夢のシネマパラダイス156番シアター:バットマンシリーズ
バットマン
出演:マイケル・キートン、ジャック・ニコルソン、キム・ベイシンガー
監督:ティム・バートン
(1989年・アメリカ・127分)劇場観賞
内容:アメコミの人気ヒーロー、バットマンを23年ぶりにスクリーンに蘇らせたSFアクション。市制200年を迎えるゴッサムシティには悪がはびこり、正義のヒーロー、バットマンの活躍に関心が高まっていた。報道カメラマンのヴィッキーは、取材を進めるうちに大富豪のブルースと出会い恋に落ちるが、実は彼こそがバットマンの正体だった。そんな折、バットマンに倒されたはずの悪者ジャックが、犯罪組織のボスを殺して後釜に座り、街を征服しようと企んでいた・・・。
評価★★★★/75点
スマイリーなジョーカーという強烈なキャラクターだけで、バットマンはおろかダークなゴッサムシティの世界観の向こうを張っているという凄さ。
そしてそれを嬉々として演じるジャック・ニコルソンの凄さ。
後の続編のことを考えると、このことがいかに凄いことだったかということが分かるってもんだ。。
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バットマン・リターンズ(1992年・アメリカ・128分)盛岡中劇
監督:ティム・バートン
出演:マイケル・キートン、ダニー・デヴィート、ミシェル・ファイファー
内容:クリスマスを目前に控えたゴッサムシティでは、ペンギンと名乗る男が部下を引き連れて街を恐怖に陥れようとしていた。ペンギンは街の実力者マックスと結託し、シティに君臨しようと企むが、その野望に気付いたバットマンことブルース・ウェインは、ペンギンたちに闘いを挑む。
評価★★★★/75点
“悪者キャラが主で、正義のヒーローが従という普通では考えられない逆転現象をはじめとして、完全にティム・バートンだけの世界へと進化を遂げた恐るべき作品。”
ただ1ついただけないのは、バットマンがキャットウーマンとマックスの前で、マスクをはずしてしまうこと。
最大の禁じ手でしょうよそれって。。
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バットマン・フォーエバー(1995年・アメリカ・119分)盛岡フォーラム
監督:ジョエル・シュマッカー
出演:バル・キルマー、クリス・オドネル、ジム・キャリー、トミー・リー・ジョーンズ
内容:バットマンに恨みをもつ二重人格の犯罪者トゥー・フェイスと、狂気の科学者リドラーの挑戦に、バットマンと相棒ロビンが立ち向かう!
評価★★★☆/70点
シリーズ中では1番好きな悪役キャラであるトゥー・フェイスとリドラーが、この作品をなんとか持ちこたえさせている。
それにしてもバットマン弱すぎ・・。ロビンと合わせて1人前ってかんじ。
色恋沙汰もとってつけたようなただの蛇足だし。。
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バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲(1997年・アメリカ・124分)1997/08/30・セントラル劇場
監督:ジョエル・シュマッカー
出演:ジョージ・クルーニー、アーノルド・シュワルツェネッガー、クリス・オドネル、ユマ・サーマン
内容:街中をすべて凍らせてしまうMr.フリーズと、植物の帝国を築こうとするポイズン・アイビーに、バットマンとロビンらが立ち向かうシリーズ第4作。
評価★★/35点
オレから言わせりゃ、この映画はさしずめ「レイプ・ザ・バットマン」だな。。
ティム・バートンのバットマンが完全に犯されて崩壊しちゃったてとこだな。
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バットマン・ビギンズ
出演:クリスチャン・ベール、マイケル・ケイン、リーアム・ニーソン、モーガン・フリーマン、渡辺謙
監督・脚本:クリストファー・ノーラン
(2005年・アメリカ・140分)2005/07/09・ピカデリー
内容:バットマンの超人的能力の秘密、コウモリ姿の理由など、若かりし日のブルース・ウェインの秘密とともに仮面の戦士バットマン誕生秘話が明かされるシリーズ第4作。
評価★★★☆/70点
スパイダーマンシリーズが打ち立てた、生身の苦悩を背負ったスーパーヒーローとしてのアイデンティティの確立というレールに臆面もなくそのまま乗っかっているのは多少引っかかるが、二番煎じの烙印を押すまでには至らない無難な仕上がり。
何回も言うようだけど、あくまで無難な仕上がりですから。。
特に優れてもいないが欠点もないといったかんじ。
なにかパズルでいうと、重要な決めのワンピースが抜け落ちちゃってる気もするが、並み居る人海戦術にうまくはぐらかされたかも・・。
特にゲイリー・オールドマン!
だってハリウッド史上最凶の汚職警察官スタンスフィールド(「レオン」)がまっさか善良な正義を貫く警察官になっちゃうなんて・・・。そんなゲイリー・オールドマンを見るのもまたオツなものではあったけどさ。
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ダークナイト
出演:クリスチャン・ベイル、ヒース・レジャー、アーロン・エッカート、ゲイリー・オールドマン、マイケル・ケイン、マギー・ギレンホール、モーガン・フリーマン
監督:クリストファー・ノーラン
(2008年・アメリカ・152分)2008/09/01・盛岡フォーラム
評価★★★★★/100点
内容:ゴッサムシティでは、バットマンとゴードン警部補が手を組み、日々の犯罪に立ち向かっていた。が、ジョーカーと名乗る正体不明の男が次々と凶悪事件を引き起こしていき、ゴッサムシティは混乱のるつぼに・・。そんな中、正義感に燃えるハービー・デント地方検事が新しく赴任するが・・・。
“アザだらけのヒーロー”
正義か悪か、善人か悪人か、敵か味方か、西側か東側か、資本主義か社会主義か、あちら側かこちら側か、、、という単純な二項対立で全てに片がつけられるとお気楽に考えられていた80年代、世界の警察として君臨していた超大国アメリカでは、勧善懲悪のヒーローであるスーパーマンが幻想の大空を駆け回っていた。
それから10年後、病める現代人が世の中にあふれ出した90年代、少年時代に両親を殺された暗い過去を抱え、抑えがたい復讐心に駆り立てられる二面性を持ったヒーロー、バットマンがゴッサムシティの闇を駆け回り、バットマンのせいで醜い怪人となり復讐に燃える男、そして実は彼の両親を殺した犯人ジョーカーとの因果応報戦は一筋縄ではいかないヒーロー活劇の新機軸を示した。
さらにそれから10年後、ヒーロー不在の00年代、スーパーパワーを持ちヒーローになること自体に苦悩する落ちこぼれ高校生の青春劇として描かれるに至ったスパイダーマンは、等身大の人間としてヒーローを地に降り立たせた。
それは、9.11によりヒーローでありつづけることの存在意義に大きな傷を付けられたアメリカの憂いでもあり、しかしそれが物語にも深みをもたせることにもつながったわけだが、今回それらがお茶らけて見えてしまうほどのさらなる進化・・?いや、深化を遂げてしまったのが本作「ダークナイト」だ。
空を飛び回るヒーロー、闇を駆け抜けるヒーロー、等身大のヒーローときて、まさか犬に追っかけられるヒーローというのを誰が想像しえただろうか(笑)。
ストーリーよりもデザイン、内容よりもスタイルを重視したティム・バートン版バットマンの真逆をいくコンセプトのもと作られたといえる本作は、アメリカ的な二項対立で世界を捉えることの限界を露わにした。
そして、勝手に制裁を加える無法者として市民から非難されるバットマンと、混沌と恐怖の配達人ジョーカーが生み出すめくるめく暴力の連鎖は、9.11を境に噴出した我を忘れ怒り狂ったアメリカの暴走と世界の混乱、さらにつきつめていけばスーパーパワー・アメリカの世界覇権の終わりと世界の多極化に伴なう混沌と新たな犠牲の形を暗に示しているともいえ、まさにアメコミ映画としてのマンガ的娯楽性以上に、社会派映画としてのドラマ性、さらに犯罪大作としてのカリスマ性を備えたもの凄い作品に仕上がっている。
フィクションとしての一線をはるかに超えてしまった映画というのはそうざらにはないと思うのだけど、まさかアメコミ映画でこういう稀有な映画体験をしてしまうとは思いもよらなかった・・・。ていうかアメコミ映画とはいえないなこれは。。
なによりも登場人物たちそれぞれに込められた心理的な軌跡が幾重にも重なって物語をグイグイと引っ張っていく構成はかなりのもので、それだけでも観る価値のある作品だといえよう。
毒をもって毒を制するやり方で正義を成そうとする中、次第にエスカレートしていく必要悪とモラルの狭間に陥っていくバットマン=ブルース・ウェイン。
法律を武器に悪をこらしめる最も潔癖なホワイトナイト(光の騎士)でありながら、「ヒーローとして死ぬか、生きながらえて悪に染まるか」という言葉を自ら体現してしまったハーベイ・デント=トゥーフェイス。
ゴッサム・シティ最後の良心の体現者ジム・ゴードン。ブルースとデントの間で揺れ動くレイチェル。
そして、虚無の塊にして純粋悪の権化、究極の二者択一を矢継ぎ早に突きつける中で観る側をも不安と混沌に巻き込み、我々の善悪を試してくる史上最凶の悪役ジョーカー。
これら5人の堅固な登場人物を、さらにマイケル・ケイン、モーガン・フリーマンらが脇を固め、陣容は完璧な布陣。
また、見せ場の連続と驚異的なプロットの詰め込みを、恐ろしいほど細分化されたカット割りと、一つ一つのシーンを全て見せず寸止めの極致で押しとどめる編集(例えば流血シーンを見せないで観客に想像させるetc.)の妙など、技術面も特筆もの。
これがホントのA級映画なんだよ。うん。
ジョーカー役のヒース・レジャーの怪演についてはもはやどんな言葉も意味を成さないだろう。この映画を見れば分かる、とにかくこの映画を見てくれ、とだけ言いたい。
さて、ジョーカーが繰り出す究極の二者択一、その最たるものがクライマックスで描かれた、市民が乗るフェリーと囚人が乗るフェリーがお互いを爆発させる起爆装置によって天秤にかけられ、午前0時までに相手の船を爆発させないと自分たちの船も爆発してしまうという恐ろしいものだったが、ここでの救いのありかが“独りよがりでくだらない正義漢”をもつスーパーヒーローではなく、浅ましさの象徴とも捉えられる一般大衆と悪人の集団である囚人であったことに善悪を超えたところにあるモラルと良心を感じ取ることができ、暗く重い映画にあって一縷の希望の光を見出した気がした。
我々の良心は、大丈夫だろうか・・・!?
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ダークナイト・ライジング(2012年・アメリカ・162分)WOWOW
監督:クリストファー・ノーラン
出演:クリスチャン・ベイル、マイケル・ケイン、ゲイリー・オールドマン、アン・ハサウェイ、トム・ハーディ、マリオン・コティヤール、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、モーガン・フリーマン、キリアン・マーフィ、リーアム・ニーソン
内容:非業の死をとげた地方検事ハービー・デントの罪を一身に被り、ゴッサム・シティから姿を消したバットマン=ブルース・ウェイン。しかし、それから8年後、ゴッサム・シティは、地獄の牢獄から脱獄した凶悪テロリスト・ベインの登場で一変してしまう。さらに、ベインの策略でウェインは全財産を失ってしまい・・・。
評価★★★★/75点
前作「ダークナイト」より一段落ちるとはいえ、水準以上の面白さと必要以上の風格を兼ね備えた娯楽大作は十二分に見応えのあるものになっていたとは思う。
しかし、前作の出来が突き抜けていただけに、という引っかかり感もなかなか拭えず・・・。
法の下の正義ハービー・デントの限界と、法を超越した存在バットマンの矛盾を暴き出し、正義と悪はコインの裏表のごとく簡単にひっくり返ってしまうのだという勧善懲悪の価値観を揺さぶりつづけた前作は、アメコミ映画の枠を完全に超えていた。
その点からすれば、今回はわりと勧善懲悪に沿ったものになっていて、それはそれでいいのだけど、敵役ベインの悪役造型がイマイチつかみどころのない所が前作より一段落ちる要因になっていたと思う。
肉弾戦でバットマンを圧倒したベインの力の源は確固たる信念なのだと執事アルフレッドに言わせしめるその信念とは何なのかがよく分からなかったし(一応ラストでそれはひとりの女性への愛なのだとクッサイところに矮小化されちゃったけどw)、ベインのいうところの革命にギリギリ共感できる一線に持っていくことができなかったシナリオの粗はことのほか大きく、ゴッサムを市民の手に取り戻せー!!と豪語してるわりに肝心の市民の顔が見えてこないのも大きな欠落だったのではなかろうか。
例えば警官たちが5ヶ月もの間、地下に閉じ込められて街の秩序が破壊された中で、警官たちに物資援助したり地下組織を作ってベインに対するゲリラ戦に身を投じる市民が出てきてもおかしくないはずなのに、ベインに扇動される貧民や囚人ばかりが描かれ、まるで富裕層や権力者が正しき者、守るべき者で一般大衆は愚かなのだというねじれた錯覚を引き起こすに至っては居心地の悪さを感じずにはいられなかった。
そのちぐはぐ感を奈落に落ちたバットマン=ブルース・ウェインの自分探しで埋めているといったところだろう。
ただ、ゴッサムが明らかにNYに見立てられているように、現実世界(あるいはアメリカの今)と地続きの風景にアメコミ映画を昇華させた映画的レベルは凡百のヒーロー映画が到底かなわないところに達しているのは確かだし、バットマンの意志が若き警官ジョン・ブレイク=ロビンに継承され、さらにニヤリとさせるラストの収め方も納得のいくものだった。
ビギンズからつづく3部作のクオリティが傑作レベルにあると断言することにはいささかの躊躇もない。
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