夢のシネマパラダイス66番シアター:ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還
出演:イライジャ・ウッド、イアン・マッケラン、ヴィゴ・モーテンセン、ショーン・アスティン、リブ・タイラー
監督・脚本:ピーター・ジャクソン
(2003年・アメリカ・203分)2004/03/01・MOVIX仙台
評価★★★/65点
内容:苦難に満ちたフロドの旅もついに大団円を迎える。第76回アカデミー賞作品・監督・脚色など全11部門を受賞。
“自分にとってLOTR3部作は、真に指輪物語の世界に入っていき理解するための単なるガイドブックに過ぎなかったのかもしれない。これから自分はやっとで旅に出ることができます。大いなるミドルアースの世界へ・・・。”
一応自分の中では「旅の仲間」が★4つ、「二つの塔」が★2.5~3、本作が★3つ、3部作通して★3.5という評価。
まず、LOTR3部作に出会うまでトールキンの指輪物語を全く知らなかったということが自分の映画の見方というか自分の立ち位置を相当制限してしまったなとは3部作通して感じたかな。
だって「旅の仲間」を初めて観たときは全く彼らの旅についていけなかったのだから。。
エルフやホビットすら分からない状態、顔と名前が一致するのはフロドとガンダルフのみという体たらく・・・。
それがましてや真の勇者サムなんかに共感し涙するとはこの時は全く思いもよらなかった。。
「二つの塔」は自分の中ではガクンと落ちちゃったかんじ。
端的にいえばスター・ウォーズ的世界観に変わっちゃったということ。
広大な世界をパッと提示しておいて、描いてることはそんなに広くはない、いや実は狭いといっていい。
「二つの塔」はまさにそんなスター・ウォーズ的世界観へと変容してしまった。
深みがないんだよねはっきりいうと。
そして「王の帰還」もたいしてその世界観から逸脱してはいないなと感じた。だから熱狂できないのかも。スター・ウォーズはフツーに面白いけど熱狂はできないからなぁ。。
一方それに対して、1作目「旅の仲間」はアラビアのロレンス的世界と言えばいいかな。
「アラビアのロレンス」がすごいなと思うのは、広大な砂漠をただラクダでゆっくり進むだけのシーンが、まるで1時間ずっとそのシーンだけで画面がもってしまう、映画がもってしまうのではないかと感じさせるほどの雄大さ、壮大さを醸し出しているところにあると思うわけで。
そして「旅の仲間」にはそれがあった。
最も典型的なシーンが、大河を船で進んでいく時に巨大なアルゴナスの像が現れるシーン。LOTR3部作の中で1番壮大なシーンじゃないかな。
人知の及ばない風景、しかしそこにはちゃんとフロドやアラゴルンといった人物が存在している。それが実感できた時にはじめて映画のもつ真の壮大さが体感できるのではないだろうか。
しかし、「二つの塔」「王の帰還」ではそれがあまり実感できなかった。
壮大さに対する卑小さを描いてこそ本当の壮大さが実感できるのに・・。
だから「二つの塔」「王の帰還」では中つ国の広さをはじめとする奥行きがほとんど感じられないのね。まあ「王の帰還」での山から山への狼煙リレーくらいかな。
それを抜きにしたって、なんか中つ国ってもしかして狭いの?もしかして2,30キロ四辺の世界なの?みたいなw
でも聞くところによると霧ふり山脈の全長が1600キロくらいあるんでしょ。そりゃ広大だわなぁ。でも何なんだろうこの狭小なかんじは、というのを「二つの塔」以降ずっと感じてしまってて、マイナスの違和感として映画の世界の中に入っていくことを困難にさせてしまったと思う。
あと重要なのが、食べる、寝るといった人間の営み(人間以外の種族が多く出てくるけど)をしっかり描いているか。
でも、これまた「二つの塔」以降はもうスゴイわけで。。なにがスゴイって飲まず食わずでみんな走るわ走るわ
かる~く数百キロ余裕で走ってるでしょ。かる~く見えちゃうのがなんとも軽いんだよね映画自体が。
そのかる~く見させているのが先ほども言った中つ国の広さをはじめとする奥行きのなさだと思うし、そこに行き着いちゃう。
だから、奥行きのなさ、深みのなさと人間の営みを描かないことというのは、要するに表裏一体なんじゃないかと。それがほとんど描かれてないからなぁ。。
スター・ウォーズもまさにそうなんだよね。
あと、3部作通してなかなか映画の世界へ没頭できなかった理由。
それはフロド。
3作通してのフロドの印象は、ただウーウーうなってるだけの存在というかんじ。ほんとそれだけ。
例えばドラクエやFFといったRPGでいえば、敵と戦い経験値を上げて力をつけに行く旅というのが普通なんだけど、力の源泉(指輪という大いなる力)を捨てに行く旅というのはホント正反対のことをやってるわけだよね。
それに対しては何の異論もないんだけども、ただ何らかの経験値は旅を続けていくにしたがい得ていかなければならない、いわば成長していかなければならないし、それを見ていきたいと思うわけ。
その経験値とは何かといえば、この場合フィジカル的なアビリティではなく、完全にメンタル的なアビリティとなるはずで。
ところがフロドはそのメンタル面でもずっと停滞したままという印象が強い。
サムが本当に成長して顔も変わっていく姿を見るにつけ、フロドが成長していかないもどかしさは大きくなるばかり。
それだけ指輪のもつ大いなる魔力と魅力が凄まじくて、がんじがらめになっていたのかもしれないけども・・・。それにしたってねぇ~。
だからもうこれはサムの物語だなとして「王の帰還」なんかは完全にそういう見方で見ちゃったわけ。
単なるシンボルにしかなっていないフロドはか弱いお姫様にしてた方がよかったんじゃなかろうか。。
以上のようなことからなかなか映画の世界へ直に入っていくことができなかったわけだけど、しかし、一応指輪物語の基礎となるものは完全に自分の中で根をはったなという実感もある。
今原作を読んでいる最中だけど、映画のようにせかせかと走り抜けるのではなく、ゆったりとこの世界を歩いていきたいと思う。
やっとで旅の準備は整った。
じゃあ、遅ればせながら、僕も行ってきます!!
Posted at 2004.03.09
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映画『スター・ウォーズ』、ゲーム『ドラゴン・クエスト』の原点とも言われるトールキンの幻想サーガをラルフ・バクシがアニメ化。「ファンタジー」という言葉自体になじみの薄かった1978年の作品である。 すべてを支配するほどの力をもった指輪をめぐる物語――神々がいて人間がいてホビットやドワーフ、オークなどの種族が混在する壮大な世界を創造した偉大なる原作。この作品はその前半部分を映像化している。撮影した実写フィルムを1コマずつセル画にトレースする「ロトスコーピング」と呼ばれる技法を全編に導... [続きを読む]
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