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2015年2月19日 (木)

夢のシネマパラダイス199番シアター:桐島、部活やめるってよ

桐島、部活やめるってよ

Poster出演:神木隆之介、橋本愛、東出昌大、大後寿々花、清水くるみ、山本美月、松岡茉優、落合モトキ、浅香航大、前野朋哉

監督:吉田大八

(2012年・日本・103分)WOWOW

内容:ある金曜日の放課後。バレー部のキャプテンで成績も優秀、彼女は学園一の美女という、校内ヒエラルキー最上位に位置する桐島が部活をやめたらしいとの噂が広まる。学校に来ず連絡も取れない桐島を巡って、バレー部の部員はもちろん、桐島の彼女や親友たちにも動揺が広がる。さらにその影響は、吹奏楽部の部長や映画部の前田ら、桐島とは無縁だった生徒たちにも及んでいき・・・。

評価★★★★★/90点

だめだ。

動揺を隠しきれない。

映画を見て登場人物に共感することはあっても、まさか海馬に電流が走る思いをすることになろうとは・・・

ドラフト形式で選ぶ体育のサッカーのチーム分けでは中位~下位指名が常で、しかもシネマ好きのメガネっ子、部活は体育会系とは程遠いテニス部だった自分は、前田(神木隆之介)にそれなりのシンパシーを感じながら見ていた。

それなりのというのは、学園カーストの中でなるだけ浮いた存在にならないように空気を読んで無難に生きる道を選んだ自分にとって、前田というのは実は最も遠い存在といえるからだ。

例えば映画雑誌の中でもマニアックな部類に入る「映画秘宝」を堂々と教室で読むような、それを小馬鹿にする者たちなんて眼中にないというメンタリティと、それほど夢中になれるものを持ち合わせ、それにまっすぐに取り組む嘘のない生き方を自分はしていたとは到底言えないということだ。

ドラフトが終わるまでは引退しないという野球部のキャプテンになんてなれない自分は、そういう意味では本質的には“中身空っぽ”な宏樹(東出昌大)たちの部類に入るのだと思う。

かといって例えば学園カーストの頂点にいる神のような桐島の不在によって自分の立ち位置がすぐにぐらついてしまうようなポジションに自分が居たわけでもなくw、カーストの底辺よりちょっと上のその他大勢の中でぬくぬくと馴れ合って生きていたのだ。前田やキャプテンのようにしっかりと自分というものを持っていないこと自体すでに負け組であることにすら気づかずに・・・。

いや、映画ではそれに気づいたのは宏樹ただ一人だ。普段はそんなこと誰も気づかない。

その点ではある意味、見たくなかった映画でもある(笑)。

そしてそれは、前田の恋の予感フラグが一瞬にして崩れ去るシーンを目の当たりにして確信に変わった。

こういうのどっかで見たことあるなぁ、、って俺だよw!!

あ、なんか思わせぶりな顔で自分の方見てるんだけど、、んなわけあるか!

じゃあまたね♪という一言に深い意味を見出してしまったり、、って普通の会話だろ!

、、というモテない男のたくましすぎる想像力と先入観はただの夢でしかないという、そんな封印していた記憶を掘り返すような地獄の断頭台をまともに喰らってしまった自分はもはや平静ではいられなかった。

最後に言おう。

凄い映画だった・・・。

P.S. 

唯一引っかかったのは吹奏楽部の部長さん(大後寿々花)が影が薄い生徒というところ。吹部の部長といったらかなり上位のステータスだと思うんだけど。。

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幕が上がる

Poster2_2出演:百田夏菜子、玉井詩織、高城れに、有安杏果、佐々木彩夏、ムロツヨシ、志賀廣太郎、黒木華

監督:本広克行

(2015年・日本・119分)WOWOW

内容:今年もあっさりと地区予選で敗退した富士ヶ丘高校演劇部。引退した先輩たちに代わって新部長となった高橋さおりは、部員たちをどうまとめていけばいいのか分からず悩める日々を送っていた。そんな中、かつて学生演劇の女王と呼ばれた新任の吉岡先生が赴任してくる。そして全国大会出場という目標を高らかに告げる先生のもと、弱小演劇部員たちは高い壁に挑んでいく・・・。

評価★★★/65点

平田オリザが「演劇を作る面白さは、同じ日本語を話しているつもりでも相手の受け取り方がそれぞれ違ってくるように、バラバラのイメージを持った人間が集まって一定期間内で作品を作り上げていくことにある」と言っていたけど、演劇部の部員たち各々の多様性が主人公さおり(百田夏菜子)のモノローグによって矮小化され勝手に方向付けされてしまうのでちょっと興ざめしちゃったかなぁ。

まぁ、ももクロメンバーのキャラクターや特徴が登場人物にトレースされているであろうことを考えれば、それを脳内補完できるももクロFAN限定映画なのだろう。

でも、泣く前にまでモノローグでわざわざ説明入れるってのはやりすぎにもほどがある(笑)。

と、どちらかといえば不満点の方が目についたかんじだけど、でもメンバーたちは予想以上に演技できてたんじゃないかなとは思う。一人芝居やワンカット長回しなど自然体でこなせていたし、ドーム球場5万人の前でパフォーマンスできるだけのことはある強心臓ぶりをみせてくれたと思う。

また、無限の速さで広がる宇宙の果てには誰もたどり着くことはできず、どんなに遠くへ行ってもそこはどこでもないどこかでしかない=まだ何者にもなれていない将来に対する不安感と、しかし一方で人はどこまででも行ける切符を手にしている=何者にでもなれる可能性があるという学生時代特有の鬱屈感と夢を抱ける喜び=王道の青春譚を宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」をうまいこと引き合いに出して表現していたのもナイスだった。

あとはやっぱり黒木華に助けられた部分はかなり大きかったね。これぞ女優っていう存在感をみせてくれたと思う。

しかし、天龍源一郎、、ってなんで(笑)?

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告白

260b67cbd1bec5ef95c2d165e4a38e99 出演:松たか子、木村佳乃、岡田将生、西井幸人、藤原薫、橋本愛、芦田愛菜、新井浩文

監督・脚本:中島哲也

(2010年・東宝・106分)CS

評価★★★☆/70点

内容:とある中学校の終業式。1年B組の担任・森口悠子は、その日で教職を辞することを生徒たちに告げ、ある告白を始める。それは数ヵ月前、一人娘の愛美が二人の生徒に殺害されたという衝撃的なものだった。そして、少年法に守られた彼らに自分なりの復讐をしたのだと。その後、森口は学校を辞め、事情を知らない熱血教師の寺田が新担任としてクラスにやってくるが・・・。

“すべての子供たちに宣戦布告する!大人版「バトルロワイアル」”

本屋大賞が好きなオイラはもちろん原作を読んでいたのだけれども、登場人物5人の視点から告白するという一人称形式の特異な文体とグサグサと突き刺してくるような復讐劇の面白さにスラスラと読んでいけたとはいえ、これが本屋大賞!?といぶかってしまうくらい後味は悪く・・。

こんな暗い話がはたして映画になるのか、、一人称独白スタイルが映画に転換できるのか、、クドイくらいのビジュアル波状攻撃を繰り出してくる中島ワールドとどう結びつくのか、、全く想像つかず・・。

で、、フタを開けてみたら、やっぱり暗く、その上グロく、それでもクドく、、正直また見たいとは到底思えないシロモノだったのだけど、しっかり映画として成立していてさすがだなという出来栄えではあった。

一貫して原作ものを題材にしながらも、多彩な演出と大胆なアレンジでオリジナルのイメージを超えた別次元のオリジナルにしてしまう中島監督のハイテンションマジックは今回かなり抑え目ではあった。

しかし、極彩色を排し、逆光とスローモーションを過剰なまでに多用した硬質な画面構成は隅ずみまでキメられており、その濃い陰影の中からかえって毒々しさがあらわに出てきて不快感は増すばかり。

同じ陰惨な原作という点では「嫌われ松子の一生」(2006)があるけど、めくるめくスピードでカラフルかつユーモラスに女の転落人生を描いたあちらとは対照的な作風となっていて興味深かった。

“役者”と“行動”によって話を展開させた「嫌われ松子」と、“映像”と“説明”によって展開させた「告白」といったところか。。

もっといえばあちらはどんな人間でも肯定しようというヒューマニズムがあったけど、今回は一方的な憎悪から生まれる虚しさしかなく、そこにはメラメラと燃えさかる生命力のカケラもない。

だから今回の映画ははっきりいってもう見なくていい。面白いけど好きくないつーか(笑)。。

ただ、原作が一方的な主観=語り部のカメラだけで紡がれる文法だったのに対し、映画は映像という神の視点=観客の視点が加わることで、彼らの独白ははたして本当のことを言っているのかという疑義が入り込む余地が生まれ、5人の語り手それぞれの解釈(告白)がそれぞれ異なるように、見ている自分たちの解釈をも揺さぶることで本作のテーマであるディスコミュニケーションを助長するという意味では上手いつくりになっていたとは思う。

「な~んてね」という言葉の選択は秀逸だったし、それで締めたのも上手かった。

とはいえ、もう一回見る気はさらさらないけどね・・・w

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櫻の園(1990年・日本・96分)NHK-BS

 監督:中原俊

 出演:中島ひろ子、つみきみほ、白鳥靖代、梶原阿貴、三野輪有紀、岡本舞、南原宏治

 内容:毎年チェーホフの「桜の園」が上演される私立櫻華女学園の創立記念日の朝。開演を控えた演劇部員たちだったが、前夜部員のひとりがタバコを吸って補導されたことで上演中止の危機に陥り動揺が広がる・・・。

評価★★★/65点

女子高特有の外界から閉ざされた異空間な雰囲気はよく描けていたと思うけど、それは同時に男目線からすると理解の範ちゅうを超えたところに感情線があるため、青臭さしか感じ取れない気持ち悪さに延々苛まれる副作用もある。しかもその副作用が少々強かった・・。

要は伝統ある名門女子高だけにいいとこのお嬢様しか通っていないのか、みんな大人な落ち着きがあって、異物が混在していない平板さが間口を狭めていて、正直これを清々しさや瑞々しさといった感傷には落とし込めなかったなぁと。。

まぁ、上演2時間前の限定シチュエーションという時間軸の制約を考えれば小綺麗にまとまってるとは思うけどね。。

ってこれ、「海街diary」の吉田秋生のマンガ原作なのか。今度読んでみよう。

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パリ20区、僕たちのクラス(2008年・フランス・128分)WOWOW

 監督:ローラン・カンテ

 出演:フランソワ・べゴドー、フランク・ケイタ、ナシム・アムラブ、ローラ・バケラ、ウェイ・ホァン

 内容:外国からの移民が多いパリ20区のとある中学校。様々な出身国からなる24人の生徒たちのクラスを受け持つ国語教師フランソワの新学期が始まった。彼は正しく美しいフランス語を教えようとしていたが、スラングに馴れた生徒たちの言葉は乱れ、フランス語すらたどたどしい生徒までいる始末。それでもフランソワは、彼らと粘り強く正面から向き合っていくのだが・・・。

評価★★★/60点

98年フランスW杯で優勝したフランス代表は「ブラック・ブラン・ブール」(黒人・白人・アラブ人)の融合チームとして多民族移民国家のシンボルとしてもてはやされたことは記憶に新しい。

しかし、現実の社会ではその多様性は価値観の優れたバランスではなく崩壊寸前のカオスを生み出してしまう危うさをもった生半可なものではないということが、学校の教室という最も分かりやすい舞台を描いた今回の映画を見てよく分かった。

まぁ、それ以前に南アW杯で大惨敗を喫したフランス代表を見れば如実に分かることだけどww

ただ、子供の頃から見続けてきた学園ドラマのフォーマット-型破りな先生が保守的な職員室と対峙しながら問題児や落ちこぼれを熱血指導で立ち直らしていく-が身についている自分にとっては、解決の糸口が見えない現実の重さを見せられるのは少々荷が重く・・・。

たしかに中学生が直面するにはあまりにもシビアな現実には目が点になってしまうのだけれど。

しかし、異質な者を排除していく傾向にある日本の教室において、異質な教師が船頭役に立つ構図はカタチになるのかもしれないけど、逆に異質な者だらけのフランスの教室においては型破りとは程遠いフツーのオッサンが教師の方がカタチになるのかもしれない。

でも、にしたってスレイマンの退学すんなり決まりすぎだろー。。盛り上がりに欠けるやんw

フランス版二十四の瞳は、はっきりいって面白くなかったです(笑)。

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