夢のシネマパラダイス327番シアター:伊坂幸太郎×中村義洋鉄板コンビ
ポテチ(2012年・日本・68分)WOWOW
監督・脚本:中村義洋
出演:濱田岳、木村文乃、中林大樹、松岡茉優、大森南朋、石田えり
内容:空き巣を生業とする今村はある日、自殺しようとしていたところを助け今は恋人となった若葉を連れて、とあるマンションの一室に忍び込む。そこはプロ野球のスター選手・尾崎の部屋だったが、突然かかってきた電話を取ったことから事件に巻き込まれていく・・・。
評価★★★☆/70点
68分。
ムダに長い映画が幅を利かせている今時分にあって、このコンパクトさはなんとも清々しいし、伊坂幸太郎×中村義洋の鉄板コンビにあって、役者陣含め座組の自由度というか余裕が感じられて非常に心地良い作品になっていたと思う。
なんというかホント3時のおやつにパリッと食べられるライト感覚を狙って作れているのが美味い。
役者陣がまたイイんだ。特に大森南朋の無表情な訳知り顔は最高に可笑しかったw
あとは木村文乃のキュートさに触れないわけにはいくまい。おもいっきりブッ飛ばされたいです
あと、濱田岳については鉄板なので何も言うことはないけど、親分役の中村義洋はもう役者としては出てこなくていいからねとアドバイスしてさしあげたい(笑)。
-----------------------
フィッシュストーリー
出演:伊藤淳史、高良健吾、多部未華子、濱田岳、森山未來、大森南朋
監督:中村義洋
(2009年・日本・112分)
内容:2012年、彗星の衝突による人類滅亡まであと5時間。店長(大森南朋)がいつもと変わらず営業を続けているレコード店では、パンクバンド・逆鱗が1975年に発表した曲“FISH STORY”が流れていた。1982年、曲の途中で音が途絶える部分がある“FISH STORY”の無音部分には女の悲鳴が聞こえるという噂話に大学生・雅史(濱田岳)は怯えていた。2009年、修学旅行中にフェリーに取り残されて落ち込んでいた麻美(多部未華子)は船のコック(森山未來)に声をかけられるが、その直後にシージャックが発生してしまう・・・。
評価★★★☆/70点
例えばタランティーノのような、時間軸を錯綜させ同じ場面を様々な視点から切り取る面白さはこの映画にはない。
各エピソードのつながりは後付けのような薄さで糊付けされており、ヤラレた感には正直乏しい。形としては短編オムニバスをつなげて無理やり納得させられたかんじだ。
しかし、全く悪い気は起こらない。
各エピソードがなかなかよく出来ていて、話に引き込まれる面白さがあり、それが一本の線につながるタネ明かしも、フルコースを食べた後にまだ美味しいフルーツタルトがあったんかいと喜べるオマケ感覚で見れてしまうし、また、なにより世代と時代を超えて人と人、意志と思いがつながっているんだという気持ちの良さと、人々を結びつける普遍的な歌の力に魅了されてしまうのだ。
しかも、“フィッシュストーリー=ホラ話”を“魚の話”と誤訳するバカバカしい偶然が事の発端になっているのもアイロニーに満ちていて面白く、運命とは単なる偶然の産物であり、その積み重ねが人生なのだという必然にたどり着くのも絶妙。
そして思う。
今、自分がココに生きているのは、まさに奇跡なのだと。
意味のないような人生にも意味はあるんだ!いい音楽聴いて一秒一秒を大事に生きよう!
-----------------------
ゴールデンスランバー
出演:堺雅人、竹内結子、吉岡秀隆、劇団ひとり、柄本明、濱田岳、永島敏行、伊東四朗、香川照之
監督・脚本:中村義洋
(2009年・東宝・139分)盛岡フォーラム
評価★★★★/80点
内容:仙台で暮らす30歳の独身男、青柳雅春(堺雅人)。新首相の凱旋パレードの日、青柳は学生時代の同級生・森田(吉岡秀隆)に呼び出され久々に再会するが、「お前、オズワルドにされるぞ。とにかく逃げろ!」とわけの分からないことを言われてしまう。が、その直後、パレード会場で爆発音が鳴り響く。さらに2人の前に現れた警官がいきなり発砲してきて、わけも分からないまま青柳は逃走するのだが・・・。
“大変よくできました!”
仙台生まれで、高校卒業後かの地にに7年間住んでいた自分からすると、オール仙台ロケというだけでかなりシンパシーを感じてしまうわけで、当然点数も甘くなりますw
“KHBお天気情報~♪”とか八木山ベニーランドのCM曲とか仙台人にしか分からないご当地ネタが出てきて思わずニンマリ。
ケネディ暗殺をネタにしたと思われる荒唐無稽な展開もがぜんリアリティが増してくるというもので、オープニングが老舗デパート藤崎というところからして、もうこれはキターッと思ってしまった。
また、堺雅人の飄々とした演技も当事者意識ゼロのド素人と現実を見据えた逃亡者-ユーモアとシリアス-の狭間で絶妙な味わいを醸し出していて、荒唐無稽さを逆手にとった上手さを見せているし、濱田岳のキルオや、永島敏行の微笑ヒットマンなど脇も個性豊かで二重丸!
このての娯楽作品ならばフツーは陰謀の真相を暴いて黒幕を追いつめるというのが常道だし、青柳と樋口(竹内結子)が再会してハッピーエンドという展開になると思うんだけど、せつなさ満点の現実的な着地点はかえって心に残って良かった。
まぁ、、舞台が仙台てだけで何でもいいんだけど(笑)。
でも、自分が1番好きなシーンは、運送会社の元同僚・岩崎が青柳を見て開口一番「やってないんだろ」と言うところ。
この映画のテーマである“信頼”を語る上で最も端的なシーンだったと思う。
学生時代を仙台で過ごした自分からすると、やや青柳の学生時代の過去シーンが弱いかなとは思ったけど、これだけ時間と空間を共有できた作品もなく、十分満足できる映画だったな。
-----------------------
アヒルと鴨のコインロッカー
監督・脚本:中村義洋
(2006年・日本・110分)2007/07/11・盛岡フォーラム
評価★★★☆/70点
内容:大学入学のため仙台へ引っ越してきた椎名(濱田岳)。ボブ・ディランの「風に吹かれて♪」を口ずさみながら荷物の整理をしていると、アパートの隣室の住人・河崎(瑛太)に声をかけられる。そして椎名に奇妙な計画を持ちかける。それは、同じアパートに住むブータン人留学生に広辞苑をプレゼントするため、本屋を襲うというものだった・・・。伊坂幸太郎の同名小説の映画化。
“実はボク、住んでました。あそこに。”
仙台生まれの仙台育ちの自分としては、懐かしさに包まれながら、かなり入れ込んで見入ってしまった。
なんてったって椎名らが住むアパートがある泉区歩坂町に2年ほど住んでましたからっ!そして、椎名が通う東北学院大学(映画では青葉学院大学)にも通っていたので。
立地的には仙台市北部にある大学の泉キャンパス(1・2年は泉で、3・4年になると仙台市中心部の土樋キャンパスに移るんです)の真後ろに歩坂町はありまして、その名の通り坂、坂、坂だらけで、その坂のてっぺんにドデカイ鉄塔タワーがドッカンドッカン立ってて、よく友達と「電磁波に侵されて病気になっちゃう~」て言ってたっけ。
そんな歩坂町は、ほとんどが色とりどりのアパート群で占められておりまして、学生タウンのようなかんじになってるんです。
だから、歩坂町のアパートと泉キャンパスなんて徒歩5分くらいで着く距離なので、椎名がバスに乗って帰るというのはありえないんだけどね(笑)。
まぁ、そういう細かいとこは置いとくとしても、原作は読んだことないんだけど、仙台の情景もあいまってかなり心に染み入るせつない映画に仕上がっていたと思う。
最初の方は、家賃4,5万のアパートに住んでるくせして広辞苑目当てで本屋を襲うというどこかミステリアスな河崎という男がよく分からないキャラクターだったし、ドルジ(田村圭生)も本当にブータン人なのか?というかんじで、全体的にしっくりこなくて、2年前と現在のプロット、ペット殺傷事件と本屋襲撃がどういうふうに繋がって着地するんだろう、と思いながら見ていたのだけども。
ところが、な、なぬっ!?とおもわず後ろにのけぞってしまうほどのネタ晴らしが明らかになったあとは、すべての伏線がつながり、まるで流しそうめんがスルスルと落ちてくるように一気に引きずり込まれてしまった。
久々に身震いするほどのどんでん返しに気圧された気がする。こりゃ原作も読んでみないとイカンな。
ていうか、“となりのとなり”をそう解釈する奴はおらへんよなぁ(笑)。やられますた。。
キャラクターを見事に演じきった瑛太をはじめとして、役者陣も大変よろしく、松田龍平の存在感は抜群だったし、あとは特に人の良いドギマギ系の椎名を演じた濱田岳がヨカッタな。
もう一回見たいと思わせる作品です。
« 夢のシネマパラダイス165番シアター:真夏の方程式 | トップページ | 夢のシネマパラダイス80番シアター:八日目の蝉 »
« 夢のシネマパラダイス165番シアター:真夏の方程式 | トップページ | 夢のシネマパラダイス80番シアター:八日目の蝉 »
コメント