにはない。
正直これを面白いとは到底言えないのだけれど、ブレまくるカメラと強欲むき出しの人間模様のド迫力とインパクトで見せきられたかんじだ。
あとはやはりお馴染みのテーマ曲だろう。
バラエティー番組でよく使われ、なんか完全にお笑いBGMと化してるんだけど、そのせいもあってこの曲が劇中で流れると思わず笑いがこみ上げてくるのはなぜだろう
いや、この映画は回りまわって人間喜劇といえるのかもしれない、、なんてねw
ちなみに、WOWOWで一挙放送した時に予告編も流れたんだけど、それがけっこう笑えて面白かったな。
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仁義なき戦い 広島死闘編(1973年・東映・100分)WOWOW
監督:深作欣二
出演:菅原文太、千葉真一、梶芽衣子、山城新伍、成田三樹夫、前田吟、金子信雄、北大路欣也
内容:昭和27年、広島。傷害事件で服役した機械工の山中正治は、刑務所で広能と出会う。出所後、大友組のリンチに遭っていたところを村岡組に助けられた山中は村岡組の一員に。そして村岡組と大友組の対立の渦中にあって、山中は苛烈なヒットマンになっていく・・・。
評価★★★★/75点
復員兵がヤクザの世界で成り上がっていくというのは前作と同じ構図だけど、戦争に行った広能(菅原文太)よりも戦争に行かなかった山中(北大路欣也)の方が刹那的な危うさを抱えていて心に残る。
つまり広能の場合は“自分の生き場所”を新たな暴力の世界に置くことで見出したのに対し、山中の場合は“自分の死に場所”をそこに見出したということができる。
お国のために戦うことができなかった若者の鬱屈したエネルギーが組と親分への忠誠になり代わり、45口径の“ゼロ戦”で殺しを重ねていく。
そして最終的には自決に追い込まれていくわけだけど、殺しのたびに予科練の歌の口笛を吹く姿はなんとも鬼気迫るものがあった。
そんな生き急ぐ哀しきヒットマンという肖像はそれだけで映画的ドラマツルギーを大いに生み出す。そしてさらにこの映画を盛り立てているのが特攻で夫を亡くした未亡人との悲恋だ。
戦争のにおいが色濃く映し出されることもそうだけど、本シリーズでは珍しく女っ気があることも大きいし、なにより梶芽衣子がイイ
この映画で初めてお目にかかったのだけど、艶やかでありながら儚げで、凛とした凄みさえ垣間見せる割烹着姿の靖子さんにイチコロになってしまったw
幕末の池田屋事件もブッ飛ぶような狭い家屋での大乱闘劇も見ごたえ十二分だし、暴力団の政治利権への食い込みや警察とのなあなあの関係などがあけすけに描かれているのも面白かった。
千葉真一のセリフの大半がピー音連発ってのもスゴかったけどね・・・
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アウトレイジ
出演:ビートたけし、椎名桔平、加瀬亮、小日向文世、北村総一郎、塚本高史、石橋蓮司、國村隼、三浦友和
監督・脚本:北野武
(2010年・日本・109分)WOWOW
内容:関東一円を仕切る巨大暴力団組織、山王会。その実質ナンバー2の池本組は本家から村瀬組との蜜月関係を咎められる。焦った池本(國村隼)は、配下の大友組に村瀬組を締め上げるよう命じる。いつも池本組から厄介な仕事を押し付けられる大友(ビートたけし)は粛々と仕事に取り掛かるが・・・。
評価★★★/65点
小っちぇー話だなぁ、、ていう感想しかないんだけどw、バイオレンスをストレートに描けば描くほどオカシくて笑えてしまうという、それはつまり、北野映画特有の死への憧憬、いわば死臭が全くしないという点で今までの北野映画とは一線を画す作品になっていると思う。
監督はエンタメに徹して作ったとのたまっているそうだが、これはもうコメディの部類に入るのではないかなと。だって、意地でもってカッターで指詰めようとして、痛くて切れねえ!ってお笑い以外の何ものでもないだろ。
でも、笑えるからそれが面白いかといわれると、これがすこぶるビミョーで、ヤクザ同士のバトルロワイヤルごっこをただ見せられるだけなのだからはっきりいってツマラナイし、新鮮なキャスト陣の普段見られないようなワルぶり博覧会として見ても、もうちょっと深く掘り下げて人間を描いてもらわないと味がない。
味がないといえば北野映画では初(?)のベッドシーンも味気なかったなw
しかし、唯一この映画を見て感じたというか強調しておきたいのは、絵づらがかなり洗練されていたこと。
画の切り取り方、撮り方から編集の上手さに至るまで監督としての力量は完成域に達しているといっていい。
なのに肝心のシナリオがこじんまりとしているのでなんとも勿体ないのだ。
死にざまの美学と狂気から解き放たれた北野武が今後映画で何を語っていくのか、一応楽しみではあるのだけど。。
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アウトレイジ ビヨンド(2012年・日本・112分)BS
監督・脚本:北野武
出演:ビートたけし、西田敏行、三浦友和、小日向文世、加瀬亮、桐谷健太、新井浩文、松重豊、中野英雄、光石研、高橋克典、中尾彬、塩見三省、神山繁
内容:山王会でトップに登りつめた加藤(三浦友和)は、大友組の金庫番だった石原(加瀬亮)を若頭に抜擢し、勢力を急拡大させていたが、内部では古参幹部の不満がくすぶっていた。そこに目をつけた暴力団担当刑事の片岡(小日向文世)は、関西の巨大組織・花菱会を動かそうと裏で手を回し始める。さらに片岡は、死んだといわれていた大友(ビートたけし)を出所させ、大友と因縁のあった木村(中野英雄)と引き合わせて兄弟杯を交わさせることに成功、山王会分裂作戦の手駒にしようともくろむが・・・。
評価★★★★/75点
相変わらず小っちぇー話だなぁってかんじだったけど、かつてタモリが言ってた男の精神年齢は中2から止まったままというのはホントその通り!とこの映画見て合点がいった(笑)。
しかして、この小っちぇー話は大層面白い群像劇に仕上がっていて片時も目が離せないのだ。
前作が殺し方のレパートリー選手権だとすれば今作は完全にキャラ立ち選手権と化していて、揃いも揃った豪華キャストの使い捨てっぷりも含めて、まさに“痛”快この上ないエンタメ作になっていたと思う。
また、80年代の漫才ブームについてたけしが、やすきよを始めとする上方漫才で最大の武器となった大阪弁には江戸っ子のべらんめえ調の毒舌で対抗するしかなかったと言ってたけど、今回の東西ヤクザの丁々発止の怒鳴り合いをはじめ、北野映画らしくない畳みかける会話劇がドラマを引っ張っていく今回の作劇には、漫才で培ったテンポ良いリズム感が生かされていたと思う。
そういう点では、より大衆向けに寄ったかんじだけど、個人的にはこれがベストバランスだと思う。正直見やすいし
さて、花菱会の西田&塩見の死にざまをぜひ見たい者としては3作目にも期待したいところだけど、次作あるとしたら今度は日韓全面戦争かなw
大阪弁にべらんめえに韓国語に、、しっちゃかめっちゃかになりそうww
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