夢のシネマパラダイス515番シアター:執念の復讐劇
その夜の侍
出演:堺雅人、山田孝之、綾野剛、谷村美月、でんでん、坂井真紀、安藤サクラ、田口トモロヲ、新井浩文
監督・脚本:赤堀雅秋
(2012年・日本・119分)WOWOW
内容:小さな町工場を営む中村は、5年前にひき逃げで最愛の妻を失って以来、絶望と孤独からノイローゼ状態の日々を送っていた。一方、ひき逃げ犯の木島は2年の服役後、元同僚の小林の家に居候し、相も変わらぬ悪逆非道ぶりを発揮していた。そんな木島のもとに復讐決行をカウントダウンする脅迫状が連日届くようになるが…。
評価★★★☆/70点
2015年の初笑いはこの映画だったと高らかに言ってしまおう(笑)。
まさかこんな陰鬱で残酷で、しかも平々凡々なありがたみを大っぴらにぶち上げるような湿り気100%な映画が、ヘタなコメディよりも断然笑えるものになっていたとは思いもよらなかったw
「バーミヤンで木島さんのこと言いふらしちゃいました」というセリフには思わず爆笑してしまったけど、魚民やらセブンイレブンやら聞きなれた場所が舞台となっていることで、自分の日常と映画が地続きになっていたことがこの映画の上手さといえるだろう。
話の展開としては、鬼畜・山田孝之を偏執的ともいえる形相で尾行する堺雅人を捉える冒頭シークエンスはじめ前半の予断を許さない鋭利な空気感は映画として一見の価値ありだったけど、後半につれて角が取れていくのはやや失速気味だったかも。。
ただ、絢香しか歌わない安藤サクラや木島から離れられない綾野剛など、若手役者陣のクセのある個性をこれだけ拝める映画も珍しく、やっぱり見る価値あり。
でも1番凄かったのはやはり木島役の山田孝之だろう。
単なるチンピラという枠を超えたところにあるようなドス黒い存在感とイカレ具合をあれだけのド迫力で表現できるというのはもはや上手いというレベルを優に超えていた。
それに対峙する堺雅人の演技力については今さら言うべきこともないだろうが、ポケットからブラジャーを取り出すキモ悪さはヤバかったw
全体的に谷村美月とか、もう少し登場人物のバックグラウンドを描いてくれれば映画として分かりやすくなったかもしれないけど、あえてそれを描かず人物の輪郭をボカしたことで、生きる目的も特になくダラダラと生きているような人物たちの惰性を強調したかったのだとすれば、それはそれで一応の成功をみているといっていいだろう。
ひと頃プリンが好きすぎて間食にプリンしか食べていなかったら逆に気持ち悪くなって食べれなくなったことがあるけど、これ見てまた食べれなくなりそう・・・
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出演:イ・ヨンエ、チェ・ミンシク、クォン・イェヨン、オ・ダルス、キム・シフ
監督:パク・チャヌク
(2005年・韓国・114分)仙台フォーラム
評価★★☆/50点
内容:幼児誘拐殺人の罪で13年間服役した、完璧な美貌の持ち主クムジャ。刑務所では誰に対しても優しい笑顔を絶やさず「親切なクムジャさん」と慕われていた。しかしようやく出所し、生き別れになった娘・ジェニーを取り戻した彼女は、自分を刑務所に追いやった張本人であるぺクという男に復讐を果たすべく動き出す・・・。
“不親切な監督さん”
パク・チャヌクは天才。それには誰も異論はないと思う。
フェルナンド・メイレレスがリアリズムの極致にあるものとエンターテイメントの極致にあるものを同時に見せる天才だとすれば、パク・チャヌクは善と悪の二面性を同時に見せる天才だといえる。
彼の描く復讐劇の凄さはこの点に集約されると思う。
善と悪の二項対立ではなく、善と悪の共存とせめぎ合いの中から復讐という鬼が顔を出す、それを美しくなおかつ赤裸々・醜悪に描き出したことに、今まで見たこともないゆえのとまどいと戦慄を覚えたはずなのだ。少なくともそのように自分の身体にパク・チャヌクの映画は刻まれてきた。
その視点でみれば、やはり「オールド・ボーイ」の完成度は群を抜いていたと思う。
さて、本作である。
違和感ととまどい。今までの作品とは異なる意味でのとまどい、、、正直がっかりした。
まるでM・シャマランの「アンブレイカブル」のごとき善と悪、天使と悪魔という完全な二項対立に、まずは物足りなさを感じたが、ここで問題なのは話はいたってシンプルなのに話の構成が複雑怪奇にすぎることだろう。
しかも描かれる人間関係の浅さといったらない。
クムジャと変態エロぺク先生(生徒たちとのぎこちないお遊戯シーンの後に夕食中の機能的なSEXシーンを出してきたトンでも落差がこの映画最大の見所だったかも・・・)にしても、クムジャと娘ジェニーにしてもその関係性が決定的に浅いし薄い。
それはつまり彼らの過去の描写が決定的に浅く薄いと言いかえることができるわけで、これでは感情移入さえままならないどころか、復讐の鬼と化すための執念というエネルギーさえ削いでいるように見えてしかたなかった。
そのため執念という激情を、計画・計算高さという冷静が上回ってしまった気がする。
それゆえクムジャの笑顔の裏に隠された能面も見ていて正直気持ち悪かった。
このように、本作には映画の中に観る者を引きずり込む何かが欠けているように思えてならない。
そういう中途半端な状態で観続けたものだから、痛い残酷描写だけが突出して、観ている自分をザクザク突き刺してきて痛ってぇのなんの。パク・チャヌクの映画でこんなにダメージ受けたのは初めてだ。。
復讐の後に残ったむなしさを描いたであろう本作を観終わった自分は、別な意味での大いなるむなしさに襲われてしまったのだった。
激辛スープに顔をおもいっきりうずめて目を覚ましたい気分だなこりゃ。。
天才肌パク・チャヌクの超絶パスを今回自分は受け取ることができなかった。目測を誤った自分が悪いのか、、それともパク・チャヌクの方が目測を誤ったのか、いやいや、超絶パスが自分の能力を遥かに超える凄さだったのか、、、しかし、これだけは言える。
彼の超絶パスを自分はこれからもスクリーンというピッチの中で受け取りたいのだと。そのパスさえ受け止められれば、あとはゴールへまっしぐらなのだから。その歓喜を自分は感じたい。
次も寄こせ!俺にパスを!
、、と、その前に観る力を養わないとダメかもなぁ・・
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ダブル・ジョパディー(1999年・アメリカ・105分)WOWOW
監督:ブルース・べレスフォード
出演:トミー・リー・ジョーンズ、アシュレイ・ジャッド、ブルース・グリーンウッド、ローマ・マフィア
内容:「同じ罪で2度有罪にならない=ダブル・ジョパディー」というアメリカ合衆国憲法をテーマにしたサスペンス・スリラー。夫殺しの濡れ衣で服役した妻は、死んだはずの夫が息子を預けた親友と暮らしていることを知り、復讐を誓うが・・・。
評価★★★★/75点
注文の多いハリウッド料理店が新食材ダブル・ジョパディーを発見!
どんな味がするのかも分からずにまずは強引に調理してみるのがハリウッド料理店のやり方。そして美味い不味いに関係なく出来上がった料理を大々的に売り出すのです!
それがハリウッド料理店の繁盛している理由なのです。
、、ってお客がバカで踊らされているってことじゃねえかよ。。
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ってオレだよ、、それww。。
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ゆりかごを揺らす手(1991年・アメリカ・110分)NHK-BS
監督:カーティス・ハンソン
出演:アナベラ・シオラ、レベッカ・デモーネイ、マット・マッコイ、アーニー・ハドソン
内容:出産間近だったクレアは、診察を受けた産婦人科の医師に猥褻行為をされたとして訴訟を起こす。その事件は大きな社会問題にまで発展し、ついに医師は自殺。その妻であったペイトンは精神的ショックで流産してしまう。全てを失ったペイトンは半年後、ベビー・シッターとしてクレア一家の前に現れる・・・。
評価★★★★/75点
ジワジワと真綿で首を絞めるように追いつめていく女の復讐劇はオトコからするとかなり怖いものがあり、片時も目が離せない。
古典的なサスペンスのプロットを踏襲しつつ、復讐女に母性を与えているのが逆に狂気を増幅させていて怖いのだ。よく出来ていると思う。
終盤なんて女版シャイニングみたいだったし・・w
まぁ、あれだな、、レベッカ・デモーネイのシースルーおっぱいが1番印象に残ってるけど、よく誘惑を耐えたよ旦那も(笑)。。
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2人で一緒に過ごす時間はとても大切です。これは他の友達も一緒にみんなで過ごしたり、食事に行ったり、運動をしたり、スポーツ観戦したり、好きな映画を見てじゃれあったり、どんな時間でも当てはまります。していることはそれ自体、そんなに重要ではないのですが、一緒に2人で楽しめることをしていることが大切なのです。仕事・家事・家族の世話や雑用などで普段みんな忙しい毎日を送っています。仕事でミーティングのためにスケジュールを調整するのと同じ... [続きを読む]
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