夢のシネマパラダイス125番シアター:ヒューゴの不思議な発明
ヒューゴの不思議な発明
出演:ベン・キングズレー、ジュード・ロウ、エイサ・バターフィールド、クロエ・グレース・モレッツ、レイ・ウィンストン、サシャ・バロン・コーエン
監督:マーティン・スコセッシ
(2011年・アメリカ・126分)盛岡フォーラム
内容:1930年代のフランス、パリ。身寄りのない少年ヒューゴは、駅構内の時計台に隠れ住み、時計のネジ巻きをしながら暮らしていた。そんな彼の心のよりどころは、父親の遺品である壊れた機械人形を直すこと。が、ある日ヒューゴは、機械人形を直すのに使えると思ったおもちゃを万引きし、店主の老人ジョルジュに捕まってしまう・・・。
評価★★★★/80点
カメラは現実を捉えるのではなく、非現実と驚異が織り成す空想世界を作り上げる道具であると考えたジョルジュ・メリエス。その彼の生み出した様々な映像マジックに対し、100年後の最新技術である3D技術で応えるというのは映像の魔術師メリエスに対するオマージュであるとともに、途切れることのない映画創作の進化を示す上でも意義のあるものだったのだろう。
ストーリーの性質やジャンルの上ではあまり3Dである必要はないと感じたけど、今回の映像は実にオシャレで綺麗だったように思う。
それは「月世界旅行」の原作者であり、19世紀SFの元祖ジュール・ベルヌの持つレトロな美意識を投影させていることが大きな要素だと思うけど、3Dというと近未来映画やアドベンチャー、SFといったジャンルにおいて使われてきたイメージが強い中、19世紀パリという過去にさかのぼるという点で新境地を開いたのではなかろうか。
なので、そういう今回の3Dの趣旨を理解しないで「アバター」をはじめとする従来の3D映画のようなファンタジーとアトラクション的要素を求めてしまうと拍子抜けしてしまうかもしれない。
では、この映画を一言で言い表すとすれば何なのかといえば、それはスコセッシ版ニューシネマパラダイスであり、映画についての映画なのだ。
映画についての映画とは、つまり映画の歴史をたどる旅である。
当初は少年の亡き父とのつながりを求める旅から幕を開けたものの、後半になると映画の歴史をたどる旅にシフトし、映画ファンとして俄然見入ってしまったのだけど、少年少女の成長譚ではなく、彼らから教わった大人の成長譚になっているのもドラマとして深みと味わいを与えていて非常に印象に残る。
思い出という殻の中に閉じこもる術に長けた大人と、どんな絶望を前にしても人生を切り開いていくしか術がない子供の出会いと絆の物語に素直に感動した。
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月世界旅行
監督・脚本:ジョルジュ・メリエス
(1902年・フランス・16分)WOWOW
評価は敬意を表して特になしということでご勘弁下さい
内容:ロケットで月へ行く計画がついに実現!科学者をリーダーとする探検隊6人を乗せた砲弾型ロケットは見事月の右目に命中。しかし、月では原住民に襲われ、探検隊はあっけなく囚われてしまう・・・。映画史上最初の本格的なSF映画。
月面に下りてソッコー雑魚寝したり、バルタン星人wに対抗する武器がこうもり傘で突っつくだけだったり、学芸会のせわしないお芝居を見ているようなレベルだけど、科学的な正確さは一切無視されているとはいえ、人類が月に到達する70年も前に作られた作品ということを考えれば、人の思いつく空想力や創造力のたくましさにはやはり恐れ入るものがある。
そしてなにより、そういう夢を形にするパワーが映画にはあるのだということを今から100年以上も前に気付き、それを作り上げたことに感慨を抱いた。
情熱と躍動に満ちあふれた映画の原点に思いをめぐらす幸せなひとときを味わわせてもらった。
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