夢のシネマパラダイス217番シアター:運命のタイムリミット
3時10分、決断のとき
出演:ラッセル・クロウ、クリスチャン・ベイル、ローガン・ラーマン、ベン・フォスター、ピーター・フォンダ、グレッチェン・モル
監督:ジェームズ・マンゴールド
(2007年・アメリカ・122分)NHK-BS
内容:アリゾナ州ビスビーで凶悪強盗団の首領ベン・ウェイドが捕えられた。何度も痛い目を見てきた鉄道会社は公開処刑のために刑務所のあるユマへ連行することに。しかし、そのためにはユマ行きの列車が出発する3日後の午後3時10分までに遠く離れたコンテンションの駅に護送しなければならなかった。そこで護送隊が編成され、借金のために家と牧場を取られそうになっていたダン・エヴァンスは200ドルの報酬目当てに志願する・・・。
評価★★★★☆/85点
漢映画、ラッセル・クロウ、西部劇とくればハズレるわけがないとは思っていたけど、その上をいく出来で非常に心に残る映画だった。
冷酷・非道と良識・任侠の間を行き来する捉えどころの無さが逆にカリスマ性を倍増させているラッセル・クロウの演技は織り込み済みだったけど、ヘタレ親父挽回のため悲壮の決意で無謀な命のやり取りの場に飛び込んでいくクリスチャン・ベイルと、親分のために一途な美学を貫くベン・フォスターがことのほか良かった。
このトライアングルのバランスが絶妙で魅力的だったため、悪党と不屈のカウボーイの間に表裏一体のように生まれてくる奇妙なつながりに共感できたのかもしれない。
そして、状況ではなく面構え、視線、フェティシズムといった自己陶酔なキャラクター自らが物語を動かす基盤になっている映画というのは、やはり格段に面白いのだということに思いが至る。
ただ唯一、名優ピーター・フォンダの扱いが薄かったのだけはちと心残りだったけど。
しかし、命を賭して信念とプライドを守り抜こうとする男の意地というのは、なにか日本の武士道にも通じるところがあるように感じたけど、西部劇にそういうある種の非合理的カッコ良さを見たのはこれが初めてかもしれない。
しかし、かといってこれが異色ウエスタンの体を取っているかといえばしっかり王道を地で行っており、ジェームズ・マンゴールドの骨太演出もさすがだなと唸らされた。
これは傑作の部類に入れていいと思う。
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ニック・オブ・タイム
出演:ジョニー・デップ、クリストファー・ウォーケン、チャールズ・S・ダットン、マーシャ・メイソン
監督:ジョン・バダム
(1995年・アメリカ・89分)仙台フォーラム
評価★★★★/80点
内容:幼い娘リンをテロリストに誘拐された税理士のワトソンは、女性知事の暗殺を強要されてしまう。タイムリミットは90分!映画の時間と実際の時間の進行を一致させたヒッチコックの「ロープ」風のリアルタイム演出がキモとなっているサスペンススリラー。
“アメリカ合衆国の一般市民は誰でも銃を簡単に扱えるらしい・・・。”
ていうかあれだけの組織力とバックボーンを揃えてるならプロのスナイパーとか暗殺者くらい雇えるだろ、、とやはりツッコミたくなる。道行く人をつかまえて、お前、知事を撃てって、おいおい、オイラ銃使ったことないんですけどてヤツもおるやろ。しかもスナイパーと違って100%確実に仕留められるというわけでもないだろうし。
ま、ただ知事を撃ったヤツは知事を殺すことができなかったとしても100%グルの警備連中に撃ち殺されちゃうわけだ。
こんなはた迷惑な話もないよなぁ。
知事を殺す云々の前に自分が確実に殺されてしまう、そしておそらく娘まで。
自分と娘の命が握られている状況からいかに脱却するかをこの映画は描いていくわけだけど、いかんせんもともとの暗殺計画に土台無理があるため、綻びが至るところに見えてしまう。
そしてまさに順当ともいえる形で映画はこれらの綻びを突いていき展開させていく。
ま、つまるところ、こういう設定じゃないと描けないってことなんだろうね。。しかも90分に収めなきゃならないわけだし。
でも実はよくよく考えてみると、ジョニー・デップがK・ウォーケンに捕まって車の中で知事を撃って来い、そうしないと娘を殺すと言われたとき、時計はすでに12:17なんだよね。
リミットが13:30だから、正確には90分というよりは正味73分というわけだ。
たった73分で人間はやれば何だってできるんだなぁ、、ってビートルズの27曲入りベスト聴いてる間に??
マジかよ・・
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96時間(2008年・仏/英/米・93分)WOWOW
監督:ピエール・モレル
出演:リーアム・ニーソン、マギー・グレイス、リーランド・オーサー、ジョン・グライス、ファムケ・ヤンセン
内容:妻に捨てられ、彼女の再婚相手のもとで暮らすひとり娘キムにもたまにしか会えないという寂しい日々を送るさえない親父ブライアン。そんな中、友達とパリに旅行に行ったキムが誘拐されてしまう。居ても立っても居られず単身パリへ飛ぶブライアンだったが、実は彼、CIAの元秘密工作員だった。96時間がタイムリミットとされる中、ブライアンは娘を奪還すべく捜索を開始する・・・。
評価★★★/60点
邦題から連想されるような時間まったなしのサスペンスもなければ、主人公が陥る絶体絶命のピンチもない、ただの無双映画だったというオチ。変わったことといえばキャストがセガールからニーソンに交代したことだけ(笑)。
それくらい問答無用に親父が強すぎて逆に心地よいくらいなんだけど、もうひと捻りくらいはあってもよかったし、小物すぎる敵ももうちょっと魅力的に描いてほしかった気も。。
ただ、善人で真面目なイメージしかないリーアム・ニーソンの容赦のない必殺仕事人ぶりがことのほか様になっていたのはたしかで、90分というサクサク感覚も含めて暇つぶしにはもってこいの映画だと思うw
ただ、アクションもこなせる姉御ファムケ・ヤンセンの使い方だけは宝の持ち腐れでもったいなかったなぁ・・。
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96時間/リベンジ
出演:リーアム・ニーソン、マギー・グレイス、ファムケ・ヤンセン、ラデ・シェルベッジア、リーランド・オーサー
監督:オリヴィエ・メガトン
(2012年・フランス・92分)WOWOW
内容:トルコのイスタンブールで要人警護の職務を終えたブライアンは、そのまま元妻レノーア・娘キムと休暇を満喫し、あわよくば復縁をも画策していたが、それは甘い考えだった。レノーアと2人で赴いたイスタンブールのバザールで突然謎の集団に襲撃され拉致されてしまったのだ。しかも彼らはかつて娘キムの誘拐事件でブライアンに殺されたアルバニア人実行犯の父親だった・・・。
評価★★★/60点
前作での恨みつらみを抱えた敵方の倍返しに対し10倍返しで返り討ちにしてみせる人間GPS親父の無敵ぶりは今回も健在。
さらに街中で手榴弾を投げたり無免許運転でカーチェイスしたりと親父のDNAを受け継いだ素人娘の無茶ぶりも加わって前作より見どころは多い。
ただ、敵のアルバニア人にも愛する家族がいたというバックボーンを描くことで記号だけの悪役から離れた人間性を与えたはずなのに、リーアム親父に家族のためなら何をしてもいいという罪悪感ゼロの正当性を与えるために結局は極悪ショッカーにしかなっていないのはちょっとイマイチだった。10倍返しの爽快感しか眼目にない中では妥当な切り捨てとはいえ、最後まで分かり合えない復讐の連鎖は見終わって何にも残らなかったのもたしかだ。
まぁ、難しいこと考えずに娯楽アクションとして見れば痛快なんだけど、心の片隅に残るモヤモヤしたかんじは何だろうと思ったら途端に消化不良になってしまった・・・。
しかし、眠れる獅子ファムケ・ヤンセンはいつ大暴れするんだww
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運命のボタン(2009年・アメリカ・115分)WOWOW
監督:リチャード・ケリー
出演:キャメロン・ディアス、ジェームズ・マースデン、フランク・ランジェラ、ジェームズ・レブホーン、ホームズ・オズボーン
内容:早朝、ルイス夫妻宅の玄関のベルが鳴る。しかし、妻のノーマが出ると、そこには誰もおらず、ひとつの四角い箱が置かれていた。そして、夫のアーサーがその箱を開けると、中には赤いボタンが付いた木製の装置が入っていた。午後5時、今度はアーリントン・スチュワードと名乗る男が訪ねてくる。男は夫妻に、赤いボタンを押せば2つのことが起きると告げる。どこかで見知らぬ誰かが死ぬとともに、現金100万ドルが夫妻のものとなるというのだ。決断の期限は24時間。経済的に追いつめられていた2人は、結局ボタンを押してしまうのだが・・・。
評価★★☆/50点
世にも奇妙な物語の一編にあるようなショートショートレベルかなと思ってたし、それに付随するアッと驚くオチを期待してた部分もあったのだけれど、それは大味なハリウッドが許してくれるはずもなかった・・・。
いや、、それにしたってここまで風呂敷広げる必要あるのか!?と思っちゃったけど、CIAにNSAに、それだけでも食傷気味なのにあげくの果てに宇宙人!?反則だろコレ・・w
究極の選択という不条理劇を宇宙人ネタで回収しようなんてそれこそ不条理だわ。。
キャメロン・ディアスの女優としてのたしかな脱皮を確認できるという点でしか見る価値はないな。
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16ブロック
出演:ブルース・ウィリス、モス・デフ、デヴィッド・モース、ジェナ・スターン
監督:リチャード・ドナー
(2006年・アメリカ・101分)2006/10/25・MOVIX仙台
内容:NY市警の刑事ジャックは、かつて捜査中の事故で足を負傷し、今では酒びたりの日々を送っていた。そんなある日、彼はチンピラのエディを16ブロック先の裁判所まで証人として護送することに。15分もあれば終わる仕事のはず、、が、その途中で何者かに襲撃されてしまう。なんとか難を逃れバーに身を潜めたジャックは応援を要請、そこに殺人課の同僚フランクがやって来るのだが・・・。
評価★★★★/75点
1.5kmの道のりを証人を連れて2時間以内にたどり着かなければならないという限定シチュエーションものだが、意外にソツのないつくりになっていて安心して見ていられる。
物語の進行時間と映画の上映時間をリアルタイムでシンクロさせるという手法は、古くはロバート・ワイズの「罠」(1949)やフレッド・ジンネマンの「真昼の決闘」(1952)、最近ではジョニー・デップの「ニック・オブ・タイム」(1995)などで見られるが、今回の映画でも四面楚歌状態の中で飲んだくれのやつれた主人公がギリギリのところで危機を切り抜けていくサスペンスを手堅く描き出し、作劇的制約を逆手に取ることには一応成功していると思う。
難点といえば、黒人の証人がしゃべくりまくってウザくて緊迫感が削がれることくらいなもので(いや、これが実に大きなマイナス要素なのだが)、舞台となるニューヨークの街並みも縦横無尽に活かされているし、ブルース・ウィリスのダメ人間ぶりからの再生というキャラ設定もあわせて意外な掘り出し物というかんじがした。
逆にいえば、いかに最近ブルース・ウィリスの映画に食傷気味だったかということが分かろうものだが・・・。
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真昼の決闘(1952年・アメリカ・84分)DVD
監督:フレッド・ジンネマン
出演:ゲイリー・クーパー、グレイス・ケリー、トーマス・ミッチェル
評価★★★★/75点
内容:日曜の午前10時40分から正午までの1時間20分の間に展開する白昼の決闘の顛末を、徹底したリアリズムで描いた西部劇。ゲイリー・クーパーがアカデミー主演男優賞受賞。1870年、西部ハドリービルの町で結婚式を挙げたばかりの保安官ウィルのもとに、彼がかつて逮捕した無法者が保釈となり正午の列車で町に着くという知らせが届く。無法者は4人で、ウィルを殺そうとしていた。ウィルは彼らと戦うため、町の人に助けを求めるが誰も力になってくれない。覚悟を決めた彼は遺言状を書き、たった1人真昼の決闘に向かった・・・。
“めちゃ急いでる時って、あれよあれよという間に時間が過ぎ去っていくもの。この映画はまさにそんなかんじ。合格点!”
話のプロットという点でいえば別にどうってことないことを80分やってるんだけど、タイムリミットの正午という極点に向かってイヤでも突き進んでいくわけで、それがちゃんとした映画の求心力になっているのがまずスゴイ。
さらにその求心力を強くするために、列車の到着を今か今かと待ち続けるならず者たちと、真っ直ぐに伸びた線路を正面低い位置から見据えたカット、そして時計のカットを約5分間隔で見せていく。時計のカットに限っていえばこの映画の中で15,6回出てきます。
普通に考えてみたら異常なんだけど、この映画ではうまくプラスに働いていたというか、このくらい強調してやらないと、やはりもともとのプロットがあまりにも脆弱すぎるんだよね。
正午を過ぎてからラストに至るまでも、なんか時間に追われるようなかんじでパッパッと終わっちゃうし、盛り上がりに欠けるかなと。
まあ見せ方の上手さでもっている映画かなぁ。。
あくまでもリアルタイムに徹したのが吉と出たのだと思う。
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