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2015年1月 6日 (火)

太平洋戦争の記憶シリーズ第5回:ノモンハン事件

第5号は昭和14(1939)年のノモンハン事件と、昭和17(1942)年の第一次ソロモン海戦。

その中でも今回は特にノモンハン事件が取り上げられたので非常に興味があった。

というのも、父方の祖父が22歳の時、このノモンハン事件に歩兵第27連隊の一員として関わり、九死に一生を得ていたからだ。その時の体験を自分は聞くことなく自分が中学生の時に祖父は他界してしまったのだけど、唯一祖父の手の人差指がなかったことだけが自分が目にした祖父のノモンハンの傷跡だった。

なので今回、ノモンハン事件の詳細を初めて知ることができて本当に良かったと思う。

と同時に、父親から読みなさいと言われながら、ついぞ今まで読むことがなかった祖父の手記も初めて読んで、戦争の恐ろしさと共に、祖父が生き残らなければ自分は生まれてこなかったのだと実感した。

手記によると祖父の部隊がノモンハンに投入されたのは8月20日前後。

5月11日モンゴル軍と関東軍の国境警備隊の小競り合いをきっかけに始まり、大隊の衝突から連隊の派兵、そして兵団の激突にまで拡大した激戦の中で、8月20日前後というのは大勢がほぼソ連側に掌握されつつある最後の段階だったようだ。

しかし、前線はまさに地獄。祖父の手記によると、、

“一口に戦場といっても部隊が数十㌔、数百㌔も進撃後退するような機動作戦の場合と、互いに寸土を争って譲らず、主力の激突を繰り返しながら数㌔の地域に押しつ返しつ数カ月に及ぶ場合とでは、戦場の相貌がその凄惨さにおいて全く異なった景況を呈する。まさに「醒風地に充ち妖気満天を覆う」とは後者の場合である。

腐乱した戦死者の遺骸を乗り越え踏み越えて攻撃し、埋葬された敵味方の戦士の遺骸を掘り起こして陣地を構築する。新来の部隊はこの死臭に悩まされること尋常のものではなかった。全く食事も喉を通らない始末である。

ソ連軍の砲弾をもろに受けた陣地では柳の木一杯に異様なものが無数に垂れ下がっていた。ちょうど一握りの昆布を振りかけたように薄黒い物体が風に揺れ一段と強い臭気が一面に漂っているのである。まぎれもなくそれは人間の臓腑であった。棒切れを持ってきて取り除こうとするのだがゴムのりででもくっつけたように絡み合い、柳の枝にくっついてなかなか取れそうにない。業を煮やした上等兵が短剣で柳を切り払おうと言い出していた。しかしここでは一株の灌木一本でも極めて重要な自然の遮蔽物である。「いや、待て待て、戦死者の霊が守っていてくれとるんだ。」と小隊長はそこに軽機関銃座を作っていくのだった。”

そして、8月30日。祖父の部隊は切込み夜襲の命令を受けた。まさに捨て石覚悟の突撃。

“「弾丸を抜けっ!」小銃の弾倉、薬室に装填されている弾丸は一発残らず抜かれて薬盒に納められる。夜襲戦における日本歩兵のやり方は、徹底した隠密行動に終始することを厳に要求した。突撃においても喚声はおろか声を出すことすら憚った。特殊の場合を除いては銃火を利用することは考えないのである。将兵はただ一握りの銃剣、軍刀にのみ一切の戦力を託すのである。かくして部隊は銃剣をかざし密集隊形をもって敵陣を急襲するのである。

それゆえ夜襲前に弾丸を抜く目的は、銃剣一本に戦意を託すということと、極度の興奮や恐怖などから重要な時機に発砲したりすることを防止すること、あるいは暴発により戦友を殺傷するなど、その目的は自ずから明らかであった。

夜中11時半、夜襲部隊は小隊ごとの密集隊形のまま隊伍につめて敵陣に迫った。敵前5,6百メートル以内に入ると這うように慎重な行動となる。重要なことは与えられた目標を的確に衝くということである。真っ白な太いたすきを十字にあや取った中隊長は部隊の先頭に立ち軍刀の柄頭をかたく握りしめ、磁石で方向を標定しながら一歩一歩部隊を誘導して敵陣を迫る。

が、一挙に100メートルばかり前進して伏せた瞬間。突如第2小隊の縦隊から一発の銃声が響き渡ったのである。敵前350メートル、、突撃にはまだ無理な距離。敵陣からは照明弾が打ち上げられ機関銃の猛射が始まった。かくして作戦は中止。中隊は再び帰ることはあるまいと誓った元の陣地に舞い戻ったのであった。時に31日午前2時。

暴発をしたのは第2小隊のK上等兵であった。この日K上等兵は連絡係としてT軍曹とともに大隊本部に出ていたのだが、中隊に帰れという命令を受けて走り帰った時には中隊は小銃の残弾を抜き終わって進発の間際であった。そのまま所属に復帰した2人はついに弾丸を抜く機会を得ずにしてしまったのであった。しかしいかに弾丸が装填してあったにしても暴発はそう簡単に起こるべき事故ではない。K上等兵が幾度か自決を考えたのもまた無理からぬことであった。

しかし、結果的にはこの暴発が切込み隊250名の生命を長らえることとなった。というのは、翌9月1日、全く予期せざる理由により突如戦線に重大な変化がもたらされたのである。”

それはナチスドイツのポーランド侵攻(事実上の第二次世界大戦の勃発)だった。この9月1日を契機にロシア軍は専守防衛に舵を取り、期せずして劣勢の日本軍に戦いの攻勢的主導権が渡ることになった。が、日本軍に反転攻勢の余力は残されていなかった・・・。

“昭和12年7月7日、盧溝橋に端を発した衝突事件は不拡大方針にもかかわらずついに全面戦争を引き起こし国を挙げて泥沼にもがく事態に進行しつつあった。昭和13年5月、中国軍防衛の要衝徐州を攻略、10月には広東、武漢三鎮の占領と、銃後の人々は提灯行列して浮かれていたのだが、幾百万の軍団の補給兵站は極度に延長し、多くの危険を内包していた。同じく13年7月張鼓峯において手厳しい苦杯をなめていた関東軍はソ連軍の物量と科学戦のお手並みをいやというのほど見せつけられていた。

このような情勢の下にあってノモンハン事件は戦われたのであり、無傷の300余万のソ連軍は悠々戦力を養っていたのである。

その中で頼むべきは日独防共協定の盟友ナチスドイツのソ連けん制であった。が、このような苦境に立つ日本軍閥の頭上に衝撃的な鉄槌が振り下ろされた。独ソ不可侵条約締結(8月23日)である。かかる客観条件の中でソ連軍の8月攻勢は展開された。

サハリンより外蒙に続く数千㌔にわたる国境線は精鋭を誇った関東軍・朝鮮軍・樺太軍を釘づけにし、補給戦力ははるばる支那戦線から戦い疲れた部隊を転用する有り様である。

そんな中、独ソ不可侵条約有効中とはいえ、独軍は突如ポーランドに大軍を進め数日にして首都ワルシャワを占領。9月3日、ついに英仏は対独宣戦を布告した。

しかし、ノモンハン戦線における9月1日以降の攻守逆転の態勢は一朝にして変わるものでもなく、我に攻むるの力なく、敵はもっぱら防御工事に昼夜を弁じなかった。戦線は膠着状態に入ったのである。”

そんな中、9月10日。祖父以下3名に命令が下る。それは敵陣への斥候偵察任務だった。

その数日前から行われていた斥候は3度とも失敗。山の稜線を越えて敵陣を眺めてきた者は一人もいなかった・・。斥候にとって全滅ほど始末の悪いものはなく、いかなる状況下においても最低1名の報告者だけは生きて帰るように手段を尽くさなければならないとされていた。

「斥候帰らざるは犬死である」というのは考えてみれば自明の理ではあるのだけど、かくして祖父たち3人も敵に察知され、祖父は指と左大腿部を撃ち抜かれ動くこともままならない状態になってしまった。

他2名の足を引っ張ってはならぬと考えた祖父は自決寸前まで追い詰められたというが、奇跡的に3人とも無事に自陣に収容された。

そして、それから5日後の9月15日。ついにモスクワで停戦協定が成立。

まさに九死に一生を得た祖父だったが、後にシベリア抑留というさらなる試練が待ち受けていた・・・。

それはまた後の機会に譲るとして、次は第1次ソロモン海戦について少し。

ここで思い出されるのが、小説・映画ともに大ヒットとなった「永遠の0」だ。

映画の中では、ガダルカナル島をアメリカ軍に奪われた復讐戦として、ラバウルに駐屯していた航空隊に出撃命令が出た時に、主人公の宮部久蔵が「ラバウルからガ島まで1000キロ以上あり、現地にたどり着いても帰りの燃料を考えると実質10分程度しか戦闘できない。こんな無謀なことは意味がない」と言って同僚に殴られるシーンとして描かれていた。

そして、宮部の部下が満身創痍で帰路につく途中に燃料切れで海に不時着するも、サメの餌食になってしまうという顛末は印象的だった。

この無謀ともいえる航空出撃によって、歴戦のベテラン搭乗員が次々に失われていくことになるわけだけど、大本営発表ではソロモン海の大戦果!とか、敵艦隊を撃滅!とか良いことづくめで発表していてゲンナリ・・・。

宮部さん、安らかに眠ってくださいw

2015年1月 1日 (木)

夢のシネマパラダイス212番シアター:のぼうの城

墨攻

E5a2a8e694bbe38381e383a9e382b7 出演:アンディ・ラウ、アン・ソンギ、ワン・チーウェン、ファン・ビンビン、ウー・チーロン

監督・脚本:ジェイコブ・チャン

(2006年・中/日/香/韓・133分)盛岡フォーラム

評価★★★★/80点

内容:紀元前370年頃の中国戦国時代。猛将・巷淹中率いる趙の10万の大軍が、燕への侵攻の足がかりとして燕の国境付近にある梁城を包囲していた。落城寸前の梁城にいる住民はわずか4千人。そこで梁王は、守り抜くことにかけては天下一の“墨家”に援軍を求めるが、やって来たのは粗末な身なりの革離ただ一人だった・・・。

“久々に胸躍らせた骨太な歴史エンタメ”

まずもって城をめぐる攻防戦のみに特化し、なおかつこれだけ激しくこれだけ丹念にこれだけ機知に富んだ知略・兵法・戦術を張り巡らした戦いを130分間見せられた映画が今まであっただろうか。

と同時に、歴史の常とはいえ、普遍的とまでいえる人間の愚かさをこれだけ見事にすくい上げた映画もそうざらにはないだろう。

このての中国の歴史劇は近年毎年のように作られていて、「HERO英雄」(2002)から「the Myth神話」(2005)までいろいろあるが、ジャッキー・チェンの「the Myth神話」のトンでもぶりや、「PROMISE無極」(2005)でチャン・ドンゴンの今どきのアニメでもやらないだろというようなアラレちゃん走りを見せられたときにはさすがに辟易してしまって、今回ももしかしてこの流れか!?と不安だったのだけど、蓋を開けてみたら骨太な歴史エンタメになっていて、久々に胸躍らせることができた。

また、墨家の“兼愛”と“非攻”の思想と精神という、およそ非情な命のやり取りをする戦争・戦場とはかけ離れた特殊な要素が映画のキモになっているのも面白い。

「守りに徹し、1ヶ月持ちこたえれば趙はあきらめて帰っていくはず」と実戦経験のない兄ちゃんが何を悠長なこと言ってるんだ(笑)、と普通なら思うはずだけど、それを信頼するに足る威風堂々とした戦術家ぶりは見応えがあったし、革離=アンディ・ラウは見ていて純粋にカッコ良い。

ところで、この墨家だが、“兼愛”“非攻”というとなにかまるで憲法改変問題に揺れる憲法9条を想起させるけど、この映画を見るかぎりでは墨家の考え方や行動規範は、武力放棄や戦争放棄といった非戦ではなく、あくまで攻めてこられたら無条件降伏など言語道断、武力で徹底的に守るという専守防衛の思想のようだ。

これは自衛隊のあり方とも似ているけど、しかし大国の趙に雇われたら趙の城を守ると革離が断言しているように、革離はいわば傭兵ともいえるわけで、自衛隊というよりは戦争を請け負う民間の傭兵集団といった方がいいのかもしれない。

つまるところ、軍事アナリストかつ有能な指揮官という軍事のスペシャリストが同時に反戦活動家でもあるという、いわばキレイゴトを盾にした究極のエゴイストともいえちゃうわけで、そこらへんの自己矛盾をしっかり突いていたのも上手い作り方だったと思う。

また、弱肉強食の世界で強者の侵略から弱者を守り抜こうとする墨家・革離だが、しかし弱者の側の梁の中もエゴが充満していて、さらに梁王が目も当てられないような愚王で、一方エゴの論理で動く強者の側の将軍・巷淹中が話の通じる勇猛な名将として描かれているのも、いつの世も変わらない人間の愚かさをえぐり出すにはうまい対比だったといえよう。

墨家、、、高校の世界史で聞いたことがあるような記憶の片隅に残っていた単語だったけど、“兼愛”“非攻”という彼らの思想は、実力主義が入り乱れる戦乱の世でこそ生きるものだともいえるわけで、秦の天下統一とともに消滅してしまったというのは自然な流れだったのかもしれない。

かわりに強者・支配者の論理を根底から支えていくのが君主への忠義を説いた儒家だったのも当然の成り行きだったのかも。

ただ、グローバリズムという名の熾烈な弱肉強食世界の今この現代にこそ、墨家の思想に価値を見出せるのではないかと思うのは自分だけだろうか。。

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のぼうの城

001 出演:野村萬斎、榮倉奈々、成宮寛貴、山口智充、上地雄輔、山田孝之、平岳大、前田吟、尾野真千子、鈴木保奈美、夏八木勲、市村正親、佐藤浩市

監督:犬童一心

(2011年・東宝・145分)WOWOW

内容:天下統一を目前にした豊臣秀吉は、最後の砦となった北条・小田原攻めに乗り出す。支城が次々と落とされる中、、領民から「でくのぼう」略して「のぼう様」と呼ばれ親しまれていた城代の息子・成田長親が守る忍城にも石田三成の手勢2万が押し寄せていた。守備隊はわずか500しかいない絶対不利な状況。三成は利根川の水を用いた水攻めをしかけ開城を迫ってくるが・・・。

評価★★★/65点

エンディングで出てきた実物の史跡群を見て、やっぱりこれってホントにあった話なんだwと納得できたけど、エンタメとしてのダイナミックさと史実としてのリアリティの境界線というか立ち位置がイマイチつかみきれず、やや違和感を感じながら見てしまったかんじ。。

同じ篭城戦というシチュエーションでいえば中国映画の「墨攻」を思い起こすけど、切迫感やスケール感という点で今作は見劣りしてしまうし、500vs2万という絶対的な数の差も、佐藤浩市&山口智充の単騎無双で簡単に押しのけちゃっては映画の醍醐味に欠ける。

これだとただ単に三成の戦下手だけが強調されてしまって、まぁ実際そうなんだけどw、映画としてはイマイチだよねっていう・・。

まぁ、これは合戦の魅力というよりはキャラクタの魅力で押し通す映画なのだろうけど、その点でいえば野村萬斎は別格の存在感を見せていて映画に説得力を持たせていたのはたしか。

ただ、ここも難クセをつければ、のぼう様が戦するぞー!と決断すると農民たち下々の者が笑ってそれを受け入れてしまう、そのカリスマ性に担保となる描写力がほとんどなかったのは痛い。

バカ殿の真の裏の顔(例えばかつて甲斐姫が引き起こした騒動を丸く収めたことがあるというセリフだけで片付けられていたエピソード)をしっかり描くなりすれば理解が深まったと思うんだけど。

また、結局秀吉に召し取られてしまう甲斐姫(榮倉奈々)と長親との関係性もあっさりしすぎていてイマイチだったし。。

まぁ、歴史好きだけに気になる点はあったけど、終わってみれば無難なところに落ち着いた映画だったかな。うーん・・・w

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敦煌(1988年・日本・143分)NHK-BS

 監督:佐藤純彌

 出演:西田敏行、佐藤浩市、中川安奈、新藤栄作、原田大二郎、三田佳子、柄本明、田村高廣、渡瀬恒彦

 内容:11世紀中国。未知の国・西夏に興味を持った青年・趙行徳は、西夏の女を助けたことで通行証を手に入れ、砂漠のシルクロードを進んでいた。途中で西夏の漢人部隊を率いる朱王礼に徴用された彼は、部隊が捕虜にしたウイグル国の王女ツルピアと出会い、互いに惹かれ合っていくが・・・。

評価★★★★/80点

小学校の頃から歴史や地理が好きで、大学で考古学を専攻するまでに至ったのだけど、歴史の中でも考古学の道を選んだルーツをたどっていくと、子供の頃に触れたインディアナ・ジョーンズとNHKスペシャルのシルクロード特集と今回の映画に行き着くのだと思う。

親にせがんでこの映画を劇場に見に行って、子供ごころにスケールの大きさに圧倒されたことはもちろん、三田佳子の妖艶な存在感にドキドキし、中川安奈のお姫様に胸をときめかせ、柄本明のたどる運命に心を打たれ、西田敏行の壮絶な野心に引き込まれた。

そして今回見直して、主人公なのに佐藤浩市が出ていることはすっかり忘れていた・・・(笑)。

しかし、“敦煌”という響きには今でも弱い。“壇密”と同じくらいの魅力的な響きがあるww

今でも敦煌というと、現代社会の時間軸から隔絶し、悠久の歴史の中にひっそりと佇んでいるというイメージがあるのだけど、果てなる西域の辺境にあり、シルクロードの東西交易の要衝というロケーションの魅力はもとより、そこを行き来し生きた人々の思いが今も砂の中に埋まっているのだと思うとロマンをかき立てられてしまうのだ。

朱王礼や漢人兵士たちが趙行徳から文字を教わり、自分の名前を書き残すことに強い興味を持つシーンが印象的だったけど、自分は何者であったのか、自分がここに生きていたという証を残すというのは、はてなき砂漠の中に消えゆく運命にある者にとってはこの上ない願いだったのだろう。

そして、そういう人々の夢や希望、祈りや願いの集合体がエネルギーとなり文化として残されていったのだ。

その上で主役になったのは歴史の中で語られぬ者たちなのだという映画の視点は切に正しい。

莫高窟の石窟の中に隙間なく積まれていた膨大な数の古文書、その砂の中に埋もれていた名もなき人々の熱き思いに胸を打たれた。

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PROMISE 無極(2005年・中/韓/日・124分)DVD

 監督・脚本:チェン・カイコー

 出演:真田広之、チャン・ドンゴン、セシリア・チャン、ニコラス・ツェー、リィウ・イエ

 内容:戦乱の世で親を亡くし、行き倒れになった少女・傾城(セシリア・チャン)は、女神と全てを手に入れるかわりに、真実の愛を永遠に手放すという誓いを立て、やがて王妃の座についた。一方、王を支える大将軍・光明(真田広之)は、異常な脚力を持つ奴隷の男・崑崙(チャン・ドンゴン)を従者とし、北の公爵・無歓(ニコラス・ツェー)の反乱を鎮めに向かうのだが・・・。

評価★★☆/45点

「あなたがァズキだからーー、ジヌほどトゥきだからーーッ」と叫びながら壁面を爆走するチャン・ドンゴンを思い浮かべただけで思い出し笑いが止まらない・・ww

完全にこれっておバカ映画でB級の王道いってると思うのだけど、肝心の作り手は完全にA級だと意気込んでやってるところが何とも救いようがない。。

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ヘブン・アンド・アース(2003年・中国・118分)WOWOW

 監督:ハー・ピン

 出演:チアン・ウェン、中井貴一、ヴィッキー・チャオ、ワン・シュエチー

 内容:紀元700年頃の中国。西域警備隊の隊長・李は、唐王朝最大の脅威である突厥の女子供を命令に背いて逃がしたため、逆賊となってしまう。これに対し皇帝は、13歳で遣唐使として唐に渡り、現在は直属の刺客として皇帝に仕える一人の日本人剣士・来栖に、25年ぶりの帰郷を許すかわりに李を討てと命令を下す。一方、その頃、李は天竺から皇帝へ献上する仏教聖典を運ぶキャラバンの護衛として長安を目指していた・・・。

評価★★/40点

“この映画にひとことアドバイスするなら、こう言いたい。”

落・ち・つ・け!

映画のペース配分が完全に狂っとるやんけ。

しかも、キャラの掘り下げが壊滅的に浅い。李隊長の部下なんて、せっかくご立派なお名前があるのに、それぞれ個性を際立たせて欲しかったのだけども。その方が物語に深みも出るのに。

来栖にしても同様。あれじゃ日本人である設定にする必要がないやろ。

終盤それなりに見れただけに、そこに至るまでのプロセスの描き方に難がありすぎてどーしょーもない・・。

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蒼き狼 地果て海尽きるまで(2006年・松竹・136分)WOWOW

 監督:澤井信一郎

 出演:反町隆史、菊川怜、若村麻由美、Ara、松山ケンイチ、榎木孝明、津川雅彦、松方弘樹

 内容:部族間で激しい闘争が繰り返されていた12世紀末モンゴルで一躍頭角を現し、後に史上最大の帝国を築くことになる男チンギス・ハーンの生涯を描く歴史劇。

評価★★/40点

青々と広がる果てしなき平原はアラビアのロレンスの永遠に広がる砂漠を想起させるが、そこにはスペクタクルもなければロマンのかけらもなく、起伏もなければ変化もない。

エキストラ2万人を動員した絵づらの薄っぺらさはもはや奇跡的だ。

こんな駄作を見せられるくらいなら、源義経の北方伝説を描いた珍作の方がよっぽど見る価値があったと思う。。

夢のシネマパラダイス284番シアター:00年代アクションの寵児ジェイソン・ボーン

ボーン・アイデンティティー(2002年・アメリカ・119分)2003/02/04・MOVIX仙台

 監督:ダグ・リーマン

 出演:マット・デイモン、フランカ・ポテンテ、クリス・クーパー、クライヴ・オーウェン

評価★★★☆/70点

内容:地中海沖で救助された男は、記憶を失っていた。背中には弾痕、腰には銀行の口座番号を示すカプセルが埋め込まれていた。そして、その銀行の貸金庫には、自分の写真が貼られた何カ国ものパスポートと大金、そして銃が。。はたして自分は何者なのか!?困惑する彼の前に、暗殺者たちが現れる。

“2002年尻拭いの旅inヨーロッパ”

自分はいったい何者なのか?Who Was I?を道標にヨーロッパを股に掛けた一大ロードアクションムービーの様相を呈している今作品。

記憶がないジェイソン・ボーンに加えて、フランカ・ポテンテ扮するマリーも巻き添えになるというダブル巻き込まれパターンは新鮮で、アメリカ大使館の壁下りやカーチェイスなど見所もあり、テンポ良くまとめられている印象。

なのだが、序盤から慌てふためくCIAを出す必要があったのかどうかはかなり疑問符で、後半あたりから出してきた方がもっとインパクトがあったのではないかな、と思うんだけど。まぁ及第点ということで。。

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ボーン・スプレマシー

B00067hdwk_09_lzzzzzzz 出演:マット・デイモン、フランカ・ポテンテ、ジョーン・アレン、ブライアン・コックス

監督:ポール・グリーングラス

(2004年・アメリカ・108分)2005/02/27・盛岡ピカデリー

評価★★★★/80点

内容:インドで恋人と暮らすボーンだったが、いまだ過去の記憶に苛まれる毎日。ある日彼は、自分がベルリンで起きた殺人事件の容疑者になっていることを知り、疑いを晴らすためにベルリンへ向かうが・・・。

“「沈黙の指令」とかいう題名でS.セガール主演だったら面白さは半減していただろう。”

硬派なアクション映画、マーシャルアーツを自在に使いこなし、常に冷静沈着な無敵マシンといえばS.セガールとかぶる要素が多い。

しかしこのジェイソン・ボーンは、マット・デイモンだからこそ味わいが深まるのだと思う。

フツーに街を歩いているような青年、その現実離れしていないリアリティさと、苦悩と知的さを匂わせる人間臭さを兼ね備えた人物像はマット・デイモンのはまり役といってもよい。

それにより平面的になりがちなプロットやアクションに深みが与えられ、味わいも深まった。

前作は全体的にインパクトに欠ける印象があったが、今回は冒頭からマリーの死という圧倒的インパクトのもとで一気に映画とボーンの内側に無理やり引きずり込まれてしまった。

一度引きずり込まれたらもはや逃げ場はない。

この映画の旅にラストのラストまで付き合わされるほかないのだ。

セガールだったら記憶を失くそうが恋人を殺されようが、フンッ!フンッ!ハッ!と心揺さぶられることもなく一直線に突き進む出来レースに終始していたことだろう。

ボーンの敵役には最適かもしれないが。。

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ボーン・アルティメイタム

20071026_247638 出演:マット・デイモン、ジュリア・スタイルズ、デヴィッド・ストラザーン、スコット・グレン、アルバート・フィニー、ジョーン・アレン

監督:ポール・グリーングラス

(2007年・アメリカ・115分)2007/12/01・盛岡フォーラム

評価★★★★/80点

内容:CIAの極秘計画“トレッドストーン”によって過去の記憶を消され、究極の暗殺者にされたジェイソン・ボーンは、過去の断片をたどりながら全てに決着をつけるべく動き出す。しかし、ボーンの背後では全てを闇に葬るためのブラックブライアー作戦が進行していた・・・。

“知能を兼ね備えた童顔マットに対し、本格的な知的センスのオーラを漂わせるデヴィッド・ストラザーンを敵役に配置した時点で勝負はあった。”

「ミュンヘン」から「007/カジノロワイヤル」に至るまで様々な影響を与え、00年代アクション映画の指針となりつづけたジェイソン・ボーンシリーズの“アルティメイタム=最後通告”は、まさに怒涛のアクション総ざらいという様相を呈しており、細かなカット割りはさらに細密に、カメラのブレは確かな自信と確信の中でさらに揺れ動きつづける。

また、ストーリー展開はやや単調にすぎるきらいはあるものの、前作「ボーン・スプレマシー」のモスクワでの壮絶なカーチェイス後から幕を開け、中盤で同じく前作のラスト(CIAビルにいるパメラに双眼鏡でのぞきながらボーンがTELで疲れた顔をしているから少し休んだ方がいいと忠告し、パメラがハッと窓の外を振り返るシーン)につなげていく構成は巧くまとめられているなという印象。

また、ブラックブライアー作戦についても、1作目の「ボーン・アイデンティティー」のラストでウォード・アボット(ブライアン・コックス)が、トレッドストーン作戦は失敗に終わったが次はブラックブライアー作戦というもっと凄い作戦を練っているみたいなことを上層部に報告しているシーンがあって、実はそういう伏線もあったんだなとDVDで3作イッキ見したときに気付いてしまった。。

このボーンシリーズは3連チャンでイッキ見した方がより理解しやすくて面白いのかもしれない。まぁ、6時間手ブレの映像に耐えられるかは問題だけどね(笑)。

しかし、とにもかくにも今作のアクションはスゴイ!

モロッコ・タンジールでの肉弾戦も凄かったが、ボーンシリーズの定番となったカーチェイスも無茶苦茶にもほどがあるっちゅうねん(笑)。車で自ら突っ込んでいくわ、屋上から落下するわ、なのにムチ打ちにもなっていない不死身な人間兵器ジェイソン・ボーンの姿に、ターミネーターのにおいを感じて背筋が一瞬ゾゾッとなってしまった。

一見ナイーヴそうな青年にも見えるフツーの男と、プロフェッショナルそのものの殺し屋としてのギャップが逆にこの映画を濃ゆいものへと深化させているのだとは思うけど。

また、本作は記憶を取り戻そうとする男と、記憶を消去しようとする組織の、これが文字通りホンマもんのリアル鬼ごっこというかんじなのだが、ハリソン・フォードの「逃亡者」(1993)なんかは素人のオッサンがプロを出し抜いて逃げまくるというところに、例えばダムから飛び降りるという無理強いな設定も出てきてしまうのだけど、ボーンシリーズの面白さとカタルシスはプロvsプロの駆け引きと読み合いの頭脳戦にあるといっていいと思う。

CIA組織の包囲網の網の目をこと細かに描写することで、プロvsプロの詰め将棋のごとき駆け引きと攻防戦を無理なく描き出したプロット。さらにその中で、二手先、三手先まで読み切るズバ抜けた推察力と洞察力に裏打ちされたジェイソン・ボーンの付け入るすきのない行動力は無理なく納得させられ痛快そのもの。

ジャンルは違えど、かわぐちかいじの漫画「沈黙の艦隊」で、敵潜水艦に取り囲まれた中をすり抜けていく“やまと”の緻密な操艦術を目の前にしたときの興奮と同じものを感じてしまった。

さらにそこに欧州を股にかけたワールドワイドな景観と雑踏のカオス、そしてボーンシリーズによって確立されたドキュメンタリー系アクションがブレンドされ、まさに瞬きするヒマのない緊迫感を醸成させている。

フツー、3部作の3作目というのはかなりグダグダ感が否めない中途半端なものになりがちなのだが、このボーンシリーズに限ってはそれは当てはまらないらしい。

これでこのシリーズが完結してしまうのが惜しいと思えるほどの完成度の高さと面白さに4作目も見たいと懇願したくなってしまうのだが、、、ネタ探しに苦慮しているハリウッドのことだ。いずれ作るだろうと一人で安心しきっているオイラなのだった。。

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ボーン・レガシー

Jr20120901 出演:ジェレミー・レナー、エドワード・ノートン、レイチェル・ワイズ、ジョーン・アレン、アルバート・フィニー、デヴィッド・ストラザーン、スコット・グレン

監督・脚本:トニー・ギルロイ

(2012年・アメリカ・135分)WOWOW

内容:ジェイソン・ボーンによってCIAの極秘プログラム“トレッドストーン計画”が暴露されようとしていたその頃、CIAは証拠隠蔽のため全プログラムの抹消に動き出した。それはもう一つの極秘計画“アウトカム計画”にも及び、それによって生み出された暗殺者アーロン・クロスにも抹殺の手が伸びようとしていた・・・。

評価★★★☆/70点

シリーズではおなじみのモービーのカッコ良いエンディング曲を聴いて、それまでのモヤモヤ感が雲散霧消しちゃった(笑)。

終わり良ければ全て良しってかんじだけど、そのモヤモヤ感というのは、ひとえにシナリオの分かりづらさに起因している。

3つも4つも作戦名が出てきて妙に話が広がってしまった感がある中で、「ボーン・アルティメイタム」と時間軸を共有するという世界観のつながりがカタルシスではなく、ややこしさに繋がってしまっているのが大きなマイナスポイントだ。

なにせ、こちとらボーンシリーズといえば記憶を失くしたCIA工作員が自分のアイデンティティを取り戻すために闘うというコンセプトくらいしか頭に残っていないわけで、やれトレッドストーンだとかブラックブライアー作戦がどうとかそういう詳細はいちいち覚えてないっつーの(笑)。

ボーン・アルティメイタムとクロスオーバーしたのは、オープニングで主人公が水中を漂っているシーン(かの作品のラストシーンと丸かぶり)とモービーのエンディング曲くらいなものでw、マット・デイモンを登場させないと収拾がつかないんじゃないかと思うくらい話の嘘の上塗りがブ厚すぎて、はっきりいってこれはボーンシリーズとは絡めなくてもいい別個の独立したものとして作るべきだったのでは!?と思ってしまう。

まぁ、研究所の乱射事件の緊迫感や、そこから始まる逃走劇、あるいはバイクのカーチェイスをはじめとするアクションのディテールへのこだわりは十分楽しめるものだったし、なによりもオスカー女優レイチェル・ワイズの起用が、このわけの分からん映画wにあってかなりの助けになっていたと思う。

ハムナプトラシリーズで名をあげただけに、なにげにアクションもこなしてしまう器用さと、繊細な感情表現は折り紙つきの演技派女優としてのバランスがとても良かったと思う。

続編はどうなんだろうなぁ、、とりあえずマット・デイモンの再登板と、変な作戦から縁を切るってのが条件かなww

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(おまけ)

デンジャラス・ラン(2012年・アメリカ・115分)WOWOW

 監督:ダニエル・エスピノーサ

 出演:デンゼル・ワシントン、ライアン・レイノルズ、ヴェラ・ファーミガ、サム・シェパード、ロバート・パトリック

 内容:CIAの南アフリカ支局に勤める新米職員マットは、アジトの管理しかやることがないヒマな仕事に耐えられず不満タラタラの日々。そんなある日、アジトに凶悪犯トビン・フロストが連行されてくる。彼はかつてCIA史上最高のエージェントと評された男だった。ところが尋問の最中アジトが武装集団に襲撃され、マットはフロストを連れて脱出するが、行く先々で正体の分からない連中に襲撃される・・・。

評価★★★/60点

デンゼル・ワシントンほどの名役者がボーンシリーズの劣化版逃走劇ともいえる二番煎じに出る必要があったかどうかは疑問符だけど、出てくれたおかげでそれなりに見られるレベルになっているのはたしか(笑)。

逃走劇で“デンジャラス”と銘打っているわりに悠々と徒歩で振り切ってしまう余裕の風格はちょっと新鮮だったけど、デンゼルでなければ到底見れなかっただろう。

ただ、いかんせん話がめっぽうツマラなくw、デンゼルとは対照的にジタバタしまくるライアン・レイノルズもデンゼルのオーラに対抗しうる存在感の濃さは示せずイマイチ。こうなるとデンゼルを問答無用のワルにした方がまだよかったと思うんだけどな・・・。

邦題にダマされたというか、、まさに張子の虎という言葉がピッタリくる映画だった気がする。

夢のシネマパラダイス563番シアター:最強無敵スタローン伝説

エクスペンダブルズ

The_expendables 出演:シルベスター・スタローン、ジェイソン・ステイサム、ジェット・リー、ミッキー・ローク、ドルフ・ラングレン、エリック・ロバーツ、ランディ・クートゥア、スティーブ・オースティン、ブルース・ウィリス、アーノルド・シュワルツェネッガー

監督・脚本:シルベスター・スタローン

(2010年・アメリカ・103分)WOWOW

内容:バーニー・ロス率いる凄腕傭兵軍団“エクスペンダブルズ(消耗品)”。ソマリア沖での人質救出作戦を鮮やかに成功させた彼らに対し、さっそく新たな依頼が舞い込む。それは、南米カリブ湾の島国ヴィレーナの独裁政権を壊滅させることだった。すぐさま現地へ向かったバーニーだったが・・・。

評価★★★/65点

スタローン、シュワちゃん、ウィリスの3ショット、そしてスタローンvsドルフ・ラングレン(ロッキー4)を見れただけで思わずニンマリ、見た甲斐があったというもの。

しかし、それ以上に驚いたのは21世紀も10年以上経った中で100%濃縮還元した80年代テイストを味わえたことだ。

時代性・社会性などクソくらえのシナリオすっからかんの殺戮アクションはいわゆるタカ派馬鹿映画と呼ぶにふさわしいし、それぞれのキャリアを皮肉ったようなセリフ、ビミョーにかみ合わない会話などユーモアもたっぷりで、アクションスターの末路=消耗品としての開き直りっぷりが見ていて楽しい。

全く重みのないマシンガンの連射音のなんと耳に心地良いことよ(笑)。

映画としての質はかなり低いものの、映画としてのつくり、志はよく伝わってきて、彼らの躍動を見て育ったオイラの心も躍るのでありました♪

しかし、、ここまで女ッ気のないアクション映画てのも久々に見たというか、次作ではスタローンのおメガネにかなうヒロインを出してもらいたいですな。あるいはデミ・ムーア、シガニー・ウィーバーあたりの女エクスペンダブルも出してほしいw

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エクスペンダブルズ2(2012年・アメリカ・102分)WOWOW

 監督:サイモン・ウェスト

 出演:シルベスター・スタローン、ジェイソン・ステイサム、ジェット・リー、ドルフ・ラングレン、チャック・ノリス、ジャン=クロード・ヴァン・ダム、ブルース・ウィリス、アーノルド・シュワルツェネッガー

 内容:バーニー率いる傭兵軍団エクスペンダブルズ。今回CIAのチャーチが彼らに持ち込んできたミッションは、アルバニアの山中に墜落した飛行機からデータボックスを回収すること。当初は簡単な仕事と思われていたが、ミッション完了の直前、謎の武装組織が現われ、データボックスを横取りされた上、大切な仲間の命も奪われてしまう・・・。

評価★★★/60点

追いかけて見つけ出して殺す!という徹底的に単純化されたストーリーと嬉々とした殺戮の嵐は、ノスタルジーと自虐ネタだけで押し通す作風にとってはプラスに働いているといわなければならない。

そうでなければスタローン、シュワちゃん、ウィリスの3人が横一列に並んでマシンガンをブッ放すシビれる絵づらは実現しえなかっただろう。

そういう点で80~90年代に彼らを見て育った自分のような人間にとっては、まさに夢のような見世物が続いて幸せだったのだけれども、他方では創造力のかけらもない古臭い手口の野蛮なスタイルは映画としてどうなんだろう、、とイマイチ乗り切れなかったのもたしかだ。

まぁ、そんな難しいこと考えずに見いやっていう映画なんだけどねw

ジェット・リーを早々に退場させたのは文字通りの使い捨てで、なんでやねんってなったけど、ムキムキの元番長たちが今のめまぐるしいアクション映画に迎合することなく、かつてのアクション映画の復古を旗印に掲げて、でんっ!と構えるさまは、“ノスタルジー”というよりは“レガシー”と形容した方が的を射ているのかもしれない。

スタローンvsヴァン・ダムなど胸アツくなることしきりだったし、なんだかんだいって3作目もキャスト含めて絶対見たいと思っているオイラなのですた。

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エクスペンダブルズ3 ワールドミッション(2014年・アメリカ・126分)WOWOW

 監督:パトリック・ヒューズ

 出演:シルベスター・スタローン、ジェイソン・ステイサム、アントニオ・バンデラス、ジェット・リー、ウェズリー・スナイプス、ドルフ・ラングレン、メル・ギブソン、ハリソン・フォード、アーノルド・シュワルツェネッガー

 内容:今回CIAからエクスペンダブルズに依頼されたミッションは、大物武器商人ストーンバンクスの身柄確保。ところが、ストーンバンクスはエクスペンダブルズの創設メンバーで、かつてバーニーがその手で葬り去ったはずの男だった。そして、エクスペンダブルズの弱点を知り尽くしたストーンバンクスに苦戦を強いられ、仲間が負傷してしまう事態に。仲間の身を案じたバーニーは、チームを一方的に解散し、若手メンバーで新チームを結成し作戦に挑むのだが・・・。

評価★★★☆/70点

ハリソン・フォード、メル・ギブソン、アントニオ・バンデラス、ウェズリー・スナイプスと、ビバ80’s&90’sの自分としては、ブルース・ウィリスの降板を差し引いても十分お釣りがくるほどのキャスティングで大満足。

スタローンと共演した「暗殺者」や「デスペラード」を意識したキャラクターのアントニオ・バンデラスに、「ブレイド」の刀さばきを披露するウェズリー・スナイプスとそれぞれに上手い見せ場を作り出したし、スタローンとメル・ギブソンのタイマンバトル、スタローン&フォード&シュワちゃんが同じ画面に収まっているショットなどワクワク感はハンパなかった。

要はこれって、笑っていいともの最終回で明石家さんま、とんねるず、ダウンタウン、ウンナン、爆笑問題、ナイナイが奇跡の共演を果たしたのと同じインパクトを持ってるんだよね。80~90年代に彼らの映画を見て育った自分みたいな世代にはホントに夢のような共演なわけで、唯一ジェット・リーが前作につづき捨て駒になっているのは不満点だけど、もうここまでくるとシナリオなんてどうでもいいww

さぁ~、残る大物はニコラス・ケイジ、セガール、そして我らがジャッキー・チェンだな♪

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ランボー(1982年・アメリカ・94分)WOWOW

 監督:テッド・コッチェフ

 出演:シルベスター・スタローン、リチャード・クレンナ、ブライアン・デネヒー、ジャック・スターレット、デヴィッド・カルーソー

 内容:ベトナム戦争で共に戦った戦友を訪ねた元グリーンベレーのジョン・ランボーは、戦友がすでに亡くなっていたことを知り、山に囲まれた小さな町に出る。警察署長のティールズは、不審者としてよそ者のランボーを署へ連行するが、狭い留置所と厳しい尋問からベトナムで受けたトラウマをよみがえらせたランボーは、警官を倒してバイクを奪うと山中に逃亡する。執拗に後を追う警官隊に対しランボーはゲリラ戦を始める・・・。

評価★★★★/80点

悪徳保安官が牛耳る街にやって来た流れ者ランボーに縄張りを荒らされては困ると保安官がイチャモンつける展開てのはフォーマットとしては西部劇そのもので、ランボーを追いつめていく州兵はさながら騎兵隊か。

あまり多くを語らない寡黙な流れ者というのも西部劇の定番キャラだけど、それを現代と結びつけるのが南北戦争、、ではなくベトナム戦争で受けた心の傷というのがこの映画のキモだ。

そして森の中を突き進む州兵はジャングルを彷徨するアメリカ軍、森に潜む流れ者ランボーはべトコンという構図へと変貌をとげる。

その“アメリカ軍”が味方を誤射してしまったり、ロケット砲を撃ち込んだ場所で記念写真を撮るといった醜悪な場面も描かれていて、戦争批判にもなりえているし、ラストのランボーの心の叫びはアメリカ批判へとつながっている。

B級テイストがあまりにも強すぎるので忘れがちだけど、そういう重たい社会派精神を取り入れたB級アクションというのはおそらくこの作品以外にないのではなかろうか。

スタローンのせつない眼差しが胸に突き刺さってくる秀作である。

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ランボー2 怒りの脱出

20091130230423dd0 出演:シルベスター・スタローン、リチャード・クレンナ、チャールズ・ネイピア、ジュリア・ニクソン、スティーヴン・バーコフ

監督:ジージ・P・コスマトス

(1985年・アメリカ・96分)WOWOW

内容:獄中の身であったランボーは特命を受け、いまだにベトナム戦争で行方不明となっている兵士の調査のためカンボジアへ飛ぶ。現地の連絡員と落ち合ったランボーは、ジャングルの奥地で未帰還者が入れられている施設を発見するが、救援部隊の裏切りにあい敵側に捕まってしまう・・・。

評価★★★/60点

1作目の悲壮感漂う痛切なメッセージなどなんのそののノリノリ戦争アクションに脱皮してしまったトンデモ作。

けど、「地獄はアイツにとって故郷です」とトラウトマン大佐に言わせしめるランボーのやりたい放題アクションは個人的には嫌いじゃないし、パーティーを欠席しても誰にも気付かれないようなどうでもいい人間なんですと自分を卑下するランボーのいたいけな眼差しを前にすると全て許せてしまう。おいおいw

まぁ、どっからどう見ても殺戮映画には違いないんだけど、ここまであからさまなタカ派バカ映画って今では作りようがなく、80年代ってよっぽどお気楽な時代だったんだなぁとノスタルジーに浸ってしまったww

あ、あと、ヒロイン役の女性、好みです

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ランボー3 怒りのアフガン(1988年・アメリカ・100分)WOWOW

 監督:ピーター・マクドナルド

 出演:シルベスター・スタローン、リチャード・クレンナ、カートウッド・スミス、マーク・ド・ジョング

 内容:1978年、ソ連のアフガニスタンへの侵攻に対し、聖戦ジハードを唱える義勇兵たちはゲリラ戦を繰り広げていた。彼らはムジャヒディンと呼ばれ、アメリカも武器供与や訓練などで協力していた。が、そんな中、顧問団として現地にいたトラウトマン大佐がソ連の捕虜になるという事件が発生する。ベトナム戦争で部下だったランボーは、大佐を救うためにソ連軍と死闘を繰り広げる。。

評価★★☆/50点

この映画から十数年後、ランボーとともに戦ったムジャヒディンが9.11テロを引き起こす元凶になろうとはこのとき誰も知るよしがなかった・・・ww

が、アメリカこそが横暴なテロ支援国家であることを自ら証拠として残したという点では超一級の歴史的バカ映画だったんだな(笑)。

ムジャヒディンののたまう国と神のために死ぬのは名誉で誇りであるという聖戦にすっかりのぼせ上がり、大殺戮を繰り広げたランボーはいったい何を想うのか・・。

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ランボー 最後の戦場

Img_682755_53546019_0 出演:シルベスター・スタローン、ジュリー・ベンツ、ポール・シュルツ、マシュー・マースデン、ケン・ハワード

監督・脚本:シルベスター・スタローン

(2008年・アメリカ・90分)DVD

内容:祖国アメリカを離れ、タイ北部のジャングル地帯でひっそりと暮らしていたジョン・ランボー。そんなある時、内戦続く隣国ミャンマーで迫害にあっていた少数民族に医療品を届けるため、アメリカからボランティア団体がやって来る。ボートでの道案内を依頼されたランボーは、海賊の襲撃をかわしながら何とか彼らを目的地に送り届ける。しかし数日後、彼らが軍に拉致され、今度はその救出に雇われた傭兵集団を現場へ送ることになるが・・・。

評価★★★/60点

腹をかき切り、のどをえぐり取り、頭はスッ飛び、足は豚のエサになる・・。ここまでエグイ人体破壊を見せられるとは思いもよらなかったけど、正味80分の中に詰め込まれた残虐描写の数々にただ呆然とするばかり

ミャンマー軍の一分のすきもない極悪非道ぶりも徹底していて、20年前と何ら変わらない昔ながらの勧善懲悪を見せてくれるが、その程度がとにかくハンパないのだ。

ここまでする必要があるのかと訝ってしまうくらいなのだが、そこに何の意味を見出せるというのか、それを考えること自体もはや意味を成さないように思えてしまう。

前3作において国のために戦ったのに全然報われないことにいじけていたランボーが、今作では国のためではなく自分のために戦うのだと悟りを開き、戦いに血を燃やす戦闘マシーンとしての矜持を取り戻す、その姿にはたしかに爽快感を覚える。

しかし、あまりにも幕引きが唐突すぎるゆえ、戦士の座から降りムダに生きることを決意して故郷に戻る動機と、かの大殺戮が全く結びついていないのはイタイ。

これではただの脳天気なスプラッタ映画ではないか。

尺を10分延ばしてでも描くべきところは描いてほしかった、、けどその10分も殺戮場面に費やすんだろうな・・・w

夢のシネマパラダイス33番シアター:ホビット 思いがけない冒険

ホビット 思いがけない冒険

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 出演:マーティン・フリーマン、イアン・マッケラン、リチャード・アーミテージ、ケイト・ブランシェット、イアン・ホルム、クリストファー・リー、ヒューゴ・ウィービング、アンディ・サーキス

監督・脚本:ピーター・ジャクソン

(2012年・アメリカ・170分)WOWOW

内容:LOTRシリーズを遡ること60年。中つ国のホビット庄で平穏に暮らしていたビルボ・バギンズのもとにある日、魔法使いガンダルフとトーリン率いる13人のドワーフたちが訪れる。彼らは、恐ろしいドラゴン・スマウグに奪われたドワーフ王国を取り戻す旅に忍びの才能を持つビルボを誘いに来たのだった。思わず旅の仲間に加わったビルボだったが、彼らの前には予想を遥かに超える険しい道のりが待ち受けていた・・・。

評価★★★/65点

登場人物や種族、地名など数多のややこしい名称に四苦八苦したLOTRから10年。

それらの記憶が薄れかけてきたその時に再び幕を開けた大冒険、、ってマジかよ

と、かなり身構えて見始めたのだけども、いざ物語が始まりホビット庄のビルボの袋小路屋敷が出てきた途端、すんなりと映画の世界に入っていくことができた。

やはりLOTR3部作はまがりなりにも自分の身体に何かしらの下地を植えつけてくれたようだ。

かといって、そんなにのめり込んで見るようなテンションを与えてくれたわけでもなく、淡々と見てしまったかんじなのだけど、それはLOTRでフロドたちが辿ったのと同じような行程を進んでいくため、展開が似通っていて起伏に乏しいというのがあったからかもしれない。

また、旅を共にする15人もの大所帯もビルボやガンダルフ以外パッとしないのもイマイチだったし。。

ただ、霧ふり山脈の地下深くでビルボとゴラムが出会い、ビルボがどのように“ひとつの指輪”を手に入れたのかが明かされるところはさすがに興奮したw

まぁ、第2部、3部と見ていけばまた理解も深まっていくと思うけど。。今のところのテンションは★3つに届かないかなぁ・・・。

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ホビット 竜に奪われた王国(2013年・アメリカ・161分)WOWOW

 監督・脚本:ピーター・ジャクソン

 出演:マーティン・フリーマン、イアン・マッケラン、リチャード・アーミテージ、ベネディクト・カンバーバッチ、オーランド・ブルーム、エヴァンジェリン・リリー、ルーク・エヴァンス

 内容:魔法使いのガンダルフらとドワーフの王国を取り戻すために旅に出たホビット族のビルボは、途中で不思議な指輪を手に入れたことを黙ったまま旅を続けていた。幾多の危機を乗り越え、目指すはかつてドワーフの王国があったはなれ山。そんな道中である時、闇の森に迷い込んだ一行は巨大クモの化け物に襲われるが、レゴラス率いるエルフたちに助けられる。しかし、ドワーフとエルフは昔から犬猿の仲だった・・・。

評価★★★★/75点

LOTRより面白い。

もちろんそれはLOTRが築き上げた世界観が下地にあればこそだけど、いかんせんホビット族の主人公とその仲間たちが危険な冒険の旅に出るという話のつくりがLOTRの焼き直しにしか見えない中で、唯一の比較対照となりうるフロドとビルボを比べると、ビルボの方が断然魅力的だからだ。

それは指輪の持つ大いなる力や指輪を使うと冥王サウロンにバレてしまうといった制約にがんじがらめになるフロドと、忍びの者として何のためらいもなく指輪を使いまくるビルボの違いと言いかえることもできよう。

より主体的に行動し、ダークな一面をも受け入れる人間味あふれるビルボのキャラクターが、冒険活劇の主人公としては上回るということだ。

さらに今回はストーリーテリングが、追ってくるオークをかわしつつ様々なミッションをクリアしながら目的地に向かうパーティメンバーの冒険譚一本に集約されていて、よりシンプルなRPG的要素が際立っていたので見やすかったというのもある。

また、最も頼りになる大魔法使いガンダルフがそそくさとパーティを抜け出して行ってしまうので、13人の足手まといとドワーフのなんちゃって王子と小っちゃいホビットという人数のわりにレベルが格段に低いパーティwが独力で頑張らなければならないという面白さがあったと思う。

自分みたいにLOTRにさほどの思い入れがないwにわかファンタジー好きにとっては非常にとっつきやすい作りになっていた。

ラスボスであるドラゴン・スマウグとの最終バトルが終わったと思ったらスマウグが金色の竜になって復活!というラストも次が早く見たいと思わせる幕切れで良かったし、LOTRの時より確実にテンションが上がっている自分なのだった(笑)。。

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ホビット 決戦のゆくえ(2014年・アメリカ・144分)

 監督・脚本:ピーター・ジャクソン

 出演:マーティン・フリーマン、イアン・マッケラン、リチャード・アーミテージ、エヴァンジェリン・リリー、ルーク・エヴァンス、ベネディクト・カンバーバッチ、ケイト・ブランシェット、クリストファー・リー、ヒューゴ・ウィービング、オーランド・ブルーム

 内容:ガンダルフやビルボとともに過酷な旅を続けてきたトーリン率いるドワーフ一行はついにはなれ山のエレボール城にたどり着くが、そこに巣食う竜スマウグが怒り狂い近くの湖の町を火の海にしてしまう。しかし、エルフ族や弓の名手バルドの活躍でスマウグを倒し、竜に奪われた王国の奪還に成功する。が、トーリンは城の財宝に心を奪われ、城下町へ避難してきた湖の町の人々を拒絶、財宝の分配を要求するエルフとも一触即発の事態に陥ってしまう。三者の対立が激しくなる中、その隙をついてオークの王アゾグ率いる大軍が攻め寄せてくる・・・。

評価★★★/60点

竜スマウグを倒してエレボールを奪還した最初の15分で1作目に打ち立てられた目的は果たされているので、もう見るべきところもないんじゃないかと思ったけど(笑)、エレボールの財宝をめぐる利権争いがあったか、、って別にそんなの興味ねぇーーwwという点でこちらのテンションが低めからスタートしてしまったのが少々響いてしまったかも・・。

さらに、独占欲と猜疑心に取りつかれ暗黒面に堕ちていくトーリンを主軸に据えたことでビルボが脇役になっちゃって、、こちらとしてはビルボの頑張りと成長をこそ見たかったのに。。まぁ、1作目からトーリンに人間的魅力をあまり感じられなかったというのもあるんだけどね

なんか、2時間半もかけて描くまでの質量と肝心の中身が釣り合っていない印象を受けたかな。

スマウグという絶対的ラスボスに比べると、オーク軍団を率いるアゾグはチンピラレベルだし(笑)、はっきりいって見てて燃えないんだよね。。大鷹には乗りたいけど、一本調子な映画には乗れなかったというオチ。

せめてパッと出てきてパッと消えた巨大ミミズとのバトルシーンくらい見せろやと思ったのは自分だけw?

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