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2015年4月20日 (月)

太平洋戦争の記憶シリーズ第7号:マリアナ沖海戦

昭和19年6月19日に日本の敗戦は決していた!

マリアナ沖海戦はそういう意味合いを持っていたのだということを今回の第7号を見て実感した。

開戦2年半後の昭和18年9月、防戦一方となっていた日本が定めた絶対国防圏。北は千島列島から満州の中国東北部、南はニューギニアからミャンマー・インドネシアまでと、乏しい防衛戦力では到底カバーできないほど広大な範囲に及んでいたわけだけど、結局本当の絶対国防圏は日本本土なわけで、本土から離れたへき地は、白旗を挙げることを許されず、玉砕するまで、あるいは餓死するまで戦い抜き、文字通り時間稼ぎのための捨て石となったわけだ・・・。

そうやって1年後の昭和19年6月、絶対国防圏内のサイパン島へ米軍が上陸する。

サイパンを含むマリアナ諸島を奪われたら航続距離6600㌔という空飛ぶ要塞B-29爆撃機による本土空襲にさらされてしまうので、なんとか阻止しなければならなかった日本軍は乾坤一擲の戦いを挑む。それがマリアナ沖海戦だった。

しかし、海戦といってもその主体となったのは航空戦力で、マリアナ沖海戦は実質日米の航空決戦だった。

ところが日本側は艦船および航空機ともに総力を結集したものの、倍の戦力を有する米軍の足元にも及ばず、結果は言わずもがなの一方的な敗北。

ゼロ戦をはじめとする航空機の8割を喪失、搭乗員の7割が戦死するという悲惨な有り様で、サイパンも陥落し、制空・制海権を奪われた日本の敗戦はこの時に決まった。

しかし、この負け戦、戦力の規模以外にも戦う前から決まっていた面があるのが哀しい・・。

それは例えばゼロ戦の開発設計ひとつとってもそう。

アメリカは優秀な搭乗員は何にも勝る戦力(ひとりの搭乗員を養成するのに2年の期間と2億円の費用がかかるとされた)とする発想から戦闘機に防弾をしっかり設けていた一方、エンジンの非力を補うために徹底した軽量化のもとに作られたゼロ戦には防弾設備がなかったため、戦争が長引くにつれて次々にベテラン搭乗員が失われていき、実戦経験もろくにない新米しかいない状況になっていた。

そんな中で、マリアナ沖海戦で切り札とされた秘策アウトレンジ戦法(米軍機の航続距離の範囲外に自軍の空母を置くことで敵の攻撃を削ぐ一方で、ゼロ戦の航続距離の長さを生かしてそこから敵空母を攻撃する机上の必勝作戦)において、何の目印もない海の上の700㌔先の敵艦隊にたどり着くだけでも精一杯。。さらに米側の暗号解読や最新鋭レーダーで日本の動きはばっちり筒抜け。。

そういう科学技術、情報技術、防衛開発技術という戦闘前準備をしっかりしていたアメリカと、大和魂一辺倒の精神論しか持たなかった日本。

そりゃ誰が見たって勝敗は分かるよね・・w

でも、ここから降伏するまで1年以上粘りに粘るわけだ。数多の死者を出しながら・・。

2015年4月12日 (日)

夢のシネマパラダイス362番シアター:交渉人

崖っぷちの男

Poster_2出演:サム・ワーシントン、エリザベス・バンクス、ジェイミー・ベル、アンソニー・マッキー、キーラ・セジウィック、エド・ハリス

監督:アスガー・レス

(2011年・アメリカ・102分)WOWOW

内容:マンハッタンの高級ホテルの21階で脱獄犯による立てこもり事件が発生。犯人は30億のダイヤ横領の罪で服役していた元警察官ニックだった。やがて彼は無実を主張するため、窓枠を乗り越え飛び降りを図ろうとする。野次馬や警官隊が集まり、街中が騒然とする中、ニックは交渉人に女性刑事リディアを指名する。一方、同じ頃、ニックの指示を受けた若い男女によってある計画が秘かに進行していた・・・。

評価★★★/65点

ウラもオモテもないワンシチュエーションものは金曜ロードショーにもってこいの見やすさで、ベッドに寝転がって見るぶんには最適。

野次馬の歓声で爆発音消すとか無理だろwとか、あんな口パクしてたら外部の人間と連絡取り合ってることにマスコミや警察フツー気付くだろとかツッコミどころ満載なのもご愛嬌、それらも含めて楽しめるテンポの良さと適度な緊張感の持続がこの映画を支えている。

この手のどう考えても傑作になりえない陳腐な娯楽映画(笑)をひと月に1本は見たい自分にとってはまさにドンピシャの作品だった。

これだからハリウッド映画はやめられないww

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交渉人

Sakuhin1出演:サミュエル・L・ジャクソン、ケビン・スペイシー、デビッド・モース、ロン・リフキン、J・T・ウォルシュ、ポール・ジアマッティ

監督:F・ゲイリー・グレイ

(1998年・アメリカ・139分)盛岡フォーラム

評価★★★★/80点

内容:ダニー・ローマンは、シカゴ警察で抜群の腕を持つ人質事件の交渉人。だが、年金にからむ汚職と同僚を殺害した事件の犯人として濡れ衣を着せられたダニーは、内務捜査局のオフィスに乗り込んだあげく、局員を人質に篭城してしまう。これまでの経験から人質篭城のノウハウを知っているダニーは、他地区の凄腕交渉人クリスを窓口役として逆指名。真犯人を探し出せと要求するのだった・・・。

“出演者の過去の作品を伏線として使ってくる確信犯。出演者交渉にあたったキャスティングディレクターこそこの映画の真の交渉人だ。”

確固たる信念のもとで何事にも動じない他を寄せつけないような突飛な行動をとることにかけては右に出る者はいない「評決のとき」のサミュエル・L・ジャクソン。

何食わぬ顔で真実を語る稀代の口達者「ユージュアル・サスペクツ」のケビン・スペイシー。

全くノーマークのところから現れた衝撃の異常者「12モンキーズ」のデビッド・モース。

なんてったってこれ見よがしに意味ありげなデビッド・モースのカットを何発も入れてくるという憎々しいまでの演出にはもう笑うしうかない。

いやはやこれは絶対確信犯だよ。

おかげで観てる方の緊張感が勝手に何倍にも増幅されちゃいましたがな。

ようするに、それだけめちゃくちゃ面白かったということを言いたいのでっす!

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ネゴシエーター(1997年・アメリカ・118分)日曜洋画劇場

 監督:トーマス・カーター

 出演:エディ・マーフィ、マイケル・ラバポート、マイケル・ウィンコット

 内容:人質事件で人質の安全な救出を目指すネゴシエーター“交渉人”のプロと、彼に逮捕された復讐を企てる凶悪犯の対決を描くアクション。

評価★★/40点

マシンガントークの天才にして口八丁手八丁の神エディ・マーフィを交渉人に仕立て上げようとした着眼点は認めるが、それが全く活かされていない凡作。

コテコテのコメディにしないと土台ムリやろっつーに、なぜに生命線であるコメディ色を一生懸命消そうとしてんねん!

しかも、交渉なんて全然してねえし(笑)。。

企画段階からやり直さないとダメだろこりゃ・・。

夢のシネマパラダイス22番シアター:ダイ・ハード

ダイ・ハード

4988142237422 出演:ブルース・ウィリス、レジナルド・ベルジョンソン、アラン・リックマン

監督:ジョン・マクティアナン

(1988年・アメリカ・131分)

評価★★★★★/100点

内容:ニューヨークの刑事ジョン・マックレーンは、家族でクリスマスを過ごすためロサンゼルスへとやって来る。ところが、イブの夜、妻が勤める34階建ての日系企業のハイテクビルが13人のテロリストによって占拠され、30階で開かれていたパーティーの出席者が人質にされた。パーティーに顔を出したマックレーンは、ビルを立ち去る間際にテロに気付き、妻を救うためたった1人で戦いを挑む!

“ヒーローだって死にたくない!あんなにしゃにむに死に物狂いなヒーローをこの映画以外にオイラは知らない。”

高さ、痛み、焦り、恐怖、それらが等身大で画面から直に伝わってくる。

下手すると死にそう、だけど死なない。その絶妙描写。

まさにアクション映画における奇跡体験アンビリバボーだ。

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ダイ・ハード2(1990年・アメリカ・124分)

 監督:レニー・ハーリン

 出演:ブルース・ウィリス、ウィリアム・サドラー、ボニー・ベデリア、ジョン・エイモス

 内容:愛妻ホリーを出迎えるためにダレス空港を訪れた刑事ジョン・マックレーンにまたもや災難が降りかかる。テロリスト集団が管制機能を制圧し、ラテンアメリカの麻薬王エスペランザ将軍の解放を要求してきたのだ。マックレーンの孤独な戦いが再び幕を開ける。

評価★★★☆/70点

この度はダイ・ハード2号にご搭乗いただき真にありがとうございます。

当機は燃料満タン!見所満載!燃料(ネタ)切れになるまでとにかくブッ飛び続けます。

、、、そういう映画です。

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ダイ・ハード3(1995年・アメリカ・129分)盛岡中劇

 監督:ジョン・マクティアナン

 出演:ブルース・ウィリス、ジェレミー・アイアンズ、サミュエル・L・ジャクソン

 内容:ニューヨーク中に爆弾を仕掛けたテロ集団のサイモンは、NY市警刑事ジョン・マクレーンを名指しで指名。爆弾発見をナゾナゾを出して指示し弄びながら、NY中をたらい回しにする。しかしサイモンの真の目的は実は違うところにあった・・・。

評価★★★/65点

“NYの多大な貢献度に見合った出来かというと甚だ疑問。。”

1作目はビルの中、2作目は空港、3作目ニューヨークと、舞台がスケールアップしているわけだけど、なんか敵の数もそれに比例して多くなってる気がするんだよなぁ。

しかも雑魚ばっかりでキャラの凄みも鋭さも画面に出る前に殺られたりアホで無意味な死に方ばっかりしょ。そんなの面白くもなんともないんだよね。敵の数と映画の面白さが反比例してるんだもん。

もうはっきりいってジェレミー・アイアンズ1人で十分だと思うんだけど。

NYをもっと贅沢に使ってもらいたかったな。

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ダイ・ハード4.0

113aaa0be79b34b10d38a017a8cf60aac6f 出演:ブルース・ウィリス、ジャスティン・ロング、ティモシー・オリファント、クリフ・カーティス、マギー・Q

監督:レン・ワイズマン

(2007年・アメリカ・129分)2007/07/22・盛岡フォーラム

評価★★★★/80点

内容:別居中の大学生の娘に会いにニュージャージーに行ったジョン・マクレーン刑事だが、口やかましい親父には見向きもしてくれない娘に完全ノックアウト。さらに近くに住むオタクハッカーのマットをワシントンのFBI本部まで連行せよという指令まで受けてしまう。その頃、全米を大規模なサイバーテロが襲っていたのだ。しぶしぶマットのアパートへ向かったマクレーンだったが、そこで壮絶な銃撃戦に巻き込まれてしまう・・・。

“たった一つの命を抱えて 持って生まれた不死身の体 鉄の悪魔を叩いて砕く マクレーンがやらねば誰がやる!”

とにかくまぁハリウッド映画が今見せられるかぎりのアクションシーンの数々を贅を尽くして一本の映画にブチ込んだという、まるでアクションの見せ場の売りつくしセールといった様相を呈しているのだけど、それが単なるチープなアクション映画に成り下がっていないのがさすがダイ・ハードのブランド力といったところ。

サーバー障害でATMがダウンして使えなくなったり、羽田空港でダイヤが麻痺したり、首都圏の駅で自動改札機が作動しなくなったり、他にも東証や信金などをはじめとして大規模なシステム障害による混乱がここ数年日本でも頻繁に起こっていることからも分かるように、IT社会インフラの事故によって露わになる恐ろしいほどの脆弱性は現実のものとなっている。

その点からすると、この映画で描かれる都市機能を麻痺させるサイバーテロの脅威は妙にリアリティのある描写となっているし、その中でデジタル時代のハト時計たるアナログ男ジョン・マクレーン(B・ウィリス)が、テロ集団の無線機にこのボケェ!とツッコミながら生身で挑んでいくプロットには、フツーに引き込まれてしまう。

このプロットにド派手なアクションシーンがテンポ良く自然に引っ張られる形になっているので、食傷気味になることなく最後までテンションが下がることなく一気に見れてしまうのだ。そういう意味でも一級のエンタメ映画といえるだろう。

ただ、一歩退いてみると、戦闘機とのタイマン勝負をはじめとして、ジョン・マクレーンのアクションがありえないほど超人の域に達している感は強く、「なんでオレが・・」というセリフが「他にやる奴がいないから仕方なくオレがやるっきゃない」に取って変わられたもんにゃ、(見せかけの)凡人・普通人が仕方なく敵に立ち向かうというのがダイ・ハードシリーズのトレードマークだったとすれば、これはどうなんだろうと思わずにはいられない。

まぁけど、それもラストの肉を切らせて骨を断つブチ抜き作戦でうまく締められていて、終わり良ければ全て良しじゃないけど思わず納得しちゃうんだよね。

とにもかくにもマクレーンの元気な姿、もとい決して死なない姿を再び見れてうれしかったッス。娘っこも強いし(笑)。

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ダイ・ハード/ラスト・デイ

Ff45722c4f9775ef03b6efaf34f2bb06出演:ブルース・ウィリス、ジェイ・コートニー、セバスチャン・コッホ、ラシャ・ブコヴィッチ、コール・ハウザー

監督:ジョン・ムーア

(2012年・アメリカ・98分)WOWOW

内容:長いこと会っていなかったひとり息子のジャックがモスクワで逮捕されたとの報せを受け、その尻拭いのためにロシアに降り立ったジョン・マクレーン刑事。ところが、ジャックが出廷する裁判所が爆破テロに遭い、マクレーンは運悪くまたしても事件に巻き込まれてしまう・・・。

評価★★☆/50点

ブルース・ウィリスが出ていなければいっぱしのB級アクションとして普通に見られたのだろうけど、これがダイ・ハードとなると話は一変してくる。

はっきり言おう。

この映画にジョン・マクレーンは不要だ。邪魔であるとさえいえる。

一体全体この男はロシアに何をしにやって来たのか。。異国の地でただ破壊の限りを尽くしただけではないか。

この映画の作り手は“ダイ・ハード”を全く分かっていない。それほどシナリオと設定がひどすぎる。

まずもってダイ・ハードというフォーマットの最低必要条件は何か。

孤軍奮闘、絶体絶命、等身大。バカでも分かることだ。

その中でも特に重要なのは孤軍奮闘だと思うけど、今回の息子とのタッグは明らかにその点であだとなってしまった感がある。

前作では敵の人質となった娘と共闘したけど、これは1作目で妻が同じく人質に取られたプロットを踏襲することで四面楚歌の絶体絶命というダイ・ハードの醍醐味を生かしたものになった。

しかし、今回は息子をアクションもこなせるプロのCIA要員としたことで孤軍奮闘という醍醐味は薄れ、ダイ・ハードとしての面白さが半減したことは間違いない。

しかも、敵の目的やつながりなど事の詳細を把握している息子の方が主体となって動き、ジョンは完全に蚊帳の外で、ジョン視点で見ている我々観客も途中まで何が何やらのチンプンカンプン状態というのも映画としての面白さを著しく削いでいると思う。

せめて息子は例えば原子力機関の研究員とかアクションとは無縁の設定にすればよかったのに。そうすれば放射能を中和してくれる化合物なんていうフザケた物を出してくることもなかっただろうに(笑)。。

とにかく、ここまでずさんな作りだともう救いようがない・・・。90分という短い尺もまるでやっつけ仕事という烙印を押すには十分なヤル気のなさだし、、ジョンのかわりに自分がグチりまくるとは思いもしなかったよホンマ

夢のシネマパラダイス157番シアター:日本の家族の風景

東京家族

Poster_2出演:橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優、小林稔侍、風吹ジュン

監督・脚本:山田洋次

(2012年・松竹・146分)WOWOW

内容:瀬戸内の小島に暮らす老夫婦の平山周吉(橋爪功)ととみこ(吉行和子)は、久しぶりに子どもたちに会うために東京へやって来る。郊外で開業医を営む長男・幸一(西村雅彦)と、下町の商店街で美容院を営む長女・滋子(中嶋朋子)はそれぞれに家庭を持ち、日々の暮らしに追われている。そんな中、老夫婦の心配の種はいまだに独身でバイト暮らしのような生活をしている次男の昌次(妻夫木聡)のことだったが・・・。

評価★★★★★/90点

見てビックリした。

小津の東京物語の実質リメイク作といっても差し支えのないほど忠実にトレースしているとは思わなかったからだ。

しかもさらに驚くことに、そのトレースはオリジナルから60年後のスカイツリーそびえる東京を舞台とする中でも違和感なく受け入れられるほど馴染んでいて、東京物語が描いた家族というテーマが時代を軽く超越してしまうほど普遍的なものであることを今さらながらに思い知ったかんじだ。

小津ならではの朴訥なセリフ回しも最初はどうかなと思ったけど、言葉を大切にする山田節と良い意味でつながっていて良かったし。

さらに、この現代に置き換えた物語がすこぶる胸に突き刺さり心を揺さぶられることになろうとは自分でも驚いた。

いやいや、さらに驚いたのは三十路の自分が1番心に響いたのが、広島の小島から子供たちに会いに上京してきた老夫婦の所在なさだったということだ(笑)。

共感というよりは心がつまされたというべきだけど、横浜の高級ホテルに追いやられ部屋のベッドに2人でただ座って窓からじっと空を見上げるところとか、2人で手を取り合って歩く姿とか、なんか自分の親に重ねて見ちゃったのかもしれないけど泣けちゃったなぁ

かといって長男や長女が冷たい人間なわけではなく、親元から巣立って東京に出て家庭を作り懸命に生きている。自分は次男の昌次に近い年齢だけど、昌次だって自分の足で立ってしっかり生きていこうとしているわけで、それに比べていまだに親のスネかじりなパラサイトシングルの自分のなんと未熟なことか、、とメンタル落ちてしまった・・・。

さて、役者陣にも触れておきたい。

総じて女優陣の方が印象深かったけど、特に蒼井優のけなげさと中嶋朋子の悪気のない鬱陶しさが良かった。

ひとつツッコミどころがあるとしたら、やはり妻夫木と橋爪&吉行夫婦は親子には見えないこと。どう見ても祖父母と孫だろっていう

他には3.11を意図的にクローズアップしたり、最近の若いもんは~とか、この国をどげんかせんといかん!みたいな説教臭さがちょっと鼻につくこともあったけど、御年82の大おじいちゃん監督の小言と思えば気にならないww

ていうか82歳だよアータ!山田洋次ってホントにスゴイ。

家族の在り方と日本人の風景を一貫して描き続けてきた山田洋次だからこそできた現代版東京物語は深く心の奥に染み入ってきた。

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HOME 愛しの座敷わらし(2012年・東映・110分)WOWOW

 監督:和泉聖治

 出演:水谷豊、安田成美、橋本愛、濱田龍臣、草笛光子、高島礼子、石橋蓮司、宇津井健

 内容:サラリーマンの父・晃一(水谷豊)の転勤で東京から岩手の田舎町に引っ越してきた高橋一家。しかし、新しい住まいは築200年の古民家で、都会暮らしに慣れていた妻の史子(安田成美)は不満タラタラ。中学生の長女(橋本愛)も学校生活に不安を覚え、小学生の長男(濱田龍臣)も持病のぜんそくでサッカーをやりたくても出来ない日々。おまけに同居する晃一の母親(草笛光子)には認知症の症状が現れ始め、家族の中にぎくしゃくした空気が淀んでいたが・・・。

評価★★★☆/70点

舞台が地元岩手、さらに岩手山とかジョイスとかステラモンテとか岩銀とかおそらく岩手県人にしか分からない見慣れた風景がわんさか出てくるとあれば点数も甘くなるというもの。

映画では滝田村となってたけど、たぶん滝沢村(現滝沢市)のことでしょ。盛岡と滝沢の境界に住んでる身としては嬉しいかぎり♪

ただ、あの古民家のロケ地は遠野だと思うし、そこに岩手山を背景合成して、設定としてはおそらく雫石方面、小岩井農場近辺なのかなぁってかんじはした。岩手高原スキー場が映ってたし、、というこれも岩手県人にしか分からない話ww

でも、実写版ジブリといってもいいくらい癒される映像美に収めてもらえるとは地元民としては嬉しいかぎりだし、こんな素晴らしい所に自分は住んでたんだぁと岩手の田舎の美しさを再認識した。

でも、あんな築200年の曲がり家に住んでる人なんて実際いるのかどうかは知らないけど、冬をあの家で越すのはマジ厳しいぞー!って思ってたら、冬を待たずにそそくさと出て行きやがってーッ

冬の厳しさを知らずにこれ見て田舎の暮らしはいいなぁとかって、見当違いもはなはだしいからな(笑)。この映画の舞台となった季節は夏から秋口という1番住み心地の良い時期だからね。

まるで東京人が岩手に古民家の別荘持ってて夏休みの間だけ楽しみに来たみたいなズルさを感じちゃったな

ていうか早く帰りすぎ

いやまぁ、ちょっとグチっちゃったけど、見てよかったと思える映画ではあったよw

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はじまりのみち

286758_5d4932出演:加瀬亮、田中裕子、ユースケ・サンタマリア、濱田岳、斉木しげる、光石研、濱田マリ、大杉漣、宮崎あおい

監督・脚本:原恵一

(2013年・松竹・96分)WOWOW

内容:太平洋戦争のさなか、戦意高揚の国策映画を作ることを求められていた日本映画界に監督デビューした木下恵介。昭和19年に発表した「陸軍」のラストが女々しいと軍当局から批判を受け、以後の映画製作が出来なくなってしまった木下は、映画会社に辞表を提出し、失意のうちに実家の浜松へと戻る。しかし、そこにも空襲が及んでいたため、病気療養中の母親を連れて山間の村へ疎開することを決意。家族の反対を押し切り、母をリヤカーに乗せて徒歩で疎開先へ向かうことにするのだが・・・。

評価★★★★/80点

木下恵介監督のフィルモグラフィーを懇切丁寧に映し出し引用するのは映画としては反則技だと思うけど、親子の情の清らかな美しさと血も涙もない戦争への嫌悪という映画のテーマに則っていえば、この手法は正解だったというしかない。

少なくともその意図するところは非常によく伝わってきたと思う。

前者については、進軍ラッパとともに意気揚々と戦場へ向けて行進していく息子を母親が必死に追いかける「陸軍」のシーンと、息子が母親を乗せたリヤカーを戦火から逃れるために必死に引いていく今回の映画のシーンが対比としてうまく描き出されている。

また、後者についても、「新・喜びも悲しみも幾歳月」での海上保安庁の観覧式で息子の門出を見守る母親が「戦争に行く船じゃなくてよかった」とつぶやくシーンが、「陸軍」の行進シーンと合わせ鏡のようになっていて、監督木下恵介の戦争に対する一貫した姿勢がうかがえるものになっている。

劇映画としてみても、古き良き日本映画を思わせる佳品だったし、木下恵介入門映画としてみても見る価値がある作品だった。

とはいえ、この監督さんの映画ってほとんど見たことがないんだけど・・

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我が母の記

Img_11266_61883917_02c2c9出演:役所広司、樹木希林、宮崎あおい、南果歩、キムラ緑子、ミムラ、三浦貴大、三國連太郎

監督・脚本:原田眞人

(2011年・松竹・118分)WOWOW

内容:人気作家の伊上洪作は、妻と3人の娘がいるが、亭主関白で厳格な家長として家族に接していた。そんな中、洪作の妹夫婦が面倒を見ていた母・八重を洪作が引き取ることになるが、夫を亡くして以来、認知症が出始めていた。さらに、幼少期、曽祖父の愛人に預けられ親元を離れて育てられた洪作は、母に捨てられたという複雑な感情をいまだに抱えていた・・・。

評価★★★☆/70点

1スジ2ヌケ3動作という言葉がある。

良い映画を作る条件で、1番目に大事なのはシナリオで、2番目が撮影、3番目が役者の演技ということなのだけど、この3つが完璧に揃った映画にはめったにお目にかかれるものではない。

しかし、この中の1つでも突出していれば映画としての面白さと見応えは格段に増すというもので、1スジでいえば三谷幸喜が真っ先に思い浮かぶ。

では2ヌケは?ということになると、ここに入ってくるのが原田眞人なのである。

群像劇を描ける数少ない映画監督である原田眞人は、特に室内における奥行きを意識した空間演出と、陰影に厚みを持たせた格調高い画作りが特色で、その中で3動作となる役者はまるであらかじめ決められた動線に従うかのような動きをする。自由を与えられているのはカメラだけで、その統制の取れた演出は歴史劇としての様式美と群像劇としてのダイナミックさが両立した骨太な舞台空間を生み出す。

そこで今回の映画を見ると、邸宅や別荘など比較的狭い空間を主としたホームドラマという点で新境地を開いていると思うのだけど、ここでも演出力が違和感なく発揮されているのは見所だし、予定調和に抗うかのような役者陣のアンサンブルは見事にハマっていたと思う。

しかし、2ヌケは完璧なのだけど、1スジが庶民には理解しにくい浮世離れした家庭環境なので感情移入しづらかったというのがあって・・。主人公の少年時代をもうちょっと多くカットバックしてくれてもよかった気がする。

まぁ、個人的にはセーラー服から喪服まで着こなしてしまう宮崎あおいを見れただけで十分だけどねww

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間宮兄弟

Mo4255_f1出演:佐々木蔵之介、塚地武雄、常盤貴子、沢尻エリカ、北川景子、戸田菜穂、中島みゆき

監督・脚本:森田芳光

(2006年・日本・119分)WOWOW

評価★★★☆/70点

内容:東京の下町のマンションで一緒に暮らしている間宮兄弟。兄・明信(佐々木蔵之介)はビール会社の商品開発研究員。弟・徹信(塚地武雄)は小学校の校務員。商店街を歩くときは必ずグリコじゃんけんをするような間柄の2人は、横浜ベイスターズの試合をスコアをつけながらテレビ観戦したり、ポップコーン片手にDVD観賞したり、紙飛行機を作って飛ばしたりといつも一緒に行動しては楽しく暮らしていた。で、2人に足りないものは恋人・・。そこで2人は、弟の働いている小学校の葛原先生(常盤貴子)と、兄の行きつけのレンタルビデオ屋のバイト店員・直美(沢尻エリカ)をカレーパーティに招くのだが・・・。

“中島みゆきのお腹の中から生まれてくるのは間違いなく間宮兄弟だ!”

パッと感想が思い浮かばないほどにつかみどころがなく、しかし今まで感じたことがないような魅力にあふれた、なんとも不思議な映画だった。

まるで移動図書館ばりに部屋の中をグルリと取り囲む本棚に整然と並べられたバラエティに富んだ本の数々から推測される趣味や興味の範囲の広さ、また、ちゃんとした定職に就きそこそこの社交性もあることから、この三十路の兄(佐々木蔵之介)と弟(塚地武雄)は電車男ばりの引きこもりアキバオタクというよりは雑学好きのインドア派ということができると思う。ただ、アフターファイブを兄弟2人っきりで過ごすというところが異様なだけで・・・。

しかも、その精神構造はまるで小学校5,6年生とでもいわんばかりの、性に目覚める前の少年といったかんじで、どこかほのぼのとした懐かしさを匂わせているところが、この映画の不思議な感触につながっているのだと思う。

例えば、兄弟があれこれクイズを出し合うところなんかは、まんま自分の小学生の頃を思い出したし。父親とよく登山に行ってたのだけど、下山するまで延々と親にクイズを出し続けてたもん(笑)。

そして、その少年がそのまま大人になったらどうなるか、しかも兄弟で、、というおとぎ話のような有り得なさを、有り得るぞこれはと思わせているのが中島みゆき

このキャスティング以外考えられない。

中島みゆきのお腹の中からだったらこの兄弟も生まれてくるだろという、いやこの兄弟以外生まれてこないだろ(笑)、うん。キャスティングの妙だね。

ストーリー展開としては女性にとってはイイ人どまりのモテない間宮兄弟の生態と失恋を描いていくのだけど、ネガティブではなく幸せな空気感に満ちた日常としてとらえていて、見る方としては妙な親近感がわいてしまう。

まぁ、自分も似たようなもんだけど・・・。

弟が自分で編集したMDを憧れの人妻に手渡そうとしたら、胸のファスナーを意味ありげに下げて「MDは聴かないの。」とipodを見せながら冷たくあしらわれてしまうシーンは自分にも痛かったなぁ。自分もMD編集するの大好きだからさ。

でも、モテなくても楽しもうと思えば日常は楽しめるんだ、と生きる勇気をもらった、かなw

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故郷(1972年・松竹・96分)BS

 監督・脚本:山田洋次

 出演:井川比佐志、倍賞千恵子、伊藤千秋、伊藤まゆみ、笠智衆、前田吟、渥美清

 内容:瀬戸内海の小島で石船と呼ばれる小さな砕石運搬船を操り暮らしている石崎家。船長の精一と妻で機関長の民子、祖父の仙造と二人の子どもたち一家はささやかながらも幸せな日々を送っていた。しかし、工事の大規模化と造船技術の発展で小さな石船の仕事は割に合わなくなっていき、さらに建造から20年経つ石船の老エンジンの調子もどんどん悪くなってしまう・・・。

評価★★★★/80点

1978(昭和53)年生まれの自分は、山田洋次の撮る昭和の日本の風景を見ると、胸がキュッとしめつけられ郷愁に駆られてしまう。もうどうしようもないくらいに

自分のDNAにしっかと“昭和”が浸みついている証なのだろうけど、まだコンクリートに覆われていない土と木のある瀬戸内の島々から、それとは打って変わって都会の広島の街並みに至るまで日常風景の全てが胸に染み渡る。

映画公開から40数年。大都市への一極集中はますます強まり、過疎化はおろか地方消滅というセンセーショナルな言葉まで現実的に語られ始めている昨今。

「朝から晩まで汗水たらして働いて、何一つ悪いことしていないのに、どうしてこんな綺麗な故郷を出ていかなくてはならないのか。なぜみんな出ていっちゃうんだろうねぇ・・」という渥美清の言葉が忘れられない。

また、渥美清が良い仕事してるんだよねぇ

それにしても、あんな北朝鮮のボロ船みたいな木造船wで砕石を運んでたなんて驚きだけど、海にドバーッと落とす時の船の傾き方は異常だろww転覆するかと思った

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