夢のシネマパラダイス586番シアター:北のカナリアたち
北のカナリアたち
出演:吉永小百合、柴田恭兵、仲村トオル、森山未來、満島ひかり、勝地涼、宮崎あおい、小池栄子、松田龍平、里見浩太朗
監督:阪本順治
(2012年・東映・122分)CS
内容:北海道の離島に赴任した小学校教師の川島はるは、島の分校で6人の生徒を受け持つことになった。合唱を通じて生徒たちと心を通わせていくが、ある日、悲惨な事故が彼らを襲う。そしてこれが原因で、はるは島を追われるように去っていった。20年後、教師を辞め東京で暮らすはるのもとにその時の教え子の一人が殺人事件を起こしたとの知らせが届く。はるは真相を知るため、かつての生徒たちとの再会を決意し、北へと向かう・・・。
評価★★★/60点
吉永小百合の精一杯の若作りに最大級の賛辞を送りたいとはいえ、どう見てもこれは無理がある。
40代から60代を演じるのであれば、やはり40代前後の女優を当てるべきだ。
また年齢的なことだけではなく、湊かなえの作風にも吉永小百合はそもそも合っていないのは自明の理。
人の心に巣食う悪意や暗部をあぶり出すシリアスミステリーの中で一人だけ聖女か皇后さまが紛れ込んでいる、いやそれこそタチの悪いことに中心に座っているので、肝心のおどろおどろしさが消臭されて生ぬるくなってしまっているのだ。
教師という聖職者としての顔は出せても女という業を背負ったひとりの人間としての顔を表すには吉永小百合は聖人君子すぎる。
おかげでこんな清廉な「二十四の瞳」そのものを見せられてしまったわけだ・・。
吉永小百合ではなく寺島しのぶとか夏川結衣あたりに演らせていたらかなりの良作になっていたのではないかと思うと残念でならない。
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ミスティック・リバー
出演:ショーン・ペン、ティム・ロビンス、ケビン・ベーコン、ローレンス・フィッシュバーン
監督:クリント・イーストウッド
(2003年・アメリカ・138分)MOVIX仙台
評価★★★☆/70点
内容:ボストンの貧困地区で幼なじみのジミー、ショーン、デイブは少年時代よく一緒に遊んでいた。しかしある日、デイブが目の前で見知らぬ大人たちに連れ去られてしまう。数日後、デイブは無事保護されたが、それ以来3人が会うことはなくなっていった。それから25年後、ジミーの19歳の娘が殺される事件が起きる。刑事となっていたショーンはこの事件を担当することになるが・・・。アカデミー賞では主演男優・助演男優賞を受賞。
“川の流れのように”
穏やかで淡々とした流れに見えても川面のごとき人間の内面は常に揺らいでいる。
その微妙な変化と定めないたゆたいは、静謐な流れの中に潜むモンスターとの葛藤でもあり、その物言わぬモンスターが浮かび上がってきたとき、人間の何たるかが否応なくさらされていく。
そしてその異様さは無言のうちに重く、そして冷たく観る者に迫ってくるのだ。
と、ここまでは正確無比なイーストウッドの演出力が威力を発揮するのだが、あえて言えば細かなところまで正確かつ堅実で硬すぎるくらいのイーストウッドの演出が、かえって観てるこちら側までもカチカチの型に嵌めさせてしまった気がしてならない。
そのため、個人的には余韻を引きずるほどの緊迫感を感じさせる一歩手前でどうしても立ち止まってしまわざるをえなかった。
要するに、映画としてはまさに素晴らしいつくりなのだけど、あまりにも完璧に映画映画しちゃってるなぁという、そのことが作品世界に没入していくことを阻害しちゃったというか。
悪く言えばあざとさ!?
そこまで悪くは言いたくはないのだけど、演出に少し冒険があってもよかったかな。。
ただ、役者陣の大仕事の素晴らしさは言うに及ばず、事件を主眼には置かずに三者三様の人間模様を展開させるための単なるきっかけとして置いた点などには非常に好感がもてるわけで、やはりなんだかんだいってイーストウッドとこの映画を称えたい気持ちの方が強いのもたしかなのであります。
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