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2014年11月24日 (月)

太平洋戦争の記憶シリーズ第4回:硫黄島の戦い

00111144d5a5103d6e941d 硫黄島の戦いというと、クリント・イーストウッド監督・渡辺謙主演の映画でその概要は知ってるつもりではいたけど、守備隊2万1千人のうち戦死者2万、戦死率95%という異常な数値には驚愕した。玉砕戦とはこういうことをいうんだとまざまざと理解できた気がする。

さらに、敵艦船に向けて神風特攻隊が出撃していたというのも知らなかった。

新聞で詳しく硫黄島の激戦の様子が伝えられているのも意外だったけど、もっと意外だったのは戦局が悪いことを率直に認めていることだ。

昭和20年2月18日付の新聞には関東~静岡に2日続けて空襲があったことや、疎開宿舎の爆撃や走行中の列車へ機銃掃射があったことなどを伝えているように、本土空襲がその規模も頻度も増す中で、戦局の悪さを認めざるを得ない状況になっていたということだろう。

昭和20年2月23日付の毎日新聞ではこのように書いている。

“敵は最近の好調に乗って今一息とばかりにひた押しに押してきている。これは建国以来かつてない危機である。わが勇士の相次ぐ大戦果にもかかわらず戦局の大勢はきわめて悪い。ルソン島において我が軍は出血作戦にかえて何ゆえ殲滅作戦を行わぬか、本土に来襲した敵機動部隊や敵硫黄島上陸軍をなぜ壊滅しないのか。答えはただひとつ、航空機が無いためだ。航空機さえあれば敵を殲滅することは難事ではない。現在我々は歯を食いしばり敵の跳梁を黙過せねばならない。実に苦痛であり憂鬱である。しかし、国民は火が降っても槍が降っても石にかじりついて耐え忍ばなければならない。国内はもとより戦場である。

戦争の最後を決するものは武器でも戦略でもなく結局は国民の士気なのだ。必勝の信念が今より大事な時はない。軍は巌として神機を待っている。驕りたかぶり日本抹殺を呼号する敵米の伸びきった腰にガツンと痛打を与えるべく忍びがたきを忍んで神機を狙っている。神機の到来まで国民はこの苦境を耐えなければならない。神機到来の際、敵に十二分の痛打を与えうるかはひとえに国民の努力いかんによるのだ。”

やめろよ、もうこんな戦争(笑)。

戦況の悪さを軍部や政府への批判に矛先が向かわないところが異常だけど、精神論を語ってる時点でもうダメだろww

しかも、“軍は神機を待つ”って、神頼みじゃねーか・・。織田信長の桶狭間じゃないんだからさw制空・制海権を取られた時点でもう終わりだろこの戦争は。

一億を挙げて全力で大出血戦を行うべしとか、もうホント狂ってるとしか言いようがないよね。

なんか負け戦するにしても、もっと早く終わらせることができたような気がするんだけど、こういうの見ると。少なくとも広島・長崎の原爆投下前にどうにかならなかったのかなぁ。。

あと、“国内はもとより戦場である”ということに関して、先の2月18日付読売報知はもっと突っ込んだ書き方をしている。

“戦争の開始と同時に、実は国内も戦場であり、全国民は戦闘員だったのだ。だがこのことは今まで実感として盛り上がるに至らなかった。が、敵の来襲はこの眠っていた意識を固く呼び覚ましてくれた。戦闘意識を実感にまで高めることに役立ったのだ。国内も戦場、国民が戦闘員ということは、国内においても敵打倒の機会が身近に捉えうるということだ。戦線がどこにあるかは近代戦では問題ではない。敵の国土で撃とうと国内で撃とうとその間に優劣はない。”

アホか(笑)。詭弁にも程があるけど、なんかホント今の北朝鮮と同じだったんだなぁ日本って・・。

治安維持法や特高警察とかもそうだけど、そういう恐ろしい国に再びならないことを願うばかりだ。

さて、今回の新聞アラカルト。

空襲の頻度が高まっていることを踏まえて、「今日の知識」というコラムで、敵機の見分け方が載っていたのは面白かった。

あと、爆弾を積んだ気球を日本から打ち上げて、ジェット気流に乗せてアメリカ本土まで飛ばして爆発させるという気球爆弾(いわゆる風船爆弾)が全米を震撼させているという記事があって、いつだったかテレビ番組で見たことはあったけど、本当にそんなこと出来たんだとビックリした。

あっちはB29大型爆撃機で、こっちは気球か・・。なんか泣けちゃうな

しかし、そういう恐ろしい暗黒の時代をひしひしと感じられる紙面にあっても、国民の最大の頭を悩ませていたのは実は梅毒だったww!?というのが当時の新聞の広告面を見ると必ずといっていいほど梅毒・淋病の対処療法や専門病院の広告が載っていて、今回なんて昭和8年の新聞!しかも小林多喜二の拷問死を伝える記事の真下に、頭を抱えて悩んでいる絵とともに載ってるんだからさ

当時は結核とともに梅毒って大衆病みたいなかんじだったんだねぇ・・。

2014年11月17日 (月)

夢のシネマパラダイス256番シアター:裏切りのサーカス

裏切りのサーカス

A0250573_1255849 出演:ゲイリー・オールドマン、コリン・ファース、トム・ハーディ、トビー・ジョーンズ、マーク・ストロング、ベネディクト・カンバーバッチ、キアラン・ハインズ

監督:トーマス・アルフレッドソン

(2011年・英/仏/独・128分)WOWOW

内容:英国諜報部MI6(通称サーカス)とソ連のKGBが熾烈な情報戦を繰り広げていた東西冷戦下の1972年。サーカスのリーダー・コントロールは、組織内にKGBの二重スパイ“もぐら”が潜んでいるとの情報を掴み、工作員をハンガリーに送るが作戦は失敗。コントロールの右腕スマイリーもその煽りをくらってサーカスを追われるハメになってしまうが、ある日、英国政府高官から“もぐら”を突き止めろという密命がスマイリーに下される・・・。

評価★★★/65点

難しいです。ホントに難しいっす、これw

そして、すごくとっつきにくい。

1回見ただけではチンプンカンプンで、2回見て6割分かった気になって満足してOKてなかんじ(笑)。

なにせファーストネームやファミリーネームやコードネームが入り乱れて誰が誰だか分かんない状態

さらに敵対するソ連側に機密情報という名のガセネタを流すかわりにソ連側から最高機密を入手するウィッチクラフト作戦が、実はソ連側が仕掛けた二重のワナだったというのは作劇としては魅力的なのだけど、それを動かしているKGBの黒幕カーラもソ連側情報提供者ポリヤコフもほとんど姿形を現さないので、面白さや緊迫感があまり伝わってこないのは自分みたいな素人にとっては不親切の一言w

まぁ、これを不親切というのは自分の映画レベルの程度が知れているというべきだけど、意図的に分かりにくくしている感がちょっとカチンときたりして・・(笑)。

ただ、東と西という二項対立の戦う相手が明確な時代だったはずが、いつのまにか誰が敵で誰が味方なのかが分からなくなっていく不条理な運命に翻弄されるスパイたちの姿は、冷戦の結末を実際に見て知っている我々にとっては、スパイものというより物悲しい人間ドラマとして成立しえていたとは思う。

歴史の表舞台に立つことは許されないスパイという存在の悲哀だけは十分伝わってきたかな。

6割満足?まぁそれでいいんじゃないすかwwヤケクソです・・

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ワールド・オブ・ライズ

P0857 出演:レオナルド・ディカプリオ、ラッセル・クロウ、マーク・ストロング、ゴルシフテ・ファラハニ、オスカー・アイザック

監督:リドリー・スコット

(2008年・アメリカ・128分)WOWOW

内容:国際テロ組織のリーダーを捕獲するため中東で死と隣り合わせの危険な任務にあたっているCIA工作員フェリス。一方、そんなフェリスの苦闘を尻目に本国から携帯1本で指示を送るベテラン局員ホフマン。そんな中、ヨルダンでテロ組織のアジトが見つかり、フェリスはヨルダンに飛ぶ。そして情報局責任者ハニに協力を仰ぐのだが・・・。

評価★★★/65点

対テロ戦争という名のもとに中東にズブズブにハマリきって身動きがとれなくなっているアメリカ。

ビン・ラディンを殺害しようが、テロは減るどころか増える一方・・・。

そんな中、この映画が描くのは、欧州各地で爆破テロを行うテロ組織の首領アル・サリームを捕まえるため、あの手この手で暗闘するCIAとテロリストの騙し合い。

なんともドンピシャのタイムリーな題材なんだけど、「トラフィック」(2000)や「シリアナ」(2005)のような政治社会派エンタメというよりは、ジェイソン・ボーンシリーズや007などのスパイアクションの方にウェイトを置いているかんじで、リドリー・スコットのソツのない演出力によってうまくバランスがとれているようには思うし、最後まで飽きずに見られる。

、、のだけれど、そのうまさが逆にメリハリというものを削いでしまっていて映画としてのインパクトには欠けるかなと。

例えば、事件は現場で起きてるんだ!とばかりに灼熱の爆風に吹っ飛びながら、はたまた皮膚に相棒の砕け散った骨をめり込ませながら現場で東奔西走するロジャー・フェリス(ディカプリオ)を「ハリ(張り)」とするならば、まるでボードゲームにいそしむかのように天空から駒を動かすだけのエド・ホフマン(ラッセル・クロウ)は「メリ(減り)」になるだろう。

あるいは命を賭した裏工作と情報戦の熾烈な駆け引きを「ハリ」とするならば、ロジャー・フェリスと現地女性のラブロマンスは「メリ」になるだろう。

ところが、この肝心の「メリ」が魅力に乏しくてはっきりいって面白くないのだ。

冷酷非情で無神経な命令を下すエド・ホフマンはただのメタボ親父キャラにしか見えないし、ラブロマンスもありきたりで、ただの蛇足にしか見えなくてテンションのリズムに乗り切れないというか・・・。

それこそラストにテロ組織に拉致されたフェリスがビデオカメラの前で殺害されるなんてオチだったらインパクト大だったと思うんだけどww。無いか・・。

あと、闘う男ラッセル・クロウを見たい自分としては、魅力のひとかけらもないメタボ親父は見たくなかったし。。同じメタボ親父でも「インサイダー」(1999)での内部告発者役は闘う男だったけど。

こういう題材をエンタメに咀嚼してしまうハリウッドの商魂たくましさには感心してしまうし、見応えはあるんだけども何か物足りない、、そんな映画だった。

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グッド・シェパード

Goodshepherd 出演:マット・デイモン、アンジェリーナ・ジョリー、アレック・ボールドウィン、ビリー・クラダップ、ロバート・デ・ニーロ

監督:ロバート・デ・ニーロ

(2006年・アメリカ・167分)CS

内容:第二次大戦間近のアメリカ。イエール大学に通うエドワードは、秘密結社に加入したことを機に、対敵諜報機関である戦略事務局「OSS」の設立に加わり国の諜報活動に従事していく。そして、戦後OSSを改編し新たに設立されたCIAの幹部になったエドワードだったが、仕事に没頭するあまり家庭との溝は深まっていく・・・。

評価★★★/60点

CIAの任務と家族との狭間で揺れる苦悩という点ではスピルバーグの「ミュンヘン」(2005)をほうふつとさせる内容だけど、しかしどこまでも表情を変えない主人公エドワード(マット・デイモン)の冷めた存在感に最後までノリきれず・・・。

話の構成として時間軸を交錯させるなど工夫をこらしてはいるのだが、いかんせん人物に魅力がないし、絵でいちいち説明しすぎるシーンが目立つのも鼻につく。

また、子持ちの父親役にはたして童顔のマット・デイモンが適役だったのかも、う~む、、とならざるを得ないし、強烈な存在感が逆に浮いたかんじになってしまったアンジーも、なぜあんな男にホレたのかイマイチ分からんし。。

そういう人物設定で説明してほしいところをスーと通り過ぎていって、飛行機から女スパイを突き落とすシーンなんかをこれ見よがしに撮ってしまう始末。もうダメ・・・。

まぁ、動のジェイソン・ボーンと対比してみれば、マット・デイモンかなり頑張ってたのは認めるけど、でも、女装が予想以上にキモかったのでダメ(笑)。。

しかし、ここまで感情のない映画を見せられるというのもあまりない経験だなぁ。。

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リクルート(2003年・アメリカ・115分)WOWOW

 監督:ロジャー・ドナルドソン

 出演:アル・パチーノ、コリン・ファース、ブリジット・モイナハン、ガブリエル・マクト

 内容:エリート学生のジェイムズは、CIAの採用担当者ウォルターにスカウトされる。が、施設での過酷な訓練は、敵と味方、虚構と現実の区別を困難にしていく。やがて、ジェイムズは内部の陰謀に気付くのだが・・・。

評価★★★/60点

こんなアケスケで見え透いたダマし合いを繰り広げるくらいCIAって、、、暇なの??

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コンフェッション(2002年・アメリカ・113分)WOWOW

 監督:ジョージ・クルーニー

 出演:サム・ロックウェル、ドリュー・バリモア、ジョージ・クルーニー、ジュリア・ロバーツ

 内容:70年代アメリカにおいて、伝説の名プロデューサー兼司会者だったチャック・バリスが自らCIAの秘密工作員として殺し屋をしていたと語った衝撃の告白本をもとに、ジョージ・クルーニーが初監督に挑んだサスペンスドラマ。脚本は「マルコヴィッチの穴」のチャーリー・カウフマン。

評価★★/40点

ザ・いけ好かない男でSHOW!

緊張感が全く感じられないのは、チャック・バリス本人の自伝がすでに十分すぎるほど脚色めいているからか・・。

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スパイ・ゾルゲ(2003年・東宝・182分)渋東シネタワー

 監督:篠田正浩

 出演:イアン・グレン、本木雅弘、椎名桔平、上川隆也、葉月里緒菜、小雪

 内容:第2次世界大戦前夜、自らの理想を信じ8年間に渡って日本とドイツの最高機密情報を盗み出してソ連に送り続け、独ソ戦最大の戦い・スターリングラードの戦いにおけるソ連の大勝利を呼び込むに至った国際スパイ、リヒャルト・ゾルゲの実像に迫るサスペンスドラマ。1930年代、ナチス党員のジャーナリストになりすましたソ連の諜報員ゾルゲは、特派員として日本に来日し、ドイツ大使館に潜り込んでいく。やがて彼は上海で面識のあった朝日新聞記者の尾崎秀実と再会。その尾崎ら彼の理想に共鳴した者を協力者に取り込み、ゾルゲ諜報団と呼ばれる一大スパイ組織を着々と作り上げていく・・・。

評価★★/40点

資料VTRとしては活用できるが、スクリーンに映し出された一本の映画としては何ら価値を見出せない。

相撲でいえばまさに死に体な映画。それを3時間見せられるのだから、よくもまぁ自分も辛抱強く最後まで付き合ったと思うよ・・。

初心者に分かりやすく細部まで大げさで余計なくらいご丁寧に描いているのはまさに資料向け。そりゃ3時間かかるわな。

それにしても監督、、演技ヘタ。。

夢のシネマパラダイス581番シアター:さまざまな家族のカタチ

そして父になる

20140810101035 出演:福山雅治、尾野真千子、真木よう子、リリー・フランキー、二宮慶多、黄升炫、風吹ジュン、國村隼、樹木希林、夏八木勲

監督・脚本:是枝裕和

(2013年・日本・120分)WOWOW

内容:大手建設会社に勤め、都心の高級マンションで妻みどりと6歳の息子・慶多の3人で何不自由ない暮らしを送ってきた勝ち組エリートの野々宮良多。しかしそんなある日、病院から連絡があり、慶多が赤ん坊の時に取り違えられた他人の子だと告げられる。本当の息子は、群馬の小さな電器店を営む斎木家で育てられていた。両家族は戸惑いつつもお互いの息子を交換する方向で動き出すのだが・・・。

評価★★★★/80点

もし今まで大切に育ててきた我が子が実は血がつながっておらず、本当の子供は別にいるということが分かったら、、、あるいは今まで大切に育ててきてくれた両親が実の親でないことを知らされたら、、、自分ならどうするのだろう。

そういうifもしもをどの世代の視点から見ても突きつけられる映画というのはなかなかあるものではなく、良く出来た作品だと思う。

とにかく、いの一番にいえることはシナリオが抜群に上手いということだ。

レクサスと軽ワゴン、すき焼きとギョウザ、タワーマンションとおんぼろ商店、キャノンの一眼レフと安いデジカメ、勝ち組エリートと負け組ヤンキーという面白いくらいに対照的な2つの家族像。

両親が早くに離婚し継母に育てられたものの、いまだにお母さんと呼べないでいる良多と親とのぎくしゃくした関係性。

再婚したおり旦那の連れ子の子育てのストレスから犯行に及んだ看護師に良多の怒りの矛先が向かった時、その連れ子が「僕のお母さんだから」と守ろうとする姿。

「慶多の顔見て琉晴って名前つけたはずなのに、今じゃどっからどう見ても慶多って顔だもんなぁ」「人も馬も同じで血が大事なんだ」「愛せますよ。似てるとか似てないとか、そんなことにこだわってるのは子供とつながってるという実感のない男だけ」などのセリフの数々。

人物の設定からセリフに至るまで緻密に練られたシナリオが、親子の絆と愛情を担保するのは血のつながりなのか、それとも育った環境と一緒に過ごした時間なのかというテーマを常に考えさせるのに一役も二役も買って出ている。

また、独身貴族を謳歌する福山雅治を主役に据えたことで、より物語としてのフィクション性が強調されているし、いたずらに感情をあおらない淡々とした演出が、周到なシナリオが生み出すあざとさを巧く消している。

上手すぎて逆に心地良くなってしまう映画だ。

リリー・フランキーなんてあれは何なんだろう、地なのか!?と思わせる演技者としての巧さと懐の深さに脱帽してしまった。

今回の映画のテーマは答えが簡単に出るような問題ではないけど、「子供は時間だよ!子供は一緒にいてなんぼ!」ということに尽きるんじゃないかなと自分は感じた。

実際自分が親になったらまた違う視点でこの映画を見られるのかもしれない。その時にまた見てみようと思う。

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かぞくのくに

O0480064012047692509 出演:安藤サクラ、井浦新、ヤン・イクチュン、京野ことみ、大森立嗣、村上淳、宮崎美子、津嘉山正種

監督・脚本:ヤン・ヨンヒ

(2011年・日本・100分)WOWOW

内容:1970年代に16歳で帰国事業に参加して北朝鮮に移住したソンホが、病気治療のため3ヶ月の期限付きで25年ぶりに日本に帰ってきた。日本で生まれ自由に生きてきた妹のリエは、兄との再会を心待ちにしていたが、ソンホの隣には見知らぬ男性が監視役として同行していた・・・。

評価★★★★☆/85点

どんな映画が好き?ときかれたら自分は、例え人殺しをしようともどんなことをしてでも生き抜こうとする、その生への執着や必死さがにじみ出ている映画が好きだと答えるだろう。

しかし、これはどうだ。

生き抜くためには自分を押し殺して考えずにただ従うだけ、生き抜くことイコール思考停止という、、こんな虚しくて悲しい映画が他にあるだろうか。

そして、なぜ?という問いすら許されないような国で死ぬまで生きていかねばならない、そんな理不尽なことが現実にあるのだということに暫し絶句してしまった。

そもそも、北朝鮮の人がああいう形で日本にやって来るということだけでも目が点になってしまったけど、北に関してニュースで見ることといえば国家主席周辺のことだけで、市民レベルの実態が全く分からない中、日本のありふれた街が舞台になっていることで“遠い国”の悲劇がリアルなものとして伝わってきたように思う。

何度も言うようだけど、こんなことが実際にあるなんて、と驚くことばかりだった。

帰国事業のことも知らなければ、北と南と日本をルーツに持ち否応なく向き合わなければならない人たちがいることも知らなかった。

16歳で自分の意思とは関係なく北に渡ったソンホの絶望的な諦念と、北に家族を送らなければならないと決心させた親の苦悩、そしてその根底にあったであろう在日の被ってきた差別や貧困の歴史、そのどれもが自分の想像の域を超えたところにあって、なんだかこういう言い方もあれだけど、日本に日本人として生まれてきて良かったとつくづく思えた。

「どう生きるかたくさん考えて、納得しながら生きろ!誰にも指図されず自分の好きな所に行って、毎日感動してわがままに生きればいいんだよ。」

人間らしく生きるとはこういうことなんだというソンホの大切な妹へのメッセージは、恵まれた環境にいる自分に対するメッセージにも思えた。

それにしてもだ。何度も言うようだけど、こんな悲しい映画は見たことがない。

だからこそ多くの人に見てもらいたい映画だ。

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ファミリー・ツリー

Poster 出演:ジョージ・クルーニー、シェイリーン・ウッドリー、アマラ・ミラー、ニック・クラウス、ボー・ブリッジス、ロバート・フォスター

監督・脚本:アレクサンダー・ペイン

(2011年・アメリカ・115分)WOWOW

内容:ハワイに暮らす弁護士のマット・キングは苦境に立たされていた。先祖から受け継いできた広大な土地の売却問題に直面していた矢先、妻のエリザベスがボート事故で意識不明の重体になってしまったのだ。家のことは任せきりだったマットは、情緒不安定の10歳の次女スコッティにどう接すればいいのか苦慮するばかり。さらに、高校生の長女アレックスから妻が浮気していたという思いもよらぬ事実を告げられる・・・。

評価★★★☆/70点

基本線はどこにでもある在り来たりな家族ドラマなのだけど、素朴で時間の流れ方がゆったりとしているハワイの大らかなロケーションが独特な味わい深さを醸し出していて、ある種心地良い映画になっていたと思う。

殺伐とした都会では感じにくい自分のルーツのたしかな感触、そしてそれを継承していくことの大切さがハワイの風通しの中に描かれているからこそ、主人公の家族の絆の再構築に説得力が生まれたのだと思う。

あとはなんといってもジョージ・クルーニーだろう。ドタバタ走りが様になっている愛すべきへタレ親父ぶりはドンピシャのはまり具合だった。

娘2人と娘のボーイフレンドも良かったし、安心して見ていられる良品だったな。

ただ、申し開きのできない妻だけはなんか可哀想だったけど・・。

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幸せへのキセキ

B496af94956940f0c12cec9b5d66a866 出演:マット・デイモン、スカーレット・ヨハンソン、トーマス・ヘイデン・チャーチ、パトリック・フュジット、エル・ファニング

監督・脚本:キャメロン・クロウ

(2011年・アメリカ・124分)WOWOW

内容:LAの新聞社に勤めていたベンジャミンは半年前に愛妻を亡くしたショックからいまだ立ち直れないでいたが、これではダメだと心機一転、新天地での再スタートを決意する。さっそく郊外に理想的な物件を見つけるが、そこは閉園中の動物園付きの超ワケアリ物件だった。周囲の反対を押し切って購入した彼は、思春期の息子ディランと幼い娘ロージーとともに移り住むのだったが・・・。

評価★★★☆/70点

バナナマン日村、動物園を買うw!とまではいかないまでも、この邦題の付け方ははっきりいってセンスないと思う。

まぁ、映画の中身の方はキャメロン・クロウだけにセンス有りだっただけに、将来、隠れた良作として紹介されてそう(笑)。

素人が動物園のオーナーになるという無謀なお話はユーモアたっぷりのドタバタ劇でも、あるいは奇跡と感動の押し売り作としても格好のネタだと思うのだけど、あくまで家族の再生ドラマを軸として飾り気なく描いているのがキャメロン・クロウのセンス。

観終わったあとの清々しい読後感はさすがの一言だ。

平凡な親父然が板についていたずんぐりむっくりのマット・デイモンも、胸元を隠し続けるスカヨハも新鮮味があって良かったし、あとはなんといってもエル・ファニングの奇跡的な輝きだろう。

「スーパーエイト」の時と変わらず、そのまばゆさは最高ですた

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トウキョウソナタ(2008年・日本・119分)WOWOW

 監督・脚本:黒沢清

 出演:香川照之、小泉今日子、小柳友、井之脇海、井川遥、津田寛治、児嶋一哉、役所広司

 内容:東京に暮らす平凡な4人家族の佐々木家。ある日、サラリーマンの父・竜平がリストラされてしまう。その事実を家族にひた隠しにし、毎朝スーツで家を出ては公園などで時間をつぶす日々。一方、大学生の長男・貴は米軍に入隊、小学生の次男・健二は給食費を勝手に使ってピアノ教室に通う。そして母・恵も徐々に壊れていき・・・。

評価★★★/65点

10年ぶりに目覚めた男がバラバラになっていた家族を再生させようと四苦八苦する「ニンゲン合格」から10年。今度はごく普通に食卓を囲んでいた家族がいつの間にかバラバラになっていく様を描く。

会社からリストラされたことを家族に言えない父親というステロタイプな人物像は黒沢清らしくないけど、ゆえに家庭崩壊のドラマは絵に描いたようにオーソドックスで分かりやすい。

ただ、エゴをむき出しにした家族の内面のぶつかり合いは「ニンゲン合格」同様になく、彼らは秘密を抱えたまま何事もなかったかのように食卓に舞い戻ってくるだけだ。

家族とはそういうものなのだという一種シニカルな視点は少々肌に合わないけど、逆にいえばどんなに信頼をなくし落ちるとこまで落ちても切っても切れないのが家族の縁というのが逆説的にあらわになっていくのは面白い。

役所広司登場後から黒沢節がエスカレートして家族のバランス同様映画のバランスも難ありかなと思ったけど、ラストのあまりにも美しいピアノの旋律に上手くだまくらかされた気も・・・w

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蛇イチゴ(2003年・日本・108分)NHK-BS

 監督・脚本:西川美和

 出演:宮迫博之、つみきみほ、平泉成、大谷直子、手塚とおる、寺島進、笑福亭松之助

 内容:働き者の父、優しい母、ボケてはいるが明るい祖父、小学校教師の娘・倫子の平穏な明智家。だがある日、祖父が亡くなり、その葬式に10年間も行方知れずだった長男・周治が姿を現す。それをきっかけに一家の調和は乱れ始め・・・。

評価★★★★/75点

なんとこれが監督デビュー作である。オリジナルの作劇でここまでのクオリティの高さはスゴイの一言。

映画映画したいという新人ならではのフレッシュさが全くない落ち着き払った演出も驚きだけど、かといって重すぎることもなく気楽に見れるテイストにしてしまうセンスの良さはピカイチだ。

家族の平穏な日常がガタガタと音を立てて崩れ去っていく絶望的な状況でさえも親子でフラフープに興じれてしまったり、痴呆の義父が亡くなった途端テンションが上がって抑えきれなくなった嫁とか、随所にブラックなユーモアが散りばめられていて、その中で父とはこうあらねば、母はこうあらねば、娘は、、という家族を成す役割のタガが外れていくとともに本性が露わになっていく様は容赦がないけれども実に面白い。

甘い綺麗事を並べた建前で取り繕っていた一家の懐に毒々しい本音爆弾を落としまくる関西の親戚とか、面白おかしくというより思わず苦笑いしながら見てしまうというかんじだった。

そういうディテールのリアリティがこの映画を支えているのだけど、28歳でこれを撮れちゃうというのはやはりスゴイの一言。

ちなみに本物のヘビイチゴ。

花言葉は“可憐”で、その名の通り黄色くてかわいい花を咲かせるのだそう。でもイチゴのような実を食べてみると不味くて二度と食えたものじゃないってw

見た目と中身は全然違うという、ヘビイチゴなんて気の毒な名前は付けられるべくして付けられたのかもしれない。

毒を持ったヘビと甘~いイチゴ。題名の付け方もセンスありだ。

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ホーホケキョ となりの山田くん(1999年・松竹・110分)WOWOW

 監督・脚本:高畑勲

 声の出演:朝丘雪路、益岡徹、荒木雅子、五十畑迅人、宇野なおみ、矢野顕子

 内容:朝日新聞に連載されていた4コマ漫画「となりの山田くん」をジブリの高畑勲監督で映画化した作品。ごくありふれた山田家の人々が織り成す日常の日々を、松尾芭蕉・与謝蕪村・種田山頭火などの俳句を挟んで描いた家族の歳時記。

評価★★★/60点

21の時に映画館でこれ見たときはツマンネーってグチってたけど、あれから14年。

なかなか面白かった(笑)。

中年のオッサンになって家庭というものに憧憬を抱いているせいなのか、日曜夜にサザエさんを見なくなって長いこと経つ自分が久々に古き良き家族像に触れて懐かしさを覚えたからなのか。。

いや、まぁただ単に自分が年くっただけなんだけどね・・

ただ、4コマ漫画のテンポを長編映画に置換することに上手く成功しているとはいえ、やはりこれを100分以上の尺で見るにはどうしてもしんどくなってくるのはたしか。ペーソスとほのぼの感だけでは45分が限界だな。

ま、こういうのは藤原先生の言う通り、“適っ当”に見るのがいいのかもしれない(笑)。

2014年11月10日 (月)

夢のシネマパラダイス571番シアター:アメリカ大統領は世界一危険な職業!?

ホワイトハウス・ダウン

T0013674p 出演:チャニング・テイタム、ジェイミー・フォックス、マギー・ギレンホール、ジェイソン・クラーク、リチャード・ジェンキンス、ジェームズ・ウッズ

監督:ローランド・エメリッヒ

(2013年・アメリカ・132分)WOWOW

内容:議会警察官のジョン・ケイルは、娘エミリーが憧れるソイヤー大統領のシークレットサービスになるべく面接に臨むも不採用に。そんなある日、エミリーと一緒にホワイトハウスの見学ツアーに参加するが、突然の大爆発とともに謎の武装集団が乱入し、あっという間にホワイトハウスは占拠されてしまう。離ればなれになったエミリーを探すうちに人質となった大統領を救出したケイルは、2人でテロリストたちに立ち向かっていく・・・。

評価★★★★/75点

エンド・オブ・ホワイトハウスはセガール版沈黙のホワイトハウスだと感じたけど、今回はダイ・ハードのひな形を面白いくらい完璧にトレースしていて逆に心地良く見られたかんじ。

しかし、ジョン・マクレーンのような孤軍奮闘劇の体裁をとりながらも、大統領や主人公の娘ちゃんやツアーガイドなど様々な視点の活躍も取り入れることで132分の長尺に幅をもたせているし、それに見合うアクションもテンコ盛りでエンドオブ~よりは断然こっちの方が好み。

なにより、ホワイトハウス見学ツアーを映画の入口にもってきたのは上手かったと思う。

3つの建物からなり、地下を含む6階建て、132の部屋、412のドア、147の窓、28の暖炉、35の洗面所etc..とホワイトハウスの間取りを提示することで逆に閉じ込められた密室空間であることを際立たせて分かりやすかったし。

大味が味なwエメリッヒにしては良くできた映画だったと思う。

しかし、中東和平ってのは見果てぬ夢なのだなとこれ見て逆に思い知ったわ

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エンド・オブ・ホワイトハウス

Poster1 出演:ジェラルド・バトラー、アーロン・エッカート、モーガン・フリーマン、アンジェラ・バセット、ロバート・フォスター、アシュレイ・ジャッド、メリッサ・レオ

監督:アントワーン・フークア

(2013年・アメリカ・120分)WOWOW

内容:ホワイトハウスで行われる予定だった米韓首脳会談。しかし、その当日アジア系テロ集団が急襲、ホワイトハウスはたった13分で占拠され、大統領も人質に取られてしまう。そんな中、たった一人潜入に成功していた男がいた。それは2年前、事故で大統領夫人を見殺しにした過去を持つ元シークレット・サービスのマイク・バニングだった・・・。

評価★★★/60点

昨今の国際情勢で著しく低下してきているアメリカの威信を反映してか、引きずり降ろされる星条旗とともにアメリカの本丸が敵の手に落ちてしまうという前代未聞の展開は面白い。

しかし、見ていくうちに特段ホワイトハウスである必然性が感じられなくなってくるのは玉にキズ。

ホワイトハウス版ダイ・ハードとしてみてもダイ・ハード1作目のような高さもなければ2のようなスケール感もない中途半端さで、ホワイトハウスであればこそのオリジナリティが欲しかったところ。

また、ジョン・マクレーンを念頭に置いてみたとしても主人公のキャラクターが硬すぎて魅力薄だし・・。

まぁ、その点ではダイ・ハードというよりセガールの沈黙のホワイトハウスとして見た方がいいのかもね。

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エアフォース・ワン

Pa39  出演:ハリソン・フォード、ゲイリー・オールドマン、グレン・クロース

監督:ウォルフガング・ペーターゼン

(1997年・アメリカ・124分)仙台日之出プラザ

内容:正義感あふれる合衆国大統領マーシャルは、ロシアの独裁者ラデクを逮捕に導いた。だがロシアでの祝賀会の帰途、大統領専用機エアフォース・ワンがラデク釈放を要求するテロリストにハイジャックされてしまう。妻子を人質に取られた大統領は、脱出したとみせかけて単身反撃を開始する!

評価★★★/65点

「大統領は人じゃない!存在だ!大学で習っただろ!」と国防長官が豪語してたけど、法的にはそういうことなの?

でもよぉ、そんなん教えるから自分を神だと思うようなおバカさんが現れちゃうんだよ。イラク開戦前に枕元に神が現れてお告げを告げたとかわけの分からんことを言ってたアンタのことだよ、脳たりんブッシュ

しかも、それがまかり通っちゃうんだから、、アメリカってとこは・・・。

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ザ・シークレットサービス(1993年・アメリカ・128分)Video

 監督:ウォルフガング・ペーターゼン

 出演:クリント・イーストウッド、ジョン・マルコヴィッチ、レネ・ルッソ

 内容:合衆国所属のシークレットサービス・エージェントのホリガンは、ケネディ大統領暗殺を阻止できなかった過去に深い自責の念を抱いていた。その彼のもとに、再選キャンペーン中の大統領を暗殺するという脅迫状が届く。やがてホリガンは殺し屋のリアリーが大統領の行動を観察していることをつかむ・・・。大統領を狙う暗殺者とベテランのシークレットサービスの戦いを描くサスペンス・アクション。

評価★★★/65点

“う゛っ、、ゲホッゴホッ、、、ハァーハァー、ガハッ、ゼェゼェハァゼェ、ウゲッガホッ、、、、俺にまかせてくれ・・!!”

大丈夫か?アメリカww!?

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ザ・ターゲット(1996年・アメリカ・103分)WOWOW

 監督:ジョルジ・バン・コスマトス

 出演:チャーリー・シーン、リンダ・ハミルトン、ドナルド・サザーランド

 内容:ホワイトハウス、CIA、FBIの上層部の共謀による大統領暗殺計画を知った大統領補佐官ボビーと、女性記者アマンダが、見えざる敵を向こうに回して活躍するサスペンス・アクション。

評価★★/40点

チャーリー・シーンとリンダ・ハミルトンの顔の角張り方が似ていることしか印象に残らない・・・。同じフレームに入ってくるたびにウケたんですけど。。

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目撃(1997年・アメリカ・121分)WOWOW

 監督:クリント・イーストウッド

 出演:クリント・イーストウッド、ジーン・ハックマン、エド・ハリス

 内容:大富豪の屋敷に忍び込んだ大泥棒ルーサーは、夫人が男ともみ合って殺される現場を目撃する。しかし、なんとその男はアメリカ合衆国大統領だった!やがて、ルーサーは濡れ衣を着せられてしまい・・・。

評価★★★/60点

目撃じゃなくて「のぞき」だろ!ジイさん。。

2014年11月 5日 (水)

太平洋戦争の記憶シリーズ第3回:二・二六事件

今回は昭和11年(1936)の二・二六事件。

教科書で習ったうろ覚え程度の知識しかない自分からすると、二・二六事件って、政治権力を我が物にしようとした軍部が政権中枢に刺客を送り込んだクーデターというイメージがあって、実行部隊となった青年将校を上層部が裏で操ってたと思い込んでたのだけど、ちょっと違うんだね。。

そもそも首謀者といわれる青年将校たちが死刑になってたとはこれまた知らなかったけど、この事件の背景に政財界の腐敗や地方農村の窮乏状態への憂いがあり、それを糺すための決起だったというのは意外だった。

そこで出てくるのが、首謀者たちに大きな影響を与えた革命思想家・北一輝。

この北一輝という名前にはちょっとした思い出があって、学生時代に赤点以下しか取れなくて唯一落としたコマが政治学入門だったんだけど、その時に講師がよく口に出してのが北一輝だったんだよね。

どういう経緯でこの人の名前が出てきたのか、ちょっと思い出せないけどw、自分の記憶では右翼の中の右翼だとばかり思ってただけに、「維新革命の本義は実に民主主義にあり」と謳い、言論の自由や基本的人権の尊重、普通選挙の実施、財閥解体などの実現を目指していたとは知らなかった。

自由民権運動の気風の中で育ち、当初は社会主義思想に耽っていたということだけど、大逆事件で死刑になった幸徳秋水とも交流があったというのだからその傾倒ぶりは本物だったのだろう。

しかし、日露戦争で非戦論を唱え、階級闘争による下からの突き上げでそれを実現しようとする秋水に対し、北一輝はあくまで国家を前提とした上からの統制によりそれを実現するべき(国家社会主義)という考え方の違いから袂をわかつことになる。

そして折りしも世の中は不況、政党政治への不信、格差・階級社会の不満と閉塞感が充満しており、それを打破するためにはもういちど維新-昭和維新-を行うほかないと考えていくようになる。

その維新の最終の理想形は、天皇親政(直接統治)による平等社会の実現。つまり、世の中がダメになったのは天皇と国民の間にいる財界・資本家・華族・国会議員などが私利私欲に走っているからであり、これを叩き潰すことによって天皇と国民が共に行動できる公民国家-明治維新本来の理念-が実現できると説いた。

ようするに大日本帝国憲法にある天皇は神聖にして侵すべからずという、国民にとって遠い存在である天皇をもっと近い存在に置き、“天皇の国民”から“国民の天皇”に変えていくということ。

そして、それをサポートしていくのは唯一堕落していない軍人であり、これも天皇の軍隊-皇軍-から国民の軍隊-人民軍-とし、武力革命・クーデターによって維新を成すとした。

これが貧農出の青年将校の共感を呼び、実行に移されるわけだけど、結局ここに待ったをかけたのが昭和天皇だったというのがなんとも皮肉だよね。。お前らは逆賊だ!となるわけでしょ。

まぁ結局二・二六事件は反乱として鎮圧されるわけだけど、これをきっかけにある意味たなぼた式に軍部の発言権が増し、北一輝の思想は天皇制ファシズムへといいように変容され、この翌年には盧溝橋事件が起こり日中戦争へと突き進んでいくわけだ・・・。

でも、国民の天皇とか、基本的人権の尊重や普通選挙の実施など北一輝が実現しようとしてたものって敗戦を経て日本国憲法下で実現したのだからこれまたなんとも皮肉。

さて、次はオペレーション&ファクトファイルで取り上げられた昭和17年(1942)の蘭印侵攻作戦。

アメリカのとった経済制裁・禁輸措置によりアメリカからの石油輸入が大きく制限され、日本の生命線である石油獲得のために行われた作戦だけど、ななんと当時の日本って石油の8割をアメリカから輸入してたんだね。

現在の日本は中東依存度が8割だけど、昔はアメリカだったんだ・・。しかもたった1カ国だけで8割ってww

他に頼る所があればまだしも、自らリスクを負って外に打って出なければそれも無いような中で、エネルギー依存度8割の相手と戦争するって、、どう考えても自殺行為だろーー(笑)。なんでこんなバカでも分かるようなことを・・。政治は一体何をやってたんだ。

軍部の暴走があったとしたって、その軍上層部だって今の東大出くらい頭の良いエリートの集まりだろw!?

あ、そっか、、官僚化しちゃうとバカの集まりになるってのは今も昔も同じだったか(爆)。

次は新聞アラカルト♪

今回はシンガポール陥落を大々的に報じた大阪毎日新聞のどでかい見出しが目を引いたけど、企業広告にまで“祝シンガポール陥落”と銘打ってるのは驚き。

だって、“祝シンガポール陥落!薬用クラブ歯磨き!”とか、“シンガポールに凱歌あがる!1億の決意いよいよ固し、進め貫け米英に、最後のとどめ刺す日まで!さくらフィルム”って、広告としておかしいだろ(笑)。

でも、シンガポール陥落記念国債なんてものまであったとは驚きだね。

あと広告で面白かったのが、STAP細胞でお騒がせした理化学研究所がもの凄いものを開発していたというもの。

それは、なんと、、

“権威ある財団法人、理化学研究所製品!便秘薬!!”

今から70年以上前にはそんなもん作ってたんだねw

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