夢のシネマパラダイス80番シアター:八日目の蝉
八日目の蝉
出演:井上真央、永作博美、小池栄子、森口瑤子、田中哲司、市川美和子、余貴美子、平田満、風吹ジュン、劇団ひとり、田中泯
監督:成島出
(2011年・松竹・147分)DVD
内容:会社の上司と不倫して妊娠、中絶手術の後遺症で子供を産めない身体となった希和子(永作博美)は、不倫相手の夫婦(田中哲司・森口瑤子)の赤ん坊・恵理菜を連れ去り、4年間の逃亡の末に逮捕された・・。やがて21歳になった恵理菜(井上真央)は、妻子ある男(劇団ひとり)の子供を身ごもってしまう。誘拐犯の希和子を憎みつつも同じ轍を踏もうとしていることに苛立つ恵理菜は、封印していた記憶と向き合うべく、ルポライター千草(小池栄子)とともに希和子の逃避行を辿る旅に出る・・・。
評価★★★★/80点
「その子はまだご飯を食べてないんです。どうかよろしくお願いします。」と、小豆島のフェリー乗り場で警察に見つかった時に頭を下げて願う希和子の姿に思わず涙
そしてラスト。「なんでだろ、顔も見てないのに、私この子のこともう好きだ!」と顔をクシャクシャにしながら吐露する恵理菜の言葉を聞いて、こりゃお手上げだ、男の出る幕はあるわけないなと観念したw
しかし、女心を理解できない自分はそれでもこの映画に強く胸を打たれた。
それは誰もが平等に恩恵を受けてきたであろう母なるものの無償の愛を純粋な形で感じられたからかもしれない。
子供を産めない身体になってしまった希和子が不倫相手の妻に子供が産まれたことを知って、ひと目だけでも赤ちゃんを見たいと思ったという心理は男からすると理解しかねるのだけども、赤ちゃんをひと目見た瞬間、“空っぽのがらんどう”が母性で満たされる姿はあまりにも自然なものとして目に映った。
一方、かけがえのない母性の発動を奪われた恵津子の絶望が怨念に取って代わる姿も痛切だった。
そして“薫”という記号的呪縛を小豆島の原風景で解きほぐし、失われた4年間-与えられた愛-を取り戻した恵理菜の母親としての決断-愛を与える決意-が胸にしみわたった。
まさに女の映画である。
とともに、悲しいほどに男不在の映画でもある。
劇団ひとりはどこまでも軽薄な姿をさらけ出し、あげくの果てにいつの間にかフェードアウトしてしまうし、この誘拐事件の元凶ともいうべき田中哲司は焦点の合わないフレームの隅で申し訳なさそうに佇んでいるだけだ。
そして極めつけは、女性の駆け込み寺エンジェル・ホームの存在であり、男は確信犯的に無視されつづける。
しかし、どうだろう。
女性だけのコミュニティで育ったがために男性恐怖症になってしまった千草もまたもう一方の被害者とはいえないだろうか。
恵理菜との旅を通して封印していた自分の殻を破ることができるのか、八日目の蝉が七日目までには見られなかった美しい景色を見ることができるのだとしたら、それが信頼しあえる男性とめぐり会って素敵な家庭を築いてみえる幸せな景色であってほしいものだ。
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